高校入試の際の調査書(内申書)の開示による教育改革を
 「東京都のように埼玉県でも調査書の開示をすべきではないか。」とのご意見をいただき、調べてみました。
 東京都では、2001年度選抜(高校入試)から、調査書の全面開示を行っています。具体的には、中学3年の学習の成果を、2学期の成績を中心に調査書に記載し、その写しが、高校入試を前に全ての生徒・保護者に通知(郵送)されます。生徒・保護者は、自分の評価についての正しい情報をもちながら入試に臨むことができます。
 一方、埼玉県では、1992年、全国に先駆けて偏差値による入試を廃止することにより、中学校での業者テストの結果を持って中学校側が私立高校に確約を取り付けに巡る「事前相談」を無くしてきました。1997年度から、業者テストに替わる校長会中心の公的テストに基づく「事前相談」も廃止され、99年度からは、生徒・保護者が学校訪問しながら進路選択をすることとなりました。
 「自分の進路は自分で選択すべき」とはいえ、何を根拠にすればよいのでしょうか。埼玉県では、調査書の評定(5〜1)は「3年の成績を中心として、1、2年の成績を加味する」とのことですが、公開されていないため、その内容について聞くことすらできません。また、不登校で欠席が多かった生徒の評定などは、どうなっているのでしょうか。
 こうした中、学習塾が業者テストの結果を持って私立高校を巡っているという話すら聞かれます。
 県教育委員会は、先ず、実態について調査し、入試制度改革の自己評価をすべきです。
 調査書の開示については、すでに大阪府・兵庫県・鳥取県も実施しており、入試制度や高校改革については、神奈川県はタウンミーティング、東京都は都民意識調査の結果を反映させているということです。
 教育課程審議会答申「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価のあり方について」(2000年)では、各学校における一学年毎の評価を記している「指導要録」については、個人情報保護法及び個人情報保護条例に基づく、開示についての考え方が示されており、志木市においても開示されています。調査書についても各都道府県教委の判断にゆだねられているものの、法の主旨を踏まえれば、開示の方向で検討すべきと考えます。
 2002年度からは新学習指導要領となり、評価の方法も変わります。県では、入試方法の改善に関し、 (1) 総合的な学習の時間の評価の取り扱いについて  (2) 調査書における学習の記録について  (3) 推薦入試の在り方について、現在検討中です。
 ことに、(2) については、「目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)に改めることが望ましい。(現在は相対評価に基づく配分率による点数配分)その際、調査書における評価・評定の客観性・信頼性を高める取り組みを一層進める必要がある。」としながらも、開示についての検討はなされていないようです。
 県教育委員会に対しては、
 1.         調査書については法、条例に基づき開示の方向で検討すべき
 2.         開示の前提に立った入試制度の検討及び調査書の内容の改善
 3.         1.2.に関し、開かれた手法に基づく生徒・保護者・市民・教育関係者の意見の反映を求めました。
 これからの評価は、校長を中心に、各学校毎の教育の目標・手法・評価の基準を積極的に生徒・保護者に伝え、共通理解のもとに、子どもたちの主体的な教育活動が実践されることが重要です。
 ことに、「総合的な学習の時間」においては、生徒自身の自己評価、生徒同士の相互評価、学習のプロセスを重視した評価、保護者や外部の人(地域の市民や事業者等)からの評価等、多様な評価を生きる力につなげていくことが重要になります。
(2002年1月)

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