World Jazz Gallery Presents

ワールドジャズ あとらんだむ

ワールドジャズに関係あること、ないことを気ままに綴っています。

jazz top

プロジェクト"M"    - 2005. 1.30 -

「プロジェクト"X"」ならぬ「プロジェクト"M"」とは何か? それは、とある人
物(かく言う私)が40台半ばにして取り組み始めた「無謀な」プロジェクトであ
る。彼のプロジェクト"X"で取り上げられる機会が多い業界に属し、いくつか"X"
もどきの体験もしてきている私ではあるが、このプロジェクトは(将来的には役に
立つ可能性もないではないが)今の仕事にまったく関係はない。もちろん "M" は
「無謀(Mubou)」のMではない。

Mとはズバリ「マルチリンガル(Multilingal)=多国語を話せる人」のM。ふと
したきっかけで、数年前からほぼ同じ時期にスペイン語、中国語、ロシア語の3カ
国語の習得に取り組んでいるというわけ。通勤時間を利用してNHKのラジオ講座
(それぞれの入門編)に耳を傾けている程度なので学習効果の程は知れているが、
何とか挫折せずに続いている。

で、そもそも何故これらの3カ国語なのか? 関西人なので大阪弁が喋れまっせ!
という冗談は別にして、私の語学力は英語すら自由に操れるレベルにはない。もち
ろん読むことにはとくに不自由を感じないし、聞き取りもニュースならFENでも
リアルタイムで理解できる。が、海外出張でビジネスパートナーと丁々発止のやり
取りができるようになれればいいな、とずっと思い続けている。まずは英語をマス
ターすべきでは?という声がいろんなところから出てきそうである。

動機はやはり音楽だった。「素晴らしきベネズエラ音楽!」のページの第1話に書
いた「ホローポ」との衝撃的な出逢いが私をスペイン語学習への道へ導いてくれた。
サルサの例を挙げるまでもなく、器楽奏者と歌手の掛け合いでぐいぐいと盛り上が
っていくのがラテン音楽の大きな魅力の一つである。肝心の歌詞が判らないのでは、
その魅力も半分以下になってしまっているはず、と思うといても立ってもいられな
くなってしまった。

手っ取り早くスペイン語を学ぶにはどうすればよいか?ということで思い浮かんだ
のがNHKのラジオ講座。朝の放送は午前8時からで、ちょうどその時間帯は電車
の中である。テキストは350円と「経済的」で、しかも混雑した列車の中で少し
ばかり快適な時間が過ごせると思えば一石二鳥。こうして(そのときは予想もしな
かった)プロジェクトMの1ページ目が開かれた。

中国語の場合はまったくの偶然だった。ラジオのスペイン語講座は8時20分に終
了し、ちょうどその後に中国語講座が始まる。まだまだ通勤電車の「旅」は続く。
惰性ではあるが、中国語も徐徐に気になり始めた。アジアでは今一番元気が良いの
が中国。そういえば香港に仕事に行ったときも中国語(北京語)を耳にする機会が
多かった。ならば中国語も、とスペイン語に遅れること約6ヶ月で毎月中国語のテ
キストも買うことに。(少々形は違っても同じ漢字を使う言葉だからと、当初は軽
い気持ちだったが、これがとんでもない間違いであった。)

さてロシア語は? これは「勢い」以外の言葉を思いつかない。そもそも、BCL
(外国放送の受信)に熱を上げていた時代でもソ連(今のロシア)地域からの放送
にラジオのダイヤルを合わせていることが多かった。ロシア語の解説しか載ってい
ないないジャズのレコードジャケットを眺める都度に、読めたらどれだけ楽しいか
と思っていた。が、それを学習することまでは考えが及ばなかった。こうなったら
本当に勢いである。さらに半年後にはテキストを3冊纏めて買うことになってしま
った。(とにかく難しい。最初に挫折するのは決まってロシア語である。意外と日
本語に近しい部分もある言葉なのだが...。)

ロシア語講座は8時50分から始まる。さすがにこの時間には電車に乗っていない
ので、放送をMDに留守録することにした。8時からスペイン語、中国語、10分
間のラジオ体操を挟んでロシア語と並ぶ何とも絶妙のタイミング。合計70分間連
続でラジオ体操は後でカットすればいい。MDLPモードなら、1週間分を1枚の
MDに収録できる。かくしてプロジェクトMが完全スタートと相成った。

当然のことながら今年で4年目となる「プロジェクトM」の進捗ははかばかしくな
い。「外国語はマスターするものではなく、一生学び続けるもの。」という至言を
座右の銘とするほかなさそうである。ただ、3つの体系の異なる言葉を同時に学び、
そこに英語と日本語を対比させてみることでいろいろと面白い発見があることも事
実。「学習」というよりも「趣味」と考えれば楽しさも百倍である。文字通り「プ
ロジェクトM(無謀)」だね、と笑われないように頑張りたいと思っている。

 

久しぶりに...    - 2005. 1.27 -

メインページの方の更新をさぼっているうちに、いつの間にか新しい年を迎えてし
まった。昨年の9月半ばにラグビーシーズンが始まってから、こちらの方にはまっ
たく手を付けていなかったことになる。毎週のようにラグビー場に足を運んで「ラ
イブ・レポート」を仕上げることの繰り返しで余裕がなかったことも事実。仕事の
面でも、11月末に2年7ヶ月間に及んだ某政府系機関への出向が解け、後任者へ
の引き継ぎ等で慌ただしい毎日を送っていた。

そんな中でも、音楽ソフトはコンスタントに増え続けていた。ベネズエラ音楽では
魅力的な歌手を次々と発見。年始めには至高のジャズピアニスト、ジェシカ・ウィ
リアムスから魅力的な新譜も届いた。夜のひととき、BCLラジオを通して極東の
沿海州地域から強力な電波に乗って届くロシア音楽を満喫するこのごろ。書くこと
がありすぎて更新が出来ていない...はもちろん理由にならない。少しでも「ギ
ャラリー」に近づけるように頑張っていきたい。「年頭の抱負」というわけではな
いけれど...

 

クアラ・ルンプールにて    - 2004. 9.12 -

先月のインドネシアに引き続き、今度はマレーシア。と書くと旅行してばかりいる
ように思われてしまうが、今回は仕事での出張。9月上旬にクアラ・ルンプールで
開催された国際展示会(環境関連)に出展した政府系機関の説明要員という触れ込
みである。少々お堅い内容ではあったが、マレイ系、中国系、インド系といった様
々な民族の人たちが会場を訪れ、マレーシアならではの国際的な展示会となってい
た。さすがに、街中では少なからず見かけた黒いベール姿の女性たち(中東方面か
らの観光客)のご訪問はなかったが...。

実はマレーシアを訪れるのは今回が2度目。前回は2泊3日の国内出張並みの強行
スケジュールで点と点の間を移動しただけだった。しかしながら、短い滞在期間中
にも宿泊した日航ホテル前の小さなお店で貴重なCDを発見するという幸運に恵ま
れていた。ただ、今回は展示会が終わるのが午後7時で、仕事を終えた後のタイガ
ービールがとても美味しいという毎日。残念ながら、街中でのCD探検ツアーに出
かける時間を取ることができなかった。

その埋め合わせはホテルで聴くFM放送。これまでに香港、バンコック、シンガポ
ール、ジャカルタに滞在した経験があるが、どこもFMラジオが大変賑やかである。
世界に冠たる大都会の東京もFMラジオで聴く音楽の楽しさ、面白さでは完全に上
記各都市の後塵を拝している。とくに、マレイ系、中国系、インド系といった異民
族が共存するクアラルンプールはバラエティの豊富さの点で格別の感がある。

ゆったり目のマレー歌謡、洗練された広東ポップス、日本では殆ど耳にすることの
できないインド系のポップス、欧米のヒットチューン、そしてマレーやインドの伝
統音楽などなど、ラジオのダイヤルを回すだけで次々と様々な音楽世界が耳に飛び
込んできて、時間が経つのをすっかり忘れてしまう。マレー、中国、インドという
のはこの国では単なる大括りに過ぎないと言われてしまうと、なんだか底なし沼に
足を突っ込んでしまったような気分になる。

最初のうちは手探りという感じだったが、滞在も後半になるとインド系の音楽に耳
を傾けていることが多くなった。女性ボーカルと男声ボーカルが交互に現れ、アラ
ブ風のストリングス・アンサンブルの間奏や器楽(主に管楽器)によるソロが盛り
上げていくドラマチックな展開の曲が多い。打楽器により間断なく刻まれるリズム
(これもなかなか多彩)の他には伴奏が少なく、ジャズに例えれば50年代のハー
ドバップの世界からモードジャズの世界に紛れ込んできたような錯覚にもとらわれ
る。ボーカリストの歌唱力がないと成り立たない世界であることだけは間違いない。
このサイトでは「空白地帯」であるインドのジャズに対する興味が俄然湧いてきた。

訪問してみるまでは、マレーシアはムスリムの国でマレー系優先という基本情報か
ら、何処か取っつきにくい国という先入観があった。しかしながら、実際に訪れて
みると、街中で漢字を見かけることもあって異国に来ているという感覚は薄れてい
った。香港の場合、華人に英語で話しかけると怪訝な顔をされて面食らってしまう
ことが多々あるが、クアラルンプールではそんなことはまずない。民族や言葉は違
うことが当たり前の世界に居る人たちが自然に身につけた作法なのかもしれない。
なかなか貴重な体験ができた1週間の滞在だった。

 

渋谷のタワーにて    - 2004. 8.26 -

インターネット通販でいろいろな音源を入手することができる便利な時代ではある
が、やはりCDはお店でじっくり実物を見ながら買うのが一番楽しい。ジャケット
の「面構え」だけでなく、演奏曲目、参加ミュージシャンといった録音データを眺
めつつ、「どんな音がでてくるのだろうか?」と想像を巡らしているだけでもあっ
という間に時間が経ってしまう。

私がよく足を運ぶのは新宿のタワーレコード。オールドジャズやフュージョンもす
べて「ジャズ」として平等の扱いを受け、また、たとえ在庫が1枚のみであっても、
そのアーティストが大括りの中のひとりではなく、独立した存在であるのが嬉しい。
まずはジャズのAからZのコーナーまで丹念に見て何枚かの「収穫」を手にし、あ
とはワールドミュージックとクラシックのコーナーを覗いて帰るというのがお決ま
りのコースである。

ただ、ここのところ同店の品揃えに関しては徐々に魅力が薄れてきているように感
じている。ポルトガルのジャズが大量に見つかったり、ホルヘ・パルド(スペイン
のサックス奏者)のコーナーに何故かホルヘ・ダルトの貴重なソロCDが紛れ込ん
でいたりというような嬉しいハプニングに遭う機会も少なくなってきた。

そんなこともあって、今回は渋谷のタワーを訪ねてみることにした。私のご贔屓の
ボーカリストのひとりであるルシアーナ・ソウザの「ネルーダ」をひょっとしたら
発見できるかも知れないという期待を込めて。ネルーダはもちろんチリの国民詩人
のパブロ・ネルーダ。彼の詩(英訳)にルシアーナ・ソウザが曲を付け、エドワー
ド・シモンのピアノ伴奏で歌っているとあっては手に入れないわけにはいかないの
だが、なかなかCDショップではお目にかかれないでいる。

お店に到着してまずは「A」のコーナーをチェック。「B」で早くも釣り針に大物
が引っ掛かった。Ben Sher and Tudo Bem の "Please Take Me to Brazil"。ルシ
アーナ・ソウザ参加作品ということでずっと探していたCDである。「F]ではア
コースティックギターの俊英 Freddie Bryant の "Take Your Dance Into Battle"
も見つかった。貴重なデビューCD、しかも日本発売でありながら、廃盤の憂き目
に遭っていて入手を諦めていた作品である。

ルシアーナ・ソウザの所属するサニーサイドレーベルのCDも次々と見つかる。は
やる気持ちを抑えてさらに進む。「L」のコーナーでは現在のポーランドジャズシ
ーンを代表するピアニストのひとり、Leszek Mozdzer(レシェク・モジュジュール)
のソロピアノ作品が見つかる。この人はアンジェイ・ヤゴヂンスキとは違ったアプ
ローチ(より即興的なスタイル)でショパンに取り組んでいる人。クレジットにも
「ショパン」の名が刻まれている。これは本当に楽しみ。

そして「ネルーダ」に無事到達。同じ系列のお店でもここまで品揃えが違っていい
ものか正直思ってしまう。よけいなお世話かも知れないが。「P」のコーナーでペ
リーコ・サンベア(スペインが誇る情熱のアルト奏者)の "Uptown Dance" を見つ
けたところで釣り針に付けるえさがなくなってしまった。貴重な音源は見つけた時
に買うのが鉄則ではあるけれども、「次に来たときもちゃんとありますように」と
いうおまじないをし、満足感を胸に家路についた。

  

バリの休日    - 2004. 8.21 -

バカンスと言うにはおこがましいが、インドネシアのバリ島に行って来た。滞在先
はレギャン。美しいビーチを有するリゾート地であることには変わりないのだが、
高級ホテルが建ち並ぶヌサドゥアに比べるとかなり庶民的な香りがする。バリ島と
言えばガムラン音楽、ということで早速音源を物色に街に出かけた。

ほどなくして、「TOWER RECORD」が発見された。かの有名なタワーレ
コードのバリ島店というよりも、「あやかり組」の感がなきにしも。ただ、お店の
造りがしっかりしていてCDもたくさんありそうなので覗いてみることに。まずは
ジャズのコーナーを物色。残念ながら「何でこんなところにこんなモノが!?」は
なく、その隣にあったご当地バリミュージックのコーナーに目が移る。

バリ人と言うよりはカリブ(レゲエ)風の風貌の店員さんに「何かオススメは?」
と聞いてみた。すると、「最高のヒーリングミュージック」と触れ込みで2枚のC
Dを取り出して聴かせてくれた。トラディショナルな音と今風のサウンドがミック
スしたなかなか魅力的な音で、早速「バリの想い出第1号」に。後ろ髪を引かれる
感じはあったが、その場はとりあえず2枚ということでお店を離れた。

ひととおり街歩きを終えてホテルへの戻り際に「TOWER RECORD」の前
を通りかかったとき、かの店員さんと目がばっちし合ってしまった。考えてみれば
1枚1000円もしないお値段は大変魅力的。「またいつものビョーキが」と呆れ
顔の連れを尻目に再びお店の中に吸い込まれる。いかにも観光客向け!のものに手
をかけると、「ダメダメ!」という顔をしてセレクトしてくれた3枚はいずれも柔
らかい音が魅力のバンブー(竹)ミュージック。試聴しながら店員さんと一緒にリ
ズムを取ったりと、最高に楽しい想い出が出来上がった。

バリ島というと美しいビーチという印象が強く、実際そうなのだが、内陸部のウブ
ドのように文化の薫り高い村もある。今度訪れるときは、バンブーオーケストラを
生で体験してみたい。そして「TOWER RECORD」も。4日間は余りにも
短かすぎた。
  
Edited by Kazunori KONO, August/21st/2004   Back