World Jazz Gallery Presents

A Wonderous Encounter with The Jazz In The USSR

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第3話

ソ連のジャズを探し求めて

ヴァギフの情報を求めて新世界レコード社へ。そして新たな出逢いが。 (August/29th/2004)

Leningrad Jazz Festival '85
旧ソ連地域や東欧方面の音源の入手を考えた場合にまず思い
浮かぶのは新世界レコード社である。ロシアものを中心とし
たクラシック音楽主体ではあるが、ジャズも取り扱っている。
ただ、なかなかレコードを購入するまでには至らなかった。
あまり期待していなかったというのが正直なところであった。

しかしながら、偶然とはいえ、ヴァギフ・ムスタファ・ザデ
の存在を知ったことで、新世界レコード社の「ジャズ」のコ
ーナーが俄然宝の箱のように思えてきた。すぐにお店に馳せ
参じたものの、残念ながらヴァギフのレコードは発見できず、
お店にあったメロディアのリストで音源の存在を確認できた
だけだった。発売から5年くらい経っていることもあり、ソ
連の事情を考えると取り寄せも困難とのこと。

ただ、何としてもソ連のジャズへの足がかりを掴みたいと思
った。いくつかあるレコードから、さてどれを選ぼうか?と
考えてふと思いついた。ジャズフェスティバルの実況録音盤
なら「音のカタログ」としてソ連のジャズの様子を掴めるの
ではないだろうか。そこで目に止まったのが1985年にレニン
グラード(現在のサンクト・ペテルブルグ)で開催されたジ
ャズフェスティバルの模様を記録した3枚のLPであった。

とはいっても、一気に3枚というわけにもいかなかったので、
まずは第1集を聴いてみることにした。学生バンド(ビッグ
バンド)、モダンコンボ、ディキシースタイル、といったバ
ラエティに富んだ内容、そして聴衆の熱い反応にまずは圧倒
された。観客動員を気にする余り、ビッグネーム中心の構成
となってしまうことが多い日本のジャズフェスティバルとは
随分と様相が違うと感じた。

すぐに残りの2枚も手に入れることにした。第2集にはシン
セサイザーを使用した前衛的な演奏が収められていた。デキ
シーからモダンを経て前衛までの様々なスタイルのジャズが
一堂に会した、文字通りの音楽のお祭りが繰り広げられてい
る。やはり、音楽を愉しむことにかけては、長い歴史と伝統
を持っている国だけのことはある。

そして第3集。レコードのA面に針をおろした瞬間、衝撃の
音が飛び出してきた。アルメニアのエレジー(哀歌)をモチ
ーフにしたジャズ。アルタシェス・カルタリャンが率いるピ
アノトリオの演奏で、ベーシストとドラマーも語尾に「リャ
ン」が付くアルメニア人である。ヴァギフのアゼルバイジャ
ンとはまたひと味違った「コーカサス・ジャズ」との予期せ
ぬ、そして嬉し過ぎる出逢いであった。

Live Recordings from the
Leningrad Jazz Festival '85

 レニングラードはもちろん、
 現在のサンクト・ペテルブル
 グ。ソ連時代には「西側に開
 かれた窓」とも呼ばれていて、
 ジャズファンも多かったもの
 と思われる。「秋のリズム」
 の副題が付けられた1985年11
 月開催のジャズ祭の実況録音
 盤は3枚組(分売)。ちなみ
 に1987年にも同ジャズ祭の実
 況録音盤(2枚)がある。こ
 ちらは国際ジャズ祭と銘打た
 れていて、東ドイツ、フィン
 ランド、ポーランドのミュー
 ジシャンも参加している。

 その他に手元にあるジャズ祭
 関連の音源は1982年のモスク
 ワ(3枚分売)と1986年のト
 ビリシ(2枚組)。後者は当
 時17才だったアジザ・ムスタ
 ファ・ザデ(ヴァギフの娘)
 の貴重な演奏が収録されてい
 ることで有名。それらのレコ
 ードに収録されているバラエ
 ティに富んだ演奏内容と聴衆
 の熱い反応から、ソ連は(日
 本での想像を遙かに超えた)
 知られざるジャズ大国であっ
 たことが十二分に伺い知れる。
Edited by Kazunori KONO, August/29st/2004   Back