都市計画高度地区(素案)の問題点
 私は従来から、地域の実態に応じた高さ制限の導入、地区計画等による地域のルールづくりをサポートするアドバイザー制度(地域の要請に応じ専門性のある人材を市が派遣)等を提言してきました。
 しかしながら、広報しき7月号に掲載された高度地区(素案)は、市街化区域の殆んどを一律25m以下に規制するもので、地域特性による違いは全く考慮されていません。
都市計画審議会に諮らず行政だけで素案を作成
都市計画のうち高さ制限、地区計画等については、市の都市計画審議会を経て市で定めることができます。(議会の関与は無い。)
 今回、都市計画審議会を一度も開くことなく素案が決められ、広報掲載後の7月3日に審議会で「素案の説明」がされました。
 志木市では市民協働の方針のもと、審議会、各種計画策定委員会等、市民が議論を積み重ねながら市の重要政策に関与してきました。今回の進め方は従来の方針に逆行するもので、大きな問題があると考えます。
地区計画はそう簡単ではない
「高さ制限は一律25mとし、低層住宅地では地区計画でそれより低い高さ制限を定めることが可能」との説明ですが、地区計画は行政主導ではなく、住民からの発議に基づく制度です。
 策定するのに通常1年以上はかかり、住民の80%程度の合意形成が必要といわれています。
 そういった情報をきめ細やかに市民にお知らせすることなく「地区計画があるから大丈夫」の印象を与えるのは問題です。
既存不適格建築物が45棟も発生!
「現在25mを超えている建物については現在の高さまで建て替えが可能」とされていますが、規制した以上はあくまでも規制に従うことが原則です。例えば志木ニュータウンのように、25mで規制しておきながら28棟も25mを超える建築物が発生してしまうような規制のあり方は適切といえるのでしょうか。
 安易に基準を超えた建て替えを認め、既得権の保護を容認するような行政のあり方は、望ましいとはいえません。
市内の建物は5階以下が8割
志木市の調査では、市内の建物は5階以下が8割とのことです。このような地域を一律25mで規制することで、逆に7〜8階建てに誘導することになるのではないかとの不安の声が住民から多く聞かれます。
 県外自治体では、それぞれ地区毎の実態や地域性を考慮した(10m、15m、20m、25m・・・・)きめ細やかな制度を設けています。
 例えば京都市では、「50年後100年後を見据え、従来の5段階の高さ制限を、9月から6段階の規制としている」にもかかわらず、志木市は「50年〜100年を見据えて市全体を25mに」(市の説明)では、余りにお粗末です。
大規模な開発では緑地、オープンスペースが減少?
敷地面積が広い開発の場合、高さを25m以下に抑えることにより、緑地やオープンスペースが減少する可能性があります。
 慶應志木高校旧寮跡地の志木ガーデンヒルズの計画では、近隣住民は14階建て(高さ約44m)を受け容れることで、提供公園及び緑地(けいおうふれあいの森…1221uを市が管理組合から無償借地)の保全を可能としました。仮に25mの制限があれば、緑地の保全は不可能でした。
上宗岡三丁目地区計画、富士前田子山区画整理事業区域までも
上宗岡三丁目は、既に地区計画で準工業地域20m、第1種中高層住居専用地域14mまでとされています。あくまでも指導の範囲だが、従来は守られてきたとのこと。25mではなく、地区計画に合わせた高さに規制すべきです。
 未施行のままになっている本町富士前田子山区画整理事業区域内は、区画整理区域に指定されているため現在3階建までしか認められていません。まちづくりの方針すら決まっていないのに、なぜ現時点で25m規制なのか、理解できません。
誰のための都市計画なのか
〜都市計画を住民自治によるまちづくりの道具として使いこなそう〜
今こそ市民も問われている!!
市は12月までに定めるとの説明ですが、住民からは「こんな大切なことを半年で決めていいのか」「もっと時間をかけて住民がよく理解できるよう丁寧に説明し、意向を反映したものに」との意見が出されています。都市計画を半年で決めてしまったのでは将来に禍根を残します。
 市長からは都市計画審議会(7月3日)の冒頭で、「市主催の説明会だけでなく、町内会等住民からの申し出があれば職員が説明に出向いていく。」との意向が示されました。
 私たちの生活に直接大きな影響がある都市計画を「行政主導」から「住民主導」に転換していくためには、市民も声を上げていく必要があります。皆さんからもご意見をお寄せ下さい。9月議会でもこの問題について取り上げる予定です。
(2007年8月)
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