2003年(10月〜12月)映画館で観たレビューです。




10ミニッツ・オールダー/イデアの森 ★★★★
10ミニッツ・オールダー/人生のメビウス ★★★★☆
MUSA −武士− ★★★★
アイデンティティー ★★★★
アララトの聖母 ★★★★
アンダーワールド ★★★
イン・ディス・ワールド ★★★★☆
インファナル・アフェア ★★★★
エヴァとステファンとすてきな家族 ★★★☆
女はみんな生きている ★★★★
キューティ・ブロンド/ハッピーMAX ★★★
キル・ビル ★★★
クジラの島の少女 ★★★★☆
黒の怨 ★★★
月曜日に乾杯! ★★★★
恋は邪魔者 ★★★
サロメ ★★★★☆
座頭市 ★★★☆
シモーヌ ★★★
ジャスト・マリッジ ★★★
真実のマレーネ・ディートリッヒ  ★★★★☆
再見 ツァイツェン また逢う日まで ★★★★
バリスティック ★★★
フォーン・ブース ★★★★
フレディ VS ジェイソン ★★★
ブラウン・バニー ★★☆
ぼくの好きな先生 ★★★★
ポロック ★★★★★
マグダレンの祈り ★★★★
マッチスティック・メン ★★★★
マトリックス レボリューションズ  ★★★★
リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い ★★★




10ミニッツ・オールダー/イデアの森 (2002) 公開(2003)
Ten Minutes Older / The Cello
★★★★
ドイツ・イギリス 92分

8人の監督が探求する”時間の謎”
「インドの寓話」「記憶」「銀河時間」
知の森では、この10分が永遠となる。
西洋・東洋の哲学者たちが地上から宇宙へと思いを馳せて思案した”時間の謎”に挑む8人の監督たちの知識のエッセンスが満ち溢れています。
遥かな時代にインド、ギリシャの哲人たちが捉えた”時間の正体”。
しかし、その概念は、「永遠の回答」とはならず、”時間”を巡る考察は、現在もまだ永遠のテーマである。
「イデアの森」は、過去、現在、未来・・・遥かな時空を超えて、”時間の謎”を解き明かす8人の巨匠監督たちの限りない知への探求である。
 〜チラシより抜粋

■「水の寓話」   ★★★★☆   
   ・・・独特の映像美、そして運命を語るストーリー展開の見事さ!
監督:ベルナルド・ベルトリッチ

■時代×4   ★★★   
   ・・・お得意の4分割画面、10分間ワンカット。
      繋がり合いつつも異なった時間軸を持つ画面に目はクラクラ。
監督:マイク・フィッギス

■老優の一瞬   ★★★☆   
  ・・・実在する老優ルドルフ・フルシンスキーの人生を10分間に凝縮。
      若さが持つ魅力から老いたるまでを耽美的に描いた秀作。
監督:イジー・メンチェル

■10分後   ★★★☆   
   ・・・10分後の顛末を描く。
監督:イシュトヴァン・サボー

■ジャン・リュック・ナンシーとの会話   ★★★☆  
   ・・・哲学なやり取りが延々と続く10分間。
監督:クレール・ドゥニ

■啓示されし者   ★★★☆   
   ・・・アウグスティヌスの「告白」
      独自の切り口で鮮やかに表現。
監督:フォルカー・シュレンドルフ

■星に魅せられて   ★★★★   
   ・・・宇宙空間、時空の持つ不可思議。
      時間がもたらす悲しさ、そして、人は求め続ける・・・
監督:マイケル・ラドフォード

■時間の闇の中で   ★★★★
   ・・・過去の作品、1本1分の映像を10本にまとめ上げました。
      それぞれのエピソードの”最後の瞬間”を描いています。
監督・ジャン=リュック・ゴダール


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自分的に一番素晴らしいと思った作品は、「水の寓話」
次いで、「星に魅せられて」「時間の闇の中で」の順です。

「水の寓話」
セピアがかったモノトーンの映像が美しいです。
ストーリーのオチも序盤で分かるのですが、それを前提に作ったとも思われます。
10分間という時間の中で繰り広げられる男の運命。
まさに大人の為の童話です。



10ミニッツ・オールダー/人生のメビウス (2002) 公開(2003)
Ten Minutes Older / The Trumpet
★★★★☆
ドイツ・イギリス 92分

7人の監督たちが描く”人生の瞬間”
「結婚」「誕生」「進化」「孤独」「死」「運」「郷愁」・・・
誰にでも訪れる7つの出来事を10分という短い時間に凝縮して描いています。
7人の監督が生み出したそれぞれの人生は連なって”メビウスの輪”となり、人生は前に進むしかないと熱く語りかけて来ます。 〜チラシより抜粋

■結婚は自分で決める   ★★★   ・・・男と女 「結婚」
監督・脚本・編集:アキ・カウリスマキ

■ライフライン   ★★★★★   ・・・素晴らしい作品です 「誕生」
監督・脚本:ビクトル・エリセ

■失われた一万年   ★★★★   ・・・時の残酷さ 「進化」
監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツウォーク

■女優のブレイクタイム   ★★★★   ・・・10分の悲しさ 「孤独」
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ

■トローナからの12マイル   ★★★★☆  ・・・映像の美しさ 「死」
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース

■ゴアvsブッシュ   ★★★★   ・・・真実を突き詰めて 「運」
監督:スパイク・リー

■夢幻百花   ★★★★   ・・・悲しくおどけた郷愁 「郷愁」
監督:チェン・カイコー


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巨匠監督による10分間の夢の饗宴。
どの作品も、10分間という短い時間に、それぞれの監督の独自の世界が広がっています。
自分的に一番素晴らしいと思った作品は、「ライフライン」
南欧のとある村の昼下がり。
ある一家のありふれた日常の、平和で静かに流れて行く時間を描いています。
赤ちゃんの泣き声は生を感じさせ、皆を安堵させますが、
その中で忍び寄る不吉な予感も・・・
無駄を一切省いた映像の中に、静かに感じ取れるメッセージがあります。



MUSA −武士− (2001) 公開(2003)
MUSA
★★★★
韓国・中国 2時間13分
監督:キム・ソンス
出演:チョン・ウソン、チュ・ジンモ、アン・ソンギ、チャン・ツィィー、ユー・ロングファン

1375年、元王朝から明王朝へと変わろうとする激動の中国大陸。
朝鮮の高麗王が新たな友好関係を築こうと明に使節団を送りますが
全てスパイ容疑を掛けられ、4度送った内の一つは行方不明になって消息が分からないそうです。
歴史から忽然と消え去った使節団の話を元に、壮大なスケールと壮絶なアクションで描いた歴史劇(=フィクション)です。

使節団の一行の中でも特に9人の武士たちにスポットを当てています。
日本にも通じる武士道の精神、そして
それぞれ守ろうとするものは違ってもそれに対して全身全霊で立向かって行く姿・・・
観ていて思わず目頭が熱くなります。
ラストは、熱い男たちの最期に涙が出てくるほど。
戦闘シーンは、すぐ間近で観ているような生々しさとリアル感があります。
血飛沫が飛び、腕や首が切断される・・・
血のシーンが多いので苦手な人は避けた方が良いかも知れません。

■槍の名手であるヨソン(チョン・ウソン)、
高麗の使節団、チェ・ジョン将軍(チュ・ジンモ)、隊正(アン・ソンギ)
元軍のランブルファ将軍(ユー・ロングファン)・・・
どれも粒揃いのハンサムさんたちばかりです (*^∇^*)ハァハァ
特に、チュ・ジンモはキムタク・反町を彷彿とするマスク、
アン・ソンギも影で隊を支える要の役を好演しています。



アララトの聖母 (2003)
Ararat
★★★★
カナダ 1時間55分
監督・脚本・製作:アトム・エゴヤン
出演:ディヴィッド・アルペイ、シャルル・アズナブール、アーシニー・カンジャン、マリ・ジョゼ・クローズ、イライアス・コティーズ

1915年に起きたトルコによるアルメリア人の大量虐殺。
その歴史的事件をモチーフに映画化するスタッフや映画そのものを中心に据え、それに関わる人々の物語が展開します。
本作品では、アルメリア人大量虐殺の件は映画撮影として登場し、いわゆる劇中劇として描かれています。
また、虐殺を生き延びたアルメリア出身の画家アーシル・ゴーキーの絵画「芸術家と母親」が、登場人物に何らかの形で関わっています。
歴史的事実を振り返り、過去と向き合うことの大切さ。
人と人との絆を取り戻す群像劇です。

カナダで育ったアトム・エゴヤン監督。
両親はアルメリアからの亡命者です。
そういった経緯からも、映画からは、アルメリア民族の深い哀しみと想いを感じられます。

■いろいろな人物が登場しますが、自分は特に、空港関税官(クリストファー・プラマー)の件が印象的です。

群像劇の中にアルメリア人虐殺の映画を挿入している為、
話がややまとまりの無いものになっており、
虐殺事件に感情移入しても実は映画の撮影風景・・・
そんな場面が繰り返し行われるので、感情が分断されてしまう感じは否めません。
ただ、そういった難点をも覆い隠す力強さがこの作品にはあります。
それぞれの家族や人々が抱える問題。
それはまるでジグソーパズルのようにはまっています。
そして、ラストで解き放たれた爽快感。
特に大きな感動といったものではなく、静かに余韻が残る作品でした。



アンダーワールド (2003)
Underworld
★★★
アメリカ 2時間1分
監督:レン・ワイズマン
出演:ケイト・ベッキンセイル、スコット・スピードマン、マイケル・シーン、シェーン・ブローリー、アーウィン・レダー

何世紀にも渡って繰り返されて来た、吸血鬼(ヴァンパイア)と狼男族(ライカン)との闘い。
その戦いの中で芽生えた吸血鬼族の女処刑人セリーン(K・ベッキンセイル)と人間の青年マイケル(S・スピードマン)との種を超えた禁断の恋・・・
壮絶な死闘が繰り広げられるゴシック・ホラー・アクション映画です。

全編に渡ってダークで沈んだ色調です。
激しく振り続く雨のシーンが多く、地下鉄や地下室、古い屋敷など、重く冷たい映像です。
クールでスタイリッシュな映像は、レン・ワイズマン監督(映画のデザイン部門でキャリアを重ね、MTV・CF業界で活躍した)のセンスの良さを感じさせます。

■ケイト・ベッキンセイルがクールにキメてます!!
彼女のスリムな体形と、さり気な色気が美しく、
ガンアクションも炸裂し、最初から最後までテンポ良く見せてくれます。

ただ、吸血鬼族と狼男族との因縁話は少々陳腐な話にも思えます。
・・・が、映像センスとケイト・ベッキンセイルの魅力で良しとします!!笑



イン・ディス・ワールド (2002) 公開(2003)
In This World
★★★★☆
イギリス 1時間29分
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:ジャマール・ウディン・トラビ、エナヤトゥーラ・ジャマディン、イムラン・バラチャ

パキスタン北西辺部、ぺシャワール。
孤児のジャマール(ジャマール・ウディン・トラビ)と従兄弟の青年エナヤット(エナヤトゥーラ・ジャマディン)、パキスタン難民の二人がロンドンを目指して命がけで旅をするドキュメンタリー・タッチの社会派ドラマです。
尚、本作品は、2002年に実際に起きた事件(イギリスへ不法入国した中国人が多数死亡)を基に制作されました。
1003年、ベルリン国際映画祭、金熊賞受賞。

観ているとドキュメンタリー映画のようですが、実はフィクションです。
しかしながら、ハンディカメラで密着撮影された彼らの旅は、まさに事実とも変わらない姿があります。
カメラが映す映像を通して、彼らが感じる不安や希望がそのまま私達の気持ちに同化し、
観客は彼らの視線と一体となります。

■若者に託して大金を都合した老人たちと、その期待を受け希望を胸に旅をする二人。
死と隣合せの危険を顧みず過酷な旅に出るのは、そうせざるを得ない彼らの置かれた状況があります。
頼れるのは、怪しげな手配師と所持金のみ、そして後は運任せ。
難民たちの生活を肌で感じ、問題を投げかける衝撃的な映画です。

パキスタンからイラン、テヘラン・・・そしてトルコ、イタリア、フランス、イギリスへと旅をするロードムービーでもあります。



インファナル・アフェア (2002) 公開(2003)
Infernal Affairs
★★★★
香港 1時間42分
監督・撮影:アンドリュー・ラウ
監督・脚本:アラン・マック
出演:アンディ・ラウ、トニー・レオン、アンソニー・ウォン、ケリー・チャン

第22回、香港フィルム・アワード、主要7部門を授賞
他、多数の賞を受賞しています。

香港、警察とマフィアの犯罪組織。
マフィアに潜入して囮捜査をする警察官(トニー・レオン)、警察に潜入するマフィアの青年(アンディ・ラウ)
それぞれの組織から身分を隠して潜入者として送らた2人の男。
10年の歳月が流れ、それぞれが重要な地位に付き、
やがて2人の運命が交差します。
スリリングな展開と緊迫感溢れるタッチで描く、本格的なハードボイルド・サスペンスです。

2人の運命が最後まで予想が付かず、二転三転する展開に目が離せません。
身分がばれると「死」が待ち受けている極限の状態に置かれた男たち。
絶えず忍び寄る身の危険と、苦悩に満ちた生活に身を置きながら、
それでも自分の使命を全うする男たちの姿に感動します。
共に運命に弄ばれ翻弄される姿に、はかなさとやるせなさ、
ある種の美しささえ感じます。

劇中で使用される携帯電話、モールス信号、封筒などの小道具が効果的に使われています。

■アンディ・ラウとトニー・レオン、見事なほどの適役です。
沈着冷静で隙が無いアンディ・ラウ、
本来の警察官と裏社会の間でくたくたに疲れ果てているトニー・レオン。
葛藤、裏切り、友情、恋愛・・・
男たちの熱い演技は、胸に込み上げてるものがあります。



エヴァとステファンと素敵な家族 (2000) 公開(2003)
Tillsammans
★★★☆
スウェーデン 1時間46分
監督・脚本:ルーカス・ムーディソン
出演:エンマ・サミュエルソン、サム・ケッセル、リーサ・リンドグレン、ミカエル・ニュークヴィスト

フランダース国際映画祭準グランプリ
他多数受賞しています。

1975年、スウェーデン、ストックホルム。
既成の価値観・制度に異を唱えた若者たちが自由と夢を求め共同生活を送った「コミューン」
ある日突然、家を飛び出しそこで暮らすことになった母エリザベート(L・リンドグレン)と幼い姉エヴァ(E・サミュエルソン)弟ステファン(S・ケッセル)
あまりの生活習慣の違いに最初は戸惑いながらも、次第に彼らに心を開いて行きます。
個性的な住人たちをブラックテイストのユーモアと皮肉で描き、
人と人との心の交流や家族の絆など、人間関係の大切さを描いたドラマです。

共産主義、フリーセックス、同性愛・・・お互い主張は異なるけれどそれぞれが意見を言い合い認め合う、そんな個性的な人々が暮らすコミューン。
しかし、そこに親子3人がやって来たことで、少しずつ均衡がくずれて行きます。
結局、極端な意見を持つ人は去り、人に対して寛容な気持ちを持つ者だけが残って行きます。
それは言い換えれば、自由を声高々に主張している人は、裏を返せばある意味自分勝手、そして自分の行動が人を傷付けていることに気が付かない人たち。
人への思いやりの大切さや自分勝手な行動に気づいた人たちが自然に残ったのです。
これは、ある一つのコミューンでの出来事ですが、
広い観点から見ると、世界のあちこちで起きている内紛や戦争、そういったものと共通しているものがあるのかも知れません。

70年代のファッションやインテリア、そしてアバのヒットメドレーで綴る名曲も見所です。

■70年代に触れたことがある方には堪らなく魅力的な作品です。
そうでない方には、この映画も面白さが半減し、??かも知れません。
ブラックテイストの笑いと切なさ、コミューンを舞台に繰り広げられる人間模様を描いています。
人と人とが支え合って共にに生きて行く大切さ、素晴らしさをこの映画から感じ取ることが出来ます。

手持ちカメラで撮影したカメラワークも、今まさにそこにいる臨場感を味わえます。



女はみんな生きている (2001) 公開(2003)
Chaos
★★★★
フランス 1時間52分
監督・脚本:コリーヌ・セロー
出演:カトリーヌ・フロー、ヴァンサン・ランドン、ラシダ・ブラクニ、リーヌ・ルノー、オレリアン・ヴィーク

2002年、第27回セザール賞最優秀有望若手女優賞(ラシダ・ブラクニ)受賞、
作品賞、脚本賞、主演女優賞(カトリーヌ・フロ)、助演女優賞(リーヌ・ルノー)ノミネート作品です。
他、多数受賞しています。

主婦エレーヌ(カトリーヌ・フロー)は会社を経営しているポール(ヴァンサン・ランドンと大学生の息子ファブリス(オレリアン・ヴィーク)を持つ平凡な主婦。
あるきっかけで謎の娼婦ノエミ(ラシダ・ブラクニ)を助けたことから、彼女の人生はガラリと変わって行きます。
ハラハラドキドキのスリリングな展開と、笑いあり涙ありの痛快サスペンス・コメディです。

家事と仕事、そして身勝手な夫と息子の世話に追われるだけの平凡な主婦。
そんな彼女が全く境遇の違う女性に出会ったことから起こる事件の顛末を描いた作品です。
エレーヌはノエミを助け必死に世話をしますが、実は世話をしながらも彼女に助けられている・・・自分は自分であることに気づかされます。
自分の存在意義に気づき新しい世界を発見して行きます。

全体的にコミカルな映画でありながら、実は、重いテーマを扱っています。
家庭の役割、女性の地位、売春組織、貧困社会・・・
これらの題材を盛り込みながらも、決して話が重苦しくなることなく、むしろ明るい楽しいコメディとなっています。
ストーリー展開がスピーディでありながら、随所にクスクス・・・と笑いのエッセンスを散りばめる見事さ。
役者たちの達者な演技も作品をほんわ〜かと温かいものにしています。

■最後まで先の読めない展開が楽しいです!!
クス・・・と笑えるユーモアと、涙が出てくるほどの痛々しさと、そしてちょっぴりと感動・・・
観た後はとっても爽やかで元気が出てくる映画です(=ウフ、特に女性にね♪)

男性は血の気が引き、女性にはパワーが湧いてくる素晴らしい映画です!!笑



キューティ・ブロンド/ハッピーMAX (2003)
Legally Blonde 2
★★★
アメリカ 1時間35分
監督:チャールズ・ハーマン・ワームフェルド
出演:リース・ウィザースプーン、サリー・フィールド、レジーナ・キング、ルーク・ウィルソン、ジェニファー・クーリッジ

キュートでお洒落なブロンド娘エル・ウッズ(リース・ウィザースプーン)が活躍する大ヒット・コメディの第2弾です。
今回は、ワシントンD.C.政界を舞台にしています。
彼女の持ち前の明るさと何事にも挫けない元気なパワーで、お堅い政界に新風を巻き起こします。

■ハートウォーミングでとても明るい映画。
落ち込んでいる時には、勇気を貰え元気付づけてくれそうです。

ご都合主義的な展開は、観客へのサービス♪
・・・しかし、ちと興ざめと思える部分は否めず、歳を取ったせいかと思いユーウツに。笑



クジラの島の少女 (2003)
Whale Rider
★★★★☆
ニュージーランド 1時間42分
監督・脚本:ニキ・カーロ
出演:ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、ラウィリ・パラテーン、ヴィッキー・ホートン、クリフ・カーティス、グラント・ロア、マナ・タウマウヌ

2002年、トロント国際映画祭、観客賞受賞
2003年、サンダンス映画祭ワールド・シネマ部門、観客賞受賞
2003年、ロッテルダム映画祭、Canal+観客賞受賞

ニュージーンランド北東、浜辺の小さな村。
古い伝統を大切に守り伝承しようとするマリオ族の老人たちは、伝統を捨て去る若者たちに危機感を抱いています。
族長の血を受け継ぐ少女パイケア(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)は、女であることを理由に後継者の選考にも入れてもらえません。
ニュージーランドの美しい自然、そして、1人の少女によって託された一族の未来。
感動のヒューマンドラマです。

この映画は、単なるフェミニズムの映画ではありません。
男性社会に疑問を投げかけながら、消滅の危機に瀕した伝統と家族の絆を取り戻す・・・そんな映画です。
1人の少女の愛と勇気、そして郷土を愛する強い心が村に奇跡を起こすのです。

初盤のロープの場面。
ロープを束ねる一つ一つの糸は、先祖から子孫へと繋がる伝統であり、家族そのものであります。
劇中で一度は切れたロープを、祖父コロ(ラウィリ・パラテーン)は新しいロープを、少女はくるっと結んで再生する・・・
こういったシーンでも、少女と祖父の違いを表し、その後の展開を暗示させます。

■少女の事を疎んじている祖父は、同時に彼女を深く愛しています。
複雑な祖父の気持ち、そしてそんな祖父を心から愛する少女。
少女を取り巻く人物たちも、彼女を温かく見守っています。
観ていて涙がポロポロと流れる感動作でした。

後継者探しの特訓をしているマリオ族伝統の踊りが楽しい (=^∇^=)
浜辺に打ち上げられたクジラを、村人たちが夜通しかけて介抱するシーンも印象的です。



黒の怨 (2003)
Darkness Falls
★★★
アメリカ 1時間25分
監督:ジョナサン・リーベスマン
出演:チェイニー・クレイ、エマ・コールフィールド、リー・コーミー

小さな港町、ダークネス・フォールズを舞台に、
トゥース・フェアリー<歯の妖精>にまつわる伝説をモチーフに繰り広げられるクリーチャー・ホラーです。

アメリカでは、抜けた乳歯を枕の下に置いて眠ると、夜の間に妖精が来て歯の変わりにコインを置いていってくれる・・・
こんな素敵なお話も、本作では、人々を恐怖に陥れるモンスター映画となります。
歯の妖精に見立てられたモンスターは、強い怨念に支配された老婆です。
この映画の場合、どこまでも追いかけてくる執拗さと、人間の本能的な「闇への恐怖」
この二つがミックスして、映画を面白いものにしています。

■むしろプロローグの方が、これから起きる恐怖を予感させて怖いものがあります。
ストーリー的には、正体がモンスター化した老婆と分かっている為、
どう襲って来るか、闇を避け光の中にどう身を置くか、
その点を楽しむ展開となっています。
先が読めてしまうラスト。
しかし、なかなか面白い映画であります。

とても老婆(=の霊)とは思えない速さ!!
走っても走っても追いかけて来る老婆が凄いです。笑



月曜日に乾杯! (2002) 公開(2003)
Lundi Matin
★★★★
フランス・イタリア 2時間7分
監督:オタール・イオセリアーニ
出演:ジャック・ビドウ、アンヌ・クラヴス=タルナヴスキ、ナルダ・ブランシェ、ラズラフ・キンスキー、アリーゴ・モッツォ

2002年、ベルリン国際映画祭、銀熊賞、受賞
2002年、国際批評家連盟賞、受賞
他、多数授賞しています。

フランス郊外の小さな村。
ヴァンサン(ジャック・ビドウ)は、平凡で代わり映えしない毎日に嫌気がさし、ある日急に思い立って旅に出ます。
水の都ヴェニスで意気投合した人々と飲んで語らい、幸せな時間を過ごします。
旅先での数々の楽しい出来事、美しい風景・・・
さり気ないユーモアと温かい眼差しで見つめたこの作品、
主人公の気ままな旅を通して、日常の中のささやかな幸せを描いた作品です。

■特に大きなストーリー展開がある訳ではありません。
のんびりと気分転換したい方に。

まるで大人の絵本を観ているような映画です。
数々のエピソードが散りばめられていますが、実はそれらは一つ一つが繋がっていて、素敵な一つの絵本になって行きます。
ジャック・タチを思わせるユーモアセンス、
さり気ない可笑しさが堪らないユニークなキャラクター、
それらが上手い具合に絡み合い、魅力的な作品になっています。
クスクス・・・と笑わせてくれる、独特の不思議な味わい。
観た後、ゆったりとした気持ちにさせてくれる心地よい作品です。



サロメ (2000) 公開(2003)
Salome
★★★★☆
スペイン 1時間26分
監督・脚本・演出:カルロス・サウラ
振付・出演:アイーダ・ゴメス
出演:ペレ・アルキリュエ、パコ・モラ

スペインの巨匠カルロス・サウラと、元スペイン国立バレエ団芸術監督でフラメンコダンサーの第一人者である振付家アイーダ・ゴメス。
舞台「サロメ」の演出をアイーダ・ゴメスに依頼されたカルロス・サウラが、同時平行で「サロメ」の映画製作を提案します。

アイーダ・ゴメスが舞台のリハーサルを始め、
その隣では、その舞台を演出し映画に撮る為、監督と音楽監督、衣装スタッフたちが打ち合わせをしています。
やがてカメラはアイーダのインタビューへと移り、舞台へと移行して行きます。
尚、本作品のベースとなっているのは、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」です。

前半はリハーサル風景を映し、
後半1時間はフラメンコとバレエが融合した幻想的な「サロメ」の舞台を映します。
前半のリハーサル風景はあたかもドキュメンタリーに思えますが、実は、俳優によるメイキング風景の再現です。
現実と虚構の世界は曖昧に見え、観ている者は戸惑いながら、
いつしか舞台(=虚構の世界)に引き込まれて行きます。
舞台を撮っているにもかかわらず単なる舞台風景に終わらず、
踊り手の息づかいが聞こえるような迫力あるシーンが映し出され、その世界にすっかり酔わされてしまいます。

■シンプルな舞台に、狂おしくも熱く激しい想いを秘めたゴメスの「サロメ」
官能的な踊りと哀愁漂う音楽。
人間の持つ欲望や、愛憎、究極の愛といったものを踊りによって表現したゴメスの世界に魅了されてしまいます。

「サロメ」の戯曲に興味ある方、舞踏を映像で堪能したい方向きです♪



ジャスト・マリッジ (2003)
Just Married
★★★
アメリカ 1時間37分
監督:ショーン・レヴィ
出演:アシュトン・カッチャー、ブリタニー・マーフィ、クリスチャン・ケイン、ディヴィッド・モスコウ

資産家の娘サラ(A・カッチャー)とローカル・ラジオ局の交通情報キャスター、トム(B・マーフィー)の二人が恋に落ち、9ヶ月後に結婚、そしてハネムーン。
しかし、ハネムーン先で数々の災難に遭遇し、二人の仲は壊滅状態に・・・
ヨーロッパを舞台に繰り広げる、軽いノリのラブ・コメディーです。

ちょっとした行き違いや予想もつかない事態が重なり、
次第に、「理想と現実」「価値観の相違」を肌で感じていく二人。
恋をする人には誰もが一度は体験することかも知れません。
愛し合う二人がぶつかり合い、悩みながらも幸せを見つけて行く姿に、
まるで等身大の自分たちを見ているようで、微笑ましく共感が持てるのだと思います。

※脚本のトム・ハーパーの実体験に基づいたお話だそうです。
なので、とってもリアルなのかも!?  (*^∇^*)

■アシュトン・カッチャー、ブリタニー・マーフィ
二人が繰り広げるドタバタが可笑しく、そして、とってもフレッシュ!!
ストーリー展開もテンポ良く、楽しい映画です。



真実のマレーネ・ディートリッヒ (2001) 公開(2003)
Marlene Dietrich Her Own Song
★★★★☆
フランス・ドイツ・アメリカ 1時間45分
監督:J・デヴィッド・ライヴァ
出演:マレーネ・ディートリッヒ、ジャン・ギャバン、バート・バカラック、アンドレ・G・ブルネラン、ローズマルー・クルーニー

20世紀を代表する大女優の一人、マレーネ・ディートリッヒ。
彼女の知られざる一面と、正確な記述に基づいた正統派ドキュメンタリー映画です。
数々の未見のフィルム、そして、
ディートリッヒの人生に関わった俳優や監督など多数の人たちが登場し、
彼女の素顔を証言します。
彼女の知られざる真実に迫った映画とも言えます。
監督は彼女の孫であるJ・デヴィッド・ライヴァ。
マレーネの一人娘のマリア・ライヴァも母の素顔を紹介しています。

■数々の戦地を慰問し兵士に生きる力を与えたマレーネ・ディートリッヒ。
ドイツ人でありながら最後まで祖国に受け入れられなかった彼女は
何を思い歌い続けたのでしょう。
名曲「リリー・マルレーン」「花はどこに行った」を聞きながら涙がこぼれました。



再見 ツァイツェン また逢う日まで (2001) 公開(2003)
Roots and Branches
★★★★
中国 1時間35分
監督・脚本:ユイ・チョン
出演:ジジ・リョン、ジャン・ウー、シア・ユイ、ツイ・ジェン

2001年、カステリナリア国際青年映画祭ゴールデン・キャッスル賞グランプリ受賞
2002年、モスクワ国際児童青少年映画祭ブロンズ・テディ・ベア特別賞受賞
他、多数受賞しています。

両親の不慮の事故によって離れ離れになってしまった4人の兄弟姉妹。
20年の歳月を経て再会を果すことが出来た長い道のりを、情感豊かに描き出した家族の愛の物語です。

中国・東北地方の冬景色を背景に描き出す幼少時代と、近代的な街並みの北京を舞台にした現代、
過去の回想シーンを挟みながら、大人になった彼らの兄弟探しへとストーリー展開して行きます。

■涙無しでは観られません。
特に、子役たちのひたむきな愛らしい笑顔と悲しい別れとの対比があまりにも辛く、涙がポロポロと流れてしまいます。
昔の日本にもあったであろうノスタルジー溢れる素朴な映像と、
決して変わることのない家族の愛と兄弟の愛。
家族の情愛をしみじみと語った、切なく、そして、温かさを感じる作品です。

ラストはあまりにストレート過ぎて少々陳腐にも思えましたが、
(=泣かせようとする過剰な演出、ご都合主義、ツッコミどころ)
この作品にはそういった難点を忘れてさせてしまう力強さがあり、
全体的に素直に泣ける感動作品です。

※本来なら★★★☆なのですが、涙の分だけ+☆で★★★★となりました。



バリスティック (2003)
Ballistic : Ecks vs. Sever
★★★
アメリカ 1時間31分
監督:カオス
出演:アントニオ・バンデラス、ルーシー・リュー、レイ・パーク

国防諜報局(DIA)長官ダリルの息子が謎の女に誘拐されます。
最新生物兵器「ソフトキル」の存在、エクスの妻の死の真相、
誘拐事件の裏に隠された陰謀・・・
謎解きとスリルあふれる展開、そして、
大量の火薬による爆発シーンと凄まじい銃撃戦、迫力満点のアクションが楽しめます。
1人で巨大な組織に立ち向かう女性エージェントをルーシー・リュー、
元FBI捜査官エクスにアントニオ・バンデラスが演じています。
「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」のダース・モール役レイ・パークも素顔で登場しています。

■ルーシー・リューが堪らなくカッコイイです!!
元々は男性を想定していたキャラだそうで、
表情を変えず、まばたき一つせず撃ちまくる姿にホレボレします♪
男勝りのパワフルなアクションと、華麗さ、優しさを加えた殺人マシーンを演じています。
主演のアントニオ・バンデラスの存在が薄く感じるほどです。

爆発、銃撃戦がお好きな方に是非!!
ストーリーに関しては、ツッコミどころが多いのがかなり可笑しい。



フォーン・ブース (2003)
Phone Booth
★★★★
アメリカ 1時間21分
監督:ジョエル・シューマカー
出演:コリン・ファレル、フォレスト・ウィッテカー、ラダ・ミッチェル、ケイティ・ホームズ、キーファー・サザーランド

マンハッタン。
公衆電話に入り、たまたま掛かって来た電話に出てしまった男スチュ(C・ファレル)
受話器を取ったその時から何者かに命を狙われ電話ボックスから出られなくなってしまう・・・
恐ろしくも悲惨な話を描いたサスペンス・スリラーです。

全編に渡ってほぼ電話ボックスのみで展開するお話です。
舞台を固定した演出は、舞台劇にもなりそうです。
話によっては変化が無くつまらないものになる恐れがあるのに、
広がるあるストーリー展開、息もつかせぬ緊張感溢れる映像、
ラストまで先の読めない展開に釘付けになってしまいます。
この映画の成功は、全編を通して1人芝居をしているコリン・ファレルの演技によるところが大きいです。

■最初は余裕、しかし徐々に追い詰められて行くコリン・ファレル。
汗だくだくの演技に拍手!!



フレディ VS ジェイソン (2003)
Freddy vs. Jason
★★★
アメリカ 1時間38分
監督:ロニー・ユー
出演:ロバート・イングランド、ケン・カージンガー、モニカ・キーナ、ジェイソン・リッター

焼けただれた顔、手製の鋭利なナイフ爪、夢を自在に操つり悪夢に変えてしまう殺人鬼、「エルム街の悪夢」のフレディ・クルーガー。
アイス・ホッケーのゴールキーパー・マスクを装着し、無差別に殺戮を続ける冷酷な殺人鬼、「13日の金曜日」のジェイソン・ボーヒーズ。
共に不死身の殺人鬼であり、80年代を代表するホラー映画の人気キャラクターです。
この全く異なる二つの映画を一つにし融合させた新たなホラー映画です。

夢の中で主に活動するフレディと現実世界のジェイソン。
異なる世界に住む二人が如何にして出会うのか、
出会った二人の関係はどのように変化して行くのか・・・
ラストが読めないストーリー展開が見事です。

■フレディが冒頭から親切丁寧にこれまでの経緯を説明してくれます。
シリーズを観た方はもちろん、初めて観る人にも分かるように配慮してあります。
80年代を彷彿とさせるアナログ的な雰囲気です。
後半は、主にフレディとジェイソンの闘いになるのですが、
CGをふんだんに使い、飛び回り駆け回る二人がかなり可笑しいです。
血が大量に噴出すスプラッター、そして、ブラック・ユーモア・・・
共に健在です。



ブラウン・バニー (2003)
The Brown Bunny
★★☆
アメリカ 1時間30分
監督・脚本・製作・美術・撮影・編集・ヘアメイク・衣装・出演
 :ヴィンセント・ギャロ
出演:クロエ・セヴィニー

2003年のカンヌ映画祭において、前代未聞のバッシングの攻撃と賞賛の嵐に晒された問題作。
映画祭終了後も保守派と擁護派に別れ、物議をかもしました。

250CCフォーミュラーUの最終戦を終え、次のレース地カリフォルニアへと旅立つバイク・レーサーのバド(V・ギャロ)
アメリカ大陸を東から西へと横断しながら、昔の恋人デイジー(C・セヴィニー)の面影を追い続けます。
アメリカの広大な荒野を駆け抜けるロード・ムービー&ラブ・ロマンス映画です。

かつてプロのバイクレーサーとしてアメリカ各地を転戦していた経験を持つギャロ。
バイクをバンに積み込みドライブする旅は、彼のそういった体験が生かされています。
アメリカ大陸の荒涼とした風景がとても美しく、
そこで旅した一つ一つの情景が、ラストへの伏線となっています。
バドのガラス細工のような繊細で純粋な愛・・・
深い愛と深い悲しみ・失望感は、かつて恋人だったデイジーへと向けられます。
バドの旅を通して、観ている私たちも彼と共に旅をします。
そして、二人の間に何があったのか・・・
ミステリー感漂う、美しい愛の形を体験することになります。

■ギャロのファンには堪らない作品。
ラスト数十分に全てが凝縮されてます。
それまでのロードムービーは特にストーリーがある訳ではありません。
雨に煙る一本道や静まり返った街並みなど、何処か詩的なモノを感じさせる映像は日本人の感性に合っているような気がします。

ラストは、問題のオーラル・セックスシーン。
かなり激しいです。笑



ぼくの好きな先生 (2002) 公開(2003)
Etre et avoir
★★★★
フランス 1時間44分
監督:ニコラ・フィリベール
出演:ジョルジュ・ロペス先生、アリゼー、ジョジョ、マリー、レティシア、ジョアン、ジェシー、アクセル、ローラ、ギョーム、オリヴィエ、ジョリアン、ジョナサン、ナタリー

2002年、カンヌ国際映画祭、特別招待作品
2002年、ヨーロピアン・フィルム・アワード 最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2003年、バリャドリッド国際映画祭
 最優秀ドキュメンタリー賞受賞
2003年、フランス・セザール賞 最優秀編集賞授賞
他、数々の賞を受賞しています。

フランス中部、オーベルニュ地方にある小さな小学校。
ジョルジュ・ロペス先生と、3歳から11歳までの子供13人が一つの教室で学んでいます。

美しい自然の中、先生と共に学び、遊んだ日々を綴った感動のドキュメンタリーです。

日本でいうと、過疎化の村にある分校です。
学年の違う子供たちが一つの教室で学ぶことは、マンモス校では得られないものを感じます。
学校をまとめるジョルジュ・ロペス先生の温かい人柄や、
一人一人を見つめ、指導してくれる心のこもった授業が
子供たちの支えになり、元気付けてくれるのです。

先生は20年間この学校で教え、あと1年半で定年になります。
映画では、子供たちにあと1年半で退職する事を告げ、
夏休みに入るところで唐突に終わります。

先生の複雑な表情を映して終わるラストは、押し付けがましい感動作品に終わらず、とても印象的です。
先生が中学に進学する子供たち一人一人に語りかけるシーンは、
一つ一つの言葉が、進学する子供たちを案じ、厳しい中にも深い愛情を感じます。

■子供たちの自然な姿をカメラは追っています。
先生と子供たちの生活を追ったこの作品は、まさに映画ならではのドキュメンタリーです。
是非、映画館で観たい作品です。



ポロック (2000) 公開(2003)
Pollock
★★★★★
アメリカ 2時間3分
監督・出演:エド・ハリス
原作:スティーヴン・ネイファー、グレゴリー・ホワイト・スミス
出演:マーシャ・ゲイ・ハーデン、エイミー・マディガン、ジェニファー・コネリー

第73回、アカデミー賞主要2部門(主演男優賞、助演女優賞)を授賞、
他多数授賞しています。

アメリカ、モダン・アート界を代表する、実在の天才画家ジャクソン・ポロック。
彼の壮絶な人生と、彼を支え続けた女性アーティスト、リー・クラズナーとの姿を描いた伝記映画です。

白いキャンバスを床に置き、絵具を注ぎ「ドリッピング」、滴る「ボーリング」なる独特の創作スタイルを生み出し、
アメリカ現代美術の先駆けとなった時代の寵児ポロック(E・ハリス)
しかし、ポロックのあまりに繊細な感性と制作の行き詰まりが、次第に彼を壊して行きます。
酒に溺れ、徐々に自分を見失っていくポロック。
人生における成功と破滅を体験した者に訪れるそれはあまりに痛々しく哀しいです。
妻であり女性アーティストである、リー・クラズナー(マーシャ・ゲイ・ハーデン)との絆を描いた作品でもあります。

■ エド・ハリスは、まさにポロックが乗り移ったようかのような鬼気迫る演技です。
特に制作シーンでは完全に役に成り切っており、
構想10年を掛けただけあって並々ならぬ意気込みが感じられます。

※本来なら★★★★☆なのですが、エド・ハリスの見事な演技に+☆で★★★★★となりました (*^∇^*)
それにしても、体重を自由に操る事が出来るエド・ハリスは凄いです!!



マグダレンの祈り (2002) 公開(2003)
The Magdalene Sisters
★★★★
イギリス、アイルランド 1時間58分
監督・脚本;ピーター・ミュラン
主演:ノーラ=ジェーン・ヌーン、アンヌ=マリー・ダフ、ドロシー・ダフィ、ジェラルディン・マクイーワン、アイリーン・ウォルシュ

2002年、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作品です。

1960年代、アイルランドにあるマグダレン修道院。
本来ならば女性を「保護し自立させる厚生施設」がその使命を忘れ、
シスターには絶対服従、過酷な規律、折檻や虐待が常習化し
あたかも囚人のような扱いを受けていました。
本作品は実話を元にしており、
この施設に送られて来た何も罪の無い3人の娘バーナデッド(ノーラ=ジェーン・ヌーン)、マーガレット(アンヌ=マリー・ダフ)、ローズ(ドロシー・ダフィ)に焦点を当て、
少女たちの過酷な運命と、修道院の実態を描き出しています。

映画の舞台となったマグダレン修道院はごく最近まで実在し、
こいった施設が全廃されたのは1996年だそうです。

■決して明るい映画ではありませんが
少女たちが決して諦めず、まっすぐ前を見据えていたこと・・・
辛く過酷な生活の中にも最後まで希望を持ち続けていたことに一筋の希望が見えます。
ラストの堂々とした行動には拍手を贈りたいほどです。

衝撃的な作品です。
同じ女性として、怒りの行き所の無い哀しい映画です。
聖職者であっても、閉ざされた空間に長く居ると人間はこんなにも
サディスティックな歪んだ精神になって行くのでしょうか。
以前観た「es」を思い出してしまいました。
過去にこういった事実があったこと、人間性の問題として、
是非、たくさんの人に観て欲しい作品です。



マッチスティック・メン (2003)
Matchstick Men
★★★★
アメリカ 1時間56分
監督:リドリー・スコット
製作総指揮:ロバート・ゼメキス
出演:ニコラス・ケイジ、サム・ロックウェル、アリソン・ローマン

病的な潔癖症に悩まされる詐欺師ロイ(N・ケイジ)は、
相棒のフランク(S・ロックウェル)と共に詐欺家業を営み、悠々自適の生活を送る毎日です。
相棒の勧めで精神分析医を紹介して貰い、実の娘アンジェラ(A・ローマン)と対面を果しますが・・・
娘との再会がきっかけで、彼の人生は思いもかけない方向に変わって行きます。
コメディタッチのコン(=詐欺)映画です。

ただ単に詐欺のテクニックを披露する映画ではありません。
観ている最中は鮮やかな詐欺の手口に一種の快感を覚えますが、
主人公がしっぺ返しを食い悲劇に陥るように、
観ている私達も、騙された人の心の痛みを感じることになります。
鮮やかな詐欺の手口は、この映画の潤滑油みたいなもの。
娘との出会いによって、ロイの心は癒され、
数々の恐怖症を克服し、自分の気持ちに確かな手応えを感じます。

ニコラス・ケイジは、いろいろな恐怖症を、時には大仰に巧みに表現し、
彼の十八番である呆気に取られた表情は、滑稽ながらほろ苦さも。
相棒のサム・ロックウェルの明るく飄々とした演技、
娘役のアリソン・ローマンは、ティーンエージャー役を違和感無く演じており、演技の上手さを感じさせます。

■全くの白紙の状態で観に行ったので、この映画の面白さが十分に堪能出来ました。
確かなプロットを柱に、捻りの効いたユーモアとスリルを織り込んだ作品です。
観た後が心地良いです。
予想が付かないラストに驚き、ちょっぴり感動も・・・♪



マトリックス レボリューションズ (2003)
The Matrix Revolutions
★★★★
アメリカ 2時間9分
監督・脚本アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー
製作ジョエル・シルバー
出演キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス、ヒューゴ・ウィーヴィング、マット・マッコーム、モニカ・ベルッチ

「マトリックス」シリーズ三部作の完結編。
人類の最後の砦「地下都市ザイオン」になだれ込む機械兵器の大群と、それに立向かう人類。
人工知能を有する機械軍団と人類との最終決戦です。

前作「リローデッド」は、宗教的な意味合いを感じさせる神秘的な趣がありましたが、
本作品は一転してガラリと雰囲気が変わり、メカによるアクションが主体となります。

特殊効果による映像など、センティネルズとの戦いには目を見張るものがありますが、同じシーンが延々と続くので少々食傷気味な部分もあります。
ワイヤー・カンフーアクションは今回は少なめになっていますが、
ラストのネオとスミスの一騎打ちには土砂降りの雨の中、水の性質を上手く使い見事な闘いになっています。

■シリーズ三部作を通してみると納得出来る作品です。
変な色を付けない正攻法な作りには爽快感がありますが、
逆にそれが期待外れに終わっている部分も否めません。

この映画は、機械と人類による「共存と平和」がテーマになっています。



リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い (2003)
The League of Extraordinary Gentlemen
★★★
アメリカ 1時間50分
監督:スティーヴン・ノリントン
出演:ショーン・コネリー、シェーン・ウエスト、トニー・カラン、ジェイソン・フレミング、ナサーラディン・シャー、スチュアート・タウンゼント、ペータ・ウィルソン

1899年、ロンドンに集結した7人のヒーロー・ヒロインたちが力を合わせ世界を救う、壮大なファンタジー・アクション・アドベンチャー映画です。
7人のヒーローたちの顔ぶれは多彩で、
□H・R・ハガードの秘境冒険小説「ソロモン王の洞窟」の主人公アラン・クォーターメイン
□ジュール・ヴェルヌの海洋科学小説「海底二万里」のネモ船長
□ブラム・ストーカーの恐怖小説「吸血鬼ドラキュラ」のヒロイン、ミナ=ハーカー
□H・G・ウェルズの怪奇科学小説「透明人間」のロドニー・スキナー
□オスカー・ワイルドの怪奇幻想小説「ドリアン・グレイの肖像」のドリアン・グレイ
□マーク・トウェインの冒険小説「トム・ソーヤーの冒険」のトム・ソーヤー
□R・L・スティーブンソンの怪奇小説「「ジキル博士とハイド氏」のジキル
その昔、少年少女たちを魅了したメンバーが勢揃いしています。

■細かいところは抜きにして、気軽に観れる娯楽映画です。
ただ、個性的なメンバーを集めた割には
それぞれの人物像やいきさつ等が今ひとつ希薄で、返って面白味に欠けるものになっています。
あまりにいろいろなキャラを盛り込み過ぎたからでしょうか、
魅力的な題材を今ひとつ活かし切れておらず、もったいない気がします。
摩訶不思議なお話になっています。笑