2004年(9月〜12月)映画館で観たレビューです。


CODE46 ★★★☆
イブラヒムおじさんとコーランの花たち  ★★★★
ヴァン・ヘルシング ★★★
ヴィレッジ ★★★☆
エイリアンVS.プレデター ★★★
エクソシスト・ビギニング ★★★
オールド・ボーイ ★★★★
感染  ★★☆
クライモリ ★★★
五線譜のラブレター DE-LOVELY ★★★★
最“狂”絶叫計画 ★★★
シークレット・ウィンドウ ★★★☆
春夏秋冬そして春 ★★★★
ジェリー ★★★★
世界でいちばん不運で幸せな私 ★★★☆
戦争のはじめかた ★★★
ソウ/SAW ★★★★
父、帰る ★★★★★
ツイステッド ★★☆
テイキング・ライブス ★★★
デビルズ・バックボーン ★★★☆
ナイトメアー・ビフォア・クリスマス ★★★★
バイオハザードU アポカリプス ★★★☆
バッドサンタ ★★★ (サンタやさぐれ度 ★★★★★)
パニッシャー ★★★☆
ブエノスアイレスの夜 ★★★☆
プリンス&プリンセス ★★★★☆
変身 ★★★★
僕はラジオ ★★★★
ボン・ヴォヤージュ ★★★★
みんな誰かの愛しい人 ★★★★
モーターサイクル・ダイアリーズ ★★★★☆
モンスター ★★★☆   (シャーリーズ・セロン、迫真の演技★★★★☆)
予言 ★★★




CODE46 (2003) 公開(2004)
CODE46
★★★☆
イギリス 1時間33分
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演・サマンサ・モートン、ティム・ロビンス

環境破壊の進んだ近未来。
市民を徹底的に管理する世界は、内の世界(=安全な都市部)と外の世界(=砂漠化した無法地帯)に二分化されていた・・・
二つの世界を行き来するには、バペル(=パスポートとピザを兼ねた許可証が)が必要となり、その偽造事件を追って、調査員と容疑者が出会い、宿命の恋に落ちて行きます。SFサスペンス・ラブストーリー。

■好き嫌いが分かれそうな映画です。
淡々としたストーリー運びと、独特の映像、この世界に浸れる人はとても満足の出来る作品です。
色で例えるとライトグレーな感じ。
近未来の社会を作り出す為、実際の風景を使用し加工して、独特の世界を演出しています。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
高度に管理の進んだ社会の産物である、法案「CODE46」の為に、愛し合う二人は引き裂かれ、記憶さえ奪われてしまいます。
破滅に向かっていながらも尚寄り添い、逃避行を続ける二人。
何とも切なく、哀しいラブ・ストーリーです。

禁断のラブ・ストーリーですが、その背景には強い文明批判があります。
富める者、貧しい者・・・・
差別する側、される側。
そして、その後の二人の行方は、記憶を消され以前と同じように生活する男、記憶はそのままに外の世界に追放される女と、悲劇の結末を迎えます。
それは、まるで現実の世界(富める国、貧しい第三世界の難民たち)を表わしているようです。
二つの世界は現実の世界とシンクロし、何ともやり切れない気持ちが残ります。


■■ラブ・シーン■■
二人が愛し合うシーンは、殆どシャツやタンクトップなどの姿が多く、
今どきの映画にしては控えめで清潔感があると思っていたら・・・
クライマックスのラブシーン、何だか変!!!
何とも違和感あるラブ・シーンでありました  (=^∇^=)ミョー


■■考察■■
ティム・ロビンスは元々背が高い方ですが、サマンサ・モートンが低い為、とてつもなく高く見えます  (=^∇^=)
お似合いのような、そうでないような・・・不思議なカップル♪



イブラヒムおじさんとコーランの花たち (2003) 公開(2004)
Monsieur Ibrahim et les fleurs du Coran
★★★★
フランス 1時間35分
監督・脚本:フランソワ・デュペイロン
脚本・エリック=エマニュエル・シュミット
出演:オマー・シャリフ、ピエール・ブーランジェ、ジルベール・メルキ、イザベル・ルノー、イザベル・アジャーニ

2003年、ヴェネチア映画祭、特別功労賞受賞(オマー・シャリフ)
エリック=エマニュエル・シュミットのベストセラー小説の映画化です。
原作者の祖父とコーランの思い出を基に描いたお話です。

1960年代はじめ、パリ。
裏通りの下町ブルー街で、父(ジルベール・メルキ)と慎ましやかに暮らす13歳の少年モモ(ピエール・ブーランジェ)
近所の食料店主イブラヒムおじさん(オマー・シャリフ)と少年との心の交流を描いた感動のドラマです。

■前半は少年を取り巻く人々や暮らし、後半はロードムービーの趣きがあります。

宗教や人種、世代の違いなど・・・
それらを超えた二人の心の交流に胸が熱くなります。
ユダヤ人、アラブ人、トルコ人、彼らを取り巻く問題など、自分にもっと深い知識があれば、彼らの根底に流れる想いをさらに深く汲み取れたのですが・・・自分の浅い知識が悲しい。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
少年の置かれた状況は決して良好ではありません。
が、下町ながらどこかカラリと明るく煩雑な空気やそこに佇む娼婦たち、そして食料店主の存在が、少年の心に何か<生きていて楽しいこと>を与えています。
父親とモモとの関係もどこか寒々しいものがあり、父亡き後の母の出現にも相容れないものがあるのは当然でしょう。
父の愛は一方的ですれ違い、家族の姿を知らずに育った少年。
が、トルコ人の老人にそっと手を差し伸べられ、やがて、二人の間に親子以上のものが生まれます。
真の親子では無いけれど、彼らの間には親子以上の何かがあり、少年はやがて<“生きている”から“生きること”の意味>を悟るのです。

ユダヤ人である父とモモ、トルコ人であるイブラヒムおじさん。
老人と少年、イスラムとユダヤの民族的な問題、人種が壁を作る養子縁組の難しさ。
60年代の設定なのに今も昔も変らない問題がそこにはあります。
父の自殺は生きることへの喪失ですが、その原因となった失業は、ユダヤ人であることが大きいのかも知れません。

深いテーマが根底にありながら、決して暗く重苦しく無く、明るいユーモアに富んだ演出はお見事。
人生の素晴らしさを感じる作品です。

■アレな話
少年モモが初体験をします。
その時の様子が、自分のブタ貯金箱を一心不乱にガーーッと振って、硬貨を入れる穴から硬貨を一枚取り出そうとするイメージのもの。
激しく降った後に、一枚コロリと出て来る快感があの時の快感。
・・・自分は女なので分かりませんがやはりそうなのでせうか!?エヘ


■■考察■■
名優オマー・シャリフ・・・
最初寡黙な店主が次第に饒舌に変ります。
味わい深い下町のオヤジを好演♪



ヴァン・ヘルシング (2004) 公開(2004)
Van Helsing
★★★
アメリカ 2時間13分
監督・脚本・製作:スティーヴン・ソマーズ
出演:ヒュー・ジャックマン、ケイト・ベッキンセール、リチャード・ロクスバーグ、ディヴィッド・ウエンハム

ブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」に登場する、吸血鬼の宿敵ヴァン・ヘルシング。
過去の作品では、ドラキュラを長年追い続けて来た老教授として描かれていましたが、今回は、若くてタフで強靭な肉体を持つモンスター・ハンターとして活躍します。
ドラキュラ伯爵の他には、フランケンシュタイン、ウルフマン、ジキル&ハイド氏等、伝説のモンスターたちが登場します。

■モンスター映画特有のダークで不気味な映像が延々と続き、
ドラキュラ伯爵とヴァン・ヘルシングの因縁の闘いを中心にストーリー展開します。
登場人物全て嫌悪感を抱くキャラが居ないこと、また、残虐なシーンも殆ど無い為、安心して観れる<健全的な>ホラー・アクション・アドベンチャー映画となっています。

今回のヴァン・ヘルシングは、自分が何者か過去の記憶を失っており、失われた記憶を求めて苦悩するところも今までとは違うところです。
激しい空中戦が展開し壮絶な闘いを繰り広げる最新のVFXも見所です。
主役3人のキャラも合っており、まさに適役♪

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
ドラキュラ伯爵、フランケンシュタイン、ウルフマン、ジキル&ハイド氏等、時代考証が合わないのはこの際問題外として、特に気になった箇所をツッコミ♪

■ウルフマンに変身する兄(ウィル・ケンプ)はかなり見苦しい変身。 
ヴァン・ヘルシング(ヒュー・ジャックマン)が変身する時はスマートでむしろカッコイイ。
■ウルフマンになった2人、変身後は何故か「ハルク」同様、パンツ一枚が残る。
■ドラキュラ伯爵(リチャード・ロクスバーグ)が持つ妖しい魅力が少ない。
アン王女(ケイト・ベッキンセール)をくどく時も、一瞬の内にクラーッとよろめかせる性的魅力が欲しいところ。
■3人の花嫁のキャラが似たり寄ったりで区別が付かない。
3人共キャバクラあがりの安っぽい感じ。
誰か一人を気品のある役に据えないと、一人の花嫁が産んだという大量の卵の意味が活きてこない。
■ラストのドラキュラ伯爵とウルフマンの闘いがあっさりし過ぎて盛り上がりに欠ける。
殆ど逃げ越し状態のドラキュラ伯爵の不甲斐無さ  (≧∇≦)おお
■ラストのクライマックスも殆ど見せ場が無い闘いなので、結局印象に残っているのは、空を自由に飛び回る悪魔の姿をした裸同然の花嫁たち・・・
■息つく間も無いアクションの連続は面白い。
が、それに慣れてしまって、メリハリが無く、全体を通してみると平坦な感じを受けてしまう。
■それぞれのモンスターたちの持つ哀しみや切なさ、憤り、孤独感が伝わって来ない。
モンスターたちそれぞれの哀しみを2〜3時間の映画で表現するのは無理があるかも。
連続モノにすると良いのでは!?


■■考察■■
アン王女を演じるケイト・ベッキンセール・・・
王女としての強さと気品があります。
しかし、前作「アンダー・ワールド」より老けて見えるのは、髪型とメイクせいか?笑

ヒュー・ジャックマンは、精悍でたくましいモンスター・ハンターを披露。
隣のデヴィッド・ウエンハムが妙に小柄に見えるのは、ヒュー・ジャックマンの身長が193cmあると知って納得  (=^∇^=)



ヴィレッジ (2004) 公開(2004)
The Village
★★★☆
アメリカ 1時間48分
監督・製作・脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ブライス・ダラス・ハワード、ホアキン・フェニックス、エイドリアン・ブロディ、ウィリアム・ハート、シガーニー・ウィーバー

1897年、米ペンシルバニア州、フィラデルフィアの小さな村。
外界から隔絶された小さな村にはある「掟」があり、それを破られた時、村人たちに恐怖が訪れます・・・
意外な真実が隠された、ミステリー・サスペンスです。

■予告編などの前宣伝では、如何にもホラー映画として紹介しています。
が、ホラー・ミステリー仕立てにしながらも、実は全く違う映画です。
映画の根底には愛が有り、人間ドラマの要素が多いミステリーといったところです。
寓話を映画化したような、ちょっと切なく哀しいお話です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
一見平和そうに見える村は、実は、「恐怖」と「支配」によってかろうじて成り立っています。
その均衡が破られた時、村は動揺します。
まるで小さなさざ波が大きな波紋になって行くように、村の人々(=この場合、長老たち)の心にも少しずつ変化が起きて行くのです。

彼らは、現実社会を拒否し、自分たちだけのユートピア(=コミュニティー)を作った訳です。
が、こういった社会は無理があります。
人間らしく生きることが、返って人間性を否定する社会になってしまうのです。

隔絶された楽園で、暴力や煩わしさから逃れて無菌状態のまま暮らして行く。
一見すると理想社会のように見えますが、そうなのでしょうか。
無垢な天真爛漫の青年によって殺人未遂事件が起きるこの皮肉。
人間とは、身の回りに起こる問題に目を背けないで、常に改善して行くことが必要なのではないでしょうか。
愛する人を助けたい、守りたいと思う気持ち。
それには、<愛>と一歩前に進む<勇気>が必要なのです。
人間が如何に人間らしく生きるか・・・そういった事を考えさせてくれる作品です。

・・・で、あるとはいえ、殺伐とした現代を生き抜く私たちにとって、この映画のような村は、ふと理想に思える時があります。
人間の心の隙間にふと垣間見る「夢」のような存在なのかも知れません。

何気に気になるところ  (=^∇^=)
■服や革靴など、どう見ても村で作っているとは思えない。
■完全な自給自足は無理なのでは?
  ・・・村を隔絶した以前の残り物を保存し使用しているのか?
■赤と黄色の違いが知りたいです。笑
■大の大人がバケモノの被り物を着て暴れる滑稽さよ。
つい秋田のナマハゲを思い出してみたり。笑
■冒頭の少年は医療の立遅れ死に、後の者には薬を取りに行かせる。
如何に愛につき動かされたとしても、何だか不公平だのうー


■■考察■■
知的障害者ノアを演じるエイドリアン・ブロディ・・・
さすがオスカーを取るだけあり、ヨダレを流しながらの熱演!!
し、しかし、、オスカー俳優がこんな役を・・・と言う気がしないでもなく。汗

ブライス・ダラス・ハワード・・・
真っ直ぐな澄んだ目が印象的、適役です!!
ウィリアム・ハート、シガーニー・ウィーバー等の大物俳優陣。
これまた、単なる「村人A」になってしまい少々残念。



エイリアンVS.プレデター (2004) 公開(2004)
ALIEN VS. PREDATOR
★★★
アメリカ 1j時間40分
監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン
出演:サナ・レイサン、ラウル・ボヴァ、ランス・ヘンリクセン

SFホラーの「エイリアン」とSFアクションの「プレデター」
絶大な人気と世界中にファンを持つ両者の壮絶な死闘を描くSFホラー・アクションです。
ウェイランド社の衛星が捉えた南極大陸の地下600mの熱源。
早速、各部門のエキスパートを招集し、調査に向かう一行が目にしたものは・・・

■SFホラーですが、特に怖くはありません。
ドキドキ感も少ないかも。
気軽に観て楽しむ映画です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
エイリアン、プレデター、人間・・・異なったキャラがぶつかり合う為、それぞれの存在が薄くなった感ありです。
特に人間の個性が平坦に描かれていて印象が残らないのが残念。
エイリアン、プレデターの両者、それに加え背景の遺跡の色が同じなので闘っている時、見分けが付きにくいのも惜しいところ。

■終盤は失笑の連続  (=^∇^=)
□「敵の敵は味方」などと言い、ヒロインとプレデター、協力し合い手を組む二人。
友情にも似た感情、安易な展開に唖然・・・
□仲良くなった二人は共に遺跡を疾走する。
その姿があまりに友情していて可笑しい。
□地下の爆発から逃れる二人。
爆発の風圧を利用して台車に乗って一気に脱出だ!!
・・・氷の空洞を走り滑る姿は、まるでボブスレー
□南極に到着した時は完全防備の服装。
しかし、ヒロインが地下の遺跡を脱出し上に上がって来た時は、セーター1枚のいでたち。
極寒の南極でその軽装は大丈夫なのか!?
□吐く息も白くないぞ。
普通に会話しないで下さい、南極なのに。笑

■つまりは・・・
□ピラミッド様の遺跡は、プレデターが成人になる為エイリアンと闘う儀式場なもの。
プレデターの成人式・・・という設定自体が可笑しい。笑
□儀式は古代から100年ごとに行われて来たらしい。
しかし、その痕跡は今まで発見されなかったが。
□そんな儀式は他でやって下さい  (=^∇^=)


■■考察■■
人間では、ランス・ヘンリクセンだけが印象に残ります。



エクソシスト・ビギニング (2004) 公開(2004)
Exorcist : The Beginning
★★★
アメリカ 1時間54分
監督:レニー・ハーリン
原作:ウィリアム・ウィッシャー
原案:ケイレブ・カー
出演:ステラン・スカルスガルド、ジェームズ・ダーシー、イザベル・スコルプコ

1973年に公開された、ウィリアム・フリードキン監督の「エクソシスト」
本作は、1作目より25年前に遡った時代設定です。
メリン神父と悪魔バズズとの対決は、すでにここから始まっていたのです。
二人の因縁の対決が明らかにされる「1」の謎を補ったような作品です。

■オカルト・ホラーと言うより、宗教映画的な趣が強い作品です。
序盤は、思わせぶりな映像と突然鳴り響く音響効果などで、ひたひたと忍び寄る何者かの気配を感じます。
が、日本には馴染みの無い悪魔が題材なので、特に怖さは感じられません。

■■ネタバレです■■
1作目はその当時、ショッキングな演出と話題性でオカルト映画に位置付けられていました。
が、改めて振り返ってみると、「エクソシスト」は、純粋な宗教映画であり、苦悩する人間を描いた人間ドラマなのです。

悪魔に取り付かれた女医サラ・ノヴァック(イザベル・スコルプコ)
その風貌は、明らかに「エクソシスト」のリンダ・ブレアを意識したもの。
首をぐるりと回す演出の替わりに、壁をサササとクモのように這い上がったり、凄い速さで突進して来たりと、悪魔振りを発揮してくれます。
物語の中に必ずこういった演出を取り入れるのは、前作に合わせたのか、他に思いつかなかったのか・・・  (=^∇^=)クス


■■考察■■
ステラン・スカルスガルド・・・
鋭い目つきの神父さま♪意外と似合っているかも  (*^∇^*)ウフ



オールド・ボーイ (2003) 公開(2004)
Old boy
★★★★
韓国 2時間
監督・脚本:パク・チャヌク
原作・土屋ガロン(画)、嶺岸信明(作)
出演:チェ・ミンスク、ユ・ジテ、カン・ヘジョン

第56回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品
原作は「漫画アクション」に連載された(1996年〜98年)、土屋ガロン(画)と嶺岸信明(作)による同名コミックの映画化です。

1988年、韓国。
普通の生活をおくっていた会社員がある日突然何者かに拉致され、15年もの間監禁され続けます。
突然解放された男は、自分を監禁した男を探し出し復讐しようとしますが・・・
壮絶な復讐を力強いタッチで描くアクション・サスペンス・ミステリーです。

■好き嫌いが分かれそうな作品です。
コミカルな可笑しさ、切なさもある反面、暴力的でグロテスク。
不快感が残る作品ですが、ぐいぐいと引き込まれる魅力が有ります。
誰によって何故監禁されていたかという「謎解き」と、二つの「純愛」を感じる作品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
弟ウジン(ユ・ジテ)は姉との近親相姦を肯定する為に、自分たちの行為を理解して貰いたい為に、オ・デスを監禁したのでしょう。
しかし、長期間に渡る監禁やその後に用意した卑劣な罠に、相手は自らの尊厳を捨てまで愛する者を必死に守ろうとする・・・
その<守ろうとする愛>の姿を目の当たりにしたウジン。
最初は蔑み可笑しく勝利に酔っていたけれど、実は、自分の心には満たされるものは無く、ただ喪失感のみが残ったのでしょう。
普通ならば、噂を流しただけであそこまでの行為には及ばないはず。
ウジンの心には、「噂を流した相手を罰する復讐心」より、「姉を守ってやれなかった自分」に対する悔しさが、他人を攻撃する方へ向かって行ったのだと思われます。

■ラストは・・・
ラストは解釈が分かれるところです。
オ・デスの中の二つの人格はどうなったのか?
実の娘ミドとのその後は・・・?
自分の解釈では、、
ただ単に催眠術師に記憶を消して貰ったのでは無く、
二人抱き合うオ・デスの泣き笑いの表情から分かるように、自分の心に存在するモンスター(=復讐心や猜疑心、怨みなど)の部分のみを消去したのだと思います。
今までの事実を認めつつ、二人で生きて行く決意をしたのではないでしょうか。


■■考察■■
オ・デス演じるチェ・ミンスク・・・
息の詰まる密室から外の世界に解き放たれた時の爽快感、開放感。
そして、嬉々として暴走する姿。
ロングショット、1カットで見せる18人ものチンピラ相手に格闘するシーンは圧巻!
アダルトな男の色気が素敵デス  (*^∇^*)
映画の為に体重を10kg増減したそうで、並々ならぬ気迫を感じます。



感染 (2004) 公開(2004)
KANSEN
★★☆
日本 98分
監督:落合正幸
出演:佐藤浩市、高島政伸、星野真理、南果歩、佐野史郎

ジャパニーズ・ホラーの新レーベル「Jホラーシアター」第1弾作品(=「予言」と同時上映)
経営危機に陥った古びた病院。
ある夜、謎のウィルスを保有する急患患者が運び込まれます。
やがて、ウィルスは病院内に蔓延して行き・・・
悪夢の一夜を描いた、新感覚のホラー映画です。

■遊園地にあるアトラクション「病院仕様のお化け屋敷」といった風合い。
前半は病院特有の怖さが漂いますが、途中からは失笑モノに・・・
ホラーファンにはかなり物足りなさが残りますが
気軽に観れる怪奇モノと思えばまた楽し♪

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
ひっ迫した予算内での医療業務、人員不足、ずさんな経営など
僅かなプロローグの間に、様々な医療問題を提示しています。
特に、医療ミスが医療のモラルの問題へと移行して行く展開が良いです。
が、中盤以降、ウィルスが蔓延して行く展開になると、一気に失速して行きます。
急患患者の症状を見せずに言葉だけで済ます安易さ。
(=体が崩れて行く様子をせめてワンショットでも)
感染の恐ろしさと、追い詰められた人間の精神が徐々に壊れて行く姿にも、もう一工夫欲しいところ。
チープな演出の連続は、こちらも真っ青です  (≧∇≦)おお
閉塞感漂う病院の雰囲気が良く出ていただけに残念です。

いわゆる夢オチ。
佐藤浩市の妄想が引き起こした惨劇です。
ラストでは、他の人に伝染して行く不可解な終わり方です。
意味深なラストは後が残るものが有り。


■■考察■■
白塗り顔の高島政伸が笑えます!!
まるで仮面にさえ思えるその不自然さ  (=^∇^=)

婦長役の南果歩、外科医の佐藤浩市等、ベテランが好演。



クライモリ (2003) 公開(2004)
Wrong Turn
★★★
アメリカ 1時間24分
監督:ロブ・シュミット
出演・デズモンド・ハリントン、エリザ・ドゥシュク、エマニュエル・シューキー、ジェレミー・シスト

州の殆どが森林に覆われたウエストヴァージニア州。
自動車事故で立ち往生した若者たち男女6人。
彼らに襲いかかる惨劇を描いたサバイバルなスプラッター・ホラーです。

■ホラー・ファンの為の映画。
普通の方は避けた方が良さそうです。
70〜80年代を彷彿とさせるスプラッター描写が有ります。
怖いと言うより、ドキドキ感の方が大きいかも。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
山奥に迷い込んだ若者たちが、一人また一人と惨殺されて行く・・・
過去のホラー映画で繰り返し描かれて来たオーソドックスな内容です。
題材的には特に目新しいものは無く、ありきたり。
キャストを見ただけで誰が生き残るか分かります。
ホラー映画おきまりのノー天気カップルたちの登場。
適度なお色気ルック。
恐怖の正体も早い段階で分かるのですが、
が、これが意外と面白いのです。
「来るぞ、来るぞ」という期待感は、70〜80年代のホラー全盛期を思い出させ、なかなかのモノ。

スリルと興奮、束の間の休息などを交互に挟み、
森の中を自在に駆け回る怪人たちとの攻防、樹木を存分に生かした演出など、臨場感に溢れています。
まさにホラーの王道とも言える、過去の作品の定石をきちんと踏んだ映画です。
最近の特撮に凝った映画とは違う、昔ながらの流れを汲んだところが、ある面新鮮で、面白さに繋がっているのかも知れません。

恐怖の正体は、「マウンテンマン」と呼ばれる男3人。
繰り返された近親相姦の結果、遺伝子に異常をきたした怪人たちです。
筋肉が著しく発達し、その性格は極めて凶暴で残忍。
うーーん、題材は良いのですが、風貌がいまいち・・・
山奥の中で、3人だけでひっそりと暮らしている割には、弓矢を自在に操り、車は運転するわ、銃の使い方も知っている。
何とも奇妙な奴らデス  (=^∇^=)クス

それにしても、女性たちは皆一様にへそ出しルック。
キャンプに来ていて、へそ出しとは。
虫に刺されないかと変なところが気になったり。笑


■■考察■■
デズモンド・ハリントン・・・
ハリントン、少しガタイが良くなった気がします。
今回は、パッと見が少しトム・クルーズに似てマス  (=^∇^=)

エリザ・ドゥシュク・・・
キレイで、健康的な感じが良し♪
まさに、ホラー映画のヒロイン。



五線譜のラブレター DE-LOVELY (2004) 公開(2004)
DE-LOVELY
★★★★
監督:アーウィン・ウィンクラー
出演・ケビン・クライン、アシュレイ・ジャッド、ジョナサン・プライス、エルヴィス・コステロ

ミュージカルや映画音楽の傑作を数多く残した偉大な作曲家コール・ポーター。
彼の半生を、彼を支えた妻リンダとの愛を中心に描いたミュージカル仕立てのドラマです。
ナタリー・コール、エルヴィス・コステロら豪華ミュージシャンたちが実際にスクリーンに登場し、ポーターのナンバーを歌い上げます。
2004年カンヌ映画祭オフィシャル・セレクション・クロージング作品。

■コール・ポーターの半生、数々のポーターのナンバー、1920年代の社交会、衣装などたくさんの見所があります。
ドラマ性が高く、ミュージカルの部分が違和感無くすっと挿入されるので
ミュージカルが好きな方はもちろんのこと、そうでない方にも楽しめます。

■■ネタバレです■■ 
コール・ポーターの名前を知らずとも、劇中に流れる数々のメロディーは耳にしたことがあるのではないでしょうか。
国を代表する天才作曲家が実はゲイであったという事実。
実際のところはもっとドロドロしていたのでしょうが、映画では、全般的に甘く優しい雰囲気に包まれています。

■脚本に関して・・・
回想シーンへの導入は最初のみに留めた方が良いような気がします。
物語の中で何度も回想シーンを挟まれると、ブツッブツッと話が中断されてしまい、話に乗り切れません。

■■考察■■
ケビン・クライン、アシュレイ・ジャッドなど役柄にピッタリ。
それにしても、アシュレイ・ジャッドの老けメイクが上手く出来てマス。



最“狂”絶叫計画 (2003) 公開(2004)
Scary Movie 3
★★★
アメリカ 1時間25分
監督:デイヴィッド・ザッカー
出演;アンナ・ファリス、チャーリー・シーン、レスリー・ニールセン、サイモン・レックス、クイーン・ラティファ

「絶叫計画」シリーズの第3弾。
人気のホラー映画のパロディが満載のこの映画、
今回は、「ザ・リング」「サイン」「マトリックス・リローデッド」「8 Mile」
「ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔」「アザーズ」など多数。

■上記のホラー作品(=特に「ザ・リング」「サイン」)を観ていないと面白くありません。
ある意味、ホラーマニアの為の映画なのかも。
頭を空っぽにしてお馬鹿映画に浸りたい方向き・・・♪

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
「最終絶叫計画」(2000年)は、ヒット作「スクリーム」を中心に、
「最‘新’絶叫計画」(=2002年)では、「エクソシスト」「ヘルハウス」などの主に70年代ホラーのヒット作をベースにしていました。
今回は、近年のホラー映画をパロディにしています。
どの作品も大ヒットにして、真面目に作られた作品ばかり。
その隙の無い作品をパロディ化する面白さよ。
ツッコミ心をくすぐる、茶化す醍醐味があります。

ツボなところ♪
■貞子と呪いのテープ。
テープの中の人物と激しい殴り合い。
貞子はどう見ても「エクソシスト」のリーガンのよう
■ミステリーサークルの出現で、飼い犬たちに異変が!!
・・・せっせとトラクターを運転したり、パイプをふかしたり  (=^∇^=)
■ラップバトル。
白人のラッパーは熱唱により黒人たちから熱い声援を貰う。
しかし、フードを被った途端(=スウェットのフードの先端が長過ぎてまるでKKK)激しく罵倒され痛めつけられる。
■マイケル・ジャクソン(=似)まで出演、窓から落ちたマイケルを掴むも残ったのはシリコンだけ。


■■考察■■
チャーリー・シーン、特に彼でなくても良かったような気がします・・・



シークレット・ウィンドウ (2004) 公開(2004)
Secret Window
★★★☆
アメリカ 1時間36分
監督・脚本:デイヴィッド・コープ
原作:スティーヴン・キング
出演:ジョニー・デップ、ジョン・タトゥーロ、マリア・ベロ

スティーブン・キングの中編集「ランゴリアーズ」に収録された「秘密の窓、秘密の庭」の映画化です。

湖畔のログハウスで一人で暮らす人気作家。
離婚問題で頭を悩ます彼の前に、突如、正体不明の男が出現します。
盗作疑惑をかけられ、脅迫される作家の行く末は・・・
謎の男の影に怯え、追い詰められて行く姿を描いたサスペンス・ミステリーです。

■物語は至って平凡です。
しかし、ジョニー・デップが出ているからこそ活きてくる映画です。
サスペンス・ミステリーはそこそこの出来栄え、どちからと言うとジュニー・デップを満喫する作品です。

エンド・クレジットの最後の方に、ジョニーの生声が出ます。
聞き漏らさないように!!

■■ネタバレです■■ 
話の途中で(=いや、予告編だけで)ネタの察しがつき、
特に意外性も感じられず、ありがちな物語です。
心理的な、心が崩れて行く怖さをストレートに表現した心理劇とも言えます。

ジョニー・デップは、やや神経症的でスランプ気味の小説家を演じています。
ちょっとした仕草まで細部に渡ってこだわっていて(=例えば無意識に顎をカクッと鳴らすクセとか)そういったところに彼のこだわりとか、演技にかける熱意みたいなものを感じます。
元々彼はどんな映画に出演しても、確実に自分のモノに(=自分の魅力を最大限に生かし彼の映画となってしまう)する役者です。
特に今回はそれが顕著に現れた作品です。
他の人が演じたら、きっとつまらない映画になったであろうこの映画。
改めてジョニー・デップの魅力を再確認するのです。


■■考察■■
穴が開いたボロのガウンを着ていても、髪がボサボサでも、寝起きのぼやんとした顔をしていても、どんな怠惰な生活を送っていても、やっぱり素敵なジョニー・デップ♪

ジョン・タトゥーロ・・・
黒い帽子を被って何処とも無くスィーッと現れスッと消えて行く、その不気味さよ。
しかし、帽子を被った不気味さがあまりにハマっているので、帽子を取ったら普通の人になってしまいました。
最後まで被って居て欲しい・・・・・・

妻の恋人役、ティモシー・八ットン・・・
正直言ってジョニー・デップより遥かに見劣りするので、とても妻がそちらを選ぶとは思えない。
もう少し魅力的な人を頼みますよ  (=^∇^=)エへ



春夏秋冬そして春 (2003) 公開(2004)
Spring, Summer, Fall, Winter... and Spring
★★★★
ドイツ・韓国 1時間41分
監督・脚本・出演:キム・ギドク
出演:オ・ヨンス、キム・ジョンホ、キム・ヨンミン

2004年、大鐘賞最優秀作品賞、受賞

深い山間の湖に、ぽつんと浮かぶお寺。
その庵のようなお寺に二人きりで暮らす老僧と幼い少年。
春−幼子、夏−17歳に成長した青年、秋−30歳、冬−壮年、そして迎える春・・・と、少年が成長する姿を5つのエピソードで綴った物語です。
月日と共に移り変わる四季、年月、それと共に成長する人間の姿が、美しくも切ない余韻を残します。

■寓話的な、説法的な物語です。
一人の男の一生を、自然の四季に重ね合わせて描いたものです。
山々に囲まれた湖、その中で静かに佇む小さなお寺。
美しい四季折々の風景と静寂感を詩情豊かに描いています。
観ているこちらも癒される、そんなぬくもりと懐かしさを感じるお話です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
子供の頃の無邪気の中にも残酷さがある遊び。
それを後ろからそっと見守り、戒める老僧。
やがて成長した青年は、老僧の手を離れて外の世界へと旅立って行きます。
年月が経ち、俗世界に迷い込み我を見失って寺に舞い戻った青年。
そんな彼を、寺と老僧は温かく迎え入れます。
苦悩し迷う青年をそっとやさしく包み込む、その温かさ。
観終わった後は清々しさが残る、心に染入る作品です。

寺がくるくる回ったり、船がスィィーッと湖面を渡って来たり。
ある面、人間離れしたお話です  (=^∇^=)

■さらに・・・
R−15指定が不思議だったのですが、青年期に少女とのセックスシーンがあるので納得。
特に激しい描写では無いのですが、静寂に包まれたお寺と風景の中だけに、そこだけが妙に生々しく感じられます。
執着心、独占欲など人間の業が一気に溢れ出る、
青年が外の世界に興味を持ち、お寺を出るきっかけとなったシーンです。


■■考察■■
幼少(キム・ジョンホ)→青年(ソ・ジェギョン)→30歳の青年(キム・ヨンミン)→壮年(キム・ギドク監督)と役者が変わります。
が、一貫して雰囲気に合わせた俳優を使っているにも拘らず、何故か、キム・ヨンミンだけが異質な感じ。
荒廃した心を表現したかったのでしょうが、あまりに違い過ぎ。
青年の頃より確実に背が低くなっているのに、老僧から「大きくなったね」と言われても・・・笑



ジェリー (2003) 公開(2004)
GERRY
★★★★
アメリカ 1時間43分
監督・脚本:ガス・ヴァン・サント
出演:マット・デイモン、ケーシー・アフレック

2003年、NY批評家協会賞、撮影賞受賞。
他、多数受賞しています。

二人の若者が砂漠のハイウェイをドライブ中、休憩の為車を降り、気分転換に散歩を始めます。
仲間内の造語「ジェリー」を呼び合いながら散策を続ける二人。
が、次第に砂漠の中に入って行き、気がついた時にはすっかり道に迷ってしまいます。3日3晩さ迷った末に待ち受ける彼らの運命は・・・
ガス・ヴァン・サント監督が「エレファント」の前年に撮ったロード・ムービーです。
いわば「エレファント」の原点とも言える作品です。
脚本は、ガス・ヴァン・サント、マット・デイモン、ケーシー・アフレック、3人の共同執筆。

■やや実験的な趣のある映画です。
一見すると単調に思える題材ですが、最後まで緊張感が続きます。
しかし、かなり好みが分かれそうです。
この単調な映像に浸れる人にはかなりの満足感が得られ、
そうでない方には、すぃぃーっと心地良い眠りへと誘われる恐れがあります。笑

長まわしのワンシーン・ワンカットが美しく、効果的。
荒涼とした広大な砂漠をバックに、さ迷い歩き続ける二人は、
ある意味、詩的で、残酷です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
最初は道に迷ったことを楽しんでいた二人ですが、次第にあせりを感じて行きます。
ジョークを飛ばし合い笑い合っていた会話も、沈黙が続くようになり、やがて危機的状況に陥ります。
歩いても歩いても、見たことも無い荒涼とした砂漠の風景が続き、
突き抜けるほど澄み切った青い空には、次々と雲が流れては消えて行く・・・

危機的状況から死に直面した時、二人の取った行動は意外なもの。
それはあたかも、カミュの「異邦人」を思わせる顛末・・・
二人の次第に変化して行く、微妙な気持ち変化を表現しています。


■■考察■■
教訓!!
知らない所では、勝手に遊歩道を離れないこと  (≧∇≦)おお

マット・デイモン・・・
Tシャツを頭に巻いた使い方は、なるほどと妙に感心してみたり。



世界でいちばん不運で幸せな私 (2003) 公開(2004)
Jeux d'enfants
★★★☆
フランス 1時間34分
監督・脚本:ヤン・サミュエル
出演:ギョーム・カネ、マリオン・コティヤール、チボー・ヴァルアーゲ

病に伏す母を持つ少年と、ポーランド移民の少女。
寂しさから目をそらす為、二人は自分たちだけの秘密のゲームを始めます。
大人になってからも子供時代のゲームを引きずる二人。
お互いの気持ちが分かりながらも本心を言えない、二人の不器用な愛を描きます。
楽しく切ない、ちょっと異色なロマンチック・ラブ・コメディです。

■なるほど「アメリ」のブラック版と言われるのが分かる気がします。
カラフルで鮮やかな色使い、そして、ポップな映像。
テンポの良いストーリー展開に、あっという間に引き込まれます。

ロマンティックなラブ・ストーリーですが、悪趣味さも有ります。
二人の合言葉「のる?のらない?」に、観客も、のれる人とどこか引いてしまうと人と別れそうです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
小学生から大人になった現在まで、お互いを意識しながらもプラトニックな関係を続ける二人。
お互いの本心を知りながらも意地を張ってしまい、照れ隠しをゲームで誤魔化す不器用さ。
無理難題を何とかやり遂げるゲームも、裏を返せば二人の<愛の確認>みたいなものでしょう。
最近ではめったに見られない<ピュアな気持ち>を持ち続ける二人に、微笑ましさを感じます。

長い長い道のりを経て、お互いの気持ちに素直になれた二人。
ラストには二通りの結末があります。
熱いキスを交しながらコンクリートの中に埋もれて行く二人。
木漏れ日の中、キスを交しながら、静かな老後を迎える二人。
これは、観た人が選択するものでしょう。

■さらに突っ込んでみます・・・
悪気の無いイタズラにしては度が過ぎ
あれでは、さぞかし周りの人が迷惑しそうです  (≧∇≦)おお
大人になっても依然としてゲームばかりを続ける二人が、あまりに幼稚過ぎて、観ている方は呆れてしまい、不快感さえ感じてしまいます。
しかし、ラストでは、鳥肌が立つほどの切なさを感じ
切ない恋心に、観終わった印象は随分変わります。
イラストや絵本などを手掛けるヤン監督のポップで楽しい映像は、ダークな部分を抑え込み、作品全体を好印象に変えています。
監督の映像センスに随分救われている感有りです。


■■考察■■
マリオン・コティヤール・・・
キュートでハチャメチャな役どころが適役。

ギョーム・カネ・・・
どうも半分寝たような眼差しが気になります。
学生時代は、モミアゲばかりが目立ってイマイチ  (=^∇^=)



戦争のはじめかた (2001) 公開(2004)
Buffalo Soldiers
★★★
イギリス・ドイツ 1時間38分
監督:グレゴール・ジョーダン
原作:ロバート・オコナー 「バッファロー・ソルジャーズ」
      (=ピューリッツァ賞フィクション部門ノミネート作品)
出演:ホアキン・フェニックス、エド・ハリス、スコット・グレン、アンナ・パキン、エリザベス・マクガヴァン

冷戦も終わりを迎え、ベルリンの壁も崩壊寸前の1989年の西ドイツ。
西ドイツのセオドア・ルーズベルト米軍基地に駐留する兵士たちは、戦う相手も居なくなり暇を持て余し、軍内部は規律が乱れ腐敗していた・・・
第317補給部隊に所属するエルウッド(ホアキン・フェニックス)を中心に、彼を取り巻く人々を描いたブラック・コメディです。
2001年1月、カナダ・トロント国際映画祭でプレミア公開され評判になり全米公開決定。が、その翌日「9.11同時多発テロ」になり上映延期に。それ以降もアフガン攻撃、イラク戦争へと続き、5度も公開延期となったいわくつきの映画です。

■軽いノリのブラック・ユーモア。
しかし、最初は笑い飛ばしていてもだんだんと笑えなくなり・・・
アメリカでは無くイギリス・ドイツ製作というのも頷ける内容です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
演習中に戦車が迷子になり、市街地に飛び出し、道路や家をなぎ倒してどんどん進んで行く様はまるで迷走するアメリカのようです。
物資の横流しは当たり前、 次第にヘロインの密造、大量の兵器の転売を画策するなど好き勝手にやり放題する彼ら・・・

「9.11」以降アメリカでナショナリズムが高まった中、何度も延期になったのが分かります。
実際にあった話を参考に作られているだけに、最初は笑えて観ていても次第に笑えなくなって来ます。
<緊張感が薄れ、目的を失った状態が如何に危険か>
よく考えると、背筋が凍りつく程に恐ろしい物語です。
不適切の判断を下され上映延期になったこの映画。
映画の内容も、この映画自体に関しても、時代の流れと情勢の変化をつくづくと感じ、何やら不安な気持に駆り立てられます。

■ラストでは・・・
ハワイに転属になったエルウッド。
九死に一生を得たのに、相変わらず以前と変わらず悪事を働く彼の姿に「結局は何も学んでいない」ことに気が付きます。
これは、映画の中だけでは無く現実社会と通じるものがあるのです。


■■考察■■
軍の事は部下任せにし、自分の出世しか興味が無いバーマン大佐。
どこの社会にでも普通に居るであろう小市民的な男をエド・ハリスが好演しています。

規律に厳しいリー曹長にスコット・グレン。
そのキリリとした姿には、冷酷な部分も・・・
狂気にも似たその行動に改めてハマり役だと感心。



ソウ/SAW (2004) 公開(2004)
Saw
★★★★
アメリカ 1時間43分
監督:ジェームズ・ワン
脚本・出演:リー・ワネル
出演:ケアリー・エルウェズ、ダニー・クローヴァー、モニカ・ポッター、マイケル・エマーソン、ケン・リョン

オーストラリア出身の新鋭、ジェームズ・ワン(=監督)と、リー・ワネル(=脚本・主演)によるデビュー作。
本作品は、2004年のサンダンス映画祭で評判を集め話題となった作品です。

老朽化した広いバスルームで目覚めた二人の男。
彼らはどちらも片足を鎖で繋がれ、部屋の中央には男の死体。
テープを再生した途端、恐ろしいゲームが幕を開けます。
ショッキングな演出のサイコ・サスペンス・ホラーです。

■「セブン」と「CUBE」的な映画と言われていますが、「セブン」の猟奇さに近い作品です。
低予算・短時間(=18日)で撮られた作品ながら、近年稀に見る面白さ。
最後の最後までスクリーンに釘付けになり、緊迫感が途切れることはありません。
かなり猟奇的なシーンがある残酷な映画なので、苦手な方はご用心。

是非一発屋で終わる事無く、この調子でどんどん作品を作って欲しいものです  (=^∇^=)タノムヨ

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
「セブン」の猟奇さと、「CUBE」の密室劇を兼ね備えています。
特に訳も分からないまま密室に放置された状況と究極の選択は、「CUBE」を彷彿とさせますが、全く別モノの作品です。

畳み掛けるようなスピーディな演出、計算された緻密な演出。
6時までに相手を殺さないといけないタイムリミット。
犯人の目的、見知らぬ男二人の繋がりなどの謎解きの面白さ。
そして、目を覆いたくなるような残虐・猟奇シーンの数々。
面白い要素が全て詰まったサイコ・サスペンスです。
フラッシュバックにより過去のいきさつが説明され、そして、
どんでん返しに続くどんでん返し。
ゲーム的要素を盛り込みながらも、きちんとした一貫性のあるストーリーとなっています。
深い絶望感、疑念、狂気、監禁による閉塞感等が、こちらにまでひしひしと伝わって来ます。

■さらに・・・
後から振り返ると、所々に無理な設定があるのが分かります。
が、この作品の持つ勢いと面白さは、そういった「穴」を覆い隠してしまうパワーがあります。
床に横たわっていたオジサン。
長時間の間、気配を隠し息を殺していたのはさぞかし辛らかろうと思いますが、それが彼の快感なのでしょう。
雑用係りが謀反を起こしたら、ただの馬鹿な奴になる恐れが。笑

あの怪しいマスクの数々もかなりキテます  (=^∇^=)


■■考察■■
主役のリー・ワネル以外は、中堅どころの役者ばかり。
低予算という事もありますが、突出したスターが居ないのが返って作品を良い方向に導いています。



父、帰る (2003) 公開(2004)
Vozvrashcheniye
★★★★★
ロシア 1時間51分
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
出演:ウラジミール・ガーリン、イワン・ドブロヌラヴォフ、コンスタンチン・ラブロネンコ、ナタリヤ・ヴドヴィナ

2003年、ヴェネチア国際映画祭、金獅子賞、新人監督賞、受賞作品。

ロシアの静かな片田舎。
母と暮らしていた兄弟のもとに、ある日突然、12年も家を離れていた父が帰って来る。父は、戸惑う兄弟を車に乗せ3人で旅に出掛けるが・・・
親子のつながりや絆、葛藤など心の交流を真摯に描いた人間ドラマ&ロードムービーです。

■素晴しい作品です。
が、しかし、人によっては好みが分かれそうです。
人を選ぶ作品かも知れません。

この映画には、湖、海、雨、など水のシーンが多用されています。
冷たい空気、荒涼たる大地、暗く沈んだ空・・・
サスペンスを感じさせるストーリーと相まって、神秘的で孤独感を感じる雰囲気が漂っています。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
余分なものを極限まで削ぎ落としたような、シンプルな作りです。
数々の謎はそのまま置き去りにされていますが、不快感はありません。
謎は謎として、自分の心のおもむくままに感じる作品です。
捉え方によっては幾通りの、自分だけの物語を作れそうです。

多くの謎を残したまま終わります。
■12年間、父は何処で何をしていたのか?
■父が唐突に帰って来た訳は?
■子供を連れて旅する理由は?
■頻繁に掛ける電話の相手は?
■土の中に埋められた箱の中身は?
この作品には、その答えは明示されません。
観る人が、それぞれに感じ取る作品なのです。

ただ唯一言えることは、父は、子供たちに生きる術と力を与えたこと。
旅の始まりと終わりとでは全く違い、子供たちは確実に成長しています。

最後に父は、船の中に横たわり沈んで行きます。
エンドクレジットでは、旅の間に撮った写真が映し出されますが、何故か父の写真だけありません(=多分、父を撮る気にはならなかったのでしょう)
風のように現れて去って行った父・・・
この7日間は、親として父としての想いを子供に伝えたいが為に現れた<まぼろし>とさえ思えてしまうほどです。
旅の間中、心から「パパ」と呼べなかったのに、父が沈んで行く時に思わず「パパ」と叫ぶ2人。
父の想いは子供たちに届き、その想いを胸に生きて行くのでしょう。

<私見・・・自分は俗物人間なので、できれば「箱の中身」が知りたいです。笑>


■■考察■■
本作の撮影後、兄アンドレイ役のウラジミール・ガーリンが、ロケ地であるラドガ湖に友人と遊びに行き溺死する事故がありました。

尚、この作品には、キリスト教に関わるものが根底にありますが、日本人にはなかなか理解し難いことかも知れません。



ツイステッド (2004) 公開(2004)
Twisted
★★☆
アメリカ 1時間37分
監督:フィリップ・カウフマン
出演:アシュレイ・ジャッド、サミュエル・L・ジャクソン、アンディ・ガルシア

サンフランシスコ湾のとある街。
市警の殺人課に昇進した女性捜査官ジェシカ(アシュレイ・ジャッド)
彼女の周りで起こる不審な連続殺人事件は、次第に彼女を追い詰め混乱させて行きます。
クライム・サスペンス・ミステリー。

■事件に巻き込まれて行く者の心理状態と、犯人探しのミステリーの面白さがあります。
が、イマイチ題材を活かし切れておらず、火サス等の2時間ドラマといったところ。
予告編・チラシの方が良かったりします。苦笑

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
靄に包まれた湾の風景。
そこを飛び交うカモメたち。
静かで冷たい空気が伝わる映像は幻想的でとても美しい。
カメラはそこから女性の顔へと移動します。
女性の瞳から零れ落ちる一筋の涙。
その映像はとても印象的で、これから始まる物語に期待は膨らみます。
・・・が、良かったのはここまで。
それ以降は物語が進むに連れて、トホホ状態に・・・涙
何とも安っぽい三文小説のような映画になってしまいました。
題材(=25年前の事件のトラウマや孤独感、アルコール依存症的なところなど)や俳優陣、背景となる街の雰囲気も良いだけに、とても残念です。

■トホホな部分
□何時も、お酒を飲んで意識を失っている間に事件が起きる。
過去の傷を癒す為アルコール依存症になっているとはいえ、何度も続いたらお酒に何かが入っていると疑うだろう、普通は。
□ツイステッドとは、「よじれた」「ねじれた」という意味がありますが、話自体はストレートで犯人も早い段階で察しが付きます。
ジェシカの周りの人間で怪しくない人物は1人しか居ない(=と、いう事は彼が犯人である・笑)
犯人探しもこの映画の重要な部分なので、これではあまりにもお粗末。
□アシュレイ・ジャッド、出会った男とすぐに関係を持つ。
が、そういう描き方でしか表現出来ない凡庸さが悲しい。
□頻繁に登場する「柔スティック」が笑える  (=^∇^=)
□アンディ・ガルシア、本来ならばミステリアスな犯人とおぼしき役柄なのでしょうが、今ひとつオーラに欠けます。
ラストで命からがら逃げるもあっさり見つかった時の情けなさ・・・


■■考察■■
アシュレイ・ジャッド・・・
確かに彼女は魅力的な女性ですが、この作品においてはミスキャストに思えます。
大空真弓の若い頃のような(=どちらさんも失礼!笑)風貌・・・

アンディ・ガルシア、太りました!!
顔の中心は以前のままに、その周りに肉が増えた模様。



テイキング・ライブス (2004) 公開(2004)
Taking Lives
★★★
アメリカ 1時間43分
監督:D・J・カルーソ
出演:アンジェリーナ・ジョリー、イーサン・ホーク、キーファー・サザーランド、ジーナ・ローランズ、オリヴィエ・マルティネス、チェッキー・カリョ、ジャン=ユーグ・アングラード

テイキング・ライブス(=殺人を犯した被害者の人生を乗っ取り、本人に成りすますこと)を繰り返すシリアル・キラーと、FBIから派遣されたプロファイラーとの、スリリングで静かな熱い攻防戦を描きます。
クライム・サスペンス・スリラー。

■猟奇的な風合いのあるサスペンスです。
豪華キャストが多数出演しており、それも見所の1つ。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
フランス映画界、ハリウッドのトップスターと豪華キャストが勢揃いです。
しかし、一人一人が主役を張れる程の俳優を集めたにも関わらず、印象が薄い作品になっています。
俳優の使い方を間違えた、実に惜しい例です。

前半は、猟奇的な映像を随処に盛り込みながらストーリー展開します。
が、イリアナ・スコット(アンジェリーナ・ジョリー)が犯人と愛し合うようになってからは、一挙に風合いが変わります。
沈着冷静にして頭脳明晰。
男顔負けの行動力を持った女性が、男とラブラブになってからは、なし崩しに<普通の女>になって行きます。
犯人も容易に察しが付くので、この映画は、こういった<女の変化>が一番の見せ場なのかも知れません。

ラストは仰天の結末が迎えているとは言え、犯人にことごとく裏をかかれたプロファイラー。
何とも情けなく感じるのは私だけでしょうか・・・!?
どう見ても、イリアナは、コスタ(イーサン・ホーク)に惚れるタイプでは無く、何となく不自然さが漂います。
コスタには、もう少し違うタイプの方が適役だと思うのですが。


■■考察■■
あまりにもったいない俳優陣の使い方に、思わず口をあんぐり・・・



デビルズ・バックボーン (2001) 公開(2004)
The Devill's Backbone
★★★☆
スペイン 1時間46分
監督・脚本・製作:ギレルモ・デル・トロ
製作:ペドロ・アルモドバル
出演:エドゥアルド・ノリエガ、マリサ・バレデス、フェデリコ・ルッピ

1930年代、内戦下のスペイン。
人里離れた荒野に佇む孤児院を舞台に繰り広げられる、悲しくも悲惨な物語。
ゴシック・ホラー・サスペンスです。

■チラシなど広告ではホラー映画扱いですが、それが主ではありません。
ホラー要素を加味したミステリー・サスペンスといった感じです。
<孤児院を舞台にした奇談物語>・・・そんな風合いがあり、
ホラーを目的に観るより、作品の持つ雰囲気や、戦争が起こす悲惨さを味わいたい作品です。

■■ネタバレです■■
この映画は、復讐劇が根底にありますが、また、戦争が引き起こす悲劇さも伝えています。
そして、それぞれが勇気を持って踏み出す大切さも伝えています。
殺人事件の真犯人を話す勇気、サンディの霊と向合う勇気、男の言いなりにならない勇気、犯人に立向かう勇気・・・
勇気を持って行動した行為が、例えそれが思わぬ結果になったとしても、それはその人にとって悔いの無いことなのです。

荒野の中にポツンと佇む孤児院という設定は、それだけで何か恐怖を感じます。
古びた孤児院の台所、吊るされた大量のハサミ、ラム酒漬けの胎児、中庭に突き刺さった不発弾、義足の院長夫人、ドクターなどなど。
孤児院に付随したそれらの事柄も、何かしら不気味な匂いを漂わせています。
それらを舞台に、少年たちの恐怖心や興味津々に揺れ動く心を上手く表現しています。
荒涼とした野原、吹きすさぶ砂ぼこりは、乾いた空気ながら湿った暗さを感じさせ、
ラストは、希望と哀しさが混じり合った何とも言えない気分が残ります。


■■考察■■
孤児院の用務員ハチント演じる、エドゥアルド・ノリエガ・・・
パッと見は初期の頃のブレンダン・フレイザー、顔をよく見ると時々ベニチオ・デル・トロに見えます・・・・・・  (=^∇^=)



ナイトメアー・ビフォア・クリスマス (1993) 公開(2004)
The Nightmare Before Christmas
★★★★
アメリカ 1時間16分
監督:ヘンリー・セリック
製作・原案・キャラクター設定:ティム・バートン
声:クリス・サランドン、キャサリン・オハラ、ウィリアム・ヒッキー

ハロウィン・タウンの住人、カボチャ大王ジャック・スケリントン(声=クリス・サランドン)
ある日、クリスマス・タウンに迷い込んだ彼は、美しくきらびやかなクリスマスの風景にすっかり魅せられてしまいます。
ハロウィン・タウンに戻った彼は、早速、ハロウィン風クリスマスの準備に取り掛かりますが・・・
ミュージカル仕立ての異色なファンタジーです。

■笑い有り、切なさ有り、不気味だけれどとっても楽しい
ちょっとグロテスクでメルヘンチックなファンタジーです。
不気味さと、ロマンチックが同居したアンバランスさが魅力。

■■ネタバレです■■
サンタの代わりにクリスマスをしようと張り切るジャック。
サンタにゆっくり休暇を取って休んでもらい、子供たちの為にせっせとプレゼント作りに励みます。
が、しかし、自分が見た楽しく美しいクリスマスを演出したいだけなのに、すること全てが裏目に出てしまいます・・・
ハロウィンのように単に人を驚かすのとは全く違う、純粋に人を楽しませたい気持ちが分かるだけに、彼の取った行動はとても切なく、哀愁が漂います。

ラストは、全ての人がハッピーになれる印象的なシーンです。
何時も自分の事を思ってくれていたサリーの存在に気が付き、
空からはサンタからハロウィン・タウンへの雪のプレゼント。
迷惑を受けたサンタが、ハロウィンの住人にプレゼントを贈るところがニクイです  (=^∇^=)
サリーのジャックに対する想いがいじらしく、とてもお洒落なラブ・ストーリーでもあるのです。


■■考察■■
ジャックの白くて丸い骸骨顔がキモ可愛い♪



バイオハザードU アポカリプス (2004) 公開(2004)
Pesident Evil : Apocalypse
★★★☆
カナダ・イギリス 93分
監督:アレクサンダー・ウィット
製作・脚本:ポール・S・W・アンダーソン 他
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、シエンナ・ギロリー、ジャレッド・ハリス、オデッド・フェール、トーマス・クレッチマン

大ヒットしたSF・スリラー映画「バイオハザード」の続編です。
前作のラスト直後からストーリーが始まります。
まず最初に前作の要約をしてくれるので、初めて観る人でもOKです。
舞台は地下の研究施設「ハイブ」から地上のラクーンシティへと移り
ラクーンシティそのものの消滅、そして、4時間以内の脱出という限られた時間枠、追跡者との闘いと、スピード感溢れるスリリングな展開です。

■ホラー色はかなり薄くなりアクション主体です。
ゾンビも出番が少なく、今回はアンブレラ社側の敵(=S.T.A.R.S、ネメシスなど)との闘いが主になっています。
ホラーを期待して観に行った人は少々期待外れかも知れませんが、
アクション派としては嬉しいところ。

■■ネタバレです■■
アリス(=ミラ・ジョヴォヴィッチ)強いです!!
前回は記憶喪失という事もあり、生身の人間の<かよわさ>が感じられましたが、今回は無敵の女戦士。
ゾンビ、アンブレラ社との闘いには、爽快感さえ感じ
ネメシスは、「ターミネーター」を彷彿とさせます  (=^∇^=)フフ

ラストは、如何にも続編を匂わせるような終わり方です。
ホラー・アクション映画ながら、巨大企業の陰謀を暴く社会派ドラマの要素も感じられます。


■■考察■■
ジル・バレンタインがふと、CG合成されたアニメに見えるのは気のせいでしょうか・・・!?笑
(=もちろん生身の人間です)



バッドサンタ (2004) 公開(2004)
Bad Santa
★★★
アメリカ 1時間31分
監督:テリー・ツワイゴフ
出演・ビリー・ボブ・ソーントン、トニー・コックス、ブレッド・ケリー、ローレン・グリアム、ローレン・トム、バーニー・マック

サンタクロースに扮して、毎年クリスマス・シーズンにデパートで子供と記念写真を撮る仕事をしているウイリー(ビリー・ボブ・ソーントン)
が、真の姿は、相棒マーカス(トニー・コックス)と共にデパートの金庫破りが本来の稼業。
そんな彼が、いじめられっ子の少年キッドと出会った事から事態は思わぬ方向へ・・・
ブラック・ユーモアがビシバシと効いたハートフル・コメディです。

■とっても下品なサンタクロース。
聖なる夢をぶち壊す恐れがあるので、お子様&真人間の方には見せたくないです。笑
ブラック・ユーモアが分かる大人向き  (=^∇^=)

■■ネタバレです■■
昔からよくある「いじめっこを奮起させ鍛える映画」とは少々趣きが違います。
ダメな中年男と肥満体のいじめられっ子少年。
方向性は違えどダメ人間な二人が、なし崩しの展開の中で何時の間にかしっかり地に足を着けるようになります。
ちょっと風変わりな二人の交流。
テンポの良い展開と痛快さ。
ビリー・ボブ・ソーントンを筆頭に個性的な面々も魅力の1つです。

■さらに・・・
小人症の俳優トニー・コックスは、デパートでサンタに連れそう妖精を演じています。
劇中の中では、障害者を簡単に解雇出来ない世間の目や差別用語の自粛など、逆手に取ったブラックが炸裂します。
日本ではとても作られないであろうと、米国との違いを感じます。


■■考察■■
これはもう、ビリー・ボブ・ソーントンを堪能する映画です。
やさぐれサンタがハマっています!!
飲んだくれで、下品で、口汚い毒舌家。
そして、大の女好きなダメ男。
何とかして真人間に生まれ変わろうとするも、何時も酒びたりの生活に逆戻りの日々。酒の飲みすぎにより絶えず酩酊状態で、時には小便を漏らしたりする落ちぶれよう。
サンタクロースの格好をしているのに、実は大の子ども嫌いというギャップも可笑しいです。
父からの虐待や何をしても上手く行かない人生の連続。
体全体から中年男の悲哀が感じられます。
鮮やかなラストに、ありえない話だと思いつつもすっかりハマってしまいます。
まさに映画の醍醐味を味わえる粋なブラック・コメディです。



パニッシャー (2004) 公開(2004)
The Punisher
★★★☆
アメリカ 2時間3分
監督・脚本:ジョナサン・ヘンズリー
出演:トム・ジェーン、ジョン・トラボルタ、ウィル・パットン

マーベル・コミックスから誕生したニューヒーロー「パニッシャー」の映画化です。
他のコミックスのように特殊能力を持たないヒーローは、鍛え上げられた体と銃器のみで勝負です。
原作が生まれた当時(=70年代)の世相を反映する、激しい銃撃戦と抗争のアクション映画です。

■コミックスにありがちなCG等の特殊効果に頼らない映像。
生身の体によるアクションとバトルでリアルティを出しています。
・・・が、大雑把な作りに??な部分も。笑
ストレートで単純明快な作り、気軽に楽しむアクション映画です。

■■ネタバレです■■
大義名分は法に代わって悪を裁く「制裁」ですが、単なる私怨を晴らす「復讐」のような主人公  (=^∇^=)

■コミックスの映画化なので嬉しいツッコミ満載!!
□桟橋でのシーン。至近距離から胸を撃たれるも元気に生還。
桟橋が爆発した時の見事な飛びっぷりはお見事!
□胸に残る銃弾の跡は、まさしく「北斗の拳」
・・・1個だけですけどね。
□わざわざギターの腕前を披露する殺し屋。
意外とあっさり倒されたりします。
□巨漢の大男により瀕死の状態に。
仲間がリンチにあい、エレベーターに潜む緊張のシーン。
しかし、殺し屋たちが帰った後、意外と元気に回復している。
□クライマックスの銃撃戦&車爆破シーン。
次々と車を爆破、上空から映した燃えさかる大量の車はまさにシャレコウベの形!!
・・・凝ってます。笑


■■考察■■
悪の親玉ハワード・セイント演じるジョン・トラボルタ・・・
相変わらず悪役が似合うお方。
アゴ割れ&真ん中分けライオンヘアー、健在です  (=^∇^=)

脇役で登場するアパートの住人たちの何とも言えないのほほんさ。
3人とも実際居そうな人たちで、そのリアルさが可笑しい。



ブエノスアイレスの夜 (2001) 公開(2004)
Vidas Privadas
★★★☆
アルゼンチン・スペイン 1時間45分
監督・脚本:フィト・パエス
出演:セシリア・ロス、ガエル・ガルシア・ベルナル

祖国ブエノスアイレスに20年ぶりに帰郷したカルメン(セシリア・ロス)
1976年のアルゼンチンの軍事クーデターで過酷な拷問を受けた彼女は、心身共に深い傷を負い、孤独な日々を送る毎日。
ある日、電話に出た若い男グスタボ(ガエル・ガルシア・ベルナル)の声に何故か惹き付けられるものを感じ・・・
切ない愛を感じるドラマです。

■それぞれの役柄にハマッた上手いキャステイングです。
この配役の上手さが映画を成功に導いています。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
切なさと虚しさとやり切れなさ、そしてささやかな愛が残る映画です。
人間の<運命>や<宿命>や<愛>を感じます。

声をきっかけに物語が発展して行くところや、壁越しに男女の営みを聞き性的興奮を感じるところなど、この映画ならではのキラリと光る要素があります。
特に、グスタボに本を読ませるシーンが素晴しい。
精神だけで繋がる愛を徐々に感じるシーンです。

■難を1つ言うと・・・
前半の導入部分は良いものの、中盤以降の展開にホヨヨ状態に。
偶然が偶然を呼ぶ安易な設定。
20年前の監禁で出産された男の子が、巡り巡って愛する男性に・・・!?ハァ

■ラストに込み上げる余韻の上手さ
ラストで語り合う親子の会話。
母が息子に言う台詞、そして抱き合う二人。
・・・運命を受け入れざるを得ない二人が何とも愛しく、そして哀しい。


■■考察■■
セシリア・ロス・・・
孤独に囚われた中年女性を好演。
何時もカカッと見開いた大きな目。
あの目を見ていると何やら居心地の悪さを感じ、思わず吸い込まれてしまいそうです。ふ・・

ガエル・ガルシア・ベルナル・・・
少年特有の甘い匂いを漂わせ、みずみずしい演技を披露してくれます。
今までとは一味違う演技にまた新たな魅力を再発見♪



プリンス&プリンセス (1999) 公開(2004)
Princes et Princesses
★★★★☆
フランス 1時間10分
監督・脚本:ミッシェル・オスロ

TVシリーズ「もしもの映画」の為に作った短編アニメの中から、プリンスとプリンセスのエピソードだけを厳選し、全6話のオムニバス形式にした劇場公開作品です。

映画館か試写室のような場所。
少年と少女が、映像技師の操作する機械で、おとぎ話の主人公に変身し、6つの物語を作って行きます。

■主人公は男女一人づつのみの、シンプルなお話です。
影絵を用いた簡素で美しい映像。
古代エジプトの壁画や、中世の版画、葛飾北斎の浮世絵など、変化に飛んだ演出で楽しませてくれます。
それぞれが10分程度のお話で、3話の後に1分間の休憩タイムが入ります。

■■ネタバレです■■
ずーーっと何時まででも観ていたい、上質のファンタジーです。
影絵とバックの色の鮮やかさ、美しさ、光と影ののコントラストが絶妙です。

■ 「プリンセス&ダイヤモンド」
   バラバラになったダイヤが集まりネックレスになった美しさ。
   プリンセスの胸に輝くダイヤは、まるで2人を祝福しているよう。
■ 「少年といちじく」
   女王が食べるいちじくの美味しそうなこと!
   嫉妬や妬み、権力、献身、猜疑心・・・など入り混じった作品。
■ 「魔女」
   先入観で人を決め付けてはいけないこと。
   相手を知るには、まず扉を叩くことから。
■ 「泥棒と老婆」
   日本各地の名所を一晩で!
   夜通し走った泥棒への最後のご褒美がニクイです。
■ 「冷酷なプリンセス」
   氷のように冷たく孤独なプリンセス。
   彼女の心を溶かすのは、勇気と知恵を持った青年。
■ 「プリンス&プリンセス」
   永遠の愛を誓い合った王子と王女。
   しかし、誓いの言葉は、真の言葉だったのでしょうか。
   ブラックユーモアと鮮やかなオチ。


■■考察■■
日本語吹替え版は、原田知世と松尾貴史が担当しています。
松尾貴史は少年役に合っているのですが、原田知世がどうも自分的には違和感ありましたです。



変身 (2002) 公開(2004)
METAMORPHOSIS
★★★★
ロシア 1時間30分
監督・訳本:ワレーリー・クォーキン
原作*フランツ・カフカ
出演:エヴゲーニィ・ミローノフ、イーゴリ・クワシャ、タチヤナ・ラヴロワ

「ある朝、グレゴール・ザムザが・・・」の有名な文章で始まるカフカの不条理小説「変身」
ロシア演劇界の鬼才ワレーリイ・フォーキンが演出した舞台版をさらに完全映画化した作品です。
原作に忠実に映像化しています。

■SFX等の特殊効果等を使わず、生身の人間が人間の演技そのもので「虫」を表現しています。
それだけに、より一層生々しく、ダイレクトに痛みと哀しみが伝わって来ます。
観た後はあまり気分の良いものではありませんが、しかし、是非多くの方に観て貰いたい作品です。

深い霧に包まれたプラハの街、細い裏通り。
時折り挿入される幻想的な回想シーンや不安感を増殖する悪夢。
シンプルで美しい映像です。
劇中に出て来る墓地のシーンは、実際にカフカが埋葬されたプラハのユダヤ人墓地だそうです。

■■ネタバレです■■
「虫」を表現するのに被り物も特殊効果も使わない演出が成功しています。
体の動き、顔の表情だけで観る者を納得させるこの素晴しい演技力!
冒頭の幸せに満ちた足取りから、朝目覚めた時に「虫」になった戸惑い、現実問題として「虫」の自分を受け入れる痛みと辛さ。
肉体は変化しているのに精神は元のままというのが哀しい。

あえて特殊効果・メイク等を使用していない為、ザムザの「虫」は、現実の社会的弱者を見ているようです。
精神疾患のある人や障害者、痴呆老人、子供の虐待など
この物語とは直接関係無いにしても、観ているとどうしてもイメージが重なってしまい辛いものがあります。
家族に理解して貰おうと必死に訴えかけるザムザの眼差し、
ザムザが死んで晴れて外出出来る親子3人のウキウキした表情は何とも対照的で胸が痛みます。

映画では、生身の人間が演じているので「虫」の形状は不明です。
ザムザのワシワシと動かす手足や部屋の床や天井をゴソゴソと這い回る姿、彼が出したであろう粘着な体液など
周りの人間の驚いた表情や、メイドの発した言葉からおおよそを推測する事が出来ます。


■■考察■■
不条理なお話ですが、随処にユーモアも感じられます。
特にザムザを見た時の反応が、妙なわざとらしいスローモーションで表現。
一同の驚きに満ちた表情も大袈裟で笑いを誘うのですが、しかし、だんだんと笑いが笑いでなくなり・・・・・・

グレゴール・ザムザ演じるエヴゲーニィ・ミローノフ・・・
「虫」になる前の、整理整頓好きのちょっと神経質な仕草、
眠りに付く前のベッドの行動、あれは如何にも女性的で可笑しいです。



僕はラジオ (2003) 公開(2004)
RADIO
★★★★
アメリカ 1時間49分
監督:マイク・トリン
出演:キューバ・グッディング・Jr、エド・ハリス、アルフレ・ウッダード、デブラ・ウィンガー

1970年代、アメリカ南部サウスカロライナ州の田舎町。
知的障害を持つ黒人青年と、名門ハナ高校アメフト部コーチとの心温まる交流を描いた感動のドラマです。
尚、本作品は、アメリカ最大のスポーツ専門誌“スポーツ・イラストレイテッド”に掲載された実話を映画化したものです。

※ラジオ(=本名ジェームズ・ロバート・ケネディ)は、今もハナ高校のアメフトチームの名誉コーチとして活躍しているそうです。

■ハートウォーミングな映画です。

実際のラジオが登場し名物コーチを披露してくれるエンドクレジットも是非お見逃し無く。

■■ネタバレです■■
一見するとありがちなヒューマン・ドラマかと思ってしまいます。
が、作り物の話とさえ思える(=小説の中にしかない話だと思える)事柄が、実は実際にあった話なのです。
まるで小説かのように思えるこの美談。
人々の心に少しずつ温かさが伝わって行き、そしてそれが大きな波になって広がって行く・・・
それは、ある人との出会いでもあり、きっかけでもあり。
受け入れられない感情も、ふと立ち止まって考えてみる。
そこからまた新たな気持ちが生まれ、そして、その思いは他の人に伝染して行くのです。
そんな素晴らしい機会を与えてくれたラジオとコーチに拍手を贈りたいです!!

試合の後、町の人々が理容院に集まって、コーチと共に談笑する姿が微笑ましい。
「ラジオを高校に在籍させるかどうか」等もその理容院で話し合う、そのアットホームさ  (*^∇^*)
如何にも南部社会の田舎町・・・といった雰囲気は、良くも悪くも人情味に溢れていてホッとさせられる部分があります。

手堅く、確実に、真面目に作られた映画です。
登場人物それぞれを公平に捉えているので、どの人の主張にも感情移入出来ます(=特にラジオの母親の気持ちが痛いほど分かる)
言い方を変えれば、NHKの優良ドラマ・・・といった感じも受けます。エヘ


■■考察■■
キューバ・グッディング・Jr・・・
本人になりきった演技が素晴らしい!!

エド・ハリス、デブラ・ウィンガー等ベテラン勢の円熟した演技
アルフレ・ウッダードも中挟みになりながらも良い方向を模索する校長を好演しています。



ボン・ヴォヤージュ (2003) 公開(2004)
Bon Voyage
★★★★
フランス 1時間55分
監督・脚本:ジャン・ポール・ラプノー
出演・イザベル・アジャーニ、ジェラール・ドパルデュー、グレゴリ・デランジェール、ヴィルジニー・ルドワイヤンイヴァン・アタルピーター・コヨーテ

第二次世界大戦、ナチス・ドイツ侵攻時のフランス。
1940年6月14日、遂にパリ陥落。
その日、大女優のヴィヴィアンヌ(イザベル・アジャーニ)は、しつこくつきまとっていた男を誤って殺してしまいます。
彼女は、幼馴染みのオジェ(グレゴリ・デランジェール)に助けを求めますが、彼は罪の肩代わりをし投獄されてしまい・・・
大女優と、作家志望の幼馴染み、大女優を愛人にした大臣(ジェラール・ドパルデュー)、そしてユダヤ系化学者、その助手など、パリからボルドーに逃れて来た人々でゴッタ返す中、様々な人々の奮闘振りを追ったコミカルな群集劇です。

■くるくると目まぐるしくスピーディーに展開します。
物語は次々と展開して行きますが、けっしてゴチャゴチャになることはありません。
所々ににクスリと笑えるどこか品のある可笑しさ。
鮮やかで上手い演出に脱帽です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
とにかく目の回るような速さの展開です。
40年代のパリやボルドーの街並みや車、通りを行く人々。
パリから逃れて来た人々で溢れかえったホテルのロビーやレストラン。
そこで繰り広げられるドタバタ劇。
上流階級のマダムたちの悠長さも面白さの一つです。
暗い世相なのに決して悲観的にならず、たくましく生きて行く人々を描いています。

■さらに・・・
後半は、その後の行方が掴めずドキドキの連続です。
イザベル・アジャーニ扮する大女優は、最大限に人を利用し渡り歩く子悪魔的な女。
しかし、決して嫌らしくなく、澄ました顔で漂々と目的を達成する彼女がとても可愛いらしいです。
まさに「転んでもただでは起きない」女。

ラストは、戦争が終わってメデタシメデタシの終わり方ではありません。
戦争最中でラストを迎える訳ですが、その終わり方がまた心憎い。
愛し合う二人、大女優のその後・・・をそっと予感させる結末です。


■■考察■■
イザベル・アジャーニ・・・
今回もとても50歳前とは思えない美しいお姿を披露。
エルメスやランバンなど数々の有名デザイナーの衣装を着こなしての登場です。
ちょっとカマトトぶった顔の表情や、やや半開きの口元など
相変わらずのアジャーニさんです  (*^∇^*)

本作品で、2004年セザール賞最有望新人男優賞を獲得したグレゴリ・デランジェール。
キョトンとした顔がとても可愛いデス



みんな誰かの愛しい人 (2004) 公開(2004)
Comme une image
★★★★
フランス 1時間51分
監督・脚本・出演:アニエス・ジャウイ
脚本・出演:ジャン=ピエール・パクリ
出演:マリルー・ベリ、ローラン・グレヴィル、カイン・ボーヒーザ

2004年度カンヌ国際映画祭、脚本賞受賞。

有名な作家を父に持つ娘は、父に愛されていない悩みやちょっと太めの体型にコンプレックスを抱いています。
父と娘を中心に、その周りを囲む様々な人間模様を交えた偶像劇です。

■等身大の人間をありのままに描いたリアルな映画です。
有名な人もそうでない人もそれなりに悩みを抱えて、笑ったり、奮起したり、自信を無くしたり。
そんな人々を時にコミカルにじっくりと描いた心温まる人間ドラマです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
少し斜に構えて捉えた感じの群像ドラマです。
父エチエンヌ、娘ロリータ、声楽家シルヴィア、シルヴィアの夫、セバスチャン・・・
不器用な愛情をストレートに表現出来ない親子関係は、次第にその周りの人々にも少しずつ影響を与えていきます。
ストーリー自体は最後にチャンチャンと上手く納まる訳ではありません。
見方によっては中途半端な終わり方に見えるかも知れませんが、何か心に残るものがあります。
最初と最後では、みんなの気持ちに変化が起こったことは確かです。

ラストでシルヴィアがあきれ果て別荘を後にするシーン。
次々と窓の明かりが灯って行く印象的なシーンです。
あたかも一人の女性の想いが、みんなの心にそっと波紋を投げ掛け、窓の明かりのように心にも温かい気持ちが灯ったような、そんな風にも捉えることが出来ます。

■ちょっと一言
著名な国民的大作家エチエンヌ(ジャン=ピエール・パクリ)
すいません、、、ただのそこら辺に居る中年のオジサンに見えてしまいます。
でも、大作家であろうが普通の人間。
そう思えば的を得たキャスティング、演出です。エヘ


■■考察■■
主人公ロリータを演じるマリルー・ベリ。
この映画が初デビュー作品とは思えないほど、貫禄?ある存在感のある女性です。



モーターサイクル・ダイアリーズ (2003) 公開(2004)
The Motorcycle Diaries
★★★★☆
イギリス・アメリカ 2時間7分
監督:ウォルター・サレス
製作総指揮:ロバート・レッドフォード
出演・ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ミア・マエストロ

1952年、ブエノスアイレス。
エルネスト・チェ・ゲバラ(=後のキューバ革命の指導者)は、23歳の時、医大を休学して、友人アルベルト・グラナードと南米大陸縦断の旅に出ます。
涙有り笑い有りのその楽しくも過酷な旅を描いた青春ロード・ムービーです。

本作は、ゲバラの日記「チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記」に基づいて映画化さています。
尚、友人アルベルト・グラナードを演じるロドリゴ・デ・ラ・セルナは、チェ・ゲバラとは“はとこ”にあたります。

■革命の指導者になる発端になったとも思える物語ですが、
全体的には青春ロードムービーといった風合いです。

■■ネタバレです■■
故郷ブエノスアイレス〜パタゴニア〜アンデス山脈越え〜チリ〜ペルー〜南米大陸の北端ベネズエラへと続く1万キロの旅路。
その旅先での数々のエピソードが紹介されます。
また、行く先々で出会う雄大にして壮大な大自然。
それらの風景はとても美しく厳しく、自然の息づかいが肌で感じられる映像です。
そして、目の当たりにした貧困や差別。
この旅は、ゲバラのその後の生き方を決定づけたそうですが、
映画では、旅そのものを重点に置き、思想的な部分はごく自然に最小限の表現に留めています。

エンドクレジットでは、ゲバラ本人のフォトが登場します。
数々のエピソードは、本当だったんだ・・・などとさらに感動したり。

■さらに・・・
チェ・ゲ バラは、この映画の中では、好青年として描かれています。
ガエル・ガルシア・ベルナルの印象が残るので、ゲバラも全く同じであるかと勘違いしそうですが、実際のところはまた違うのでしょう。笑
完全なドキュメンタリーではないので、ゲバラの青春のひとコマとして思いを馳せる、そんな捉え方をする映画です。
あくまで青春ロードムービーに徹し、その中で何かを掴んで行く演出です。
変に自分探しの旅に固執したり、ことさら人間的に成長した表現を強調せず自然体なところが、自分的には好感持てました。

旅のエピソードはどれも心に残りますが、特に印象的なのは、
□愛車ポテローザとの別れ
これは、バイク好きな人には激しく共感出来ると思います。共に旅する仲間を一人失うようなものだから。それにしても昔のバイクは大雑把ですね。
□遺跡マチュピチュでのシーン
栄華を極めた遺跡ほど、虚しく切なくなるものはありません。
□川を泳ぐシーン、素手で患者と触れ合うシーン
観ていて胸が熱くなりました。


■■考察■■
ガエル・ガルシア・ベルナル・・・
革命家になるであろう、その前段階の実直で初々しい青年を好演。
彼は、根っからロードムービーが似合う男なのかも♪
とても素敵なガエル君です  (*^∇^*)ウフ



モンスター (2003) 公開(2004)
MONSTER
★★★☆
(シャーリーズ・セロン、迫真の演技★★★★☆)
アメリカ 1時間49分
監督・脚本:パティ・ジェンキンス
出演:シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ、ブルース・ダーン

1986年、フロリダ。
アメリカ初の女性連続殺人犯となったアイリーン・ウォーノス。
「モンスター」と呼ばれた彼女の生き様を、実話に沿って映画化しました。

■ドラマ自体は平凡なのですが
観る者がアイリーンの気持ちに少しでも感情移入出来ると、これまた違った印象の作品になります。
好き嫌いが分かれそうな作品です。

■■ネタバレです■■
人間は生まれ育った環境で、ある程度その人の人生が決まってしまう。
地獄のような生活から這い上がるのは並大抵の事では無く、自身の努力だけではどうにもならず、非常に困難です。
アイリーンのような人間を作り出した<社会の歪み><不十分な環境>こそが、モンスターと言えるものなのです。

人生に絶望したアイリーン(シャーリーズ・セロン)が、最後の安らぎとして愛した同性愛者の少女セルビー(クリスティーナ・リッチ)
彼女との生活費を稼ぐために殺人を重ねて行くのですが
彼女と出会ったことで坂道を転がるように殺人鬼に転じて行く、その過程が何とも痛ましく哀しいです。
不器用に必死に生きた結末が連続殺人鬼とは。
例え極悪な犯罪者であっても 彼女の中には確かに愛が存在したことが分かります。

物語はアイリーンの告白により展開されます。
なので、一方から見ると、彼女の殺人の動機に少々都合の良さを感じてしまいます。
実際のところは、多分違った部分も大いにあり、本当の真実は当の本人にしか分からないでしょう。
しかし、アイリーンから見た視点もこれまた真実。

アイリーンの気持ちを汲み取りたいけれど、やはり殺人は殺人。
犯罪を美化して欲しくない、という気持ちも有り
何とも複雑な気分にさせる映画であります。

■■考察■■
主演のシャーリーズ・セロン・・・
美しいスタイルと美貌を持つ彼女が、驚くほどの豹変ぶり!!
13キロも体重を増やし、ぶよぶよに緩みきった体(=特にお腹周り)と、義歯を装着した特殊メイクで、だらしない中年女を熱演。
アカデミー主演女優賞を獲受賞。
容姿だけでなく、歩き方、話し方、ちょっとした仕草までもまるで別人。

セルビー役のクリスティーナ・リッチ。
自立出来ない受身の少女を演じています。
そんな彼女が、次第にウォーレスを意のままに動かす影の存在になって行く・・・
ある意味、こちらの方が恐ろしいのかも。



予言 (2004) 公開(2004)
YOGEN
★★★
日本 95分
監督:鶴田法男
原作:つのだじろう「恐怖新聞」
出演:三上博史、酒井法子、堀北真希、小野真弓

ジャパニーズ・ホラーの新レーベル「Jホラーシアター」第1弾作品(=「感染」と同時上映)
70年代のヒット漫画「恐怖新聞」(=つのだじろう原作)を基に映画化したものです。
親子3人の幸福な家庭は、死を予言する新聞によって運命に翻弄されてしまう・・・
原作とは設定も変わり一味違った恐怖を描いています。

■残虐なシーンも無く、特に怖くはありません。
ホラー映画というより、寓話的な趣のある「新聞を媒体にした」「不思議なお話」といった感じです。
恐怖を全面に出さずに、家族愛に重点を置いた作品です。

■■ネタバレです■■
愛する家族の死が確定したとしていても、何とかしてそれを回避したい
死神に向かって挑戦して行きたい
例え、それが自分に死をもたらすとしても

事故により離婚した夫婦。
二人が協力して恐怖新聞の謎に迫ろうとする姿に、愛を感じます。

■■考察■■
三上博史、独特の「キャーッ」といった甲高い声
大袈裟な演技は相変わらずですね。フフ・・・
娘はルーシー・リューに少し似てました。エヘ

そうそう、新聞が自分の所に来る時は、パタパタ・・・と風にのってやって来たり、ペタリと窓ガラスに張り付いたりします。
それが何とも可笑しくて・・・  (=^∇^=)クス