2005年(5月〜8月)映画館で観たレビューです。


0:34 レイジ34フン ★★★☆
アイランド ★★★
ウィスキー ★★★★
宇宙戦争 ★★★☆
美しい夜、残酷な朝 ★★★☆
ヴェラ・ドレイク ★★★★☆
エレニの旅 ★★★★☆
オープン・ウォーター ★★★
大いなる休暇 ★★★★
クローサー ★★★☆
皇帝ペンギン ★★★★
ザ・リング2 ★★★
スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 ★★★★☆
千年湖 ★★★
ターネーション ★★★
ダニー・ザ・ドッグ ★★★
チーム★アメリカ ワールドポリス ★★★☆
バタフライ・エフェクト ★★★☆
バットマン・ビギニング ★★★★
ヒトラー 最期の12日間 ★★★★
ビフォア・サンセット ★★★★
フォーガットン ★★☆
ブレイド3 ★★★
ミリオンダラー・ベイビー ★★★★☆
モディリアーニ 真実の愛 ★★★★
妖怪大戦争 ★★★
ライフ・アクアティック ★★★☆
ランド・オブ・ザ・デッド ★★★★
リチャード・ニクソン暗殺を企てた男 ★★★★
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 ★★★☆




0:34 レイジ34フン (2004) 公開(2005)
Creep
★★★☆
イギリス・ドイツ 1時間25分
監督・脚本:クリストファー・スミス
出演:フランカ・ボテンテ、ショーン・ハリス、ヴァス・ブラックウッドジェレミー・シェフィールド

ロンドンの地下鉄チャリング・クロス駅。
深夜0時34分の最終電車を逃し、地下鉄構内に取り残されたケイト(フランカ・ポテンテ)締め出されて外に出る事が出来ず途方に暮れ居ている彼女に次々と襲いかかる恐怖を描きます。
深夜のロンドンの地下鉄を舞台にしたスプラッター・ホラーです。

■最初から最期まで緊張感が続き、久々にわくわくさせられたホラーです。惨殺なシーンが多々あるので、ホラー好きな方以外は観ない方が無難かも知れません。
この映画を観たら、きっと終電車に乗り遅れないようになるハズ。  

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
前半部分と後半部分はガラリと趣きが変わります。
最初は暗闇に潜む何かの正体が分からず、霊的現象によるものか、或いは・・・と想像を巡らせます。
中盤から異形の殺人鬼の出現により恐怖の種類が変わります。
謎の正体が明らかになると、大抵は恐怖が一気に引いて行きがちですが、この映画の場合は演出が上手いのか、最期まで緊張感が途切れる事がありません。

■殺人鬼について
彼は何故、地下鉄に住み着いているのか?
数々の謎を提示するものは出て来ますが、最後まで詳細は分からずじまいです。
使われていない通路に存在する手術室。
そこにある数々のホルマリン漬けになった胎児の死体、写真立てにあるドクターと異形の殺人鬼の少年時代と思われるツーショットのフォト。
手術台に女性を固定し、出産に見立て、ドクターになったつもりで手術を行う(この手術シーンがとても不気味。水の出ない蛇口で手を洗い、手術用手袋をはめるも上手くいかず片手がグー状態だったり)
上の事柄から、おおよそを推測するのみです。

■舞台となったロンドンの地下鉄は世界最古だそうです。
チケット売り場、通路、ホームなど乗客が乗り降りする場所は、昼間は賑わっていても夜になると閑散とし、とても怖い。青白く光る蛍光灯の光が冷たく照らし、足音だけがカツーンカツーンと響くのみです。
また一歩外れると、ビクトリア時代の名残らしき古びた通路へと続きます。人口的な光とトンネルの闇、無機質で近代的な建造物と忘れ去られた古の建造物。
その対比が不思議と恐怖を増長させることになります。

■ツッコミたい・・・この手のホラーはツッコミを気にせず観たいところ。明らかにしない方が返って恐怖をかきたてるし。でも、少し書いてみる。
□一晩でかなりの人数が殺されます。
その中には、地下鉄の運転手や警備員も。
毎晩これだけの人数が失踪したら問題になるような気が・・・
□主人公が後ろから一撃し殺人鬼を倒す。
気絶している間に自分達を閉じ込めた檻に入れておけば良いのに。
□使われていない通路に何故か手術室が!!昔は地下鉄構内で手術していたのか?

■題
原題は「Creep」ですが、邦題では何故か「0:34」です。
また、予告編、チラシ等では、異形の殺人鬼の事を一切出していません。
最近では宣伝の段階で種を明かしてしまいがちですが、本作品においては中途半端に明かさず良心的だと思いました。


■■考察■■
フランカ・ポテンテ・・・
美形の“助けて乙女”タイプでは無く、恐怖に慄きながらも闇に潜む何者かに果敢に立ち向かって行きます。
「ラン・ローラ・ラン」で見せた彼女の走りっぷりが見れるのが嬉しい(走りの内容はかなり違うけれど・汗)



アイランド (2005) 公開(2005)
The Island
★★★
アメリカ 2時間16分
監督・製作:マイケル・ベイ
原案・脚本:カスピアン・トレッドウェル=オーウェン
出演:ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソン、ジャイモン・フンスースティーヴ・ブシェミショーン・ビーンマイケル・クラーク・ダンカン

大気汚染により人が住めなくなった近未来。
シェルターに守られ清潔で快適な都市空間で暮らす人々の夢は、地上に残された最後の楽園「アイランド」へ行くことだった。
近未来SFアクション映画。

■旬の俳優たちの起用、手に汗握るアクション、スタイリッシュな未来都市、スリリングな展開。
製作費に大金を掛けたと思われる映像は見所がたくさん。
クローン、臓器提供など重い題材を扱いながらも、アクション主体のスラーッとした仕上がりです。
気軽に観れて楽しむ映画です。
良くも悪くもマイケル・ベイ監督の作品、といった感じ。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
「アイランド」行きとは、クローンが依頼者に臓器を提供する、即ち死を意味するものなのです。

高度な科学が生んだクローン技術は人間に恩恵を与えるものだったはず。が、しかし、それは人間の欲と倫理的な問題を生むことになります。
本来ならばとても重いテーマであり、問題を投げ掛ける内容です。
ところが、この映画の場合はアクション主体にしている為か、あえてそこまで踏み込まないようにしているのか、そのテーマを深く追求するには至っていません。エンターテイメントを楽しむ映画となっています。

■例えば・・・
ジョーダンの依頼者が死に瀕し彼女の子供の為に、ジョーダンが我が身を投げうつことを考えたり、依頼者に代わって本人になろうと決意したりするとか、クローン本人たちの割り切れない思いや葛藤があっても良いと思う。

■ラストは・・・
リンカーンとジョーダンが危機を脱出しメデタシメデタシで終わるラスト。
明快・快活で小気味良いのだけれど、やはり物足りなさを感じてしまう。


■■考察■■
ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソンと今が旬の俳優を起用。
スティーヴ・ブシェミも何時もの如くインパクト有りで、話に盛り上がりを見せ上手い使い方です。
しかしながら、この映画で一番印象に残ったのは、ローレントを演じたジャイモン・フンスー
なのかも。



ウィスキー (2004) 公開(2005)
Whisky
★★★★
ウルグアイ・アルゼンチン・ドイツ・スペイン 1時間34分
監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
出演:アンドレス・パソスミレージャ・パスクアルホルヘ・ボラーニ

ウルグアイのとある町。
父から譲り受けた小さな靴下工場を経営する初老の男ハコボ(アンドレス・パソス)
そこでもくもくと働く控えめな中年女性マルタ(ミレージャ・パスクアル)
毎日を規則ただしく淡々と生活を送っている中、ハコボの弟エルマン(ホルヘ・ボラーニ)が急きょ帰郷してくることになり・・・
ほんのりコメディの入ったヒューマン・ドラマです。
※題名の「ウィスキー」とは、ウルグアイで写真を撮る時に言う言葉。
日本で言うところの「チーズ」に該当します。  
2004年カンヌ国際映画祭オリジナル視点賞、国際批評家連盟賞、
東京国際映画祭グランプリ、主演女優賞受賞作品。

■ちょっと可笑しく、切なく、そして、一抹の寂しさを感じる作品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
ハコボとマルタの地味で変化のない生活の中に、ある日突然乱入して来た弟エルマン。
3人で旅行した事がきっかけで、ハコボとマルタの関係に微妙にズレが出来、やがて意外な結末を迎えます。
旅行中に、ハコボとマルタの今まで表に出なかった部分があらわになり、
ラストは明確な答えが示されていない為、その後の展開は観客委ねられています。

■私の解釈
旅行中、マルタはどんどんエルマンに惹かれて行き、それを横で眺めていて面白くないハコボ。
しかし、特にマルタに積極的になる訳でもなく、唯一行動を起こしたのは、エルマンとマルタがピンポンをしている時、後ろからマルタの手を取って加勢した時くらい。
自分とマルタの気持ちの変化も、この旅行が終わればまた元の日々に戻ると思っているハコボ。
そう、例えて言うなら、、、水溜まりに小石を投げ、一瞬波が出来るけれどしばらくするとまた元の水溜まりになる・・・そんな感じ。
しかし、次の日、マルタは工場に姿を見せない。
ガシャガシャと規則正しく動く機械がプチッと唐突に終わるラストです。
このあっけないラストは、まさに二人の関係を暗示しているかのようです。
マルタは、エルマンを追いかけてブラジルへ渡ったのか、それとも、新たな可能性を見出す為違う場所に行ったのか、或いは現金を前に途方に暮れているのか。
どちらにしろ、ハコボの工場には戻らないと思われます。

マルタは、旅行中エルマンに惹かれながらも、どこか心の片隅にハコボの存在があったと思われます。
しかし、旅行を終えると挨拶もそこそこにさっさとタクシーを呼んで帰すハコボにマルタは失望したのでしょう。
部屋を出てエレベーターに乗った時の表情がそれを物語っています。
マルタの後ろに立ちあたかも守っているようなハコボ。
その前に立ち、エレベーターの扉の前に立つマルタ。
沈黙の中、無表情な二人の中にも、それぞれの思いは違います。

エレベータを降りてエントランスでハコボからマルタへ贈った包みは、マルタは札束だとは思わなかったのではないでしょうか。
もし、気が付いたら多分受け取らなかったでしょう。
こういった形でしか愛を表現出来ない不器用なハコボ。
やはり、女性は、言葉に出して愛を語って欲しい、楽しい会話がしたい、、マルタも普通の女性同様、そんな思いがあったに違いありません。
不器用な男と、自分自身に目を向け始めた女、そして、罪作り?な陽気な乱入者、3人が織り成す何とも切ない物語でした。


■■考察■■
主要登場人物3人共、初老もしくは壮年男女、そしてその内二人は無表情で口数少ない男女。
珍しい設定であります  (=^∇^=)



宇宙戦争 (2005) 公開(2005)
War of the Worlds
★★★☆
アメリカ 1時間54分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
原作:H・G・ウェルズ
ナレーション:モーガン・フリーマ
出演・トム・クルーズ、ダコタ・ファニングティム・ロビンスジャスティン・チャットウィンミランダ・オットージーン・バリー、アン・ロビンソン

H・G・ウェルズの同名原作の映画化です。
1953年に一度映画化されており(バイロン・ハスキン監督、50年代SF映画の傑作)、今回は再映画化になります。
異星人の襲撃による破壊活動を壮大なスケールで描いたSFスペクタル映画。
家族愛を描いたヒューマンドラマでもあります。

■オリジナルの古き良き時代を継承しつつ、現代の最新技術を駆使した映像をミックスさせた作品です。
視覚効果を狙った迫力ある映像はさすが。
古典的SF小説の映画化ゆえに、ストーリー、演出(=トライポッドの造形など)随処に古くささを感じる部分があるのは否めません。
が、それもまた良しであります。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
ごく普通のありふれた日常風景。
そこに唐突に現れた、殺戮マシーンたち。
地球への侵略の為人類を抹殺すべく、ありとあらゆる物に破壊の限りを尽くす悪夢のような出来事。
逃げ惑う人々、極限状態に陥った民衆の醜いエゴなどを映し出しています。

■50年代の名作のリメイクなので、あまり突っ込むのもヤボと思いつつ、でも、やはり記したいと思いまふ  (=^∇^=)

□トムちん、ダメな父親が人間的に成長するというお話だが、端正な顔つきゆえ最初からあまりダメ男に見えない。
□息子ロビー(ジャスティン・チャットウィン)の成長過程も弱い。
逃走途中、軍隊に参加するのも唐突な気がするし、最後いきなり「ヤア!」みたく現れるのもどうかと・・・
父と息子の対立、別れ、再会も演出によってはもっと感動出来たはず。
□レイ(トム・クルーズ)たちの住むニュージャージーから脱出する時、何故かレイの車だけが動く。
□父母の住む屋敷も襲われ外に出るが、飛行機は墜落し周辺一体はめちゃくちゃに。しかし、レイが乗って来た車だけが何故か無傷で、その車に乗ってめでたく出発。
□廃屋に潜んでいる時、トライポッドの探査機が偵察に来る。
田舎の家々一軒づつ丁寧に調べるとは、ご苦労なことです。
□トライポットは宇宙人が100万年前に既に地中に埋めてあったらしい。
が、太古の昔ならともかく現代においては、あちこちに埋まっていたら地下鉄工事などで発見されていたであろう。
□おばあちゃんの家の周辺だけ壊されていない・・・
□高度な知識、文明を持つ(=らしい)異星人、すぐ傍らに潜んでいる人間に全く気が付かない。嗅覚は発達していないようだ。

■要望
ラスト、異星人壊滅となる要因(=地球上の微生物によるもの)シーンをもっと見せて欲しい。
異星人襲来がアメリカの限定した地域にしか見えない。登場人物の目線で観ているので仕方ないのだろうけど、観ているこちら側にも一工夫欲しい。
一つ一つのシーンは丁寧に作ってあって見所があるのですが、全体を通して見ると平坦な感じになる。何故?


■■考察■■
トム・クルーズ・・・
どうもこの港湾労働者の役柄にしっくりこない。
もう少しバタ臭い、下層階級の人間像が合う人の方が良いのではないか(=例えばマシュー・マコノヒーなど)
トムちん、一生懸命逃げ回っても汗をかいているようには見えず、やはり冷静さ失わないスパイ役が似合うと思いました  (=^∇^=)

ダコタ・ファニング・・・
キャーッとした悲鳴、もう少し落ち着け。

ティム・ロビンス・・・
どうしてこの役を?という意見が多いのも納得。
オスカー俳優がフヌケた役をする、このインパクトはそうそうあるものでは無く、と思うと返って印象的ではある。

フレイルティー/妄執」で見せたアブネー父親役のビル・パクストンでも良かったかも。



美しい夜、残酷な朝 (2004) 公開(2005)
THREE... EXTREMES
★★★☆
香港・日本・韓国 2時間4分

日本・韓国・香港の3国が共同製作したホラーテイストの異色オムニバス。

□香港篇 dumplings
監督:フルーツ・チャン
出演:ミリアム・ヨン、バイ・リン、レオン・カーファイ
いつまでも美しく・・・それは全ての女性の夢。元女優が財力とコネを駆使し、永遠の美を求めてたどり着いたのは謎の女が作る特製餃子。口に入れたその瞬間から彼女の悪夢が始まる。(=チラシより)

□日本篇 box
監督:三池崇史
出演:長谷川京子、渡部篤郎
小説家・鏡子には誰にも話せない秘密があった。サーカス、双子の姉妹、オルゴール。降りしきる雪の中で繰り広げられる愛憎の一章。(=チラシより)

□韓国篇 cut
監督:パク・チャヌク
出演:イ・ビョンホン、カン・ヘジョン
イ・ビョンホンが厚い信頼を寄せる監督パク・チャヌクと再び組んだ!ビョンホンがノーギャラで出演を望んだという最新作、俳優としての記念碑的作品。(=チラシより)

■作品によってはグロいシーンも多々あります。
ホラー、忌憚モノ好きな方向き。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>

□香港篇 dumplings
鮮やかな極彩色と下町界隈の煩雑さとが混ざり合った香港特有の風景。
古びたアパートの一室で密かに調理される餃子。赤い肉を包丁でトントンと刻まれるシーンを見るだけで、何か危ないものを感じます。
そして、その餃子を試食するリー夫人(ミリアム・ヨン)
最初は恐る恐る食べていたのが、次第に満足感に変わります。
若さを取り戻す特製餃子の秘密を知っても留まる事が出来ない、尚限り無く続く美への欲望。
自分の子供を犠牲にしてまでも手に入れようとする恐ろしさ。
女の欲望は果てしなく、激しい美への執着を感じます。
90分のロングバージョン版もあるそうです。

□日本篇 box
雪がしんしんと降り積もった純白の世界や古びたマンションなど、この作品からは静寂さを感じます。
静かな、そして、幻想的な恐怖。
物語の数々の謎は、ジクソーパズルがピッタリと合わさるが如く、ラストで全て納得がいきます。
主人公、鏡子(長谷川京子)の内面の葛藤や愛憎などの秘めたる想いが手に取るように分かる、美しくも切ない物語です。
ただ、ラストシーンのひとコマ、あの姿は工夫の余地があるかも。
(=実は、双子の姉と鏡子はシャム双生児。姉は少女のままで成長が止まり、鏡子の体に寄生してくっついている)

□韓国篇 cut
「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク監督らしい激しい暴力と狂気、キリキリと迫リ来る緊張感と恐怖があります。
誰の中にも存在する真実、それを暴かれる苦しみや暴く快感。
例によって血飛沫飛び散り、そしてサディスティックな、マゾ的な風合いが感じられる何とも激しい映画です。
少年の一言によって一気に崩れて行くビョンホン。
隠されていた本性をさらけ出し、恐怖が人を変える恐ろしいシーンです。


■■考察■■
イ・ビョンホン、売れっ子2枚目に「尻文字」を書かせるとは・・・
パク・チャヌク監督は惨めな状況を作り出すのが上手いとつくづく感心。



ヴェラ・ドレイク (2004) 公開(2005)
Vera Drake
★★★★☆
イギリス・フランス・ニュージーランド 2時間5分
監督・脚本:マイク・リー
出演:イメルダ・スタウントンフィル・デイヴィスピーター・ワイト、エイドリアン・スカーボローヘザー・クラニー、ダニエル・メイズアレックス・ケリー

1950年、ロンドン。
家政婦で平凡な主婦ヴェラ(イメルダ・スタウントン)
彼女は、望まない妊娠をしてしまった女性を助ける為に、家族に内緒で密かに中絶の処置を施していた。
しかし、ある日通報され、警察に逮捕、そして裁判に掛けられてしまう・・・
2004年ヴェネチア国際映画祭、金獅子賞、主演女優賞受賞。
他、多数の賞を受賞しています。

■素晴しい映画です。
特にイメルダ・スタウントンの演技は本当に素晴しい。
家族の崩壊・再生・絆を描いた作品です。
「善」と「悪」、そして「罪」についても真摯に考えさせられる物語です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
50年代当時のイギリスの社会情勢、中絶問題(その当時のイギリスでは人工妊娠中絶は認められていなかった)、戦後の不況、貧富の差が生む不公平さなど、労働者階級が抱える問題が見て取れます。
特にこの映画の中の大きな問題となっている中絶は、社会的に非合法であっても、富を有する者はお金さえ出せば正規の病院で中絶を受けることができ、その他労働者階級に属する者は、ヴェラのような女性の手助けを借りなければ暮らしていけなかったのです。

しかしながらこの映画は、中絶という倫理的な問題を中心に据えながらも、実は家族の絆を見つめた作品であるのです。
罪を犯したヴェラに対して家族の受け止め方は様々です。
夫スタンはその衝撃に戸惑いながらも冷静さを保ち、何とかして家族がバラバラにならないようにと努めます。
長男シドは若さゆえ、愛している母の向こう側にどうしても許せない気持ちがあり苦しみ
長女エセルは同じ女性として共感出来るものがあるのでしょう、愛する母を静かに待とうとします。
そして、エセルの婚約者レジー。
家族の中では一番遠い存在の人間、その彼が一同を前にヴェラに対して感謝とお礼の言葉を述べます。これはある意味、家族外の人間だからこそ冷静に居られたのかも知れません、もちろん彼女への思いは述べた通り。
深い感銘を受けるシーンであります。

■夫スタンの存在
ヴェラがあのような行為をしても、その深い愛は変わることなく、ヴェラの帰りを待とうとします。
それは苦楽を共に歩んで来た夫婦だから、彼女の純粋な心を知っているから、彼女が夫を家族を全ての人を愛しているからこそ、その気持ちに答えようとしているのです。

■ヴェラの罪の重さ
終盤、刑務所にて、ヴェラとヴェラと同じ罪で投獄された二人の女性の会話があります。三人の会話から、どうやらヴェラの判決は予想以上に重いことが分かります。
二人の女性は、相手の女性が死んでいるにも関わらず、刑期は3年、4年。
対するヴェラは、あの中では安全な方法、無報酬、女性は助かったにも関わらず、当初1年半という予想が2年半という判決が下ります。
裁判官としては後に続かないように見せしめの為だったようですが、それにしても、ヴェラという女性を知っているこちら側としては何ともやり切れない思いが残ります。

■ラスト
刑務所のシーンから、部屋での家族の姿を映して終わりです。
ヴェラの帰りを待つ彼ら。
彼らの姿はまるでフェルメール絵にも似て、静寂の中にも温かさと優しさに包まれた美しく印象的なシーンです。


■■考察■■
イメルダ・スタウントン・・・
アカデミー賞主演女優賞はやはり彼女だと思う、誰もがきっとそう思うはず。

夫スタン(フィル・デイヴィス)、長男シド(ダニエル・メイズ)、長女エセル(アレックス・ケリー)、エセルの婚約者レジー(エディ・マーサン)など、貧しいながらもしっかりと地道に生きる彼ら。
地味な役柄ながらも、それぞれの役割を上手くしっくりと演じていて、ドレイク一家があの当時本当に存在していたかのように思えて来ます。



エレニの旅 (2004) 公開(2005)
Trilogia: To Livadhi Pou Dhakrisi
★★★★☆
フランス・ギリシャ・イタリア 2時間50分
監督・製作・脚本:テオ・アンゲロプロス
出演:アレクサンドラ・アイディニニコス・プルサディニスヨルゴス・アルメニスヴァシリス・コロヴォスエヴァ・コタマニドゥ

「永遠と一日」の巨匠テオ・アンゲロプロス監督、6年ぶりの新作。
当初は、題名が<トリロジア>で、1本の長編で20世紀全体を描く構想でしたが、上映時間が10時間と膨大になり過ぎた為、3本のそれぞれ独立した映画として製作することになりました。
その第1作目が本作「エレニの旅」です。
2004年、ヨーロッパ映画賞(監督賞、撮影賞、音楽賞)ノミネート作品。

1919年頃。
ロシア革命の勃発によりオデッサを追われロシアから逃げてきた逆難民のギリシャ人たち。
彼らは、ギリシャのテサロニキ湾岸に降り立ち、そこに自分たちの村<ニューオデッサ>を築きます。
オデッサで両親を失い一行に拾われた少女エレニ(アレクサンドラ・アイディニ)
難民として激動の時代を生き抜いた彼女が辿る過酷な運命を描いた
雄大にして壮大な叙情詩のドラマです。

■テオ・アンゲロプロス監督のファンには堪らない作品。
映像、音楽、緩やかなストーリー運び、静かで美しく、辛い映画です。
その他の人には、もしかしたら、眠気を誘う恐れも無きにしも非ず。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
<この先にはきっと良いことがある・・・>
ささやかな希望を託し、次に望む人々。
オデッサから逃れて来たギリシャ人の一行。
父スピロス(ヴァシリス・コロヴォス)から逃れる為、手に手を取って駆け落ちしたエレニとアレクシス(ニコス・プルサディニス)
テサロニキの市民劇場、そして、「白布の丘」に住む難民たち。
政府に対しゼネストを起こし反逆する労働者たち。
エレニを愛し求めるスピロス。
アメリカに夢を託し、渡航するアレクシス。
エレニの双子の息子、ヤニスとヨルゴス。
彼らもまた、国連兵士(ヤニス)とゲリラ兵士(ヨルゴス)と別の道を歩み、思想は違えど、新たな国への再生を願って戦場に散ったのです。

僅かな夢に希望を託し、そこで待つ人、先に進む人。
しかし、、人々の暮らしは以前と変わらない。
時代に翻弄される人々は、ただ流されて生きているように見えますが、それぞれはその時々を精一杯生きています。
エレニもまた然り。
受身とさえ感じられるエレニの人生は、ごく普通の女性の生きた姿なのです。

■映像の美しさ
荒野の向こうから歩いて来る黒い服に身を包んだ一行。
<白布の丘>と呼ばれる大量の白いシーツがはためく風景、曇った空と真っ白のシーツとの対比の美しさ。
そして、スピルスのお葬式のシーン。
いかだに木の棺を乗せ、その周りを取り囲むように黒い旗を立てた小船たちが静かに河川を走らせて行きます
黒い喪服に身を包み、うなだれる人々。
この映画では、水が至るところで登場します。
一年中暗く沈んだ空と河、降りしきる雨、そして、泥でぬかるんだ地面。
どのシーンにも泥の道が登場し、道行く人の足が泥で汚れるさまは、まさにそこで暮らす人々の姿のよう。
村を襲った大洪水は、自然の過酷さとそこに生きる人々の嘆きを象徴しているかのようです。

■心に残るセリフ
アレクシスがエレニに言ったセリフ。
「いつかふたりで、河のはじまりを探しに行こう」
そして、戦場でアレクシスがエレニに送った手紙には、
「君が手を伸ばして、葉に触れ、水滴が滴った・・・・・・。地に降る涙のように。」
ラストで愛する人を全て失ったエレニの姿に、上の二つのセリフが心に強く残ります。

■うなされ寝言を言うエレニ
何度も何度も同じことを繰り返すので、永遠に終わらないのでは、、と思わず思ってみたり。エヘ


■■考察■■
エレニを演じるアレクサンドラ・アイディニ
映画全体を通じて、微笑む姿は殆ど無し。
殆どが哀しく寂しげな顔をしているので、観ている方も辛くなったり・・・

バンド仲間やその他の人々。
皆さん、同じような黒っぽい服装をしていて、同じような顔つき(・・・に見える私です)をしているので、見分けが付かない  (=^∇^=)



オープン・ウォーター (2003) 公開(2005)
Open Water
★★★
アメリカ 1時間19分
監督・脚本・撮影・編集:クリス・ケンティス
出演:ブランチャード・ライアン、ダニエル・トラヴィス

2004年のサンダンス映画祭で評判となった作品です。
制作費は僅か13万ドルの低予算。
全米公開にあたってインディペンダント映画としては異例の大規模公開となり、話題を呼んだドキュメンタリータッチのサスペンス・スリラーです。
スキューバ・ダイビングを楽しんでいた若夫婦が、ボートのスタッフの勘違いから、サメのうごめく大海原に置き去りにされてしまう・・・
実話を元にしたフィクションです。

■この夏、ボートに乗って沖合いまで出てスキューバ・ダイビングをする人が激減しそう、そんな映画です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
最初は今の状況が飲み込めず、楽観的に船を捜す二人。
しかし、それはやがて不安感に変わり、やがて置き去りにされたと確信する・・・
置き去りにされ救助への望みを掛ける二人。
最後まで望みを捨てない、いや、もうダメだ・・・
海中を泳ぎ回るサメ、何かに刺された痛み。
自分の周りに、自分の足の下に何が居るのか分からない恐怖。
不安感と恐怖は想像を絶するもので、やがて死を予感し、絶望へと変わって行きます。

■極限状態に陥ると・・・
肉体的にも精神的にも追い詰められた二人の取った行動は、お互いへの罵り、責任の押し付け合い。
また、ダニエル(ダニエル・トラヴィス)が死ぬとスーザン(ブランチャード・ライアン)は、しばらく一緒に漂流していた後、彼を放してしまう。
ラストは、スーザンが自らサメの餌食になろうと決意(=したように見えた)し、スッと海に沈んで行く。
これらのことは一見すると不可解のように思えますが、人は極限状態に陥るとこのような行動に出るのかも知れません。
ラストに関しては、限りある生きるというよりも、自ら命を絶つ選択を取ったように思えます。

臨場感溢れる映像はまるで真実を傍で観ているようで、本当に怖い。
やり切れなさが残るラストはしばらく後に残ります。

■欲を言うと・・・
あまりにもそのまま過ぎて、映画を観ている醍醐味が感じられない。
実話を元にしているけれどフィクションであるので、もう少しドラマ性を持たせても良かったのかも知れない。
これはこれで良く出来た映画ではあるのだけれど。


■■考察■■
本物のサメを泳がせた中で撮影、そして、CG等の特殊効果、スタントマンを一切使わない映像が、さらなるリアルさを呼びます。
俳優の表情も演技とは思えないほど。



大いなる休暇 (2004) 公開(2005)
La Grande seduction
★★★★
カナダ 1時間50分
監督:ジャン=フランソワ・プリオ。
出演:レイモン・ブシャール、デヴィッド・ブータンブノワ・ブリエールピエール・コラン、リュシー・ロリエ

カナダ・ケベック州にある小さな島、サントマリ・ラモデルヌ島。
人口僅か125人のこの島は、かつては漁業が栄えていたが、今はその漁業も廃れ島民の殆どが失業保険のお世話になっている。
そんな中、振って湧いたプラスチック工場誘致の話。
誘致の条件は医者を確保すること。
都会からやって来た若き青年医師クリストファーを島に定住させる為、あの手この手を使って島の魅力をアピールするが・・・
ユーモア溢れるハートフル・コメディです。
2004年サンダンス映画祭観客賞受賞作品。

■最初から最後までウフフ・・・と楽しく笑えて、ほんわかな気持ちにさせてくれる、ハートフルな映画です。
静かで何も無い、美しい島の風景も一役買っています。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
島民全員が嘘を付いて、医師一人だけが何も知らない・・・
普通だと理由はどうあれ嘘を付くことが先に出てしまい、心の底から笑えないことも多々あるのですが、この映画の場合は全くそんな意識に囚われません。
島民一人一人が素朴で皆さん気の良い人ばかり。
島を守りたいという純粋な気持ちと、働かなくてもお金が貰える失業保険より、汗水流して働いてお金を得たい、人間の誇りを失いたくない、という気持ちから出発しているので、嘘でも憎めないのです。

住人の高齢化や島の過疎化、働く場所の確保など離島の抱える問題をベースにしながらも、軽妙なタッチと微笑ましい笑いが爽やかな印象を残します。

オープニングとエンディングがまるで絵本を見ているかのよう。
ファンタジックな大人の絵本を・・・ 思わずニヤニヤしてしまいます。フフ  

■嘘がばれた時・・・
普通だと医師はカンカンになって帰るところですが、彼は島に留まります。
ちょっと気になる女性エヴ(リュシー・ロリエ)だけが彼に嘘を付かず、自然体に接していたこともあるのでしょう。
彼女の口から真実を聞き、最初は怒り心頭だったけれど、彼女がワンクッションとなって、怒りもすーっと治まって行ったのではないかと思われます(=あくまで想像です・エヘ)


■■考察■■
出演者全員(=カナダでは有名)知名度の無い俳優ばかりです。
それが返って離島の雰囲気をかもし出し、良い味わいとなっています。



クローサー (2004) 公開(2005)
Closer
★★★☆
アメリカ 1時間43分
監督:マイク・ニコルズ
原作:パトリック・マーバー「クローサー」
脚本:パトリック・マーバー
出演:ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライヴ・オーウェン

パトリック・マーバー原作の同名戯曲の映画化です。
ある日、新聞記者のダン(ジュード・ロウ)は、車の事故で怪我をした女性アリス(ナタリー・ポートマン)を助け、間もなく二人は同棲を始めます。
1年後、処女小説の出版が決まったダンは、撮影スタジオの女性写真家のアンナ(ジュリア・ロバーツ)に一目惚れしてしまい・・・
ロンドンを舞台に、4人の男女の複雑に絡み合う恋愛模様を描いた作品です。

■恋愛の不可解さを描く、大人のラブ・ストーリー。
4人の行動に対して観る者それぞれが判断を下す、作品の意図を観客に委ねた作品です。
時には身勝手とも思える恋愛模様を描いている為、登場人物に共感出来る部分とそうでない部分があり、作品の好き嫌いが分かれそうです。

新聞記者、写真家、ストリッパー、医者、と4人それぞれが適役で、演技も素晴しい。特にナタリー・ポートマンがとても魅力的!

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
意外にもベッドシーンは殆ど出て来ません。
嫉妬、羨望、情熱などの心理的葛藤のみの描写ですが、観た後はかなり濃厚な印象が残り、演出の上手さを感じます。

恋愛というのはまさに人様々、枠にはめられないものなのです。

■私の捉え方
<本質を見ているか>
登場人物の中で、アリスだけが異質です。
新聞記者、写真家、医者、と、この3人は常に人を<見る>ことを対象とし、ストリッパーのアリスだけが唯一<見られる>職業なのです。
しかしながら、<見る>ことを生業としている彼らの恋愛はどこか不自然さを感じ、社会的に一番低い職業の<見られる>アリスだけがマトモな感じに見えます。
恋愛において、彼ら3人は、相手ときちんと向合っていたか?
新聞記者のダンは、何処か子供っぽさがある男性。
一途になり易いがその反面、自分に自信が無いのか相手を許せなかったり、執拗に探りを入れてしまう。
写真家のアンナは、一見すると思慮深そうに見えるが、意外と愛に流されやすく軽い女性。
ラリーに、ダンとのセックスを話していたことや、ダンとの破局の後何時の間にかラリーと復縁していることなどから伺えます。
医者であるラリーは、一途で情熱家であり、そして、実は周到にしたたかに計算している男性。
しかし、そんな彼もアリスの本名を疑い信じない。

自動車の接触事故がきっかけで、3人と関わり、そして、旅立って行ったアリス。
ニューヨークからロンドンにやって来た彼女は、あたかも「不思議の国のアリス」の如く風のようにやって来てまた元の場所へ戻って行ったのです。
ラストの慰霊碑に出て来る3人という言葉がそれらのことを暗示しているような気がします。
(=もし、事故が無ければアリスだけが3人と知り合わなかったかも。
後の3人は、アリスが居なくても巡り合っていたかも知れない)


■■考察■■
ジュード・ロウ・・・
今回は情けない表情が多かった彼ですが、スタジオで撮影している姿はカッコ良くやはり素敵です。

クライヴ・オーウェン・・・
ちょっと偏執的な性癖のある彼。
チャットでHな会話を交わしている時の表情がかなり可笑しく笑えます (=^∇^=)



皇帝ペンギン (2005) 公開(2005)
La Marche de l'empereur
★★★★
フランス 1時間26分
監督・脚本:リュック・ジャケ
声の出演:ロマーヌ・ボーランジェ、シャルル・ベルリング、ジュール・シトリュック
声の出演(日本語吹替版):石田ひかり、大沢たかお、神木隆之介

マイナス40度の極寒の南極に生息する皇帝ペンギン。
種の存続の為に安全な場所まで100km以上に及ぶ道のりを歩き、ブリザードの中を絶食しながらひたすら耐えて卵を温め、ようやく新しい命が誕生します。過酷な自然の中に生きるペンギンたちの姿を捉えたドキュメンタリーです。

■数多くの中のある一組のペンギンを、パパ、ママ、子供というファミリーに見立て、彼らの心情を代弁するようにそれぞれのナレーションによって進行して行きます。演出等一切無しのドキュメンタリーなので、お涙頂戴的なものではなく、心から感動出来る作品となっています。
美しい大自然の映像と、ペンギンたちの生息を知ることができる貴重な映像です。どちらかというとファミリー向け。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
ペンギンたちが隊をなして歩いて行く姿はまるでタキシードを着た人間のよう。しかしながら、彼らの愛らしい姿と、あまりに過酷な生き方の落差にビックリし唖然とします。

強く吹き付けるブリザードの中、寒さを均等にする為、内側に入る者は外側の者と交代します。そういった彼らの行動を見ていると、まさに人間。いや、それ以上の温かさを感じます。
個々に生きているようで実は集団としての絆があるのです。
子供の餌を得る為に来た道を戻る母親ペンギン、そして、その帰りを卵を温めながらじっと待ち続ける父親ペンギン。
この映画を観ていると、動物たちの「種の保存の神秘さ」を感じ、私たち人間の生活が傲慢にさえ思えます。
観た後は厳かな気持ちになる、素晴しい作品です。

■ナレーション、バックミュージック
元々ドキュメタリーは淡々とした方が好きなので、日本語吹替え版はドラマチックに盛り上げ過ぎな気がして、ちと興ざめ致しました。
もう少し言葉数を減らしても良かったかも。
バックミュージックも大仰なのでもう少し控えて欲しい。


■■考察■■
日本語吹替え版の石田ひかり(ママ)、大沢たかお(パパ)、神木隆之介(息子)は意見が分かれるところ。
「WATARIDORI」的なドキュメンタリーが好きな人には、彼らのナレーションが少々煩わしく感じられますが、
ファミリー向けとして観るならば全く問題ありません。
何となくNHKの子供向けドキュメンタリーな趣きも致します。エヘ



ザ・リング2 (2005) 公開(2005)
The Ring 2
★★★
アメリカ 1時間50分
監督:中田秀夫
原作:鈴木光司
出演;ナオミ・ワッツ、サイモン・ベーカー、デヴィッド・ドーフマンエミリー・ヴァンキャンプ、シシー・スペイセクエリザベス・パーキンス

ジャパニーズ・ホラー「リング」(=鈴木光司原作)を2002年にハリウッド・リメイクした「ザ・リング」、本作品はその続編です。
原作や日本版「リング2」とは関係のない、ハリウッドで新たに書き下ろされたオリジナル脚本です。
監督は日本版「リング」を手掛けた中田秀夫監督。
主役は前作に引き続きナオミ・ワッツ。

前作から半年後。
死を免れたレイチェル(ナオミ・ワッツ)とエイダン(デヴィッド・ドーフマン)の親子は、心機一転する為小さな田舎町へ引越しして来る。ところが新生活も束の間、またしても再びビデオテープの呪いが復活する・・・

■日本版とは全く関係の無い、あくまでハリウッドの映画なので、日本版の「リング」を念頭に置かずに観る方が良いでしょう。
可も無く不可もなく普通のホラー。
日本版「リング」や前作が気に入っていた人はかなりガッカリしそうです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
母が一発奮起して、サマラの生い立ちや過去を暴き出し探り当てます。
今回は特に母と子の親子愛を感じる設定です。
脚本、演出等アメリカ人好みになっています。

日本版や前作にはあった日本特有のじわじわとした怖さ、不気味さ、陰湿さや精神的に追い詰められていく恐怖感が無く、理路整然し過ぎていて怖さを感じません。
謎は明確に解け、ラストもきちりと締めた感じです。
恐怖の余韻に欠け、後に引きずることもありません。

随処でもっとじっとりした嫌な雰囲気を作り出せると思うと残念ではありますが、水を使った演出など中田監督の美学を感じさせる部分が有り、その点は評価に値する部分であります。
さらに続編を作れる終わり方だと思ったら、「3」は既に決定済だそうです。

■まとめ
恐怖で歪んだ顔の死体が「最終絶叫計画」シリーズのマスクマンに見えたり、エイダン演じるデヴィッド・ドーフマンがミョーに大人顔だったり、違ったところで楽しませて貰いました。
しかし、一番怖かったのは、鹿に囲まれるところかも。
前作は「馬」で今回は「鹿」すなわち「ウマシカ・・・馬鹿・・・!?」
それにしても、恐怖の伝染というより、悪魔との対決になって来た気が致します。
一番の謎は、何故サマラはあの親子を執拗に追い掛け回し、本当の母の所に行かないのだろう??不思議だ。


■■考察■■
ナオミ・ワッツ・・・
前作に引き続いて主役で登場しているのがせめてもの救い。
彼女の出演で助けられた感有り、です。

シシー・スペイセク・・・
特に精神を病んでいるとは思えず、そこら辺に居る普通のおばさんぽい。



スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 (2005) 公開(2005)
Star Wars  Episode 3 Revenge of the Sith
★★★★☆
アメリカ 2時間21分
監督・製作総指揮・脚本:ジョージ・ルーカス
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ユアン・マクレガーナタリー・ポートマンヘイデン・クリステンセン、イアン・マクディアミッドサミュエル・L・ジャクソンクリストファー・リー

1977年から始まった“スター・ウォーズ”シリーズの最終作。
アナキン・スカイウォーカーがダークサイドへ落ちて行く過程を軸に、アナキンとパドメ、ジュダイの騎士達、共和国の運命を描きます。
旧三部作から続いた謎が全て解き明かされる完結編です。

■第一作目から28年の歳月を経て完結されたこの作品。
まさに有終の美を飾るに相応しい作品です。
最後を締めくくるに相応しい充実した内容で、最初から最後までワクワクドキドキの興奮状態です  (=^∇^=)

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
旧三部作と新シリーズを繋ぐ、云わば橋渡し的な位置にありながら、様々な謎を解き明かして行く完結話でもあります。
最初に作られた旧三部作により既に結末は決まっているので、
本作は、「1」「2」と続きながらも、旧三部作に繋がる中継地点であり完結話であるというもの。
作り手としては、何ともやりにくい部分もあったと思うのですが、
数々の謎や疑問もストーリーに溶け込みつつ鮮やかに解明されて行き、見る者を圧倒する素晴しいCG映像など、観客を唸らせるほどの見事な出来栄えとなっています。
特に、第一作目から追いかけて来た往年のファンにとっては感慨深いものがあるのではないでしょうか。


■■考察■■
ヘイデン・クリステンセン・・・
「2」の時は若々しさが全面に出て少々青臭かったですが、今回はことさらに男を感じ、違ったカッコ良さがありました♪
“悪”というものは、ある意味魅力的な要素の1つなのかも。


ナタリー・ポートマン・・・
相変わらずの美しさです。
今回は身重の為、前作とは違い、やや気弱な
“妻”の表情になっていたのが印象的。



千年湖 (2003) 公開(2005)
The Legend of The Evil Lake
★★★
韓国 1時間32分
監督:イ・グァンフン
出演:チョン・ジュノ、キム・ヒョジン、キム・ヘリ

朝鮮半島を統一した新羅も各地の反乱で衰退し末期を迎えようとしていた。ジンソン女王(キム・ヘリ)に仕えるビハラン将軍(チョン・ジュノ)は、数々の戦闘でめざましい戦歴を残し国に貢献する。が、それを快く思わない者が現れ恋人ジャウンビ(キム・ヒョジン)は殺害されてしまう・・・
運命に翻弄される男女を軸に描いた、壮大な歴史劇&ラブ・ストーリーです。

■ラブ・ロマンスながらホラーな味わいがある不思議な作品です。
チョン・ジュノがとてもカッコイイので彼のファンは必見!

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
中盤以降、ややホラーがかった展開になります。
ジャウンビが空を飛ぶワイヤー・アクションや気功?などのアクション、メイクなど、少々マンガチックで可笑しさも込み上げて来ます。
また、戦闘シーンは、腕がスパッと切れ頭が吹っ飛び血飛沫が舞う激しさ。
しかしながら、“遠くて近い国”異国の地、韓国なので、こういうのも有り、とすんなり受け入れられたりします  (=^∇^=)

キム・へリ(ジンソン女王)の衣装、宮廷は豪華絢爛。
戦闘シーンもそれなりに工夫されては居るのですが、少々こじんまりとまとまり過ぎていてとても一国を挙げての闘いには見えません。
地方の豪族同士の争いに思えてしまいます。

■まとめ
戦乱の世にそっと温かい愛を育んできた二人。
ジンソン女王のビハラン将軍に向ける信頼と愛。
3人の男女が絡み合う恋愛模様に、アウタ一族の千年にも渡る激しい怨念、宮廷内の陰謀、忠誠心溢れる部下の活躍などが加わり、てんこ盛り状態になっています。
切なさと、呪術の禍々しさと、激しさと・・・
いろんなものがごった煮になって中途半端な感じは否めませんが、なかなか楽しめる作品ではあります。
主演の二人が良いのも効いてます。


■■考察■■
チョン・ジュノ・・・
同時期に公開の「大変な結婚」の彼は、ペン・ヨンジョン似の甘く優しい癒し系タイプ。本作品では、癒し系にさらに男らしさとガッツを兼ね備え高感度UPです。

キム・ヒョジン・・・
村の娘の時は控え目で清楚な女性、怨霊に憑依されてからは一気に雰囲気が変わり、派手派手メイクのホラーがかった装いに。
ふとした表情が常盤貴子に少し似ていると思いました♪



ターネーション (2004) 公開(2005)
Tarnation
★★★
アメリカ 1時間32分
監督・編集・主演:ジョナサン・カウエット
製作総指揮:ガス・バン・サント、ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演:ジョナサン・カウエット、本人とその家族、友人

現在31歳のジョナサン・カウエットが、11歳の頃より撮りためた膨大な写真や映像、留守電メッセージの音声などを編集し、自らの人生の軌跡を描いたヒューマン・ドキュメンタリーです。
精神を病み精神病院の入退院を繰り返す元モデルの母、幼少の頃別れた父の存在、里親での虐待・・・
いろいろな要素が重なり自らも精神のバランスを崩して行ったこと(=精神と肉体の分裂する離人症という病)、自分がゲイであることなど、自らの半生を見つめ描いた作品です。
家庭用PCのiMovieで編集されたこの作品の製作費は218ドル(約2万円)、超低予算で作らたことも話題となっています。
全米批評家協会賞最優秀ノン・フィクション映画賞、ボストン映画批評家協会賞最優秀初監督作品賞、ロサンゼルス映画祭最優秀ドキュメンタリー賞、ロンドン映画祭最優秀初監督作品賞など受賞。
カンヌ映画祭 ・ トロント映画祭 ・東京国際映画祭正式出品。

■かなり人を選ぶ作品です。
普段から映画をよく観る人や、こういった題材に興味がある人向け。
自分の場合、嫌悪感や不快感というより、辛く、疲労感を覚える作品でした。

とにかく編集センスの良さを感じます。
随処に挿入される音楽も場面場面で効いています。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
この映画の軸となるのは、彼(ジョナサン・カウエット)と母親の関係です。
彼は、精神の崩壊の危機に陥り、何とか今の状況から脱しようと単身テキサスからニューヨークへと移り住みます。
環境を変えて順調だった彼。
しかし、ある日、薬の副作用で苦しむ母のことを知り、今まで距離を置いて来た母と向合う決心をします。

彼の鬱積した気持ちや苦しみ、行き場の無い憤り。
そういったものを、映像という手段によって自己を表現することにより昇華出来たのだと思います。
過去を見つめ直し、それを受け入れることが大切なのです。

■思ったこと1
彼の壮絶な半生は、ちょっとしたことが少しずつ重なり、坂道を転がるかの如く堕ちて行きます。
ちょっとした流れで変わったかも知れない運命。
そして、その流れを自分で変え、変えることが出来た人生。
皆、それは後から思うことで、人は、人の行く道の、人生のはかなさを思うのです。

■思ったこと2
自分の存在を認めて、愛して欲しい・・・強烈なメッセージが痛いほど伝わって来ます。
しかしながら、映像から見て取れるのは、自分を愛し、自分に酔った、自分を美化した姿です。
彼と彼の周りの人の決して幸福とは言えない人生については同情しますが、観ているこちらとしては何とも複雑な気持ちにさせられてしまいます。

■しかしながら・・・
1時間32分という短い映画ながら、何とも長く感じました。
特に、パンプキンを持って踊る母の映像は、どうしてこんなに長く流すのだろう?と思う位に長かったです。
観ていてこちらも辛くなる作品でしたが、最後に母と息子がそっと寄り添って寝ている姿を見て、今までの疲れた気分がすっと引いて行ったのでした。


■■考察■■
ジョナサン・カウエット、意外と男前だ。
映像センスもあるが、無名にしろ俳優をやれるという器量の持ち主であることも、彼の運命に寄与している。



ダニー・ザ・ドッグ (2005) 公開(2005)
Dunny the Dog
★★★
フランス・アメリカ 1時間43分
監督:ルイ・レテリエ
製作・脚本:リュック・ベッソン
出演:ジェット・リー、モーガン・フリーマン、ボブ・ホスキンス、ケリー・コンドン

「キス・オブ・ザ・ドラゴン」以来、再び二人がコンビを組んだ作品です。
製作・脚本リュック・ベッソン、主演のジェット・リーは前作同様。
ヒューマン・サスペンス・アクション。
5歳の時に誘拐され、犬のように育てられたダニー(ジェット・リー)
人間としての感情を失い殺人マシーンと化したダニーは、盲目のピアノ調律師サム(モーガン・フリーマン)との出会いによって変わって行くが・・・

■原作はコミックかと思うようなストーリー、ご都合主義、何とも荒唐無稽なお話なのですが、何故か惹き付けられる摩訶不思議な映画です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
殺人マシーンとして育てられ人間的な感情を失った男が、盲目のピアノ調律師やその娘と出会ったことにより、人間性を取り戻し、豊かな生活を歩み出そうとするが・・・
そうはどっこい!ダニーの養父が彼を取り戻そうと躍起になる。
よくある話といえばそうですが、「犬」という設定、ジェット・リーの起用により、今までに観たことも無い斬新な映画となりました。
ラストは涙が出そうな位感動しそうなものですが、意外と感動が湧いて来ません。

■さまざまな不思議
□調律師サムは自身が盲目であるのに、得体の知れない男を簡単に家に招き、もてなし、泊まらせる。
普通、年頃の娘が居たらそんな危険なことはしないと思うのですが・・・
□娘ヴィクトリア(ケリー・コンドン)も、初対面の男に最初から妙に馴れ馴れしく親しく接する不思議さ。この親子は警戒心とかは無いのか?
□高利貸しのバート(ボブ・ホスキンス)
車がひっくり返るほどの大事故や、弾丸をくらっても、実は生きていた、、という安易な設定。2回とも車でのシーンと言うのもお粗末。
□ジェット・リー・・・
大人子供のような、一体歳は幾つなんだ!?と思ってしまう。
最初の犬の役柄はファンとして観たくなかった気もする。
子供みたいな無邪気さも、5歳のまま成長が止まっている意味なのだろうが、その中でも成長した部分があるだろう。あまりに単純な表現、もう少し含みを持たせた人間像を描いて欲しい。
□高利貸しのバート・・・
金儲けをしている割には、倉庫に事務所を構えて何とも貧相な暮らし。
まあ、その人の趣味と言えばそうなのですが。
□終盤、ダニーはバートを殺そうとしてサムに「殺人者になるのか!」と一喝されて留まる。しかし、ダニーは今までたくさんの人を痛めつけ殺しているのでは?

トンデモ映画の一種ですが、アクションあり、家族愛あり、そして、なかなか面白いのであります。


■■考察■■
ジェット・リー・・・
今回は、カンフーというより「喧嘩」的な闘いっぷりです。
やや暴力的でありますが、そこはジェット・リー、ストリートファイト的な荒々しい格闘シーンの中にも華麗さと美しさがあります。



チーム★アメリカ ワールドポリス (2004) 公開(2005)
Team America : World Police
★★★☆
アメリカ 1時間38分
監督:トレイ・パーカー
製作・脚本:トレイ・パーカー、マット・ストーンパム・ブラディ

「サウスパーク(無修正映画版)」のトレイ・パーカー&マット・ストーンによる人形劇です。
地球の平和を守る為、平和を乱すテロリストに対抗すべく結成された組織“チーム・アメリカ”
世界中のさまざまな争い事に介入する“世界の警察アメリカ”を強烈に皮肉ったパロディ映画です。R−18指定。


■お馬鹿、お下劣、お下品と三拍子揃った、アクション&お笑い系パロディ映画です。
かなり好き嫌いが分かれそうです。
ブラックユーモアが好きな方には堪らないほど楽しい映画で、真面目な方はクッと眉をひそめそうです。
「サンダーバード」風のパペットやセットは精巧に丁寧に作られ、唸るほどの見事な出来栄え。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
目的を遂行する為には手段を選ばない“チーム・アメリカ”
世界の名所をぶち壊し、テロリストたちを無差別に殺しまくる彼らは正義の名の元に実にあっけらかんとしていて爽やか。
単なる反アメリカ映画ではなく、右も左も容赦なくぶった切ります。
9.11同時多発テロを意識したパロディ(=アラブ人らしき人々の描写、暮らしぶりなど)は、可笑しさながらも、ここまでやって大丈夫?と思える過激さです。
最新鋭の戦闘機などでさっ爽と飛び出す彼らはまさにアメリカ!
アメリカそのものを思いっきり皮肉っていてそれがまた爽快感があります。

■標的になるのは・・・
大国アメリカ、某国国家主席(=金正日)
マイケル・ムーア監督、ジェリー・ブラッカイマー
ハリウッドの大スター(アレック・ボールドウィン、ジョージ・クルーニー、ショーン・ペン、マット・デイモン、ベン・アフレック、キューバ・グッディング・Jr、スーザン・サランドン、ヘレン・ハントなどなど多数)

■特に・・・
金正日の茶化しっぷりは、本人が観たら卒倒しそうです。
恐怖政治の裏には、実は孤独で寂しがり屋な面が・・・意外と当っているのかも知れません。
ラストは、金正日は実は宇宙生命体(=何と!ゴキブリ)に操られていたというオチつきです。こ、これは、あまりにも本人に悪いと思ってのことでしょうか  (=^∇^=)
リベラル派のマイケル・ムーアもヒドイ。
声高々に主張し、バクダンを持って騒ぎ立てる姿は、彼の映画の手法を皮肉っているようです。

■ハリウッドのセレブたち
スターそっくりのパペットたちや替え歌から、アメリカ本国での評判をうかがい知ることが出来ます。
キューバ・グッディング・Jrが大作の主人公を熱望しているとか、ベン・アフレックの演技の下手さ、「パールハーバー」の評判、マット・デイモンがひたすら自分の名前を連呼することなど、観ていて「本人が観たら何と思うのだろう?」と心配になってくるほど  (=^∇^=)

■音楽が最高!
バックミュージックが実に効果的に使われていて笑いを誘います。
特に可笑しいのが、「パールハーバー」&ベン・アフレックを茶化した歌、映画を作る際に使うモンタージュ技法の歌(=ズブの素人が短期間に達人に変わるアレ)
あと、ゲロ吐きシーンやショッキングな出来事の時に流れる大袈裟な曲も可笑しい(=映画では普通に使われているのをコケにしているのだろう)

■素晴しいパペット
パペットの顔が精巧に作られている為、表情の変化が素晴しいです。
「アッ!」と驚いた時の口を開けた顔や、恋人を失った時の哀しみの表情など。
あと、フェラをして貰う時の表情やセックスシーン(=数々の体位を披露!)などエッチ的ではあるのだけれどパペットだからかあまり嫌らしさを感じず、やや引きながらも可笑しいです。


■■考察■■
過激なセックスシーンや首が飛んだり胴真っ二つなどの惨殺シーンも登場しますが、パペットだからか嫌らしさや嫌悪感は感じません。
これをもし生身の人間が演じていたらかなりグロイかも・・・
「サンダーバード」風の目のパチクリした愛らしいパペットだからこそ出来る芸当でしょう。



バタフライ・エフェクト (2004) 公開(2005)
The Butterfly Effect
★★★☆
アメリカ 1時間54分
監督:エリック・ブレスJ・マッキー・グルーバー
出演:アシュトン・カッチャー、エイミー・スマートウィリアム・リー・スコット、エルデン・ヘンソンメローラ・ウォルターズ

不幸に陥った時、誰しもが思う「もしもあの時違う選択をしていれば・・・」
過去に戻り、その後の人生を書き換え愛する人を救おうとする、SF・サスペンスドラマです。
※「バタフライ・エフェクト」とは、
「ある場所で蝶が羽ばたくと、地球の反対側で竜巻が起こる」
初期条件のわずかな違いが、将来の結果に大きな差を生み出す、という意味のカオス理論の一つ(=公式サイトより)

■昔より何度と無く使われて来たアイデアですが、古さを感じさせず見応えある作品となっています。
近頃ありがちなタイムパラドックス、記憶喪失モノとは一線置いています。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
悲惨な生活を送るケイリー(エイミー・スマート)を救おうと、過去へ戻りポイントとなる箇所(=その後の人生を大きく変える分岐点)の修正を試みるエヴァン(アシュトン・カッチャー)
しかし、修復をすると必ずその後別の誰かが不幸になってしまう。
何度も何度も過去へ戻るが上手く行かず、最後に彼が取った手段は、幼少の頃に戻りケイリーと知り合わないようにすること。
誰かを救おうとすると、必ず他の誰かが犠牲になる。
宇宙の法則?なのでしょうか。
彼は彼女のことを思い、その後の二人の人生に接点を持たないようにしますが、それこそが彼にとって一番辛い選択だったのかも知れません。
切ない、これこそ「真の純愛」を思わせる物語です。


■ラストは・・・
公開バージョンとディレクターズカット版とあるそうです。

■■考察■■
ケイリー演ずるエイミー・スマート・・・
エヴァンが人生を書き換える度、その後のケイリーの境遇はコロコロと変わります。
ピチピチの女子大生と、落ちぶれたウェイトレス、売春婦など、美人とそうでない時の落差が激しく観ている方もビックリ。



バットマン・ビギンズ (2005) 公開(2005)
Batman Begins
★★★★
アメリカ 2時間20分
監督:クリストファー・ノーラン
原案:デヴィッド・S・ゴイヤー
脚本:クリストファー・ノーランデヴィッド・S・ゴイヤー
出演:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、リーアム・ニーソン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマン、渡辺謙、ケイティ・ホームズ、キリアン・マーフィ、トム・ウィルキンソン、ルトガー・ハウアー、ライナス・ローチ、

“バットマン”シリーズの第5作目。
「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲」以来8年ぶりの映画化です。
本作品は、シリーズ1作目より遡った内容で、主人公ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)がバットマンとして活躍するまでの誕生秘話を描いたものです。
大富豪の御曹司として何不自由ない幸せな暮らしていたブルース・ウェイン少年。しかし、浮浪者により両親が殺害されてから彼の生活は一変してしまう。

■コミックのファンの方にも、そうでない方にも満足出来る、完成度の高い作品です。
お子様向けではなく、どちらかと言うと大人が楽しむ雰囲気。
単純になりがちなコミックの映画化も、多彩なキャストの起用によって、ゴージャスで盛り上がる内容になっています。
主人公に超能力など特殊能力の無いが為に、極めて現実味のあるドラマになっているのも特徴。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
幼少の頃に体験した恐怖や恐れ。
そして、両親の死の発端を作ってしまった(=と、自分で思っている)自分自身への罪悪感、耐えがたき抑えきれない犯人への復讐心など。
ごく普通の人間が持つ心の闇や葛藤を抱えた主人公。

彼は、自分の心の内面に向合い対峙し、乗り越え、克服して行く。
そして、父から受け継いだ弱者への救済精神をもってバットマンは誕生するのです。
身近な人の死によって誕生したバットマンは、ただ単に正義のヒーローでは無く、自身が認めている様に「恐怖のシンボル」いわゆる「闇の番人」なのです。

ブルース・ウェインやその周辺の人々、大の大人たちが嬉々としてバットグッズやコスチュームを作り上げて行くのが可愛い  (=^∇^=)


■■考察■■
クリスチャン・ベール・・・
前作「マシニスト」で30kg近い減量をしたベールですが、今回では元の身体に戻っていたのでビックリしつつも安心致しました。
胸板、腕などマッチョの風格を漂わせつつほど良い筋肉の付き方。
脂肪が付いてぷるぷる状態にもなっておらず、さすが映画俳優としてのプロ根性!素晴らしい精神力であります。
作品とは違った意味でつくづく感心致しました♪



ヒトラー 最期の12日間 (2004) 公開(2005)
Der Untergang
★★★★
ドイツ・イタリア 2時間35分
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
原作:ヨアヒム・フェスト「ダウンフォール(邦題:ヒトラー 最期の12日間)」、トラウドゥル・ユンゲ「最期の時間まで(邦題:私はヒトラーの秘書だった)」
出演:ブルーノ・ガンツ、アレクサンドラ・マリア・ラーラトーマス・クレッチマン、クリスチャン・ベルケル

1945年4月20日、ベルリン。
ドイツ軍は連合軍の激しい攻撃に追い詰められ、敗戦は時間の問題となる。ヒトラーとその幹部たちは、官邸の地下要塞に避難し、今まさに最期の時を迎えようとしていた・・・
地下要塞で過ごした最期の12日間を、ヒトラーと彼を取り巻く人々の視点から描いた戦争ドラマです。

■ヒトラーとその側近たちを生身の人間として描いています。
なので、この映画を観て、ドイツ側の感傷的な作品と捉え拒否反応を起こす人も少なからず居るかも知れません。
しかし、この映画は、決して戦犯者寄りに描かれたものでは無く、距離をおいて冷静な視点から見つめた作品なのです。
表面そのままを受け取るので無く、その奥に隠された深い意味を考えて観て欲しいです。

ヒトラーの死に至る前後、側近たちの取った行動など、歴史学者や生存者などから得た情報を元に作られており、歴史的に観ても価値ある作品です。
ブルーノ・ガンツの鬼気迫る演技が本当に素晴しい。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
ヒトラーが自害するに至った経緯や、ヒトラーの後を追って自殺する側近家族、ヒトラーを慕う者、そういった人々の描写がやや感傷的に受け取れる部分もあります。
これらは全体を通してドイツ側の人間の視点から見ている為であり、
彼らもまた家族思いの普通の人間であり、ヒトラーに関しては、冷徹で残虐な人間でありながら、私的には温和な一面も持ち合わせていることが分かります。
ヒトラー、その側近たちを、一般的に受け取られている画一的な冷酷・残虐なイメージでなく、生身の人間そのものとして描いています。

どこにも居そうな普通の人間が集まり、何の疑問も持たず(=或いは流され)起こした恐ろしい狂気の戦争。
誰にでも起こり得る、その恐怖が静かに語られているのです。

もはや正常な判断力を失ったヒトラーが、自分の中にある僅かに残った希望の為だけに、周囲の進言を聞かず戦争を続ける。
誰の目から見ても敗戦は明らかであるのに、誰もこの狂人を止めることが出来ない。
頂上に立つ人間一人が愚かであるが故の悲劇。
国民の為の戦争と言いつつ、窮地に陥ると、市民は自業自得だと言い放つ。
その国民は総統の為、国家の為に戦っているというのに。

正常な判断が出来ないヒトラーを前に、何とかして生き延びようとする者、諦め自決する者、最期まで総統と運命を共にしようと決心する者、酒に溺れる者・・・
すぐそこにまで迫った破滅を前に極限状態に陥った者たちの、様々な人間の姿が見て取れます。

■■考察■■
ブルーノ・ガンツ・・・
見た目も人間性も(=きっとこんな風だったのだろう)ヒトラーに酷似していてビックリ。演技をするに当ってかなり研究したようで、まさにヒトラーそのものを見ているようでした。

「es[エス]」に出演していたクリスチャン・ベルケルも前作同様、骨太の男を演じています。
俳優陣は全体的に演技過多で無く、そのままの一個人の人間を演じていて好感持てました。



ビフォア・サンセット (2004) 公開(2005)
Before Sunset
★★★★
アメリカ 1時間21分
監督:リチャード・リンクレイター
製作:リチャード・リンクレイター、アン・ウォーカー=マクベイ
脚本:リチャード・リンクレイター、ジュリー・デルピー、イーサン・ホーク
原案:リチャード・リンクレイター、キム・クリザン
出演:イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー

「恋人たちの距離(ディスタンス)」(1995年ベルリン映画祭、銀熊賞(監督賞)受賞)の続編です。
監督、主要キャストは前作と同じ。
9年前にユーロトレインの車内で出会い、ウィーンで一夜を共に過ごしたアメリカ人のジェシー(イーサン・ホーク)とフランス人のセリーヌ(ジュリー・デルピー)
半年後に再会の約束をしたものの、その約束を果たせぬまま9年の月日が流れて行った。作家になり仕事でパリに来ていたジェシーは、偶然セリーヌと再会を果たすが、一緒に過ごせるのはジェシーが飛行機の出発時間までの85分だけ・・・
大人の為のラブ・ロマンス映画です。

■会話から発せられる二人の想い、パリの街並みなど、心地良さを感じさせる小品です。
本作品は上映時間が81分、二人が再会してから彼が飛行機に乗るまでの時間85分とほぼ同じ時間なので、観ているこちら側も二人のやり取りがすぐ傍でのことのように感じリアルさが伝わって来ます。

前作を観ていなくても充分伝わって来る内容です。
もちろん、前作を観ておいたことに越した事はありません。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
最初から最後まで延々と会話が続く会話劇です。
この二人のやり取りが面白いと感じるか、少々退屈と感じるか。

■お互いの気持ちを探りあう・・・
偶然にして出会った二人ですが、そもそもは、セリーヌが行きつけの本屋さんでジェシーが来店するのを知ったことから。
セリーヌは本音をあからさまに出さず、少しずつ会話に想いを忍ばせるアプローチの仕方。対し、ジェシーはその表情や会話、行動等から直接的なものを感じさせます。
男女の違いと言うか、駆け引きの違いが見て取れるシーンが幾つか登場します。

■ラストは・・・
ラストは曖昧に唐突に終わります。
観客にその後の展開を委ねる終わり方なのですが、その後を自分なりに予想すると、、
□セリーヌのアパートに入ってから妙にリラックスした雰囲気に
□歌を歌い心情を告白
□ジェシーの表情がためらい感から徐々に期待感に変化
等から、ジェシーは飛行機をキャンセルしてセリーヌのアパートに泊まり、アメリカには翌朝帰ったと思われます。
作品自体が、「その一瞬の時間を大事にしたい」という趣向が伺えるので、とりあえず一晩は一緒に過ごし、それ以降の展開は何も考えられないということでしょうか。


■■考察■■
途中、前作の若かりし頃の二人の姿が映し出されます。
9年間という歳月は、二人の歳を確実にさらけだし、また、二人が歩んで来た道のりを物語っています。
歳月を味方に引き入れた優れた作品であります。



フォーガットン (2004) 公開(2005)
The Forgotten
★★☆
アメリカ 1時間32分
監督:ジョセフ・ルーベン
出演:ジュリアン・ムーア、ドミニク・ウエスト、ゲイリー・シニーズ、アルフレ・ウッダード、ライナス・ローチ、アンソニー・エドワーズ

飛行機事故で最愛の一人息子を亡くしたテリー(ジュリアン・ムーア)は、事故から14ヶ月経っても立ち直れず苦しんでいた。
ある日突然、息子の写真が無くなり、息子の痕跡、そして遂には息子の存在すら無くなってしまった・・・
全ては自分の妄想なのか?真実を得るために奔走する主人公の姿を描いたサスペンス・スリラーです。

■ストーリーよりジュリアン・ムーアの演技の上手さが際立つ作品。
呆気に取られるか、はたまた意外と良い映画だと思うか、、どちらかです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
この手の映画は、二つの結末が考えれます。
1つは、ストーリーそのまま受け止めた考え方。
全ては宇宙人の仕業によるもので、最後は宇宙人の好意?により、息子も戻りテリーもテリーの周りの人々もハッピーエンドとなるもの。
もう1つは、いわゆる「夢オチ」或いは「妄想オチ」です。

ストーリー上、??と思える部分が多々あり。
□記憶を失った人が一斉では無く、主人公以外都合の良いように次々と記憶を消されて行く。
□都合が悪くなると、いきなり、「ドピューン!」と空に吹き飛ばされてしまう。主人公テリーと相手役のアッシュ(ドミニク・ウエスト)は絶対吹き飛ばされない。
□「親子の絆」を調査しに来た宇宙人が失敗すると分かるや否や、「ドピューン!」と空に吹き飛ばされ戻されてしまう。そして、その後、再び元の状態に戻してくれる。何と親切な宇宙人たちよ。
□保安局はテリーを捕らえてどうするつもりだったのか?
何もかもお見通しの宇宙人になす術は無かったのでは?
・・・と、数え上げればキリが無いほどの疑問が出て来ます。

つじつまが合わない、あまりに整合性の無い本作品。
ありのままに受け止めると、謎は全て宇宙人による超常現象ということになります。
が、「妄想オチ」だと、テリーは実は精神疾患を患い妄想を見ていた、数々の事は全て彼女の妄想だった。そう考えると、ラストのあのシーンは納得の行くものになります。
鳥肌が立つくらいに哀しくやり切れない、前者とは正反対の終わり方となります。

作品的にはどちらにも解釈出来るのですが、「妄想オチ」だとラストはもう少ししっかりと表現してくれないと観客には伝わりにくいです。
結果、どちらにしろ脚本の甘さが感じられる作品となってしまいました。


■■考察■■
ジュリアン・ムーアが全速力で走る走る!!!
彼女の走りっぷりがあまりに凄いので、観終わった後はそれしか印象に残らないです  (=^∇^=)
ジュリアン・ムーアの演技力は言うまでも無く、他の出演者もそこそこに知名度があり手堅い演技。
しかし主人公の相手役に華が無く、また、ラブシーンの1つも無い為、少々面白さに欠ける一面も。
ストーリー展開も脆弱で全体的に地味な印象を受け物足りなさが残ります。ゲイリー・シニーズ、アルフレ・ウッダード等が脇を固めているだけに残念です。



ブレイド3 (2005) 公開(2005)
BLADE : TRINITY
★★★
アメリカ 1時間54分
監督・製作・脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー
出演:ウェズリー・スナイプスクリス・クリストファーソン、ドミニク・パーセル、ジェシカ・ビール、ライアン・レイノルズパーカー・ポージージョン・マイケル・ヒギンズトリプル・H

人間とヴァンパイアの混血であるヴァンパイア・ハンター、ブレイド(ウェズリー・スナイプス)の活躍を描く人気シリーズの第三弾、最終章です。
今回は、ブレイドと人間のヴァンパイア・ハンター集団「ナイトウォーカー」が手を組み、吸血鬼集団と彼らによって4000年の眠りから呼び覚まされ現代に蘇ったヴァンパイアの始祖・ドレイク(ドミニク・パーセル)と闘います。
アクション・ホラー映画。

■何も考えずに楽しめる映画。
2作目よりアメコミ調が強くなっています。
ダークなホラーさも薄く、どちらか言うと、銃、刀、弓と格闘に重点を置いた格闘アクション系です。
ドカーンドカーンとガラスが割れ吹っ飛ぶシーンが多いのも特徴。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
ツッコミが多過ぎて、これは、ただ単に楽しむことに没頭しましょう♪

■ドミニク・パーセルのヴァンパイアは・・・
どう見ても、マフィア系か、ヒカリモノをつけた兄ちゃんにしか見えない。
或いは、単細胞で突っ走るお坊さんか。
どちらにしろ、女を惑わす色気に欠け、マッチョのみが強調されたヴァンパイアです。
ヴァンパイアに変身した時もビックリ!!
エイリアン、または、TVの変身ものキャラクターの怪人・・・

■エンドクレジットの後にワンシーン、意図するものは?
「WORD」という文字と共に、ブレイドが車で立ち去るシーンがあります。
「お前に一族の未来を託す」とドレイクが最後に残した言葉と繋がりがあるような、、
最終章と言いつつ、続編が作られるような予感大です  (=^∇^=)ヘヘ

■■考察■■
ウェズリー・スナイプス・・・
何かをした時の決めポーズが相変わらずカッコイイ。
今回は見せ場がやや少なかったように思われ、ちと残念。

ジェシカ・ビール、へそだしルックで奮闘。
ライアン・レイノルズ、マッチョに囲まれながらも、細身の体で奮闘。
細身ながら意外と締まった体つき。



ミリオンダラー・ベイビー (2004) 公開(2005)
Million Dollar Baby
★★★★☆
アメリカ 2時間13分
監督・製作:クリント・イーストウッド
脚本・ポール・ハギス
原作:F・X・トゥール「テン・カウント」
出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン

老トレーナーのフランキー(クリント・イーストウッド)と女性ボクサーのマギー(ヒラリー・スワンク)二人の厳しく孤独なボクシングの世界に掛けた人生を、雑用係りエディ(モーガン・フリーマン)のナレーションで綴る壮絶なヒューマン・ドラマです。
2004年、アカデミー賞、作品賞、主演女優賞、助演男優賞、監督賞受賞作品。

■重厚にして、崇高、観る者を圧倒させる素晴しい映画です。
人生について、愛について、問う人間ドラマです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
光と影の映像美。
特に影を多用した演出が素晴しい。
まさに人生の「闇」と「光」を表しているかのようで、「影」の部分が多いのもまた主人公たちの生き方に通じるところが有ります。
人間の輝きは一瞬にして、それはまさにリングの上のスポットライトの如く・・・

■人間賛歌の映画
フランキーは、ビッグ・ウィリー(マイク・コルター)のチャンピオンへの挑戦を最小限のリスクに抑えたい為、あえて踏み止まらせている。
また、フランキーは、エディの過去(=無理な試合を続行させてしまい、片目を失明してしまう)に対して払拭しきれないものを持っている。
そして、マギーのボクシングへの挑戦・・・
今までフランキーは、選手のことを考え、チャンピオンマッチを踏み止まらせたり、過去の自分の行動に対して悔いている。
しかし、実際のところ当の本人はどうだったろう?
結果的にビッグ・ウィリーは他へ移籍してチャンピオンになり、エディも自分の試合に悔いを残しては居ない。
むしろ、あそこで完全燃焼しなかった方が悔いが残るのでは無いか?

マギーは、結果的にああいう状態になってしまったけれど、彼女の人生に悔いはなかっただろう。
むしろ、フランキーに感謝している。

他人が思っている以上に、自分の人生は悔いの無い充実したものだった。人がどう思おうと、自分の人生は、他人の尺度では測れない自分だけの人生。
フランキーは、今まで踏み込もうとしなかった(=理解出来なかった)ことが、マギーの出現によって、確実に変わって行った。
チャンピオンへの道を駆け抜けるように昇って行ったこと、最後に彼女の生命を断ったこと、二人は共に「生」を共有し、「生」を終えることが出来た。
これはある意味、強くなければ出来ない、それが「愛する人を守る」に通じるのです。
暗く辛いところばかりがクローズアップされますが、この作品から滲み出るものは、人生の辛さ厳しさと言ったものをベースにした、温かい心が通う人間賛歌の映画なのです。


■娘への手紙
娘と父との確執は、恐らく今までの経緯から推測すると、発端は娘の行き方を理解出来ず、それで仲違いになったのではないかと思われます。
何度も何度も出しても返却される手紙。
一見すると、娘との関係は修復不可のかと思われますが、父の元へ戻って来る手紙は、細い糸のようではあるけれど僅かな繋がりがあるということ。
完全に断絶したいのであれば、手紙は捨て、そこでお終い。
人間は無視をされるのが一番辛いものなのです。
最後、ドアの下に、娘から戻って来た手紙を見て、フランキーは少し微笑んだように見えます。
今まで娘に対して喪失感しか無かったのが、マギーとの一連の関わりで何かを悟ったようにも見受けられます。

■「海を飛ぶ夢」とは似て非なるもの・・・
同時期に公開された「海を飛ぶ夢」がよく引き合いに出されます。
両者とも「尊厳死」を扱っていますが、しかしこれは「似て非なるもの」
「海を飛ぶ夢」は、何十年と寝たきりになった者が願う「尊厳死」がベースになったドラマ、いわば、作品全体が「尊厳死」を問うドラマなのです。
対して、「ミリオンダラー・ベイビー」の方は、後半以降は「尊厳死」に触れる部分がありますが、こちらは結果的に不幸になってしまったけれど、マギー自ら選んだ道の結末(=ボクシングは絶えずリスクを伴うもの)でもあるのです。人間が生まれてから死ぬまで長い長い人生の道のりを「如何にして生きるか」「人生をどう生きるのか」がテーマとなっているのです。


■■考察■■
主役3人の演技は確実で素晴しいですが、特に、ヒラリー・スワンクがダントツに良いです!!
最初どこかためらいがちなボクシングの練習風景も、ランクが上がるにつれ自信に満ち溢れる。何時も前向きで恐れを知らない、真っ直ぐな目をした彼女のしっかりとした表情が印象的。
モーガン・フリーマンは、ソツ無く安定した演技。
正直言って、今回はオスカーを獲るほどの演技とは思えなかったのですが、この映画には彼無くしては考えられなかった、云わば彼の存在感がオスカーの受賞へと繋がったのではないでしょうか。



モディリアーニ 真実の愛 (2004) 公開(2005)
Modigliani
★★★★
アメリカ・ドイツ・フランス・イタリア・ルーマニア・イギリス 2時間6分
監督・脚本:ミック・デイヴィス
出演:アンディ・ガルシア、エルザ・ジルベルスタインイポリット・ジラルド、オミッド・ジャリリ、エヴァ・ヘルツィゴヴァ、ウド・キアランス・ヘンリクセン

第一次世界大戦後の1919年、パリ、モンパルナス。
ピカソ、リベラ、ガートルード・スタイン、コクトー、スーチン、ユトリロ、キスリング、モディリアーニ・・・カフェ“ラ・ロトンド”には未来に名を残す若きアーティストたちが集っていた。
着実に名声と富を築くピカソ(オミッド・ジャリリ)、酒と麻薬に溺れるモディリアーニ(アンディ・ガルシア)
サロンに集まるアーティストたちとの交流、モディリアーニを献身的に支える妻ジャンヌ(エルザ・ジルベルスタイン)
悲劇の天才画家モディリアーニと妻ジャンヌとの激しくも狂おしい愛と、宿命のライバルであるピカソとの確執を描いた物語です。

■実在した画家たち・時代設定はそのままに、新しい解釈で描かれた物語です。
大胆かつ大様な演出には少々陳腐に思える部分があり、加えてストーリーはフィクションなので、それを受け入れられる人と相容れない人がいるかも知れません。
しかしながら、出演者の熱演にはぐいぐい引き込まれるものがあり、エネルギッシュで意欲的なこの作品に感動を覚える部分もまた有りです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
モディリアーニの絵はシンプルな線で描かれ、首が極端に細長く瞳の無い人物像で有名です。
どの絵にも哀愁が感じられ、独特の雰囲気を持っています。

酒と薬に溺れ病に蝕まれたモディリアーニは、次第に死へと向かいます。
その彼に付き添い、彼の死後彼を追いかけて窓から身を投げた妻ジャンヌ。彼女は彼の子を身ごもったまま投身自殺を図り、第一子もモディリアーニの元へと走った為、祖父により乳児院にやられてしまう(後に祖母の手により元に戻る)
彼女は母性よりも男性への愛が勝ったのでしょう。
モディリアーニとジャンヌからは、強い愛と、情熱と、破滅的で激しい人生が感じられます。

■一言
□少々ドラマチックに作り過ぎたかな。
ラスト、酒場を出た後の暴漢者に襲われたシーンとコンテストを引っ掛けた構成はこの映画のクライマックスであるけれど、何だか少女漫画チックな気がしないでもなく・・・・・・
□ピカソはデブで少々傲慢な人物として描かれています。
冒頭に「この作品はフィクション云々」とテロップが流れるけれど、いいのかなー・・・なんて思ってしまう。

しかし、ピカソとはモディリアーニは犬猿の仲で始終対立していたけれど、ピカソの中にはモディリアーニへの密かな尊敬があったのです。
こちらもまた涙がほろりと来たのでした。

■■考察■■
アンディ・ガルシア・・・
最近やけに太って来た彼ですが、本作品ではダイエットをしたと思われ、かなり痩せて見えました。
欲を言うと、その日食べる物も苦労した貧困画家なので、さらにさらに痩せていると良かったかも。
あと、結核を患っているようには見えないことも惜しい。
情熱的で汗臭さを感じるガルシアのモディリアーニ、良くも悪くも印象に残る役であります。

妻ジャンヌを演じたエルザ・ジルベルスタイン・・・
まるでモディリアーニの絵から出て来たような、かもし出す雰囲気も絵の人物そのものそっくりでビックリ。
よくぞこんな似た人がいたものだとひたすら感心です。



妖怪大戦争 (2005) 公開(2005)
Youkai Daisensou
★★★
日本 2時間4分
監督:三池崇史
プロデュース:プロデュースチーム「怪」
(水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、宮部みゆき)
出演:神木隆之介、豊川悦司、菅原文太、宮迫博之、近藤正臣、栗山千明、南果歩

水木しげる、荒俣宏、京極夏彦、宮部みゆきの人気作家陣がプロデュースチーム「怪」を結成し、原案(=68年の「妖怪大戦争」がオリジナル)に参加。
主題歌と挿入歌は忌野清志郎、井上陽水が担当しています。
今年10歳になるタダシ(神木隆之介)は、両親の離婚により母(南果歩)の故郷、鳥取で母、祖父(菅原文太)と3人で暮らし始めた。そんなある日、タダシは神社のお祭りで“麒麟送子”に選ばれてしまう・・・

■日本古来からの妖怪たちが大集結する冒険ファンタジー。
オリジナルを知っている大人向けなのか子供向けなのか、今ひとつ分からない摩訶不思議な作品。
妖怪好きの方は必見です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
見所は、大物俳優がこぞって出演していて、とても楽しそうに嬉々として演じているところ。スタッフも妖怪好きの人たちが集まって、本当に嬉しそうに映画を作り演じているのがこちらにも伝わって来ます。
「この人がこんな妖怪役を!?」と驚くところが一番の醍醐味かも。

■ご不満
要所要所は面白いのに、全体的に見るとつまらない、です。
良く言えば皆が集まって楽しく盛り上げている、悪く言えば楽屋落ち。
リメイク作品はオリジナルとは似て非なるものなので、オリジナルと同じである必要はありませんが、オリジナルは日本の妖怪たちvs西洋の妖怪たち(吸血妖怪ダイモンが親玉)の戦いで実にシンプルで分かり易かったのですが、
本作品は、タダシの成長物語、加藤保憲率いる機械の妖怪vs日本の妖怪、タダシの家庭の紹介、雑誌記者である佐田のエピソード、加藤保憲とアギの関係、加藤保憲と川姫との関係・・・などなど盛りだくさん過ぎて話が散漫になってしまいました。
せっかく個性豊かな妖怪たちが出ているので、そこに焦点を当てて欲しかったです。

あと、「妖怪大戦争」と題をつけながら、実のところは「妖怪大祭り」でした。我が国日本を守ろうという意思では無く、何となく寄り集まって来た妖怪たち。
「お祭り」気分で寄って来た結果、機械妖怪を倒すことになるのですが、それはそれで良いのですが、そのなだれ込み方がややインパクトに欠け残念です。

ナンセンスギャグの数々は面白いのにそこだけで終わってしまい、ストーリーが次に続かない。
その場その場のエピソードを張り合わせた感じがします。

■■考察■■
稲生タダシ:神木隆之介 ・・・演技力は抜群。彼を苛める同級生たちの演技が棒読みなので、さらに引き立っています。
稲生俊太郎:菅原文太 ・・・さり気なボケ具合が可愛いお爺ちゃん。
稲生陽子:南 果歩
稲生タタル:成海璃子

佐田:宮迫博之(雨上がり決死隊) ・・・ホント、適役です。笑

「怪」編集長:佐野史郎
宮部先生:宮部みゆき
読書好きのホームレス:大沢在昌
駐在:徳井 優
たこ焼き屋のアナウンサー:板尾創路(130R)
屋台のオヤジ:ほんこん(130R)
よういちの父:田中要次
阿倍晴明:永澤俊矢
大人のタダシ/タダシの父:津田寛治
牛舎の農夫:柄本 明


《妖怪のみなさん》

猩猩:近藤正臣 ・・・キザな印象が強いので真っ赤な妖怪役をするとはビックリ。一番喜んで演じていたような気がします。近くに妖気を感じると鬼太郎のようにピピピ・・・と髪が逆立ち「ん!?」と大真面目な顔をして振り向くところがかなり可笑しいです。
川太郎:阿部サダヲ ・・・河童は関西弁が合うと初めて分かりました。笑
川姫:高橋真唯 ・・・絶えず水が滴っており、濡れた太ももなど若いピチピチした色気有り。
一本だたら:田口浩正
大天狗:遠藤憲一 ・・・こ、この人が大天狗を演じるとは・・・
砂かけ婆:根岸季衣
ろくろ首:三輪明日美 ・・・首がドスンと落ちるところが良い。
雪女:吉井 怜
豆腐小僧:蛍原 徹(雨上がり決死隊) ・・・豆腐を持っているだけ、というのが良いです。
大首:石橋蓮司
ぬらりひょん:忌野清志郎 ・・・にやけた総大将です。
油すまし:竹中直人 ・・・短い出演ながらもとっても愉快そうです。

山ン本五郎佐衛門:荒俣 宏
神ン野悪五郎:京極夏彦
妖怪大翁:水木しげる

小豆洗い:岡村隆史(ナインティナイン) ・・・前もって知っておかないと分からないほど豹変した妖怪メイク。

鳥刺し妖女アギ:栗山千明 ・・・セクスィーでカッコイイ妖怪。恋をする女は何もかも男に捧げるのが分かります。ある意味一番可哀想なのかも・・・

加藤保憲:豊川悦司 ・・・観る前は「帝都大戦」の嶋田久作の方が適役かと思ったのですが、男の色気を感じさせるのはやはり豊川悦司だと思いました♪



ライフ・アクアティック (2005) 公開(2005)
The Life Aquatic with Steve Zissou
★★★☆
アメリカ 1時間58分
監督・製作・脚本:ウェス・アンダーソン
出演:ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソンケイト・ブランシェットアンジェリカ・ヒューストンウィレム・デフォージェフ・ゴールドブラムマイケル・ガンボンノア・テイラーセウ・ジョルジ

世界的に有名な海洋探検家&海洋ドキュメンタリー監督のスティーヴ・ズィスー(ビル・マーレイ)
ここ10年近く映画がヒットしていない彼は、公開された新作映画も今ひとつで、おまけにその航海で27年来の仲間エステバンが“ジャガーザメ”に食い殺されてしまう。
仲間への敵討ちと人気回復の為に、クセ者揃いの映画製作集団“チーム・ズィスー”を率いて探査船ベラフォンテ号に乗り込み航海に出ます。
コメディな海洋アドベンチャー・ドラマです。
音楽は、デヴィッド・ボウイ、そして、ブラジリアン・ソウルのセウ・ジョルジがデヴィッド・ボウイの名曲をポルトガル語でボサノヴァ調にアレンジし劇中でギターの弾き語りで歌います。(=セウ・ジョルジがサントス役として登場)

■一般受けしない、どちらかと言うと好みが分かれそうな作品です。
支離滅裂とも思えるストーリー運び、外したような笑い、個性的でつかみ所の無い人たち・・・何とも不思議なとぼけた味わいのあるコメディです。
エンターテイメントのしっかりしたコメディに仕上がるところを、あえて外して斜に構えた、そんな感じです。
空想的な味わいのドラマの中にも、意外と「ハッ!」と現実に引き戻されるシビアな面もあります。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
船を真ん中から切断したセットで演じたり、凝っているけれど如何にも作り物と分かる魚たちを泳がせたり、確信犯的な演出が効いてます。
映画全体に外したような笑いが漂うかと思えば、意外と現実味あるところも(=足の一本ない愛犬や残忍なアジア系海賊の登場など)

狂信とも思える海への愛着、そして、真偽の程は分からないけれど息子として認めたい(=無精子症で子供は望めそうにない)父性愛、船員たち擬似ファミリー、女性記者への望み無さそうなほのかな恋心など、中年男性の思いがギュッと詰まっています。

■何年経っても冒険心や子供心を失わない、そんなお茶目で可愛い奴ら・・・  (=^∇^=)
チーム全員がお揃いの格好(=ブルーの上下ウェア、ニットの赤い帽子)を着用。
それらを着込こんで嬉々として航海に挑みます。
ラストは、スティーヴの周りを取り囲みながら全員で船に乗る微笑ましく清々しい姿。
エンドクレジットでは、セウ・ジョルジがギターの弾き語りで歌い上げる、何とも魅力ある終わり方です。

■■考察■■
濃ゆいキャストたちが勢ぞろい!
モサーとした脱力感溢れるビル・マーレイ、静かだけれど凄い威圧感のアンジェリカ・ヒューストン、濃ゆい・暑い俳優のジェフ・ゴールドブラム
そして、すぐにいじけるウィレム・デフォー。時折り寂しげな表情を見せ、それがとっても可愛いのです。ウフ♪
この映画には所謂アイドル的な女優は出て来ません。
唯一の紅一点ケイト・ブランシェットは、一見するとキャリアウーマンのようだけれど、不倫の末妊娠して自爆気味になっている庶民な女性。
色気ある女性をあえて登場させないところが「海の男たち」を強調させているようです。



ランド・オブ・ザ・デッド (2005) 公開(2005)
Land of the Dead
★★★★
アメリカ・カナダ・フランス 1時間33分
監督・脚本:ジョージ・A・ロメロ
出演:サイモン・ベイカーデニス・ホッパーアーシア・アルジェント、ロバート・ジョイ、ジョン・レグイザモ

「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」「ゾンビ」「死霊のえじき」のジョージ・A・ロメロ監督が、20年ぶりに手掛けたゾンビ映画の最新作です。
本作品は三部作に続く第四作目的な位置付けです。
世界中にゾンビたちが溢れかえっている現代。
僅かに生き残った人々は、川とフェンスに囲まれた街で暮している。その中では、高層ビルに暮らす少数の裕福な支配者層と街の場末で暮らす貧困者層とに別れていた・・・

■“ゾンビ”を生み出したジョージ・A・ロメロ監督による本作品は、他の亜流ゾンビとは違い、“正統派ゾンビ”映画の風格が感じられます。
基本に忠実ながら新しさも加味したゾンビです。
ゴアシーン(=人体破壊などの残虐描写)もそこそこあるのですが、80年代のホラー映画のように陰湿で悲惨な感じはあまりありません。
どこか陽気でライトなゾンビです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
物語は、世界中がゾンビたちが蔓延しているところから始まります。
そして、いきなりゾンビたちを情け容赦なく殺戮して行く人間たち!
その簡潔でスピーディーさが、これから始まる物語にぐいぐいと引き込んでくれます。

残された街をごく一部の裕福な人々が支配し、それ以外の者は食べるものにも事欠くほどの暮らしを強いられる、搾取する側と搾取される側の構造が浮かび上がります。
また、ゾンビ化した人間を退治している様子は、もはや自分たちの安全を守る、という以上に、殺戮を楽しんでいるようでもあります。
後から出て来る、ゾンビを見世物にしたり、ゲームの的にしたりも同様です。

そんな傲慢な人間たちを目の当たりにすると、本来は「悪」であるゾンビたちに肩入れしたくなり、心底憎めないものになっています。
また、下に記したように、本作のゾンビたちは、元の人間の行動を僅かながら残していたり進化しています。本当の人間では無いにしろどこか人間らしさを感じてしまい、そういうところでも今までのゾンビと違い一線を引く事が出来ないのかも知れません。

裕福な支配層の頂点に立つカウフマン(デニス・ホッパー)に立向かう主役グループや下層社会の人々とは違い、物資が乏しい街の中で湯水のように使い贅沢三昧をしている支配層の彼ら。観ているこちら側としては彼らがゾンビに襲われても同情出来ないものがあります。
豪華なフロアに置かれた大きな鳥かごが、実は、ラストで中の鳥たちが機械だと分かるショットがあります。高層ビルで贅沢に暮らす彼らは、その鳥と同じように、まやかしの虚構だったのでしょう。

■本作品のゾンビの特徴
□少しずつ知能を持ち始める。
それはまるで人類が初めて火を発見したような、そんなゾンビたちの進化が1つ1つ紹介される。
(マシンガンの使い方や、ドリルの使い方、包丁を使ってドアを破ること(=今までのゾンビはただ手で叩くだけだった)、川に飛び込み泳ぐこと、などなど)
□うめき声のようだが言葉を発し、コミュニケーションをとる。
□何となく組織を作っているようである。
□花火が上がると、口をぽかんと開けて見入ってしまう。
□ヨロヨロと左右にカックンカックンして歩くゾンビは、最近流行の「疾走するゾンビ」で無く、本来のゾンビの姿です。が、だんだんと目的地に近づいて来ると、やや走り歩きになっているところが可笑しい  (=^∇^=)
□ゾンビの集団で、青いつなぎの黒人リーダー、口が裂けた赤服の女、白いエプロンをした肉屋のオヤジ、など主要3人組みが居るのも特徴。
□特殊メイクは凝っていますが、腐敗が進んでいない為かそれほど汚く無く、嫌な悪臭漂う感じはしません。
□つなぎの黒人や肉屋のオヤジ、音楽をやっていた人たちなど、生前に自分たちがやっていた事をゾンビになってもなごりが残っており、ヘタながらも続けているところ。

何となく続編を作れるような終わり方だったので、是非とも次回作もお願いしたいところです。

■■考察■■
キャスティングのバランスが良いです。
主役のライリーを演じるサイモン・ベイカーは、先に公開された「ザ・リング2」にも準主役として出演していましたが、その時は正直言ってあまりパッとしませんでした。
しかし、本作では、ほどほどに目立ちカッコ良さがあり正義感もある。
ゾンビたちが霞まない程度に目立つ・・・というのは意外と難しいことなのです。
そして、さり気に大物俳優デニス・ホッパーを起用、ちょっとビッチで頼れる姐御アーシア・アルジェント、やんちゃ坊主でチンピラなジョン・レグイザモなど脇を固める個性派俳優たちも良い味だしてます♪



リチャード・ニクソン暗殺を企てた男 (2004) 公開(2005)
The Assassination of Richard Nixon
★★★★
アメリカ 1時間47分
監督:ニルス・ミュラー
出演:ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ドン・チードル、ジャック・トンプソンマイケル・ウィンコット

1974年2月、ワシントンのバルチモア国際空港で起きたハイジャック未遂事件。
リチャード・ニクソン大統領暗殺の為に飛行機を乗っ取り、ホワイトハウスに突っ込もうとした男サム・ビッグ(ショーン・ペン)
大統領暗殺未遂に至るまでの経緯を描いた、ドキュメンタリー・タッチの社会派ドラマです。
2004年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品作品

■実話を元に、主人公の性格や心理を肉付けしていった物語です。
恐らく実際の彼もこんな状態だっただろう、と納得出来る作品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
妻にも愛想をつかされ、仕事にも息詰まり、兄弟からは縁を切られる・・・
何をやっても上手くいかない、社会に適応できない孤独な中年男。

自分は正直者で一生懸命やっているのに、周りが自分を理解してくれない・・・
自分の不器用さから来る仕事の失敗や、思いつきで始めた仕事など、
明らかにサム自身に問題があるのに、自分を正当化し己を省みない。
周りに非を押し付け、挙句の果てには、社会に、そして、連日テレビに登場するニクソン大統領にその矛先が向けたです。
サムの周りには少なからず人が居て全くの孤独では無いのに、これほどまでに孤独を感じさせる男はそうはいません。
世渡り下手な哀れなダメ男、何とも悲壮感漂う物語です。

■観ていて・・・
サムの周りの人に同情したくなると同時に、サム本人も哀れで、もう少し何とかならなかったのかと複雑な気持ちに。


■■考察■■
ショーン・ペン・・・
元々演技派俳優で定評のある方ですが、この作品の彼はダントツに良いです!!
最近ではエキセントリックな役が続きましたが、本作品では、静かで抑えた演技、息苦しささえ感じさせます。
全てに拒絶され行き場を失った男。
ギリギリとした焦燥感が男を襲い、次第に精神が崩れて行く、その演技が本当に素晴しい。



レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 (2004) 公開(2005)
Lemony Snicket's A Series of Unfortunate Events
★★★☆
アメリカ 1時間49分
監督:ブラッド・シルバーリング
原作・レモニー・スニケット
出演:ジム・キャリー、エミリー・ブラウニング、リアム・エイケン、カラ&シェルビー・ホフマン、ティモシー・スポール

レモニー・スニケット原作「世にも不幸なできごと」シリーズの映画化。
幸せに暮らしていた三姉弟妹は、ある日突然、屋敷の火災により父母を失ってしまい、遠い親戚のオラフ伯爵(ジム・キャリー)に引き取られる。が、彼は遺産を我が物にする為、子供たちの殺害を企てようとし・・・
子供たちが数々の災難に見舞われる不幸を描いたブラック・ファンタジーです。
2004年アカデミー賞メイクアップ賞受賞作品。

■大人が観ても楽しめますが、基本的には子供向けのファンタジー映画です。
とにかくジム・キャリーの怪演が見もの。
ダークで不気味さ漂うゴシック調の美術セット、小物等がとても凝っていて美しいです。
特にエンドロールのアニメーションは必見(=影絵のようなイラストはこれだけでも1本の映画になるような完成度の高い作品です)

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
繰り返し絵本を見ているようなストーリー展開、重厚な映像の割にはあっさりした印象など、これこそ児童文学の王道を行くような物語です。
平坦に感じられるストーリー運び、物足りなささえ感じる終わり方、あちこち迷い後になりやっと届いた両親からの手紙。
演出的にはもっと盛り上がれそうですが、子供向けにはあえてこの演出がベストなのではないかと思われます。

■鉄の檻に閉じ込められたサリー
檻に閉じ込められ塔の窓から釣り下げられるサリー(カラ&シェルビー・ホフマン)
それを助けようとするクラウス(リアム・エイケン)ですが、てっきり、サリーはあの鋭い歯で檻を噛み切るのかと思ってました  (=^∇^=)
ここであの能力を使わない手はないと思うのですが・・・


■■考察■■
ジュード・ロウは、語り手となるレモニー・スニケットを(影と声のみ)
ダスティン・ホフマンがクレジット無しで登場しています。
長女ヴァイオレットを演じるエミリー・ブラウニング、ぽちゃっとした丸顔にほのかに色気を感じ将来が楽しみな子役です(=特に頬に丸く紅をさしたメイクが可愛い!)