2005年(1月〜4月)映画館で観たレビューです。


Ray / レイ ★★★★
THE JUON / 呪怨 ★★★☆
Uボート 最後の決断 ★★★☆
愛の神、エロス ★★★☆
アレキサンダー ★★★
海を飛ぶ夢 ★★★★☆
エターナル・サンシャイン ★★★★
オペラ座の怪人 ★★★★
カンフーハッスル       ★★★★ 
岸辺のふたり ★★★★☆
キャビン・フィーバー ★★★
クライシス・オブ・アメリカ ★★★★
コーヒー&シガレッツ ★★★☆
コーラス ★★★★
恋に落ちる確率 ★★★★
恍惚 ★★★★
コンスタンティン ★★★
サイドウェイ ★★★★
ジャッカス・ザ・ムービー<日本特別版> ★★★
スーパーサイズ・ミー ★★★☆
ステップフォード・ワイフ ★★★
セルラー ★★★☆
ソン・フレール 兄との約束 ★★★★☆
ダブリン上等! ★★★☆
ナショナル・トレジャー ★★★
ネバーランド ★★★★
ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ ★★★
ハウス・オブ・ザ・デッド ★★
バッド・エデュケーション ★★★☆
巴里<パリ>恋愛協奏曲<コンチェルト> ★★★☆
ビヨンド the シー 〜夢見るように歌えば〜  ★★★☆
ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月 ★★★
故郷<ふるさと>の香り ★★★★☆
ベルヴィル・ランデブー ★★★★
マシニスト ★★★☆
猟人日記 ★★★★
レオポルド・ブルームへの手紙 ★★★☆
ロング・エンゲージメント ★★★☆




Ray / レイ (2004) 公開(2005)
Ray
★★★★
アメリカ 2時間32分
監督・脚本・製作:テイラー・ハックフォード
出演:ジェイミー・フォックス、ケリー・ワシントン

“ソウルの神様”レイ・チャールズの生涯を描いたヒューマン・ドラマです。
彼の幼少の頃から生い立ちと、音楽界の頂点に立つまでの道のり
そして、音楽への限りない探求、家族、愛人、麻薬、移籍問題など数々のエピソードで綴っています。
2004年、アカデミー賞、主演男優賞、音響賞、受賞。
その他、数々の賞を受賞しています。

■レイ・チャールズの軌跡を追った作品ですが、ただ単にそれだけに留まらず、それ以上に心に残るものが有ります。
レイ・チャールズの音楽を知っている人はもちろんのこと、知らない人にも満足出来る作品です。

■■ネタバレです■■
レイ・チャールズの人生を綴った伝記映画です。
成人以降の音楽生活が主となっていますが、その中に、彼のその後の人生に深く関わることになった出来事がフラッシュバックのように現れます。
「弟を死んだのは自分のせい」
弟が死んだのは客観的に見ても決してレイのせいでなく、ただ単に不慮の事故であるのに、弟が事故死したのは自分の過失のせいだと思い込んでしまいます。
自分ををせめ、それが深い心の傷となってしまいます。

そのエピソードは、彼の弱さとなって現れます。
麻薬に溺れ、女に溺れ・・・
映画なので、このエピソードが何処まで彼の心に侵食していたのか、その後の人生の負の部分は何処までこのことが下地になっていたのか、
物語は幾らでも理由付け出来、その真偽は本人しか分かりません。
が、しかしながら、
弟への謝罪の気持ち。
母の愛。
失明と苦悩の連続。
果てしない音楽への追求。
家族と手を取り合い生きる道のり。
この映画からストレートに受ける感動は、それもまた真実。
天才プレーヤーの魂に触れられる映画なのです。


■■考察■■
(参考資料)
この映画の製作にあたって、レイ・チャールズ本人も製作に深く関わったそうです。
その甲斐あって、映画の中のレイチャールズは、ジェイミー・フォックであってそうでないような、まさに本人が乗移ったかのような素晴しい演技です。
尚、レイ・チャールズは、2004年6月10日
残念ながら映画の完成を待たずして死去されました。



THE JUON / 呪怨 (2004) 公開(2005)
The Grudge
★★★☆
アメリカ 1時間38分
監督:清水崇
出演・サラ・ミシェルゲラー、ジェイソン・ベア、ウィリアム・メイポーザー、クレア・デュバル、ケイディー・ストリックランドグレイス・ザブリスキー、ビル・プルマン

「呪怨」シリーズのハリウッド・リメイク版です。
監督はオリジナル同様に清水崇監督。
舞台設定は、例の「家」も「伽椰子」や「俊雄」など呪いにまつわる連中も同じです。
今回、家に引越して来た家族やケア・ボランティアの主人公たちが外人に変更されています。

■オリジナルの邦画を観ていないので比較出来ないのですが、この映画のみで観るとなかなか良く出来た映画だと思います。

■■ネタバレです■■
日本のやや古めかしい家。
この家が純和風で無く、少し洋風めいた作りであるのが返って妙なアンバランスさがあって良いです。

■オリジナルとは違う点である主人公が外人であること
異質な人たち(=異質な文化を持った人たち)が日本という土壌に入り込んで来る。
彼らが置かれる孤独感、家から外に出ても助けを求められない意思疎通のもどかしさ。
異国にぽーんと放り込まれた孤独さや、そこで体験する自国とは違う恐怖・・・
リメイク作品であっても殆ど変更の無い内容ですが、上記の点に注目してこの映画を観るとさらに違った視点から観れて楽しめるのではないでしょうか。



■■考察■■
敏雄くん、怖いというより可笑しかった自分です。ハイ
ビル・プルマン、存在感があるような無いような、そんな素敵なオジサマ教授を好演。

それにしても、外人は恐怖する時涙を出すのですね。
日本ではあまり流さないような気が、、、どうでせうか!?



Uボート 最後の決断 (2003) 公開(2005)
In Enemy Hands
★★★☆
アメリカ 1時間38分
監督・脚本:トニー・ジグリオ
出演:ウィリアム・H・メイシー、ティル・シュヴァイガー、スコット・カーン、トーマス・クレッチマン

第二次世界大戦下の1943年、大西洋。
米軍潜水艦ソードフィッシュは独軍のUボートの魚雷を受け沈没。
僅かに生き残った乗員はUボート(U−429)の捕虜となり拘束されますが、やがて、艦内では独軍乗組員の不満が爆発し・・・
独軍と米軍両兵士たちのそれぞれの思惑、対立、憎しみ、それらを乗り越え協力し合う姿を描いた戦争ドラマです。

■低予算(=とおぼしき)ながら、上手くまとめあげた潜水艦映画。
艦内の閉塞感、緊張下における乗組員たちの心理的葛藤など、潜水艦映画特有の要素を盛り込み、さらに感動を覚える、小品ならではの味わいがある作品です。
手に汗握る戦争シーンはもちろんのこと、潜水艦という極限下に置かれた密室で繰り広げられる心理的な葛藤が見所です

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
救出された米軍乗組員と独軍乗組員が乗り合わせる潜水艦。
数々のトラブルに見舞われたことによって苦汁の選択をし、お互いが結束し合う事になります。
ある者は反目し合った末に、また、不慮の事故で命を落とす者が続出しますが、生き残った僅かなメンバーで何とか生き残ることが出来ます。
ここには、人種、国、立場を超えた<人と人との繋がり>を感じさせます。
相手を尊重し、信じ、約束を守ること・・・
これは如何なる場合に置いても人にとって大事なことなのです。

この映画では、幾度と無く苦渋の選択が出て来ます。
それを決断するのも上に立つ者としての力量。
愛国心ももちろん大切だけれど、それよりも、何としてでも生き残って必ず愛する家族の元へ帰る・・・
人間にとって何が一番大切か、つくづく思わせる作品です。

■弱い部分もあるが・・・
独軍の艦長が娘を空爆で失ったこともあって、生き残った米軍乗組員を全員救出することに決めます(=その当時、ヒトラーは、艦長、副艦長のみを救出することを指示していた)
如何にそのような理由があってもちと甘い気もする・・・
さらに、米軍乗組員が持ち込んだ伝染病によって、独軍乗組員も次々に伝染しその大半を失ってしまう。
戦時下の緊張下では、恐らく米軍乗組員は皆殺しにされたであろう。
しかし、ここでも艦長の温情が・・・
ところどころで、「甘い」と思わせる部分も多々ありますが、映画ならではと思うとまた良し。
途中いざこざがあれど、ラストでは爽やかな感動があります。
やはりこういった映画は嬉しいものです。


■■考察■■
チーフ、ネイト・トラバース役のウィリアム・H・メイシー。
艦長でも副艦長でも無いチーフという微妙な立場を演じています。
中間管理職を思わせる立ち位置、主役がチーフと、まさに彼にピッタリの役柄です。
対する独軍の艦長にはティル・シュヴァイガー、副艦長にはトーマス・クレッチマンと、ドイツ出身の俳優を起用しているところが嬉しい。
両者共、カッチョイイ渋い男を演じ高感度アーップ♪



愛の神、エロス (2004) 公開(2005)
Eros
★★★☆
フランス・イタリア・ルクセンブルグ・アメリカ・中国 1時間44分


ウォン・カーウァイ、スティーヴン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニ。
3人の巨匠監督が「愛とエロス」をテーマに競作したオムニバス映画です。それぞれの物語には別個にテーマがあります。
3つの物語の間には、ロレンツォ・マットッティのイラストとカエターノ・ヴェローソの音楽が挿入されています。

□ウォン・カーウァイ 「若き仕立屋の恋」 The Hand
・・・「エロスの純愛」
 出演:コン・リーチャン・チェン
□スティーヴン・ソダーバーグ 「ペンローズの悩み」 Equilibrium
・・・「エロスの悪戯」
 出演:アラン・アーキンロバート・ダウニー・Jrエル・キーツ
□ミケランジェロ・アントニオーニ 「危険な道筋」 Il filo pericoloso delle cose
・・・「エロスの誘惑」
 出演:クリストファー・ブッフホルツレジーナ・ネムニルイザ・ラニエリ

■3本の中でダントツに秀でているのが、ウォン・カーウァイの「若き仕立屋の恋」です。
「愛とエロス」というテーマはまさにこの映画の為にあるようなもの。
他の2作品にはエロスはあまり感じられず、残念です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!

□ウォン・カーウァイ 「若き仕立屋の恋」 The Hand
 ★★★★★
これだけで1本の映画として公開されても良いのでは、、と思う程の完成度の高い作品です。
1963年、香港。
一般的にそれほど裕福でなかった頃。
仕立て屋見習いから出発した男性(チャンチャン・チェン)と洒落たアパートに住む高級娼婦ホア(コン・リー)との関係を描きます。
仕事として接するだけで満足するチャンの彼女への想い。
最後まで遂に体の関係で結ばれることはありませんでしたが、
ラストの、手と手が触れる、その行為はセックス以上の強い愛を感じます。
陰影ある映像、湿った空気、そして、
全裸やセミヌードは全く出て来ず、手の動きや顔の表情、切なる想いだけで、極限のエロチシズムを描き出しています。

□スティーヴン・ソダーバーグ 「ペンローズの悩み」 Equilibrium
 ★★☆
1955年、ニューヨーク。
広告のクリエーターであるニック・ペンローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)
彼は、仕事のプレッシャーと最近見る同じ夢について、精神分析医のパール(アラン・アーキン)のカウンセリングを受けます。
不思議な夢は、息詰まった仕事の解決の糸口となり、
また、その夢に出て来る魅力的な女性も誰か分かり、妻への気持ちを再確認します。
彼の心の深層心理を浮き彫りにした物語です。
パールの行動が妙な可笑しさを生みユーモアが感じられる作品でもあります。
しかしながら、エロスは殆ど感じられず、「愛とエロス」のテーマからは遠いものがあります。

□ミケランジェロ・アントニオーニ 「危険な道筋」 Il filo pericoloso delle cose
★★★
真夏のイタリア、トスカーナが舞台。
アメリカ人男性クリストファー(クリストファー・ブッフホルツ)と、イタリア人のクロエ(レジーナ・ネムニ)の40代の夫婦。
二人の関係が上手くいかず喧嘩ばかりしている彼らの前に、若い女性が現れる・・・
噛み合わない夫婦の会話やいらだち、倦怠感。
若い魅力的な女性を前にした男性の高揚ぶりが上手く出ています。
自然の中での瑞々しい裸体、自由奔放なセックスといい、あまりに自然体で大らか過ぎて「エロス」はあまり感じられません。


■■考察■■
「若き仕立屋の恋」で高級娼婦を演じているコン・リー。
成熟した女の色気、艶かしい演技、その美しさ、女優としての風格を感じます。
難を言えば、仕立て屋にたくさんのドレスを作って貰ったのに、ドレスを着た姿は殆ど上半身しか映らない。
美しく着飾った全身像をもっと見てみたいものです。



アレキサンダー (2004) 公開(2005)
Alexander
★★★
アメリカ 2時間53分
監督・脚本:オリバー・ストーン
出演:コリン・ファレル、アンジェリーナ・ジョリー、ヴァル・キルマー、ロザリア・ドーソン、ジャレッド・レト、アンソニー・ホプキンス

マケドニアの王アレキサンダー大王の32年の生涯を、壮大にしてスペクタクルに描いた歴史ドラマです。
総製作費200億円を掛けた壮大な歴史絵巻。

■見所は、壮大で迫力のある戦闘シーン。
物語の進行も回想シーンで綴られているので、複雑で入り組んだ歴史もかなり分かり易くなっています。
ただ、映画全体としては、アレキサンダーの人物像の描き方がいまひとつだった感があります。

■■ネタバレです■■
プトレマイオス(アンソニー・ホプキンス)の回想シーンで綴られて行きます。
大王が幼少の頃から死去するまでの長きに渡る時間を、アレキサンダーの人間形成に大きく影響を及ぼした経緯やその後の性格など、生身の人間を強調して描かれています。

■何故かのれない・・・
アレキサンダー大王の生き方について、あまりに理由付けし過ぎているのが要因。
それが吉と出る場合もありますが、この映画に関してはマイナスだったかも。
王の世界征服、東方遠征など謎に包まれた部分は大きいですが、
いろいろと解釈を垂れるよりも、事実をありのまま描き、王の心情に関しては大部分を観客に委ねた方が良かったような気がします。

■それにしても・・・
母オリンピアス(アンジェリーナ・ジョリー)を疎ましく思いながらも、第一夫人を母と似た雰囲気を持つロクサネ(ロザリオ・ドーソン)にするとは。
もう少し違った人材はいなかったものかのうー・・・


■■考察■■
コリン・ファレル・・・
演技は申し分無いのですが、何しろイメージに合わない
アレキサンダー大王を演じるにはちと人選を間違えたような気が。汗

アンジェリーナ・ジョリー・・・
妖艶にして魔性の王妃を好演。
蛇を体にまとまりつかせる姿はまさに彼女にピッタリ。
何十年も経っているのにあまり年齢の変化を感じさせないのも不思議だったり  (=^∇^=)

エキゾチックなイケメン、多いです♪ウヒ



 海を飛ぶ夢 (2004) 公開(2005)
The Sea Inside
★★★★☆
スペイン 2時間5分
監督・脚本・製作総指揮・音楽:アレハンドロ・アメナーバル
出演:ハビエル・バルデム、ベレン・エルダ、ローラ・ドゥエニャス、マベル・リベラ、クララ・セグラ

25歳の時、海の事故により四肢麻痺になってしまったラモン・サンペドロ(ハビエル・バルデム)
それからの26年間をベッドの上で寝たきりの生活を送った彼は、遂に、自ら命を断つべく「尊厳死」の決断をします。
実在の人物、ラモン・サンペドロの手記をもとに描いた真実のドラマです。
2004年、アカデミー賞外国語映画賞受賞、その他、ゴールデン・グローブ外国映画賞など多数の賞を受賞しています。 

■胸をえぐられるほど苦しくて辛い映画なのに、観た後は、ただただ静かな気持ちになります。
大いなる感動とはまた違った、多くを語りたいのに言葉が出ない、、心に深く染入る作品。
「生とは、死とは何か」と問いかける、崇高な映画です。
舞台となったスペインの海岸、窓から見える景色など、主人公の心が空を切って飛んで行く、美しく切ない映像も印象的。


■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
「生きる権利があれば、死ぬ権利がある、そして、生きるのは義務ではない」という主人公の思い。
長く苦しんで来た辛さは本人しか分からない。
「生きて、生を全うして欲しい」という周囲の人間の思い、「死にたい」と願う主人公。
それぞれの立場に立てば、どちらの気持ちも痛いほど分かる。
人々は常にその狭間で揺れ動き、苦しみ、葛藤するのです。

■主人公を取り巻く女性たち
彼の尊厳死を支援し、彼を愛する弁護士フリア(ベレン・ルエダ)
尊厳死を思い留まらせたい子持ちの未婚女性ロサ(ロラ・ドゥエニャス)
彼の身の回りの世話をする義理姉マヌエラ(マベル・リベラ)
彼女たちのラモンに対する思いは様々です。
フリアは、自分自身も難病に罹り、ラモンとは同じ病で苦しむ同士であり、また、精神的に深く繋がりのある愛があります。
ロサの愛は、依存の愛とも言うべきもの(=自分の境遇の辛さをラモンの世話をすることによって消化したい)
マヌエラは、淡々とラモンの世話をし、ラモンの望むことを叶えたいと思う。
これは、20数年間世話をして来た者にしか分からない、彼女が一番ラモンのことを理解しているのではないでしょうか。

■■考察■■
ハビエル・バルデム・・・
実際の年齢より20歳以上の役ですが、その風貌、身振り仕草はまさに50歳の中年男性。
顔以外は動かせない難しい役を、眼差し、表情だけで見事に表現しています。
周囲の人に絶えず気遣わねばならない、自分の心を抑えて接する姿が堪らなく切なく哀しい。



 エターナル・サンシャイン (2004) 公開(2005)
Eternal Sunshine of the Spotless Mind
★★★★
アメリカ 1時間47分
監督・ミッシェル・ゴンドリー
脚本:チャーリー・カウフマン
出演:ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルスティン・ダンスト、イライジャ・ウッド、マーク・ラファロ

バレンタインの直前に別れてしまったカップル、ジョエル(ジム・キャリー)とクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)
ジョエルは彼女が、ラクーナ医院でジョエルの記憶を消す施術を受けたことを知り、自分もまた彼女の記憶を消そうと同様の施術を受けようとしますが・・・コミカルにして切ないラブ・ストーリーです。

■ピュアでストレートなラブ・ストーリーです。
パズルを当てはめるような複雑で且つ凝りに凝った脚本ですが、ウィンスレットのくるくる変わる髪の色で分かる仕組みになっています。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
恋愛し失恋した事のある人なら誰でも体験したことのある、彼女とのかけがえの無い大切な時間。
忘れられない思い出。
「もう全て忘れてしまいたい」「いや、やはり忘れたくない」
愛しているから忘れたくないという気持ち。
愛しているからこそ深く傷つき忘れてしまいたいと思う気持ち。
一度は終わってしまった恋の日々を、現在と過去を織り交ぜつつ辿って行く手法です。

彼女との思い出を消し去る最中に気付く自分の本当の心。
人間はギリギリのところで己の心の真実に気が付くのかも知れません。
彼女を忘れないように、二人が手に手を取り、恥ずかしい記憶の中に自分たちの存在を残そうとして(=恥ずかしい過去は消えないから)慌てふためきながら必死に逃げ回る姿が可笑しくも切ない。

人間は、良きも悪きも自分の辿って来た道の記憶を糧にして成長して行くもの。
過去を消して再開し恋愛する終わり方もファンタジーで良いのですが、
本作のように、消し去った後に病院の資料で自分たちがしてしまった行為を知ってしまう方が、さらに味わい深いものになっています。
「大人の童話」に終わらない一捻り効いた展開。
お互いの気持ちを知ってしまう、その時の衝撃はファンタジーなどぶっ飛ぶ怒りに襲われますが、
全てを受け入れた上での再出発は、再び同じ過ちを犯さず、二人の気持ちは決して揺ぎ無い固い絆で結ばれることになるのです。

■最後に・・・
記憶を消されてもまた同じ人を好きになってしまったジョエル、クレメンタイン、そして、メアリー(キルステン・ダンスト)
ただ単に、同じ傾向の人を好きになってしまうのか、或いは、
人は記憶を消去しても、頭の何処かに機械では消し去れない「一片の思い」があるのかも知れません。


■■考察■■
ジム・キャリー・・・
寝起きのよう顔だったり頭がボサボサだったりプライベート時のような自然体、時折り見せるコミカルな部分もしつこくなくマニアックでなく、さり気さが出ていてグー
静かで味わい深い演技です。

ケイト・ウィンスレット・・・
キュートでちょっと変わった不思議な女の子がとても良い♪



オペラ座の怪人 (2004) 公開(2005)
The Phantom of the Opera
★★★★
アメリカ 2時間23分
監督・脚本:ジョエル・シューマカー
原作:ガストン・ルルー
出演:ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム

不屈の名作ミュージカル「オペラ座の怪人」の映画化です。
その舞台版の作者であるアンドリュー・ロイド・ウェバーが、本作においても製作・脚本・音楽を担当しています。

■荘厳にして重厚、絢爛豪華な舞台装置と美しい衣装の数々、そして大音響を奏でる音楽。
是非とも大スクリーンで堪能して欲しい映画です。
ただ、かなりミュージカルに重きをおいています。
ミュージカル映画として観るなら満足出来、映画としての観点から見ると少々物足りなさを感じるかも知れません。

■■ネタバレです■■
ファントムは、「限りない芸術への探求」「禁断の愛」「闇の世界」「大人の性的魅力」
対するラウルは、「普通の女としての幸せ」「昼の世界」「若さと弾ける愛」・・・といった違いでしょうか。
クリスティーヌは、ファントムの心の闇に失望したけれど、それが無ければ着いて行ったのか・・・

■ちょっと毒付いてみると・・・
映画としての観点から見ると、ファントムの苛立ちや苦悩がもう少し深く描いて欲しかったです。
あれでは、単なるストーカーにしか思えなくも無く・・・

■自分が一番好きなシーン
オークションで、シャンデリアから布が取り除かれた時
大音響の音楽と共にシャンデリアが吊り揚げられ、塵とホコリが一瞬にして取り払われ、次々と舞台に灯が灯り、あの頃のオペラ座に戻って行くシーンです。
このシーンが身震いするほどに良かったです。


■■考察■■
登場人物が、自分のパートを全て自分自身の声で歌っています。
それにしても、エミー・ロッサムの声は美しい。
ジェラルド・バトラーもそこそこは歌えるのですが、あまりもエミー・ロッサムが際立って上手いので、バトラーの声は見劣りしてしまいます。
クリスティーヌの歌の先生「音楽の天使」という設定ですが、これでは説得力に欠けてしまう。
セクスィーで素敵ではあるけれど・・・



カンフーハッスル (2004) 公開(2004)
Kung Fu Hustle
★★★★
中国・アメリカ 1時間39分
監督・製作・脚本・出演:チャウ・シンチー
出演:ユン・チウ、ユン・ワー、ドン・ジーホウ、シン・ユー、チウ・チーリン、ブルース・リャン

文化大革命前の中国。
極悪ギャング団「斧頭会」と貧民アパート「豚小屋砦」の住人たちとの戦いをベースに、主人公のチンピラ、シン(チャウ・シンチー)の活躍を描くカンフー・アクション・コメディです。
70−80年代に活躍したカンフー・スターや名スタントマンを起用しているのも特徴です。

■お笑いとカンフー好きな方は必見!!
ただ、やはり普通の映画よりは暴力描写がやや目立つので、PG−12指定でも良いのでは、と思ってみたりします。

■■ネタバレです■■
情けない街のチンピラが、善と悪との狭間で、真の強さと己の使命に目覚め、悪人どもをバタバタとなぎ倒して行く・・・
と聞くと、カッコ良いヒーロー物を想像しますが、実際は単純にして明快なお笑いお馬鹿系アクション映画です。
数々のギャグも如何にもマンガ的なノリのですが、観ている最中は決してマンガを想像させない、アクションのツボを心得た演出です。
チャウ・シンチーの、ブルース・リーに対する憧れと尊敬の念、そして彼の思い入れが十分に感じ取られる作品です。

この映画の面白さは、お馬鹿なギャグと本格的なカンフーの魅力にありますが、そのベースとなっているのが「意外性」です。
例えば、現代風のギャング団が得意とする武器は「斧」だったり、
どうも見ても冴えないオジサンやオバサンたちが実は武道の達人だったり・・・
主人公はチャウ・シンチーなのですが、豚小屋砦の住人たちにスポットを当てているので、物語の途中は住人たちが主役かと錯覚してしまうほどです(=もちろんラストはチャウ・シンチーがキメてくれます)

ドアから血が溢れ出るシーンにはビックリと同時に可笑しさ爆発!!
(=「シャイニング」のパロディです)


■■考察■■
ラスト、白と黒の衣装で登場するチャウ・シンチー。
凛としたそのお姿に思わずため息・・・♪



岸辺のふたり (2000) 公開(2004)
Father and Daughter
★★★★☆
イギリス・オランダ 8分
監督・脚本・デザイン:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

8分間の物語。
幼い頃、岸辺からボートで去って行った父を想い続け、その岸辺に立ち続ける娘。
時は流れ、少女は大人になり老女となってもその想いは消えることなく、やがて奇跡が訪れる・・・
2001年アカデミー賞短編アニメーション賞受賞、その他多数受賞。

■アニメというよりアート、アニメというより詩的。
素晴しい作品です。
鉛筆と木炭で描かれたシンプルなタッチ、バックにはアコーディオンとピアノのみが流れ、静かな感動が押し寄せます。
何度でも繰り返し見たくなる、そんな映画です。

■■ネタバレです■■
影絵を思わせるようなシンプルなタッチ、
「光」と「影」を巧みに使い、最低限に抑えた色彩、
セリフを一切排した画面には、
ただただアコーディオンとピアノの調べが流れるだけ。
そんな素朴でシンプルな画面なのに、登場人物のそれぞれの想いがとても強く伝わって来るのです。

スクリーンからは、幼女が老婆になるまでの人生と、春夏秋冬の季節の移り変りが流れて行きます。
が、季節が変わっても時を経ても変わらないのは、父を想う気持ち。
その父への想いが、痛いほどに伝わって来ます。
切なく哀愁に満ちた映像は、何処か「詩」を思わせ、
くるくる回る自転車の車輪はまるで流れ去る時のようです。

■どこか・・・
ふと、NHKの「みんなのうた」を思い出してみたり  (*^∇^*)


■■考察■■
今回の公開(2004/12/18-2005/2/11)では、「掃除屋トム」(=3分)「お坊さんと魚」(=6分)の2本も併映。
その後続けて本作品も2回連続上映され、全体で約30分の上映となります。



キャビン・フィーバー (2002) 公開(2005)
Cabin Fever
★★★
アメリカ 1時間33分
監督・製作・原案・脚本:イーライ・ロス
出演:ライダー・ストロングジョーダン・ラッドジェームズ・デベロセリナ・ヴィンセントジョーイ・カーン

約150万ドルの低予算で撮り上げたスプラッタ・ホラーです。
学生生活最後の夏休み。
5人の男女が森の中のキャビンを借り楽しく過ごすことにしますが、ウィルスに感染した男が乱入して来たことにより彼らはパニックになり・・・
謎のウィルスによる死の恐怖、感染を疑い人を信じられなくなり疑心暗鬼に陥る恐ろしさを描いたサスペンス・ホラーです。
R−15指定。

■昔懐かし、正統派ホラーです。
感染した部位の描写はそれほどグロくはありません。
吐血する時、噴水のように吹き出る血液の量が凄い。
やはり、ホラー好きの方にお勧めしたいです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
森奥深くに立つ一軒家の山小屋や、落ち葉が敷きつめられた地面を這うようにして撮るカメラワークなど、シチュエーションは「死霊のはらわた」
登場人物は「悪魔のいけにえ」の危ない人たちを彷彿とさせる部分もあり、昔懐かしいホラーの雰囲気があります。
(=3人で行動する店屋の男たちの細い奴、大事そうに箱を持っている奴がミョーな感じ・笑)
所々、空気の抜けたシュールな笑いがあるのも特徴。
(=店屋の白髭爺さんが黒人に銃を手渡す時・爆笑)
行きは楽しく能天気に車を走らせ、馬鹿カップル、お色気有りとお約束もバッチリです。

■面白さは・・・
深い森の中、携帯も圏外で外部との接触が経たれた状況により、閉鎖された空間を作り出しています。
懐かしい雰囲気も手伝ってまあまあの出来栄えですが、ラストに向かっては、もう少しテンポ良く煮詰まっても良かったかも。

■教訓
友達を疑い、我が身さえ良ければ、、となるその結末。
「人にした事は、我が身に返って来る」
登場人物、ほぼ全員に当てはまるのが恐ろしいです。

■■考察■■
有名俳優は出ていません。
5人の中では、ジェフ役のジョーイ・カーンが一番良かったかな。



クライシス・オブ・アメリカ (2004) 公開(2004)
The Mnchurian Candidate
★★★★
アメリカ 2時間10分
監督・脚本:ジョナサン・デミ
原作:リチャード・コンドン「影なき狙撃者」
出演:デンゼル・ワシントン、メリル・ストリープ、リーヴ・シュレイバー、ジョン・ヴォイト

オリジナルは、1962年製作の「影なき狙撃者」
今回は舞台設定を湾岸戦争と大統領選挙に焦点を当て、現代風にアレンジしています。
湾岸戦争下のクウェート。
米軍大尉ベン・マルコ(デンゼル・ワシントン)率いる小隊は、敵の急襲攻撃を受け撤退。部下2名を失い、残った者たちも皆一様に悪夢にうなされる後遺症に悩まされ、唯一レイモンド・ショー軍曹(リーヴ・シュレイバー)だけが名誉勲章を授与され政界へと進出します。
戦争、政界、情報操作、マインドコントロール等の内容を盛り込んだ社会派サスペンス・スリラーです。

■骨太のサスペンス、見応えある作品です。
映像などは至って平凡なのですが、物語の設定を上手く生かしており、
思わずぐいぐいと引き込まれ行くほどのスリリングな展開となっています。
俳優陣が優れていることは言うまでもありません。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
軍事産業の巨大企業が上院議員と結託し、マインドコントロールした息子を党の副大統領候補にかつぎ上げようとするもの。
お金と地位さえあれば、ホワイトハウスに洗脳された人物を送り込め、やがては世界を支配することも出来る・・・
ありそうで無さそうな、いや、実際はここまででは無いにしろ近いものがあるのでは、、と、冷や汗が出るほどに恐ろしい映画です。

真相の解明に乗り出すベン・マルコ。
その先々で出会う人たちに理解してもらえず門前払いされてしまったり。
どれがリアルで妄想なのか。
観ているこちらもマルコに同化してしまい、一緒になってハラハラしてしまいます。
特にラスト10分は、緊張感が高まります。
唯一、人間の心の片隅に残った良心が救いと思わせる、何とも苦々しいラストです。

■余計なお世話ですが・・・
兵士たちが洗脳されるシーン。
最新の医療機器を使い兵士たちを洗脳していきますが、何もこんなややこしい事をしなくとも、敵に似せた兵士たちに一芝居打ってもらえば良いのでは、、などと思ってみました。エヘ


■■考察■■
デンゼル・ワシントンの安定した演技。
銀縁の眼鏡が普通の兵士とは違う知的さをかもし出しています。

リーヴ・シュレイバー・・・
マザコン男を好演。
あの顔立ちは、ややマザコンを思わせるような甘えた雰囲気があるので、それも良かったのかも。

メリル・ストリープ・・・
演技の上手さゆえ、彼女の演じる盲信的・狂信的な母親役が真に迫っており、とても怖いです  (≧∇≦)



コーヒー&シガレッツ (2003) 公開(2005)
Coffee and Cigarettes
★★★☆
アメリカ 1時間37分
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ

コーヒーとタバコにまつわるエピソードを綴った11本の物語。
監督が1986年から18年かけて撮り集めて来たショートストーリーです。
タバコを燻らせながら、コーヒーをすすりながら、個性溢れる俳優、ミュージシャンたちが、とりとめのない会話を交わしゆるやかな時間が流れて行きます。

■どちらかと言うと、映画ファン向き。
理路整然としたストーリーではなく、何気ない会話のやりとりが主です。
場末のコーヒーショップでタバコをふかしながら過ごすリラックス・タイム。
その場の雰囲気と、さり気ない会話の妙を楽しむ映画です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!

■「STRANGE YO MEET YOU」 変な出会い  ★★★
  出演:ロベルト・ベニーニ、スティーヴン・ライト
歯科医院の予約を巡って、二人の予定が鮮やかに入れ替わるのがミソ。
若き日のベニーニ、せわしなさは今も昔も変わらず。笑
   
■「TWINS」 双子  ★★★
  出演:ジェイ・リー、サンキ・リー、ステーヴ・ブシェミ
実際も兄弟である二人。
そこにさりげに会話に乱入するブシェミの巧みさが可笑しい。

■「SOMEWHERE IN CALIFORNIA」 カリフォルニアのどこかで  ★★★
  出演:イギー・ポップ、トム・ウェイツ
コーヒーショップというよりバーといった雰囲気が漂う。
トム・ウェイツのツッコミ、それを受けるイギー・ポップ、二人のキャラの違いがかもし出すやり取りの妙。

■「THOSE THINGS'LL KILL YA」 それは命とり  ★★★
  出演:ジョー・リガーノ、ヴィニー・ヴェラ、ヴィニー・ヴェラJr
何処か家庭的な趣のあるカフェ。
イタリア系とおぼしき人たちと、二人に挟まれ会話に参加するちょっとこましゃくれた息子の会話の味わい。

■「RENEE」 ルネ  ★★★
  出演:ルネ・フレンチ、E・J・ロドリゲス
軽くランチも出来そうなカフェ。
少々こだわりがある女性とウェイターの二人のちぐはぐな会話が可笑しい。

■「NO PROBLEM」 問題なし  ★★★
  出演:アレックス・デスカス、イザック・デ・バンコレ
やや落ち着いた趣のある、ちょっと昔風カフェ。
久し振りに会った旧友ならではの会話です。

■「COUSINS」 いとこ同士  ★★★☆
  出演:ケイト・ブランシェット
ケイト・ブランシェットの一人二役です。
おっとした上品な女性とはすっぱな女性、演技はもちろんパーフェクト!!

■「JACK SHOWS MEG HITS TESLA COIL」  ★★☆
   ジャック、メグにテスラコイルを見せる
  出演:メグ・ホワイト、ジャック・ホワイト
夜はスナック、昼間はカフェ、といった雰囲気。
変てこな装置テスラコイルの登場、その結末がとてもシュール。

■「COUSINS?」 いとこ同士?  ★★★☆
  出演:アルフレッド・モリナ、スティーブ・クーガン
中二階のカフェ、二人だけの席。
二人の間に位置する大きな窓など上手い構図。
モリーナとクーガンの立場が微妙に変化して行くところが面白い。

■「DELIRUM」 幻覚  ★★★
  出演:GZA、RZA、ビル・マーレイ
二人の会話に闖入するビル・マーレイ演じるウェイター。
突拍子も無い彼の行動・発言に二人は同調しながらも唖然・・・

■「CHAMPAGNE」 シャンパン  ★★★★
  出演:ビル・ライス、テイラー・ミード
この話だけはカフェでは無く、古びた木の倉庫、工場の片隅です。
劇中に流れるマーラーの美しい旋律が映像と相乗して、二人の歩んで来た人生の重み、哀愁を感じます。


この中では、以下の順に気に入ってます。
1.「COUSINS?」 いとこ同士?
2.「CHAMPAGNE」 シャンパン
3.「COUSINS」 いとこ同士

特に、「COUSINS?」 いとこ同士? 
イギリス系であることを鼻に掛ける、売れっ子俳優のスティーブ・クーガン。
対する、イタリア系も少し入っているアルフレッド・モリナ。
(=劇中では、モリナの役は、明らかにクーガンより下っ端な俳優)
実際の立場と正反対の位置付けが、嫌味にならっておらず、
普段でもありがちな事だけに共感出来る内容です。
人懐っこそうな、瞳をキラキラさせて一生懸命話しかけるモリナが、何とも可愛らしく哀れ。
ラストで立場が逆転する二人の表情が可笑しい。


■■考察■■
長篇映画の撮影の合間に撮った、11本の短編集。
どの物語も、高級店では無く、仕事の合間にフラリ・・・と立ち寄るような、そんなカフェで撮影されています。
それだけに、普段着の彼らの表情、仕草、とてもリラックスした雰囲気が見て取れます。
タバコはともかく、コーヒーはどれもそれほど美味しそうには見えないのもツボ  (=^∇^=)



コーラス (2004) 公開(2005)
Les Choristes
★★★★
フランス 1時間37分
監督:クリストフ・バラティエ
製作:ジャック・ペラン
出演:ジェラール・ジュニョ、フランソワ・ベルレアン、ジャン=バティスト・モニエ、マクサンス・ペラン

1944年のフランス映画「春の凱歌」をモチーフにした作品です。
1949年、戦後間もないフランス。
問題児たちが集まる「池の底」と呼ばれる寄宿学校に赴任して来た音楽教師マチュー(ジェラール・ジュニョ)
彼は合唱団を結成、子供たちと歌を通じて心の交流をはかろうとするが・・・
音楽を通じて得ることの出来る感動、心温まるドラマです。

■全ての人に愛される、そんな映画です。
何処か懐かしささえ感じるような、オーソドックスなつくり。
ストレートで正攻法な作りですが、押し付けがましさは全く無く、むしろ、サラリとした味わいです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
親から見離されたり、両親が戦争で死んでしまったり、そんな事情のある子供たちが収容されている寄宿舎。
合唱という音楽を通じて、音楽の素晴しさ、自ら声を発し歌う事の楽しさを感じます。
子供たちの荒んだ心も次第に落ち着き、温かい心で満たされて行きます。

■変わらぬ心、理解してやれない心
中盤で新たな問題児を引き受けますが、遂に彼は心を解放することなく学校を去って行きます。
彼の心を理解してやれなかった周囲の大人にも問題がありますが、彼一人の存在で学園の秩序が乱れて行くのもまた事実。
周囲の理解不足とその人間の性質によって、その後の行く先が予感出来る、何ともやり切れないものがあります。

■その他
□ラストで、マチューを見送れない子供たちが窓から紙飛行機を飛ばして、それぞれの想いを伝えます。
が、先生は、幾つかを拾っただけで、そのままバスに乗ってしまう。
・・・先生、全部を拾ってカバンに詰めて行って下さい  (=^∇^=)
□寄宿舎の子供たちは問題児という設定、特に、ピエール(ジャン=バティスト・モニエ)は悪魔と呼ばれるほどですが、彼もその他の子もそれほど問題児には見えない。
途中から出現する問題児が際立つので、それぐらいが良いのかも知れませんが。


■■考察■■
ジェラール・ジュニョ・・・
「バティニョールおじさん」同様、普通のおじさんながら、どこか芯が通っていて、それでいてほのぼのとしたのほほんさが好印象♪

劇中で合唱しているのは、サン・マルク少年少女合唱団。
ソリストを務めているのは、実際にも合唱団でソリストをしているジャン=バティスト・モニエ。
彼の透き通った美しい声は、まさに「天使の歌声」

ペピノ演じるマクサンス・ペラン。
ジャック・ペランの息子で本作がデビュー作となります。
その愛くるしい顔、特に
教壇にちょこんと座った姿がとても可愛いです♪



恋に落ちる確率 (2004) 公開(2004)
Reconstruction
★★★★
デンマーク
監督・脚本:クリストファー・ポー
出演:ニコライ・リー・カース、マリア・ボネヴィー、クリスター・ヘンリクソン

デンマーク、コペンハーゲン。
カメラマンのアレックス(ニコライ・リー・カース)
彼は、ガールフレンドが居るにもかかわらず、偶然駅で出会った女性に一目惚れし一瞬にして心を奪われてしまう・・・
愛の迷宮に入り込んでしまった男の恋の行方を追うラブ・ロマンス映画です。
2003年カンヌ国際映画祭カメラドール受賞作品  

■コペンハーゲンのどこか幻想的な街並みとざらついたタッチの映像が融合して、映画全体が不思議な雰囲気に包まれています。
男と女の恋愛の核心を付いた、大人の為のラブ・ストーリーです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
アイメの夫(アウグストクリスター・ヘンリクソン)がストーリーテラーとなって進行します。
物語の中で彼は妻をこよなく愛する夫として登場しますが、それとは別にあくまでこの映画の作者のように、映画を外から見守るのです。
時間軸を解体し再構築された演出は、現実と非現実の境を曖昧にします。
過去と現在が微妙に入り混じり、不思議な世界を作り出しています。

■深く追求すると・・・
アレックスはアイメ(マリア・ボネヴィー)を一目見て恋に落ち、アイメの方は不在がちの夫からの寂しさから逃れるように惹かれて行きます。
しかし、待ち合わせの時間のちょっとしたタイミングのズレから二人の心はすれ違って行きます。
アイメが去り、アレックスが後を追いかけるけれど、一度壊れたものは元に戻りません。
アレックスが遅れたのは元の彼女シモーヌとの会話が長引いたから。
男の愛は、突発的で何処か無計画で夢見がち。
対して、女の愛は、愛し愛されたいという気持から全てが出発する・・・
(=これはこの映画に関しての恋愛論です)
映画全体で捉えると、極めて概念的な映画です。
冒頭とラストに流れる「night & day」も印象的。


■■考察■■
ガールフレンドと運命の女性はマリア・ボネヴィーの一人二役です。
似ているようで全く違う雰囲気の女性を見事に演じています。



恍惚 (2004) 公開(2004)
Nathalie...
★★★★
フランス 1時間45分
監督:脚本:アンヌ:フォンティーヌ
出演:ファニー・アルダン、エマニュエル・ベアール、ジェラール・ドパルデュー、ウラジミール・ヨルダノフ

ブルジョワ夫婦の妻カトリーヌ(ファニー・アルダン)は、夫ベルナール(ジェラール・ドパルデュー)の浮気を知りショックを受け、ある計画を立てます。
娼婦マルレーヌ(エマニュエル・ベアール)に報酬を払い「ナタリー」という偽名を与え、夫を誘惑させ、その秘め事の詳細を一部始終語って貰う契約を結ぶのですが・・・

■宣伝ではエマニュエル・ベアールの官能さ、魔性の女・・・等で話題を呼んでいますが、この映画からはそれ以上のもっと知的な部分が見えます。
熟年夫婦、特に既婚女性には頷ける部分が大なのではないでしょうか。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
最初はマルレーネの過激な告白に、嫌悪感と好奇心が入り混じった複雑な気持を感じるカトリーヌ。
しかし次第にその気持は、マルレーヌに対する羨望にも似た感情と、彼女と同和したい気持に変化して行きます。

セックスシーンは出てこず、「語り」のみで官能さを表現するこの巧みな演出。
特に、「ナタリー」という虚構の女がどんどん二人を振り回す形になって行くのが可笑しい。

それにしても男の不甲斐無さよ・・・
二人の女が右往左往しているのに、全く気がつかない男。
何処に行っても男の鈍感さは世界共通か。

■ラストは・・・
種は途中で推測出来てしまいますが、それにしても見事などんでん返しです。
普通なら陳腐な結末で終わる恐れもあるのに、ベアールとアルダンの見事な演技も一役買って、驚きのラストとなっています。
ラスト、妻カトリーヌと夫ベルナールが寄り添って歩く姿が何とも微笑ましい。


■■考察■■
エマニュエル・ベアール・・・
やや節目がちな目元、口元、そして、クネクネと妖艶に踊る姿に、男も女も目が釘付けデス♪

ファニー・アルダン・・・
最初は良き妻、キャリア女性という頑なさから、ベアールと知り合ってから徐々に変化して行くさま。
アルダンの嫉妬と羨望の入り混じった顔に注目っ!!



コンスタンティン (2004) 公開(2005)
Constantine
★★★
アメリカ 2時間1分
監督:フランシス・ローレンス
出演:キアヌ・リーブスレイチェル・ワイズシア・ラブーフティルダ・スウィントンピーター・ストーメア

アメリカン・コミック「ヘルブレイザー」の映画化です。
天国と地獄のバランスが保たれた現世に侵入を企むサタンの息子マモン。
悪魔たちに立向かうエクソシスト(=悪魔祓い師)の活躍を描きます。
オカルト・アクション映画。

■「エクソシスト」のアクション版のような趣き。
また、全編を通じて、反喫煙、禁煙キャンペーンを展開しているようにも思えます。笑
オカルトやCGを駆使した映像、キアヌ・リーブスのファンなど、ノレる人には堪らなく面白い映画。
「ロンギヌスの槍」だのルシファー、サタン等、聖書の世界観を描いている為、最小限の知識があった方が面白さも倍増するかもです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
タバコの吸い過ぎによる肺がんで余命1年と宣告されてしまうコンスタンティン(キアヌ・リーブス)
以前自殺したことによって既に地獄行きが決定していることも加えて、何とかして天国に行こうと悪魔退治に精を出します。
その孤軍奮闘する姿が今までにないヒーロー像でとても新鮮。
地獄の業火で焼かれる灼熱の映像も見所あります。

■終盤で・・・
サタンがコンスタンティンを天国に行くのを阻止する為、無理矢理に現世に蘇生させます。
サタンがいきなりコンスタンティンの体の中にズボッと手を入れ、臓物らしきものを取り出したので、思わず「蘇生の代償に臓物を持っていかれたか!!」などと思いましたが、あれは、肺がんの悪い部分だったのね・・・真っ黒の塊だったし。エヘ


■■考察■■
キアヌ・リーブス。
青白い端正な顔立ちが、エクソシストに意外とハマっています。
容赦なくドンパチと悪魔を退治して行くクールさがとってもカッコイイ。
タバコを吸う仕草も堪らなく素敵♪

ピーター・ストーメアのサタン・・・
妙に生臭さが感じられてサタンらしさがあるような、ないような、何やら不思議な雰囲気  (=^∇^=)



サイドウェイ (2004) 公開(2005)
Sideways
★★★★
アメリカ 2時間10分
監督:アレクサンダー・ペイン
原作:レックス・ピケット
出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ、ヴァージニア・マドセン

バツイチの冴えない国語教師マイルス(ポール・ジアマッティ)と、1週間後に結婚を控えた親友ジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)
結婚を目前に控えたジャックの為に、前祝と称して、二人はカリフォルニアのワイナリーを廻る旅に出掛けます。
可笑しくもちょっぴり切ない珍道中を描いたロード・ムービーです。
2004年、アカデミー賞脚本賞受賞、
その他、多数の賞を受賞しています。

■何処にでも居そうな人たちのありふれたお話ですが、何故か心に染み渡る、、そんな映画です。
ワインという美しくも味わい深い食材を通じて、人生の楽しさや喜び、失望などを描いた作品です。
観た後に激しくワインを飲みたくなるのも特徴  (*^∇^*)

■■ネタバレです■■  核心に触れてます。ご注意!
学生時代からの友だち二人が旅に出て、すったもんだしつつも自分自身を見つめ直して行きます。
Sideways・・・、まさに「人生の寄り道」を描いた物語です。

ジャックは、最後の悪あがきとも言える独身最後の気ままな時間を女性と楽しもうとし、
マイルスは、別れた妻への未練を断ち切れず、また、新しい出会いがあるにも関わらず自信の無さから今一歩踏み出せないでいます。
どちらも人生の折り返し地点まで来た40過ぎの男二人。
「もう後戻り出来ないところまで来た」
「いや、これからがまだまだ人生の始まりだ」
そんなことを思ってじたばたしたりもがいてみたり。
しかし、そんな二人もこの旅を通して、自分の納まるべき所に戻って行きます。
ジャックは婚約者の元へ、マイルスは新しい出会いの彼女マヤ(ヴァージニア・マドセン)の元へ。
人生の寄り道をして、自分自身を見つめ直す、そんなきっかけを作った旅なのです。

二人の心境は、きっと誰にも大なり小なりあるはず。
そんなところに共感出来、自分自身と重ねられる魅力があるのです。

■ワインのうんちくを語るくだり
「人生」とは、ワイン作りの過程と重なることに気付きます。
ワインとは、味わい深さと共に奥の深いものなのですね・・・

■■考察■■
対照的な中年独身男性二人。
この取り合わせが妙にしっくり来ます。
トーマス・ヘイデン・チャーチは・・・
何処と無くシュワに似ている気がします  (=^∇^=)



ジャッカス・ザ・ムービー<日本特別版> (2002) 公開(2003)
Jackass the Movie
★★★
アメリカ 1時間28分
監督・製作:ジェフ・トレメイン
製作:スパイク・ジョーンズ、ジョニー・ノックスヴィル
出演:スティーヴォー・クリス・ボンティアス

全米でCS放送史上最高視聴率を記録した人気TV番組の映画版です。
但し、その中身は、ひたすらお馬鹿で、危険で、お下品で、無謀な挑戦のオンパレード。
自らの肉体の限界に挑む彼らの姿を追ったお馬鹿ドキュメンタリーです。
尚、今回の<日本特別版>は、一部の編集を行ったものです。
R−18指定。

■あまりのお馬鹿さに唖然・・・
しかし、意味の無い無謀な挑戦を繰り返す彼らを見ていると、たまらなく愛おしく可愛く見えるのです。

■■ネタバレです■■
放映のハード・パフォーマンスを真似する視聴者が続出し、大怪我する者が多数出る事態に。
社会的にも大問題となった番組です。
パンツに生肉を挟んでぶら下げて多数生息しているワニの上を綱渡りして食いつかせたり、家具のショールームの展示用便器に座ってウンチをしたり・・・
その数々のお馬鹿ショートを繋ぎ合わせたものです。

■自分的には・・・
人の善意や好意を踏み台にするパフォーマンスはどうかと思いますが、その他、自分で好き勝手にやっている分には自己責任ですから好きにして下さいと言う感じです。笑
一番見せ場として良かったのは、最初のカートで突っ込む部分とラストです。
あとは、バムの両親へのいたずらなどが悪ふざけにしては笑えたかも。



■■考察■■
皆さんスタントマンですが、ガタイの良いのは職業柄としても意外とイケメンが多いのに驚き。



スーパーサイズ・ミー (2004) 公開(2004)
Super Size Me
★★★☆
アメリカ 1時間38分
監督・脚本・製作・出演:モーガン・スパーロック

「毎日1日3食1ヶ月間ファーストフードを食べ続けると人間の体はどうなるか」という疑問を抱いたモーガン・スパーロック監督が、自らの体を使って検証したドキュメンタリー映画です。
2004年1月のサンダンス映画祭のドキュメタリー部門で評判となった異色の作品です。

■ドキュメンタリーながらアニメや音楽を上手く使った演出方法は、マイケル・ムーア監督の一連のドキュメンタリーと通じるところがあります。
何処かユーモアさえ感じさせる演出は、1時間38分の間飽きさせず楽しめる内容になっています(=内容はよくよく考えると恐ろしいですが)

■■ネタバレです■■
単なる企業批判(=マクドナルド)に受け止められそうですが、いろいろな要素を含んでいます。
「極端に偏った食生活は、果たして身体にどのような影響を及ぼすのか」
「企業戦略による子供への食生活の懸念」
「ファーストフードに依存する社会構造」
監督自らが命を張ってまで挑んだ実験なので、説得力があります。

■■考察■■
モーガン・スパーロック監督、日が経つに連れ顔色が悪くなり、苦悶の表情浮かべる姿は観ている方も辛くなって来ます。
最初は物珍しさで観ていたのが、最後の何日かに至っては「もうヤメテー!」状態に・・・
悲壮感漂う監督、その心意気と気合には凄いものを感じます。
この映画で一発屋で終わらず是非とも頑張って欲しいものです。



ステップフォード・ワイフ (2004) 公開(2005)
The Stepford Wives
★★★
アメリカ 1時間33分
監督:フランク・オズ
原作:アイラ・レヴィン
出演:ニコール・キッドマン、マシュー・ブロデリック、ベッド・ミドラー、グレン・ローズ、クリストファー・ウォーケン、フェイス・ヒル

原作は、作家アイラ・レヴィン(=「ローズマリーの赤ちゃん」など)
1975年に公開された「ステップフォードの妻たち」のリメイク作品です。
オリジナルは、サスペンス・スリラー色が強いらしいですが、
本作品は、サスペンスはもちろんのこと、ポップで明るく、さらにブラック・コメディが際立った映画となっています。

ジョアンナ(ニコール・キッドマン)は、ネットワークTV、EBSの敏腕プロデューサー。
しかし、ある事件で責任をとらされ辞職に追い込まれてしまいます。
心機一転、一家はコネティカット州のステップフォードに移り住むことにしたのですが・・・

■サスペンスでありながら、明るくゴージャスで華やかな雰囲気。
美しい花々に囲まれたお屋敷やお庭、女性たちの60年代ファッション。
そして、何と言ってもニコール・キッドマン。
ブラック・テイストもビシビシ効いた異次元世界への誘いです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
この映画のテーマは、ジョアンナが最後に言った言葉<愛は完璧ではない>です。
男女の理想は何時まで立っても平行線だけれど、それを補い理解しながら愛を育んで行く・・・
お互いのギャップを埋めながら愛は成長して行くのです。

失ったものを取り繕うとした結果、「歪んだ愛」になってしまった、
愛を失った人間が次に出る行動には、愛と悲しみが見て取れます。

何もかも完璧で美しく整っている街並み、何時も穏やかでニコニコ微笑む女性たち、でも何処か違和感を感じる・・・
「トゥールマン・ショー」にも似た感触です。
本作では、一層華やかに美しく少女趣味に、そして
ブラックテイストを感じさせる作品です。
風刺はビシバシと効いてはいるのですが
脚本次第ではもっと深く心に訴える作品になったような気がします。
観終わった後は意外とライトな感じです。

■ちょっと毒舌
しかし、男というのはああいうのが理想なのですかね。
観ている途中で頭が爆発しそうになりましたよ・・・ふっ
まあ、ラストは途中で予想が付くものの、気分爽快スッキリであります。
男の子供じみた幻想と現代を生きる女性とのギャップ・・・
ある意味、悲しい大人も寓話なのかも。


■■考察■■
ニコールキッドマン・・・
髪はブラック・ショートのクールなキャリアウーマン、そして、60年代風の花柄ドレスのお嬢様スタイルと二通りの女を演じます。
どちらの彼女もとっても美しく魅力的で可愛いのです (*^∇^*)
マシュー・ブロデリック・・・
シャツから見える太い腕、丸い頬、少し太ったようです。
クリストファー・ウォーケン、今回は謎めいたダンディーな男でなかなか素敵かも。



セルラー (2004) 公開(2005)
Cellular
★★★☆
アメリカ 1時間35分
監督:デヴィッド・R・エリス
原案:ラリー・コーエン
出演:キム・ベイシンガー、クリス・エヴァンスウィリアム・H・メイシー、ジェイソン・ステイサム

突然、見知らぬ男たちに拉致され監禁された生物教師のジェシカ(キム・ベイシンガー)
彼女は部屋にある壊れた電話のワイヤーを繋ぎ合わせ、偶然に携帯へと繋がった見知らぬ男性ライアン(クリス・エヴァンス)に救いを求めますが・・・
原案は、「フォーン・ブース」のラリー・コーエン。
前作は公衆電話のみの固定された空間、今回は密室の壊れた電話と外の携帯へと舞台もぐんと広がりをみせています。
手に汗握るサスペンス・アクションです。

■サクサクと小気味良いスピーディな展開。
手堅くまとめられ、ほど良い緊張感が楽しめるアクション映画です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
密室に監禁された女性の恐怖、そして、彼女の為に奔走し事件への解決と導く男性。
二つの出来事が、電話を媒介にして繋がり、そして同時進行して行きます。
どちらにも共通するのは「汗だくだくの緊張感」
また、二人を繋げる電話も、片や壊れた電話のワイヤーで繋ぎ合わせた電話、片や電波状態によって切れたり繋がったりする携帯電話。
その不安定さがますますこの映画に緊張感を与えています。
文明の利器ともいえる電話を最大限に生かし、また、そこが弱点になるという、これは面白い着眼点です。

■ツッコミたいけれど・・・
ライアンの行動には??と思う部分も多々ありますが、この際そんなことはどうでも良くなるこの痛快さ。
ジェシカの夫の秘密は、自分は、最初は麻薬の密輸に関する(=または横流し)かと思っていたのですが全くの的外れでした  (=^∇^=)エヘヘ


■■考察■■
キャスティングがそれぞれ上手くハマっています。
ウィリアム・H・メイシー・・・
とぼけたのほほんさ、何処か頼りなさげだけれど最後にはきっちり決めてくれる頼もしいオジ♪
ジェイソン・ステイサム・・・
革ジャンにコワモテ顔、切れっぷりは相変わらず
キム・ベイシンガー・・・
痩せ体質の為、少々老けた印象が。角度によっては、研ナオコに見えたり(=ファンの方スイマセン) 



ソン・フレール 兄との約束 (2003) 公開(2005)
Son frere
★★★★☆
フランス 1時間30分
監督:パトリス・シェロー
出演:ブリュノ・トデスキーニ、エリック・カラヴァカ、カトリーヌ・フェラン

長い間疎遠だった兄トマ(ブリュノ・トデスキーニ)と弟リュック(エリック・カラヴァカ)
不治の病に侵された兄の難病が再発し、兄は弟を訪ねて付き添いを頼みますが・・・
人間の「生」と「死」を静かに見つめた尊厳なる映画です。
2003年、第53回ベルリン国際映画祭、銀熊賞(監督賞)受賞作品

■物語全体は静かな印象なのですが、その奥底に流れるものは非常に厳しいものがあります。
観た後は、しばらく一人になりたい、そんな気になります。

■■ネタバレです■■ 
不治の病に侵され死期が近づいている兄と、その兄を看病する弟。
死に行く者と、見送り残される者の関係がそこにはあります。
兄の身体が衰弱しゆっくりと死が迫り行くにつれて、冷やかだった二人の関係も少しずつ変化して行きます。
皮肉なことに、兄の命が刻々と削れらて行くに従って、弟の気持ちも以前のような兄を慕う気持ちを取り戻して行きます。

一見すると静かで穏やかな海も、時には人の命を奪ってしまうほどの激しさと荒々しさを持ち合わせています。
この映画もまた然り。
静かな物語の中には、厳しい人間の「生」と「死」が描かれています。
人間は海から生まれ、海に帰って行く・・・
この映画では海辺で会話したり散歩するシーンが多々出て来ますが、海には何か人間の「生」や「死」を感じさせるものが有ります。
何気ない会話や表情に意図するものが含まれており、
特に、顔の表情、言葉以上に、視線で全てを物語っています。
観る物を黙らせてしまうほどの余韻を残すラストシーンです。


■■考察■■
兄役のブリュノ・トデスキーニ・・・
この映画の為に12キロ減量したそうで、その痩せ細った身体は観ている方も辛くなって来るほどです。
まさに死に瀕する者。
ナースに全身の毛を剃られるシーンがありますが、それはまるで赤ん坊のようにされるがままで、何とも生々しくリアル。
生まれて来る時も死に導かれて行く時もベッドの上では皆同じ・・・そんなことを考えてしまいます。



ダブリン上等! (2003) 公開(2005)
Intermission
★★★☆
イギリス・アイルランド 1時間42分
監督:ジョン・クローリー
出演・コリン・ファレル、キリアン・マーフィケリー・マクドナルドシャーリー・ヘンダーソン

アイルランドの首都ダブリン。
血の気の多いチンピラ、恋人とよりを戻したい男、モテない男
男性不信から口ひげを生やす女、横転事故を起こしたバス運転手
正義感溢れるアブナイ刑事、アメリカかぶれの店長などなど・・・
普通だけれどちょっと可笑しな人たち。
その若者たちを中心に、彼らと、そして、彼らと関わりのある人々の日々を描いた群像劇です。

■ブラックテイストの効いた群像劇です。
かなりの人数が登場しますが、話が煩雑になることなく、
それぞれの登場人物が、そのストーリーが、上手く進行し絡み合って行きます。
かなり個性的な群像劇なので、好き嫌いが分かれるかも知れません。

■■ネタバレです■■ 
小さな町に住む普通の人たち。
それぞれが抱える悩みも問題もよくあるような平凡な内容。
ただただ流れる退屈な日々・・・
そんな毎日が、ちょっとしたことで変わったりする。
それが人生の好機になったり、はたまた悪い前触れだったり。

「居そうで居ない」「ありがちだけれどそうは無い」
普通だけ何処かミョーな人たち。
そんな人たちのささやかな人生を垣間見る、そんな映画です。
クスリ・・・と笑えるシーンもあれば、呆気のとられるお馬鹿さ有り。
設定やストーリー、間合いの取り方から感じられる「微妙さ」がテンポ良い展開に上手く乗っています。
ラストは、笑えるような、そうでないような、泣き笑いにも似た「幸せ」があります。


■■考察■■
コリン・ファレル・・・
すぐキレる田舎町のチンピラを好演
ダメ人間っぷりさがハマッています。

邦題の「ダブリン上等!」の「上等!」がまさしくこの映画にピッタリ
たまらなくイイネーミングだ  (=^∇^=)



ナショナル・トレジャー (2004) 公開(2005)
National Treasure
★★★
アメリカ 2時間11分
監督・製作:ジョン・タートループ
製作:ジェリー・ブラッカイマー
出演:ニコラス・ケイジハーヴェイ・カイテルジョン・ヴォイトダイアン・クルーガーショーン・ビーンジャスティン・バーサクリストファー・プラマー

英国からの干渉を避け、フリーメイソンによって守られて来たテンプル騎士団の「伝説の秘宝」
アメリカ建国時に封印されその後行方知れずになった秘宝。
その秘宝の秘密の謎を受け継ぐ一族の末裔ベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)
彼は、「アメリカ合衆国独立宣言書」の中に隠された秘宝の謎を解き、行方を追おうとしますが・・・
ベン・ゲイツ、FBI、財宝を狙う窃盗団との三つ巴の争奪戦が繰り広げられるアドベンチャー・アクション映画です。

■ジェリー・ブラッカイマー製作&ニコラス・ケイジ主演ですが、大仰な冒険活劇では無く、こじんまりとまとまった作品です。
ほどほどのアクションにミステリー。
ツッコミも激しく多いのですが、それはご愛嬌と思えば良し♪

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
秘密結社フリーメイソンや1ドル紙幣など、実在するものが題材となってキーワードになっています。
また、国立公文書館、リンカーン記念堂、ワシントン記念塔など数々のアメリカの由緒ある建造物が登場するのも特徴です。

■斜に構えて見ると・・・
アメリカのルーツを辿るような数々の建造物。
発見したお宝を他国の博物館に返す太っ腹。
それほど冷酷でない悪人たち、ラストのチャンチャンとした上手い収拾の付け方などなど。
如何にもディズニー映画らしい、優等生的な映画です。

■ツッコミ満載!!
□最初の船から始まる一連の謎解き。
ただの会話だけで、短時間にするすると謎が解けていく安易さよ。
□船で見つけたパイプが宝の部屋に続く扉の鍵となる、このストレートさ。
□独立宣言書に、レモン汁を垂らし、ドライヤーの熱風を当てる大胆さ。
□お宝部屋に火を灯すシーン。
あんなに大量の火が地下に灯ると、酸欠状態になったり、お宝が熱気で損傷しないかと心配になったり。
□ベン・ゲイツ、当初の目的は、独立宣言書を窃盗団から守る為だったのが、何時の間にか単なるお宝探しになっている・・・


■■考察■■
ニコラス・ケイジ、何時ものような大袈裟で無いほどほどの演技。
それにしても、この人は、ある時期から全く歳を取ってない風貌。
・・・と言うより、老け顔だからか。
刀のように背中にしょった図面入れの筒+カジュアルルック+逃げ回り奔走する姿・・・が合っているような、そうでないような、少々違和感有り。

ハーヴェイ・カイテル、毒気の抜けた捜査官で人の良いオヤジ風。
以前のようなガツガツした熱気、ねっとりさは今回は無し。
「ひょっとして何か企んでいる?」と思うけれど、特に企みも無くそのまま。

ショーン・ビーン、この映画一番の悪役ですが、それほど「悪人」とは感じられず。
意外と子供好きそうな面もあり、根っからの悪人では無いのかも。
時折り見せる微笑んだような表情(=そう見える・笑)に、「お!実は改心した?」などと思わせてくれます。



ネバーランド (2004) 公開(2005)
Finding Neverland
★★★★
アメリカ・イギリス 1時間40分
監督:、アーク・フォスター
原作:アラン・ニー
出演:ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレット、ジュリー・クリスティー、ダスティ・ホフマン

ジェームズ・マシュー・バリ原作の「ピーター・パン」
永遠の名作である「ピーター・パン」の誕生の秘話を描いた感動のドラマです。
原作アラン・ニーの戯曲を元にして映画用に脚色された作品です。

1903年、ロンドン。
スランプ気味の劇作家のジェームズ・バリ(ジョニー・デップ)は、公園でシルヴィア(ケイト・ウィンスレット)と4人の息子たちに出会い、交流が始まりますが・・・

■ハリウッド映画特有の感動の押し付けがましさが無いのが良いです。
過剰な演出、演技等が無く、あくまで自然体(=に見える)
静かな、心にそっと忍び寄る感動作品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
物語は、劇作家ジェームズ・バリと父を亡くし心を閉ざした少年(フレディ・ハイモア)との心の交流を主に描いていますが、
虚構の物語の先に見えてくるもの、それは、
<自らがそこに行き真実を見つけること><お互いを受け入れ信じあうことの大切さ>
映画やお芝居は虚構の世界だけれど、人々はその素晴しい作品に触れることによって、また、生きる力を得ることが出来るのです。

■ラストシーンを・・・
チラシ、予告編に登場するシーンが、実はラストシーン。
こういったのは珍しいのでは?
意外性のあるラストシーン、実は一番感動出来るシーンかも知れません。


■■考察■■
ケイト・ウィンスレット、適度なやつれ具合が良し。
ジョニー・デップは、今までの演技力に新たな新境地を開き、さらに魅力アーップ♪



ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ (2005) 公開(2005)
Hide and Seek
★★★
アメリカ 1時間42分
監督:ジョン・ボルソン
出演:ロバート・デ・ニーロ、ダコタ・ファニング、ファムケ・ヤンセン、エリザベス・シュー、エイミー・アーヴィングディラン・ベイカー

突然の母の死によってトラウマを負った少女エミリー(ダコタ・ファニング)
心理学者の父デビッド(ロバート・デ・ニーロ)は、娘の心を癒す為にニューヨーク郊外の静かな町へと引越ししますが、エミリーは、「チャーリー」という見えない友達と遊ぶようになる・・・
少女がつくり上げた空想の友達とは?
空想の友達が引き起こす恐怖を描いたサスペンス・スリラーです。
※ハイド・アンド・シークとは「かくれんぼ」という意味

■それなりに怖さはあるものの、サスペンスとしてもホラーとしても普通の出来栄え。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
この手の映画としては、ありふれた作りです。
娘を守る父が実は二重人格で、温厚な父と凶悪なチャーリーと二つの顔を持ち合わせていた・・・
捻りがなさ過ぎと思えるくらいのストレートさ。
湖畔近くに立つお屋敷が舞台となっており、二人が住むにしては広過ぎる空間を上手く利用しています。
演出、撮影、主役の二人の演技の上手さなど、好条件は揃っているのに、何故か平凡な出来栄えです。
「シックス・センス」「シャイニング」「ホワット・ライズ・ビニース」を足して割ったような感じも有ります。

■ラストは二通り
二通り、別々で公開されています。
メインとなるラストは、キャサリン(ファムケ・ヤンセン)に引き取られ幸せに暮らすエミリー。学校へ行く為、二人は家を出るが、机に残されたエミリーの絵には、自分の顔が二つある(=一連の事件により二重人格になったと予感させる終わり方)
アナザーバージョンでは、エミリーとキャサリンは部屋でお話している。
やがて、キャサリンは部屋を出るが、実は、そこは病院だった。
(=一連の事件によりエミリーは精神に異常をきたし入院している)
メインのラストの方があたりは柔らかそうな気がします。

■ロバート・デ・ニーロに関して
熟練した上手さがある大物俳優ですが、欲を言えば、チャーリーになった時、もっと強烈に醜悪さを出して欲しいです。
優しい父とあまり変わらないので、メリハリが無い。
・・・ま、二人があまり違わないようにわざとしているのかも知れませんが。


■■考察■■
ダコタ・ファニングの存在で作品が成り立つほどの上手さ。
うつろな表情や、宙をさまよう視線、目の下のくまなどがさらなる不気味さをかもし出しています。



ハウス・オブ・ザ・デッド (2003) 公開(2004)
House of the Dead
★★
アメリカ、ドイツ、カナダ 1時間30分
監督:ウーヴェ・ボル
出演:ジョナサン・チェリー、タイロン・レイツォクリント・ハワード、ユルゲン・プロフノウ

1997年に登場し大ヒットした同名のシューティング・アクション・ゲームの映画化です。
“イスラ・デル・ムエルテ(死の島)”と呼ばれ恐れられている孤島。
島で開催されたパーティに参加した若者たちを襲う恐怖の一夜を描きます。サバイバル・アクション・ホラー(=ゾンビ)映画。

■平凡な出来栄えのゾンビ映画。
ゲームテイストをふんだんに取り入れた絵の撮り方は、まさに自分が銃を乱射しているような気分になります。
随処にゲームの画像を挿入しているのも特徴。
このゲームをしたことがある人ならばそれなりに楽しめるのかも知れません。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
ホラーの定石をきちんと踏んだ映画です。
が、あまりにも平凡すぎて魅力が無いのも事実。
音響で怖がらせたり、もう少し斬新さが欲しいところ。

馬鹿カップルが襲われたり、やたら胸をポロリと出したり、女性は何故か全員薄着でへそ出しルックと、ホラー映画のお約束事もキッチリ押さえてあります。
この映画は何故かやたらと爆発シーンが多く、爆風で吹き飛ばされるスタイルもキレイ過ぎるほどの模範演技。
銃を撃つ決めポーズもカメラが360度回り込みゲーム的です。

■何故イマイチなのか・・・
この映画のゾンビはとてつもなく速く、森の中をさながら野猿のように走り回ります。
ゾンビメイクも凡庸で、身体の部分では顔だけがゾンビ化している感じ。
ねっとりした不快感や、嫌らしさも薄い。
ゾンビも数多く出て来ますが、機械的に打ちまくっているだけなので、演出にもう一工夫欲しいところです。

■もうひとふんばり・・・
ゾンビたちを支配している元神父。
それなりの過去がある割にはおどろおどろしさに欠ける。
実験室で、ゾンビを再生する血液の水槽が破裂した時も、せっか血液が飛び散ったのに生かされていない。、部屋にある頭部の剥製やミイラ化したモノに降り掛かり一斉にゾンビ化すればもっと面白くなるだろうに。


■■考察■■
映画自体がトホホ・・・だったので、唯一の収穫は、漁船の船長役で出ているユルゲン・プロフノウかも。
襲いかかるゾンビの群れに悠然と立向かい、顔色1つ変えずに銃を撃つ姿が堪らなくカッコイイです。
最初から最後まで渋くキメてくれました♪



 バッド・エデュケーション (2004) 公開(2005)
La Mala educacion
★★★☆
スペイン 1時間45分
監督・製作・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、フェレ・マルチネス、ハビエル・カマラ、レオノル・ワトリング

1980年、スペインのマドリード。
若くして映画監督として成功したエンリケ(フェレ・マルチネス)の元に寄宿学校時代の友人イグナシオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)が16年ぶりに尋ねて来て・・・
アルモドバル監督の少年時代の体験がベースになっているらしく、私小説的な趣も感じられる、半自伝的な作品です。
スリリングなサスペンス・ミステリー。R−15指定。

■ホモセクシュアリティが全面に出た映画です。
男性同士の濃厚で深い愛。
嫌らしさは感じられず、むしろ哀しささえ感じさせる、ある意味、美しい作品。
この世界にハマれる人には最高、ゲイに嫌悪感を感じる人は引くかも・・・
官能的な雰囲気が感じられる極彩色の美術セットも見所ありです。
(=特にオープニングがそそります)
回想シーンや劇中劇による展開ですが、分かりずらいという事は無く、すんなりと入っていけます。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
聖職者による少年への性的虐待、同性愛、女装、殺人・・・
衝撃的な内容がてんこ盛りです。
その中に渦巻く、裏切り、倒錯した愛、抑え切れない愛、欲望など、壮絶な愛が作品全体から感じ取れます。

■何故アンヘルは、執拗に主人公を演じたかったのか
しがない俳優から一気にトップスターになりたいという欲望と、兄への謝罪、もしかしたら、兄を演じることで、兄と同化したかったのかも知れません。

■前作と比べるのはヤボですが・・・
前作「トーク・トゥ・ハー」ほどの余韻は感じられず
ショッキングな内容ながら、意外と後に残らない。


■■考察■■
ガエル・ガルシア・ベルナルの一人三役が凄い!!!
イグナシオ、アンへル、サハラ・・・
特に大人になったイグナシオは、細面で華奢に見える姿に、パッと見は分からないほどの変貌ぶり。
そして、サハラのベッド・シーンは、まさに女性以上の女性。
愛する人への想いが強く愛らしく感じられます。
特に、コトを致す時の顔の表情が上手いです  (=^∇^=)
そして、、アンへルの白のブリーフ姿!!
全世界の女性の目はそこに釘付けになっていることでしょう・・・うふ♪



巴里<パリ>恋愛協奏曲<コンチェルト> (2003) 公開(2004)
Pas sur la Bouche
★★★☆
フランス 1時間55分
監督:アラン・レネ
出演:オドレイ・トトゥ、サビーヌ・アゼマピエール・アルディティ

1925年にパリで初演されロングランとなったオペレッタの映画化です。
それぞれの恋模様を軽妙なタッチで描く、ミュージカル仕立てのラブ・コメディです。
1925年のパリ。
実業家のジョルジュ(ピエール・アルディティ)と結婚して優雅な生活を送っているジルベルト(サビーヌ・アゼマ)
しかし、彼女には夫に内緒の秘密があって・・・
セザール賞において主要9部門にノミネート(=助演男優・衣装デザイン・音響の3部門を受賞)された作品です。

■オペラよりも軽く、気軽に楽しめる映画です。
ただちょっと騒がしい場面が続くので少々疲れるかもです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
男女5人の恋の駆引き。
それぞれが一方的に想っている恋の行方も、最後にはチャンチャンと上手く収まりハッピーエンドになる楽しい映画です。
20〜30年代の雰囲気を堪能出来る華麗にして豪華な衣装の数々、洒落た内装のお屋敷などなど・・・
ミュージカルやオペレッタがお好きな人には堪らない映画です。

■男女5人が歌って踊って喋り捲り・・・
それは息つく暇も無い忙しさ。
登場人物たちが大騒ぎしている姿に共感出来るか出来ないか、が分かれ道  (=^∇^=)うむ


■■考察■■
オドレイ・トトゥ・・・
今回は主役ではありませんが、脇を支えるチャーミングな役どころで健闘しています。



ビヨンド the シー 〜夢見るように歌えば〜 (2004) 公開(2005)
Beyond the Sea
★★★☆
アメリカ 1時間58分
監督・製作・脚本・出演:ケヴィン・スペイシー
出演:ケイト・ポズワース、ジョン・グッドマン、ボブ・ホスキンス、ブレンダ・ブレッシン、ウィリアム・ウルリッチ

1950年代〜60年代にかけてアメリカで活躍したエンターテイナー、ボビー・ダーリンの生涯を描いたミュージカル・ドラマです。
ケヴィン・スペイシーは、本作で製作・脚本・監督・主演の4役をこなし、
スペイシー本人が吹き替えなしで数々のヒット・ナンバーを歌い上げ、見事なダンスを披露しています。

■ケヴィン・スペイシー、渾身の一作です。
この映画を作るにあたって構想から10年の歳月を要しただけあり、その気迫と思い入れが十分に伝わって来る作品です。
作品自体も良いのですが、どちらかと言うと、ケヴィン・スペイシーの頑張りが強く印象に残ります。
作品全体には、不治の病と闘う姿がベースになっているのですが、後に残る印象は比較的軽めでサラリとした感じです。
成人したボビーと少年時代のボビーとの対話により、ミュージカル・ドラマにより一層ファンタジーが色濃く出ています。

■■ネタバレです■■
少年時代に不治の病により15歳までしか生きられないと「死の宣告」を受けたボビー。
彼の人生は、幼少の頃より既に決められていた訳です。
しかし、「死の恐怖」に屈する事無く、歌に命を捧げ、自分の命ある限り生をまっとうしようとした彼。
女優サンドラ・ディーとの結婚、長男の誕生、伏せられていた出生の秘密、政治への介入、栄光からの脱落、喪失、苦悩、絶望・・・
天才エンターテイナーと言われた彼の華やかな輝かしい表舞台の裏には、人々が計り知れない苦悩があったようです。

■物語の構成は・・・
物語は、成人になったボビーを中心に、随処で少年時代のボビー(ウィリアム・ウルリッチ)が登場し対話しながら話が展開して行きます。
もっぱらボビーが何かにつまづいた時とか悩んでいる時に表れます。
少年の登場で、成人したボビーはそこで立ち止まって一考し、進むべき道を決断するというパターンなのですが、見方によっては少々煩わしい気もしないでもなく。
少年との対話は作品全体的には良い方に作用しているのですが、あまりにも頻繁に登場するので、もう少し直球で勝負出来なかったのかと思ってしまいます。


■■考察■■
(参考資料)
元妻サンドラ・ディーは2005年02月20日、腎臓病に伴う合併症で63歳で死去されたそうです。
ボビー・ダーリンとは1960年に結婚し、1965年に離婚
ボビー・ダーリン本人は37歳の若さでこの世を去っています
(1936年3月14日〜1973年10月20日)



ブリジット・ジョーンズの日記 
きれそうなわたしの12ヶ月
 (2004) 公開(2005)
Bridget Jones: The Edge of Reason
★★★
アメリカ 1時間47分
監督:ビーバン・ギドロン
出演:レニー・ゼルウィガー、ヒュー・グラント、コリン・ファース

大ヒット作「ブリジット・ジョーンズの日記」から4年ぶりの続編です。
不器用だけど何事にも一生懸命頑張るブリジット(レニー・ゼルウィガー)
主要メンバーは変わらず、今回は彼女を中心にシチュエーションが大きく広がっています。

■気軽に観れて、笑えて、ハッピーな気持ちになれる、まさにラブ・コメの王道を行く映画。
途中ハラハラしつつも安心して観れるところがミソ♪

■■ネタバレです■■
前作の「恋人が出来ない悩み」から、今度は「素敵な恋人が居る悩み」に変わります。
自分とは不相応な素敵な恋人。
教養も知性も兼ね備えた恋人。
近くに美人秘書が居るだけで、不安な気持ちになったりイライラしたり。
ちょっとしたことで落ち込んだりはしゃいだりする、浮き沈みのある不安定な乙女心を上手く表現しています。

■前作を継承しつつ、違った展開を見せる続編の難しさ
この作品のように、主人公ブリジットや彼女を取り巻くキャラで魅せるラブ・コメは、細かいことはつつかず、主人公に共感しつつ笑って楽しみたいものです。

■■考察■■
レニー・ゼルウィガー・・・
前作よりも増量感のあるドスコイ体型、役者魂を感じます  (=^∇^=)
副題の「きれそうなわたしの12ヶ月」は、思わず、「服がはちきれそうなわたし・・・」と思ってしまうほどの体重増し。



故郷<ふるさと>の香り (2003) 公開(2005)
暖 / Nuan
★★★★☆
中国 1時間49分
監督:フォ・ジェンチイ
原作:モォ・イエン「白い犬とブランコ」
出演:グオ・シャオドン、リー・ジア、香川照之

深い山々に囲まれた静かな山村。
10年ぶりに故郷の村に帰って来たジンハー(グオ・シャオドン)は、初恋の人ヌアン(リー・ジア)と再会します。
が、彼女は別人のように変わり果てていた・・・
美しい映像と心に染入る作品です。

第16回東京国際映画祭 東京グランプリ、優秀男優賞(香川照之)受賞

■素晴しい映画です。
まるで絵画のような景色の美しさ、そして、人の心の機微な動き。
フォ・ジェンチイ監督ならではの作品です。
是非、お勧めの一品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
山間の小さな村で静かにつましく人々。
山々の深い緑や山にへばりつくような段々畑、そして、人が一人通る位の細いあぜ道。
映画全体から、霧がかった村の空気が伝わって来ます。

10年ぶりに再会した初恋の人。
彼女は昔の面影は無く、日々の生活に疲れ果てまるで別人のようなっていた。
変わらないのは、二人の辿って来た道。
そして、二人の想い。
過ぎ去った日々は二度とは元に戻らないけれど、思い出は何時までも心の中に存在します。
人はただ、自らの過去を懐かしみ、後悔し、そして、自分の前にある道を生きて行くのみです。
二人の細やかな揺れる心を叙情豊かに描いています。
切なさとやるせなさが心にじんわりと染入る映画です。

■演出の良さ
二人が道でバッタリと出会い、その後食事に招かれ、次の日に別れる・・・
たった2日間の出来事ですが、その中に、昔の思い出を過去から順番に少しずつし挿入されて行きます。
鮮やかに蘇る二人の思い出の日々・・・
ともすれば、こういった展開は、同時に進行する二つの物語がブツブツと細切れになる恐れがあります。
が、この映画の場合は、実に上手く演出されていて、話を奥深く広がりを持たせています。
観ている者が時間の感覚を忘れてしまうほどに魅了されて行くのです。


■■考察■■
香川照之・・・
粗野で、聾唖者で、少し頭が足りない村人を好演。
主役二人を引き立たせる役だけれど、その狭間で輝きを放つ彼の演技は本当に素晴しいです。

グオ・シャオドン・・・
ヌアンは、昔と今とでは髪型を変えているのですぐ解かりますが、ジンハーの場合、服装も髪型(=殆ど変わらず)なので、一瞬過去のことなのか現在なのか分からなかったりします(=観ていると話の前後で分かりますが・・・)



ベルヴィル・ランデブー (2002) 公開(2004)
Les Triplettes de Belleville
★★★★
フランス・カナダ・ベルギー 1時間20分
監督:シルヴァン・ショメ
声:ジャン=クロード・ドンダ、ミシェル・ロバンモニカ・ヴィエガ

フランス人アニメーター、シルヴァン・ショメの劇場長編アニメのデビュー作です。
ツール・ド・フランスのレース中にマフィアに誘拐されたシャンピオン。
孫を追って、おばあちゃんは愛犬ブルーノと共に救出の旅に出ます。
2003年NY批評家協会賞アニメーション賞など多数受賞
2003年カンヌ映画祭特別招待作品。

■欧州的な独特の味わいのある、シュールで粋なアニメ。
先が読めるけれど、ちょっと先のストーリーは読めない摩訶不思議なアニメです  (=^∇^=)
かなり独創的な世界なので、好き嫌いがあるかも知れません。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
作品からは、何処か現代を批判するようなブラックユーモアが感じられます。
高架を走る電車然り、ベルヴィルの街然り。
そんな中にも、フランスのエスプリを散りばめ
(=ジャック・タチの「のんき大将」やポスター、ツール・ド・フランスの熱狂振り、フランスの国旗を思わせる色使いなど)
シュールで、クスリと笑わせるナンセンスな笑いがあり
どこかレトロで懐かしさが感じられるアニメです。

極力排したセリフ、全体的にブラウンで統一された色合い
極端にデフォルメされた顔や体形、歪んで曲がりくねった街並みなど
画は奇抜でパワーに溢れています。

■ラストにほろり・・・
シャンピオンのセリフが唯一聞けるラストです。
「感動させます」的で無く、序盤から少しずつ、そして、ラストで何とも言えない余韻が残る作品です。
しかしながら一番強烈に残るのは、3人姉妹のおばあちゃんたち、シャンピオンのおばあちゃん、と、お年寄りたちのガッツさです。
若いのが軒並みやられお年寄りが勝利するのも、ある意味現代の世相を批判しているのかも知れません。


■■考察■■
シャンピオン、幼少の頃と青年になった今とでは随分姿が違うのでビックリ。
変わらないのは、シャンピオンのおばあちゃんだけかも。笑



マシニスト (2004) 公開(2004)
The Machinist
★★★☆
スペイン・アメリカ 1時間42分
監督:ブラッド・アンダーソン
出演:クリスチャン・ベール、ジェニファー・ジェイソン・リー、アイタナ・サンチェス・ギヨン

不眠症で1年間も寝ていない男トレヴァー(クリスチャン・ベール)
機械工である彼は、自分の周りで次々と発生する不可解な出来事に悩まされる日々。
おののき、恐怖して、そしてそれはやがて彼の精神を蝕んで行き、意外な結末を迎えます。
主演のクリスチャン・ベールがこの映画の為に約30kg体重を落とし話題となった作品です。

■何と言ってもクリスチャン・ベールの痩せっぷりです。
極限まで肉を削ぎ落としたその身体にビックリそして唖然・・・
クリスチャン・ベールの役柄にかける熱意がひしひしと伝わってくる映画です。
役作り、ストーリー、色調を落としたダークで雰囲気ある映像と、三拍子揃ったサイコ・サスペンスです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意<特に要注意>
この映画のテーマは、<絶えず罪の意識に苛まれる自分>即ち<良心の呵責が引き起こした幻>とも言うべきもの。
交通事故によって少年を跳ねた、その罪の意識は、彼の心の奥深くに封印したにも拘らず、現実世界に歪んだ世界となって現れるのです。
その中で、彼が取るべき選択が何度となく、「左右の分かれ道」として出て来ます。
遊園地のカートの分かれ道、下水道の別れ道、ラストのハイウェイでの分かれ道・・・
特にハイウェイでは、左へ行くと空港、右へ行くと市街地になります。
空港は逃亡、市街地は警察に出頭することを意味しているという訳です。
で、その分かれ道の真ん中に位置するのが、行きつけのカフェ。
この映画では、いろいろなところにラストへ続く伏線が張ってあるのです。
数々のアイテムがあちこちに散りばめられ、やがてラストへ集結して行く・・・
そして、そこに時間軸をずらしたシーンが重なります。
とても上手い演出であります。

ブルーとグレーの色調を抑えたダークな映像。
そして、そこにキーとなる赤いスポーツカーの出現。
心の迷宮に迷い込んでしまった心情を上手く表現しています。

■そうか、あの遊園地のお化け屋敷は、、
トレヴァーは少年と共に「ルート66」なるお化け屋敷に入るのですが、このお化け屋敷がとても遊園地にあるとは思えないほどに惨い。
観ている最中は、「子供相手に良いのかよ?」と思いましたが、数々の悲惨なアトラクションは、つまるところトレヴァーの良心の呵責によって具象化されたものと考えられます。

■■考察■■
クリスチャン・ベールの骨と皮のガリガリに痩せ細った肉体。
「あと一歩で死ぬんじゃないか」と思わせる、その芝居に懸ける熱意と気迫に脱帽!!

アイバンを演じたジョン・シャリアン・・・
スキンヘッドといかついガタイで謎の男の雰囲気アリアリで良し!!



猟人日記 (2003) 公開(2004)
Young Adam
★★★★
イギリス、フランス 1時間38分
監督:デイヴィッド・マッケンジー
原作:アレクサンダー・トロッキー
出演・ユアン・マクレガー、ティルダ・スウィントン、ピーター・ミュラン

スコットランド出身のビートニク作家、アレグザンダー・トロッキの小説「ヤング・アダム」の映画化です。
※ビートニックとは、1950年代に登場した刺激的な作品です。
社会、常識など保守かつ権威に対する反抗、物質より精神世界を重視した作品スタイルが特徴です。

1950年代、グラスゴー。
クライド川を行き来する平底荷船で働くジョー(ユアン・マクレガー)は、ある朝、川に浮かぶ女の死体を引き上げます。
その日をきっかけに、ジョーは船の所有者レズリー(ピーター・ミュラン)の妻エラ(ティルダ・スウィントン)を意識し誘惑し始めます。

■かなり人を選ぶ作品です。
ひえ冷えとした映像、演出、そして原作がポルノ小説ながら、極めて格調高い作品です。不倫、死体、冤罪という題材、特にセックスシーンが頻繁に登場するのですが、何故か嫌らしさが無いのも特徴。
トロッキのファン、この手の映画がお好きな人には堪らない一品であります。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意
所謂、社会の底辺で働く人たちです。
石炭で顔、体を真っ黒にした男たち。
平底荷船で働くジョーもレズリー夫妻も、冤罪を掛けられた配管工も、登場する人物は皆同じような階層の人たちです。

その中で、もくもくと働き、隙あらば女とセックスしたいと思うジョー。
死体を引き上げた時を境に見境無く女に走るようになったのは、僅かながらでも心の呵責があり、それを打ち消したい為かも知れません。
彼の一連の行動は、不誠実に見えますが、その中でも時折り見せる誠実さが僅かながらあります。
川に落ちた子供を飛び込んで助けたり、冤罪の男を手紙という手段にしても裁判所に訴え出たり・・・
空虚で行くあてのない心の中にでも動物的な本能は存在し、それに突き動かされ行動するのでしょうか。
何かを積極的に見つけようとはせず、ただ淡々と行動する男に、何処か人間の本質をみるような、人間の恐ろしさを垣間見てしまうのです。

ダークでスタイリッシュな映像です。
流れる運河の水も空の色も人々も何処か鬱積した表情をして、
じめじめと湿った空気と沈んだ色調が作品全体を包んでいます。


■■考察■■
ユアン・マクレガー・・・
抑えた静かな演技。
数々の作品の中でもダントツと思えるほどの素晴しい演技です。

ティルダ・スウィントン・・・
流れて行く毎日をただただ生きる、やつれた生活感溢れる主婦を好演。
最初は相手にしなかった男に徐々に惹かれて行く表情が何とも上手い。



レオポルド・ブルームへの手紙 (2002) 公開(2004)
Leo
★★★☆
イギリス・アメリカ 1時間43分
監督:メヒディ・ノロウジアン
出演:ジョセフ・ファインズ、エリザベス・シュー、ジャスティン・チェンバース、デニス・ホッパー

ジェイムズ・ジョイス原作「ユリシーズ」をモチーフにした作品です。
原作よりかなり脚色されているらしく、舞台は1960年代のアメリカ南部ミシシッピ州を舞台にしています。
15年の刑期を終えて出所した男スティーヴン(ジョセフ・ファインズ)
彼は刑期の間、少年レオポルド・ブルームと手紙のやりとりをし、お互いが心の支えとなっていましたが・・・
手紙を通じ、またその人物に関わった者も人間的に成長する、そんな姿を描いたヒューマン・ドラマです。

■静かな、観た後は心にじわーっと来る映画です。
物語全体は悲しく辛い話なのに、後に来る爽やかとも思える印象はさすがです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意<特に要注意>
メアリー(エリザベス・シュー)は、我が子レオポルド・ブルームが塗装工と一度の関係で出来た子供であり夫の子では無いと確信してしまい、さらに夫と長女が事故で亡くなった原因を子供のせいにしてしまいます。

本当は我が子のせいでは無いと分かっているのに、幼い子供のせいにして辛く当たってしまう。
それは彼女が自分と向き合えない弱さであり、孤独さゆえなのです。
大学院まで行ってさらに学問を追究したかったのに、それが出来なかった(=恐らくは子供が出来たからでしょう)
塗装工との関係以前から既にそこからが出発点となって、後々の悲劇に結びつくのです。

子供の方は、自分を愛してくれていないと分かっていても、母を追い愛されることを願う。
母は、心の奥底では自分の弱さを認め子供に責任転嫁していると分かっているのに、それを認めてたくないが為にアルコールに走ってしまう。
母も、子供が自分を求めている安心感もあってそういった行動に出ているのでしょう。

少年レオポルド・ブルーム(=スティーヴン)の刑期は15年。
物心が付くのが3歳、18歳で罪を犯し刑務所送りになるまでの15年と一致します。
子供の頃から母の愛を得られず深く傷ついた心を癒すのは、刑務所に居た15年の歳月を必要としたのです。
自分の想いを文章という手段で表現し書き綴って行く中で見つけた心の真実。
魂の「再生」
その心の旅路とも言える行方を淡々と静かに追った姿が美しくも切なく、そして、清々しいのです。
ラストで、未来への希望に満ちた表情が何とも爽やかです。

■展開の鮮やかさ、見事な演出
スティーヴンと少年レオポルド・ブルームとの手紙のやり取り。
実はこれはスティーヴンの心の産物(=魂の彷徨)なのですが、観ている方はラストまで実際にあったことだと思いながら観ている訳です。
刑務所から出所してキッチンで働くスティーヴン、スティーヴンとレオポルド・ブルームとの交流。
二つの物語が同時に進行して行き、やがて大きな1つの流れに集束して行きます。
ラストでスティーヴンがミシシッピ川に辿り着くこともそれを暗示しているかのようです。

■母の浅はかさ
裁判の終わりで、実は夫の子供だったと知り驚愕する母。
泣いて許しを請いますが、既に時は遅し。
夫の子供だと愛せたと言うのか。
塗装工の子供だと思っていたから愛せなかったと?
それはあまりに浅はかで罪な過ちです。

■この映画の元となった小説は難解なのだろうと痛感します。
もっと奥深く読み取るれるものがあるのでしょうが、自分としてはここまでが感想の限界です。涙

■■考察■■
ジョセフ・ファインズ。
今までは「ぎらぎらした熱い視線の眼差し」の役が多かった彼ですが、今回は新境地とも思える新しい役柄です。
劇中で18歳の役を演じていましたが、それはちと無理があるような気が致しましたです  (=^∇^=)

母メアリー演じるエリザベス・シュー。
人生に疲れくたびれたアル中の一歩手前の母を好演しています。



ロング・エンゲージメント (2002) 公開(2004)
Un long dimanche de fiancailles
★★★☆
フランス 2時間13分
監督:ジャン・ピエール・ジュネ
原作:セバスチャン・ジャプリゾ「長い日曜日」
出演・オドレイ・トトゥ、ギャスパー・ウリエル

第一次世界大戦下のフランス。
死刑を宣告された婚約者マネク(ギャスパー・ウリエル)の生存をひたすら信じるマチルダ(オドレイ・トトゥ)
婚約者の戦死を受け入れられない彼女は、彼の生死を自ら確認する為、彼の足取りを辿り、謎を解き明かして行きます。
R-15指定

■ジャン・ピエール・ジュネ監督の前作「アメリ」と似たテイストながら、一転して生々しい戦争シーンも有ります。
壮大なスケールで且つ、生々しくリアルな戦闘シーンと、ファンタジックで温かさに包まれたセピア調の美しい映像が特徴。
ミステリータッチの色合いが強いラブ・ロマンス映画です。
注意:登場人物が多いのと、証言によって引き出される真実の積み重ねで物語が進行し、またコロコロ変わるので、頭の中で整理して観る必要有りです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意
過去の戦争シーンと、婚約者を探す「今」との二つの物語が同時進行します。
特に戦争シーンは、ドイツ軍から奪った塹壕をメインとしています。
塹壕の映画は、泥と飢えと寒さの中で震え、極限の精神状態に陥る状況が他の戦争映画とはまた違った過酷さがそこにはあります。
この映画もまた然り。
目を背けたくなるような残酷でリアルなシーンの連続です。

対して、今を生きるマチルダの周辺は温かさに包まれ、ファンタジックで美しい世界が広がります。
自転車に乗る郵便配達人がジャック・タチの映画「郵便配達の学校」に登場する郵便配達フランソワを思い出させてそれも嬉しい要素です。

■映画全体から受ける印象は・・・
一人の一途な女性が愛する人を想い続けると言うより、親の遺産を使い、周りの人を動かして捜索する・・・という方が強く出てしまっています。
特に、せっかく尋ねて来てくれたピエールの頬にビンタをくらわせたり、塹壕跡の花畑を肩車させて貰っている姿には、??
随処で、感謝の気持ちが見えたらまだしも、「当然、憮然」としているように見受けられてしまい、彼女の自己主張ばかりが強調された印象を受けてしまい、少々残念。
彼女の可憐な想いより、捜索に協力した周囲の人々の温かさばかりが後に残ってしまいます。


■■考察■■
ギャスパー・ウリエル・・・
本作で2作目のウリエル。
前作「かげろう」では、坊主頭で少年院を脱走した少年の役柄だったので、普段の雰囲気が掴めませんでした。
この映画で美しい金髪と優しく気弱な役柄を見て、改めて彼の魅力を再確認致しましたデス♪

オドレイ・トトゥ・・・
「アメリ」の流れを汲む安定した演技。
不思議ちゃんイメージは以前と変わらず、思い込みはある意味、こちらの方が真に迫っているかも。