志木市の教育改革について21の提案
2000年度、教育委員会は地域教育課(前学校教育課)に教育改革担当を新設し、志木市の教育改革プランを検討中。天田いづみは6月議会において、21の教育改革プランを提案しました。
大事なことは、教育委員会任せでなく、市民からもプランを出し、両者の教育論議を経て、地域ぐるみで子どもたちをより良く育てていくことだと考えます。以下、3月・6月議会での論議のポイントをまとめました。
(1)子育てのサポート(支援)体制と幼稚園・保育園と小学校の連携について
「0歳・1歳の親子用の教材に頼らなければ安心して子育てができない。」という現状に危機感があります。幼児虐待に象徴される、どうしてよいかわからない不安や孤立感、それらが親から子へ引き継がれ、アダルトチルドレン・様々の心身症状・反社会的行動等々につながっていくことを考えれば、乳幼児期・それ以前の段階での適切な支援が必要です。中の保育園移転建設に伴い、2001年4月より市内の中核となる子育て支援センターが併設されますが、臨床心理面からのケアができる体制を提案。更に、幼稚園・保育園と小学校が連携を深めることにより、子どもたちや保護者の相互交流、保護者や教育関係者の相互理解と子どもたち一人一人に対するきめ細やかなサポート体制づくりにつなげることを提案しました。
(2)全ての教職員がカウンセリング技術を身につけるための研修を
県では文部省の意向を受け本年度から全教職員を対象に研修することとしましたが、志木市は1997年度から教育サービスセンターにより学校カウンセリング研修会を実施、既に半数の教職員が参加、2〜3年後には全職員が研修予定です。
(3)学校支援ボランティアカウンセラー派遣の充実について
今年度から、小学校低学年対象に個別的ケアが必要なケースに対し、教育サービスセンターから学校長の要請に基づき各学校1名づつ派遣されます。活用状況と必要に応じ、高学年への派遣等の充実がなされるように提言しました。
(4)教科に応じた少人数学習やティームティーチングの活用等について
小学校から中学校にかけてのいずれの段階においても、学習上のつまずきを無くすためには、一人一人の児童生徒の学習をきちんとサポートできる体制が必要です。文部省は2001〜05年までに減少する児童生徒数に伴う教員定数の自然減(推計3万数千人)と同数程度を増員し、地方分権に伴い学級編成と教職員配置のあり方についても、それぞれの学校が自主自律的に特色ある教育課程の編成や多様な指導形態を展開できるようにする考えです。
志木市においては、昨年度から独自に、低学年の算数について1クラス2名の教員できめ細やかな指導をしたり、理科の専科制を導入し、効果をあげている小学校もあります。このように、文部省の施策を待つまでもなく、各学校それぞれの積極的取り組みにより、子どもたちが「わかり、楽しめる学習」がはかられるように求めました。
(5)地域の市民や専門家との連携による協働共育
志木二小では今年度から、クラブ活動で、いきいきサロンの利用者やボランティアの方が指導者として子どもたちと係わっています。プールのヤゴを羽化させる「トンボになーれ」では、生活科や理科の授業を市民が担当。志木二中では選択教科に市民が参画して柳瀬川の帰化植物オオブタクサについて学習し、刈り取り作業も行いました。
教育委員会の民間人講師導入事業の制度を活用し、例えば宗岡小では小麦の粉挽き・狂言指導・まゆ玉づくり・邦楽体験と鑑賞・稲わらの俵編み・綿の花から糸を紡ぐ(予定も含む)等々、地域の方々の協力を得て多彩な取り組みが展開されています。
裁縫等、もっと地域の市民や保護者が学習の支援ができればいい、協力したい等の声を伺うことも多くなりました。
総合的な学習の時間(今年度から移行、2002年完全実施)はまさに、地域のあらゆる教育力を活用して子どもたちが自ら学び生きる力をつける取り組みです。マニュアルもお手本も評価もありません。いかに学校と地域が子どもたちの活動を支援できるか?地域社会の在り様も問われています。
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放課後、高齢者いきいきサロンで 将棋を習う志木二小の子どもたち |
(6)小中一貫教育の取り組みについて
志木市は今年度から文部省に先駆けて宗岡小・宗岡三小・宗岡二中の間で小中一貫教育の調査研究を行います。小中学校間で授業や生徒指導、様々な教育活動を連携することにより、小中での子どもたちのつまづきを無くし、全ての子どもにとってわかる学習や楽しい学校生活となる為の取り組みを期待します。やがて市全域に広げる考えであり、具体的な工夫と実践等、9月議会でも積極的に提言していきます。
(7)志木小学校等複合化における新しい教育の構想について
今日まで残念ながら、建物の位置等の論議が先行し、本来最も重要である、「いかなる教育が展開されるべきであるか」の議論と説明が不充分であったと思われます。そんな中にあっては、児童の安全面等に対する不安ばかりが募るのも無理からぬことです。
3月議会では、既成の概念に捕らわれず、小学校・図書館・公民館の機能を全て一旦バラバラにして新しい発想のもとに作り出していく、学校教育及び生涯学習の拠点としての複合化、すなわち「融合」の重要性を提起しました。「それ自身一つの社会として生き、成長し,そうして働きかけつつある学校」は、私の育った私立学校のモットーでしたが、公立学校であってもそれは十二分になし得ると,宗岡第三小学校における「学社(学校と社会)融合」の取り組みに触れる度に希望が膨らんできました。
どの教科や学習も最高の教育を目指す,個別的な心のケア、地域の専門家による楽しい水泳指導・書道・クラブ活動等に加え、宗岡三小を拠点とした福祉・防犯・スポーツ等の活動、幼稚園・保育園・高校・大学生との連携、福祉作業所・みつばすみれ学園・ルストホフ志木との交流等、あらゆる分野における地域連帯と共生の輪が確実に拡がっています。
学校教育法施行規則(第26条の2)には「教育課程の改善のために文部大臣が認める場合には、教育課程の編成、授業時数について、学校指導要領によらないことができる。」ということが記されています。6月30日に退任された秋山前教育長は、かつてこれによって県立新座総合技術高校で社会と直結した新しい実践型職業教育を行い、それまで教員免許を持っている教師以外に許されなかった、その道のプロである民間の様々な職種の専門家からの直接指導が受けられる等の改革が全国で初めてなされたのです。福祉の分野でも、先進的な地方自治体の取り組みが訪問看護やリハビリテーション等を国に制度化させてきたことを考えれば、志木市から日本の教育の在り様を変えることも夢ではありません。
今後は、新しい建物の中で最高の教育活動が展開されるための提案や議論を重ねていくべきです。すでに、学校ビオトープ(生き物が棲める空間)については、ワークショップ等でPTAが素案をつくって提案し、設計に反映させていくとのこと。是非、子どもたちのアイデアも取り入れていきたいものです。新しい学校づくりの取り組みの全てが、「地域社会にとっての総合的・創造的な学習の場」でありたいものです。尚、安全確保については市民検討委員会でも真摯な議論がなされており、行政・市民ぐるみで子どもたちを見守るシステムを創っていくこととなります。
(8)教育活動としての学校・地域での多様な取り組みを
提案
・ 森の学校づくり(今年度は志木二小・四小・志木二中)・・・・単にフェンスを植栽に替えるだけでなく、地域の憩いの場・高齢者へのベンチ等の配慮・防犯・バリアフリー等の観点から、子どもたちが総合的な学習の時間等で構想・デザイン・創作活動に参画してはどうか
・ 自治としての労作・・・・学校をとりまく生活の場を、街路も含めて子どもたちが分担し、農作業・園芸・堆肥づくり等々学校経営の担い手としての活動を
・ 福祉の現場等での実践的な社会体験学習、教職員の研修充実も
(9)学校毎の教育ビジョンに基づく施設設備の在り方について
提案
・ 「森の学校づくりで植栽が増えると管理しきれない」の発想を転換し、教育活動として子どもたちを主体とした取り組みへ
・ 子どもたちの心のケアとしての「安心して使える学校のトイレに」等
(10)地域の高校・大学等と連携した教育活動の展開
不登校・中退者へのサポート体制づくりも含めた幅広い連携を
(11)新学習指導要領への移行期における中学校部活動のありかたと2002年以後の取り組み
従来は・・・・学習指導要領における週1授業時間のクラブ活動の代替として部活動を実施
2000〜01年・・・・新学習指導要領への移行期として自由選択
2002年からは・・・・新学習指導要領では週1回のクラブ活動は無くなる
上記を受けて、教育長は「部活動の在り方を根本的に見直す時期に来ている」と答弁
知っていましたか? 部活動等指導補助者の活用を!
1997年から教育委員会が活用を各学校に勧めている制度で、教育委員会が費用負担し、各学校の希望に沿って活用できます。
1. 顧問の教師がいても、なおかつ、より専門性のある指導が可能
2. 顧問の教師が専門外であっても、指導補助者の活用で専門的な指導が可能
3. 2つの学校の合同部活動により、指導者不足・生徒の希望があっても部が作れない・廃部等の解消策として
(12) 総合型地域スポーツクラブの育成を
愛知県半田市等から始まった総合型地域スポーツクラブ。志木市でも2002年度より、すでに(財)日本レクリェーション協会との共催で「あそびの玉手箱」等地域ぐるみで活動している宗岡三小を中心とした地域での立ち上げを補助しています。
市内全域を対象として支援拡大していく考えも明らかになりました。部活動についても、社会体育への移行も視野に入れていくべき時期でもあり、今後もスポーツのみならず文化的活動も含め、提案していきます。
(13)志木市青少年育成プランの今後の展開
1992年に作られたこのプランは、乳幼児期〜30歳を視野に入れ、青少年自らを主体としています。目標年次である今年度、青少年の活動の場をどう創っていくかも含め、今後の展開について検討する必要性を提言しました。
(14)演劇など表現活動を日常の教育活動に取り入れよう
自己表現を通して自分の心を見つめ、開放する。他者の心の動きや痛みを知る。共感し、分かち合う。公民館活動では、子どもへの暴力から身を守るためのCAP(キャップ)ワークショップでも、子どもたちは実に生き生きと演じ、自信をつけたようです。演劇ワークショップ(創作→演じる等)も市民活動団体の援助により実現しています。学校教育現場への拡がりを支援していきます。
(15)教育活動としての給食献立の各校特色化を
2000年度、ついに12校全てに栄養士が1名ずつ配置されました。学校給食充実を願う市民の活動に、教育委員会が教育的意義をもって応えたものです。総合的な学習の時間等を活用し、学校栄養士が授業に参画することは充分可能です。献立を立てることから、栄養・保健衛生・生物・科学・発注・仕入れ・流通・経済・国際社会・地域の農業・土づくり・環境学習等々、総合的に生命や自然・社会の循環を学べる、生きた教材となりましょう。
(16)学校図書館と市立図書館の一元化
学校には調べ学習に対応し得る資料の充実と、市立図書館とのオンライン化により学校図書館への更なるサービス充実を。
(17)環境学習・福祉学習等の体験型プログラムづくりを
市民活動団体が授業に参画する事例も増えてきました。(プールのヤゴ救出作戦、等)福祉については、福祉教育アドバイザーとして市民が協力していますが、環境についても市民が手作りでプログラムを提案しようという動きも生まれています。
(18)不登校・LD(学習障害)・ADHD(注意欠陥/多動性障害)・集団不適応等、複雑多様化する教育課題及び特殊教育等に関する研究と充実について提言
(19)生涯学習社会に向けた社会教育部門と学校教育関係者の協働による研究と実践を
今や、世界の潮流は「いつでも どこでも 誰でも 学べる」生涯学習であり、メディアを活用し、国境を越えた学習、交流も行われており、教育もバリアフリー時代に入ったと言えましょう。
公民館や家庭で大学の講義が受けられるようにもなり、メディアリテラシー(メディアを主体的に選択できる力をつける)教育も重要です。社会教育・学校教育が連携して取り組む必要性を提言しました。
(20)生涯学習社会に対応し得る新たな学校・公民館等の在り方と計画について
今年度から、5年後には校舎1つ分が余裕教室になることが予想される志木四小について検討が始まりました。一方「西原特定区画整理区域内の(仮)生涯学習センター」も検討されています。「先に建物ありき」でなく、青少年の活動の場・地域福祉の拠点・環境基本計画に基づく市民の自己実現の拠点としてのリサイクル広場等、必要な事業や市民活動を洗い出し、教育的観点から考える必要性を提起しました。
(21)学校毎の特色ある教育活動の展開を図った上で、通学区域の一部自由選択制についても考えていくのが良いのではないか