2002年映画館で観たレビューです。


2002 MyBest10


13ゴースト ★★★
8人の女たち ★★★★
CQ ★★★
DUST ★★★
es[エス] ★★★
アイリス ★★★★☆
赤毛のアン アンの結婚 ★★★☆
アザーズ ★★★☆
明日、陽はふたたび ★★★☆
アバウト・ア・ボーイ ★★★★
イン・ザ・ベッドルーム ★★★★
インソムニア ★★★★
ウィンドトーカーズ ★★★☆
ヴィドック ★★★☆
エブリバディ・フェイマス! ★★★☆
王様の漢方 ★★★
オースティン・パワーズ/ゴールドメンバー ★★★
ガーゴイル ★★☆
完全犯罪クラブ ★★☆
キリング・ミー・ソフトリー ★★
暗い日曜日 ★★★★☆
グレースと公爵 ★★★★
この素晴らしき世界 ★★★★★
ゴスフォード・パーク ★★★★☆
この素晴らしき世界 ★★★★★
最‘新’絶叫計画 ★☆
サイン ★★★☆
ザ・リング ★★★☆
ザ・ワン ★★★
シャーロット・グレイ ★★★☆
ジェイソンX 13日の金曜日 ★★
ジャスティス ★★★☆
少林サッカー ★★★☆
スター・ウォーズ・エピソード2 ★★★★
ストーリーテリング ★★★☆
スパイダー・パニック! ★★★
スパイダーマン ★★★☆
セレンディピティ ★★★
タイムマシン ★★★
ダーク・ブルー ★★★☆
ダウン ★★☆
チョコレート ★★★★☆
月のひつじ ★★★
天国の口、終りの楽園。 ★★★★
ディナーラッシュ ★★★★
デュラス 愛の最終章 ★★★
トリプルX ★★★☆
ニューヨークの恋人 ★★★
ハリー・ポッターと秘密の部屋 ★★★☆
バイオハザード ★★★
バニラ・スカイ ★★★☆
バルニーのちょっとした心配事 ★★★☆
パニック・ルーム ★★★
人妻 ★★☆
ビューティフル・マインド ★★★★☆
フレイルティー・妄執 ★★★☆
フロム・ヘル ★★★
ブラッド・ワーク ★★☆
ブレイド2 ★★★☆
プロフェシー ★★☆
マーサの幸せレシピ ★★★★
マイノリティ・リポート ★★★★
マジェスティック ★★★☆
マドモアゼル ★★★★
まぼろし ★★★★☆
メルシィ!人生 ★★★★
メン・イン・ブラック U ★★★☆
ラスト・プレゼント ★★★
ロード・トゥ・パーディション ★★★☆




13ゴースト Thirteen Ghosts (2001) 公開(2002)
★★★ (美術センス★★★★)
製作ジョエル・シルヴァー、ロバート・ゼメキス
監督スティーヴ・ベック
出演トニー・シャルーブ

ダークキャッスル・エンタテインメント製作による「TATARI]に次ぐ第2弾ホラー映画。
W・キャッスル監督が1960年に製作した同名作品のリメイクです。

ホラー映画ですが、とにくかく映像が美しいです。
ガラス張りの洋館、建物内部の細工や小物、機械に至るまで、眼を見張る物があります。
美しく建物内部に張りめぐされたガラスのせいでしょうか、
あまり不気味さは感じられませんでした。
本来は幽霊の話ですが、霊的現象というより、モンスター映画といった方が良さそうです。
ストーリーは、可も無く不可も無くといったところ。

■霊的現象よりモンスター映画がお好きな方にお勧めです。
あまり恐怖感が感じられないので、ちょっとしたホラー好きな方に。



8人の女たち 8 femmes (2002)
★★★★
監督・脚本フランソワ・オゾン
出演カトリーヌ・ドヌーヴ、ファニー・アルダン、ダニエル・ダリュー、イザベル・ユペール、エマニュエル・ベアール、ヴィルジニー・ルドワイヤン

本作品は、2002年、ベルリン国際映画祭において、8人全員が
銀熊賞「最優秀芸術貢献賞」を授与されました。

1950年代のフランス、クリスマス・イヴの日。
雪に閉ざされた大邸宅で起きた、一家の主の殺人事件。
8人の女たちが、お互いを探りあい疑心暗鬼になる様子を
クリスティ風の古典的な密室推理劇の設定をベースに繰り広げられます。
フランスを代表する8人の女優たちによる歌と踊りにちりばまめられた
ミュージカル仕立てのミステリー・サスペンスです。

それぞれの女優たちの個性を全面的に押し出しつつも、
お互いの魅力を損なうことなく、上手くかみ合って演出されています。
絶妙なタッチで描かれるそれぞれの駆け引きは、
徐々に仮面が剥がれて素顔をさらけ出す役割を担っています。
ストーリー的には実はかなり毒気を含んだ内容なのですが、
ダークな部分は微塵も感じさせられず、
明るくユーモアを感じさせるコメディタッチの映画に仕上がっています。

登場する女優たちは、一様に美しく魅力的ですが、
その裏に隠されたどろどろした思惑や恐ろしさを目の当たりにする度に、
観客は意外なズレと違和感に魅了されます。

■雪の中にポツンと建つドール・ハウスのような邸宅、
8人の女優たちが着こなす1950年代のニュールックを思わせるドレスも見所盛りだくさんです。
非日常な空間で繰り広げられる邸宅と、華麗な衣装を身にまとった女優たちは、さながら歌って踊るキラキラと光る宝石たちを見ているようです。



CQ (2001) 公開(2002)
★★★
監督ローマン・コッポラ
出演ジェレミー・デイヴィス、アンジェラ・リンドヴァル、エロディ・ブシェーズ、ジェラール・ドパルデュー

フランシス・F・コッポラ監督の子息であるローマン・コッポラの初デビュー監督作品。
父の映画製作現場で学びながら、平行してCM、ミュージックビデオのディレクターとしてキャリアを積み、今回の初監督映画でさらなる力を発揮しています。

1969年のパリ。
アメリカ人ポールが、映画編集と自主映画製作に明け暮れる生活に、突然舞い込んだ映画監督の大役。
2001年を舞台にしたSFスパイ映画『ドラゴン・フライ』の監督と、
日常の生活をレンズを通して見つめる自主映画製作・・・
2つのエピソードを平行に描く、60年代のポップなレトロ感覚で表現した作品です。

自主製作映画のプライベートな生活はモノクロームで、SF映画ではカラフルなポップ調の色彩感覚で表現しています。
1969年と1969年から見た2001年との対比、
商業的なSF映画での現場の苦悩と、自主映画製作によって表現される自分の行き方を模索する日々・・・
空想世界と日常生活が平行して描かれ、その対比に面白さを感じる事が出来ます。

■フランシス・F・コッポラ監督の子息というだけで興味深々。
コマーシャル映像等で培われた美的センスに注目!
トップモデルでもあるA・リンドヴァルがとてもセクシーで魅力的。



DUST (2001) 公開(2002)
Das Experiment
★★★ (映像の美しさ★★★☆)
監督・脚本ミルチョ・マンチェフスキー
出演ジョセフ・ファインズ、デヴィッド・ウェンハム

100年前と現代、バルカン半島とニューヨーク・・・
死期が迫った老女アンジェラが黒人青年エッジに語る話と、その2人のやりとりを同時進行させた、独創的で、且つ壮大なスケールで描く感動ドラマ。

「DUST」という題は塵という意味ですが、まさしく、人間は誰でも皆、塵になって死んで行く・・・といった感じの映画です。
でも、死んでも(塵になってしまったが)、自分の存在意義は消すことなく、誰かの心の中にほんのひとかけらでも伝えてもらいたい。
それが子孫であったり、他の誰かであったりするのだけれど。
そんなちょっと哲学めいた気にもさせる映画でした。
ジョセフ・ファインズが主人公の弟イライジャを演じ、静かな押さえ気味の演技が印象的でした。
出番は少ないながらも、強烈な印象を持って存在感があり、
聖書の引用を短く語るところも、弟の繊細な一面を上手く表現しているようでした。
D・ウェンハムは、兄ルークの『愛さずにはいられない悪人』という難しそうな役を、淡々と演じていて、存在感のある役者を感じさせました。
ストーリーに関しては、2つの時代を同時進行しているのが、少々バランスが悪く、散漫になった気がします。
老女アンジェラ演ずるローズマリー・マーフィーが、今にも死にそうな役にユーモアを混ぜ、巧みに演じていたのが印象的。
ラストで、黒人青年エッジが老婆アンジェラの骨壷を持って飛行機に乗るシーンは、彼の明るい未来を予感させ、また、新たな物語の始まりを思わせるようで好感が持てました。

■銃殺シーンが意外と多いので、苦手な方はご用心。
ミルチョ・マンチェフスキーの独特の、色鮮やかな風景と戦闘シーンの映像、美しいマケドニアの風を感じたい貴方に。



es[エス] (2001) 公開(2002)
★★★ (心理的怖さ★★★★☆)
監督オリヴァー・ヒルツェヴィゲル
出演モーリッツ・ブライブトロイ、クリスティアン・ベッケル

1971年、スタンフォード大学の心理学部で実際に行われた心理実験を元にした作品。
尚、精神に異常をきたす者が続出した為、わずか7日間で実験は中止になりました。現在でも、このような実験は全面的に禁止されています。

人間の心の奥底にある残虐性を、まざまざと目の当たりにさせられます。
誰でも、立場、役割を与えれると、この作品の『看守と囚人』のようになる恐れがあるという事が分かります。
人間の精神の弱さ、もろさ・・・
普通の人間が、戦争などでいとも簡単に人間性が豹変するのも、ある意味理解出来ると思いました。
人間の本性を知る、本当に恐ろしい作品。

■観た後、後味が悪く気分が落ち込みそうな映画ですが、是非、たくさんの人に見て欲しい映画です。
PG−12指定。



アイリス Iris (2001) 公開(2002)
★★★★☆
監督・脚本リチャード・エア
原作ジョン・ベイリー
出演ジュディ・デンチ、ケイト・ウィンズレット、ジム・ブロードベント、ヒュー・ボナヴィル

本作品は、2002年アカデミー賞助演男優賞(J・ブロードベント)、主演女優賞ノミネート(J・デンチ)、助演女優賞ノミネート(K・ウィンズレット)されました。
他に、2002年英国アカデミー賞、2002年ゴールデン・グローブ賞など、多数受賞しています。

イギリスの実在した作家であり、哲学者でもあるアイリス・マードックと、同じく作家であり文芸評論家の夫ジョン・ベイリーの共に過ごした40年間の生活を描いた感動ドラマです。
1950年、オックスフォード大学在学中に出会った2人が結婚に至るまでのエピソードと、
40年後の現在、穏やかな生活に影を落とすアイリスのアルツハイマーの発病と苦悩、他界するまでの物語を平行して描いています。
尚、原作は、夫ジョン・ベイリーの自伝本『アイリスとの別れ』であり、
オックスフォード在学中は、K・ウィンズレット、H・ボナヴィルが、
40年後の晩年は、J・デンチ、J・ブロードベントが演じています。

幸せな満ちたりた2人の生活に突如降りかかったアルツハイマー病・・・
本来なら暗く重苦しくなるテーマですが、、
本作は、苦しみの中にも清々しさが感じられ、観た後には涙とともにある種の満足感が得られます。
夫であるジョンの献身的な介護には、誰もが胸を打たれます。
ただ単に、画一的な介護の礼賛話に終わらず、時には苛立ち、罵倒してしまう自分に苦悩する、どうしようもない気持ちを赤裸々に描いているところにも、この作品に惹かれるところです。

病に侵された妻を見守り支え続けた夫の姿に、どこまでも深い愛を感じます。
長い年月を経ても変わらない2人に、永遠の愛を感じました。
人生という長い道のりを、
人はどこまで人を愛し、理解し、支えになれるかという問いかけの映画でもあります。

■人を愛するという永遠のテーマ・・・全ての人に観て欲しい素晴らしい作品です。



赤毛のアン アンの結婚 (2000) 公開(2002)
Anne of Green Gables : The Continuing Story
★★★☆
監督ステファン・スケイニ
原作ルーシー・モード・モンゴメリ
出演ミーガン・フォローズ、ジョナサン・クロンビー

モンゴメリの名作「赤毛のアン」「赤毛のアン アンの青春」に続くシリーズ第3作目。

「アンの青春」のその後の話であり、原作とはちがったオリジナル・ストーリーです。
ギルバート(J・クロンビー)と結婚したのもつかの間、第1次世界大戦に出征してしまった夫・・・
行方不明となった夫を探す為、危険を冒しながらも戦場まで探しに行くアンの姿に、感動し涙を誘います。
流れゆく運命に翻弄されながらも、幾つかの困難を乗り越え、
力強く生きるアン(M・フォローズ)の姿に胸をうたれます。
観た後には、心地好い感動と余韻が・・・

■原作が好きな方も、初めて観る方も、違和感無く観れます。
明るく生きるアンの姿に、勇気づけられたい方に。
原作の舞台であるプリンス・エドワード島の素晴らしい風景も必見!



アザーズ The Others (2001) 公開(2002)
★★★☆
監督・脚本・音楽アレハンドロ・アメナーバル
出演ニコール・キッドマン、フィオヌラ・フラナガン

第二次世界大戦中のイギリス、チャネル諸島のジャージー島に建つ広大なお屋敷を舞台に、家族に忍び寄る恐怖と心理を描くゴシック・ホラー。

舞台設定を上手く活かし、ゴシック的要素に加え、特に影の使い方が見事です。得体の知れない存在に、観る者はどんどん引き込まれていきます。
さらに恐怖の影を、小物を使った暗示や独特のカメラワーク、効果音で巧みに演出しています。
N・キッドマンの神経過敏な演技が、心理的に追い詰められていく状態を上手く表していました。
また、母として子供達を思う気持ちにも好感が持てました。
途中、細かな描写の積み重ねでなかなか進展しないところもあり、少しイライラさせられる事も。
ラストは某有名映画を思い起こさせますが、独創的な演出は他の映画とは全く違い、別物です。
観た後から伏線に気付かさせられる事も(鍵の使い方とか、使用人の発言など)

■特にホラー要素が強い訳では無いので、怖さを楽しむというよりも雰囲気とか過程を楽しんだ方が良さそうです。



明日、太陽はふたたび Domani (2000) 公開(2002)
★★★☆
監督・脚本フランチェスカ・アルキブジ
出演マルコ・バリアーニ、オルネラ・ムーティ

1997年9月、イタリア中部のウンブリア地方で起こった
『アッシジの大地震』をモデルにして作られています。
本作では、架空の町カッキアーノを舞台にして描かれています。

架空の小さな町を襲った大地震を背景に、
そこで暮らす人々の日常と、共に生きる姿を描いた群像劇です。
大地震によって、急きょ、テントや仮設住居暮らしになった人々の生活は
激変して行きます。
同居生活によるプライバシーの無い生活、
人間関係の不安定さからくる苛立ち、トラブル、疑惑、
そして新たなロマンスの予感、心のふれあい・・・
そういった人々の心の変化をベースに
それぞれの持つエピソードを上手く絡めながら、明るく描いています。

副町長とその妻の苛立ち、長男次男の反抗期、
ボケた母親と介護する息子の苦悩、
絵画修復家とその妻の不妊治療を巡るいさかい、
子供達を温かく見守る女教師の孤独・・・
この天災をきっかけに現れ、町の復興、離別と共に話は終わります。
特に、2人の少女の恋と友情は、甘く切ないです。

地震のシーンも、CGを使った凝った映像でないところが、
かえって好感が持てます。

■少しドキュメンタリータッチの感のあるドラマです。
大作ではないし、特に大きな感動作という訳でもないのですが、人の心に触れてみることができる珠玉の作品です。



アバウト・ア・ボーイ About a Boy (2002)
★★★★
監督・脚本ポール&クリス・ワイツ
原作ニック・ホーンビィ
出演ヒュー・グラント、ニコラス・ホルト、レイチェル・ワイズ

気楽に人生を楽しむ独身男が、12歳の少年との出会いによって、
人生観が変わっていくコメディ物語。

最初から最後までテンポ良くストーリーが展開します。
時折はさむユニークな事柄は、ともすれば嫌味になりがちな表現ですが、
本作では上手く作用し、粋な感じに仕上がっています。
脇役の人々も、さらっと上手く物語に溶け込んでいて好感が持てます。
音楽も、ストーリーに効果的に使われていました。

優雅に独身生活を楽しむ男ウィル(H・グラント)は、12歳の少年マーカス(N・ホルト)と出合った事で、
優雅だけれど、どこか満たされていない生活をしていた自分に、
向き合う事が出来ます。
一人で居る事も楽しいけれど、
人と交じり合う事の楽しさも気付いたと思わせる終わり方です。

■子供を持つ親より、子供の持たない独身男性の方が、
意外と子供の事を理解している点は興味深いです。
・・・子供を持つ親には必見。
ヒュー・グラントの為に作られた、と言っても良さそうな映画であり、
さらっと小粋な、楽しいコメディ映画になっています。
ヒュー・グラントの達者な演技にも注目!
子供の使い方も、過度な感傷的表現に陥っておらず良い。



イン・ザ・ベッドルーム In the Bedroom (2001) 公開(2002)
★★★★
監督・脚本トッド・フィールド
原作アンドレ・デュバス

2001年、アカデミー賞 主演男優賞、主演女優賞、助演女優賞などノミネート。
その他、NY批評家協会賞など多数受賞しています。

最愛の息子を突然殺され失った、ある夫婦の苦悩の心理を描くサスペンスドラマ。
1人息子を失ったやり場の無い気持ちを、丁寧に描いています。
事件を境に、夫婦の間に溝が出来、どうしようもない思いがどんどん広がっていく様子を深く繊細に描いています。
また、お互いが押し殺していた本音を吐き出すシーンも緊張感あふれていて、観ている観客も力が入り、ぐいぐいと引き込まれて行きました。
ストーリーだけを見ると平凡な話なのですが、計算された脚本・演出によって、見応えある秀作となっています。
主演のT・ウィルキソンとS・スペイセクの2人の素晴らしい演技も、この映画を成功に導いています。
ただ、2時間11分という時間は、この内容からすると長く感じられ、
もう少し、短くても良いかも知れません。

■ラストも決して明るい未来では無いだろう、と暗示させるこの作品。
子供を失った父と母の、深い心理状態に浸りたい方にお勧めします。
観ていて息が詰まりそうなほど、辛い、悲しい映画です。



インソムニア Insomnia (2002)
★★★★ (眠れない辛さ★★★★☆)
監督クリストファー・ノーラン
出演アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンク

1997年に製作された同名のノルウェー映画をリメイクした作品。
本作品は、ある時期の日の沈まない町アラスカが舞台ですが、オリジナルは北欧の白夜です。

ウィル刑事(A・パチーノ)が、過失で相棒ハップ(M・ドノヴァン)を射殺してしまった罪の意識と、それ隠蔽した罪とにさいなまれる様子、
そして、それに不眠症も重なって、次第に精神的に追い詰めれる様子が描かれています。
それにしても、A・パチーノの老練で素晴らしい演技力。
神経過敏な、不安定な精神状態を上手く表現し、観ている者はどんどん引き込まれて行きます。
状況設定も、白夜という白い情景を上手く陰影を生かして、
ダークな雰囲気を作り出しています。

■オーソドックスなタッチのサスペンス映画を見たい方にお勧めです。
謎解きというより、主人公の苦しい精神状態を共に味わいたい方に。
猟奇的なシーンは出てこないので安心です。
犯人ウォルター役のロビン・ウィリアムズの善人のような悪役を見たい方にも、是非!



ウィンドトーカーズ Windtalkers (2001) 公開(2002)
★★★☆ (爆発・火薬の量★★★★☆)
監督ジョン・ウー
出演ニコラス・ケイジ、アダム・ビーチ、クリスチャン・スレイター

第二次世界大戦下において、アメリカが、先住民族ナホバ族の言葉を使った新しい通信暗号を使い、対日本戦において勝利を収めたフィクションを元にしています。
ナホバ族の暗号通信兵と海兵隊員の、心の交流と葛藤、そして戦場での過酷な戦いを描いたアクション・戦争映画。

とにかく延々と続く戦闘シーン。
大爆発で、戦車、人が吹き飛ぶさまは、圧巻です。
あまりに戦闘シーンが多すぎて、観る者は少々うんざりしますが、
ただ、戦争の恐ろしさを少なからず体験出来ると思います。
ストーリーは、ジョニー(N・ケイジ)が、戦場で己の指揮の不手際から、部下を無駄死に追いやったところから始まります。
当然、ジョニーは苦悩しフラッシュバックに悩まされますが、
しかし、これは上層部の命令で仕方が無い事であり、どうしようもない過酷な現状と運命を表しています。
そして、ナホバ族の暗号通信兵ベン(A・ビーチ)とジョニーが一組となって、中隊と共に行動しますが、
ここではアメリカの中に、先住民族への軽視、及び有色人種の人種差別があること、通信兵に万が一あった時は殺害することなど、非人道的な行為が行われていた事を巧みに演出しています。
そういった中で、差別的な発言を繰り返す隊員の気持ちが、徐々に変わっていく過程も良く描かれています。
アメリカ資本の映画+アジアの巨匠ジョン・ウー監督+先住民族ナホバ族の知られざる活躍・・・それぞれの立場から見た想いが詰まっている映画です。
ただ、あえて難を言えば、日本兵が、あまりにも体格が良く血色が良いので違和感を覚えました(笑)

■戦闘シーンが延々と続くので苦手な人はご用心。
もちろん、戦争の本質が分かっていない小学生等は避けた方が良いでしょう。
知られざるナバホ族の功績と、ジョン・ウー監督の美学、そして戦争に従事した隊員のそれぞれの想いに触れたい方に、お勧めです。



ヴィドック Vidocq (2001) 公開(2002)
★★★☆
監督ピトフ
出演ジェラール・ドパルデュー、ギョーム・カネ、イネス・サストレ

19世紀フランスで、犯罪者→脱獄→警察官→世界初の探偵事務所を開く、といった経歴を持つ伝説の男ヴィドックを元にしたゴシック・ミステリー。

凝りに凝った映像美は独創的で素晴らしい出来栄え。
緻密に計算されたゴシック的なセットは、混沌とした世界を上手く演出しており、まるで絵画を見ているよう。
全般に渡って繰り広げられる映像はおどろおどろしく幻想的な感じです。最新のCGとレトロな美術は見事に融合しています。
ヴィドック(G・ドパルデュー)と錬金術師(G・カネ)とのアクションもお見事。
ストーリーは謎解き要素が強いです。犯人と確信していた人物が、ラストで全く思ってもみなかった人だったのでビックリ。
また再度、見直してみたくなる作品です。
人物のクローズアップの多用で観ている方がちょっと疲れた所も。
G・ドパルデューはもう少し痩せていた様な気がしますが、役作りのせいか太って見えます(笑)

■濃厚なゴシック的映像美を堪能したい方にお勧め。
また、実在した伝説の男ヴィッドックに触れてみたい方にも是非。



エブリバディ・フェイマス! Everybody Famous! (2000) 公開(2002)
★★★☆ (親馬鹿度★★★★☆)
監督・脚本ドミニク・デリュデレ
出演ヨセ・デパウ、エヴァ・ヴァンデルフフト

2001年、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。

ベルギーのとある小都市が舞台。
失業した父ジャン(J・デパウ)が愛する娘マルヴァ(E・ヴァンデルフト)を歌手にする為に、誘拐事件を起こし悪戦苦闘します。
事態は思わぬ方向に進んで行くが、ラストはそれぞれが納得出来るハッピーエンドになるハートフル・コメディ。

マルヴァの歌う『ラッキー・マヌエロ』が、とても印象的!
父が娘を思う気持ちが空回りしているところが、何とも可笑しく、哀愁が漂います。
さぞかし、身につまされるお父さんもいるのではないでしょうか。
父の失業、華やかな芸能世界、娘の体型など、下手すると嫌味になりがちな内容を、明るくからりと描いているところが良かったです。
中盤、父が誘拐事件を起こす場面から、ラストに向っての巧みな演出が功をなし、爽やかな感動を起こすクライマックスになっています。

■父と反抗期の娘の親子関係に触れたい方、楽しいハートフルな映画を楽しみたい方にお勧め。



王様の漢方 Great Wall , Great Medicine (2002)
★★★
監督・脚本・原作ニュウ・ポ
出演チュウ・シュイ、渡辺篤史、ノーマン・リーダス

日中初の民間プロダクション同士による共同製作作品であり、
正式な日中合作映画として、日中国交三十周年にふさわしい記念すべき作品でもあります。
世界遺産の『万里の長城』における、空撮、大規模なロケーションも見所の一つです。

ビジネスによる失敗を挽回する為、男(渡辺篤史)は、
心身共に疲れ切った日本人の為にツアーを企画し、
万里の長城にある李仁(Z・シュイ)の家で、
鍼と漢方療法によるユニークな漢方治療の数々を体験します。

漢方治療による滞在で、
ツアーに参加した人々の病を治すだけでなく、
彼らのその後の人生までも大きく変える過程が興味深いです。
所々にはさまれたユーモアも楽しい要素の一つです。

映画を通して、薬膳料理の効能を知る事ができ、
『心を如何にして保つか』と言った心の在り方まで教わる事が出来ます。
雄大な中国の大自然と、『万里の長城』の静かな佇まいを見ているだけで、宇宙の万物にまで想いをはせ、
些細な事に思い煩う人間の心を開放し、癒されます。

■チュウ・シュイの人柄がにじみ出る温かい演技に、貴方も必ずや癒されることでしょう。
漢方好きなウンチク派の貴方にも是非、ご満足出来る作品です。



オースティン・パワーズ/ゴールドメンバー
Austin Powers in Goldmember(2002) 公開(2002)
★★★
監督ジェイ・ローチ
製作・脚本マイク・マイヤーズ
出演マイク・マイヤーズ、ビヨンセ・ノウルズ、セス・グリーン

マイク・マイヤーズ製作・脚本・主演(4役)による過激なお馬鹿パロディ映画。
多数豪華スターによるカメオ出演も話題に。
トム・クルーズ、グウィネス・パルトロウ、ケヴィン・スペイシー、ジョン・トラヴォルタ・・・etc
他には、スティーブン・スピルバーグなども!

全般に渡ってパロディ満載の映画であり、テンポも早く、
後からオリジナルを思い出す楽しみもあります。
下ネタ満載ですが、嫌味が無く明るいので受け入れやすいです。

■ちょっとお下品な下ネタOK!の方、思いっきり現世を忘れたい方にお勧め。



ガーゴイル Trouble Everyday (2001) (公開2002)
★★☆
監督クレール・ドゥニ
出演ヴィンセント・ギャロ、ベアトリス・ダル、トリシア・ヴェッセイ

本作品は、2001年カンヌ国際映画祭の招待作品です。

セックスでの興奮が高まると相手を殺したくなる衝動に駆られる、
恐ろしい病にとりつかれた男と女。
怪物(ガーゴイル)とも言うべき2人の残酷なラブ・ストーリー。

シェーン(V・ギャロ)には、妻ジューン(T・ヴェッセイ)を愛しながらも、
愛する事の出来ない苦しみと苛立ちが、
コレ(B・ダル)の病に冒され常人でない様子には、
目を背けたくなる程の悲しく哀れな姿が伝わって来ます。
普通の人間がいつしか狂人化して行くさまは、
観る者に、やるせなさと、あきらめと、ある種の不快感が襲います。
愛に悶え、苦しむ・・・そんな男と女の悲劇を描いた
激しくも切ないエロチック・ラブ・サスペンスです。

ストーリー的には、随所で理解出来ない部分も多々あります。

■R−15指定です。
かなり痛い作品です。
一般の方は、避けた方が良いでしょう。
ヴィンセント・ギャロのファンを極めた方、
ふんだんに登場するエロス&スプラッター描写に浸りたい方、
・・・などの方々しかお勧め出来ません。



完全犯罪クラブ Murder by Numbers (2002)
★★☆
監督バーベット・シュローダー
出演サンドラ・ブロック、ライアン・ゴズリング、マイケル・ピット

1924年、アメリカで実際に起きた『レオポルド$ロープ』事件を元にして作られたサスペンス・ミステリー。

2人の高校生リチャード(R・ゴズリング)とジャスティン(M・ピット)が起こす事件は、周到な計画殺人の醍醐味と、捜査の裏をかいて楽しむ愉快犯的要素があり、
事件を追う女性刑事キャシー(S・ブロック)は、過去の事件よる精神的圧迫と戦いながら、捜査の真相を追い彼らを追い詰める役を好演しています。
ストーリー、演出ともに、事件の真相に迫る展開と、息詰まる緊張感を味わう事が出来ます。
ただ、高校生の起こす犯罪と女性刑事のトラウマが同時進行している為、中途半端な感じは否めません。

■期待の新人、ライアン・ゴズリングとマイケル・ピットのフレッシュな演技を是非!
但し、サンドラ・ブロックは魅力的に撮れてないのが残念・・・
『クラブ』と言っても主役2人しかいませんよ(笑)



キリング・ミー・ソフトリー Killing Me Softly (2001) 公開(2002)
★★ (官能的美しさ★★★)
監督チェン・カイコー 原作ニッキ・フレンチ「優しく殺して」
出演ヘザー・グラハム、ジョセフ・ファインズ、イアン・ハート

衝撃的な出会いをして結婚したヒロインが、夫の過去に疑惑を持ち、次第に恐怖と死の影に怯え始める、官能的なシーン満載のラブロマンス・サスペンス。

官能的なシーンは過激ですが、映像の美しさで上品に仕上がっています。
特にH・グラハムの体の線の美しさが映像に花を咲かせています。
ストーリー的には、全体的に煮詰まってなく、これでは土曜ワイド・・・と言われても仕方が無く、特にラストに行くに従って失速して行きます。
謎解きの部分はあまり期待できず、随所で??の場面があるところが難点。
結局の所、アリス(H・グラハム)が勝手に燃え上がって、勝手に夫を邪推して、全てをダメにした様に思わせてしまう演出の仕方です。夫であるアダム(J・ファインズ)は誰も殺していないのですから。
他に気になった点は、アリスは、Webデザイナーのキャリアウーマンという設定ですが、仕事をしている場面は殆んど無く、仕事中に勝手に長時間出歩いたりして摩訶不思議。
イギリスのキャリアウーマンは、変な印象がつきやしないかと不安になりました(笑)

■チェン・カイコー奮闘のラブロマンス映画を堪能したい方、ヘザー・グラハムの美しい身体を堪能したい方にお勧めです。



暗い日曜日 Gloomy Sunday (1999) 公開(2002)
★★★★☆
監督・脚本ロルフ・シューベル脚本ルース・トーマ
撮影エドヴァルド・クオシンスキ
出演アリカ・マロジャーン、ステファノ・ディオニジ、ヨアムヒ・クロール

シャンソンの名曲「暗い日曜日」の逸話を元にした、運命に翻弄されながらも生きた2人の男と1人の女の激しくしくも切ない愛の物語。
実際は、1930年代、ブタペストで、この「暗い日曜日」の歌を聴いて自殺を起こす者が続出し、放送禁止になった経緯があります。
いわゆる『自殺の聖歌』と言われています。
本作は、この名曲を生み出したセレッュと、ピアノを弾いていたレストランを元に創作したニック・バルコウの小説です。

第二次世界大戦前夜のブタペストを舞台に、ナチ・ドイツ軍の侵攻、ユダヤ人への迫害等、暗い時代を背景に物語は展開します。
レストランの経営者ラズロ(Y・クロール)、そこで働く美しい女イロナ(E・マロジャーン)、そしてその店にふらりとやって来たピアノ弾きの男アンドラーシュ(S・ディオニジ)の3人が織りなす不思議な愛の形です。
3人の愛は、共用しながらも危ういところで保たれていましたが、アンドラーシュが「暗い日曜日」を作曲したことから、運命は思わぬ方向へと流されて行きます。
『自殺の聖歌』と言われたいわく付きの名曲ですが、おどろおどろしいとか嫌な曲ではなく、美しく、何故か物悲しく心に響く名曲です。
自殺を引き起こす曲いという訳では無く、自殺した人達がたまたま聞いていただけ、というのが真実のようです。
実際、あの美しい音楽を聴いていたら納得ですね。
ストーリーも、ぐいぐいと話に引き込まれしまうほど、時間の経つのを忘れてしまいました。
ラストでは、意外な展開で終わったので、少しサスペンスを思わせるところもあります。
イロナ演じるE・マロジャーンが、エキゾチックで魅力的です。
あの深い大きな瞳に見つめらたら、男の人はたまりませんね。
彼女の服も、いつもブルー系の服でまとめていて、背景に溶け込んでいて素敵でした。
レストランの内装や、登場人物の位置関係も上手い演出でした。
第二次世界大戦の時代背景や、この「暗い日曜日」のルーツを知るきっかけになったことなど、いろいろ得ることがあり、
何より、美しい旋律にのせて展開する愛の物語に酔い知ることが出来た、素晴らしい作品です。

■「暗い日曜日」のメロディがいつまでも頭から離れない・・・観終わった後も、しばらく席に座っていたいような気分に。



 グレースと公爵 L'Anglaise & le duc (2001) 公開(2002)
★★★★
監督エリック・ロメール
出演ルーシー・ラッセル、ジャン・クロード・ドレフュス

油絵で当時の風景を書いた上に、実写で撮った人物をCGで重ね合わせるという新技法をとっています。
実在する英国女性、グレース・エリオットによるフランス革命の回想録が原作です。

1790年、フランス革命によるパリ。
ルイ16世の王政に敬愛を抱くグレース(L・ラッセル)と、急進的に革命派に傾倒するオルレアン公爵(G−C・ドレファス)
元恋人同士である二人の波乱に満ちた人生を、愛と友情を繊細に綴った心理描写で描く歴史ドラマです。

油絵による背景と、動く実写による人物との融合は、不思議な感覚を編み出しています。
闇夜に浮かぶ月明かりの道、ムドンの高台で見つめるパリの遠景、コンコルド広場の暴動、群集・・・グレースの不安と孤独を表しています。

元恋人同士でありながら政治的信条に相反する為、しばしばぶつかり合う二人ですが、
恋人関係が終わった後も、お互いを大切に思い案ずる姿に、真実の愛の姿を見たような気がします。

■フランス革命に翻弄された2人の愛の物語を感じて下さい。
大胆なCGの新手法、事実に基づいて再現されたコスチュームの数々も見所です。



この素晴らしき世界 Musime si pomahat (2000) 公開(2002)
★★★★★
監督ヤン・フジェベイク
原作・脚本ペトル・ヤルホフスキー
出演ボレスラフ・ポリーフカ、アンナ・シィシュコヴァー、ヤロスラフ・ドゥシェク

本作は、2000年のアカデミー賞外国語映画賞ノミネートを始め、チェコ・ライオン賞主要5部門受賞、バンクーバー国際映画祭観客賞受賞、パーム・スプリングス国際映画祭観客賞、コトブス国際映画祭国際批評家連盟賞(=全て2000年)を受賞しています。

第2次世界大戦中のチェコの小さな田舎町を舞台に、
子宝に恵まれない夫婦ヨゼフ(B・ポリーフカ)とマリエ(O・シィシュコヴァー)が、ナチスの収容所から脱走して来た青年ダヴィト(C・カッシャイ)をかくまう事から起きるドタバタ劇を、哀しみと苦しさの中にも、面白くも可笑しさとユーモアで包んだヒューマンドラマです。
ナチスの占領下という重い状況の中で繰り広げられる人間模様は、思いもかけず、重苦しくない心地よいドラマになっていました。
人々が生きて行く為には、妥協し合いながらも、思いやりを持って、したたかに生き延びようとする姿が描かれています。
メジャー系戦争映画が陥りがちな、誰もが勧善懲悪な悪人・善人であったりしないで、人間の本質を赤裸々に描いているところが(=善人ぽい人が、ちょっぴりずるかったり)、大作映画にはない良さがありました。
確かに、この世に完全な人間は居ないはず。
その辺りの人間の生き様を、下手すると嫌味になりがちな題材をこんなにも感銘を受ける映画に仕上がったのは、ひとえに監督と脚本、そして演出のまとまりの良さなのでしょう。
ラストで、ヨゼフが乳母車を引いて歩いている姿には、彼の何とも言えない、嬉しいようなちょっぴりほろ苦いような、そんな感じがうかがえました。
彼の赤ん坊を抱いて天を仰ぎ見る表情には、この映画の全てを物語っているようで、涙を誘いました。

■素晴らしい人間賛歌の映画!・・・是非、たくさんの人に観て頂きたい作品です。



ゴスフォード・パーク Gosford Park (2001) 公開(2002)
★★★★☆
監督ロバート・アルトマン
出演マギー・スミス、マイケル・ガンボン、クリスティン・スコット・トーマス、ケリー・マクドナルド、クライヴ・オーウェン、ヘレン・ミレン

本作品は、アカデミー賞・脚本賞、ゴールデン・グローブ賞・監督賞、
全米映画批評家協会賞・監督賞、脚本賞、助演女優賞など、
その他、多数の賞を受賞しています。

1932年11月、イギリス郊外に立つ貴族の屋敷『ゴスフォード・パーク』
狩猟とパーティに明け暮れる日々に、殺人事件が発生し・・・
群像劇仕立てのミステリー・ドラマ。

『上の世界』の貴族と、『下の世界」の使用人達が住む世界を、
カメラは、軽快なフットワークで上へ下へと走ります。
カメラが、ひとつ屋根の下の人々を丹念にとらえつつ、
一人一人の人間像を浮かび上がらしていき、
それぞれの人間が複雑に絡み合っていくさまを描いています。
あらゆる要素が交じり合い、すれ違い、交差するさまは、
まるでアンサンブルを見ているようです。
使用人達の視点から得たゴシップ情報で、
『上の世界』の住人の真の人物像を垣間見ることが出来ます。

ラストに向かって、事件の謎が解き明かされますが、
今まで複雑に絡み合っていた事柄が解きほぐされた時、
観ている者は、ため息にも似た静かな余韻に浸ります。

ひとつ屋根の下で繰り広げられる、
それぞれの人生が交差した人間模様を描いた作品です。

■イギリスを代表する俳優陣を揃えたキャスティングが見所の一つ。
1930年代を忠実に再現したセット、調度品の数々・・・
貴族のドレス・メイドの衣装にも注目。
殺人事件によるサスペンス・ミステリーの色合は薄く、
少しブラッック要素の入ったドラマと観た方が良さそうです。
殺人事件の犯人は、かなり最初の部分で推測出来ます♪



最‘新’絶叫計画 Scary Movie 2 (2001) 公開(2002)
★☆
監督キーナン・アイボリー・ウェイアンズ
出演アンナ・ファリス、マーロン・ウェイアンズ、ショーン・ウェイアンズ

2000年の大ヒット作「最終絶叫計画」の続編。
前作同様、大ヒット作品や有名ホラー映画のパロディとお下品ネタの数々を満載したコメディ・ホラー映画。

前作「最終絶叫計画」は、「スクリーム」ネタをベースに展開した学園ホラー映画でしたが、
今回は、「ヘル・ハウス」をベースに展開するゴシック・ホラーが中心になる作品です。
パロディした作品は数知れず、
大ヒット作品では、「M:I−2」「タイタニック」「チャーリーズ・エンジェル」「ロッキー」など多数。
有名ホラー映画からは、「インビジブル」「エクソシスト」「エルム街の悪夢」「シャイニング」「ホワット・ライズ・ビニース」など他、多数あります。

意外な大物俳優ティム・カリー、ジェームズ・ウッズ等ベテラン俳優が出演しているところも見所です。
前作を上回る過激な内容とパロディの数々・・・
ブラックジョークあり、エロティックなセクシーシーンありの、
さらなるパワーアップした危険なノリの『お下品お馬鹿映画』です。

■ストレスの溜まっている方、世間に苛立ちを感じている貴方に是非!
特に指定はありませんが、あまりのお下品お馬鹿ネタに、お子様は避けたいところ。



サイン Signs (2002)
★★★☆
監督・脚本M・ナイト・シャマラン
出演メル・ギブソン、ホアキン・フェニックス、ローリー・カルキン

突如として現れたミステリーサークル、次々と起こる不可解な出来事、元牧師一家を舞台に繰り広げられる恐怖を描くサスペンス。

全般的に渡って、数々のサイン(=伏線)が張られていて、映像、演出の素晴らしさと共に、観客はスクリーンに釘付けになります。
宇宙人到来といった不安を描きつつ、
母の死により失った家族の絆と、元牧師が信仰心を取り戻す過程も丁寧に描かれています。
全体的に重々しい雰囲気の中にも、ユーモアをもって描かれているので、緊張感の中にもほっとさせれらる部分が。
宇宙人到来による恐怖を、家族単位で個人の目線から見た映画ともいえます。
子役のローリー・カルキン、アビゲイル・ブレスリンが可愛い。

■キリスト教を信仰されてる方は、さらに良し。
宇宙人襲撃映画「宇宙戦争」と見比べてみるのも良し。
実際、宇宙人が襲って来たら・・・と家族での対処法を学ぶのも良し。



ザ・リング The Ring (2002)
★★★☆
監督ゴア・ヴァービンスキー
出演ナオミ・ワッツ、マーティン・ヘンダーソン、ブライアン・コックス

鈴木光司の大ベストセラー小説「リング」
同名邦画作品を、
アメリカのドリーム・ワークスが完全リメイク化したホラー映画です。

家庭にあるごく普通の
ラベルの無い黒い生ビデオテープ、TVを題材にしている所が、
さらに恐怖感を増すのかも知れません。

マサラが発する憎しみが、次から次へと伝染し、
噂になって伝承して行く・・・
主人公のレイチェル(N・ワッツ)が、息子を救う為に行う行為は、
自分さえ良ければという感情を引き起こし、
ある種の嫌悪感さえ抱いてしまいますが、
それは誰にでも起こりうる感情でもあり、自分もまた、
マサラ、レイチェルと何の変わりも無い人間だと気付かされます。
こういった視点からも、この作品は、人間の身勝手さと相まって、
自己の奥深く存在する嫌な部分を再確認することになり、
さらなる恐怖をかもし出すのだと思います。

ホラーを下敷きにした、親と子の映画でもあります。

■ハリウッド製作作品にありがちな、
派手な演出、効果音のみで驚かす訳では無く、
全体的に抑えがちな、控えめともとれる演出が功をなし、
良質のホラー映画に仕上がっています。
最初から最後まで、緊張感が途切れる事が無く、
観客はスクリーンに釘付けです。



ザ・ワン The One (2001) 公開(2002)
★★★ (ジェット・リー、カンフー度★★★★☆)
監督・脚本ジェームズ・ウォン
出演ジェット・リー、カーラ・グジーノ、デルロイ・リンドー

宇宙にある125のパラレルワールドに存在する「自分」を全て抹殺し、完全なるただ1人の自分『ザ・ワン』になろうとする男と、最後に残ったもう1人の自分との闘いを描く、
ジェット・リー主演による一風変ったSF・カンフーアクション。

『ザ・ワン』になろうとする悪のジェット・リーと、それを阻止すべく闘う善のジェット・リー、両方の魅力が存分に味わえてファンにとっては嬉しいところです。
特に、善と悪のカンフーの格闘スタイルが全く対照的で、同じ人物が演じているのに全くの別人の様にも思える程です。
確かに、これほどの武術を使えるのは、この世でジェット・リーしか居ません。
善は円を描くスタイル(八掛掌)、悪は直線的な動き(形意拳)を主体にしているそうです。
アクションの、特にカンフーの型の美しさは素晴らしいの一言です。
ワイヤーワーク・アクション、特殊効果など巧みに使い、斬新なアクション映画になりましたが、ファンとしては、そのままの武術による闘いを観たかったという欲も。
最初に125人のジェット・リーが何人か出てきましたが、あまりの陳腐ないでたちに思わずのけぞりそうになり、
善のジェット・リーが悪を追いかける時に、思わず手に取った服が偶然同じ服というのもかなり不思議でした(笑)

■ジェット・リーだけを見つめて居たい方、ジェット・リーのカンフーを思う存分楽しみたい方(2役でいつもの2倍見れてお得!)にお勧めです。



シャーロット・グレイ Charlotte Gray (2001) 公開(2002)
★★★☆
監督ジリアン・アームストロング
原作セバスティアン・フォークス
衣装ジャンティ・イエーツ
出演ケイト・ブランシェット、ビリー・クラダップ、マイケル・ガンボン

1943年、第二次世界大戦下のフランスが舞台。
ドイツによる占領下のフランス、
一人の英国女性が、愛する人を探す為、祖国を守る為に、危険を顧みず諜報員としてフランスに渡る戦争ドラマです。
レジスタンス運動に身を投じていく中で、新しい出会いと永遠の別れを体験し、新たな出発を始める女性の姿を描いています。

戦争を通じて、一人の女性のたくましく生きる姿を描いています。
シャーロット・グレイ(K・ブランシェット)が、レジスタンスの活動家ジュリアン(B・クラダップ)、その父ルベード(M・ガンボン)、ユダヤ人の兄弟たちとの出会いを通じて、自分の愚かさ、他者による裏切り、そして、今、自分が出来る最良のこと等を学んでいきます。
シャーロットの前向きに生きる姿、情熱的に愛する姿勢には、羨ましくも頼もしくもあり、今一度、自分の生き方について考えてみるよい機会になります。

■ケイト・ブランシェットの為にあるような映画です。
さらに美しくたくましく魅力的です。
戦時下におけるシャーロットの美しいファッションも見所です。



ジェイソンX 13日の金曜日 Jason-X (2002)
★★ (ジェイソン大暴れ★★★★)
監督・共同製作ジム・アイザック
出演ケイン・ホッダー

「13日の金曜日」シリーズ第10作目。
2455年の近未来を舞台に、逃げ場の無い宇宙船での惨劇を描くスプラッター・ホラー。

初期のサイコホラー的な雰囲気はすっかり消え失せています。
ひたすら惨殺、殺戮のオンパレードで、ファンにとっては嬉しいところ。
相変わらずのジェイソンなので、誰が生き残るか、何処から出てくるか、大体想像出来るので安心して観られます。
ラストは、またもや、生き返りを予感させる終わり方なので、
この先、無限に続くであろうジェイソン、どこまで続くか生暖かく見守りたい映画です(笑)

■もはやジェイソン・マニアのお方しか・・・
PG−12指定ですが、とんでもないです!同伴でも小学生以下のお子様には見せたくありません。



少林サッカー Shaolin Soccer 少林足球 (2001) 公開(2002)
★★★☆ (抱腹絶倒★★★★★)
監督・脚本・出演チャウ・シンチー
監督リーリクチー
出演リー・ヅーソォン、ウォン・ヤッフェイ、モー・メイリン

少林拳に熱意をかける男シン(チャウ・シンチー)が、あるきっかけでサッカーを始める事になり全国大会に向けて邁進する、抱腹絶倒のサッカー・アクション・コメディ。

超可笑しい、爆笑モノです!
まるで漫画を見ているような映画です。
ところどころハリウッド映画のパロディも散りばめられていてその辺りを見るのも面白いところです。
「ジュラシック・パーク」「マトリックス」・・・
そして何と言っても「死亡遊戯」でしょう。
ゴールキーパーのブルース・リーそっくりさんが、黄色のスーツを着て登場するとことは大笑いでした。
こういったサッカー・コメディ映画はあまり無いので、とても新鮮に感じられます。
全体的には、泥臭い感じは否めません。特にCGの使い方は、お粗末な感じがするのですが、それが案外狙いなのかも知れません。

■ただ、暴力描写が強すぎて、子供には見せたくないところも。
恋愛描写もカラリとして好感が持てるファミリー向けでもあるような映画なので、その辺りが少し残念です。



ジャスティス Hart's War (2001) 公開(2002)
★★★☆
監督グレゴリー・ホブリット
出演ブルース・ウィリス、コリン・ファレル

1944年、第二次世界大戦中のドイツ捕虜収容所で起きたアメリカ人殺人事件。
真相を追求すべく奔走する若き中尉が直面した事実を描く、戦争ヒューマンドラマ。

厳冬期のベルギー、アウクスブルグ郊外ドイツ軍捕虜収容所。
雪に覆われた情景はとても美しい。
と、共に、冒頭から始まる雪の中で行われる空襲シーンや銃撃戦、捕虜輸送シーンなどは、当時の過酷な状況が切実に伝わって来ます。
戦争映画にありがちな火薬の量や銃撃戦に比重を置いた作品では無く、むしろ少ないと思われる演出です。
雪の白い背景と、戦場のダークな色調の対比が、さらに美しさと過酷さ、リアリティをかもし出してします。
ストーリーは、黒人兵への差別を絡ませた法廷劇と、それを巧みに利用した脱走劇からなります。
親の庇護の下、常に安全な位置にいた若き中尉が、過酷な捕虜の体験と黒人兵の差別問題を通じて、物事の本質を求め、成長していく様子を描いています。

極限状態における人間の究極の選択は、個人の正義を守ろうとする思いと、個人を犠牲にしても多数を救おうとする思い。
それぞれの人間の生き方を問う、心の葛藤を描いた作品です。
ラスト、2人が下した究極の決断に、観ている者は感動し涙が止まりません。

■減量したと思われるブルース・ウィリスに注目!・・・こけた頬、刻んだしわなど、かなりの減量をしたに違いなく、それなりに雰囲気出ていて良し。
殺人事件の謎解き要素もあり、ミステリー・サスペンスといったところも。



スター・ウォーズ・エピソード2/クローンの攻撃 (2002)
Star Wars : Episode 2 - Attack of the Clones
★★★★
監督・脚本ジョージ・ルーカス
出演ユアン・マグレガー、ナタリー・ポートマン、ヘイデン・クリステンセン、クリストファー・リー、サミュエル・L・ジャクソン

前作「エピソード1」から10年の時を経た設定であり、
今回は、アナキン・スカイウォーカーとパドメ・アミダラ元老院議員との禁断の愛、そして、銀河元老院に渦巻く陰謀、遂にはクローン軍団との闘いに突入するストーリー展開です。

さらなるスピーディなアクションとCGの洪水に、観客は興奮し、2時間22分はあっという間に終わりました。
アナキンが時折見せるダークな表情と苦悩する姿は、暗黒面へと落ちる伏線を予想させ、また、旧3部作へと続く唐突な終わり方も、今後の展開を期待させ楽しみです。
製作者の労力と、膨大な費用を思うと、拍手喝采を送りたくなる素晴らしい出来栄えです。

■戦闘シーンも迫力あるのですが過激では無く、2人の恋愛もさらりと描いてある為、比較的ファミリーでも安心して観れるSFスペクタル映画です。



ストーリーテリング Storytelling (2001) 公開(2002)
★★★☆
監督・脚本トッド・ソロンズ
出演ジョン・グッドマン、セルマ・ブレア、マーク・ウェバー

米ニュージャージ州を舞台に、
2つの物語「フィクション」「ノンフィクション」からなる2部構成で描く、
超過激なブラック・コメディ。

「フィクション」は、80年代の小説家志望の女子大生を主人公に、
障害者(CP=小児脳性麻痺)の彼と黒人教授との関係を
人種差別、障害を絡めて描く問題作です。
「ノンフィクション」は、郊外の裕福なユダヤ系家族が舞台。
あるアマチュア監督が、家族のドキュメンタリー映画を撮る過程に沿って、
次々と家族に不幸が降りかかる悲惨な出来事を描いています。
富める者とそうでない者との階層、セクシュアリティ、家族のジレンマ等・・・
素人監督による平凡なドキュメンタリー映画に終わる所が、
家族の不幸によって、大ヒットになる皮肉を描いています。

■普通の常識人なら、触れたくないタブーを、赤裸々に描いています。
表面上の危ない描写だけにとらわれず、
底辺に流れる意味も考えさせられる、実は奥深い映画です。



スパイダーパニック! (2002) 公開(2002)
Eight Legged Freaks
★★★ (痛快!B級度 ★★★★)
監督エロリー・エルカイェム
製作総指揮ローランド・エメリッヒ他
出演ディビッド・アークエット、カーリ・ワーラー、スコット・テラ、ダグ・E・ダグ、スカーレット・ヨハンソン

有毒廃棄物によりクモが巨大化し、次々と人々を襲うパニック・コメディ映画。

50年代のパニック映画の雰囲気を感じさせます。
パニック映画にコメディの要素を加味し、作り手も楽しみながら作っているようです。
昔ながらのパニック映画に、最新のVFX駆使したクモの演出(クモの動きやスピード、数の多さや大きさ)には驚かされます。
観ている者は、ストーリーの展開、ラストは大体予想が付きますが、
驚きと大爆笑の連続で飽きさせません。
観た後も、可笑しさと共にある種の清々しさを感じることが出来ます。

※生物(クモ)が、巨大化する原因が、有毒廃棄物というよくある設定がニクイです。
数々のお約束が守られてるのが、嬉しいところ。
以下、チラシより『ネオ・パニック映画7箇条』
 □田舎町(乾燥地帯、もしくは寂びれた町)が望ましい
 □地元の権力者は犠牲者になることが望ましい
 □主人公は一匹狼的な存在がよい
 □主人公の理解者は少ない方がよい
 □その理解者は女性が望ましい
 □巨大生物には謎の有毒物質
 □解決策には単純な方がよい
・・・すべて守られていて、かなり可笑しいです。

■お約束の古典的パニック・ムービーです。
B級映画としては、なかなかの出来栄えです。
ただ単純に驚き、バカバカしく笑いたい方向き。



スパイダーマン Spider-Man (2002)
★★★☆ (ウィレム・デフォーぶっ飛び度★★★★)
監督サム・ライミ
出演トビー・マグワイア、ウィレム・デフォー、キルステン・ダンスト

アメリカの超人気コミックの映画化。

スパイダーマンのスピーディな動き、CGが上手く使われていて、かなり楽しめます。
T・マグワイアが繊細な演技を見せつつ、優しさと強さ、正義感を持ったヒーローを演じており、冴えない生真面目な高校生が一転して、超人のヒーローになるというギャップが良かったです。
普通の高校生が、悩みながらもヒーローになっていく過程や、幼馴染に恋をしているさまは、青春映画といったところも。
また、W・デフォーの悪役演技にも注目!
デフォー、楽しみながら演じている様にも思える鮮やかな悪人振りは、この映画には無くてなりません!
ラストは続編を思わせる終わり方でしたので、今後も楽しみなところです。

■「スパイダーマン」特有の蜘蛛的アクションを楽しみたい方、ウィレム・デフォーのファンの方には外せない一品です。



セレンディピティ Serendipity (2001) 公開(2002)
★★★
監督ピーター・チェルソム
出演ジョン・キューザック、ケイト・ベッキンセイル

ニューヨークを舞台に、
お互い惹かれ合いながらも分かれてしまった2人の男女が、
数年の時を経て再び巡り合うラブ・ロマンス映画。

タイトルは、『幸せな偶然』という意味だそうです。
偶然が何度も重なり合って進行して行くストーリー運びに、
観客はかすかな疑問を持ちながらも、
2人の新鮮な顔合わせと演技に、ぐいぐいと引き込まれて行きます。

『運命』をテーマに据えたラブ・ロマンス映画です。
実際に運命は存在するのかどうか分かりませんが、
本作品においては、
2人の心の奥底の運命を信じる力が、運命を作り出したとも言えます。
近年に見られがちな安易な恋愛の形とは違い、
愛を得ろうと、情けない位に駆けずり回り努力する2人を見て、
観ている者は、忘れかけていた愛の意思の強さを思い出し、
2人の愛の行方を見守りたくなります。

■予定調和のラブ・ロマンス映画です。
軽く、明るいコメディのラブ・ストーリーを楽しみたい方にお勧め。
ニューヨークを舞台にした、2人のファッションも見所あり。



タイムマシン The Time Machine (2002)
★★★ 
監督サイモン・ウェルズ
原作H・G・ウェルズ
出演ガイ・ピアース、サマンサ・マンバ、ジェレミー・アイアンズ

監督は、原作者の曾孫であるサイモン・ウェルズ監督。

たとえ過去に戻ることが出来ても、人間の死する運命は変えることが出来ないという真理が受け取れます。
未来を決めるのは個々の個人であると共に、今の不幸な状況を変えて未来に繋げて行けるのも、また個人の行動であるという事もメッセージに含まれています。
時間の移り変わりを表わす描写は、鮮やかなCGに彩られ自然の壮大さや美しさを感じました。
ヴィクトリア調のタイムマシンも美しい凝ったデザインで、かなり斬新的です。
ただ、時間旅行をするタイムマシンが故障も無く、いとも簡単に動き回るのはリアリティがないような気も。
主人公アレクサンダー(G・ピアース)の恋人への想いも途中で消滅してしまい、いつのまにかマーラ(S・マンバ)に移行していて、中途半端な感じを受け、
80万年後の原始社会の描写、格闘シーン共に、演出に今ひとつのような感を受けました。
ラスト、地下の支配者ウーバー・モーロック(J・アイアンズ)が話す哲学的な内容は重みがありそれなりに良かったのですが、
ただ、存在自体が謎で、ロック野郎のようないでたちも不思議な味わいが(笑)

全体的に、ストーリーが前半と後半が分断しているような印象でした。
監督が意図したようなメッセージが伝わってこないまま終わってしまい、壮大なテーマなのに余韻もあまり残らず、少し残念でした。

■CG描写による演出や、格闘シーン、恋愛描写等、それほど過激では無いので、小学生高学年でもOKです。



ダーク・ブルー Dark Blue World (2001) 公開(2002)
★★★☆
監督ヤン・スヴィエラーク
出演オンドジェイ・ヴェトヒー、タラ・フィッツジェラルド

2001年、チェコ国内で記録的大ヒットとなった本作は、
2002年度アカデミー賞チェコ代表にも選ばれています。

第二次世界大戦後の共産主義政権下のチェコスロバキアが舞台です。
祖国の為に戦ったチェコ空軍のパイロットが政治体制の変化により、
収容所に入れられ、強制労働を強いられた過酷な10年間の日々。
ドイツ空軍との戦闘機による空中戦、
愛する女性と、部下であるパイロットとの友情の回想シーンを交え、
フラッシュバックしながら描いた戦争ドラマです。

ドイツ軍のチェコ侵略の過程を、
チェコ側の空軍パイロットの心情から見た視点で描かれています。
収容所内の診療所での人間模様、上司と部下の関係など、
誰が善で悪であるという単純な設定になっていない所が、
よくある小手先だけの人間像になってなく好感が持てます。

収容所に入れられたフランタ(O・ヴェトヒー)が、
過酷な日々に絶えながらも決して絶望に明け暮れず、
ラスト、教会を改造した作業所の窓から空を見上げるシーンは、
遠い日々と、この世を去った同士への想いが伝わって来ます。
ラストの戦闘機が並んで飛ぶ幻想的なシーンは、
この作品に対する作り手の想い全てが込められているようで、
観ている者に、いつまでも心に残り、
思わず涙がこぼれそうになる程の余韻を残すシーンです。

戦争に翻弄されたパイロット達の運命を、
重くなりがちな題材を微塵も感じさせず、
製作者の思いが込められた丁寧な演出により、
温かい感動と、
深みのある反戦メッセージの込められた作品となっています。

■スタジオジブリ提供作品です。
だからという訳ではありませんが、
「紅の豚」を感じさせる叙情的な雰囲気があります。
戦闘機が大空を駆け抜ける空中戦は、圧巻です。
ある意味、牧歌的ともとれる戦争シーンです。



ダウン Down (2001) 公開(2002)
★★☆
監督ディック・マース
出演ジェームズ・マーシャル、ナオミ・ワッツ

マンハッタンにある超高速ハイテクビル『ミレニアム・ビル』を舞台に、
エレベーターが起こす不可解な事件の謎を解くサスペンス・ホラー。

最新鋭のエレベーターが自分で意思を持ち人々を襲う・・・
と、いった斬新なアイデアとショッキングなシーンの連続です。
前半は、ホラー色が濃いサスペンス、
後半は一転して、アクション映画といった趣が。
前半の徐々に忍び寄る恐怖が惨劇に変わる演出と、所々にはさまれたユーモアの妙が可笑しいです。
ハイテクビルに古めかしさを感じさせるエレベーターは、ある種の違和感を感じさせ、また存在感をも強調しています。

■まさにB級サスペンス・ホラーの王道を行く映画です。
下手な思惑を入れない、その心意気は見事。
ストーリーは不可思議な点が多々あります。



チョコレート Monster's Ball (2001) 公開(2002)
★★★★☆
監督マーク・フォスター脚本ミロ・アディカ、ウィル・ロコス
出演ハル・ベリー、ビリー・ボブ・ソーントン、ヒース・レジャー

2002年 第74回アカデミー賞 最優秀主演女優賞 受賞作品。(ハル・ベリー)
その他、多数の賞を受賞した話題作。

自らの態度が招いた結果、息子を失って悔恨の日々を送る人種差別主義者の白人男性ハンク(ビリー・ボブ・ソーントン)と、死刑囚の夫と息子を失った薄幸の黒人女性レティシア(ハル・ベリー)。
身内の死の重荷に耐え絶望に陥っている2人は、お互いに惹かれあう・・・
自らの差別的生き方に疑問を抱いた男が、人種を超えた愛に巡り合う愛のドラマ。

内容的には、かなり過激的なのですが、淡々とした演出、ストーリー展開によって、全体的に静かな作品になっています。
夫である死刑囚の執行シーン、息子の自殺、交通事故死、そして人種差別・・・普通なら、仰々しくなりそうな要素ですが、深い悲しみを沈ませた演出となっています。
そして、
登場人物全てが、孤独で心に何かしら重荷を持っています。
それを、いたるところで、上手く表現しています。
男所帯の殺伐した感のある家、立ち退きを迫られている女性の家、男の無表情の中にある悲しみと苦悩、寂しげな後ろ姿・・・
間合いを置いた、少し距離を置いた撮り方が、深い悲しみをかもし出しています。
2人の結ばれるシーンも、激しさの中にも2人の乾いた心を補うような、そんな感じがします。
ラストで、レティシアが秘密を知ってしまった時の不安に満ちた猜疑心の表情、困惑の中にも希望を持とうとする表情・・・ハル・ベルーの素晴らしい演技でした。
2人の行く末に、かすかな光が見えるようです。
また、ビリー・ボブ・ソーントンの演技もまた、空虚な男の悲しみ、嘆きを上手く表現し、オスカーを受賞しても良いような納得いく演技でした。

この映画は、『人種を超えた愛』というテーマと共に、男と女の『微妙な間合い』、『心のあや』を上手く表現した作品だと思います。

■内容的には衝撃的ですが、静的な映画なので、大作にありがちな展開を求めている方は、肩透かしをくらうかも知れません。
人生について考えてみたくなる大人の男性女性に、是非、観て頂きたい作品です。
バックの音楽もギターがさり気に良かったです。
R−18指定。



月のひつじ The Dish (2000) 公開(2002)
★★★ 
監督・脚本ロブ・シッチ
脚本サント・シラウロ、トム・グレイスナー、ジェーン・ケネディ
出演サム・ニール、ケヴィン・ハリントン

1969年7月、急きょ、アポロ11号の月面歩行を中継する事になったオーストラリア、パークスにあるパラボナアンテナ。
羊しかいない片田舎に立つアンテナが重大な任務を負う事になり、町の人々は大騒ぎ。
アメリカ大使やオーストラリア首相が訪問する中、天文台では、停電、強風とトラブルが発生、アメリカと地元の技術者とのあつれき、重大任務のプレッシャー・・・それらを乗り越え偉業を成し遂げた、事実を元にした心温まるドラマです。

4人の技術者、その他登場人物がそれぞれ個性的で楽しいです。
町の名誉とささやかな野心を持つ町長。
町長を取り巻く人物に、アポロ打ち上げに批判的な娘、父よりアポロの事が詳しい息子、おしゃべりな楽しい妻。
紳士的なアメリカ大使、コワモテのオーストラリア首相。
それぞれのキャラクターを、ウィットに富んだちょっと外しがちなギャグと共に、さりげなく紹介しているところが好感持てます。
アンテナを操作するオーストラリア人とアメリカ人のちぐはぐな意識が、次第に良い関係になって行く過程も良かったです。
オーストラリアののんびりした風土と、大らかな町の人々、陰で奮闘した技術者達、素朴なオーストラリア人の温かみが伝わって来ました。
何と言っても、アポロ打ち上げに際して、陰の立役者があったことを初めて知りました。

※強風によってアンテナが破損する恐れがあった事は事実ですが、停電はフィクションです。

■オーストラリアの壮大な地に住む、大らかな人々に触れてみたい方、ほんの〜りとホットな気持ちになりたい方にお勧めです。



天使の口、終り楽園。 (2001) 公開(2002)
Y tu mama tambien
★★★★
監督・脚本アルホォンソ・キュアロン
出演ガエル・ガルシア・ベルナル、マリベル・ベルドゥー、ディエゴ・ルナ

2002年、ゴールデングローブ賞 最優勝外国語映画賞ノミネート。
その他、多数受賞していますが、
2001年のヴェネチア国際映画祭でガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナ(=主役2人)が最優秀新人賞を受賞しています。

青春時代の、ひと夏のほろ苦い体験を描くロードムービー。
行くアテも無く架空のビーチに向って、ひたすら走る車。
メキシコの郊外から海岸へと向う道を、じりじりと照らす太陽の下、流れるメキシコの景色はとても鮮やかです。
この作品のテーマであるのは、『生きる』でしょうか。
人生の重みをも知らずにセックスを楽しみ過ごす日々の少年達が、旅によって、少年から大人に変わって行く様子を描いています。
ラストは、2人は別々の道を歩んで行くことになりますが、
輝いていた青春の一区切りは、何とも切ないです。
また、共に行動した女性は、病魔によって余命少ない人生を自己を発見する旅、生きている今を再確認する旅ともなり、最後に生をまっとうして死んで行きます。
流れ行く時間の中で、それぞれのかけがえのない人生を、いとおしく、パワフルに愛情もって描いたノスタルジーあふれる作品となっています。
異色な!?ナレーションも作品を際立たせています。

■メキシコの熱い太陽の下、ロードムービーを楽しみたい方、ほろ苦い青春の一コマに触れたい方にもお勧めです。
R−15指定。
ラブシーンはかなり多いですが、あけっぴろげで嫌らしさがないです。



ディナーラッシュ Dinner Rush (2000) 公開(2002)
★★★★ (美味しい伊料理★★★★☆)
監督ボブ・ジラルディ
出演ダニー・アイエロ、エドアルド・バレリーニ

ニューヨークの人気イタリアン・レストラン『ジジーノ』」を舞台に繰り広げられる一夜の出来事を描くサスペンス・ドラマ。
監督が経営する実在のレストラン『ジジーノ』で撮影されています。

レストランの経営者である父とシェフである息子の経営権を巡っての確執、スタッフ同士の恋愛模様、店の乗っ取りを企むヤクザとの駆け引き、
店のスタッフとお客の人間模様を絡めて、レストランの一夜の模様を描いています。
個性豊かな登場人物と平行して、
戦場さながらのキッチン内部の様子を、流れるように映像が駆け抜けて行きます。
テンポの良いスピード感あふれるカメラワークで捉えていて、
観ている者もその場にいるような臨場感、緊張感にとらわれます。
映画に、矢継ぎ早に登場する数々の料理の美しさ、
シェフが作りだす料理には、食欲をそそられ感嘆します。
映画と音楽が上手くマッチしていて印象的。

■美味しい料理と、人間模様、はたまた殺人事件まで、そんな欲張りな貴方にぴったり。
ハラペコで行くとさらに良いでしょう・・・観た後は、イタリアン・レストランに直行です。



デュラス 愛の最終章 Cet Amour-la (2001) 公開(2002)
★★★
監督・脚本ジョゼ・ダヤン
原作ヤン・アンドレア
出演ジャンヌ・モロー、エーメリック・ドゥマリニー、タニア・ロペール

ベストセラー作家マルグリット・デュラスの晩年、
38歳年下の愛人と過ごした16年間の愛の日々を綴ったラブストーリーです。

デュラスの大ファンであるヤン・アンドレアが、彼女の家を訪問した事から始まる愛の生活を描いています。
デュラスがヤンを独占しようとする気持ちと作家である自信の表れ、
時として、ふと襲いかかる不安な気持ち・・・
ヤンもまた、彼女を愛しながらも、時には耐え切れない思いに陥いる複雑な気持ち・・・
さまざまな感情が交差しながらも、 デュラスという優れた作家に焦点を据えつつ、
2人の歩んだ16年間の愛の軌跡を再現しています。

デュラス役のJ・モローは、まさに彼女の為にあるようなキャスティングです。
また、A・ドゥマリニーは、ヤン役を、映画初出演ながらも優しさと繊細さを持ち合わせた演技で見事に表現しています。

■愛し、愛されたいという気持ちはいつまでも誰の心にも存在します。
年齢を超えた2人の愛の形・・・
そして、意外と知れてないデュラスの不眠症とアルコール中毒症との闘い。
死を恐れ立ち向かい、命ある限り作家として全うしようとする日々・・・
マグリット・デュラスの半生を知りうる映画でもあります。



トリプルX XXX (2002)
★★★☆
監督ロブ・コーエン
出演ヴィン・ディーゼル、サミュエル・L・ジャクソン、アーシア・アルジェント

エクストリーム・スポーツのカリスマである命知らずの男が、
国家安全保障局(NSA)の目に留まり、
シークッレット・エージェントに任命され、犯罪集団に立ち向かう・・・
痛快スパイ・アクション映画。

最初から最後まで、スリリングかつハイテンションに進行し、
可能なまでのアクションを見せてくれます。
現実に違和感無い程の瀬戸際のアクショを、
最高の映像技術で、
スポーツをベースにしたアクションで繰り広げられます。
特に、大迫力の雪崩のシーンは、
スクリーンに雪崩れ込んで迫り来る迫力と、スピード感に圧倒されます。

V・ディーゼルのカリスマ性と、鍛えられた体に、
派手なアクションが上手く溶け込んでいます。
スクリーンを所狭しと暴れまくる活躍には、爽快さと新鮮さを感じます。
サミュエル・L・ジャクソンにおいては、真面目に演技すればするほど、
真面目な表情の中にある種のとぼけた雰囲気が出てきて、
観ている者は、安堵し笑いを誘います。

「007シリーズ」を連想させる展開ですが、
単なる模倣では無く、新たなヒーローの誕生とみたいです。

■主人公は絶対死ないと、妙に安心して観れるところが嬉しい♪
ヴィン・ディーゼルの素敵な笑顔に貴方も虜になります。
エンド・クレジットも最後まで楽しみたいところです。



ニューヨークの恋人 Kate & Leopold (2001) 公開(2002)
★★★ 
監督・脚本ジェームズ・マンゴールド
出演メグ・ライアン、ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー

ニューヨークを舞台に、時空を超えてタイムスリップしてきた19世紀の公爵と21世紀の現代のキャリアウーマンとの恋を描いたロマンチック・コメディ。

2人の織りなす恋愛劇が、タイムスリップという設定の中でも無理なく自然な形で描かれています。
周囲の脇役の役割設定が上手く作用しており、
ケイト(M・ライアン)の弟、上司、元の恋人など周囲の人物と、公爵であるレオポルド(H・ジャックマン)との絡みが自然で上手く溶け込んでいます。
場面設定も、ブルックリン・ブリッジの時計台、エレベーター、マンションの屋上など上手く演出されていてます。
バイオリンのBGMをバックに、夜のマンションの屋上での食事&ダンス・・・など、素敵な繊細な演出が功を無し、誰もが見ても楽しめる恋愛映画になっています。
日々の生活に追い立てられて忘れがちな『愛』を思い出させる、大人の為のファンタジーでもあります。
ただ、ケイトのキャリアの上昇志向と公爵との恋が曖昧で、
2人の別れ方もあっさりしていたので、愛する人を失う悲しさが感じられず、ラストに深みが出なかったのが残念です。

■ラブ・コメディの王道、メグ・ライアンがお好きな方に。



ハリー・ポッターと秘密の部屋 (2002)
Harry Potter and the Chamber of Secrets
★★★☆
監督クリス・コロンバス
出演ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ケネス・ブラナー、リチャード・ハリス、マギー・スミス

「ハリー・ポッターと賢者の石」の第2弾。

前作は登場人物と場面設定等の説明的な部分が多かったので、慌しさ感は拭えませんでしたが、
今回は物語に重点を置けた為、以前より増して物語に深みが出て、より一層楽しめる作品になりました。

重厚な作りのセットは相変わらず気品に満ち溢あふれていて美しく、
衣装、小物に至るまで一つ一つが芸術品です。
やや暗めの照明が、古典的な世界を浮かび上がらせています。

■一人でコメディしているケネス・ブラナーは、かなり見もの。
エンドロールの後にも、ストーリーは続くので途中で席を立たぬようご注意。



バイオハザード Resident Evil (2002)
★★★
監督ポール・アンダーソン
出演ミラ・ジョヴォヴィッチ、ミシェル・ロドリゲス

人気ゲームソフト『バイオハザード』の映画化。

最初から最後まで、スピーディーな展開で目が離せません。
特に、扉が閉まるという時間制限があるので、さらに緊張感が続きました。
ストーリー展開が上手く、
冒頭からの研究所の謎から始まり、ゾンビ、モンスターとの遭遇と、謎解きとバイオレンスとの連続で観ていて飽きません。
特に、映像と効果音は映画を上手く引き出させていました。
研究所内の無機質な風景がさらに恐怖感を増し、明るすぎるライトと停電、陰影のとり方も恐さを感じさせる一つです。
ホラー・アクションとしては、久し振りに見応えある作品です。

■PG−12指定です。
しかしながら、小学生以下のお子様には見せたくない映画です。
ゲームしない人にでも全く分かり易い内容なので、ゲームを体験してない方にもお勧めです。
ゲームする方も、映画と比較するのも楽しいところ。



バニラ・スカイ Vanilla Sky (2001) 公開(2002)
★★★☆
監督・脚本キャメロン・クロウ
出演トム・クルーズ、ペネロペ・クルス、カート・ラッセル、キャメロン・ディアス

スペイン映画「オープン・ユア・アイズ」のリメイク版である
ミステリー・ロマンス映画。

ストーリーが入り組んでいるので、再度確認して確認してみたい映画です。

■トム・クルーズ&ペネロペ・クルスのファンの方に。



バルニーのちょっとした心配事 (2000) 公開(2002)
Barnie et ses petites contrarietes
★★★☆
監督・脚本ブュリノ・シッシュ
出演ファブリス・ルキーニ、ナタリー・バイ、マリー・ジラン、
   ヒューゴ・スピア

フランスの港町カレーに住む会社員(F・ルキーニ)は、ロンドンの会社まで、毎日高速列車で通勤している愛すべき家庭人。
彼は、若き美しい女性と同性愛者の2人の愛人を持ち、気ままに暮らしている毎日ですが、
ある日、誕生日のお祝いが妻と愛人2人が同じ『ヴェニス行きオリエント急行のチケット』だった事からハプニングが起き始め・・・

F・ルキーニの、周囲の行動に振り回されつつも、
飄々とした演技で切り抜けていくさまは、
観る者に、ある種の爽快感と可笑しさを与えてくれます。
脇を固める妻(N・バイ)、若くてキュートな愛人(M・ジラン)、
ハンサムな男(F・スピア)も、
それぞれさらりとした嫌味の無い演技で好感が持てます。

最近よく有りがちな、刺激を求めるコメディとは一線を引き、
あるきっかけで、坂道を転がるように事態が急変して行くさまを、
人と人との対話の妙で、可笑しく楽しませてくれます。

■フランスのエプスリの効いた楽しいコメディです。
知的な大人の方にこそ、是非、観て欲しい作品。



パニック・ルーム Panic Room (2002)
★★★
監督デイヴィッド・フィンチャー
脚本デイヴュッド・コープ
出演ジョディ・フォスター、クリステン・スチュワート

3人組の強盗が押し入り、パニック・ルームなる隠し部屋に身を潜めた母と娘。
侵入者と2人の親子の攻防を描く『密室モノ』のサスペンス映画です。

とてもシンプルな映画です。
追い詰められたヒロインである母親が娘を守る為、反撃に出ます。
人物を追いかけて階段を流れるように撮る映像など、デヴィット・フィンチャー監督の独特のカメラワークで、全体的に映像もシンプルな感じでした。
冒頭から20分位が特に、これから起きるであろう事件を期待させてくれます。
母親役であるJ・フォスターが娘を守る為、必死に闘う姿が良かったです。
娘役のK・スチュワートも、病気を患いながらも必死に堪える演技に好感が持てます。

全体的に小気味良く収まっており、それなりに密室と外の強盗との攻防戦はハラハラさせらて、良くまとまった佳作といった感じがしますが、
それ以上のモノは感じられず物足りなさもあります。
良くも悪くも普通の映画といった感じです。
犯人、亡くなった富豪、離婚した父など、人物像を掘り下げて切れておらず、あっさりし過ぎて物足りなさを感じます。
オープニングのタイトルロールが粋でオシャレ。

■手堅い正統派サスペンスをお望みの方に。



人妻 Forever Mine (1999) 公開(2002)
★★☆ (不倫★★★☆)
監督・脚本ポール・シュレイダー
出演ジョセフ・ファインズ、レイ・リオッタ、グレチェン・モル

若く情熱的な青年アラン(J・ファインズ)と、美しい人妻エラ(G・モル)との燃え上がるような愛、そしてエラの夫マーク(R・リオッタ)の嫉妬と陰謀・・・欲望渦巻く3人の愛憎劇を描いたラブ・サスペンスドラマ。

愛してはいけない人を愛してしまった苦悩を、J・ファインズが、持ち前のキャラクターで鬱積した演技を見せています。
人妻エラを演ずるG・モルは美しく、初々しい人妻を可憐に華やかに演出しています。
そして何と言っても、身体の線の美しさ。
浜辺から上がった白い水着のエラは、とっても官能的で美しいです。
夫以外の人を愛してしまった苦しみと後悔に似た気持ちを、愛してはいけないと知りつつ心惹かれてしまう気持ちを、繊細に演じています。
妻を奪われて嫉妬に狂う夫マーク役を演じるR・リオッタは、これまたツボにはまった役柄です。
70年代初頭と思われるフロリダの豪華なリゾート地の雰囲気も、映画と上手くマッチしていて、
愛する人と巡り合えて、また再び愛し合える事の喜び、永遠に続く愛が伝わって来くるような映画でした。

ただ、ストーリー的には、ご都合主義な点が気になるところです。
ただの学生だったアランが、13年後にはいきなり財政界も一目置く陰の大物実力者になっていたり、
アランがエラとマークの前に現れた時も、顔右半分を整形しているとはいえ、全く気が付かないというのも、かなりの疑問です。

■R−15指定ですが、濃厚なラブシーンも少なく、よくあるラブロマンス映画といった感じがします。
ひと時の、許されない愛に浸りたい方にお薦めです。



ビューティフル・マインド A Beautiful Mind (2001) 公開(2002)
★★★★☆ (E・ハリス素敵度★★★☆)
監督ロン・ハワード
原作シルヴィア・ネイサー
出演エド・ハリス、ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、クリストファー・プラマー

ノーベル経済学賞に輝いた実在する天才数学者ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュニアの数奇な人生を描くヒューマンドラマ。

天才数学者ナッシュの苦悩に満ちた人生、彼の長い人生を、2時間16分という時間で一気に見せ、途中、中だるみを全く感じさせません。
正常と狂気、二つの精神と葛藤しながらも、自らを受け入れて真実を探そうとする彼の人生を、R・クロウは違和感無く自然に演じています。
脇役のC・プラマーも忘れてはならない存在で、作品にさりげなく深みを与えています。
妻役のJ・コネリーも、精神病を抱える彼に絶望しながらも支えて行こうとする妻の愛を上手く表現しています。
ラスト、食堂にて、教授達全員による敬意を表すシーンでは、(自分のペンをテーブルに置いていく)、涙しました。
観終わった後、静かに感動と、切なくなるほどの余韻を残す素晴らしい映画です。
精神分裂症という病を抱えながらも、彼を招き入れ、また周囲の人も普通の様に認識してくれるアメリカに敬意を表します。

E・ハリスは、ナッシュの幻想の産物−国防省の諜報員パーチャーを演じています。
不気味な雰囲気を漂わせながら、常にナッシュに影の様にまとわり付くその様は、さすがにベテラン俳優、安定した上手い演技です。

■感動のドラマを是非、貴方にも観て頂きたい素晴らしい作品です。



フレイルティー・妄執 Frailty (2001)
★★★☆
監督ビル・パクストン
出演ビル・パクストン、マシュー・マコノヒー

2001年11月、アメリカの小さな映画祭に出品させられた本作は、
低予算ながらもそのショッキングな内容から数々の反響を呼び、
サム・ライミ、ジェームズ・キャメロン等大物映画監督達の賞賛を得て、
全世界に向けて配給になりました。

米テキサス州で発生した連続殺人事件の真相は、
フェントン(M・マコノヒー)による回想シーンから恐怖の物語から始まります。
1979年の夏、神の声の命令に従い次々と連続殺人を犯す父と、
それを手助けしていた子供2人の体験を通して描くホラー・サスペンス。

VFX、CGなどの特殊効果は一切使わず、直接的な惨殺シーンによる表現を避け、イメージ的描写のみで演出してる部分と、
父(B・パクストン)の異常な行動に対する疑惑が謎を呼び、
さらなる恐怖感を作り出す事に成功しています。

B・パクストンの狂信的な異常な行動と、
M・マコノヒーのうつろな生気の無い表情には、
鬼気迫る精神的な怖さが見え隠れしていて、秀逸な演技力がうかがえます。

寂れた田舎街の風景も、ある種の怖さを漂わせています。

■数少ないビル・パクストンのファンの貴方へ!
オカルト、スプラッターに属さない、ある種の精神的恐怖を味わいたい方へお勧めします。



フロム・ヘル From Hell (2001) 公開(2002)
★★★
監督アレン&アルバートヒューズ
出演ジョニー・デップ、ヘザー・グレアム、イアン・ホルム

1988年、伝説の殺人鬼切り裂きジャックによる猟奇殺人事件を追う捜査官の苦悩を描くホラー・サスペンス。

王室のスキャンダル、フリーメイソンによる隠蔽工作など、ノンフィクション?と思わせる脚色でストーリーは展開します。
全般に漂うダークな映像は、ロンドンのスラム街の混沌とした様子が上手く表れています。
J・デップは、「スリーピー・ホロウ」「ナインス・ゲート」を思わせる捜査官、探偵等が実に良く似合います。
今回は、コミカルな感じは全く無く、悲壮感が漂っていた演技で、また魅力的です。

ただ、H・グレアム扮する娼婦は(ヒロインだから仕方ないにしても)貧乏娼婦の中で彼女だけ服も髪も綺麗で美しかった事が摩訶不思議です。
アバーライン警部(J・デップ)は、幻視して事件を解決するという素晴らしい超能力を持ちながらも全く発揮しておらず、娼婦は殆んど殺され、ジャックはフリーメイソンの手によって廃人になるという、事件は何も解決もしていないという不思議な警部(笑)

■切り裂きジャックによる血しぶき飛び散る血生臭い場面は、心臓の弱い方はご用心。



ブラッド・ワーク Blood Work (2002)
★★☆
監督クリント・イーストウッド
原作マイケル・コナリー
出演クリント・イーストウッド、ジェフ・ダニエルズ

原作は、犯罪記者出身の推理小説家マイケル・コナリーの『わが心臓の痛み』であり、
アンソニー賞、マカヴィティ賞、フランス推理小説大賞を受賞した、全米110万部突破のベストセラー小説です。

元FBI心理捜査官と猟奇奇的殺人鬼との駆け引きを、脳死による心臓移植といった要素を絡めた、サイコ・サスペンス映画です。

正攻法なサスペンスドラマです。
ストーリー展開も、演出もそつなく手堅くまとめています。
ただ、あまりにも無難すぎて面白みに欠けるのも事実。
ストーリー的には、観ている者には最初の方で犯人が特定出来ます。
事件の全貌を解明していく捜査段階でも、ある程度こちらで推理出来てしまいます。
特に凝った演出で見せる訳では無いので、、ただ時間が過ぎていく感じは否めません。

■クリント・イーストウッド、ファンの方!
70代の老練な演技に注目!
ファッションもイーストウッドが着ると何故だか素敵に見えます♪



ブレイド2 BladeU(2002)
★★★☆
監督ギレルモ・デル・トロ
出演ウェズリ-・スナイプス、クリス・クリストファーソン、ロン・パールマン、ノー、マン・リーダス、ドニー・イェン

ヴァンパイアと人間の混血であるヴァンパイア・ハンター=ブレイドの活躍を描いた前作「ブレイド」の続編。アクション・ホラー映画。
前作は、ヴァンパイア・ハンターであるブレイドvsヴァンパイア一族の対決でしたが、今回は、ブレイドとヴァンパイア族が手を組み、新型ヴァンパイア死神族(リーバーズ)を撃退する設定です。

CG、映像共、前作よりかなりパワーアップしています。
映像美も凝りに凝っています。
特に細部のディテールに凝っており、倉庫、地下道、そしてヴァンパイア達の夜の饗宴などは圧巻です。
敵をバッタバッタ倒していくブレイドに、観客は興奮し、やがて共感、同化し、最後には爽快感を味わえます。
ストーリー的には、中盤以降、話を盛り込みすぎて散漫になっているような感じは否めません。
総評すると、ストーリーも、映像も、音響もパワーアップし、グロテスクなヴァンパイア死神族の特殊メイクも凄いですが、
後には何も残らないので、刺激さを求める人向きかと思います。

リオノア・ヴァレラは、エキゾチックで美しい女性です。髪をまとめた姿の方がとても素敵。
ドニー・イェンのアクションのシーンが少ないのが残念。

■刺激を求めている方、日ごろストレスが溜まり発散したい方にお勧めです。
グロテスクなシーンがあるので、お子様向きではありません。



プロフェシー The Mothman Prophecies (2002)
★★☆
監督マーク・ペリントン
出演リチャード・ギア、ローラ・リニー

ウェスト・バージニア州ポイントプレザントにおいて、
実際起こった超常現象を元にしたサスペンス・ミステリー。
ワシントン・ポストの敏腕記者であるジョン(R・ギア)は、
最愛の妻を亡くした原因は、
ある種の超常現象モスマン(=蛾男)であるという確信に迫る為、
一人で調査を始める・・・

謎は解明されないままに終わるので、
人によっては、中途半端な煮え切らない思いが残るのも事実です。
謎を小出しにした演出、サインを散りばめられた演出を楽しむ・・・
といった方に重点を置いて観た方が良さそうです。

大惨事を予言する謎のモスマンの存在を確認する過程や、
ラスト近くの大惨事に至るまでにおいて、
凝った映像と効果音による見せ方はとても上手く、
かなりの恐怖感を出しています。
特に、スクリーン全体に渡って漂う冷たい空気と、灰色の冬景色が、
アメリカ南部の閑散とした小さな街を包み込み、
大惨事に向かってひた走るどうしようもない運命を暗示しているようで、
観ている者は、何ともやるせない薄ら寒い気分になります。

■観た感想は、人によりかなり意見が分かれる映画です。
これほどさまざまな感想が出るのも珍しい、摩訶不思議な映画・・・



マーサの幸せレシピ Mostly Martha (2001) 公開(2002)
★★★★
監督・脚本サンドラ・ネットルベッグ
出演マルティナ・ゲデック、セルジョ・カステリット、マクシメ・フェルシテ

ドイツの新鋭女性監督サンドラ・ネットルベックによる本作品は、
2002年ドイツ映画賞の最優秀作品賞にノミネート、
ヒロインのマーサ役マルティナ・ゲデックは、
同作品賞の最優秀主演女優賞に輝いています。

ドイツのフランス料理店で働く一流女性シェフ。
天才的な腕を持つが、
他人に素直に心を開かず、コミュニケーションの欠落した彼女が、
姪を引き取った事から、自分を見つめ直し、
自分の本当の幸せに気付く過程を描いたハートフル・ドラマです。

都会でシングル生活を送る一流シェフ、マーサ(M・ゲデック)
現代人が忘れかけている優しさや、
他人に対するコミュニケーションの欠落したところなど、
彼女を見て同化する部分が多々あり、
そういった視点からも共感を覚え、親しみやすい作品になっています。
リナ(M・フェルステ)やイタリア人シェフ、マリオ(S・カステリット)
の出現によって、頑なだったマーサの気持ちが徐々に変化して行き、
愛する事の大切さや、人と人の心のふれ合いの大切さに気付きます。
観ている者も、温かい気持ちに包まれ、
一人で食べる食事よりも、皆と一緒に語り合い食事を楽しむ大切さも
教えられます。

マリオとの愛を感じ始めたことにより、
欧州・ドイツ特有のどんよりした冬景色から一転して、
イタリア特有の明るい開放的な映像に変化するのも見所です。

■観た後は、フランス料理店へ直行です。
美味しそうな料理が次々と出て来る映像は、食欲をそそります♪



マイノリティ・リポート Minority Report (2002)
★★★★
監督スティーヴン・スピルバーグ
原作フィリップ・K・ディック
出演トム・クルーズ、サマンサ・モートン、コリン・ファレル、ピーター・ストーメア

2054年、近未来のワシントンD.C
犯罪を犯す容疑者を事前に予知し逮捕する犯罪予防局が設立されて、凶悪犯罪は激減・・・
ある陰謀に巻き込まれ逆に追われる立場になってしまう、予防局の捜査官アンダートン(T・クルーズ)
身の潔白を証明しようと真犯人を探し奔走する姿を描くSF・サスペンス・アクションです。

原作は、「トータル・リコール」等の作品のフィリップ・K・ディックによる短編作品です。
本作品は、近未来の世界を舞台にしたSF映画ですが、ミステリー・サスペンスの要素とともに、主に犯人探しによるストーリー展開になっています。
キューブリックの「時計じかけのオレンジ」を連想させるシーンがあり、それも見所の一つです。
全体的に、色のトーンを抑えてあります。
都市部の建築物などは、寒色系のブルー、グレーで統一されて無機質な印象を与えていますが、現代的なスタイルも混在しており、今までにない新しいSFの世界を構築しています。

■SFファンは必見です。
物語は前半はアクション色が強く、後半はサスペンス風の演出です。
ストーリーは途中ハラハラドキドキ、ラストは後味が良いので、その点では一般受けしそうです。
ただ、ある部分、人によっては気持ち悪く感じるシーンもあります。



マジェスティック The Majestic (2001) 公開(2002)
★★★☆
監督フランク・ダラボン
出演ジム・キャリー、マーティン・ランドー、ローリー・ホーリデン

1951年のアメリカ。
共産党員と疑われ、非米活動委員会の審問会に召喚されている青年ピーター(J・キャリー)は、誤って橋から車ごと落ちてしまい・・・
記憶を失った青年は小さな町の浜辺で助けられ、戦争で死んだ町の英雄に間違わられることから端を発し、青年は個人の権力を弾圧をする議会に対抗していく・・・心を打つ感動のヒューマンドラマ。

その小さな町の映画館の名前が「マジェスティック」であると共に、自己中心だった青年が成長し、また沈んでいた町の人々にも笑顔が戻った・・・そんな『マジェスティック=魔法』をかけられたお話。
ジム・キャリーが、シリアスな演技で、嫌味無く自然体で演技していて、
仰々しい感動モノに終わってない所が良いです。
前半は、さらりと流すように淡々とストーリー展開して行きますが、
無駄と思えるシーンが多々あったり、話にそれほど入り込める魅力が無かった為、ふと眠りを誘うことも。
中盤では、魔女狩りとも思える赤狩りの為、涙を呑んで罪を認めたりする人が多い中、ピーターは、合衆国憲法によって守られている自由と個人の尊厳をうたい、信念を貫きそうとします。
そのピーターの姿勢に、思わず涙せずにはいられませんでした。
特に目新しいところがある訳では無いですが、静かに心に染み渡る『癒し』の映画になっています。
ジム・キャリーは、コメディとはうって変わってシリアス全開の迫真の演技です。

■ほんの〜りと癒されたい方、シリアスなジム・キャリーを観たい方、必見!



マドモアゼル Mademoiselle (2001) 公開(2002)
★★★★
監督・脚本フィリップ・リオレ
出演サンドリーヌ・ボネール、ジャック・ガンブラン

南仏の静かな街。
ちょっとした偶然から出会った男と女が、束の間の時間を共有し、
愛し合った24時間を描く大人の為のラブストーリー。

キャリアウーマンのクレール(S・ボネール)が、
街角でふと見つけたポスターから、以前出会った
即興劇団員ピエール(J・ガンブラン)との恋を回想する物語です。

それなりに楽しいけれど平凡な生活を送っていた女性が、
男性と恋に落ちる過程を、さらりと軽やかに描いています。
アクシデントが重なった事で、一緒に行動する事になった2人が、
二人の時間を共有する事で、お互いの魅力に惹かれ合います。
お互いの愛を予感し、揺さぶられる愛と心の移ろい。
残された24時間を、愛し合いながらも、
離れがたい気持ちを抑えつつ、元の生活に戻っていく二人は切ないです。
しかしながら、
二人が過ごしたわずかな時間は、
今まで出会うことが無かった人生の小さな幸せであり、
決して忘れることの無い幸福の一ページでもあります。

2人の出会いから分かれまでのストーリー進行を、
次から次へと繰り出す軽妙な即興劇と、リズムに乗せて、
意外な方向へ導いてくれます。
物語が行き当りばったりで流れて行くようにも見えますが、
繊細な演出と構成力が底辺にあります。

後半、夜の街を、
ピエールがクレールを乗せてバイクを運転するシーンがあります。
後ろに乗ったクレールが、
片手でサンドイッチをお皿に載せて持ち、もう一方の手で抱きつく姿には、
何とも微笑ましいものがあり、観ている者をも楽しくなります。
二人の幸福に満ちた一瞬の輝きです。

■誰もが一度は思う束の間の素敵な恋の出会い・・・
いつまでも、心に残る二人の想い出は、
観る者に、胸に染み入り静かな余韻を残す、、、そんなラストです。



まぼろし Sous le sable (2001) 公開(2002)
★★★★☆
監督・脚本フランソワ・オゾン
出演シャーロット・ランプリング、ブリュノ・クレメール

25年間連れ添った夫が姿を消した時から、妻は彼の『まぼろし』を見るようになる・・・不変の愛を描くラブ・ロマンス映画。

冒頭は、25年間、連れ添った夫婦のごく日常的な風景を描いています。
無言で居てもお互い分かり合えるような、ほどほどの距離感と信頼を、短いシーンでごく自然に描いているので、観客は違和感無く同化してしまいます。
突然、姿を消した夫の死を認めたくない妻マリー(C・ランプリング)が見る『まぼろし』は、
そうしなければ精神状態を保てなかったマリーがあまりにも切なく、
観ている者をも引きずり込みます。
終盤、マリーが夫の遺体を確認した時、夫の死を受け入れざるを得なく、砂浜で砂を握り締めながら慟哭するシーンは、哀しく涙を誘います。
砂浜から『現実となったまぼろし』を発見して駆け出すシーンには、マリーの喜びに満ちた表情の中に希望の眼差しが見受けれ、
静かに波打つ海辺のシーンは、いつまでも観ている者の心に残ります。

■愛する人を失った時、貴方ならどうしますか・・・心の内面を深く描く静かな映画。
淡々とした演出で派手さは無いのですが、哀しくも切ない愛を感じさせる作品です。
夫の失踪の真相を知る、一種の謎解きの部分も。



メルシィ!人生 Le Placard (2000) 公開(2002)
★★★★
監督・脚本フランシス・ヴェベール
出演ダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー

真面目だけが取り柄の冴えない男がリストラの標的になり、
『ゲイ』の振りをして会社に残ろうをする騒動を、
センスあふれるユーモアで描くライトなブラック・コメディ。

流れるような軽快なテンポにのって、
ちょっぴり可笑しく、大いに可笑しく笑わせてくれます。
妻と子供には馬鹿にされ、リストラ候補に上げられる悲惨な男が、
『ゲイ』という思いもよらぬ行動に出る時の、苦悩とためらいの可笑しさ。
男がカミングアウトしたことによって、
今まで馬鹿にしていた周囲の人々が
興味と尊敬の混じった視線に変わる人間の愚かさ。
ふとしたきっかけで好転して行くように見える男の人生は、
実は、自信の無い平凡な人間が自己を確立していく映画でもあります。

平凡な男をD・オートゥイユ。
彼を馬鹿にしていた偏見を持つ上司をG・ドパルデューが、
周囲の噂に振り回され、自信を喪失してしまう役を見事に演じています。
出演する俳優が、ストーリーに流されること無く、
それぞれの役柄を無理なく演じ、個性を発揮しています。

■フランスを代表する、大物俳優の意外な一面が見れる楽しい映画。
この映画を観て、貴方も明日から楽しい人生!!



メン・イン・ブラック U Men in Black U(2002)
★★★☆
監督バリー・ソネンフェルド
出演ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズ、ララ・フリン・ボイル

1997年の大ヒット作「メン・イン・ブラック」の続編。

主役2名(W・スミス、T・L・ジョーンズ)はそのままで、今回は敵のエイリアンにL・F・ボイルがお色気たっぷりに熱演しています。
ストーリーは、基本的には前作同様、エイリアンの監視機関「MIB」の捜査官が邪悪なエイリアンから地球を救う為に奔走する痛快SF・アクション・コメディです。
個性的なエイリアンはさらにパワーップし、VFX、特殊メイクなど見所はたくさんです。
マイケル・ジャクソンも出演していることも、話題の一つです。
ストーリー的には前作もそうですが、単純明快で、特殊撮影とコメディで味付けしているような感じです。
難しく考えず、笑って楽しむ映画といったところ。
前回は情報屋の役で登場したバグ犬フランクがMIBの一員としているのも楽しい一つです。
バグ犬が、ストーリーに合わせて演技しているかのように見せている所は、演出と分かっていてもお見事で引き込まれてしまいます。
バグ犬の喋っている内容も、歌ったり早口でまくし立てたりする所も、かなり可笑しいです。
また、T・L・ジョーンズが郵便局員となった今、彼の記憶を取り戻すまでのW・スミスとのやり取りがナイスで笑いを誘います。
ヒット作の第2弾ですが、同じ設定なのにパワーダウンしないで85分間あっという間に終わってしまう、何とも楽しい映画。

■ララのお色気も程々で、ラブストーリーも爽やかなので、大人の映画だけれどお子様と一緒に観に行ける楽しい映画。



ラスト・プレゼント Last Present (2001) 公開(2002)
★★★
監督 オ・ギファン
出演イ・ヨンエ、イ・ジョンジェ、クォン・ヘヒョ、イ・ムヒョン

韓国で100万人を超える大ヒットを記録した話題作。
涙を感動のラブ・ストーリーです。
イ・ヨンエは、本作で、第25回黄金撮影賞・人気女優賞を受賞しています。

コメディアンとしてなかなか芽の出ない夫ヨンギ(T・ジョンジェ)と、それを支える妻ジョンヨン(T・ヨンエ)
不治の病に侵されながらも懸命に応援する妻と夫は、
お互いを深く愛しながらも知らない振りをしてしまう・・・

夫を支え叱咤する妻と、その思いに答えられない夫。
2人の想いが強く伝わって来るだけに、観ている者は胸が締め付けられます。
お互いを思いやりながらも素直になれず、すれ違う2人に、
観ている者は時には苛立ちを感じますが、
底辺に流れる2人の深い愛を感じる事が出来るので、
ストーリにぐいぐいと引き込まれて行きます。

ただ単に、愛の終りを描いた作品では無く、
夫の心にいつまでも残り続ける愛の証として表現されてます。

■涙無しでは観れません〜〜とにかく泣きたい方にお勧めします。



ロード・トゥ・パーディション Road to Perdition (2002)
★★★☆
監督サム・メンデス
出演トム・ハンクス、ポール・ニューマン、ジュード・ロウ

1931年、イリノイ州ロックアイランド。
アイルランド系ギャングのボスとその息子、ギャングの幹部である父と息子、その二組の親子を通して、愛と復讐の物語を描くギャング映画。

1930年代の大恐慌時代を舞台にした本作は、当時の時代風景を、
スクリーン全体の画面から感じとることが出来ます。
まるで絵画を見ているような錯覚にとらわれる静かな映像は、
全体的にダークな色調であり、雨、雪といった天候も手伝って、
殺伐とした時代と、うっそうとした雰囲気をかもし出しています。
組織に追われる父と息子の逃避行を描いていますが、
決して後ろ向きで無く、常に前向きでエネルギッシュでもあります。
逃避行の過程で、父は息子に、生きる力と技術を教え、
自身も死する運命であると感じながらも組織に立ち向かう様には、
息子と共に生きたいという強い意思が感じとられます。

2組の父と息子を描いていますが、それぞれの違った結末に、
子供に何を伝え、残してやるかを考えさせられる作品です。

■父と息子の愛の物語。
父の息子に対する、『自分と似て欲しくないが、愛している』といった心情には思わず涙が・・・
迫り来る感動大作では無く、少しの余韻が漂う感動モノといったところ。



■ 2002 MyBest10

 □ 1位 この素晴らしき世界
 □ 2位 暗い日曜日
 □ 3位 まぼろし
 □  … アイリス
 □  … グレースと公爵
 □  … ゴスフォード・パーク
 □  … ダーク・ブルー
 □  … チョコレート
 □  … ディナー・ラッシュ
 □  … マドモアゼル




■ 映画館で観た映画

12.27 「グレースと公爵」
12.19 「ラスト・プレゼント」
12.18 「スパイダー・パニック!」
12.17 「シャーロット・グレイ」
12.16 「デュラス 愛の最終章」
12.13 「アイリス」
12.12 「CQ」
12.11 「ブラッド・ワーク」
12.09 「マイノリティ・リポート」

11.29 「ハリー・ポッターと秘密の部屋」
11.27 「フレイルティー・妄執」
11.27 「8人の女たち」
11.21 「マーサの幸せレシピ」
11.19 「ストーリーテリング」
11.15 「プロフェシー」
11.11 「セレンディピティ」
11.08 「トリプルX」
11.07 「ガーゴイル」
11.06 「ザ・リング」
11.05 「マドモアゼル」
11.01 「ダーク・ブルー」

10.30 「ゴスフォード・パーク」
10.25 「バルニーのちょっとした心配事」
10.24 「明日、陽はふたたび」
10.18 「王様の漢方」
10.16 「最‘新’絶叫計画」
10.10 「アバウト・ア・ボーイ」
10.09 「ロード・トゥ・パーディション」
10.04 「完全犯罪クラブ」
10.02 「ダウン」
10.01 「赤毛のアン アンの結婚」

09.30 「ジャスティス」
09.27 「まぼろし
09.25 「サイン」
09.20 「ディナーラッシュ」
09.17 「ジェイソンX 13日の金曜日」
09.13 「バイオハザード」
09.12 「13ゴースト」
09.11 「インソムニア」
09.06 「エブリバディ・フェイマス!」
09.05 「オースティン・パワーズ/ゴールドメンバー」
09.04 「ウィンドトーカーズ」