2003年(7月〜9月)映画館で観たレビューです。
     ジャック・タチの作品は郷愁の意味も込めて
     やや高得点になっています。


10話 ★★★
28日後... ★★★☆
HERO ★★★★☆
HOTEL ★★★
アダプテーション ★★★★
アフリカへの想い ★★★☆
永遠のマリア・カラス ★★★☆
エデンより彼方に ★★★★
えびボクサー ★★☆
キリクと魔女 ★★★★
散歩する惑星 ★★★☆
シェフと素顔と、おいしい時間 ★★★
セクレタリー ★★★
ターミネーター3 ★★★
たまゆらの女 ★★★☆
チャーリーズエンジェル/フルスロットル ★★★
テープ ★★★
デス・フロント ★★★☆
デッドコースター ★★★
トーク・トゥ・ハー ★★★★
ドッグ・ソルジャー ★★★☆
夏休みのレモネード ★★★★
名もなきアフリカの地で ★★★★★
のんき大将 ★★★★
ハリウッド★ホンコン ★★★
ハルク ★★☆
パイレーツ・オブ・カリビアン ★★★☆
パンチドランク・ラブ ★★★★
左側に気をつけろ ★★★★
ファム・ファタール ★★★
フリーダ ★★★★☆
プレイタイム<新世紀修復版> ★★★★☆
ベアーズ・キス ★★★☆
ぼくの伯父さん ★★★★☆
ぼくの伯父さんの休暇 ★★★★★
ぼくの伯父さんの授業 ★★★★
ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール ★★☆
郵便配達の学校 ★★★★
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル ★★★★
ワンダー・アンダー・ウォーター 原色の海 ★★★☆




10話 (2002) 公開(2003)
Ten
★★★
フランス・イラン 1時間34分
監督・脚本:アッバス・キアロスタミ
出演:マニア・アクバリ、アミン・マヘル

イランの首都テヘラン。
一人の女性(M・アクバリ)が運転する車の助手席に、さまざまな人が乗り込んでは会話を交わして降りて行きます。
女性の息子、姉、そして、見ず知らずの女性たち(=老女、娼婦、婚約中の女性、離婚した友人など)
彼女たちは、信仰のみで生きる人、我が道を行く人、愛する人が去り悲しみにくれる人、愛を失ったけれどまた歩き出す人・・・
会話のみで構成された作品は、10のエピソードから成っています。
女性と息子の会話は、最初は10話の「息子アミンとの対話」から始まり、5話、3話、最後の1話と計4回になります。
その間に、他の人の会話を挟んだ展開です。

※撮影は、車内に据え付けられた2台のデジタルビデオカメラで行われました。
カメラは、運転席の女性と助手席の人物、それぞれを撮影しています。
役者たちは、実際の演技は殆どが即興であり、自然の表情が感じられます。

女性たちの会話は主に、愛をテーマにしています。
その中でも、運転する女性と息子の会話に特筆すべきものがあります。
母と息子の会話も次第に変化して行きます。
最初は、延々と喋り続ける母に対して、息子の憤りや不満が爆発しますが、
ラストでは、母も息子の気持ちを汲み取ろうとするのが分かります。

■素晴らしい作品です。
彼女たちと共通する思いがある女性は、特に感じるものがあります。
淡々と繰り返される会話・・・
シンプルであればあるほどリアリティがあり、彼女たちの生き様が伝わって来ます。
しかし、会話のみで展開する構成は、ある意味、かなり退屈でもあります。



28日後... (2002) 公開(2003)
28 Days Later
★★★☆
イギリス・オランダ・アメリカ 1時間54分
監督:ダニー・ボイル
出演:キリアン・マーフィー、ナオミ・ハリス、ミーガン・バーンズ、ブレンダン・グリーソン、クリストファー・エクルストン

事故で昏睡状態に陥った青年ジム(C・マーフィー)が目を覚ますと、ロンドンは人影一つ無いゴーストタウン化した街になっていた・・・
血液を媒介とし、数秒で人間の精神、理性を破壊する新種のウィルス。
感染すると見境無く人に襲い掛かり、ただあるのは暴力と殺戮のみ。
市民の大半が死滅した世界で、感染を免れた人たちが必死になって生き残ろうとする姿を描いた終末世界的ホラーです。

静寂に包まれた無人のロンドン。
荒廃した街に、一人孤独と不安を抱えながら彷徨っていると、いきなりゾンビ化した人間たちが襲って来ます。
静かな闇が、激しいゾンビとの戦いに変わります。
後半は一転して、人間と人間の殺し合いに発展して行きます。
理性を持たないゾンビより、健全な精神と知性を持ち合わせている人間の方が、ある意味、はるかに残酷かも知れません。
「Hello!」という言葉を忘れずに、僅かな希望を胸に歩き続ける主人公。
決して諦めないその姿に、明るい未来への希望を託したくなります。

ラストは、とりあえずハッピーエンドで終わります。
しかし、観た後何故かスッキリしないのは、
ゾンビより勝るとも劣らない人間の嫌な部分を見たからかも知れません。

■まず、無人化したロンドンの風景が延々と続くカメラワークに驚かされ、
次に、ゾンビのカクカクッとした素早い動きにも驚かされ、
バックに流れるロックも映画を引き立ていて刺激的 (=^∇^=)
・・・意外と楽しめる作品です。
全体を通してみると、後半より前半の方が数段良い出来栄えです。
PG−12指定。



HERO (2002) 公開(2003)
HERO
★★★★☆
香港・中国
監督:チャン・イーモウ
アクション監督:チン・シウトン
撮影:クリストファー・ドイル
コスチューム・デザイン:ワダ・エミ
音楽:タン・ドゥン
出演:ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー、ドニー・イェン、チェン・ダオミン

本作品は、2002年、アカデミー賞外国語映画賞、ノミネート
2003年、ベルリン国際映画祭、特別賞授賞
その他、多数授賞しています。

紀元前2000年、中国。
後の始皇帝となる秦王(チェン・ダオミン)の元に、無名(ジェット・リー)と名乗る小さな村の官吏が訪れます。
秦王を狙う3人の刺客を殺した功績により拝謁を許された無名。
彼の口から語られる驚愕の真実とは・・・
壮大なスケールで描くアクション・歴史劇です。
歴史劇ですが、全くのフィクションです。

無名の語る真実は、実は一つの話では終わらず、
秦王と無名のやり取りから3通りの話が展開する事になります。
二転三転する展開は、最後まで真実が分からずミステリー性があります。

3つのストーリーの展開に合わせて、セットや衣装が、それぞれ黒・赤・青・白と統一された色彩へと変化して行きます。
どのシーンをとっても、背景の景色と華麗なアクションシーンが溶け込んで素晴らしい美しさを表現しています。
特に、銀杏の林で戦う飛雪(マギー・チャン)と如月(チャン・ツィイー)の闘いのシーンは、黄色に染まった葉が舞う中を剣を交え飛び交い、
ため息がでるほどの美しさです。
また、無名(ジェット・リー)と残剣(トニー・レオン)の湖面での闘い、
無名(ジェット・リー)と長空(ドニー・イェン)との雨の降りしきる将棋場での対決シーンも見逃せません。

この映画の英雄は、それぞれの刺客が英雄であり、
真の英雄とは、人それぞれの見方によって違ってきそうです。

■アクションのみならず、壮大な中国の自然を背景に、
ストーリー、色彩、衣装、音楽、出演者の演技が融合した素晴らしい作品です。

豪華スター共演による作品には華があります。
ワイヤーアクションによる空中を舞うシーンや、剣や槍を交えた武術シーンの連続にハラハラドキドキして、
その武術の素晴らしさ華麗さにうっとりします。
ファンとしては、何より、ジェット・リーとドニー・イェンの闘いに感慨深いものがあります。



HOTEL (2001) 公開(2003)
Hotel
★★★
イギリス・イタリア 1時間56分
監督・製作:マイク・フィッギス
出演:ジョン・マルコヴィッチ、ディヴィッド・シュウイマー、サフロン・バロウズ、サルマ・ハエック、リス・エヴァンス、ルーシー・リュー、バート・レイノルズ、ジュリアン・サンズ

イタリア・ヴェニス、リド島に静かに佇む古風なホテル・ウンガリア。
礼儀正しく丁寧だけれど、どこか怪しい雰囲気を持つ従業員たち。
ジョン・ウェブスターの戯曲「マルフィ公爵夫人」の撮影の為に訪れた
映画のクルーたちに起こる不思議な事柄・・・
「マルフィ公爵夫人」の撮影シーンを織り交ぜながら描くエロティック・ミステリーです。
群像劇であり、ブラックコメディの要素もあります。

ホテルを舞台に、人々のそれぞれの欲望、思惑などが入り乱れ、
殺人、陰謀、セックスなど幻想的なSM・レズビアンシーンなどが繰り広げられます。

撮影方法が革新的で、ホテル内で同時に進行するシーンを
4カ所の現場で4台のデジタル・ビデオで撮影しており、
(=4つのシーンはお互いに交錯して行くという複雑さ)
4分割画面で映し出されています。
演出方法も、設定されているのはキャラクターのみで、
セリフは全てアドリブです。
また、俳優達の服は私服で、ヘア・メイクも自前だそうです。

■キャスト陣が豪華です。
撮影方法、方針などマイク・フィッギス監督の意欲が感じられる作品です。
ただ、あまりにも懲りすぎた撮影シーンは観ていて疲れてしまいます。
特に、4分割画面は、どのシーンも個々の事柄なので見逃せなく、
4つ同時に追うのは大変です。
また、最初から最後まで、ハンディカメラで撮ったようなブレた画面を観続けるのは、まるで車酔いになったようです。涙・・・

ストーリーも大筋は分かるのですが、細部に至っては何を意図するのか良く分かりません。
この映画は、細かいストーリーや謎を追究するものでは無く、
この映画の持つ独特の空気を感じることなのかも知れません。

ルーシー・リューとサルマ・ハエックの罵り合いは、本気が入っているようでかなり凄いです。笑



アダプテーション (2002) 公開(2003)
Adaptation
★★★★
アメリカ 1時間55分
監督:スパイク・ジョーンズ
脚本:チャーリー・カウフマン、ドナルド・カウフマン
原作:スーザン・オーリアン
出演:ニコラス・ケイジ、クリス・クーパー、メルリ・ストリープ、マギー・ギレンホール

本作品は、
2003年、アカデミー賞 助演男優賞授賞、
  主演男優賞、助演女優賞、脚本賞にノミネートされました。
2003年、ゴールデングローブ賞 助演男優賞、助演女優賞授賞、
  作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞にノミネートされました。
他、多数授賞しています。

「マルコヴィッチの穴」で大成功を収めた脚本家のチャーリー・カウフマン。
彼は、スーザン・オーリアン原作「蘭に魅せられた男」の脚色中に極度のスランプを体験します。
脚色中に陥ったスランプで悪戦苦闘する実体験を元に、虚構を織り交ぜ、
妄想と現実が絡み合った不思議な世界を創り出しています。
奇想天外な、面白くも可笑しいコメディです。

ノンフィクションの登場人物とフィクションの人物。
虚構と現実・・・
観ているとどこまでが現実で虚構の世界か分からなくなってしまいます。
観ていてどういう展開になるかさっぱり予想がつきません。
斬新な展開が見所の映画です。

双子の脚本家(=ドナルドは架空の存在)は現実世界に生きる人です。
しかし、映画の中では、
兄チャーリー(N・ケイジ)は、悶々と仕事に取り掛かる自信喪失気味で優柔不断な性格、
弟ドナルド(N・ケイジ)は、楽天的で陽気な性格、仕事もトントン拍子にはかどります。
ここで登場する性格の違う弟は、現実のチャーリー・カウフマンの願望を表しているように思われてなりません。
チャーリーが決して作りたくない、ドナルドが安易に創りあげたハリウッド好みの作品が成功したように、
映画の中盤以降は、殺人、ドラッグ、セックス・・・とハリウッド定番のスリリングな展開になります。
何とも皮肉な展開は、虚構の世界なのにまさに現実を見ているようです。

■素晴らしい作品ですが、好みが分かれそうです。

一人二役をするニコラス・ケイジや、クリス・クーパー、メルリ・ストリープなど出演者の怪演が冴えてます。

エンドクレジットの後に、メッセージが出ますのでお見逃しなく・・・



アフリカへの想い (2002) 公開(2003)
Leni Riefenstahl-lhr traum von Afrika
★★★☆
ドイツ 60分
監督:レイ・ミュラー
出演:レニ・フェンシュタール

1970年代に発表された写真集「NUBA ヌバ」は、世界中にセンセーションを巻き起こした。そこには誰も目にしたことのないアフリカのヌバ族の美しい姿があった。それは、戦後、映画製作の断念を余儀なくされていた「意思の勝利」「民族の祭典」の伝説的女性監督レニ・リーフェンシュタールが、アーティストとして見事な復活を遂げた瞬間だった。
「アフリカへの想い」は、かつてレニが60年代に訪れたスーダンのヌバ族の村を20数年振りに再訪するライフドキュメントである。(=チラシより)

■レニの激動的な半生を駆け抜けるドキュメンタリーです。

レニが、ナチとの関係を非難する声にさらされ、辛い日々を送っていた頃。
ヌバ族の人々は、純粋にレニを受け入れ、共に語り笑ってくれた・・・
不遇の中で得た最愛の友。
彼らと再会する為に旅をする姿を追ったドキュメンタリーです。
友と再会を果す為に、いろいろな苦労を乗り越え旅を続けるレニの姿は、
高齢でありながらもエネルギッシュで、友に会いたいひたむきさが伝わって来ます。
内戦や文明の波など長い年月の間に変わっていくヌバ族、そして変わらないヌバ族。
嬉しさと寂しさ、さまざまな想いが入り混じった気持ちだったのでは無いでしょうか。



永遠のマリア・カラス (2002) 公開(2003)
Callas Forever
★★★☆
イタリア・フランス・イギリス・ルーマニア・スペイン 1時間48分
監督・脚本:フランコ・ゼフィレッリ
出演:ファニー・アルダン、ジェレミー・アイアンズ、ジョーン・プロウライト

伝説のソプラノ歌手、マリア・カラス。
しなやかな身体と美貌、女優としての才能を持ち合わせ、オペラ界の女王として君臨して来たカラス。
恋に歌に激動的な人生を送って来た彼女は、1974年の日本公演を最後に、ステージから身を引きます。
晩年は幸福とは言えず、睡眠薬など薬に頼る日々が続き、寝室で卒倒しそのまま返らぬ人となります。
享年53歳。
本作品は、生前彼女と親しかったフランコ・ゼフィレッリ監督が、
もし、カラスが生きていたら・・・と仮定し、想像と希望をこめて描いた音楽・ヒューマン・ドラマです。

友人のプロモーター、ラリー・ケリー(J・アイアンズ)は、
カラスの全盛期のレコーディングと、彼女の優れた演技力を一体にさせ、オペラ映画にしようと試みます。
歳と共にかつての美声を出せなくなったカラス(F・アルダン)は、
もう一度輝きたいと思う気持ちと、プロとしてのプライドの間で心が揺れ動きます。
全盛期の美声と、今の演技力を合わせれば、最高の芸術世界が創り出せる・・・
しかし、それは観客を騙せても、自分自身を騙すことになるのです。
芸術家としての果てる事の無い情熱、そして、孤独。
新たな人生の復活と、その間で葛藤する気持ちが感じ取れます。

■映画を観るにあたって、マリア・カラスの概要を知っておいた方が良いです。
劇中の歌声は、マリア・カラス本人のものです。
カラスのファンならずとも、何度も劇場に足を運んで聴きたくなります。
劇中劇の「カルメン」が素敵。

贅を尽くしたカラスの部屋、
そして、カラス演ずるファニー・アルダンは、20点あまりのシャネルの服をエレガントに着こなしています。

※本来ならば★★★なのですが、カラスの歌声で☆追加です☆彡



エデンより彼方に (2002) 公開(2003)
Far From Heaven
★★★★
アメリカ 1時間47分
監督・脚本:トッド・ヘインズ
出演:ジュリアン・ムーア、デニス・クエイド、デニス・ヘイズバート、パトリシア・クラークソン、ヴィオラ・ディヴィス

本作品は、2002年、アカデミー賞、主演女優賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞にノミネートされ、
他、ヴェネチア国際映画祭、NY批評家協会賞など、全49賞受賞、29賞にノミネートされました。

ダグラス・サーク監督「天はすべて許し給う」(=1955年)がベースとなっています。

1957年、秋。
アメリカ、コチネカット州ハートフォード。
一流企業の重役、夫フランク(D・クエイド)と可愛い2人の子供たちに囲まれて、何不自由ない暮らしを送っているブルジョア家庭の主婦キャシー(J・ムーア)。
しかし、夫の同性愛が発覚し、黒人の庭師レイモンド(D・ヘイスバード)と親しくなった事から、『理想の家庭』は無残にも崩れ去ります。
黒人差別が根強く残る社会の中で、主人公の女性キャシーが全てを失い、そして自立して行く過程を描いたドラマです。

自他共に認める『理想の家庭』は、実は、虚構であり、
『楽園』の彼方にこそ、自分の求める世界があることに気づきます。

美しい映像です。
燃え上がるような色鮮やかな紅葉、その中に静かに佇むお屋敷、
そして、身にまとった色とりどりのドレスたち・・・
細部に渡って50年代を再現したと思われるレトロな風合いと、美しい色彩に目が眩みます。

■自分たちのテリトリーに入らない者を拒絶し追放する・・・
親しくしてくれた友人や周囲の人々の、その変わり身の早さに驚きます。
夫や、愛する人、そして自分の良き理解者だと思っていた人々が、次々と離れて行きます。
キャシーは独りになりますが、それは、実は新たな旅立ちでもあるのです。

大きな感動と言うより、どちらかと言うと、静かに心に残る作品です。
ジュリアン・ムーアの美しさと演技にうっとり・・・



えびボクサー (2002) 公開(2003)
Crust
★★☆
イギリス 1時間30分
監督・脚本:マーク・ロック
出演ケヴィン・マクナリー、ペリー・フィッツパトリック

ビル(K・マクナリー)は、かつては将来を期待されてたボクサーですが、今では中年太りの43歳、場末パブのオーナーというありさまです。
ある日、友人から2m10cmもある巨大エビ(=マンティス・シュリンプ)のビジネスを持ち掛けられ、人間vsエビのボクシング試合を開催しようと奔走します・・・
奇想天外なストーリーは、ちょっとHでお馬鹿なコメディ映画です。
ある意味、スポ根映画でもあります。笑

最初はエビをボクサーに仕立て、一攫千金を狙っていたビルですが、
エビの世話をするうちに、だんだんと愛情が芽生えて来ます。
エビと人間との愛、それが何とも微笑ましくもあり、可笑しくもあり。

■CGを使わない映像は、のんびりとしたまったり感が味わえます。
如何にも被り物のエビ・・・!!
中盤以降、ラストに向かって一気にヒューマンドラマ風のノリに展開します。
意外と感動出来ます。笑



キリクと魔女 (1998) 公開(2003)
Kirikou et la sorciere
★★★★
フランス 1時間11分
監督・脚本・原作:ミッシェル・ビュレル
声:ドドゥ・ゲイエチャ、アウ・セヌザー、マイモウナ・エヌジャイエ
日本語吹替版:浅野温子、神木隆之介

1999年、アヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)、グランプリ(最優秀長篇アニメーション賞)授賞
1999年、シカゴ国際児童映画祭、長編劇場・ビデオアニメーション部門、成人審査員賞・児童審査員賞受賞
2000年、モントリオール国際児童映画祭、長編部門、審査員特別賞授賞
他、多数授賞しています。

スタジオジブリが初めて提供する洋画アニメです。
高畑勲監督が吹替版の翻訳・演出を手掛けています。

魔女カラバによって恐ろしい呪いをかけられたアフリカの村。
泉の水は枯れ、村の男たちは魔女に食われ、黄金も奪われてしまう・・・
村で生まれたキリクは、「どうしてカラバは意地悪なの?」という素朴な疑問を持ちます。
一つ一つの謎を解く為、持ち前の行動力で冒険の旅に出るキリクの活躍を描いたファンタジー・アニメーションです。

争いや不幸の根源は、突き詰めるとシンプルなことかも知れません。
物事の本質を見極めずに、ただ右往左往しているだけで無く、
シンプルな疑問を胸に問題を解決しようとするキリクがとても新鮮です。

鮮やかな色彩、シンプルな構図、そして、ユッスー・ンドゥール(=アフリカの音楽家)の音楽が、とても美しく魅力的です。
浅野温子の吹替えもカラバのキャラクターにピッタリです。

■ファミリー向けの映画ですが、実は大人の方に是非、観て欲しい作品です。
観た後は、ただ感動するだけでなく、物語の奥深いものを感じます。
心地よい余韻が残る映画です。



散歩する惑星 (2000) 公開(2003)
Sanger fran andra vaningen
★★★☆
スウェーデン・フランス 1時間38分
監督・脚本:ロイ・アンダーソン
出演:ラース・ノルド、シュテファン・ラーソン

本作品は、2000年、カンヌ国際映画祭、審査員特別賞を受賞しています。
CF界の巨匠ロイ・アンダーソンが、構想20年、撮影4年、莫大な制作費を掛た壮大なるローテク巨編。
CGを一切使わずアナログ感溢れる、不思議で不条理な世界を創りあげています。
尚、ロイ・アンダーソン監督は、カンヌ国際広告祭で8度のグランプリを獲得しています。

舞台はとある惑星、時代設定等も不明です。
街の人も老人ばかりで、何故か男性は全て白塗りの顔をしています。
※あえて設定を特定出来ないようにしてあり、
出演者は街でスカウトされた普通の人たちだそうです。
いろいろな人々が登場し、それぞれが何か不幸を背負ったり上手くいかなかったりします。
街の住人は、先を争うように現実から逃げ出しそうとし、
大通りは車で大渋滞、人々は空港に殺到します。
街の人の不思議な出来事の数々を描いています。

作品全体から、強烈なブラックユーモアが感じとれます。
神をも恐れぬエピソード、政策会議の無意味な馬鹿馬鹿しさ・・・
どこか滑稽で、奇妙、そして狂気が漂っています。
人間らしく生きたい人々の虚しさが、そこにはあります。

■ストーリーは、あって無いようなものです。
観る人によって捉え方もさまざまです。
自分なりに解釈した方が良さそうです。
ある意味、肌で感じる映画かも知れません。

不思議な世界は、シュールで、妙な心地にさせられます。
あまりに心地良すぎて、ふと眠りに陥りそうになることも・・・
でも、唖然としたシーンも多く、目が釘付けになったりもします。



シェフと素顔と、おいしい時間 (2002) 公開(2003)
Decalage Horaire
★★★
監督・脚本:ダニエル・トンプソン
出演:ジュリエット・ビノシュ、ジャン・レノ、セルジ・ロペス

パリのシャルル・ドゴール空港。
ストと悪天候が重なり全便欠航になった空港で、人々がごった返す中、
携帯電話の貸し借りで偶然出会った二人。
恋人から逃げる女ローズ(J・ビノシュ)と、恋人を追いかける男フェリックス(J・レノ)。
2人は、お互い反発しながらもどこか惹かれ合うものを感じます・・・
一日の恋のエピソードで綴るロマンティック・コメディです。

神経質な元シェフには、ジャン・レノ。
濃い厚化粧で登場するメーキャップ・アーティストには、ジュリエット・ビノシュ。
共に今まで演じたことのない役柄ですが、2人の息もピッタリ合ってまさにハマリ役です。
何度もすれ違いながらも惹かれ合うものを感じ、次第に心が繋がって行く・・
その辺りの展開がとてもテンポ良く、
言葉一つ一つを拾っても、とてもリアル感があります。

この映画では、携帯電話が重要な役割を果たしています。
携帯電話で始まり、携帯電話で終わる・・・
一昔では出来ない、まさに現代の世相を反映した映画です。

■時には素顔で心をさらけ出すことも必要・・・
そんな事を教えてくれる映画です。

大スター2人の共演、テンポ良いストーリー展開。
しかし、特に良い訳でも悪い訳でも無い、平凡な映画で終わっています。



セクレタリー (2002) 公開(2003)
Secretary
★★★
アメリカ 1時間56分
監督:スティーヴン・シャインバーグ
出演:マギー・ギレンホール、ジェームズ・スペイダー、ジェレミー・デイヴィス

本作品は、2002年、サンダンス国際映画祭、特別審査員賞を受賞、
全米ナショナル・ボード・オブ・レヴュー、最優秀ブレイクスルー賞、
他、多数受賞しています。

25歳のリー(M・ギレンホール)は、男性経験も就職経験も無い自傷癖のある内気な女性。
弁護士事務所に秘書として就職しますが、
雇い主の弁護士エドワード(J・スペイダー)に風変わりな秘書教育されたことから、初めての快感に目覚め、それは、やがて一途な愛へと変って行きます。
少々SMチックな、異色の純愛・ロマンス映画です。

リーは、自分に自信が持てず、体を傷付け、傷が治って行くと同時に心も癒される・・・
そんな性格の女性が、彼と出会うことで、自分の閉ざされた心を開放し、魅力的な女性に変って行きます。
M・ギレンホールのどんどん快感にはまって行く様子と、一つ一つの表情、演技力に見入ってしまいます。
キッカケを作ったのはグレイですが、
一途になる女性を前に、今の状況に悩み、彼女を案じて身を引こうと決意します。
この辺りの、2人の心の揺れ動きや、気持ちのすれ違いが見事です。

■支配する側とされる側の恋愛を描いています。
特に過激な描写がある訳では無いのですが、何となくエロチックで、それでいていやらしくありません。
最良のパートナーと巡り会ったときの喜び。
見方によっては変態的な恋愛映画ですが、愛する人を求める気持ちはどの男女にも当てはまることでもあります。

ややコメディタッチなこの映画、メリハリが無いのでササーっと流れて行く感じがします。



ターミネーター3 (2003)
Terminataor 3 : Rise of the Machines
★★★
アメリカ 1時間50分
監督:ジョナサン・モストウ
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ニック・スタール、クレア・デーンズ、クリスタナ・ローケン

ジェームズ・キャメロン監督のシリーズ作「ターミネーター」の第3作です。
今回の監督は、ジョナサン・モストウ監督(=「U−571」)が担当しています。

前作から10数年後、
20代になり放浪生活を送るジョン・コナー(N・スタール)。
彼の前に突如として現れたT−800と同じ姿のT−850(A・シュワルツェネッガー)と、女性型ターミネーターT−X(K・ローケン)。
『審判の日』は回避しておらず、再び、人類とマシンとの激しい戦いが始まります。

ジョンが、リーダーとしての自覚を持ち、独り立ちする成長物語でもあります。

■前作から12年経った作品です。
観る前は、期待と不安があったのですが、シリーズの設定をきちんと踏まえ、正攻法の作りにまずまずと言ったところ。
派手なカーチェイスと、手堅い演出が功をなしています。
ただ、2作目よりは、情に訴えかける部分が弱いように思います。

シュワルツェネッガー、50歳半ばですが、鍛えられ引き締まった体は今も健在です。



たまゆらの女 (2003)
Zhou yu's Train
★★★☆
中国 1時間33分
監督・脚本・製作:スン・チョウ
原作・脚本:ベイ・チュン
脚本:チャン・メイ
出演:コン・リー、レオン・カーフェイ、スン・ホンレイ

原作は、ベイ・チュンによる短編小説「チョウユウの列車」
「たまゆら」とは、古い言葉で、「一瞬」「儚い」という意味だそうです。

中国・雲南省の建水から四川省の重慶まで、片道10時間の汽車に乗り、恋人チェンチン(L・カーフェイ)に会いに行く白磁の染付け絵師チュウユウ(G・リー)
詩人であるチェンチンと、同郷の獣医であるチャン(S・ホンレイ)との間で揺れ動く心を描きます。
官能的なラブ・ロマンス映画です。

いわゆる三角関係の映画です。
夢見がちで生活力のなさそうな詩人と、無骨で実直な獣医。
対照的な2人の男の間で、揺れ動く女心がよく表れています。
詩人とベッドを共にする時、窓の外を猛スピードで走リ去る列車のシーンが、2人の関係を表しているようで印象的です。

古都である建水の街並みと、近代的なビルを背にした重慶の街。
二つの異なった風景と、それを結びつける列車。
そして、ストーリーの間に時折り出てくる線路のシーン。
映像の一つ一つが美しいです。
木々の緑の青々しさや、古い街並の路地、
また、靄が掛かった風景などはまるで墨絵を見ているような情景です。

■しっとりした、大人の為の恋愛映画です。
ストーリーは至ってシンプルです。
際立った映像美と、心の移ろいを感じる映画です。

欲を言うと、コン・リーによる一人二役(=チョウユウとシュウ)が分かりづらいのが難点です。
時折登場するシュウの存在が、チョウユウなのか、あるいは別人なのか迷ってしまいそうです(=本当は別人です)



チャーリーズエンジェル/フルスロットル (2003)
Charlie's Angels : Full Throttle
★★★
アメリカ 1時間46分
監督:マックG
武術指導:ユエン・チョンヤン
出演:キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー、バーニー・マック、デミ・ムーア

映画版「チャーリーズ・エンジェル」シリーズの第2弾。
主役3人と監督、武術指導は前作同様です。

犯罪に立ち向かう美女3人組、ナタリー(C・ディアス)、ディラン(D・バリモア)、アレックス(L・リュー)の活躍を描いたコメディタッチのアクション映画です。
『証人保護プログラム』の暗号が入った指輪を巡って、暗躍する犯罪者と闘います。
アジア大陸モンゴルでの活躍から始まり、武術、モトクロス、セクシーシーンありと、華麗なアクションが満載です。

■気軽に観れる楽しい映画です。
お色気たっぷりのセクシーポーズや下ネタギャグが売りの一つですが、明るくさばけた雰囲気は、男性にも女性にも好感持たれます。
とてもありそうにない、不思議なシーンがたくさん!!

幾つか見所のアクションシーンがあります。
どれも迫力満点で、もっと観ていたいほどです。
が、それぞれのシーンの繋ぎが悪く、ブチブチと切れている印象は否めません。
しかし、そういった難点も、美女3人のキラキラした魅力と弾けたキャラクターの前では霞んでしまいます。



テープ (2001) 公開(2003)
Tape
★★★
アメリカ 1時間27分
監督:リチャード・リンクレイター
脚本・原作:スティーヴン・ベルバー
出演:イーサン・ホーク、ウマ・サーマン、ロバート・ショーン・レナード

スティーヴン・ベルバーの舞台劇を映画化したものです。
2001年、ヴェネチア国際映画祭、ラテルナ・マジカ賞を受賞しています。
他、2001年、サンダンス映画祭など多数、正式出品されています。

安モーテルの一室で10年ぶりに再開したハイスクールの同級生、男女3人。
10年前の出来事を巡って繰り広げられる密室心理劇です。

登場人物は、ヤクの売人ヴィンセント(E・ホーク)、新人映画監督のジョン(R・S・レナード)、検事補のエイミー(U・サーマン)3人のみです。
モーテルの部屋から一歩も出ることなく、殆ど会話のみで進行されます。
昔の恋愛関係について、疑惑を問い詰め、告白し合う話です。
記憶を辿る話であり、真実を引き出し、今の自分を再確認したい気持ちが伺えます。
会話の進展と共に、最初はジョンが優位に立ち、やがて力関係が微妙に変化して行きます。

■細かいカット割りや、ぶれるようなカメラワーク。
まるで手持ちのカメラで撮影されているようです。
あたかもそこにいるかのような臨場感があり、小さな部屋の不穏な空気がヒリヒリと伝わって来ます。
緊張感あふれるサスペンス映画です。
低予算映画。

イーサン・ホークの妙にしつこくハイな演技が可笑しいです。
小さな部屋での会話劇。
演出はとても上手いと思うのですが、ある意味、映画としては退屈かも知れません。



デス・フロント(2002) 公開(2003)
Death Watch
★★★☆
イギリス 1時間35分
監督・脚本:マイケル・バセット
出演:ジェイミー・ベル、ヒューゴ・スピア、アンディ・サーキス

1915年、第一次世界大戦下のヨーロッパ西部戦線。
ヨーロッパ北部の平原で激しい戦闘を繰りげていた連合軍とドイツ軍。
毒ガスの攻撃を免れたイギリス軍Y中隊10名は、ドイツ軍の塹壕を占拠し、援軍が来るのを待つことに。
しかし、やがて塹壕内で不可解な怪現象が起き、兵士たちは次々と死んで行きます。
戦争への恐怖と、人間心理の恐怖、さらにホラー要素を加え描いた映画です。
心理サスペンスと怪奇現象のホラー映画です。

※ドイツ軍の塹壕は、実際にチェコのプラハ郊外で実物大のセットを作り撮影したそうです。

迷路のようにくねくねと曲がりどこまでも伸びて行く塹壕。
おびただしい数の遺体、
冷たく降り続く雨と視界を遮る霧、
遠くに聞こえる砲撃の音・・・
実際、長期に渡って塹壕内で戦いを強いられた兵士の中には、
極度の緊張と疲労から、精神に異常をきたしたり、精神のバランスを崩したりした者も多かったそうです。
実際にあった事柄に、ホラー要素を加えた映画という捉え方も出来ます。
謎の死を遂げて行く兵士たちを目前に、次第に精神のバランスを崩し狂って行く兵士たちの表情がリアルで恐ろしいです。

主人公である16歳のシェイクスピア(J・ベル)が、人間的に成長するドラマでもあります。
最初、臆病で銃も撃てなかった少年が、次第に自らの判断で行動できる人間になって行く・・・
そんな恐怖に立ち向かう少年の姿をジェイミー・ベルが好演しています。

■ホラー的には全く怖くありません。
どちらかと言うと、古典的なホラーの趣があります。
泥にまみれた塹壕での同じようなシーンが延々と続く為、中盤は飽きてしまう感じがあります。
兵士たちが死んで行くシーンも、心理的圧迫により狂気に至る死なのか、塹壕による悪霊の為なのか、どちらかに絞った方が良いと思います。



デッドコースター (2003)
Final Destination 2
★★★
アメリカ 1時間30分
監督:ディヴィッド・R・エリス
出演:A・J・クック、アリ・ラーター、マイケル・ランデス

ホラー映画「ファイナル・デスティネーション」の続編です。
予知夢(=白日夢)を観た主人公キンバリー(A・J・クック)の機転で、壮絶なハイウェイ事故から免れた男女8人。
元々は死ぬ予定だった8人に、次々と死の恐怖が襲いかかります。
死から逃れられない運命と、迫り来る死との闘い描いたホラー・サスペンスです。

冒頭の自動車事故は、ショッキングシーンの連続です。
トレーラーから転げ落ちた丸太が後続車に激突、それから連鎖して起きる玉突き事故の数々、大爆発・・・
この衝突シーンは、2003年、MTVムービー・アワードのアクション・シーン賞を受賞しています。

事故を免れた人々の死に方は、もっと残酷で思わず目を覆いたくなるほどです。
同時に、意表を付いた死の演出に、次を予想し、ハラハラドキドキしてしまいます。

■前作のストーリー、登場人物がそのまま繋がっている設定です。
前作を観ておいた方が、話の筋が分かりやすく面白さも倍増しますが、
観て無くてもストーリー的には全く問題はありません。

第3弾を連想させる終わり方です。



トーク・トゥ・ハー (2002) 公開(2003)
Habel con ella / Tallk to Her
★★★★
スペイン 1時間53分
監督・脚本:ペドロ・アルモバドル
出演:レオノル・ワトリング、ハビエル・カマラ、ダリオ・グランディネッティ、ロサリオ・フローレス、ジェラルディン・チャップリン、ピナ・バウシュ、カエターノ・ヴェローゾ

本作品は、2002年、アカデミー賞脚本賞、LA批評家協会賞脚本賞、
ゴールデングローブ外国映画賞を受賞しています。

交通事故で昏睡状態に陥ったバレリーナの世話をする介護士、
同じく、事故にあった女闘牛士の恋人を見守るジャーナリスト。
愛する女性が共に昏睡状態になった2人の男。
対照的な2組のカップルの辿る運命を描いたドラマです。

男性の視点から描いたラブ・ストーリーです。
バレリーナ、アリシア(L・ワトリング)に思いを寄せる介護士ベニグノ(J・カマラ)
彼は、アリシアを献身的に世話をし、肌に触れるたり語りかけることで「愛」と「生」を伝えます。
対して、女闘牛士リディア(R・フローレス)に触れることさえ出来ないジャーナリストのマルコ(D・グランディネッティ)
ベニグノは、愛するあまりに、無償の愛から一線を越えてしまった過ちを犯してしまいます。
マルコは、昏睡状態のレディアを愛し見守り続けますが、実は愛は終わっていた真実を聞かされます。

愛の形は常に変化し、運命もそれに合わせて変って行きます。
人間は誰しも孤独を抱えており、人にぬくもりを求めています。

劇中、ドイツの舞踏家ピナ・バウシュの「カフェ・ミュラー」「炎のバズルカ」の舞台や、カエターノ・ヴェローゾの歌うシーン、サイレント映画「縮みゆく恋人」などが挿入されています。
闘牛シーン、ダンス、舞台、音楽、映画など芸術的な演出が効果的に使われています。

■悲劇、悲しみ、希望、孤独、奇跡、愛、・・・一つの言葉では表現出来ない映画です。
愛を見つめた素晴らしい映画ですが、好みは分かれそうです。

感動作というより、観た後は、何とも言えない思いに囚われる作品です。
主人公の行動については、議論を呼び、単なる感動の言葉のみで終わらせたくない作品です。



ドッグ・ソルジャー (2001) 公開(2003)
Dog Soldiers
★★★☆
イギリス 1時間44分
監督・脚本:ニール・マーシャル
出演:ショーン・パートウィー、ケヴィン・マクキッド、リアム・カニンガム

スコットランド山中。
演習中のイギリス小隊が、深夜、正体不明の獣(=人狼)に襲われ
近くの農家に逃込むが・・・
イギリスに古くから伝わる人食い狼、人狼伝説をモチーフにしたアクション・ホラー映画です。

第20回、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭、グランプリを授賞しています。

シンプルなホラー映画です。
ヨーロッパなどに古くから伝わる伝説に、
現代のホラー映画に見られるようなショッキングシーンや、スプラッター・シーンを盛り込んでいます。
シンプルな設定ながら、多くの謎と、誰が生き残るのか・・・といったサバイバル的な興奮が味わえます。
また、出演している俳優たちも、映画の登場人物である兵隊たちも、
特に際立った人物では無く平均的なタイプが揃ってるのも、意外と良かったかも知れません。
昔ながらの人狼伝説ながら、戦闘シーンの見せ方等、新鮮な演出になっています。

随所に見られるブラック・ユーモアがピリリ効いており、
CG等特殊効果も極力使わず、アナログ的なところも魅力の一つです。

■特に期待もせず、ふらりと入った映画館で、思わぬ拾い物をしたような感じです。笑
小品ながら健闘しているホラー映画です。
R−15指定。



夏休みのレモネード (2001) 公開(2003)
Stolen Summer
★★★★
アメリカ 1時間34分
監督・脚本:ピート・ジョーンズ
出演:アイダン・クイン、ボニー・ハント、ケヴィン・ボラック、エディ・ケイ・トーマス、アディ・スタイン、マイク・ワインバーグ

べン・アフレックとマット・ディモンが始めた脚本コンテスト「グリーンライト・プロジェクト」
1万2000本の中から選ばれた第1回グランプリ作品です。

1976年、シカゴ郊外。
カソリックを信仰するアイルランド系の少年ダニー(M・ワインバーグ)と、ユダヤ司祭を父に持つ少年ピート(A・スタイン)との交流を描いた感動のドラマです。
白血病を患い死期が迫っているピートを、ダニーは天国に行けるよう奮闘します。
カソリック観の天国の存在を信じるピートをカソリックに改宗する為、「10個の課題」にチャレンジさせます。
一途な子供の発想は、無邪気で微笑ましいです。

子供たちの遊びが、親同士への諍いへと発展して行きます。
信仰の違いは、お互い相容れない領域でもあります。
ともすれば深刻になりがちな内容を、少年たちのみずみずしい演技と、気取らない演出で温かい感動を呼ぶ作品となっています。

信仰や生き方の違いを超えて、相手を理解し、共存していく・・・
まさに、今、最も必要とされてる事柄なのかも知れません。

■カソリックとユダヤ教に関しては、日本人にはなかなか理解出来ない部分もあります。

地味な作品ですが、両家族の気持ちを丁寧に表していて、とても好感が持てます。



名もなきアフリカの地で (2001) 公開(2003)
Nowhere in Afirica
★★★★★
ドイツ 2時間21分
監督・脚本:カロリーヌ・リンク
原作:シュテファニー・ツヴァイク
出演:ユリアーネ・ケラー、メラーブ・ニニッゼ、レア・クルカ、カロリーヌ・エケルツ、マティアス・ハービッヒ、シデーデ・オンユーロ

本作品は、2002年、アカデミー賞外国語映画賞を授賞、
2002年、ゴールデン・グローブ賞を受賞
ドイツ映画賞主要5部門受賞、
バヴァリアン映画祭作品賞及び観客賞受賞など
他多数授賞しています。
原作は、シュテファニー・ツヴァイクの自伝的小説です。

第二次世界大戦下、
1938年4月、ナチスの迫害を逃れる為、祖国ドイツを離れアフリカへ渡った父を追い、ケニアの農場にやって来た母と娘。
全く異なる文化の中での生活は、家族の崩壊を招きます。
アフリカでの10年間の生活を描いた、家族の再生と一家の軌跡をたどったドラマです。

幼い娘レギーナ(L・クルカ)は、現地に到着してまもなく、現地民の料理人オウアや子供たちと心を通わせ、現地の生活に溶け込んで行きます。
子供特有の柔軟さが幸いし、少女は内気な性格を克服し、たくましく成長して行きます。
一方、母ヴァルター(M・ニニッゼ)は、自分の今の状況を嘆き不満を抱きます。
が、やがて、違うものを受け入れ認めることの大切さを学び、次第にアフリカの大地に魅せられていきます。
父イエッテル(J・ケーラー)は、生きる為家族を守る為にアフリカでの生活を余儀なくされ順応しようとします。
が、終戦になり、ユダヤ人でありドイツ人でもある自分への誇りと生きる意味を求め、祖国に戻ろうとします・・・
家族のそれぞれの思いは、時と共に変化して行くのが分かります。

■自分的に、かなり好きな映画であります。
人の気持ちは、その時の状況によっても変って行きます。
どの判断が良く、悪いとは一概には決め付けられません。
その辺りの人間の心の内面を、繊細に上手く表現しています。
ユダヤ人迫害がベースにありますが、変に気負わず、感動の押し付けがありません。
サラリとした演出になっています。
アフリカや文化の違いなど、過剰に反応・美化していないところにも好感が持てます。

大きな感動とかは無いのですが、見た後、心が満たされる作品です。

アフリカの大いなる自然と文化。
是非、スクリーンで体感して欲しい作品です。



のんき大将 (1994) ※モノクロは1949年 公開(2003)
Jour de fete
★★★★
フランス 1時間20分
監督:ジャック・タチ
出演:ジャック・タチ、ギィ・ドゥコンブル、ポール・フランクール

1994年(モノクロ版:1949年、パートカラー版:1964年)

1949年度、ヴェネチア映画祭最優秀脚本賞
1949年度、フランス映画大賞

無声喜劇の再来として絶賛されたタチの長篇第一作。フランス中部の田舎を舞台に、タチ扮する郵便配達フランソワが、村の祭りで見た米国式スピード郵便配達を模倣して、のどかな田園地帯で、ドタバタ騒動を繰り広げる。ミュージック・ホールで鍛えたタチの身体芸と奇妙な音響効果の組合わせのおかしさを存分に発揮した快作。
(=ジャック・タチ・フィルム・フェスティバルのチラシより)

本作品は、モノクロとは別にカラーで撮られていた作品が倉庫で発見され、新たにカラー版として復元されたものです。
セピア調のモノクロフィルムに薄く色づけを施し、ノスタルジック溢れる味わい深い作品になっています。
郵便配達人のドタバタ騒動もさることながら、
移動遊園地のトレーラーに載せられた回転木馬を追いかける少年など、子供たちのキラキラした笑顔も印象的です。
村人たち一人一人のキャラクターも表情豊かです。



ハリウッド★ホンコン (2001) 公開(2003)
Hollywood Hong-Kong
★★★
フランス・香港・日本 1時間48分
監督・脚本・製作:フルーツ・チャン
出演:ジョウ・シュン、グレン・チン、ウォン・ユーナン、ホウ・サイマン、レオン・ツィーピン

本作品は、第39回台湾金馬賞、監督+プロダクション・デザイン賞+音響受賞賞を受賞しています。
香港批評家協会賞、最優秀脚本賞を受賞しています。

香港の下町、ダイホム・ビレッジ。
立退きを命令されている再開発地区は、人々が貧しいながらも懸命に働いて暮らしている街。
ある日、ふらりとやって来たチャーミングな上海娘(ジョウ・シュン)に、男たちは魅了され心を惑わされて行く・・・
下町の路地裏を舞台に、リアルな現実と人間模様を、コミカルに鋭く描いたドラマです。

■話の要になる焼豚屋の3人の親子は、丸々と太ってまるで豚のようです。
豚のような親子が豚を加工している・・・
こういったブラック・ユーモアが、あちこちに散りばめられています。
自分の夢を叶えたい気持ちが強すぎて、人々を振り回してしまう・・・
そんなチャーミングで小悪魔的な女性をジュウ・シュンは演じています。

子供の純粋な心とキュートな女性、赤が印象的な鮮やかな映像。
スクリーン全体が生き生きと息づいて、下町のファンタジーな世界を演出しています。
しかし、えぐい、目を覆いたくなるシーンもあります。
そのミスマッチな雰囲気が、さらなる不思議な世界を創り出しています。

中国返還後の中国と香港の関係を描いた作品でもあります。



ハルク (2003)
The Hulk
★★☆
アメリカ 2時間18分
監督:アン・リー
出演:エリック・バナ、ジェニファー・コネリー、ニック・ノルティ、サム・エリオット

マーヴェル・コミック原作(=「X−メン」「スパイダーマン」といったヒット作で有名)の人気キャラクターアニメの映画化です。

実験中の事故でガンマ線を浴びた科学者バナー博士(E・バナ)
その事故以来、怒りを抱くと緑の巨大な怪物に変身してしまう・・・
主人公の抱える心理的葛藤を中心に描いたモンスター映画です。

アニメの変身モノなのですが、他の作品と違うところは、
主人公の内面的なトラウマや葛藤を強く前面に押し出しているところです。
巨人ハルクに変身して怒りに任せて破壊の限りを尽くすシーンは、爽快感とは程遠く、
作品全体が重々しく、ダークな雰囲気に包まれています。
悲劇性を強調したモンスター映画とも言えます。

最新のSFXや、ダイナミックな映像は見所があります。
コミックスを意識した分割画面は面白いのですが、
あまりに多用し過ぎていて、少々食傷気味です。

■ファミリー向けにしたいのか、精神面の葛藤を表に出した大人の向けの映画にしたいのか・・・
中途半端な印象は拭えません。
父ディヴィッド(N・ノルティ)との親子の関係や、恋人ベティ(J・コネリー)との恋愛関係が深く描き切れていないのも残念です。

ストーリーは、ハルク誕生の経緯を順を追って説明しています。
コミックスを読んでいない人でも全くOKです。

エリック・バナの混乱した演技が上手いです。
コミックスのハルクと似ているところもビックリ (=^∇^=)



パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち (2003)
Pirates of The Caribbean : The Curse of The Black Pearl
★★★☆
アメリカ 2時間23分
監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、ジェフリー・ラッシュ

ディズニーランドの『カリブの海賊』をモチーフにしたしたアクション・アドベンチャー映画です。

カリブ海の港町ポートロイヤル。
総督の美しい娘エリザベス(K・ナイトレイ)と、孤児であり今は鍛冶屋の息子であるウィル(O・ブルーム)
海賊キャプテン・バルボッサ(G・ラッシュ)にさらわれたエリザベスを救出すべく、一匹狼の海賊ジャック・スパロウ(J・デップ)と手を組みます。
黄金のメダルを巡って繰り広げられる壮大なスケールのアドベンチャーと、金貨に隠された呪いの謎を解き明かすミステリー。
身分を越えたラブ・ロマンス映画でもあります。

■ジョニー・デップが出演するのとしないとでは、作品全体の印象がガラリと変りそうです。
酔っ払いのようなふらついた足取りや独特の身振り手振り、
飄々としたお調子者の海賊を、嬉々として演じています。
この映画の面白さは、かなりの部分でジョニー・デップの怪演に頼るところが大きいように思われます。

骸骨等が出て来ますが、ホラー度はかなり低く、お子様からお年寄りまで安心して観ることが出来る娯楽映画です。
良くも悪くもきれいにまとめられた映画であり、正統派海賊映画+コメディタッチの映画です。

同じようなアクションシーンが延々と続くので、上映時間がかなり長く感じられます。
エンドロールの後にも映像があるのでご注意。



パンチドランク・ラブ (2002) 公開(2003)
Punch-Drunk Love
★★★★
アメリカ 1時間35分
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:アダム・サンドラー、エミリー・ワトソン、フィリップ・シーモア・ホフマン

本作品は、2002年、カンヌ国際映画祭、最優秀監督賞を受賞、
2002年、トロント映画批評家協会賞、最優秀監督賞、最優秀助演女優賞を受賞、他多数受賞しています。

トイレの吸盤棒を販売する青年実業家バリー(A・サンドラー)は、7人の姉を持ち、女性に奥手でキレやすく、精神面に少々問題があるサエない男です。
食品会社のプリンのマイレージを貯めて飛行機チケットを得ようとする、セコい一面も持ち合わせています。
そんな彼が、離婚暦のある女性リナ(E・ワトソン)に出会い、一目惚れ(=パンチドランク・ラブ)
運命の恋とも言うべき強い愛で結ばれて行く2人、ピュアな愛に満ちた異色のラブ・ストーリーです。
※マイレージ特典のエピソードは、某企業のミスを突いて大金を手にした男の実話を元にしています。

画面に時折差し込む閃光と、抽象的なデザインの色彩、刺激的な効果音。
それらがスクリーンに渾然一体となって溶け込んでおり、
あたかも主人公の心を代弁しているようです。
冒頭から始まる衝撃的な自動車事故と、通りに置き去りにされたオルガン。
奇抜な演出と、間をおいたカメラアングル。
ちょっと不思議な感覚のラブストーリーです。

アダム・サンドラーは真面目だけどキレやすく不安定な性格を、
エミリー・ワトソンは優しく見守るような愛を。
当初は意外と思える組み合わせでしたが、とてもしっくり合っている2人です。

■自分的には、かなり好きな作品です。
特に感動する訳では無いのですが、余韻が残る映画です。
ハワイのホテル、廊下でのキスシーン。
バックの通行人は黒いシルエットになって行きかい、とても素敵な演出です。
ストーリーもテンポ良く、丁度良い時間です。



左側に気をつけろ (1936) 公開(2003)
Soigne ton gauche
★★★★
フランス モノクロ 12分
監督:ルネ・クレマン
脚本・出演:ジャック・タチ、マックス・マルテル、J・オーレル

ミュージック・ホールのスターだったタチが、ルネ・クレマン監督で主演した戦前の貴重な短編。スリムで敏捷な身ごなしも優雅な若き日のタチの姿は必見。農場の特設リングで、プロボクサーの相手をするはめになった作男ロジェ=タチの珍妙なボクシング騒動。郵便配達の原型も登場。ゴダールが「右側に気をつけろ」でオマージュを捧げたことでも有名。
(=ジャック・タチ・フィルム・フェスティバルのチラシより)

■全くの素人である若者が、ひょんなキッカケでプロボクサーと試合をするはめになります。
本の挿絵を参考に、見よう見まねでする奇妙なボクシングが笑いを誘います。
なし崩しであれよあれよと展開していくさまが見事。

田舎の路地に急ごしらえしたリング。
田んぼの広がるのどかな風景と、村人や子供たちの関わりが楽しい。



ファム・ファタール (2002) 公開(2003)
Femme Fatale
★★★
アメリカ 1時間55分
監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ
音楽:坂本龍一
出演:レベッカ・ロメイン・ステイモス、アントニオ・バンデラス、ピーター・コヨーテ

カンヌ国際映画祭で、1000万ドル相当の宝石が盗まれます。
仲間を裏切って逃走した女ロール(レベッカ・ロメイン・ステイモス)は、別人に成りすまして単身アメリカへ渡ります。
宝石を持ち逃げした女と、それを追う男たち。
新たな人生の再出発の為、男を誘惑し惑わしながら仲間の追跡をかわす女。
しなやかでしたたかに生きる悪女の姿を描いたクライム・サスペンスです。
巻き込まれ型サスペンス。

自分の欲しいものを手に入れる為、、手段を選ばず、淑女と悪女の顔を使い分けるヒロイン。
美しさと妖しい魅力を武器に運命を切り開いて行くヒロインに、爽快感さえ感じます。

■分割画面や、スローモーションの多用など、まさにデ・パルマ監督の世界です。
安易な宝石強奪計画や、次々と現れる偶然の産物など、パワフルな展開はまさにあっぱれ!!
あまりのご都合主義の展開に観ている間は??でしたが、ラストで妙に納得します。

坂本龍一による「ボレロ」の音楽とスクリーンが上手く溶け込んでいます。
おとなしいバンデラスも何時に無く可愛い。笑



フリーダ (2002) 公開(2003)
Frida
★★★★☆
アメリカ 2時間3分
監督:ジュリー・テイモア
出演:サルマ・ハエック、アルフレッド・モリーナ、ジェフリー・ラッシュ、アシュレイ・ジャッド、アントニオ・バンデラス、エドワード・ノートン

2002年、アカデミー賞、音楽賞・作曲賞、メイクアップ賞を受賞
2002年、ゴールデン・グローブ賞、音楽賞を受賞
他、多数授賞しています。

メキシコの女流画家フリーダ・カーロ(S・ハエック)
彼女は、18歳の時にバス事故に遭遇し、その後重い後遺症が残ります。
著名な壁画家ディエゴ・リベラ(A・モリーナ)との結婚は愛と苦しみに満ちており、
政治的な関わりなど波乱に満ちた人生は、彼女の作品に大きな影響を与えています。
情熱的でちょとグロテスクな絵画・・・、数々の名作を残しています。
1907年生まれ、47歳没。
ヒューマンドラマであり、伝記映画でもあります。
フリーダの絵画とCG合成した映像が、劇中何度も登場します。
彼女の絵の持つパワーを損なわず、幻想的な世界を創り出しています。

愛する夫の度重なる女関係に悩まされながらも、夫とはどこかで繋がっていて、最後は共に歩んで行きます。

メキシコ特有の明るい原色の装飾品や街並み。
ラテン音楽。
色とりどりの鮮やかな衣装も美しいです。

■想像を絶する体験をしながらも、決して諦めないフリーダ。
運命を受け入れながら我が道を歩んで行った彼女を見て、励まされる人も多いと思います。

予め、彼女の作品や生い立ちなどを知っておくと、さらに良いと思います。



プレイタイム<新世紀修復版> (1967) 公開(2003)
Play Time
★★★★☆
フランス 2時間5分
監督・脚本・出演:ジャック・タチ
出演:バルバラ・デネック、ジャクリーヌ・ルコント

1068年度、パリ・アカデミー・デュ・シネマ グランプリ
1969年度、モスクワ国際映画祭銀賞
1969年度、ウィーン映画祭大賞
1969年度、ストックホルム・スウェーデン映画オスカー

フランス郊外に建設された巨大な都市セットで撮影されました。
どこまでが本物で、セットなのか区別が付きません。

カメラは、空港ロビーでの人々の様子を捉えた映像から始まり、やがてパリのオフィス街へと移動します。
物語の前半は、ユロ氏(J・タチ)が巨大ビルのオフィスに面会に行く様子を描いています。
グレー一色の近代的な高層ビルは、オフィスで働く人々もグレーのスーツを身にまとっています。そこは、無機質な空間です。
ユロ氏が面会の相手となかなか会えないすれ違いの可笑しさと、そこにやって来る人々とのエピソードをギャグにしています。
後半は、一転して、レストラン内での一夜の騒動を描いています。
おもちゃ箱をひっくり返したような騒ぎの中で、アメリカ人観光客の団体や、レストランの従業員などの個々のエピソードが進行して行きます。
そんな中で、アメリカ人観光客の女性バーバラ(B・デネック)と、ユロ氏のひと時の出会いと別れを切なく描いています。
ラストは、明るい軽快な音楽が流れます。
朝の活気溢れるパリの街並み、そして、ぐるぐる回る車の渋滞はまるで回転木馬のようです。
華やかなパリの風景で幕を閉じます。

■風刺の効いたコメディです。
特に、前半部分のオフィスは、まさに現代の風景そのものです。

パリに来る海外の観光客の捉え方が的を得ています。
全般を通して、大笑いと言うより、クス・・・と笑いが込み上げてくる可笑しさです。



ベアーズ・キス (2002) 公開(2003)
Bear's Kiss
★★★☆
カナダ 1時間38分
監督・脚本・製作:セルゲイ・ボドロフ
脚本協力:テレンス・マリック
出演:レベッカ・リリエベリ、セルゲイ・ボドロフJr.、ヨアヒム・クロール

サーカス団のブランコ乗りの少女ローラ(R・リリエベリ)と、その少女に引き取られた小熊のミーシャ(セルゲイ・ボドロフJr.)
ミーシャは、何時しか人間の姿に変身出来るようになり、少女と愛し合うようになります。
サーカスの巡業は、ロシア・シベリアから、スウェーデン、ドイツ、スペインへとヨーロッパを横断します。
各地の風景を背景に展開するロードムービーであり、
ファンタジーな味わいを持つ美しくも切ない恋物語です。

※セルゲイ・ボドロフ監督が、故郷シベリア地方に伝承する民話にヒントを得て創作しました。
尚、クマ役の青年を演じるセルゲイ・ボドロフJr.は監督の息子ですが、
2002年9月に山岳事故で他界、本作品が遺作となりました。

この作品の特徴は、ファンタジー映画でありながら、CGなどの特殊効果を一切使っていないところにあります。
極めてリアルな映像なのに、映画からは、独特な世界観や幻想的な雰囲気が漂って来ます。

ミーシャは人間の姿になっても故郷シベリアの森に戻りたがっていますが、ローラはミーシャを愛しながらも文明社会に生きる人間。
森に行く踏ん切りがつかないまま、物語は意外な展開に・・・
ラストは、自然回帰を思わせるハッピーエンドな終わり方です。

■お子様向けの単なるおとぎ話&ファンタジー映画ではありません。
ラブ・シーンもあります。

天涯孤独な少女と、母を失った小熊。
2人に共通するものは孤独です。
サーカスという華やかな舞台とは裏腹に、舞台裏に漂う哀愁。
切なさと哀しさ、そして孤独感が作品全体を覆っています。
人間と動物、種を超えて愛し合う2人にも切なさを感じてしまいます。



ぼくの伯父さん (1958) 公開(2003)
Mon oncle
★★★★☆
フランス 1時間50分
監督・脚本・出演:ジャック・タチ
出演:ジャン・ピエール・ゾラ、アドリアンヌ・セルヴァンティ

1958年度、米アカデミー賞最優秀外国語映画賞
1958年度、カンヌ国際映画祭特別賞
1958年度、フランス批評家協会メリエス賞

人気を博したユロ氏の日常生活を描くタチの長篇第三作。プラスチック工場社長のアルペル氏のモダン住宅。そこには夫人と息子のジェラールが住んでいる。少年は下町に住む無職のユロ伯父さんと遊ぶのが大好き。鮮やかな色彩や奇妙な音響、軽快な音楽、不思議な住居、どこかしら滑稽な人々や犬たちもそこはかとなくおかしい。本作でタチは国際的名声を獲得する。
(=ジャック・タチ・フィルム・フェスティバルのチラシより)

ユロ氏(J・タチ)とその周りの人々との日常生活を淡々と描いてます。
モダンな社長の住宅と、ユロ氏の住む人情味溢れる下町。
文明批判とも取れる対比を、嫌味なく、ユーモアとナンセンスなギャグを交えて表現しています。
座りにくそうなモダンな椅子に無理して座り続ける社長や、
全て電化されたキッチンで(=返って手間が掛るような)料理を作る夫人。
モダンな住宅に関わる夫婦の可笑しさを描いています。

社長に追い払われた形で去っていくユロ氏ですが、
ラストは、切ないままで終わらず、
何時の間にかユロ氏に影響を受けた社長が、息子と手を繋ぐ場面で終わります。
絶えず子供と同じ視線で見るユロ氏、その優しい眼差しは、周りの人をも温かく包んでくれるようです。

アメリカ・モダン芸術の影響を受けた住宅や、魚の噴水のオブジェなど、あらゆるところでセンスの良さが感じられます。



ぼくの伯父さんの休暇 (1953) 公開(2003)
Les Vacances de Monsieur Hulot
★★★★★
フランス モノクロ 1時間23分
監督・脚本・出演:ジャック・タチ
出演:ナタリー・パスコー、ヴァランティーヌ・キャマックス

1953年度、ルイ・デリュック賞
1953年度、カンヌ映画祭国際批評家賞

長篇第二作にして、タチの別名ともなる無口で風変わりな紳士ユロ氏が初登場する記念すべき作品。浜辺のホテルで避暑客たちとユロ氏の過ごす、少々ドタバタ気味の夏休み。ユロに憧れる少年、若い娘へのほのかな恋心。稀薄なギャグに微笑み、のどかな憩いの時を、波の音や子供たちの歓声とともに味わえる稀有にして至福の喜劇。タチ的テーマ音楽も本作で確立する。
(=ジャック・タチ・フィルム・フェスティバルのチラシより)

■ユロ氏(J・タチ)は、何時も布の帽子を被ってパイプをくわえています。
歩く姿はやや前屈みで、どこか飄々としています。
浜辺のホテル。
避暑地で優雅に過ごす宿泊者たちの中に、一抹の風のように乱入して来たユロ氏。
皆のつつがない生活は、ことごとく乱されますが、
そんな中、子供と数人の人々はそんなハプニングを楽しんでいる様子です。
スクリーンから繰り出されるユロ氏のギャグの積み重ね。
ホテルの窓から時折入って来る一陣のつむじ風は、ユロ氏のドタバタ騒動とシンクロしているかのようです。

レコードや、波の音、車の故障音など、効果音の使い方がとても上手いです。
ユロ氏が乗っているボートが真っ二つに割れて波に漂うシーンは、その後の映画や漫画などに生かされている気がします。

ラストは、浜辺の風景がそのまま切手を貼った絵葉書になって終わります。
ひと夏のバカンスは終わりを告げます。
夏の終わる寂しさは、ある詩的なものを感じます。
ほのかな恋と、子供たちに向ける温かい眼差し。
ユロ氏が起こす騒動は、絶えず笑いを誘いますが、
ただのドタバタコメディに終わっていないところが心地良く、とても好感が持てます。



ぼくの伯父さんの授業 (1967) 公開(2003)
Cours du soir
★★★★
フランス 28分
監督:ニコラス・リボフスキー
出演:ジャック・タチ、マルク・モンジュ

「プレイタイム」の撮影中断時に同じセット、役者を使い、助監督を監督としてタチ脚本・主演で撮られた必見の短編。タチ教授の珍妙な講義と演習からなるこの授業では、釣りやテニス、乗馬といったミュージック・ホール時代の十八番と、繊細な観察に基づく身振り芸、さらに驚くべきことに「郵便配達の学校」の授業場面の舞台版さえも見られる。
(=ジャック・タチ・フィルム・フェスティバルのチラシより)

タチのパントマイムのいろいろが見れる興味深い作品です。
タバコの吸い方一つにしても、社会的に地位のある人によって違いがある・・・
そんな違いを示してくれます。
テニスコートにおける、チャンピオンから初心者までのボールの打ち方の違い、
実際に乗馬しながら、階級や年齢の違いによる馬への接し方なども見せてくれます。
人々の表情や身振りを観察することで、こんなにも変化に飛んだ演技が出来る素晴らしい実例です。



ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール (2001) 公開(2003)
Ma femme est une actrice
★★☆
フランス 1時間35分
監督・脚本・出演:イヴァン・アタル
出演:シャルロット・ゲンズブール、テレンス・スタンプ、ノエミ・ルヴォウスキー

妻は、人気女優のシャルロット・ゲンズブール。
夫である自分イヴァン・アタルは、ごく普通のスポーツ記者。
人気女優を妻に持った男の嫉妬に苦悩する姿をコミカルに描いたライトなラブ・コメディです。

実生活でも夫婦である2人は実名で登場していますが、
ストーリー的には、プライベートな雰囲気を漂わせた全くのフィクションです。
本作は、夫であるイヴァン・アタル初の長編監督作品です。

すれ違う日々は、愛を次第に嫉妬と疑惑へとかきたてて行きます。
女優という異なる世界に住む妻を、夫は理解出来ません。
シャルロットの共演者であるプレイボーイのジョン(T・スタンプ)の出現により、2人の生活に訪れる危機。
如何にして元の2人に戻れるか、その過程を面白可笑しく描いています。

■軽妙なタッチの明るいラブ・コメディです。
ただ、全般に渡って、2人のオノロケ話を聞かされているような感じで、
人気女優である妻の自慢話に終始しているようにも思われます。
作品に鋭さやキレが感じられず、少々物足りなさを感じます。

プレイボーイのジョン役のテレンス・スタンプも、せっかくの個性を活かし切れておらず、中途半端に終わっていて残念です。



郵便配達の学校 (1947) 公開(2003)
L'Ecole des facteurs
★★★★
フランス モノクロ 15分
監督・脚本・出演:ジャック・タチ
出演:ポール・ドゥマンジュ

1947年度、マックス・ランデール短篇喜劇映画賞

戦後、チャップリンのように監督・脚本・主演することになるタチの最初の短編で、無声喜劇の再来として絶賛された作品。郵便配達の学校で訓練を受けたタチ扮する郵便配達人が、所定時刻の航空便に間に合わせようとスピード郵便配達を実行するドタバタ騒動。冒頭の配達訓練場面の絶妙な面白さ!長編「のんき大将」の原型としても興味深い快作。
(=ジャック・タチ・フィルム・フェスティバルのチラシより)

■郵便配達の訓練を受ける3人の内、テンポが遅れがちの郵便配達フランソワ(J・タチ)
自転車をトラックに引っ掛けて走るシーンが一番の見どころです。
自転車を漕ぎながら、トラックの荷台をテーブル代わりに作業する様子が、とても上手く出来ていて可笑しいです。
流れるバックの景色と手前のタチとのコントラストが絶妙です。

飛び去る飛行機と、草原に残されたタチがほのぼのとしていて印象的。



ライフ・オブ・デビッド・ゲイル (2003)
The Life of David Gale
★★★★
アメリカ 2時間11分
監督:アラン・パーカー
出演:ケヴィン・スペイシー、ケイト・ウィンスレット、ローラ・リネイ

デビッド・ゲイル(K・スペイシー)は、優秀な元大学教授であり死刑制度に反対する活動家です。
しかし、レイプ及び同僚の女性を強姦殺人した罪で投獄、死刑を宣告されてしまいます・・・
彼の単独インタビューをすることになった女性記者ビッツィー(K・ウィンスレット)は、ゲイルの告白により無罪を確信、限られた時間の中、免罪を晴らす為調査に乗り出します。
死刑制度の問題を取り扱った社会派・サスペンスドラマです。

死刑制度の問題点を浮き彫りにしつつ、
ゲイル本人の語る告白は、真実なのかそうでないのか・・・
女性記者は踊らされているだけなのか、死刑は果たして行われるのか、
いろいろな要素を含んだミステリー・サスペンスになっています。
最後の最後まで、スリリングな展開と見事な脚本にぐいぐいと引き込まれて行きます。

■とにかく、ケヴィン・スペイシーの存在感に圧倒されます。

巧みなプロットや技法の方に目が行ってしまいます。
死刑制度を考えるメッセージ性というより、
どちらかと言うと、デビッド・ゲイル自身の願望を満たす気持ちが多いように思われます。



ワンダー・アンダー・ウォーター 原色の海 (2002) 公開(2003)
Impressionen unter wasser
★★★☆
ドイツ 45分
製作・監督・撮影・編集:レニ・リーフェンシュタール

昨年、100歳の誕生日を迎えたレニ・リーフェンシュタールは、48年振りの監督作を発表した。71歳でライセンスを取得したレニが、2000回におよぶダイブで撮影した膨大な映像を編集した海のシンフォニーです。
モルディブ、セイシェル、カリブ海・・・。悠々と泳ぐマンタや鮫、小さなクマノミ・・・。その色とデザインは、人間が創り出すモードやアート以上に創造的。レニだからこそ映せる至福の美が私たちを優しくつつむ。これは、世紀のアーティスト、レニが長い人生の最後に辿り着いた、海の生命のかけがえのない物語です。(=チラシより)

■ナレーションを一切入れておらず、音楽のみの映像です。
海で暮らす色鮮やかな魚たちやサンゴ礁の数々・・・美しい映像にしばし時を忘れてしまうほどです。
癒し系ともとれるこの映像は、観ていると心地よい眠りに誘われる恐れが有ります (*^∇^*)