World Jazz Gallery Presents

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第2話

衝撃のストリングス・バトル

超絶技巧と即興演奏の応酬によるホローポの最高の教科書  (July/25th/2004)

Music of the Cuatro and the Arpa
「さぁ、これからムシカ・ジャネーラを聴きまくるぞ!」と
意気込んではみたものの、肝心の音源が日本ではまったく入
手できない現実を知り、正直がっかりであった。考えて見れ
ば、ラテン音楽が大好きな私でも耳にする機会のなかった音
楽である。しばらくはネット上で見つけた "llanera.com" 
で聴くことが可能な音源で「渇き」を癒すほかなかった。

そんな折りもおり、待望の音源が日本で発売された。「衝撃
のストリングス・バトル」と題されたCD(副題は「ベネズ
エラのクアトロとアルパ」)で、最高レベルの器楽の名手4
人が超絶技巧の限りを尽くして即興演奏に興じるというのが
テーマである。ジャズファンならずとも興奮と感動なしには
聴くことはできない、文字通りのバトルが収録されている。

このCDの録音のために集められたのは、Jose Archila(ア
ルパ)、Cheo Hurtado(クアトロ)、David Pena(ベース)、
Ernesto Laya(マラカス)の4名。現代のベネズエラ音楽シ
ーンを代表するミュージシャン達でありながら、この4人が
普段ホローポの演奏のために共演することはないという。日
本企画だからこそ実現したと言っても良いだろう。

アルパのJose Archilaは1970年生まれで、大物歌手のバッキ
ングも務める実力派プレーヤー。彼の演奏に限らず、日本で
ポピュラーなパラグアイのアルパに慣れた耳には、相当に力
強い演奏に聞こえるのではないだろうか。

クアトロのCheo Hurtadoは、「クアトロのCharlie Parker」
の異名を持つ。今一歩しっくりこないが、要は最高レベルの
天才と言うことなのだろう。クアトロはどちらかと言えばア
ルパや歌手の陰に隠れた地味な存在の楽器。サッカーに例え
ればボランチと言った感じなのだが、この人の場合は積極的
に前線に飛び出して攻撃参加しているような印象である。

ベース(コントラバス)のDavid Penaは1962年生まれ。6/8
と3/4のクロスビート(同時進行のリズム)を特徴とするホ
ローポにおいて、3/4の方を支えるベーシストの役割は演奏
の生命線を握っていると言える。そんな中にあって、彼のよ
うに対旋律を歌うことはけして容易ではないはずだ。

そして「マラカスの魔術師」の名にふさわしいErnesto Laya
(1972年生まれ)。ムシカ・ジャネーラに限らず、ベネズエラ
音楽の様々なセッションにこの人の名前がクレジットされて
いる。ホローポの乾いた軽快なリズムがあの(小さくて単純
な)一対の楽器で刻まれていることがとても信じられない。

この素晴らしい1枚のCDのお陰で、私の「ホローポへの旅
立ち」は最高の形でのスタートを切ることとなった。

衝撃のストリングス・バトル
(JVC VICG-60209)

Cheo Hurtado : cuatro
José Archila : arpa
David Peña : bass
Ernesto Laya : maracas

1998年9月9,10日 ベネズエラ
カラカス市 シモン・ボリバル
大学講堂にてデジタル録音


 ムシカ・ジャネーラの基本的
 な器楽編成はアルパ、クアト
 ロ、ベース、マラカスの4人。
 それらの楽器の当代最高の名
 手達によるリハーサルなしの
 即興演奏は、想像を超える、
 まさに「衝撃のストリングス
 ・バトル」となった。

 このCDの価値は、単に素晴
 らしい演奏が収録されている
 ことだけに止まらない。企画
 を手がけた石橋純氏による20
 ページにも及ぶ詳細な解説は、
 ムシカ・ジャネーラの最高の
 教科書にもなっている。英文
 の解説も付けられており、世
 界に誇るべき日本企画のCD
 と言っても過言ではない。
 
Edited by Kazunori KONO, July/25th/2004   Back