2004年(1月〜4月)映画館で観たレビューです。


25時 ★★★★
THREE/臨死 ★★★
UNDEAD ★★★☆
アドルフの画集 ★★★☆
イン・ザ・カット ★★
エレファント ★★★★
オアシス ★★★★☆
かげろう ★★★☆
Carmen.カルメン ★★★★
キル・ビル Vol.2 ★★★★
ギャザリング ★★★
グッバイ、レーニン! ★★★★
コールドマウンテン ★★★☆
ゴシカ ★★☆
殺人の追憶 ★★★★
シービスケット ★★★★
しあわせな孤独 ★★★★
幸せになるためのイタリア語講座 ★★★★
女王フアナ ★★★★
ションヤンの酒家 ★★★☆
真珠の首飾りの少女 ★★★★☆
スパニッシュ・アパートメント ★★★☆
卒業の朝 ★★★★
ソニー ★★★☆
タイムライン ★★★
大脱走 ★★★★
テキサス・チェーンソー ★★★
ドッグヴィル ★★★★
ドラキュリアU 鮮血の狩人 ★★☆
ニューオーリンズ・トライアル ★★★★
バレット・モンク ★★☆
ペイチェック/消された記憶 ★★★
ぼくは怖くない ★★★☆
マスター・アンド・コマンダー ★★★★
ミスティック・リバー ★★★★☆
みなさん、さようなら ★★★★☆
みんなのうた ★★★
ラスト サムライ ★★★★
ラブ・アクチュアリー ★★★★
リクルート ★★★☆
レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード ★★★☆
列車に乗った男 ★★★★☆
ルビー&カンタン ★★★☆
恋愛適齢期 ★★★☆
ロスト・イン・トランスレーション ★★★★




25時 (2002) 公開(2004)
25th Hour
★★★★
アメリカ 2時間16分
監督:スパイク・リー
原作・脚本:ディヴッド・ベニオフ
出演:エドワード・ノートン、フィリップ・シーモア・ホフマン、バリー・ペッパー、ロザリオ・ドーソン、アンナ・パキン

ニューヨーク。
元ドラッグ・ディラーのモンティ・ブローガン(エドワード・ノートン)
彼は懲役7年の刑が決定し、24時間後に収監されます。
後悔と絶望、いろいろな思いが交差する中、残された24時間の心のさまよいを描く人間ドラマです。

ニューヨークの街の雰囲気がビシビシと伝わって来ます。
刑務所収監を前に、服役、逃亡、自殺・・・3つの選択が頭の中をよぎり
残された時間の中、友人や父親・・・愛する者たちと過ごします。
その24時間の間に、主人公の過去が挿入され、何故刑務所に服役されることになったか、その経緯が示されます。
主に、学生時代の友人ジェイコブ(フィリップ・シーモア・ホフマン)、フランク(バリー・ペッパー)を軸にストーリーが展開します。
2人は社会的には成功者ですが、彼らもまた自分自身の生き方に疑問を持っています。

淡々と主人公の内面を描き、ラストには感慨深いものがあります。
どうしようもない現実と、幸福な未来への想い・・・
この二つの対比に、観ている者はやり切れなさと、希望が入り混じった複雑な気持になります。

■心の内面を探る映画です。
エドワード・ノートン、演技の上手さはもちろんのこと、ニューヨークの街並みを愛犬と散歩する姿が堪らなく素敵です−♪



THREE/臨死 (2002) 公開(2004)
THREE
★★★
韓国・タイ・香港 2時間7分

韓国、タイ、香港の監督による、3編からなるオムニバス・ホラー。
テーマは共通で、<死の向こう側にあるもの>
各作品は、それぞれの国の文化や監督独自の世界観が反映されています。

■「メモリーズ」 memorie 韓国 ★★★
監督:キム・ジウン
出演:キム・ヘス、ジャン・ボソ

郊外の新興高層団地に暮らしていた親子三人。
ある日、妻が失踪し、それからというもの夫は幻覚を見るようになる・・・

□以下、ネタバレを含みます
今風の韓国ホラーの流れを汲むホラーです。
<臨死>という題材を上手くストーリーに取り入れています。
しかし、最初の段階で謎が予想出来るのがミソ。
居間にある大きなバッグを見ただけで分かってしまう・・・笑

いきなり飛び出す大きな効果音が一番怖いかも  (=^∇^=)フフ

■「ザ・ホイール」 the wheel タイ ★★★
監督:ノンスィー・ニミブット
出演:スウィニット・パンジャマワット

呪いを掛けられた人形を手に入れ、富と名声を手に入れようとするが・・・

□以下、ネタバレを含みます
タイの伝統芸能を題材(人形劇、ヒュン・ラコーン・レク)にした、土着的な趣のあるホラーです。
南国のタイの風景や、踊りの衣装、人形など、エキゾチックな異国情緒を堪能出来ます。
呪いの人形を横取りしたことで訪れる恐怖の数々。
はっと目覚めた時は、一抹の悪夢と納得。
せっかく戒めを得たのに、また同じ事を繰り返そうとする人間の愚かさ

教訓めいた怪奇譚です。

■「ゴーイング・ホーム」 going home 香港 ★★★☆
監督:ピーター・チャン
出演:レオン・ライ、エリック・ツァン、ユージニア・ユアン

取り壊しが決まっている廃虚寸前の団地に引っ越して来た父と息子。
向かい側には、薄気味悪い夫婦が住んでいる。
ある日、息子が行方不明になって・・・

□以下、ネタバレを含みます
最初は、精神異常の夫の話かと思ったのですが・・・
意外や意外、夫婦の愛を感じるホラー・ファンタジーでした。
数々の伏線があり、最初の写真屋さんのやり取りはラストで納得!!

ホラーというより、ドラマ性が高い作品です。
3作品の中では、一番光っています。



UNDEAD (2002) 公開(2004)
UNDEAD
★★★☆
オーストラリア 1時間45分
監督:ピーター・スピエリッグ、マイケル・スピエリッグ
出演:フェリシティ・メーソン、ムンゴ・マッケイ

オーストラリア、小さな田舎町バークレイ。
隕石の飛来によって、村人たちは次々とゾンビ化。
難を逃れた男女数人は、他の人間を襲い増えていくゾンビたちと闘い、決死の逃避行をします。
最初の予想と反してSF的でもあるゾンビ・アクション映画です。

低予算にしてチープな作りのゾンビ映画です。
チープながら特撮が大変工夫されており、低予算ならではの新鮮さがあります。
ストーリー構成も一工夫あり、単なるゾンビ映画に終わって居ないところがミソです。

■オーストラリアの大らかさを感じさせるホラー映画です。
全般的にクスクス・・・と笑えるツボがあります。
(=特に準主役のマリオン。
彼のガンさばきはスローモーション多用で、メジャー系アクション映画を彷彿とさせます・笑)

B級テイストたっぷり!!
ゾンビは、その風貌やいきなり襲って来る恐怖感はあまり無いのですが
とにかく可笑しいです。
ストーリーも、先が読めるようで読めない展開。
この手の映画にはお約束のお色気(=下着姿)も出て来ます。笑
B級ゾンビ映画のファンの方には、是非、肩の力を抜いて楽しめる一品であります。

■■ネタバレです■■
空からいきなり隕石が降って来て、それに当たった人がゾンビになってしまうのですが・・・
それからすぐに宇宙人が来て人々をさらって行ってしまうのです。
主人公たちはゾンビたちを拳銃で何発も撃ち殺すわ、宇宙人を襲ったりするのですが・・・
な、何と!!!!
宇宙人たちは、隕石でゾンビ化した人たちを治療しに来た人たちだったのでしたーー!!
恩人の宇宙人を殺した主人公たち・・・
ゾンビ化した人を銃で撃ち殺して(=頭に撃つと生き返らないのだ!)二度と生き返らなくさせた主人公たち・・・
なーんにもしなければ平和だったのに!!笑
このお馬鹿な展開は、激しく受けました!!


■■考察■■
オーストラリア製のゾンビ映画ですが、何やらのんびーりとしていてのどかななのです。
ゾンビも特に怖い訳でも無く、襲い方も特に意表を付いている訳でも無く。
ところで、主人公の女の子(フェリシティ・メーソン)
ミス・バークレイという設定でなかなかの美人さんなのですが、始終、目をカッと見開いて驚いた表情をしているのです。
何だか目が飛び出ているように見えてとっても変でした!!
普通にしていれば良いのに・・・
いやー、なかなか楽しい映画でしたっす!!



アドルフの画集 (2002) 公開(2004)
Max
★★★☆
ハンガリー、カナダ、イギリス 1時間48分
監督・脚本:メノ・メイエス
出演:ジョン・キューザック、ノア・テイラー、リーリー・ソビエスキー

1918年、第一次世界大戦後のドイツ、ミュンヘン。
敗戦で混乱とバブル経済でごった返す中、
画商である裕福なユダヤ系ドイツ人のマックス・ロスマン(ジョン・キューザック)と、帰還兵で貧しい暮らしを送る画家志望のアドルフ・ヒトラー(ノア・テイラー)が出会います。
独裁者への道を歩み始める前のヒトラーと架空の画商との出会いを通して、知られざるもう一つのヒトラーの顔に迫って行く大胆な試みです。
画商は架空の人物であり、画商との設定、関わりは全くのフィクションです。

独裁者ヒトラーが誕生する前の、平凡な人生を送っていた頃に焦点を当てています。
その後の残忍なヒトラーが形成されて行く過程を描いていますが、
神経質で、絶えず劣等感や孤独感に悩まされるヒトラーが
少しずつゆっくりと、独裁者へと変貌を遂げて行く様子が見て取れます。

■ヒトラーが、<If・・・>もしもあの時、芸術の道に進んでいたら・・・
と大胆な仮定を提示した作品です。

「もしもあの時・・・」という設定でたくさんの映画が作られていますが、
この作品では、史上最悪の人物ヒトラーである為、仮定のおける話であってもラストは虚しくやりきれない思いになります。

ジョン・キューザックは相変わらずの安定した演技。
ノア・テイラーのキレかかった演技との絶妙さが良し!!



イン・ザ・カット (2003) 公開(2004)
IN THE CUT
★★
アメリカ 1時間59分
監督・脚本:ジェーン・カンピオン
原作・脚本:スザンナ・ムーア
出演:メグ・ライアン、マーク・ラファロ、ケヴィン・ベーコン、ジェニファー・ジェイソン・リー

ニューヨークの大学で講師をしているフラニー(メグ・ライアン)は、孤独な40過ぎの独身女性。
スラングや詩の一片などの言葉集めをする彼女は、腹違いの妹(ジェニファー・ジェイソン・リー)との交流があるだけです。
ある日、住まいの近辺で猟奇的な殺人事件が起き、聞き込み捜査に来た刑事マロイ(マーク・ラファロ)と関係を持つようになります。
それ以来、彼女の周りで不審な出来事が連続して起き始め・・・
女性の深層心理をさらけ出し、心の奥底にある「性」を描いたサスペンス・ミステリーです。

陰影のある映像や、鮮やかな花が咲き乱れる庭の風景など、映像センスを感じます。
女性の性をダイレクトに生々しく描いています。
濃厚で淫らとも思えるセックス・シーンに嫌悪感を抱いたり、理性的な神経を逆撫でしそうで、好き嫌いが分かれそうな作品です。

■メグ・ライアン、<ラブコメの女王>から脱皮し、新境地に挑んだ意欲作です。

■■ネタバレです■■
ストーリーは至って平凡です。
単純な話に、メグ・ライアンの大胆なセックスシーンや、ぼやけたブレた映像で肉付けして膨らませている感じです。
この作品は、犯人探しのミステリーでは無いと分かっていても、話の筋はあまりにお粗末で、ラストで解明される犯人には驚くどころかガックリ来ます。

怪しい登場人物が何人か登場しますが、ケヴィン・ベーコンもその1人。
しかし、ベーコンはあまりにハマリ過ぎて返って犯人では無いと読めてしまいます。笑


■■考察■■
かなり思わせぶりな映画です。
観ている間中、始終耳元で「あの人怪しいでしょう!?」「このシーンは怪しいでしょう!?」とささやかれている感じがして、グッタリです。
思わせぶりもほどほどにしないと、観ていて疲れるし、眠気を誘ってしまいます。苦笑

メグ・ライアンの体当たり演技ですが、当初予定されていたニコール・キッドマンの方が適役だったと言われています。
ラブコメの女王からの方向転換をする意味もあってこの作品を選んだのでしょうが、同じ40歳過ぎの設定。
キャラクター的には合っていると思うのですが、どうしても<実生活の必死さ>と重なってしまい、何とも複雑な気分になってしまいます。


エレファント (2003) 公開(2004)
ELEPHANT
★★★★
アメリカ 1時間21分
監督・脚本・編集:ガス・ヴァン・サント
出演:アレックス・フロスト、エリック・デューレン、ジョン・ロビンソン、エリアス・マコネル

2003年、カンヌ国際映画祭で史上初のパルムドールと監督賞のW受賞した作品です。
W受賞は史上初の快挙でもあります。

オレゴン州ポートランド郊外、何処にでもあるごく普通のハイスクール。
生徒たちの何時もと変わらない日常。
あるハイスクールの一日を、カメラは淡々と追って行きます。
<コロンバイン高校の銃乱射事件>をモチーフにし、運命のその時までを静かに描いています。
ドキュメンタリータッチで構成されたドラマであり、
出演している生徒たちは、実際の高校生3000人からオーディションで選ばれた人たちです。役名も本名だそうです。

複数の生徒たちが登場し、登場人物それぞれの視線からストーリー展開し、時間が淡々と過ぎて行きます。
彼らの交わすさり気ない言葉やしぐさ、行動。
長い長ーいロングショットで1人の人物を追って行きます。
そんなシーンが延々と映し出される為、観客はすっかり、その場に居るような錯覚に陥ります。

ごく普通の生活から起こった恐ろしい惨劇。
最初から最後まで同じトーンで描かれていて、とてもクールです。
ときおり挿入される空の風景が透明感ある美しい映像です。
スクリーンも通常よりかなり幅が狭く、まるで一枚のフォトを見ているようです。
思春期特有の不安定で繊細な少年たちの心と、事件の悲惨さ、美しい映像美、それらが一体となった映画です。

■延々と日常が映し出されて、最後に事件が勃発します。
スクリーンから特に強いメッセージ性を発している訳ではありません。
観る人が何かを感じるとる・・・そんな作品です。

観た後は、アレックスが弾くややたどたどしさがあるピアノ「エリーゼのために」が頭から離れませんでした。

■■ネタバレです■■
アレックスとエリックが銃を購入するシーン。
昼間、配達しに来たのは、てっきりピザ屋の配達かと思っていました。
ナイフで箱を開けたら、中からライフルが出て来たのでビックリ。
そんな気軽に銃を手に入れたとは・・・ため息

ラストでは、アレックスはエリックをいきなり射殺します。
(=この映画は全くの事実の再現では無く、脚色してあります)
仲間をも撃ち殺すとは、なんて冷酷なんだ!!


■■考察■■
マイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」でコロンバイン高校の事件を扱っていますが、この映画を観たことによって、さらに状況を把握する事が出き、より一層作品に触れることが出来たような気がします。

アレックスとエリックがPCでするゲームが何とも不気味・・・
単純さの中にある恐怖を感じます。
彼らの今から起こす行動を指ししているように思われます。



オアシス (2002) 公開(2004)
Oasis
★★★★☆
韓国 2時間12分
監督・脚本:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング、ムン・ソリ、アン・ネサン、リュ・スンワン、チョ・グイジョン

2002年、ヴェネチア国際映画祭 監督賞、新人賞(ムン・ソリ)を受賞しています。

前科者の青年ジョンドゥ(ソル・ギョング)と、重度脳性麻痺の女性コンジュ(ムン・ソリ)
社会から疎外されている2人が出会い、愛し合います。
周囲の無理解に合いながらもお互いの愛を育む姿を描いた、ピュアで切なく痛々しいラブ・ストーリーです。

障害者役を演じたムン・ソリの演技はもちろんのこと
思慮が足りず問題行動ばかりを起こす青年を演じたソル・ギョングの体当たりな演技が素晴らしいです。
主役2人を取り巻く周囲の人間においても
冷酷な兄夫婦と思える人たちでも、実は他の部分では思いやりがあったり、またその反対の人物もいたり。
画一的な描写で無く、生の人間を映し出しているところがまた、この映画を身近なものにしています。

リアルな演出と演技、そしてストーリー。
なるべくなら直視すること無く、目を背け、避けて通りがちな話題です。
障害者の恋愛を扱った作品ですが、決してオブラートに包んだピュアな恋愛・・・という生易しいものではありません。
ある種の居心地悪さと、また、その反対に心を掴んで離さない・・・そんな作品です。

■この映画に関しては多くは語れません。
それほどまでに衝撃的で、心に問いかけてくる映画です。
是非、多くの人に観て頂きたい作品です。

幻想的なシーンも美しく心に残ります。



かげろう (2002) 公開(2004)
Les Egares
★★★☆
フランス 1時間35分
監督・脚本:アンドレ・テシネ
出演:エマニュエル・ベアール、ギャスパー・ウリエル、グレゴワール・ルプランス・ランゲ、クレメンス・メイヤー

1940年6月、第2次世界大戦下。
ドイツ軍が攻め入るパリを逃れ、南仏を目指す美しい未亡人オディールと2人の子供。
空襲の中、突然現れた青年イヴァン(ギャスパー・ウリエル)に命を救われ、彼に導かれるまま森の奥深くに佇む屋敷に辿り着きます。
空家となっている屋敷で青年と共に過ごすつかのまの生活・・・
美しくも切ないラブ・ロマンス映画です。

エマニュエル・ベアールが、美しく気丈で、不安定な面も持ち合わせる未亡人を好演しています。
青年に警戒心を抱きつつも、やがて惹かれて行く・・・
その揺れ動く心の動きがとても自然で、全く違和感を感じさせません。

外の戦渦が嘘のような、時間が止まったような静かな森の屋敷。
美しい森の風景をバックに繰り広げられる物語は、まさにひと夏のかげろうです。

■ミステリアスな青年を演じる新人、ギャスパー・ウリエル。
端正な顔立ちに、粗暴だけれど繊細な面を持ち合わせる青年がとても魅力的。
べアールとのラブ・シーンも激しく素敵♪ウフ

こういった作品は、ともすれば2人が惹かれ合う過程が唐突だったり変な違和感を感じたりするものですが、そういった不自然さは微塵も感じません。
特に感動するとかでは無いのですが、こういった作品こそがまさに映画の醍醐味!!と思わせてくれます。



Carmen.カルメン (2002) 公開(2004)
Carmen
★★★★
スペイン・イギリス・イタリア 1時間58分
監督・脚本:ビセンテ・アランダ
出演:バス・ベガ、レオナルド・スバラグリア、ジェイ・ベネディクト

フランス人作家プロスペル・メリメの名作「カルメン」の映画化です。
これまでに何度もオペラや舞台、映画化されてきた不屈の名作を、本作品では原作に忠実に映像化しています。

衣装から小物、セットに至るまで、19世紀当時のスペインを忠実に再現しています。
お馴染みの名作でありストーリーも分かっているので、特に感動するという事は無いのですが
美しい映像と情熱的なキャラクター、そして歴史に忠実であることに徹したこの映画は、今までに無い新鮮さと魅力を兼ね備えた作品となっています。

自由奔放で美しく、妖しい魅力を持つカルメン。
劇中にしばしば登場する聖母マリア像と、ラストのマリア像とカルメンの並んだシーン・・・
その対比は、どうしようもならない人間の性を描き出しているように思われます。

■妖しい魔性の女を演じるバス・ベガは、まさにカルメンそのものです。
ホセ演じるレオナルド・スバラグリアも、誠実な青年と愛に狂う男の役を情熱的に演じていて期待大であります〜♪

将来有望の軍曹ホセが、カルメンを愛したが為に、山賊に身を落としお尋ね者になってしまう・・・
地を転がるように転落して行く様は惨めで悲しいです。
しかし、ラストの彼の言葉を聞くと、人生とは短くも悔いの無いように生きることが一番なのでしょう。

スペインの色鮮やかな美しい景色も見所あり。
R−18指定です。
バス・ベガの美しい裸体に惚れ惚れしてしまいます〜〜!!
ラブシーンも濃厚で素敵です〜  (*^∇^*)アヒャ♪



キル・ビル Vpl.2 (2004) 公開(2004)
KILL BILL Vol.2
★★★★
アメリカ 2時間18分
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
出演・ユマ・サーマン、デヴィッド・キャラダイン、ダリル・ハンナ、マイケル・マドセン、ゴードン・リュウ

「キル・ビル Vol.1」の続編。
ザ・ブライド(ユマ・サーマン)は、かつての仲間5人の内2人を前作で倒し、残る3人、バド(マイケル・マドセン)、エル(ダリル・ハンナ)、ビル(デヴィッド・キャラダイン)に最後の死闘を挑みます。

前作では、日本製アニメ、文化、日本のヤクザ映画と、主に日本へのオマージュが感じられる作品でしたが、
今回は、マカロニウエスタン調のタッチと香港カンフー映画と作風が変わります。

■前作とは全く違うテイストです。
別物だけれど、上手く繋がっている作品・・・
現在のストーリーの中に過去の出来事が鮮やかに導入され、その演出センスに惚れ惚れしてしまいます。

■■ネタバレです■■
服部半蔵の剣が何度も出てくるし、ザ・ブライドも背中に剣を担いでビルを殺しに行くので、てっきり最後は剣での一騎打ちで締めくくるのかと思ったら・・・
至近距離で相手を刺殺する必殺技”五点掌爆心拳”なる拳にてトドメを刺すのですねぇ・・・
エルとザ・ブライドの対決もまたしかり。剣との対決と見せ掛けて実は目玉えぐり出しで終わる・・・
意外性があるところが堪らなく良いです!!

今回はふとした愛も随所に感じられます。
バドが半蔵の剣を売り飛ばしたといいながら、実は、ゴルフクラブと一緒に突っ込んであったり。
エルとの会話でも、ザ・ブライドへの激しい敵意の中にも殺し屋としての尊敬と畏れの念があることが分かります。
最後のビルとの対決も、本音を語リ合い、実は誤解であったことが分かります。
しかし、お互いの心情を分かり合えても、尚且つ闘う道を選ぶ2人・・・
男と女の愛と切なさを感じるシーンです。
母の愛は、男女の愛よりもまた違った次元の深い愛なのであります。

それにしても、服部半蔵の剣があんなに高く取引されるなんて・・・そんな馬鹿さ加減も好き♪ウフフ


■■考察■■
作品のタッチがガラリと変わったり続編になるとスゥーッと失速して行く作品が多い中、この作品は、意外性に富んで(=ある意味、しっかりと期待を裏切らせつつ)観客を十分に楽しませてくれる作品であります。

デヴィッド・キャラダインの起用も良いですねぇ・・・
静かな語りの中に秘めた残酷さと孤独さ。
クンフーの達人、パイ・メイ(ゴードン・リュウ)のちょっと好色な感じもする爺さん(=自分にはそう見えた・笑)も良かったです  (*^∇^*)ウフフ



ギャザリング (2002) 公開(2004)
The Gathering
★★★
イギリス 1時間41分
監督:ブライアン・ギルバート
出演:クリスティーナ・リッチ、ヨハン・グリフィズ、ケリー・フォックス

イギリス、グラストンベリー
この地で地中に埋没した古い教会が発見され、司教、教授たちによって調査が始まります。
それと平行して、アメリカ人の若い女性キャシー(クリスティーナ・リッチ)が自動車事故に逢い軽度の記憶喪失に陥り、悪夢のような幻覚に悩まされます。
この二つの事柄を中心に、怪しい正体不明の集団(=ギャザリング)や子供の虐待事件などが結びついてやがて一つに集結して行きます。
キリスト教を背景に繰り広げられるサスペンスタッチのオカルト・ホラーです。

中世に教会が封印された経緯やギャザリングたちの業が中途半端で深く掘り下げてありません。
そうなるを得なかった人々の(=自業自得であるが故の)哀しみや苦しみ
そして、無関心で居られることへの罪・・・
人間の持つ恐ろしさを前面に出した方がもっと怖さを感じられたかも知れません。

■あまり怖くないオカルト・ホラー映画です。
ひたひたと忍び寄る怖さがありますが
ラストは何やら<悟り>を感じる爽やかさが!!

クリスティーナ・リッチの魅力が一番の見所かも・・・
タンクトップなどを着用しているのでつい胸に目が行ってしまいます。
大きい胸とベッドシーンはファンへのサービス!? (*^∇^*)フフ



グッバイ、レーニン! (2003) 公開(2004)
GOOD BYE LENIN!
★★★★
ドイツ 2時間1分
監督・脚本:ヴォルフガング・ベッカー
出演:ダニエル・ブリュール、カトリーン・ザース、マリア・シモン、チュルバン・ハマートヴァ

第53回、ベルリン国際映画祭 最優秀ヨーロッパ映画賞 受賞
2003年ドイツ・アカデミー賞 9部門 受賞
他、多数受賞しています。

1961年から28年間に渡って東西を分断して来た壁。
1989年ベルリンの壁崩壊、東西ドイツが統一されます。
ベルリンの壁崩壊前と崩壊後の東ドイツを舞台に
ある一家の悲喜こもごもを描いたコメディタッチのファミリー・ドラマです。

壁が崩壊し東西ドイツが統一されたその間8ヶ月、心臓発作で倒れ昏睡状態に陥っていた母クリステォアーネ(カトリーン・ザース)
意識を取り戻した母がショックを受けない為に、息子のアレックス(ダニエル・ブリュール)は、崩壊前の東ドイツを再現しようと四苦八苦します。
アレックスのアタフタとした数々のエピソードや奮闘振りには思わず笑ってしまいます。
が、同時に、それは母を想う息子の健気な気持ちであること
隠し続け嘘を嘘で塗り固めて行く事は、実は不本意なこと
そういったことがユーモラスの下敷きになっていると思うと、堪らなく切なくなります。
しかし、この作品を覆っているのは、明るく痛快なタッチで綴られる映像と爽快さです。
笑いあり涙ありのハートフルなドラマ。
家族愛を感じる作品です。

作品全体に、資本主義と社会主義、双方を批判したブラックユーモアが散りばめられています。
中盤で登場する、ヘリコプターに宙吊りにされ運び去られるレーニン像。
そして、それを見つめる母・・・
母は全てを知っていたのでしょうか。
アレックスの気持ちを知り騙されていたようにも見えるし
真実を知らないままだったようにも感じられます。
あえてその点をぼかし曖昧にすることによって、真相は観る者に委ねているように思えます。

■本当は悲しいものであるはずなのに、なぜか清々しさを感じる作品です。
ラストの空がまぶしいです。



コールドマウンテン (2003) 公開(2004)
COLD MOUNTAIN
★★★☆
(映像の美しさ、主役2人の美しさ ★★★★)
イギリス・イタリア・ルーマニア 2時間35分
監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ
出演:ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、レニー・ゼルウィガー、ドナルド・サザーランド、ナタリー・ポートマン、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジョヴァンニ・リビシ

チャールズ・フレイジャーの同名ベストセラー小説(=全米図書賞を受賞)の映画化です。

南北戦争の末期、
南軍兵士インマン(ジュード・ロウ)は、恋人エイダ(ニコール・キッドマン)に会う為に危険を冒して脱走し、故郷コールド・マウンテンを目指して旅を続けます・・・
壮大なスケールで描くラブ・ロマンス映画です。

戦争映画には多種多様のテーマがあります。
本作品は、反戦テーマもさることながら、個々の親子愛や、女の友情、そして、数々の苦難を乗り越えて出会う、一途な愛を貫いた男女の姿を中心に描いています。

■壮大な文芸ロマン映画の大作です。
スケールの大きさと、美しい映像が堪能出来ます。
・・・が、観た後は特に心に残らず、後に引かないです。何故?

■■ネタバレです■■
たった一度のくちづけで長い間相手を待ち続けられるのも、時代背景や地域性を考えれば、当然有り得ることでしょう。
なので、再会した時のぎこちなさは納得出来るのですが、
やはり、観ている者としてはガアーッという再会を期待してしまいます。
再会→ラブシーン→インマンの死・・・という流れが薄く、印象が浅いものになってしまった感があります。
そして、最も惜しいと思うのは、最初の方で井戸占いをした時に見たインマンの姿と、インマンの帰って来た姿と照らし合わせて、エイダが死を予感してしまうことです。
ここで、すっかりラストのラストまで先が読めてしまい、せっかくの銃撃戦も予定調和に終わってしまった感があります。


■■考察■■
さまざまな危険や苦難の道を乗り越えコールドマウンテンまで戻る、その姿が堪らなく美しいインマン(ジュード・ロウ)最初と最後では、輝きが数段にも違います。
大地に根付く逞しい女を演じたルビー(レニー・ゼルウィガー)
愛する人をひたすら待ち続け必死に土地と家を守り、人間的にも成長して行くエイダ(ニコール・キッドマン)
他の出演者も、主役級の俳優陣たちがざくざく登場しています。
登場しても瞬く間に姿を消して行く惜しげもないその起用に、ある意味豪華で、ある意味もったいなさが感じられて・・・ふ・・



ゴシカ (2003) 公開(2004)
GOTHIKA
★★☆
アメリカ 1時間37分
監督:マシュー・カソヴィッツ
製作:ダーク・キャッスル・エンタテイメント
出演:ハル・ベリー、ペネロペ・クルス、ロバート・ダウニー・Jr

ウッドワード女子刑務所の精神科病棟。
そこで医師として働く医師ミランダ(ハル・ベリー)は、帰宅途中、道に佇む少女を見たのを最後に記憶喪失に陥ります。
意識を取り戻すと、夫殺害の容疑を掛けられ、自分の勤めていた女子刑務所の精神科病棟に収監されています。
サスペンス色が強いオカルト・ホラー映画です。

自分にとり付く少女の霊に苦しめられるハル・ベリー。
自分は正常・・・それとも・・・
自分の居る世界が現実世界か精神世界か苦悶し、次第に錯乱状態に陥って行きます。
また、 自分の勤めていた刑務所の精神科病棟に今度は管理され診察される立場になってしまっている現実。
屈辱的な展開に戸惑い、
恐怖に満ちた表情で全編出ずっぱりのハル・ベリーが熱演しています。


■ホラーファンには物足りない怖さです。
冒頭、雨の降りしきる中、不気味な展開にひたひたと忍び寄る恐怖を感じますが、中盤以降はよくあるサスペンスものになってしまい、少々期待外れの感ありです。

ハル・ベリーは新境地開拓とも思える役どころですが、
ペネロペ・クルスは単なる脇役になってしまって少々もったいない気が・・・



殺人の追憶 (2003) 公開(2004)
MEMORIES OF MURDER
★★★★
韓国 2時間10分
監督・脚本:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、キム・レハ、ソン・ジェホ、ヒョン・ヒボン

韓国のある農村。
1986年から6年間に10人の女性が犠牲となった連続猟奇殺人事件。
実在した事件を元に映画化したサスペンスです。
尚、犯人は未だに捕まっておらず未解決のままです。

地元の田舎刑事パク・トゥマン(ソン・ガンホ)と、都会から来た切れ者の刑事ソ・テユン(キム・サンギョン)
2人の刑事の反目、そして、なかなか犯人を特定できないあせりと焦燥感が彼らを襲います。
観ている私たちも刑事と同様の気持ちになり、誰が犯人か分からないもどかしさを感じます。

殺された女性の姿は痛ましく、主役2人以外の脇役のエピソードも痛ましいです。
実在した事件を題材にしたストーリー、当時の韓国を再現した映像と場の空気。
美しい田舎の風景を背景に繰り広げられる猟奇事件、画面全体を覆う重苦しい雨のしずくと厚い雲。
不気味な、妙な恐怖感に包まれます。
緊張感溢れるストーリーながら、所々に散りばめられたユーモアの数々もあります。

■実在の未解決連続殺人事件をモチーフにしている為、いわゆる犯人探しの映画ではありません。
主に捜査に当たった刑事たちの心理状態を重点的に描いています。
深く、濃い人間ドラマとなっています。

■■ネタバレです■■
事件から数年経ったラスト。
犯人の存在がリアルに感じる結末は、何とも嫌な、やり切れない気持ちが残ります。
「最後はこう来たか!!」と思わせる、静かな衝撃です。
この映画は、その辺のホラーよりも怖さが残ります。
背中がヒヤッと冷たいものが走る感じ・・・
過去と現在(=ラスト)が途切れることなく、一つにつながる演出が上手いです。

しかし、容疑者への執拗な尋問(=拷問)をしたり、現場を捏造したりと、日常茶飯事である警察の姿にビックリ。
あまりにも生々しいので、当時はも、もしやして、こんな事をしていたのか・・・と気になったりします。


■■考察■■
都会派刑事のキム・サンギョンは、何となく、佐藤浩市に似ているような気がする・・・笑



シービスケット (2003) 公開(2004)
Seabiscuit
★★★★
アメリカ 2時間21分
監督・脚本:ゲイリー・ロス
原作:ローラ・ヒレンブランド
出演:トビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジス、クリス・クーパー、エリザベス・ハンクス、ゲイリー・スティーブンス、ウィリアム・H・メイシー

原作はローラ・ヒレンブランドの大ベストセラー、同名ノンフィクション小説です。
1930年代、世界恐慌下のアメリカ。
実在した伝説のサラブレッド「シービスケット」とジョッキー(トビー・マグワイア)、馬主(ジェフ・ブリッジス)、調教師(クリス・クーパー)3人の男たち・・・
人々が夢を託した1頭のサラブレッドと馬を支えた男たちの勇気と感動を描いたヒューマンドラマです。

この映画は、1頭の馬を通して、「人生」と「再生」を見つめたドラマです。
馬、男たち、それぞれが心に何かしらひずみを持っていてますが、それぞれの人生を上手くまとめ、決して散漫になることなく、素晴らしい1本の映画に仕上げています。
特にレース・シーンが素晴らしいです。
ともすれば単調になりがちなレースを、馬とジャッキーとの一体感を、馬の疾走シーンにおいては、躍動感溢れる凄まじい重量感を感じます。

■気を狙わないオーソドックスな映画です。
時代の空気を漂わすノスタルジックあふれる映像はどのシーンをとっても美しいです。
大きな感動と言うより、ラストに気が付けば涙が溢れ出ている・・・
そんな素直に感動出来る作品です。
後味が良く、ラストのさっぱりした終わり方も良し!!

3人のメインキャストはもちろんのこと、DJ役のウィリアム・H・メイシーが良い味出してます〜♪



しあわせな孤独 (2002) 公開(2004)
Elsker dig for evigt
★★★★
デンマーク 1時間53分
監督:スザンネ・ビエール
出演・ソニアー・リクター、マッツ・ミケルセン、ニコライ・リー・カース、パプリカ・スティーン

結婚を間近に控えた若いカップル。
3人の子供に囲まれ平穏な家庭生活を送る夫婦。
が、突然の交通事故によってもたらされた悲劇は、男女4人の運命を変えて行きます。
孤独としあわせ・・・愛の痛みを描いた大人のドラマです。

ドグマの手法で描かれています。
ドグマとは、
ラース・フォン・トリアー監督(=「ダンサー・イン・ザ・ダーク」)が提唱する撮影方法です。
人工的な照明を使わない、セットを使わない、オールロケーション撮影、手持ちカメラでの撮影・・・等のルールがあります。

ドグマの手法で撮影された画面はとてもリアル。
冷え冷えした街並み、冬空から、北欧特有の寒い冬が伝わって来ます。
そして、登場人物のたちの息づかいや微かな顔の動きは、まさにすぐ傍にいるような間隔にとらわれます。

■大人の恋愛映画です。
それぞれが身勝手で観ていると反発を覚える部分もあるのに
いつしか物語にどんどんと引き込まれて行きます。
最後は一体どうなるのかしら・・・と。
それは登場人物それぞれが身勝手だと思いつつも、共感を覚えるからでしょう。
自分もきっとそういう行動に出るかも知れない・・・
そんな事を思いながら、男女4人の行き着く先を見守ってしまいます。
痛く切ない映画なのに、ラストは何故か清々しさを感じしてしまう
人間の内面に奥深く踏み込んだ作品です。

登場人物それぞれが、孤独を噛み締める・・・
心を解放することは勇気を必要とし、それによって孤独に陥ることもあるけれど、それが自分自身の真の姿であり、また、そこから新たに旅立つことも出来るのです。



幸せになるためのイタリア語講座 (2000) 公開(2004)
Italiensk for Begyndere
★★★★
監督・脚本:ロネ・シェルフィグ
出演:アンダース・W・ベアテルセン、ピーター・ガンツェラー、ラース・コールンド、アン・エレオノーラ・ヨーゲンセン、アネッテ・ストゥーベルベック、サラ・インドリオ・イェンセン

第51回、ベルリン映画祭 銀熊賞受賞
他、多数受賞しています。

コペンハーゲン近郊の小さな町。
何かしら悩みを抱え孤独な生活を送る人々が、週に一度のイタリア語講座に通うことで生きる力と希望を見出して行きます。
男女6人が織り成す恋の行方を爽やかに描いたロマンチック・コメディです。
ドグマ作品では初の女性監督です。

ここに登場する人物は、皆それぞれ仕事や恋愛、家族関係等に悩みを抱えています。
決して若くは無い30代・・・
淡々と、半ば諦めとも思えるように生きて来た彼ら。
ふとしたことで出会った人々と触れ合い、悩みを打ち明ける事で、事態は少しずつ好転して行きます。
前に進む勇気を持つ事で、彼らは彼ら自身の手で幸せを掴んで行くのです。

観ている最中はストーリーに浸り気が付かないのですが
よくよく考えてみると、この映画には<人の死>が関わっています。
<人の死>というと、通常は忌むべきものですが、この作品に限ってそうは感じさせません。
<死>というのは残酷である反面、次の世代への架け橋なのかも知れません。

■ドグマ作品による為リアルさを感じ、普通のラブ・コメ映画よりさらに身近なものになっています。
登場人物に自らを重ね、幸せな気分に浸れます・・・♪
爽やかな気分で劇場を後にする作品。
苦さ甘さを体験した大人の為のラブ・コメです  (*^∇^*)

エンドクレジットもセンスの良さを感じます。



女王フアナ (2001) 公開(2004)
Juana La Loca
★★★★
スペイン 1時間57分
監督・脚本:ビセンテ・アランダ
出演:ピラール・ロペス・デ・アジャラ、ダニエラ・リオッティ

15世紀のスペイン。
16歳でフランドルの名門ハプスブルク家に嫁いだ、スペイン王国イザベル女王の娘フアナ。
15、16世紀と渡ってスペインの女王として君臨し、後の神聖ローマ帝国皇帝カール5世の母でもあるフアナ。
後に狂女として城に幽閉され、半世紀の間閉じこめられたまま一生を終えた女王フアナの愛の物語です。

女王として政治的に重要な立場にあるにも拘らず、我を失い、嫉妬に苦しんだ挙句、遂には狂女と呼ばれてしまいます。
夫への愛があまりに強く一途であった為に、精神に異常をきたし次第に壊れて行ったフアナ。
その壮絶な人生。
彼女の人生は例え狂おうとも、愛する為だけに生きた・・・
哀しくもあり、そこまで人を愛せる彼女に胸を打たれます。

愛と憎しみの狭間で苦しむフアナを重点的に描いています。
政権を巡る政治的な陰謀は、あえて話の展開のみに留めています。

■女性なら誰でも体験したことのある、メラメラと燃える嫉妬の炎。
フアナの気持が痛いほど分かり、共感出来てしまうのです。

フアナ演じるピラール・ロペス・デ・アジャラがとても魅力的です。
16歳で嫁いだ初々しい少女から嫉妬に狂う妻まで、彼女の美しさが輝いています。
夫フェリペを演じたダニエラ・リオッティも野性的で情熱的な目が素敵です〜〜♪ウフ



ションヤンの酒家 (2002) 公開(2004)
Life Show
★★★☆
中国 1時間46分
監督:フォ・ジェンチイ
出演:タオ・ホン、タオ・ザール

第6回、金鶏賞 最優秀脚本賞、最優秀主演女優賞
第22回、上海国際映画祭 最優秀女優賞、最優秀作品賞、最優秀撮影賞
等を受賞しています。

中国、重慶の高層ビルの谷間にある古い街並み。
そこの屋台街には、<鴨の首>を名物にするションヤン(タオ・ホン)の店があります。
一軒の屋台を切り盛りする女性、ションヤンの生きる姿を描いたヒューマン・ドラマです。

家族問題、都市再開発による立退き、お店の常連客との恋愛模様・・・等、様々な悩みを彼女は抱えています。
そんな悩みに孤軍奮闘しながら、地にしっかりと足をつけて生きる姿がたくましく、堪らなく愛しいです。

屋台がひしめく路地裏・・・
行き交う人々で溢れ、ごった返す人の波・・・
喧騒の中で、酒を飲み、楽しげに食する人々。
そんな下町の風景を情緒豊かに映しています。
決して美しいとは言えない古い街並なのに何故か美しく感じられるのは、
そこに魅力的な美しいションヤンが居るからかも知れません。

■ざっくばらんで気風の良いションヤンはとても魅力的。
彼女が言い放った言葉・・・「降りかかった厄災は自分で振り払うのよ」
この言葉が彼女の生き方全てを表しているような気がします。

ションヤンの恋相手。
中盤以降、男の本音が少しずつ見え隠れします。
そんな男の心情に気づかず、好意を持ってしまう・・・
同じ女性として、ションヤンの心情が痛いほど分かります。
女性の心理を描いている為、どちらかというと、女性向けのような気がします。



真珠の首飾りの少女 (2002) 公開(2004)
GIRL WITH A PEAL EARRING
★★★★☆
イギリス 1時間40分
監督:ピーター・ウェーバー
原作者:トレイシー・シュバリエ
出演:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソン、キリアン・マーフィ

2003年、アカデミー賞3部門、ノミネート
(最優秀撮影賞、最優秀美術賞、最優秀衣装デザイン賞)
他、多数の賞にて受賞しています。

17世紀のオランダを舞台に、画家フェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」(=「青いターバンの少女」)が如何にして描かれたか、想像力を巡らせ新たに物語を再構築した、歴史的ノンフィクション映画です。

フェルメールの絵がそのままキャンパスから抜け出たような映像です。
薄っすらと射し込む柔らかい光、昼間でも薄暗い影に覆われた部屋。
しっとりした映像からは、17世紀のオランダの空気が伝わって来ます。
どの場面をとっても、一枚の絵になりそうです。

■素晴らしい絵画には、人を惹き付ける魅力があります。
観ている者は、キャンパスに描かれている対象物に何とかして作者の思いを汲み取ろうとします。
この映画は、そういった願望を体験させてくれる、良質で素晴らしい作品です。

■■ネタバレです■■
フェルメール(コリン・ファース)がグリート(スカーレット・ヨハンソン)の耳たぶに針で穴を開けるシーン。
これは、この映画のクライマックスとも言える場面です。
息詰まるような緊張感の中で、針を入れた瞬間、グリートから思わず流れる一筋の涙。
直接的なセックスシーンより遥かに官能的であり、まことに美しいラブ・シーンであります。
(=これは、ある意味、処女と男の交わりを表現しているのではないでしょうか)

フェルメールとグリートの間は、精神的な繋がりだけであり、好きだと相手に伝える事は遂に無かったけれど、2人はお互いの気持ちを感じていました。
押し殺した愛の表現の何と美しいことよ!!
数少ない言葉の中にも、ふとした視線、息づかいの中からも、彼らの愛を感じることが出来ます。


■■考察■■
陶器のように真っ白な肌、ぽってりした唇のスカーレット・ヨハンソン。
強い処女性を感じさせる演技です。
奉公人として常に控えめでおどおどしていますが、芯の強い女性の姿もうかがえます。

フェルメール演じるコリン・ファース。
髪型のせいでしょうか、何となくゲーリー・シニーズに見えるのですが (=^∇^=)ハハハ
髪型も日本のサムライのまげをハラリと取った様な感じが致しました。笑



スパニッシュ・アパートメント (2001) 公開(2004)
L' AUBERGE ESPAGNOLE
★★★☆
フランス・スペイン 2時間2分
監督・脚本:セドリック・クラピッシュ
出演:ロマン・デュリス、ジュディット・ゴドレーシュ、オドレイ・トトゥ

交換留学生としてバルセロナの大学院に留学したフランス人青年グザヴィエ(ロマン・デュリス)
ヨーロッパ各国の若者が住む共同アパートで暮らすことになった青年は、そこで様々な体験をします。
自分の進む道を模索し、成長して行く青年の姿を描いた青春コメディです。

混沌としたアパートでの生活ぶり、混乱ぶりが伝わって来ます。
アパートの面々は、ちょっと個性的で魅力的、そして憎めない人たち。
唾を飛ばしながら議論をしたり、仲間の為に一生懸命になってみたり(=例えそれが傍で見ていてくだらなことでも)
時には共同生活が煩わしくなることもあるけれど、
そんなことをも忘れ去るくらいに楽しい愉快な仲間たち。
こんなアパートで暮らしてみたい・・・と思わせるお話です。

■きらきらと輝く、青春の一ページを垣間見るような映画です。
原題の「ローベルジュ・エスパニョール」は、フランスの俗語で「ごちゃまぜ」という意味だそうです。
彼らの暮らすアパートはまさに「ごちゅまぜ」そのもの。
観ていて、クスクス・・・という笑いに包まれる楽しい映画です。

■■ネタバレです■■
グザヴィエは、スペイン留学から戻って来て官僚試験に合格し就職しますが、結局、小さい頃からの夢である小説家を目指す事にします。
これは1年間の留学で何かを掴み決断した結果であり、彼もまた成長した事の証なのでしょう。
人生において回り道をしたことは、何かが自分の糧となり、決してムダでは無いのです。

し、しかし、、ラストは何とも唐突な気が致しまする。
確かに共同アパートで友人たちとの生活で学んだことはたくさんあれど、それは殆どが、友情や恋愛、不倫などお遊びの部分。
留学の本分である勉学や幼い頃からの小説家の夢に関しての描写が少ない所が、ちと残念でござる・・・
もう少しその部分に膨らみがあればラストに繋がるのに。惜しいっす!!

■■考察■■
オドレィ・トトゥは「アメリ」の時より輝きが少ないと思ったら、「アメリ」でブレイクする前の作品だそうです。納得・・・



卒業の朝 (2002) 公開(2004)
THE EMPEROR'S CLUB
★★★★
アメリカ 1時間49分
監督:マイケル・ホフマン
原作:イーサン・ケイニン「宮廷泥棒」
出演:ケヴィン・クライン、エミール・ハーシュ

アメリカ
全寮制の名門校、聖ベネディクト男子校
ギリシア・ローマ史を教える教師ウィリアム・ハンダート(ケヴィン・クライン)は、熱意を持って生徒を指導し、生徒たちからも尊敬されています。
が、上院議員の御曹司セジウィック・ベル(エミール・ハーシュ)が転入して来てからは教室は一変してしまい・・・
嘘を付かず真っ直ぐに生きるよう生徒たちの人格形成に努めて来た彼は、ある出来事によって信念がもろくも崩れ去ります。
人生について真摯に取り組んだ人間ドラマです。

人間の弱さ、建前と本音、そして裏切り。
輝かしい青春時代において、誰もが体験することかも知れません。
しかし、何処かで自分を想ってくれる人が居ます。
自分は如何にしてそれに気付き、コンプレックスを克服して行くか。
また、 自分の教師生活で悔いを残すことをして来た教師も同様です。
遂に届かなかった自分の教育・・・
人間はこうやって、挫折と再生をを繰り返しながら生きて行くのでしょう。
何を学んで生きて行くか・・・大事なものを教えてくれる作品です。

ケヴィン・クラインが、真面目で温厚、時には厳しく指導する教師を好演しています。
生徒たちを愛し悩む姿を、抑え気味の演技で表現しています。

■観た後は、つつーっと目頭が熱くなる映画です。

■■ネタバレです■■
ハンダート教師がセジウィックを立ち直せようとしますがいとも簡単に裏切られ、25年後、同窓会でもまたしても裏切られてしまいます。
そのふてぶてしさに、こちらまで腹立たしさ爆発ー!!
(=特に同窓会の時の奴の態度が許せん。怒)
残念ながらハンダート教師の想いは最後までセジウィックには届きませんでした。
しかし、人の想いを無視し裏切る人も居れば、反対にそれに答えてくれる人も居る・・・
途中何度も哀しくなるのですが、ラストでは人の温かさに触れ胸に込み上げくるものがありました。


■■考察■■
セジウィック役のエミール・ハッシュは、何となくディカプリオに似ている。
初々しい少年時代のディカプリオを、ちょっとふっくらさせた感じ。フフフ・・・



ソニー (2002) 公開(2004)
SONNY
★★★☆
アメリカ 1時間50分
監督・製作:ニコラス・ケイジ
出演:ジェームズ・フランコ、ブレンダ・ブレシン、ハリー・ディーン・スタンシン、ミーナ・スヴァーリ

1981年、ニューオリンズ
娼館を経営する母親ジュエル(ブレンダ・ブレシン)のもとで、12歳の時から男娼として教育を受け、客を取っていたソニー(ジェームズ・フランコ)
新しく入ったキャロル(ミーナ・スヴァーリ)と愛し合うようになり、2人は新たなスタートを踏み出したいと思うのですが・・・
苦さが残る、青春ドラマです。

<普通の堅気の世界>に踏み出したいと思う気持ちは、新たな勇気と決意が必要です。
男娼という世界が身に染みた者は、そこから抜け出すことは容易では無い現実を描いています。

■ニコラス・ケイジもあるシーンに登場しています。
ニコファンには、やはり見逃せない一品であります。

■■ネタバレです■■
ソニーがお相手するのは、太ったケチなおばさんばかりです。
<伝説の男>と呼ばれていても、ニューオリンズのある界隈だけと推測されます。
如何に社会の底辺に居るということが分かります。
若くて美しいのはキャロルのみ。
太ったおばさんの裸体ばかり見せられたような気が。苦笑

ニコラス・ケイジは、アシッド・イエローというミョーな男を演じています。
全身派手な黄色のスーツで身を包み、頭はカツラ、伊達メガネ、付け鼻・・・という変テコな姿。
ニコラス・ケイジと一瞬分からないようにする為かも知れませんが、あまりに奇妙な姿にすぐ分かってしまいます。笑
テンションの高い演技、奇抜な姿のニコラス・ケイジ、このシーンが一番印象的かもです。

息子を影で応援し、そっと見守る父親役のハリー・ディーン・スタンシン、渋いです。

何ともやりきれない、後味が少々悪い映画です。

■■考察■■
ジェームズ・フランコが、悩める男娼ソニーを好演しています。
母親の息子への愛は、溺愛であり、歪んだ愛情です。
この現状から抜け出せず、もがき苦しむソニーは、突然爆発し暴力を振るう形になって現れます。
心の不安定さ、繊細な心、感情表現も上手く、甘いマスクも印象的です♪



タイムライン (2003) 公開(2004)
Timeline
★★★
アメリカ 1時間56分
監督:・製作:リチャード・ドナー
出演:ポール・ウォーカー、フランシス・オコナー、ジェラルド・バトラー、ビリー・コノリー、イーサン・エンブリー、アンナ・フリエル、ニール・マクドノー

マイケル・クライトン原作、同名ベストセラー小説の映画化です。
フランス南西部、修道院の遺跡発掘現場。
ハイテク企業が開発した時空間転送装置でタイムスリップし過去に取り残された教授を救出する為、14世紀のフランスに旅立つ学生たち。
英仏百年戦争時代の真っ只中に突入した若者たちが、数々の危機を乗り越え、14世紀から21世紀への帰還を果します。
SF・アドベンチャー映画。

製作費110億円、実物大の城の建設など、リアルで迫力ある映像が見所です。

■莫大な製作費をかけ、キャストもほどほどに良い俳優を揃え、
ストーリーも忠実(=らしい)でスリリングな展開・・・
なのに、観た後は感動が薄く、満足度が少ないです。
うーーん、何故・・・!?

終盤の城攻めはなかなか上手い演出で良し!!



大脱走 (1963) 公開(2004)
THE GREAT ESCAPE
★★★★
アメリカ 2時間52分
監督・製作:ジョン・スタージェス
原作:ポール・ブリックヒル
出演:スティーブ・マックィーン、ジェームズ・ガーナー、チャールズ・ブロンソン、リチャード・アッテンボロー、ジェームズ・コバーン、ドナルド・プレザンス、デヴィッド・マッカラム

第2次大戦中、ドイツ東部サガン近郊の空軍第3捕虜収容所を舞台に、連合軍空軍将校ら250人がドイツ軍を撹乱するために大掛りな脱走を決行。
歴史の裏に隠されたこの大脱走の全貌を描いたポール・ブリックヒルのノンフィクション・ノベルの完全映画化です。
(=東劇、限定ロードショーのチラシより)

シンプルなストーリー運び、演出等、今の時代では作りえない、味わい深い良さがあります。
リチャード・アッテンボローの登場が多く感じられますが、存在感あるマックィーン、その他個性俳優たちが上手く配分、役割分担されていて、まとまりある演出となっています。
実話を基にして作られていますが、ただ単に筋を追うドキュメンタリーになること無く、誰が観ても楽しめるエンターテイメントになっています。

■収容所モノと脱走劇ということで暗い映画を想像していたのですが、肩の力を抜いたような陽気さがありました。
3時間という長さを感じさせること無く、何度観ても楽しめる名作です。

マックィーンが草原を駆け抜けるバイクシーンはもちろんのこと、ラストの締めくくりが特に気に入ってます (=^∇^=)
残虐シーンが殆ど無いのも良いです〜

■■考察■■
演出、ストーリー運びなどシンプルさ、そして懐かしい俳優さんたちとお会い出来てもう興奮しっぱなしでした!!
特にビックラしたのが、バートレット役のリチャード・アッテンボローですね。
現在の白ヒゲお爺さんのアッテンボローさんしか知らなのです。アセアセ
(=サンタクロースや「ジュラシックパーク」のオーナー役など)
それから、ジェームズ・コバーン!!
この人、昔から全然変わって無い。笑
悪人でもどこか飄々とした役が多かったというか。
亡くなられた時は本当にがっかりしました。
それから、チャールズ・ブロンソンですね。
私が持っているイメージより、お顔がふっくらして大きかったです。笑
スティーヴ・マックィーンのカッコよさは改めて言うこともないですねぇ・・・
有名な柵超えシーンなど、ホントに惚れ惚れしちゃいました♪ウフ

それにしても、よくあんな長いトンネルを掘りましたねぇ・・・
捕虜収容所も意外と清潔できちんとしていたのも驚きです。
あ、そうそう、収容所の所長さん、ドイツ軍でありながらも人間性の良さが感じらました。



テキサス・チェーンソー (2003) 公開(2004)
THE TEXAS CHAINSAW MASSACRE
★★★
アメリカ 1時間37分
監督:マーカス・ニスペル
出演:ジェシカ・ビール、ジョナサン・タッカー

ホラー映画の傑作「悪魔のいけにえ」(=74年製作)のリメイク
エド・ゲイン事件をモチーフにして作られたホラー映画です。
1973年、8月18日
テキサスの片田舎を車で通過しようとした5人の若者たち。
彼らは、ある異常者一家に、拉致、監禁され、ひとりずつ惨殺されて姿を消して行きます。
彼らが遭遇した想像を絶する惨劇を描いたスプラッター・ホラーです。

70年代、南部特有のギラギラと照りつける太陽、そして乾いた空気。
そういったテキサスの情景を、セピアがかった色彩で表現しています。

大量の血飛沫や血痕、血生ぐさい部屋の内部、そしてレザー・フェイスがチェーンソーで切りかかるシーンなどで怖さを体験するのですが
実際は、直接的な残虐シーン(=人体に直接、切り刻むシーン)は意外ですが、殆どありません。
如何にして上手く恐怖を煽るか、見せ場を作るか、そういった点にポイントを置き、作りこんだ演出をしています。

リメイクなので、ある程度筋書きが分かっており、次の展開が読める為、<予想がつかない展開>の怖さはさほど感じられません。

主人公エリンを演じるジェシカ・ビール、タンクトップが汗だくだくになり転げ回って熱演しています。

■ひたすら飛び交うハエが印象的です。笑
「悪魔のいけにえ」を観た方には少々物足りなさが残り、
オリジナルを観ていないホラーファンの方には満足出来る一品です。
その他、普通の方々は観ない方が良いかもです (=^∇^=)ウフ

■■ネタバレです■■
ラストで、ホイト保安官がエリンにひき殺されるシーン。
何度も戻ってひき殺すエリンを観て、正直言って「もっとやったれー!!」と思った私でした。ふ・・・


■■考察■■
トーマス・ヒユーイト(=レザーフェイス)は迫力満点ですが、欲を言うと、少々謎めいた不気味さが欠けているような気がします。
ただひたすら何の哲学も無しに追いかけ惨殺する姿は、まるでジェイソンのようです。
・・・っていうか、殆ど同じかも。笑
どちらかというと、ホイト保安官の方が印象的です。
現実味ある人間が、徹底的に苛め抜き、恐怖に怯える人間を弄ぶ・・・
こちらの方が恐ろしかったりします。
あ、あと、、テキサスへ旅行する人が減りそうで、それも心配です!!笑



ドッグヴィル (2003) 公開(2004)
Dogville
★★★★
デンマーク 2時間57分
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、クロエ・セヴィニー、ローレン・バコール、ベン・ギャザラ、ジェームズ・カーン、ステラン・スカルスガルド

アメリカ、ロッキー山脈の麓にある小さな村、ドッグヴィル
ギャングに追われ村に逃げ込んだ美しい女性、グレース(ニコール・キッドマン)
かくまってもらう代償として労働を行うことになった女性と村の人々との関係を描いて行きます。
時間の経過と共に変化して行くさまを辛らつに描いたサスペンス・ドラマです。
カンヌ国際映画祭で騒然となった衝撃の話題作であり、
<アメリカ三部作>の第一部です。


9章のエピソードとプロローグから成っています。
家や道などは床の上に白線を引いただけの境界線で表し、
壁や屋根などは一切省き、最小限の家具を配置しただけのシンプルなセットです。
俳優達は存在しないドアを開け、パントマイム的な趣向をも感じさせます。

セットがシンプルなので最初は驚きますが、次第に馴れ、すっかりストーリーに浸って行きます。
シンプルな分、人間の持つ本能や残酷な部分が際立ちます。
特に、中盤以降、村人たちの理不尽な要求が徐々にエスカレートして行く様は、観ていて不快感が頂点に達します。
序盤は村の歴史や村人たちの紹介、女性が村に溶け込むくだりですが、
中盤以降の展開には観ていて精神的に凍りつき、
ラストは、予定調和と言えど呆気に取られるほどの結末です。
終盤、車での会話は圧巻です。

トリフォー監督の痛烈なアメリカ批判とも受け取られます。
ストーリーはもちろんのこと、エンドロールに映し出される数々のフォトにもそれは伺えます。

■残酷な童話です。

人間の持つ残酷さ、本能・欲望の無限さ、そして群集心理の恐ろしさ・・・
そういった人間の嫌な部分をストレートに見せつけられ、
また、どこまでエスカレートするのか追究したような感じさえ感じます。

とても不快感漂う映画です。
でも、自分はそうなりきれないと言い切れるのか・・・?
これほどまでに不愉快な気分にさせるのは、女性と村人
人は誰でも、自分自身にも置き換えられる可能性を持っているからかも知れません。



ドラキュリアU 鮮血の狩人 (2002) 公開(2004)
Dracula U: Ascension
★★☆
アメリカ 1時間26分
監督:パトリック・ルシエ
出演・ジェイソン・スコット・リー、ジェイソン・ロンドン、クレイグ・シェイファー、ダイアン・ニール

前作で焼死体となった吸血鬼が新たな血を吸収し復活、ヴァンパイア・ハンターであるユフィジ神父(ジェイソン・スコット・リー)と壮絶な死闘を繰り広げます。アクション・ホラー映画。
ホラー界の巨匠ウェス・クレイヴン製作総指揮による「ドラキュリア」の続編です。

前作とはスタッフ・キャストとも全く異なり、ストーリーも前作との繋がりはあるとは言え、全体的に全く違った内容となっています。
本作は前作以上に神父に重点を置いており、ヴァンパイアの活躍は殆ど見られません。

■神父役のジェイソン・スコット・リーは、ムキムキのマッチョな神父。
とうてい神父らしからぬ風貌に返って好感が持てたります (=^∇^=)
一言一言が生臭いセリフですし・・・笑
それにしても、「ドラキュリア」という冠を持ってして、これほど情けないヴァンパイアを観たのは初めてです。
前作のセクシーで妖しい魅力のヴァンパイアも、今回は、学生同士のドタバタ劇に終始しています。

本来ならば★★なのですが、筋肉マッチョのジェイソン・スコット・リーの異色な神父に+☆となりました。
続編をプンプンと思わせる終わり方・・・と思ったら、第3弾が既に予定されているそうです。



ニューオーリンズ・トライアル (2003) 公開(2004)
Runaway Jury
★★★★
アメリカ 2時間8分
監督:ゲイリー・フレダー
原作:ジョン・グリシャム
出演:ジョン・キューザック、ジーン・ハックマン、ダスティン・ホフマン、レイチェル・ワイズ

原作は、ジョン・グリシャムの「陪審評決」
オリジナルではタバコ訴訟が、映画では銃訴訟に変更されています。
銃乱射事件で家族を失った遺族が、銃器メーカーを相手に訴訟を起こします。
被告側の陪審コンサルタント、フィッチにジーン・ハックマン、原告側の弁護士ローアにダスティン・ホフマン
そして、この裁判の勝利のキーを持つ陪審員候補にジョン・キューザック・・・
スリリングな展開を描いた法廷サスペンス映画です。

ハイテク最新機器を駆使し、ありとあらゆる手を使って陪審員工作をはかる陪審コンサルタントと、地道に調査を行うアナログ的な原告側の弁護士。
この2人の対決は、如何にも善と悪の対決です。
そこに様々なエピソードが加わるのですが、基本が明確なので観ている側は全く混乱しません。

■ストーリー展開の面白さもさることながら、
追い詰められても尚、勝気なジーン・ハックマンと誠実な態度を貫き通すダスティ・ホフマン
ベテラン同士の行き詰まる攻防戦に、ジョン・キューザックが絡むことによって、丁度良いバランスが生まれています。

法廷の裏側で繰り広げる駆引き、陰謀。
も、もしやして実際にもあることなのか・・・!?
驚き、そして、ここまでアメリカ社会は腐敗しているのかとつい疑ってしまうほど。
タバコ訴訟を銃訴訟に置き換えたのも良い選択です。
劇中では、タバコ会社をちょっぴり皮肉るシーンも出て来ます(オリジナルに敬意を表して?)

爽快感を感じながら劇場をあとにする作品です。



バレット・モンク (2003) 公開(2004)
Bulletproof Monk
★★☆
アメリカ 1時間43分
監督:ポール・ハンター
出演・チョウ・ユンファ、ショーン・ウィリアム・スコット、カレル・ローデン、マコ

60年前に師より後継者として任され、名前を捨て巻物の守護神となったチベット僧(チョウ・ユンファ)
現代のニューヨークで後継者探しをするチベット僧に、謎の組織が巻物を
狙って激しい攻防戦を繰り広げます。
痛快カンフー・」アクション映画です。
監督は、本作品で劇場映画監督デビューを果したMTV出身、弱冠22歳のポール・ハンター。

チベット僧に扮するチョウ・ユンファ。
闘う相手にも慈悲と情けをかけるその姿勢、そして、静かに微笑むそのチャーミングなお顔。
二丁拳銃のシーンも出て来てファンには嬉しいところです。

■ツッコミどころが多く、安易なストーリーです。
大雑把な感じが拭えないアクション映画ですが、そこそこに面白く、気軽に観れる映画といったところ。
例えると、簡単丼料理を小林勝代風にチョイチョイと手抜き料理・・・
出来た丼は庶民的でそこそこ美味しい!!
・・・そんな感じです。笑



ペイチェック/消された記憶 (2003) 公開(2004)
PAYCHECK
★★★
アメリカ 1時間58分
監督:ジョン・ウー
原作:フィリップ・K・ディック
出演:ベン・アフレック、ユマ・サーマン、アーロン・エッカート

近未来のアメリカ。
非合法な研究開発に携わっているエンジニアのマイケル(ベン・アフレック)
秘密保持の為、作業中の記憶を消去される代わりに多額の報酬を得ている彼は、友人の依頼を引き受けたばかりに陰謀に巻き込まれ、FBIと謎の刺客から追われるはめになってしまいます。
スリリングなバイク・チェイス、銃撃戦ありの、サスペンス色が強いSF・アクション映画です。

3年間の記憶が抜け落ちている為、何の為に追われているのか分からない男。
自分の残した19のアイテムを手がかりに謎を解いて行く・・・
サスペンス小説を読み進む時のような、わくわくする面白さがあります。
ジョン・ウー監督お得意のアクションが加わり、サスペンス+痛快なアクション映画になっています。

■映画のみを観ると、激しいツッコミどころが満載です。
ツッコミを楽しみ、気軽に観る映画かも  (=^∇^=)

ユマ・サーマン、この映画においては彼女の魅力を発揮してないような気がします〜
役柄が典型的なアクション映画のヒロインだったからでしょうか。
ベン・アフレックは、体が重たそうで走るのが辛い(=ように見える・笑)ですが、頑張ってました。

■■ネタバレです■■
■どうせ殺すのなら、記憶を消して解放する前に殺せば良いのではないでしょうか??
■19個のアイテムも良いですが、ユマ・サーマンに全てを打ち明けておいた方が良いのではないでしょうか??
これだと彼女に危険が及ぶからでしょうか。
でも、映画の方がもっと危険な目にあってますよね。笑
■爆発の後、時計が残ってFBIの人が発見するシーンは、「ザ・ロック」を思い出してしまいました。
参考にしたのでしょうか??
■せっかくマシンを破壊しに来たのに、不具合のあるマシンを修理して再起動させるなんて・・・
幾らもう一度未来を見てみたいからって、ちと安易過ぎやしないでしょうか??笑
■主人公のマイケルは、あんなに脳の中を引っかき回されて変にならないのでしょうか・・・!?

アクション映画にはツッコミがつきものなので、それはそれで楽しいのですけどね♪

■■考察■■
今回、アーロン・エッカートは・・・
何だかとってもブサイクな男に見えました。
大企業の社長さんなので絶対カッコ良く見えるはずなのに・・・
エッカートさんはラフな役の方が似合うのでしょうか。
ユマ・サーマンは、魅力を発揮してませんねぇ・・・
それなりにメイクも衣装も決まっているのに何故でしょうか??
ありきたりの役どころだったからかな。
ベン・アフレック。
髪型のせいか、何時もと違う感じに見えました。
体は太っている訳でも無いしマッチョという訳でも無いのに、何故かガタイが良いお方。
一生懸命走っているお姿は、何だか辛そうな、いや、そうでも無いような。笑



ぼくは怖くない (2003) 公開(2004)
IO NON HO PAURA
★★★☆
(ジョゼッペ・クリスティアーノと麦畑の風景 ★★★★)
イタリア 1時間49分
監督:ガブリエーレ・サルヴァトーレス
原作・脚本:ニコロ・アンマニーティ
出演:ジョゼッペ・クリスティアーノ、マッティーア・ディ・ピエッロ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ディーノ・アップレーシャ

原作は、ニコロ・アンマニーティの大ベストセラー小説「ぼくは怖くない」
この作品は、イタリアの文学賞、ヴィアレッジョ賞を受賞しています。

1978年、夏
イタリア南部の、たった5軒から成る小さな村
10歳のミケーレ少年(ジョゼッペ・クリスティアーノ)は、ある日偶然に廃屋にある穴を発見します。
その中には鎖で繋がれた少年フィリッポ(マッティーア・ディ・ピエッロ)が居て、やがて、ミケーレは村の大人たちがこの少年と関わりがあることを知ることになります。
ミステリアスなストーリー展開、そして少年の成長物語でもあります。

イタリア南部特有のサンサンと照りつける太陽の下、あたり一面輝くばかりの麦畑。
少年たちの夏休みは一日中遊んでも足りないくらいです。
その光景は思わず遠い自分の子供時代を思い出してしまうほどです。

少年は偶然にも大人たちの秘密を知りますが、大人にはなかなか聞くことが出来ません。
親に対する恐れみたいなものがあり聞けないことが多々あります。
しかし少年はその親への畏怖以上にフィリッポの事が気になり、ある行動に出ます。
畏怖する心より、弱い者に対する正義感が勝ったと言えるでしょう。
悩み葛藤しながらも自分の正義の赴くままに行動する少年の姿に、
私たちは勇気を持って行動する事の大切さを知ります。

ミケーレ少年の視点から描いている為、観ている者はすっかり彼と同化してしまいます。
最初から最後までハラハラドキドキのし通しです。

■単なるノスタルジックな映画ではありません。
ミステリアスなサスペンス+少年の成長物語です。
観た後は、爽やかな気持ちだけで終わらないところがミソです。

■■ネタバレです■■
ミケーレ少年はフィリッポと間違えられて傷つけられてしまいます。
その時の衝撃に思わず唖然・・・!!
この作品は少年たちの心の通い合いが主だと思っていたので、少々違った展開に戸惑ってしまいました。
何とも痛い映画です。
ラストも本当は爽やかな部分があるはずなのに、虚しさの方が大きく残ってしまいます。


■■考察■■
ミケーレ少年演じるジョゼッペ・クリスティアーノは、オーディションで1200人の中から選ばれました。
キラキラ光る澄んだ目、そして、繊細さと大胆さを演じきれる少年です。
端正な顔つきと達者な演技は、将来がとても楽しみであります〜♪

そうそう、冒頭で蚊取り線香が映っていました。
あれは日本のキンチョーでしょうか!?
同じようなのをイタリアで使っているのには驚きました (=^∇^=)フヒ



マスター・アンド・コマンダー (2003) 公開(2004)
MASTER AND COMMANDER:
THE FAR SIDE OF THE WORLD
★★★★
アメリカ 2時間19分
監督・脚本:ピーター・ウィアー
原作:パトリック・オブライアン
出演:ラッセル・クロウ、ポール・ベタニー、ビリー・ボイド、ジェームズ・ダーシー、マックス・パーキス

パトリック・オブライアンのベストセラー海洋冒険小説、全20巻からなる「オーブリー&マチュリン」シリーズから第10巻にあたる「ザ・ファー・サイド・オブ・ザ・ワールド」を映画化したものです。

1805年、ナポレオンがヨーロッパ征服を狙う中、
名艦長ジャック・オーブリー(ラッセル・クロウ)率いる英国海軍のフリゲート艦サプライズ号は、フランスの私掠船アケロン号追撃の命を受けます。
航海を続ける中、霧の立ち込める洋上で敵艦と遭遇します。
人員、速度、攻撃力をはるかに上回る敵艦に奇襲攻撃を受け、絶体絶命のサプライズ号。
広大な海上を舞台に繰り広げられるアドベンチャー映画です。

ジャック・オーブリー(ラッセル・クロウ)と艦医スティーブン(ポール・ベタニー)との友情を軸に、様々な人間関係を描いています。
性格は正反対なのにウマが合い、時には反発し合いながらも固い友情で結ばれている2人は羨ましくもあります。
また、日照り続きで水不足、船の進行もままならない中、船という閉ざされた空間の中で勃発する下級船員たちの不満。
それに押し潰され悲劇を招く顛末には、迷信を介して伝染して行く群集心理の怖さを感じます。

小物使いから戦艦に至るまで忠実に作られたセット。
敵味方と入り乱れた船内での乱闘、砲撃戦など迫力ある戦闘シーン。
臨場感溢れる映像など、まさに映画の醍醐味を味わえる作品です。

■危機一髪をすり抜け戦術にたける頼もしい指揮官は、まさにラッセル・クロウにあるようなもの!!
無骨なところがまた魅力的。

男のロマン、友情を柱に描かれる本作は、ただ単にダイナミックなアドベンチャー映画のみに終わらず、人間ドラマを存分に味わえるところが大きな魅力となっています。



ミスティック・リバー (2003) 公開(2004)
Mystic River
★★★★☆
アメリカ 2時間18分
監督・製作・音楽:クリント・イーストウッド
出演:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコン、ローレンス・フィッシュバーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローラ・リニー

デニス・ルヘインのベストセラー小説の映画化です。
幼馴染みである3人の少年は、ある事件に巻き込まれ、気まずく疎遠になってしまいます。
25年後、ある殺人事件をきっかけに、3人は被害者の遺族、刑事、容疑者という立場になって再会します。
それぞれのたどる運命を描いた重厚なタッチのサスペンス・ミステリーです。

事件の真相究明はもちろんですが、それ以上に、登場人物の心情を追った作品です。
少年時代の暗い過去が3人の人生に影を落としています。
過去への苦しみが曲がった道へと向かわせたショーン・ペン。
過去を拒絶したい気持ちを、内に秘めた演技で見せるティム・ロビンス。
孤独感を携帯電話で表現、前向きに生きようとするケヴィン・ベーコン。
それぞれのトラウマを背負った人生を、全身から滲み出る演技で表現しています。
また、ローレンス・フィッシュバーンを始め脇役たちの演技も素晴らしく見事です。

■人間の愚かさ、弱さ、はかなさ・・・
夫を信じきれない愚かな妻。
自分の願望さえ満たせば良い女。
我が子を殺された苦しみを他人にも与えている男。
誰もが持っていてる、また誰でもなりうる人間の脆さみたいなもの
そういったものを目の当たりに突きつけられたような映画です。

感動作というのとはまた違った次元にある、深みのある人間ドラマです。
脚本・演出共に丁寧に描いた完成度の高い作品。

背中の刺青の十字架を背負ったショーン・ペン・・・
「ミスティック・リバー」という題は、まさに川の流れの如く・・・
全てを観終わるとその意味が分かります。
ラストは人によって捉え方が違うかも知れません。



みなさん、さようなら (2003) 公開(2004)
LES INVASIONS BARBARES
★★★★☆
カナダ・フランス、1時間39分
監督・脚本:ドゥニ・アルカン
出演:レミ・ジラール、ステファン・ルソー、マリー=ジョゼ・クローズ、マリナ・ハンズ

2003年、カンヌ映画祭、脚本賞、主演女優賞を受賞
2003年、アカデミー賞、外国語映画賞を受賞
その他、多数受賞しています。

末期ガンで死を目前にした大学教授レミ(レミ・ジラール)
病床に伏したレミの元に家族や遠く離れた親友・愛人たちが集まり、彼の枕元で楽しいひと時を過ごします。
レミの最後の時を温かく見守り、そして、見送る・・・
コメディタッチで描く、感動のヒューマン・ドラマです。

生きること、避けることの出来ない死、死に直面した者のどうしようもない気持ち、切なさ。
ユーモア溢れる会話の中にも、人々のいろんな想いを感じ取ることが出来ます。

■ラストでは、目頭が熱くなり、涙が頬を伝わります。
<死>というものを考え、自分の生きて来た人生を振り返りたくなります。
悲しいはずなのに何故か温かいものを感じ、気持ちよく劇場を後にする作品です。

<死を迎える>という非常にデリケートな題材を扱いながらも、そのタッチは、明るく、サラリとしています。
<死を目前><コメディタッチ>と似た設定ながら、同時期公開の「グッバイ、レーニン!」とは全く別物の作品です。

■■ネタバレです■■
15年あまり別居生活を送った妻、社会的に成功を収めた証券ディーラーの息子、ヨットで海を航海中の娘・・・
友人たちとのインテリでユーモア溢れる会話、そして賑やかな愛人たち。
最後の瞬間を、大好きな家族や友人たちに囲まれて死を迎えられるこの幸せ。
「思い残す事はあるけれど、自分の人生は満足だった」と思える。
<死>を迎える恐ろしさはあるけれど、最後の最後まで生きる喜びを味わい、笑顔で過ごし、そして、死んで行く・・・
ある意味理想とも思える死に方に、思わず涙。


■■考察■■
末期ガンのレミが太っていて血色が良いのが難ですが、これもお愛嬌と思えば・・・笑
息子役のセバスチャン。
何となく昔風の青年顔のような気がして、「サンダーバード」の人形に似ているような気が(=くだらなくってスイマセン。汗)



みんなのうた (2003) 公開(2004)
A Mighty Wind
★★★
アメリカ 1時間32分
監督・脚本・出演:クリストファー・ゲスト
脚本・出演:ユージーン・レヴィ
出演:ボブ・バラバン、キャサリン・オハラ、ハリー・シアラー、マイケル・マッキーン

モキュメンタリー(=擬似ドキュメンタリー)映画。
あたかも本当の出来事のように物語が展開し、ドキュメンタリーのように見せる映画です。

1960年代にフォークブームを生んだ大物マネジャーの追悼公演の為、当時一世風靡したフォークグループ3組が再結成されます。
ブームから30数年あまり、彼らの悲喜こもごも溢れるエピソードを描いたコメディです。
ちょっぴり切なく、楽しい映画です。

時代の波に取り残されたフォークシンガーたち・・・
どこかピントが外れたようなちょっと可笑しい人たちを題材に、60年代のフォークブームを茶化した映画です。

■フォーク好きの人には堪らない作品です。
パロディなので当時流行した歌が流れる訳では無いのですが、劇中のフォークはフォークを知らない人にも楽しめるほど。

ただ、コメディでも、大笑い出来る笑いでは無く、クスクス・・・という笑いでも無く。
どことなく首をかしげる笑いです。
面白い人にはとても満足感が得られ、乗り切れない人には全く面白くない作品です。
自分的には、思っていた笑いでは無かったのですが、
作品的には良い映画だと思います。



ラスト サムライ (2003) 公開(2004)
The Last Samurai
★★★★
アメリカ 2時間34分
監督・脚本・製作:エドワード・ズウィック
出演:トム・クルーズ、渡辺謙、ティモシー・スポール、トニー・ゴールドウィン、真田広之、小雪、原田眞人

明治維新。
江戸時代に終わりを告げ明治の近代国家を目指す政府軍。
南北戦争の英雄である米国の大尉が日本政府に軍隊の戦術を教える為招かれます。
が、己に厳しく誇り高きサムライスピリットに触れた彼は感銘を受け・・・
武士道精神を真摯に丁寧に描いたハリウッド製の日本時代劇です。

日本の伝統文化、そして武士道。
古くから受け継いで来たモノをかたくなに守り抜こうとする者たち。
新しい時代に向けて古い価値観を破壊して前に突き進もうとする者たち。
二者の対立をアメリカからやって来た将校を挟んで鮮やかに描き出します。

■己が信じた道をまっすぐに歩いて行く侍たちがたまらなくカッコイイです!!
この映画を観て、過去のものとなってしまった「武士道」に思いを馳せ
戦場に華々しく散って行った者たちの生き様に感動することが出来るのです。

細かい描写は??な部分も随所に見受けられ少々違和感も感じられますが
なにより日本の風景や家屋、小物に至るまで殆ど正確に再現し
数々の戦闘における、壮絶で美しささえ感じるシーンは鳥肌が立つくらい素晴らしいです。
特に冒頭、森の中から馬に乗って現れる勝元(渡辺謙)は神秘的で、これから起きるであろう展開にすっかり魅了されてしまいます。

少々難を言えば、勝元を中心とする武士たちと政府軍の対決があまりに単純明快過ぎて違和感を覚えてしまいます。
が、日本以外の国に受け入れて貰う為にはいか仕方ないのかも知れません。

ハリウッドが日本の「武士道」に対して真面目に取り組んでいるのが嬉しく好感が持てる作品であります。



ラブ・アクチュアリー (2003) 公開(2004)
Love Actually
★★★★
アメリカ・フランス・イギリス
監督・脚本:リチャード・カーティス
出演:ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、コリン・ファース、ローラ・リニー、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、キーラ・ナイトレイ、ローワン・アトキンソン、ビル・ナイ、ビリー・ボブ・ソーントン

12月、クリスマス間近のロンドン。
男女19人が織り成すさまざまな愛の形を
クリスマスに向けて同時進行し、描いて行きます。
19人の豪華キャストによる、9つの心温まるラブストーリーです。

様々な人々が繰り広げる「愛」がどのように実っていくか・・・
結末は分かっていても、すっかり引き込まれてしまいます。

9つの愛の物語です。
それぞれが一つの映画になりそうなストーリーを決して話が散漫になることなく、ラストに向かって鮮やかにまとめ上げる手法は見事です。

アメリカへの皮肉ともとれるエピソードが映画のあちこちに、ウィットに飛んだ笑いで散りばめられています。
イギリスがアメリカに対して日ごろどう思っているか見て取れ、なかなか興味深いです。

■観た後は、幸せな気分に浸れる後味の良い作品です。
空港の風景で始まり、空港の風景で終わる・・・
飾り気の無い人々の笑いで終わる締めくくりは、とても新鮮で素敵です。

挿入される音楽を味わう楽しさもあり〜♪



リクルート (2003) 公開(2004)
The Recruit
★★★☆
アメリカ 1時間55分
監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:アル・パチーノ、コリン・ファレル、ブリジット・モイナファン

CIAにリクルートされた、マサチューセッツ工科大学のエリート大学生ジェームズ(コリン・ファレル)
研修施設ファームにて徹底的にスパイ知識を叩き込む、CIAの教官ウォルター(アル・パチーノ)
過酷な訓練や心理戦は、お互いを欺き人間不信に陥らせ、現実とテストの境界が分からなくなります。
最後まで緊張感が続くスリリング溢れるサスペンスです。

CIA本部に取材協力を得て、可能な限りの情報によって再現したリアルな映像。
が、映画の中は全てが真実では無く、かなり脚色された部分があるようです。

■老練な役者アル・パチーノと、今が旬の注目株コリン・ファレル
大物俳優と若手俳優の行き詰まる心理戦が見ものです。
背後の陰謀に翻弄され、焦り、混乱して行くコリン・ファレルの演技がお見事です〜!!

それにしても、あんな複雑なことをしなくとも、もっと簡単に手に入るような気が!!笑



レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード (2003) 公開(2004)
ONCE UPON A TIME IN MEXICO
★★★☆
アメリカ 1時間41分
監督・脚本・撮影・音楽・編集・音楽:ロバート・ロドリゲス
出演:アントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック、ジョニー・デップ、ミッキー・ローク、エヴァ・メンデス、ダニー・トレホ、ウィレム・デフォー、ルーベン・ブラデズ

ロバート・ロドリゲス監督の「エル・マリアッチ」「デスペラード」に続く三部作の完結編です。
メキシコ。
伝説の男エル・マリアッチを中心に、クーデターに乗じて暗躍するCIA捜査官サンズ(ジョニー・デップ)、麻薬王バリーリョ(ウィレム・デフォー)、バリーリョの用心棒(ミッキー・ローク)、元FBI捜査官ラミレス(ルーベン・ブラデズ)など、様々な人間の思惑が重なり合い、激しい銃撃戦が繰り広げられます。

じりじりと焼け付く灼熱の太陽、舞い上がる砂ぼこり、原色で彩られた色鮮やかなメキシコの風景、そしてギターの音色・・・
人が吹っ飛ぶほどの激しい銃撃戦と怒涛の爆発シーンが入り乱れ、
登場人物たちがそれぞれの思惑を胸に立向かう・・・
騒々しい人ごみの中で繰り広げられるアクションからは、メキシコの熱気とい乾いた風が伝わって来ます。
少々群像劇的な趣も感じられるガン・アクション映画です。

■少々煩雑になった感じは否めませんが、出ている人全てが濃く、強烈!!!
楽しんでやっている(=ように見える・笑)のでこちらも楽しくなって来ます。
食事で例えると、揚げ物ばかり出て来て少々ウプッとなるのですが、食べた後はまた食べてみたいと思わせる・・・そんな感じです (=^∇^=)ウフ

ジョニー・デップ演じるサンズは、ピビル(=豚の蒸し焼き料理)が上手いと言い、平気でコックを殺せる非情さを持ちながらも、偶然出会った少年とは温かい交流を持ちます。
そのアンバランスな部分と弾けたキャラは、ジョニーならではの魅力です。
アントニオ・バンデラスも、どの作品よりも一番光ってカッコイイです。
脇を固める面々も皆さん個性的で良し!!!

エンドクレジットの後で何故かサンズのドアップが出て来ます〜すぐ帰らぬように・・・ウフ♪

■■ネタバレです■■
デフォー、せっかく顔の整形をしたのに、すぐ殺されてしまって・・・
誰か他の人の顔になっているのかと思ってまして、死ぬ前に顔の包帯を取るのかと思っていました。
エヘヘ、ちと考え過ぎですね。笑


■■考察■■
一昔の西部劇を思わせるようなアクション映画ですな。
フフフ・・・
ジョニーさんが出ていないと、きっと女性は観に行かなさそうな映画でしょう。笑
ジョニーさん、楽しんでやっていたそうだし、男臭い映画にあって
彼が出ていることでちょっとした話の余裕が生まれているような気がします〜
ウィレム・デフォー、アントニオ・バンデラス、ミッキー・ローク・・・
しかし、これだけよく濃いお方たちを集めましたねぇ・・・
ミッキー・ローク・・・
何だか太っていたような気がしたのですが・・・
あまり見せ所が無かったのでちと惜しいっすね。
しかし、ジョニーさんを見ると、ホントに楽しんで映画していると思うのです。
あれだけの大物になると、今回の映画みたいに脇役だと出演しない人って多いと思うのですよね。
バンさん主演で最後は美味しいところを持って行ってしまいますからねぇ・・・
いやー、ジョニーさんのこういうところも好きだったりします!!ウフ〜〜♪



列車に乗った男 (2002) 公開(2004)
L'HOMME DU TRAIN
★★★★☆
フランス 1時間30分
監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール、ジョニー・アリディ

2002年度、ヴェネツィア国際映画祭観客選出グランプリ、最優秀男優賞(ジャン・ロシュフォール)受賞
他、多数受賞しています。

フランス、シーズン・オフのリゾート地。
旅から旅へと渡り歩くアウトローな男ミラン(ジョニー・アリディ)
定年退職し、広い邸宅で一人暮らしをする、孤独な元教師マネスキエ(ジャン・ロシュフォール)
対照的な2人の男がふとした事で出会い、共に語り合う内に、2人の間に静かに友情が芽生えて行きます。
3日間の出来事を描いた、2人の男の心の交流を綴ったヒューマンドラマです。

2人が出会った事がきっかけで、自分の今までの人生を振り返ることが出来ます。
お互いに相手の人生を生きてみたいと思う願望が芽生えます。
誰もがふと思う、別の人生、別の生き方。
その思いを美しい映像を背景に、主人公たちの心のひだを鮮やかに描き出しています。

■1時間30分の間で語られる二人の夢、そして人生。
人生の終わりに近づきつつある男の切ない願望。
短い時間の中で表現された、めったにお目にかかれない素晴らしい作品であります。
ラストは、さわさわ・・・と鳥肌が立つほどでした。
■■ネタバレです■■
ラストは、どちらとも解釈出来る終わり方です。
最後に見たシーンは、これからの<現実>か、あるいは死ぬ直前に見る<幻想>か・・・
これは、観る人に委ねた、観る人にストーリーを選んで欲しい結末だと思います。
私の場合は<幻想>であります。
死ぬ間際に見た<幻想>つまり、それぞれの想いは、永遠にその人の中に生き続けて行く・・・そんな思いが込められているような気がします。


■■考察■■
ジャン・ロシュフォール、ちょっと自信なさげで誠実な、お人よしのお喋り好きなおじいさん。
時には、嬉々としてミランの脱ぎ捨てた革ジャンに腕を通してみたりする。
好感の持てるおじいさんを演じています。

対して、マネスキエと正反対のキャラを演じるジョニー・アリディ
人生に疲れを感じる今日この頃、自分の人生とは違う、詩と本に囲まれた穏やかな生活を願うアウトロー。
その微妙な意識の表れを渋く演じていて、とても素敵なお方です。ウフ♪



ルビー&カンタン (2003) 公開(2004)
Tais Toi !
★★★☆
フランス 1時間25分
監督:フランシス・ヴェベール
出演:ジャン・レノ、ジェラール・ドパルデュー、リシャール・ベリィ アンドレ・デュソリエ 

寡黙な男、ルビー(ジャン・レノ)と、陽気で人一倍おしゃべりな男、カンタン(ジェラール・ドパルデュー)が刑務所の中で出会い、ひょんなことから脱走することになります。
追っ手を逃れ逃避行を続けるうちに、次第に2人の間に奇妙な友情が芽生えて行きます。
軽妙なタッチで描く痛快コメディです。

珍道中の間、様々なトラブルに遭遇しますが、
カンタンのお馬鹿ぶりが功をなし、ひょいひょいとギャングと警察からの追ってを振り払います。
2人のアタフタぶりが何とも微笑ましいです。

■全編に渡ってクスクス・・・と笑いに包まれる、気軽に観れる楽しいフレンチ・コメディです。
特に大きな仕掛けやクライマックスがある訳では無く、
フランス的な小品の良さが感じらる作品です。

機関銃のようにけたたましくまくしたてる無邪気なジェラール・ドパルデューと、寡黙でニヒルなジャン・レノ。
とにかく2人の対比が可笑しいです。
自分を慕い、追い払っても追い払ってもどこまでもついてくるジェラール・ドパルデュー・・・
実際ああいう人が近くに居たらさぞかし迷惑だと思います。笑

ジェラール・ドパルデュー、激痩せしています。



恋愛適齢期 (2003) 公開(2004)
SOMETHING'S GOTTA GIVE
★★★☆
アメリカ 2時間8分
監督・脚本:ナンシー・メイヤーズ
出演:ジャック・ニコルソン、ダイアン・キートン、キアヌ・リーブス、フランシス・マクドーマンド

30歳以下の女性としかつきあわない63歳の独身プレイボーイ、ハリー・サンボーン(ジャック・ニコルソン)と、離婚暦のある54歳の女性劇作家エリカ・バリー(ダイアン・キートン)
あるきっかけで知り合った二人の関係を、青年医師ジュリアン・マーサー(キアヌ・リーブス)を交えて描く三角関係のラブ・コメディ&ロマンス映画です。

最初の出会いは最低、しかも価値観が全く違う男と女。
そんな2人が次第に相手に惹かれて行く様子が何とも微笑ましく、そしてちょっぴり切ないです。
避暑地の別荘や、海辺での散歩、登場人物の衣装など、全てにおいてナチュラル!!
楽しく、心地よさを感じる映画です。

■大人の為の、ラブ・ロマンス映画です。
何歳になっても素敵な恋が出来ると思えて来る映画。

■■ネタバレです■■
二転三転するラストです。
自分の書いた劇の中でハリーを殺してしまう時点でアウト、ジュリアンと交際している時点でアウト・・・
と、思いきや、本当のラストでは予定通りのハッピーエンドが用意されています。
ハリーとの仲が壊れ泣き暮らしていたエリカは、新作の劇が完成した後は、まるで別人のようになっています。
愛にのめり込んで泣き叫んでいた女が、美しく自信に満ち溢れている・・・
文を書くという事は、自分の気持ちを整理し、癒す効果があるに違いありません。


■■考察■■
若い女性しか興味が無い中年男にジャック・ニコルソン。
思いもかけぬ女性に心惹かれ、そんな自分の気持ちにどぎまぎし、とまどう姿が可愛いです。
最初は手馴れたプレイボーイ役で登場しましたが、すぐに病院に担ぎ込まれ、頭ボサボサ、ヨレヨレ姿になるニコルソン。
この姿あってこそ、ニコルソンですな (=^∇^=)フフフ

ダイアン・キートン、自然体な演技が素敵です。
ちょっと上目遣いの首をかしげた笑顔がとてもチャーミング♪



ロスト・イン・トランスレーション (2003) 公開(2004)
LOST IN TRANSLATION
★★★★
アメリカ 1時間42分
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
出演:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン、ジョヴァンニ・リビシ

2003年、アカデミー賞、最優秀脚本賞、受賞
その他、多数の賞を受賞しています。

CM撮影の為来日したハリウッド・スターの中年俳優ボブ・ハリス(ビル・マーレイ)と、アメリカ人の若い人妻シャーロット(スカーレット・ヨハンソン)
東京での滞在で孤独や疎外感に苛まれていた2人は、ひょんなことから知り合い、次第に打ち解け心を通わせて行きます。
異国の地で出会った男女の束の間の愛を描いた、プラトニックなラブ・ストーリーです。
ソフィア・コッポラ監督自身の東京での経験を参考にして描かれています。

日本ではごく当たり前に感じているものが、この映画では異質なものに感じてしまいます。
アメリカ人から見たら摩訶不思議なものに映るのかと思うと、何やら複雑な心境になります。汗

■<アメリカ人から見た日本>を念頭に置き、観る事をお勧め致します。
特に大胆なストーリーがある訳ではありません。
2人が持つ心の空虚感や喪失感を感じ、次第に癒されて行く過程に見所があります。

■■ネタバレです■■
ただ言葉を交し語り合うだけでも、人は愛を感じ、寄り添うことが出来るのです。
不安と寂しい気持ちで入り乱れていた心も、次第に溶けて癒されて行く・・・
2人が雑踏に飛び出し一緒に歩くだけで、次第に心の整理をつけて行くのです。

ラストでは、唯一のキス・シーンがあります。
ボブ・ハリスがシャーロットの耳元に何かささやいているけれど、こちらには分かりません。
2人が初めて見せた素敵な笑顔で終わる、とても印象的なラストです。

セックス無し、一度だけのキスで締めくくる、束の間の恋。
素敵じゃありませぬか−♪


■■考察■■
ビル・マーレイ・・・
中年の悲哀をビシビシと感じさせます。
男の哀愁を感じさせ、とまどう姿が堪らなく良いです♪