2005年(9月〜12月)映画館で観たレビューです。


CUBE ZERO ★★★
DEAR WENDY <ディア・ウェンディ> ★★★★
Jの悲劇 ★★★★
RYAN <ライアン> ★★★☆
NOEL ノエル ★★★☆
NOTHING <ナッシング> ★★★☆
Mr.&Mrs.スミス ★★★☆
七人のマッハ!!!!!!! ★★★★
愛についてのキンゼイ・レポート ★★★★
愛より強い旅 ★★★★
愛をつづる詩 ★★★★
アワー・ミュージック ★★★☆
ヴェニスの商人 ★★★★
銀河ヒッチハイク・ガイド ★★★☆
シン・シティ ★★★★
親切なクムジャさん ★★★☆
シンデレラマン ★★★★
ステルス ★★☆
ソウ2 ★★★★
ダーク・ウォーター ★★★☆
ダウン・イン・ザ・バレー ★★★☆
チャーリーとチョコレート工場 ★★★★☆
ティム・バートンのコープス・ブライド ★★★★☆
灯台守の恋 ★★★★☆
ドア・イン・ザ・フロア ★★★★☆
ハックル ★★★★
ハリー・ポッターと炎のゴブレット ★★★★
フォー・ブラザーズ 狼たちの誓い ★★★☆
ふたりの5つの別かれ路 ★★★☆
フリークス <デジタルリマスター版> ★★★☆
ブラザーズ・グリム ★★★
マザー・テレサ ★★★★
マダムと奇人と殺人と ★★★☆
真夜中のピアニスト ★★★★
乱歩地獄 ★★★☆
理想の女 <ひと> ★★★★
ルパン ★★★
ロード・オブ・ウォー ★★★★
蝋人形の館 ★★★☆
ロッテ・ライニガーの世界 ★★★★




CUBE ZERO (2004) 公開(2005)
CUBE ZERO
★★★
カナダ 1時間37分
監督・製作総指揮・脚本:アーニー・バーバラッシュ
出演:ザカリー・ベネットデヴィッド・ヒューバンドステファニー・ムーアマイケル・ライリー

「CUBE」シリーズの第三弾です。
本作は、シリーズの序章となる続編であり、「CUBE」第1作目以前へと遡る時間設定になっています。
前作「CUBE2」で脚本と製作を担当したアーニー・バーバラッシュは、本作で初監督デビューとなります。

■この作品だけで観ると、普通のサスペンス・スリラーです。
しかし、「CUBE」に強い思い入れがある方や、何か目新しいものを求めている方は失望しそうです。汗・・・

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
「CUBE」があまりに衝撃的で斬新で完成度の高い映画だったので、第1作目を超えるものや、それと同等水準のものを作るのはかなり難しいと思われます。本来ならば続編や序章はいらないのかも知れません。
しかし、人間は欲張りです。
特に「CUBE」自体が不条理な、謎を秘めた作品だったので、「謎を解き明かしたい!」「解明しないと夜も眠れん!」と思う気持ちも確かに有ります。
続編でかなり「CUBE」の背景が見え、今回でそれは揺ぎ無いものとなりました。不条理な恐怖感や居心地悪さは完全に消え失せ、全ての謎は解明されます。
それはそれで知りたいと思う欲望を満たしてくれるのですが、その反面、ガッカリする気持ちも有ります。
今回は、被験者・管理者の2つの立場から捉えているので前2作よりはドラマ性が高くなっています。「あ!」という驚きはないものの、そこそこ楽しめる普通のサスペンス・ドラマといった感じです。

■アンバランスさ
監視室の内部。
最新式のスクリーンがあると思えば、操作するPCや周辺機器等は旧式タイプ(=CUBEを作れる程の近未来にしては)を使用。特に、むき出しになった大量の配線にはビックリ。
後から来るエンジニアたちを見ていると、監視室以外の中枢部はもっと進んだハイテク技術があると想像出来ます。
我々が長時間見続けている部屋は前近代的な趣きで、その隠された部分には近未来の技術の存在がある、そのアンバランスさが不思議な印象を作り出しています。

■ペコペコ
颯爽と登場したジャックス(マイケル・ライリー)は、慇懃無礼で態度がデカく、CUBEの支配者かのように思えます。しかし、彼もまた組織の単なる幹部なのです。その事実が判明した時の可笑しさ、ブラック・ユーモアが効いてます。

■CUBEの仕様、トラップ
スタイリッシュで無機質なCUBEの内部は、今回は旧式タイプの為古さを感じさせる「鉄の箱」といった趣きです。
殺人トラップは前2作と同様、工夫を凝らした残虐な仕掛けの数々です。
でも、もう少し違ったトラップでも良かったかも知れません・・・


■■考察■■
キャストは全てメジャーで無い地味な方々。
レインズを演じるステファニー・ムーアは、何となくジョディ・フォスターを思わせる風貌。
ジャックスを演じるマイケル・ライリー、アブネー人を怪演してます。



DEAR WENDY <ディア・ウェンディ> (2005) 公開(2005)
DEAR WENDY
★★★★
デンマーク・フランス・ドイツ・イギリス 1時間45分
監督:トマス・ヴィンターベア
主演:ジェイミー・ベル、ビル・プルマン、マイケル・アンガラノ、クリス・オーウェンなど

銃を愛した平和主義の若者たちは、“ダンディーズ”という秘密結社を結成し、彼らの“神殿”に思い思いのグッズやこだわりの品々を運び込む。
その姿は、まるで自分たちの秘密基地を作り出し、仲間内だけでしか通用しないようなルールを定義づけた、私たち自身の少年・少女時代を思起させるような共感に満ちている。
とりわけ、ヴィンテージかつレトロな“ダンディーズ”の衣裳を身にまとい、夜の町を闊歩する彼らの勇姿に、ゾンビーズの不世出の名曲「ふたりのシーズン」“Time of the Season”がオーヴァーラップするシーンは、観客である我々もまた“ダンディーズ”の一員になったかのような昂揚感を抱かせてくれるはずだ。
ちなみに、トリアーはこの脚本を執筆するに当たって、ゾンビーズの楽曲に大いなるインスピレーションを受けたと語っている。
(=公式サイトより抜粋)

若者たちのあまりに哀しい青春物語。
彼らの純粋な気持ちがどんどんずれて行く、その哀しさと恐ろしさ。
アメリカの銃文化を批判した、まさに現代のアメリカを象徴したような作品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
トマス・ヴィンターベア監督はラース・フォン・トリアー監督共に“ドグマ95”を推進した仲間で、今回、ラース・フォン・トリアー監督は脚本を担当しています。
従って、小さな炭鉱の町を舞台にした本作は、何となく「ドッグヴィル」の町を彷彿させます。
そう、あの白い線の上に家が建った感じ・・・「ドッグ・ヴィル」でも思いましたが、本作でも舞台劇でいけるような気がします。
「ドッグヴィル」の三部作とは別物ですが、アメリカを痛烈に批判しているところなどは同じ延長線上にあるのかも知れません。

平和主義である彼らがポリシーを持って銃を持つ。
しかし、それは己の自信の無さゆえであり、銃を持つことによって優越感に浸る借り物の自分なのです。
自己防衛の為に銃を持つ、そして、次第に銃の魅力にとりつかれて行く。
それはまるで恋人、それ以上の存在であるかのように、彼らの心を支配して行きます。
ラストの銃撃戦はとてもリアルで衝撃的、哀しさだけが残ります。

■全編に掛かる曲はゾンビーズ!
「シーズ・ノット・ゼア」「ふたりのシーズン」など。
ビートルズとはまた違う、何処か哀愁を含んだメロディはまさにこの映画にピッタリです。


■■考察■■
ジェイミー・ベル・・・
「リトル・ダンサー」以降、「デス・フロント」では塹壕を舞台にした戦争映画に出演し、意外とも思えるその選択は、戦争における人間の弱さ恐ろしさを浮き彫りにし好演しました。
今回も繊細でありながら突っ走ってしまう危なげな青年を見事に演じています。お気楽ハンサムボーイキャラに走らず良い選択をしています。



Jの悲劇 (2004) 公開(2005)
ENDURING LOVE
★★★★
イギリス 1時間41分
監督:ロジャー・ミッシェル
原作:イアン・マキューアン「愛の続き」
出演:ダニエル・クレイグ、リス・エヴァンス、サマンサ・モートン、ビル・ナイなど

穏やかな午後のピクニックが、一瞬にして悲劇へと一変する。
青空に浮かぶ赤い気球、地面に転がり落ちる男たち、草原に投げ出された死体、そして運命の出逢い……。
イアン・マキューアンVSロジャー・ミッチェル
イギリスを代表する2人の鬼才が仕掛ける愛の罠
(=公式サイトより)

静かに迫る恐怖を描いた心理サスペンスです。
サスペンスとしては中盤以降、少々詰めが甘い気もします。
が、人物描写やその行動の説得力など十分に頷けるものがあり、全体的に観ると良質なドラマです。


■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
うららかな日差しの下、草原でくつろぐ恋人たち。
そこに突如発生した気球の事故。
それをきっかけに大学教授の災難が始まる・・・・・

事故による心の傷が癒えぬ上に、ストーカーの如く不審な男につきまとわれ次第に混乱し追い詰められて行く教授。
恋人との穏やかで幸せな日常が少しずつ崩れて行く・・・
振り払っても振り払っても効果が無い虚しさ。
自分の愛を押し付け、愛を強要する姿には、もはや普通でない偏執的な怖さしかありません。
教授とストーカー男の「愛について」の見解の相違もブラックが効いていて可笑しいやら可哀想やら。
自然の美しさを感じ、人の心の怖さ、弱さを感じる、そんな物語です。

■美しい映像
青々とした芝生が延々と続く草原に赤い気球。
悩み、苦しみ、精神的に追い詰められて行く・・・新緑の初夏に始まった物語は、何時しか紅葉した木々が眩しい色とりどりの秋の風景になります。
この映画では随処に色の使い方に工夫がされていて、それがとても美しいのです。


■■考察■■
この映画が凄いのはやはり主演二人です。
特に、リス・エヴァンス!!
うっすらと笑みをたたえ、愛を持って佇む姿はとっても不気味です。
本当に実際のストーカーに見える熱演でした。

サマンサ・モートンは、不思議な雰囲気を持った女性。
過去の作品では美人とは思ったことが無かったのですが(←失礼!)今回は大人の雰囲気を漂よわせとってもキレイでした♪



RYAN <ライアン> (2004) 公開(2005)
Ryan
★★★☆
カナダ 14分
監督:クリス・ランドレス
声の出演:ライアン・ラーキン、クリス・ランドレス

30年以上前、カナダ国立映画製作庁(NFB)で当時もっとも勢いのあったカナダ人アニメーター、ライアン・ラーキン。
現在、彼はトロントでホームレスをしています。
彼は何故このような人生を送ることになったのか?
伝説のアニメーション作家、ライアン・ラーキンの栄光と挫折を描いたドキュメンタリー・アニメーションです。
2004年アカデミー賞短編アニメ賞受賞作品。

3Dアニメを駆使した映像は、少々不気味で気色悪さが有り。
しかしながら、その映像は彼の転落した経緯を的確に表現しています。
あまり愉快な映像では無いですが、一見の価値あるアニメです。


■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
二人が話す建物、そこに居合わす人々、そして、ライアン・ラーキンとクリス・ランドレス。
登場人物が全てアニメと実写を合成して創りあげた3Dアニメーションです。
顔は削げ、頭は半分、頭の中からは何かが生え絶えず動めいている・・・
不気味で奇怪な容貌は、その人の持つ「苦悩」「悲しみ」「痛み」「恐れ」などを表しています。

輝かしい栄光は過去のものとなり、今は見る影も無く。
彼は酒とコカインに溺れ、どうしても立ち直ることが出来なかった。
ラストに映る、通行人に物乞いするライアンの姿が痛々しく悲しい。


■■考察■■
ライアン・ラーキンとクリス・ランドレス。
3Dアニメーションでデフォルメされた外観は不気味。
エンドクレジットで実際の本人の姿を写して欲しかったデス・・・



NOEL ノエル (2003) 公開(2005)
NOEL
★★★☆
アメリカ 1時間36分
監督:チャズ・パルミンテリ
出演:スーザン・サランドン、ペネロペ・クルス、ポール・ウォーカーなど

今年もやって来る、人恋しい季節。 クリスマス、ニューイヤー、バレンタイン…恋人の優しい瞳や、家族の温かい微笑みがなければ、身も心も凍えてしまう冬。なかでもクリスマス・イヴは、年齢や男女の差を超えて、世界中の人々が、ひとりぼっちでいたくない日のNo.1だろう。 そんな日に、ふとしたボタンのかけ違いで、幸せからはじき飛ばされてしまった人々。
(=公式サイトより)

■クリスマス・イヴの日、大都会の中で孤独な日々を過ごす人々に奇蹟が訪れる・・・ささやかな幸せを描いたハートウォーミングなお話です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
ニューヨークに住む、様々な事情を抱えた孤独な人々。
イヴだと言うのに悲観にくれる彼らに、そっと小さな幸せが舞い降りて来る・・・観ているこちらまで温かくなる素敵なお話です。
クリスマスに起こった、ささやかな奇蹟を描いた作品なのです。

クリスマスは日本人にとっても特別な日であるけれど、欧米諸国、特にアメリカでは国中がもみの木とキラキラ光る電飾とプレゼントに溢れかえります。家族や愛する人と過ごせない人は寂しさもひとしお。
そんな気持ちを上手く捉えた作品です。
物語はクリスマスによくある「奇蹟」を描いた作品なのですが、クイッと捻りが効いており、二転三転したストーリーは単純でストレートなものではありません。

■少々難を言うと・・・
□2時間弱の長さの割にはもたついた感じがあり、テンポの悪さが目に付きます。
□ロビン・ウィリアムズがクレジット無しで出演しています。
彼の出番は、「あっ!」と驚くどんでん返しで主人公に関わる重要な位置。彼のパートだけは実際には起こらないまさに「奇蹟」の部分なのですが、ロビン・ウィリアムズが出演している欲が出たのか?かなりの時間を割いています。
他のパートは全てリアルなお話なのに、ここの部分だけが「死期が迫る病人の魂が偶像化して歩きだす」ものだから、全体を通して観ると妙に浮いてしまっています。
ここのエピソードは夢の中の出来事か、もう少しサラリと流して夢か現実か分からない程度に留めておいた方が良いと思います。
まあ、スーザン・サランドンとロビン・ウィリアムズとの絡みを長く出したいのは分かりますが・・・


■■考察■■
スーザン・サランドン・・・
熟年女性の孤独と寂しさを見事に表現しています。
彼女の演技で、この映画がかなり良いものになっているのは確かかも。



NOTHING <ナッシング> (2003) 公開(2005)
Nothing
★★★☆
カナダ・日本 1時間29分
監督・製作総指揮ヴィンチェンゾ・ナタリ
原案:デヴィッド・ヒューレット
脚本:アンドリュー・ミラー
出演:デヴィッド・ヒューレット、アンドリュー・ミラー

それぞれが問題を抱えたデイブ(デヴィッド・ヒューレット)とアンドリュー(アンドリュー・ミラー)は幼なじみで親友同士。
ある日、世の中の全てが嫌になった二人は、いきなり“何もない世界”へ放り出されてしまう・・・
二人の男が体験する何とも摩訶不思議な世界を描いたSF・コメディです。

■ナタリ監督の描く“何もない世界”はどういったものか・・・?
鬼才が放つ独特で異質な世界を自分なりに読み取り解釈する、そういった趣きの映画です。
人によってはかなり評価が分かれる作品であり、
面白いのだか、そうでないのか、何とも理解しがたい部分があります。
ナタリ監督のファンか、風変わりな作品がお好きな方向けで、あまり一般受けはしなそうです。
※ストーリーはエンドクレジットの後まで続きます、ご注意のこと!

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
「CUBE」では、数々のアイデアが詰まったショッキングな映像を、
「カンパニー・マン」では、潤沢な資金を使いダイナミックにストーリー性のある内容を、
今回の「NOTHING」は、超低予算で作られており、第一作目に戻ったような小品的な趣きです。かなりブラックの効いたコメディ色の強い作品となっています。
やや実験的で哲学的な味わいがあるのも特徴。
クールさ、奇想天外さ、ナタリ監督の迷宮の世界に吸い込まれて行くのは前2作と同様です。
ナタリ監督しか思いつかないであろうアイデア、視覚に訴える映像など、ナタリ・ワールドが健在なのもファンにとっては嬉しいところ。
しかしながら、前2作品と比べるとかなりインパクトに欠けるものがあります。

自己中の男と心配過多でひきこもりの男。
正反対の二人が繰り広げるやりとりは、妙にテンションが高く、二人の息の良さはまるで本当のリア友のよう。
可笑しさがある反面、笑うに笑えない、また少し嫌な気分にさせられる部分もある、何とも形容しがたい作品であります。

■本当に言いたかったことは?
□嫌なことから目を背け、自分の世界に引きこもる「引きこもり」の世界を表現。
□現代社会の物欲を批判。
二人が念じることにより次々と物が消滅して行き、最後の残った物は二人の頭部だけ。全ての物を消せる能力があるのに、お互いの頭部だけは消すことが出来なかった・・・
何も無くても生きていけるのなら、本当に必要なのは、人と人とのコミュニケーション、即ち、ハートなのかも知れません。

■あの世界は一体何?
□全くの異次元の世界に迷い込んだ。
□二人の強い思いが増長した、二人だけの精神世界(=現実世界は存在するので、いわば精神疾患的なもの)
ラストの動物たちがドドドドとこちらにやって来る音は、彼らの精神世界の扉が開いた意味なのかも。


■■考察■■
デヴィッド・ヒューレット、アンドリュー・ミラーは、共に「CUBE」に出演していますが、世界的にあまり知られた俳優ではありません。
この二人の地味さ加減も手伝って、作品的にはかなりこじんまりとまとまった印象が強くなっています。
メジャーな俳優を起用すると大空回りしそうな予感大なので、丁度良いかもです  (=^∇^=)



Mr.&Mrs.スミス (2005) 公開(2005)
MR. AND MRS. SMITH
★★★☆
アメリカ 1時間58分
監督:ダグ・リーマン
出演:ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ヴィンス・ヴォーンなど

アクションとラブロマンスが高次元でひとつになった!
「ボーン・アイデンティティー」の天才ダグ・リーマンが完成させた、全く新しいジャンルの映画。
(=公式サイトより)

■軽ーく観れて楽しむ映画です。
もちろん、??な部分はあり、ラストも容易に想像が付きますが、エンターテイメントな醍醐味を味わう作品なのでツッコミはヤボというものです。笑
テンポの良いスピーディーな展開、ドカーンと爆発、ドガガガガと派手な銃撃戦、ゴージャスな豪邸、衣装、そしてウットリするほど素敵な二人・・・
これぞハリウッドならではのラブ・アクション・コメディです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
この映画はやはりブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの初共演あってこそ、の映画です。
本作が初の顔合わせとなる二人はとても新鮮。
フェロモン出しまくりの二人はとってもセクスィーで絵になる美しさ。
一人だけでも強烈な存在感を放つ濃ゆい方なので、純愛ロマンスで無く、軽ーいノリのアクション映画で丁度良いのかも知れません。笑

■ラストは・・・
ラストは続編を作ろうと思えば作れそうな終わり方です。
二人だけで組織に立向かう、この展開を観てみたいです。


■■考察■■
ネームバリューがあるのは二人だけで、その他脇役の人は殆んど無名の方ばかり。
二人に焦点を当てる、二人だけが目当て、その潔さが良いです。



七人のマッハ!!!!!!! (2004) 公開(2005)
BORN TO FIGHT
★★★★
タイ 1時間35分
監督・原作:パンナー・リットグライ
出演:ダン・チューポン、ゲーサリン・エータワッタクン、ピヤポン・ピウオン、アモーンテープ・ウェウセーン、 ラッタナポーン・ケムトーン など

「マッハ!」製作チームが叩きつける新たな限界点。
彼らにとって「マッハ!」は序章にしか過ぎなかった!
(=公式サイトより)

■アクションにおいては、一切のCG、ワイヤーは無し。
テコンドー、サッカー、器械体操、セパタクロー、ラグビーなど、その分野で活躍する超一流のアスリートたちの繰り出す華麗な技、素晴しいアクションの数々、そして壮絶な爆発、銃撃戦!!そしてそして、絶対有り得ないであろうことを堂々と見せてくれるその大胆さ!!
豪快なアクションにビックリするやら、馬鹿馬鹿しさに苦笑するやらもう何が何だか分かりませんが、とにかく言えることは非常に面白く、気分爽快!スカッとなることであります。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
この映画の面白いところは、タイの土着性にあります。
土と埃が舞うタイの辺境村、素朴な村人たち・・・
何か渾然としたものを感じるタイという国だからこそ、この映画の存在があります。
アクションの一つ一つの決め技をキッチリと見せてくれ、しつこい位にスローモーションで何度も何度も見ることが出来ます。
ハリウッド映画ではこういった映画は絶対作れない、見れない、そういったことからもとても新鮮で熱い燃える映画なのです。

ただアクションを見せるだけで無く、七人のアスリートたちと村人が一つになり悪に立向かう、その勧善懲悪の世界にすっかり感動してしまいます。

■荒削りな脚本にはツッコミがたくさん♪ヤボと思いつつもカキカキ致します。エヘ
□残された村人が拘束される。
その後壮絶な戦いがあるのに、ラストでは拘束されたほぼ同じ人数の人がお見送り。
年老いた老女がたくさん居るもの不思議、あの凄まじい銃撃戦をどうやってくぐり抜けたのか・・・
□拘束された村人は一箇所に集められる。
彼らの周りには銃を持ったテロリストたちが常に監視しているにも係らず、デュー刑事(ダン・チューボン)は、村人たちに決起するように呼びかけているではないか!!それもかなり大声で。笑


■■考察■■
主人公のデュー刑事(ダン・チューボン)
ふとした表情が織田裕二と恵俊彰を足して2で割った感じ。
ヤン将軍(ノッポン・ゴーマラチューン)は坂本龍一に似ている・・・・・



愛についてのキンゼイ・レポート (2004) 公開(2005)
Kinsey
★★★★
アメリカ・ドイツ 1時間58分
監督・脚本:ビル・コンドン
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ
出演・リーアム・ニーソン、ローラ・リニー、クリス・オドネル、ピーター・サースガード

インディアナ大学助教授のアルフレッド・キンゼイが全米1万8000人にセックスについてユニークな方法でインタヴューを行い、その結果を史上はじめて統計的にまとめたレポート。(=公式サイトより)
キンゼイ博士の性に関する研究・調査にかけた生涯と、妻クララとの愛の絆を描いたヒューマン・ドラマです。

■強く心に残る感動はありませんが、心にそっと寄り添う温かさを感じる作品です。
自分的にはどちらかというと、その当時の米国一般市民の性に関する誤解や偏見の事実の方に驚き、印象に残りました。
尚、キンゼイ博士のレポートは、統計で性を明らかにするというものですが、その無機質な数値の中には「愛」が存在があることは言うまでもありません。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
1950年前後のアメリカにおいては、今でこそ当たり前になっている性の知識が、ほんの50年前までは、恥じらい隠すべきものとして間違った知識や見当はずれな思い込みに支配されていた部分が大いにあることが分かります。
キンゼイ博士はセックスに関する統計・調査を行い、全米の悩める男女に正しい性知識と自信を与えることになったのです。

物語の最初は、面接に当って試験的に部下の質問にキンゼイ博士が答えるシュミレーションから始まります。
この返答によって、観客はある程度、キンゼイ博士の生い立ちや性格の一端を図り知ること出来ます。
キンゼイ博士が面接方式により全米の男女からデーターを収集する過程を映し出しながら、上記の部下とキンゼイ博士の面談をところどころに挟み込み、加えて、厳格な父とのやり取り、妻との出会いから現在に至るまでのエピソードなどを映し出して行きます。
特に感動的に表現する訳でも無く、時にはコミカルにシリアスに。
彼の生い立ちと功績を観客に伝えながら、自然なタッチで登場人物の細かい心理状態を表現した、とても良く出来た作品です。

■最後に・・・
キンゼイ・レポートは出版物として残されているのでその業績は分かりますが、映画で描かれている彼自身のエピソードはどこまでが真実なのでしょうか。
もちろん脚色されてはいると思うのですが、その辺りが知りたいところです。


■■考察■■
リーアム・ニーソンとローラ・リニーの演技が素晴しい。
二人の若い頃から晩年に至るまでの演技、メイクもとっても自然です。
特に何もかも順調に行っている時のキンゼイ博士の表情、クララのベッド・シーンでのキラキラと輝くばかりの美しさなど、低迷した時の冴えない表情との落差がとても上手く表現出来ている。



愛より強い旅 (2004) 公開(2005)
EXILS
★★★★
フランス 1時間43分
監督・製作・脚本:トニー・ガトリフ
出演:ロマン・デュリス、ルブナ・アザバル、レイラ・マクルフ、アビブ・シェック

パリ、アンダルシア、モロッコ、アルジェリアを舞台に未来に向かう恋人たちに贈る7.000キロのロードムービー。パリでの生活にどこか違和感を感じ続けていたザノは、恋人ナイマを連れ、未知の故郷アルジェリアへと旅に出る。
少しのお金と旅行鞄、好きな音楽だけをたずさえて歩きはじめる二人。
旅の途中、お互いの心の傷をうまく癒すことが出来ずすれ違いながらも、旅先で出会う生きることにひた向きな人々と美しい風景、情熱的な音楽が二人の世界に穏やかな光を射し込んでいく・・・。
(=公式サイトより)

■ 「僕のスウィング」と同様に、移民、ジプシー、音楽が作品の要となっています。二人の恋人が手に手を取って自分のルーツを探る旅をするロードムービーです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
二人でいるのに感じる孤独感と疎外感。
そんな心の傷も、旅での出会いと音楽が心を癒してくれる。
ラストの音楽と踊りは圧巻!(少々長く感じましたが・・・)
音楽と映像の見事な融合です。
旅を通して自分を受け入れ肯定することが出来た、自ら感じとったその姿はキラキラと輝くばかりに眩しいのです。

■下ネタですが・・・
冒頭、ロマン・デュリスが窓の外を眺めるシーンから始まります。
くるりと振り返ったその姿は、局部が影になって見にくいではありますがイ、イチモツが映っているではありませんか!!どきどき
これはかなり自信ありとみましたですよ。
しかしながら、そこを映す必要はあったのか疑問ではあります。笑


■■考察■■
ロマン・デュリス、ルブナ・アザバル、自然体に演技しているのがとっても良いです!



愛をつづる詩 (2004) 公開(2005)
YES
★★★★
イギリス・アメリカ 1時間40分
監督・脚本・音楽:サリー・ポッター
出演:ジョアン・アレン、サイモン・アブカリアン、サム・ニール、シャーリー・ヘンダーソン

愛の冷めた夫婦生活に絶望を感じている“彼女”、祖国に幻滅しイギリスへと逃亡して来た“彼”−文化の違いという障害を乗り越え、ぶつかり合いながらもかけがえのない存在になっていく二人の愛の軌跡を、美しい映像と韻をふんだ詩的な台詞で繊細に綴った大人の愛の叙情詩。
(=公式サイトより)

9.11テロ事件以降、変貌した世界情勢。その数々の問題を背景に、二人の愛の軌跡を見つめたラブ・ストーリーです。

■透明感溢れる映像、「詩」の如く美しい一つ一つの台詞。
観る者を甘美の世界に誘う、サリー・ポッター監督ならではの作品です。

題だけを見ると如何にもメロドラマ風ですが、実は、現代の社会情勢をしっかりと見据えた作品なのです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
二人の愛の行方を軸に、民族問題・宗教・人種差別など、キリスト教圏とイスラム圏のあつれきを描いています。

■言葉の持つ魔法
妻はアイルランド出身のアメリカ人、夫は生粋のイギリス人、彼はレバノン人。
夫は彼女の出身を下に見て、レバノン人の彼は彼女に国籍・人種においての壁を感じている。
夫婦生活が破綻した二人には会話が一切無く、用件はメモで伝え合う。
一方、彼女と彼の仲も最初は上手く行っていたが、ある日、レバノン人の彼は鬱積していたものを吐き出し口論になってしまう。
一度は距離を置いた二人だけれど、また元の二人に戻れたのは、そこに言葉と言葉の触れ合い、"会話”があったのは言うまでもありません。

二人の男女が発する言葉はまるで詩を奏でるが如く、甘く、激しく、切なく言葉の持つ魅力だけで甘美な世界に誘ってくれる。
それは時にして、人を傷つけ攻撃するナイフのようにもなってしまう。
しかし、人は言葉を交わすという行為によって人と人との思いやりや愛情を感じることが出来るのです。
言葉を交わすことが無くなったら、そこはもう空虚な場所でしかないのです。

■女性にありがちな行動
彼が仕事上のトラブルを抱え行き詰まっていた時、彼女は頻繁に電話をして連絡を取ろうとする。しかし、彼はますます距離を置いてしまう。
最初は彼が強くアプローチして来て交際し始めたのに、気が付くと何時の間にか彼女が追っている・・・
彼女は別の事で心に空虚なものを抱えており、それを埋めようとして、彼を愛する以上に"自分”を愛してしまった。つまり、彼に依存することによって自分を満たそうとしていたのです。彼もそのことに薄々気付いており、それもあって距離を取ったのでしょう。
距離を取ったことで自分を客観的に見ることができ、相手を思いやることに気が付いたのです。
それは彼も同様です(=国籍・人種のことなど)

■要望
ベッドの上で彼女の膝枕で眠る彼。
このフォトはチラシ、ポスターに使われていますが、このフォトを見ると途中から結末が分かってしまいます。もう少し考えて欲しいものです。


■■考察■■
ジョアン・アレン・・・
彼女はまさにこういった透明感溢れる、繊細な女性の心情を表現するのが上手いです。

掃除メイド役のシャーリー・ヘンダーソン・・・
彼女はストーリーテラー的な役割です。
物語の途中でひょっこり現れて、鋭い言葉を放つ彼女の存在が面白い。

サム・ニール、自己陶酔してエレキギターを弾くマネをしている姿が似合っているような、そうでないような♪



アワー・ミュージック (2005) 公開(2005)
Notre Musique
★★★☆
フランス 1時間20分
監督・脚本・編集・出演:ジャン=リュック・ゴダール
出演:ナード・デュー、サラ・アドラー、ロニー・クラメール

この映画は3つのパートで構成されている。
夥しい戦争映像のモンタージュによる約10分間の第1部「地獄編」、ゴダールがこだわり続けるサラエヴォを舞台に、「本の出会い」というイベントに招かれた映画監督ゴダール(ゴダール自身が演じている)と、その講義を聞きに来た女子学生オルガの魂の交感を描く第2部「煉獄(浄罪界)編」、そして第2部で「殉教」に至ったオルガが、アメリカ兵に守られた小川のせせらぎを歩く第3部「天国編」。(=公式サイトより)

ジャン=リュック・ゴダール監督が9.11テロ以降の“今”を描き、世界に向けてメッセージを送った作品です。

■きちんと装丁された書物を読んでいるような、完成度の高い作品であり
監督の想いが詰め込まれたページを一枚一枚、こちらも襟を正して読んで監督と語り合っているような、そんな趣きのある作品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
まず最初に、戦争にまつわる膨大な悲惨な映像の断片を見せられ、一気に憂鬱な気分に。
続く第2部では、戦争の傷跡が今でも残るサラエヴォの街並みと、ゴダールと学生たちの交流を。
このパートでは、戦争についての本質をさまざまな人々との会話から汲み取ることが出来ます。
第3部では、オルガ(ナード・デュー)が射殺された(=らしい)衝撃の後、彼女が安らぎの世界に行ったことを暗示するパートになります。
穏やかな日差し、森の中を歩くと、米兵と子供が座って会話している。
手首に何も無い通行証(=存在しない通行証)を見せ、先に進むと、椅子に座って書物を読む男性、ボール遊びをするグループ(=存在しないボールで)の横を通り抜ける。
ああ、何て穏やかな世界なんだろう。
戦争の源となる、物質の欲望の無い世界。
そんなものは何もいらないと思える世界なのです。


■■考察■■
ゴダール監督と向合う女性は、ナード・デュー。
メジャーな女優でないところが、大勢の学生の一人、という設定に適しています。



ヴェニスの商人 (2004) 公開(2005)
THE MERCHANT OF VENICE
★★★★
アメリカ、イタリア、ルクセンブルグ、イギリス 2時間10分
監督:マイケル・ラドフォード
原作:ウィリアム・シェイクスピア
出演:アル・パチーノ、ジェレミー・アイアンズ、ジョセフ・ファインズ、リン・コリンズ、ズレイカ・ロビンソンクリス・マーシャル

シェイクスピアの戯曲「ヴェニスの商人」の初の本格映画化です。
原作に新解釈を加え、新たな人物像を提示しています。

■原作にほぼ忠実に作られ、人物像は新たな解釈を加えています。
喜劇の面は薄れ、シリアスなドラマといった趣き。
滑稽で笑える部分もあるのですが、ユダヤ人のシャイロックに同情したくなる作りです。

16世紀のヴェニスを再現した美しい街並み、アル・パチーノの迫真の演技、それに加えて新たな解釈で演出されたドラマ、是非一度は観て欲しい作品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
16世紀のヴェニスにおいて、ユダヤ人たちはゲットーに隔離され、外出する時は赤い帽子を被らなければならないー
キリスト教徒から唾を吐かれるほど蔑まれていたユダヤ人。
金貸し業は卑しい職業だと言われていたけれど、商売としては全く持って正当であるし、また、彼らはそうするしか生きていく術が無かった現実があります。

この映画の良いところは、シャイロック(アル・パチーノ)、アントーニオ(ジェレミー・アイアンズ)、バッサーニオ(ジョセフ・ファインズ)主役3人をそれぞれ多方面から捉え、誰が悪人善人と決め付けていないところです。
どの人間にもそうなる理由があり、そうなってしまった理由がある・・・
原作とは違う、この新解釈の作品全体から受けるメッセージは「慈悲の心」です。

■ポーシャ(リン・コリンズ)
裁判におけるバッサーニオの発言、博士に指輪を渡す件など、アントーニオに随分肩入れし、妻は二番手になっています。従者のグラシアーノ(クリス・マーシャル)も同様です。
その結果、あのようなドタバタ劇になってしまうのですが、最後にアントーニオに誓いを立てさせ保証人になって貰いメデタシメデタシで終わります。
ポーシャはいとも簡単に友人を優先することに腹を立て懲らしめるのですが、それと同時に、友情を超えた同性愛的な友人に(=これからの結婚生活のことも考えて)クギを刺すつもりで、あのような一計を案じたのでしょう。
それは見事に成功し、最初は夫にかしずく女性だったのが、最後には妻が夫を手の平で転がすようにまで変わって行ったのです。
何時の時代でも精神的には女性の方が上を行っていて影で操るのかも知れませんー  (=^∇^=)ウフフ


■■考察■■
出演者がそれぞれ役柄にピッタリですが、特にアル・パチーノの演技が際立っています。
怒りと憎しみに震え、裏切りに涙し、一人孤独に佇む姿。
ラストのその姿からは、悲哀しか感じられません。
彼の目とその身体からは圧倒的な存在感を感じます。
3人とも押しが強く濃ゆい俳優さんたちですが、今回はそれぞれに抑え気味の演技です。
自分の魅力を最大限に出しつつもあくまで役柄になり切る。
3人の調和が取れているのも成功の要因です。



銀河ヒッチハイク・ガイド (2005) 公開(2005)
The Hitchhiker's Guide to the Galaxy
★★★☆
アメリカ・イギリス 1時間49分
監督:ガース・ジェニングス
脚本:ダグラス・アダムス、キャリー・カークパトリック
原作:ダグラス・アダムス「銀河ヒッチハイク・ガイド」
出演:マーティン・フリーマン、サム・ロックウェル、ビル・ナイ、ジョン・マルコビッチ

全世界で1500万部の売上げを誇る伝説的カルトSF的小説「銀河ヒッチハイク・ガイド」の映画化です。もともとはBBCのラジオシリーズとして生まれ、それを小説にしたものです。

銀河系を通るバイパス工事の為に地球は破壊されてしまう。アーサー・デント(マーティン・フリーマン)は、地球人としてただ一人生き残り、ヒッチ・ハイカーとして広大な宇宙の旅に出ることになるのだが・・・

■シュールな笑いのコメディです。
所々に日本人には?なギャグもあり、面白いのかそうでないのか理解に苦しむところも多々有ります。
随処にハッとするほどのスケールのデカイ映像があるのも見所!!
好き嫌いがはっきり別れる、万人受けで無くマニア向けの映画です。
エンドクレジットでは、オマケのアニメが流れますのでお帰りにならぬようご注意。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
バイパス工事による地球破壊や融通さのない官僚など、現実世界を皮肉ったブラック・ユーモアが効いてます。
「人生、宇宙、すべてについての答」の真理を追求する哲学的な面も有り、シュールで独特の世界観を持ったSFドラマです。

物語が始まって何分後かに、いきなり地球は異星人によって攻撃され、一瞬のうちに消滅してしまいます。
物語はこうやってサクサクと進むのですが、途中からだんだんと変な方向に話が行ってしまいます。
とりとめのなさを感じますが、これを奇想天外と捉えるか。
摩訶不思議な、面白い人には分かる、そうでない人には思いっきり物足りなさを感じる映画なのかも知れません。

■■考察■■
主人公のアーサー・デントは、特にとりえもない平凡な男ですが、演じるマーティン・フリーマンの何と平凡なことよ!まさにはまり役の平凡さで○

登場する異星人やロボット(=鬱傾向有り)は、強烈なインパクトを放つ奇抜でミョーな方ばかり。異星人に扮する俳優には、サム・ロックウェル、ジョン・マルコヴィッチなど。
しかし、その容貌やハイな演技は本人たちだとはしばらくの間気が付かないほどです  (=^∇^=)
そんな中、ビル・ナイはまともなキャラで、相変わらずの飄々としたとぼけた味わいと渋い個性を発揮しておりました。



シン・シティ (2005) 公開(2005)
Sin city
★★★★
アメリカ 2時間4分
監督:フランク・ミラー、ロバート・ロドリゲス、クエンティン・タランティーノ
脚本:ロバート・ロドリゲス、フランク・ミラー
原作:フランク・ミラー
出演:ブルース・ウィリスミッキー・ローククライヴ・オーウェンベニチオ・デル・トロイライジャ・ウッド、ジョシュ・ハートネットニック・スタールマイケル・クラーク・ダンカンルトガー・ハウアー、ジェシカ・アルバブリタニー・マーフィデヴォン青木ロザリオ・ドーソンカーラ・グギーノ、その他多数

フランク・ミラーの同名コミックを、モノクロをベースにあくまで原作に忠実に再現したバイオレンス・アクション映画です。
<明らかに誰も見たことのない“刺激世界”>の名のとおり、クールでスタイリッシュな映像はかつて無い斬新さ。
原作者のフランク・ミラーとロバート・ロドリゲスが監督し、一部クエンティン・タランティーノが特別監督として参加しています。

■コミックの映画化と言えど、かなり残酷なシーンが多々あるので、
受け入れられる人とそうで無い人とにはっきり分かれそうです。

グロいシーンはかなりあります。
が、モノトーンの色合いとコミックを下敷きにしているところで(=例えば、おびただしい血飛沫は赤でないのでそれほどは気にならないです)
残酷なシーンであっても実際の映像よりは衝撃度はかなり軽減されています。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
モノクロの画面に、部分的に色づけしてあるので(=それも鮮やかな発色!)昔の色付けしたレトロな写真を思い出したりします。

物語は3つのエピソードから成るオムニバス構成です。
それぞれのパートには、巨悪と戦う男が主人公となっています。
軸になっているのは3人の男たちの愛と復讐劇であり、愛する女の為に命を張って壮絶な闘いを繰り広げます。
一つ一つのエピソードは独立していますが、何処かで繋がっている部分があり、少しずつ時間をずらしながら同時進行している為、物語が単調にならず広がりのあるものになっています。

■中年男性の魅力全開!!
それぞれは愛する女性の為闘うところが共通していますが、また、単なる正義感以上のものがあり、法律を無視し善悪を超えたアウトロー的な部分もまた共通しています。
□マーヴィン(ミッキー・ローク)
よくよく見ないと本人だと分からない姿です。
醜い容姿と、巨大な体、しかしその醜い姿の中に優しさが。
相手のコートをちゃっかり奪うところとか、吐かせてから殺すところとか残忍な面も持ち合わせているが、この愛らしいキャラで残酷さは感じない。
ボロアパートの中にハート型のピンクのベッドと言うのがまたイイ♪
□ドワイト(クライヴ・オーウェン)
3人の中では一番押しが弱い印象があリます。
しかし、3人ともクドく濃いとゲンナリするので、2番手でこのキャラは丁度良いかも。
□ハーティガン(ブルース・ウィリス)
3人の中では一番まともです。笑
定年間近の刑事が悠々自適の生活を捨て、体を張って少女を守る。
仲間に裏切られ汚名を着せられる以上に少女のことを心配する。
クラブで帰りかけた時、成長した少女が駆け寄ってキスをしたのが最高の見せ場♪
□ジャッキー・ボーイ(ベニチオ・デル・トロ)
チンピラまがいの警官でイイ男役では無いのですが、この存在感はなかなかのもの。
女たちに痛めつけられ殺された挙句、頭部を狙った組織の連中とフットボールの如くポンポンと投げられ飛び交う壮絶さ。
額にナイフが刺さったまま、というエグさがまたイイ。

■悲惨な若手二人
□ケビン(イライジャ・ウッド)
如何にも変態という趣き。
白く光るメガネが不気味。
手足を切り取られ、いわゆるだるま状態になっても、うっすらと微笑むその顔が凄い。
□ロアーク・ジュニア(ニック・スタール)
性格、行動、全てが最悪。
ハーティガンにお仕置きされた後も、しぶとくイエロー・バスタードとして復活。
邪悪で醜悪な黄色い肌、体から出す液体、すでに怪人と化している。汗


■■考察■■
愛する女を守る為に闘う3人の男たちの何とカッコイイことよ!!!
男の渋さと美学を感じますなぁ・・・
(個人の詳細は↑のネタバレにて)

スタイリッシュでとってもクール。
ハードボイルドの魅力を思う存分発揮した、ちょっと残酷で楽しい大人の為の映画なのです。



親切なクムジャさん (2005) 公開(2005)
Sympathy for Lady Vengeance
★★★☆
韓国 1時間54分
監督・脚本:パク・チャヌク監
出演:イ・ヨンエ、チェ・ミンシク、イ・スンシン、ユ・ジテ、ソン・ガンホなど

パク・チャヌク監督の“復讐三部作”(第一部「復讐者に憐れみを」、第二部「オールド・ボーイ」)の第三部にあたる完結編です。

■前作「オールド・ボーイ」よりは受ける衝撃度は低く、後に残る印象もややソフトです。
前作は何時までも後に嫌な感触が残りましたが今回はそれほどではありません。過激描写も前作以上なのに、不思議にも受ける印象は低いです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
天使のような外見も内面も美しい女の中に悪魔が同居する二面性。
随処に残酷なシーンもありますが、ブラックなコミカルさがそれを和らげています。

■映画の持つ意味
人が人を裁く行為は正しいのか。
「復讐」をすれば人はそれで満足なのか。
「復讐」の後には何が残るのか。
人の心は「善」と「悪」の部分は微妙に混ざり合い、一見しただけではどちらが正しいか分からない、そんな人間の内面を表しているようです。
それは、クムジャ自身のことでもあるし、被害者の家族も同様です。
教室でぺク先生を殺害するシーンは、どちらが被害者か加害者か分からなくなる程です。この映画の中の最もブラックが効いたところです。

■監督の意図するところとは・・・
<贖罪と救いの道を求める>が根本のテーマだそうです。
クムジャは少年を見殺しにしてしまったことを悔い、懺悔し、直接手を下したぺク先生に復讐しようとします。
自分の子供を人質に取られその代わりに刑務所に入ったその恨みよりも、亡くなった子供への贖罪の方が強いのです。
刑務所を出た後、真っ先に少年の親に出向いて自らの指を切り落とし許しを請おうとしたこと、少年の写真を壁に貼り何時もお祈りしていたことからも分かります。
しかし、物語に穴が開き過ぎていて、どうしてもそのようには思えないのが難点です。
クムジャの行動や13年間に練られた計画など、行き当たばったりに感じられる部分も少なくありません。
ただ単に自分のことだけの為に復讐しているのか、他者の贖罪の為に復讐しているのか、その点が曖昧なのです。
観ている方にも監督の意図が伝わらず、したがって、感動出来るシーンも彼女に感情移入する気持ちも薄くなってしまいます。


■■考察■■
ペク先生演じるチェ・ミンシク・・・
重要な役の割には出番が少ないので、犯人の持つ狂気や偏執的な嫌らしさが伝わって来ません。
非道極まりない極悪人なのに、単なる狡いオジサンというイメージしか残らないのが惜しいです。

イ・ヨンエは、一昔前の美人風。



シンデレラマン (2005) 公開(2005)
Cinderella man
★★★★
アメリカ 2時間24分
監督:ロン・ハワード
出演:ラッセル・クロウ、レネー・ゼルウィガーポール・ジアマッティ

大恐慌時代のアメリカ。
人々が職を失い明日食べる物のにも貧窮していた時代、国民に生きる希望を与えた一人の男が居た。
男の名は、ジム・ブラドック。
“シンデレラマン”と呼ばれた伝説のボクサー、ジム・ブラドックの半生を描いたヒューマン・ドラマです。

■実在したボクサーを題材にした物語は、やはり重みが違います。
スポーツ映画にありがちな単なるサクセス・ストーリーでは無く、
家族愛を強く感じさせる、感動の人間ドラマです。
ジム・ブラドックの波乱に満ちたボクシング人生、そして、家族との深い絆・・・
強い感動を受けるというより、静かにじーーんと後に残る映画です。

注:後半ボクシングシーンが長く続くので、打たれ弱い乙女は辛いかも。
ボクシング好きの方には、手に汗握る興奮状態に!!
ドキドキ感で一杯になるシーンの連続です(=ワタシは手に汗握る方です・笑)

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
ボクシングシーンは多く登場しますが(=特に後半)、よくあるスポーツ映画とは一線を画しています。
必要以上に演出されたり、感動を強要するような押し付けがましさはありません。演出など奇を狙わないオーソドックスなつくりで、丁寧に真面目に作られた作品です。
ロン・ハワード監督、“職人気質”が光る作品です。

■貧困
アメリカの大恐慌、当時のすさまじい貧困ぶりが描かれています。
昨日裕福だった人が次の日には食うものさえままならない。
ジム・ブラドック(ラッセル・クロウ)の家も例外ではありません。
最初の頃に蓄えた財産も株や投資につぎ込んだ為、大恐慌によって、それも全て失ってしまいます。
港湾での荷受作業の仕事にあぶれる日が続き、
今は小さな安アパートに身を寄せ、その日食べるものさえ事欠く毎日。
ミルクを水で薄めて飲み、パンは薄いペンペンのものを1枚、そしてやがて電気も止められてしまう・・・
そんな貧窮した生活から家族を守る為、生きて行く為に、男は全力を出して闘うのです。
父として、家族を養い守る者として、その手段としてボクシングを続けるのです。


■■考察■■
ラッセル・クロウ・・・
これでもか!という程の貧困生活を生きる逞しい男を、
家族を守る為にプライドを捨て頭を下げる、真に強い男を演じています。
ボクシングのシーンにおける肉体美も発揮!!
彼のちょっと情けない表情と、どん底の生活ぶりとが妙にマッチしていてやけにリアルです。

レネー・ゼルウィガー・・・
夫を愛し家族を愛する芯の強い女性ながら、妻として夫の成功を願う気持ちと、夫の身を案じる、その狭間で揺れる思いを見事に表現!!
ますますノリにのってます。

ポール・ジアマッティ・・・
ダメ男が続いた彼でしたが、今回はジム・ブラドックを影で支える男です。イイ人です  (=^∇^=)



ステルス (2005) 公開(2005)
Stealth
★★☆
アメリカ 2時間
監督:ロブ・コーエン
出演:ジョシュ・ルーカス、ジェシカ・ビール、ジェイミー・フォックス

新型の人工知能を搭載した無人ステルス戦闘機「エディ」が突如暴走を始める。命令を無視し他国へ爆撃しに向かうステルスを、3人の精鋭パイロットたちは食い止めようとするが・・・

■ご都合主義の連続で、思わず失笑してしまうシーンが続出です。
安易な展開、安易な設定、安易なクライマックス。
大真面目に作ってあるところが何とも言えず・・・ツッコミどころ満載のトンデモ映画です。
ただ、最新VFX技術駆使した映像は迫力満点、空中戦でのバトルはスピード感溢れる映像で観る者を圧倒させる臨場感があります。

あ、、エンドクレジットの後にも続きがあります。が、それは・・・笑

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
冒頭から「チーム★アメリカ ワールドポリス」を彷彿とさせる展開に思わずニヤリ・・・「世界の警察アメリカ」は、テロリストたちを一掃する為には手段を選びません!!
爆撃する時は周辺住民の被害想定を割り出してはいましたが、単なる気休めの域を出ていません。

作品の要は、人間性を無視し機械偏重の社会への警告、と受け止められます。が、あまりにもいろいろな要素を詰め込み過ぎて話が散漫になっています。
主張したいものが薄まってしまい、観た後は特に何も印象に残りません。

■ツッコミがたくさんあり過ぎて全て書けないのが残念です。笑
□学習能力を持つ「エディ」は、人の話を盗み聞きして勝手に仮想作戦を実行しようとする。盗み聞き程度で勝手な行動を起こす人工知能!!
危なかしくっておちおち立ち話も出来ません。苦笑
□最初は対立していた「エディ」とトムだったが、「エディ」の窮地を救ってあげたことにより「エディ」はすっかり気を良くし二人は仲良くなる。
意外と単細胞な人口知能ちゃん・・・
□カーラのパラシュートは破片が突き刺さり穴だらけになって、みるみる墜落して行く。あわや!と思ったら、何故か木に引っ掛かり、それも上手い具合に丁度地面から2−3mの距離・・・
□北朝鮮での激しい銃撃戦、ステルスを捨て、歩いてどうするのかと思ったら、そこは国境のすぐ近くだった。二人は難なく歩いて国境を通過!!
□何百億というステルスをカーラ一人を助けだす為だけに使用し、挙句の果てには爆発してパーになったにも拘らず、何故かトムは軍法会議にも掛けられず、最後はメデタシメデタシで終わる。

■驚愕!!アメリカ的正義の数々!!
□ミャンマーに集まったテロリスト数人を倒す為だけに、建設中のビルを爆破!
□核兵器を保有しているテロリストたちが居住している建物を破壊したばかりに、周辺住民に核の被害が!
□ロシアの領域を勝手に飛行しているのにも関わらず、出現したロシア機を次々と襲撃!
自分たちが悪いのに反省の色無し。
□北朝鮮に不時着したカーラを助ける為に、本部を無視しステルスを発進。北朝鮮の兵士たちを皆殺する。
空から不審人物が降りて来たら、何処の国でも偵察に来ると思うのだが?

■■考察■■
ジェイミー・フォックスは「Ray」でオスカーを受賞したとは思えないほどの凡庸な役柄。製作が「Ray」と前後したのかも知れませんが、今となっては何とも勿体無い使い方です。
とりあえずジョシュ・ルーカスが主役ですが、ジェイミー・フォックス、ジェシカ・ビールと共に3人は横並びで誰も印象に残りません。
ジェシカ・ビール・・・
腕や肩の張り具合などさらにさらに筋肉度が増したもようでマッチョです。



ソウ2 (2005) 公開(2005)
SAW U
★★★★
アメリカ 1時間40分
監督:ダーレン・リン・バウズマン
製作総指揮:ジェームズ・ワン、リーワネル 他
脚本:ダーレン・リン・バウズマン、リー・ワネル

2004年サンダンス映画祭で話題となり世界的に大ヒットした「ソウ」の続編です。
前作「ソウ」で監督・原案のジェームズ・ワン、脚本・原案のリー・ワネルは今回は製作総指揮に、新しい監督としてダーレン・リン・バウズマンを起用しました。
脚本はバウズマン監督とリー・ワネル。

■続編となると普通はパワーダウンして面白味の無いものになりがちですが、今回は前作を継承しつつ新たな状況設定を用意してあるので観ていて飽きることがありません。
続編なので前作のあの「何てこったい!!」な衝撃はやや低いですが、最後に思わぬどんでん返しがあり、それ相当のインパクトはあります。
残酷、非道なショックシーンも健在です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
冒頭から前作の流れである刑事を登場させ、前作と繋がりがあることを予感させます。
そして、第一の犠牲者によってそれは確実なものへと変わります。

「何故、第一の犠牲者はアマンダと同じ拷問装置を付けて殺害されたのだろう?」と、いう疑問を抱きつつ、次々と残虐な殺人が行われて行きます。

途中、「猛毒ガスで次々と人が倒れて行く中、何故、アマンダと息子ダニエルは他の人と比べて体が衰弱していないのだろう?」
などと、心に引っ掛かるものを感じます。が、それは微々たるもので、物語の面白さに引き込まれて行きます。

そして、ラストに例のバスルームが登場して、鮮やかなどんでん返しと共あっけない幕切れとなります。

前作同様、薄汚いバッチい舞台設定です。
数々のトラップの残虐性は前作よりパワーアップしています。
が、前作の方がインパクトがあった為か、今回は数々のトラップを見せてくれる割にはそれほどはショッキングに感じませんでした(・・・って、これはホラーマニアに限ってかも。笑)
映画全体に細部までのこだわりを見せてくれる心憎い演出です♪ウフッ

■ワタシなりの解釈
8人の監禁に関しては、数々の謎が残ったり疑問点もあります。
しかし、重要なのは、ジグソウとマシューの駆け引きなのです。
8人の監禁はビデオなのでどうにでも編集出来たでしょう(=ゲームに関して誇り高いジグソウは編集はしなかったかも知れませんが・・・)
即ち(息子ダニエルがすぐ脇の金庫に閉じ込められていたことからも分かりますが)結局は、あの場所での二人のゲームだったのです。
しかし、マシューはその短気さ故にワナにはまり、あの場所から出て現場に直行し、そしてバスルームに閉じ込められることとなってしまった。
短気なマシューが取った行動は、まさにジグソウの読み通りだということです。
8人の監禁は云わば“数々の残虐シーンを見せる目玉”でありながら、実は、“添え物”といったものかも知れません。

■第三部は?
前作は、ジグソウの死期が近いことで、彼なりの狂った思想と切羽詰まった時間を感じ、殺人に至る動機が理解出来ました。
しかし、第三部を作るとなるとかなり難しいものがあります。
アマンダは、ジグソウの思想を受け継ぐ者として後継者として認められたとしても、<死に関して切羽詰まっていない>彼女にはどうしてもジグソウのようなカリスマ性は出せないのではないかと思われます。


■■考察■■
ジグソウ・・・
前回は体形的に不満がありましたが、今回はさらに進行した末期がんということもあり痩せ細った色白のオジサン(トビン・ベル)に変更。
前作と同じキャストはアマンダ(ショウニー・スミス)のみで後は総入れ替えです。安易にメジャーな俳優を起用せず、地味目な中堅俳優を使っているところが良い結果となりました。



ダーク・ウォーター (2004) 公開(2005)
DARK WATER
★★★☆
アメリカ 1時間45分
監督:ウォルター・サレス
原作:鈴木光司「仄暗い水の底から」
出演:ジェニファー・コネリー、アリエル・ゲイド、ジョン・C・ライリー
ティム・ロス、ピート・ポスルスウェイト、ダグレイ・スコットなど

鈴木光司原作、中田秀夫監督の「仄暗い水の底から」のリメイクです。
今回は、ニューヨークのルーズベルト島のとあるアパートが舞台となっています。

■単なるホラーではなくドラマ性の高い作品です。
オリジナルの良さを活かしつつ、アメリカの風土に根ざしたサスペンス・ホラーとなっています。
ショッキングな映像で驚かすのでは無く、また、日本特有のじめじめした湿っぽさとは違う、舞台となるルーズベルト島の風土を活かしたウォルター・サレス監督の世界が広がります。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
雨のシーンが多く、延々と降り続ける雨、それを窓から見上げる姿。
離婚、母との葛藤、トラウマ、彼女が抱える心の闇。
それはまるで降り注ぐ雨のように、不安で何時までも晴れない彼女の心を表しているようです。
親子の愛を強く感じるドラマです。

このドラマの良いところは、親子愛を全面に押し出したこと、舞台となったルーズベルト島の存在です。
同じ島でありながら、マンハッタン島とは違うその雰囲気。
過去の歴史も関係しているのか、その島の持つ独特のものがこの映画を成功に導いています。

■舞台となったルーズベルト島
現在は都市開発公社による複合的な住宅地になっていますが、元は精神病院、救貧院等があったそうです。
交通手段は地下鉄以外には、トリムと呼ばれるロープーウェイがあります。劇中で何度も出て来ますが、途中、川の上を通ったりします。
舞台となる古ぼけた高層住宅群が何とも不気味で、規則正しく整然と林立している姿はぞくっとする威圧感があります。

■邦画版との比較はヤボ
ここのアパートを借りる訳ですが、狭いと言っても、一室はベッドを2つ置ける余裕があるし、LDKは狭いと言いつつもキッチンはそれなりに大きく、ソファも楽々置けてしまいます。
日本だと、一室は6畳の和室、LDKは8畳にチープなキッチンといったところでしょうか。
ハリウッド版は根本的にその土地建物が違うので、日本版と比較するのは筋違いかと思われます。

■ガタガタブルブル
地下にあるコインランドリー。
薄暗い通路、叫んでも誰も来なさそうな場所にあります。
とても恐ろしくって、女性一人では行けないかも・・・


■■考察■■
ジェニファー・コネリーは安定した演技。
管理人役のピート・ポスルスウェイト、脇役ながら独特の雰囲気を持つ彼の存在は重要です。



ダウン・イン・ザ・バレー (2005) 公開(2005)
Down in the Valley
★★★☆
アメリカ 1時間52分
監督・製作・脚本:デヴィッド・ジェイコブソン
出演:エドワード・ノートン、エヴァン・レイチェル・ウッド、デヴィッド・モース、ロリー・カルキンなど

今年のカンヌ映画祭、ある視点部門で上映され絶賛された本作『ダウン・イン・ザ・バレー』知性とカリスマを兼ね備えた現代アメリカを代表する演技派エドワード・ノートンが、その脚本にほれ込み、主演のみならず製作も手がけた話題作だ。
(=公式サイトより)

■舞台となるサンフェルナンド・バレー、キャスティング、この二つが上手く出た作品です。
物語としては、可も無く不可も無く・・・といったところ。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
カリフォルニア州サンフェルナンド・バレーが舞台となっています。
(ここは「マグノリア」の舞台になった住宅街)
カラーーンとした乾いた空気と何処か閉塞感が感じられる郊外の新興住宅地です。
何本ものハイウェイが通り、すぐ脇には延々と続く荒涼とした空き地。
そこにふいに現れた馬にまたがる自称カウボーイ。
そのアンバランスさが何とも不思議な感覚を生み出していますが、その乾いた空気が何処か西部劇に出て来る町を彷彿させているので意外としっくりくるのかも知れません。

カウボーイ男ハーレン(エドワード・ノートン)、最初はミステリアスで素敵なのですが、だんだんと正体が明らかになるにつれ不気味になって来ます。
はっきりとした事は最後まで明かされませんが、恐らく彼は彼は多重人格者だったのでしょう。物語が進むにつれて、だんだんとその症状が進行していったようです。
ピュアなラブ・ストーリーがサスペンスへと変わって行く恐ろしい物語!
それにしても、姉も弟も彼の後に付いて行くというのは、ミステリアスな雰囲気が魅力を生むのでしょうか。


■■考察■■
17歳の少女が年上の男に惹かれて行く・・・
その年頃の女性の心情がとても上手く描かれています。
少女から大人になる、その途中の不安定で激しい心の揺れ動きをエヴァン・レイチェル・ウッドが好演。
華奢で透明感あふれるその姿はとってもキュートで可愛らしい美しさ。
そして、何と言ってもエドワード・ノートン!!
都会の中にカウボーイという胡散臭さと少年のような無邪気さを持ち合わせ、ミステリアスな魅力を漂わせています。
デヴィッド・モース・・・
荒々しく一本気な中級階層の刑務官。
子供への愛情は人一倍強いけれど、しかしそれが上手く伝わらず何時も子供たちと衝突してしまう。
カラカラと空回りしてしまう、親としての虚しさを上手く表現しています。



チャーリーとチョコレート工場 (2005) 公開(2005)
Charlie and the Chocolate Factory
★★★★☆
アメリカ・イギリス 1時間55分
監督:ティム・バートン
原作:ロアルド・ダール「チョコレート工場の秘密」
出演:ジョニー・デップフレディ・ハイモアデヴィッド・ケリーノア・テイラー、ディープ・ロイ、クリストファー・リー

原作は、全世界で1300万部以上を売り上げるロングベストセラー、ロアルド・ダール著「Charlie and the Chocolate Factory」(邦題「チョコレート工場の秘密」)
1971年にメル・スチュアート監督「夢のチョコレート工場」で映画化されており、本作は2度目の映画化となります。
ティム・バートン&ジョニー・デップのコンビは今回で4度目。

■単なるお子様向け映画ではありません。どちらかと言うと大人向けのファンタジーです。
ファンタジックあり、強烈なブラックあり、その中には教訓あり。
原色で彩られた工場内部や奇想天外な装置などバートン・ワールド炸裂です。
工場の中は色とりどりに飾られ、きらびやかで美しく、まるでディズニーのアトラクションを見ているようですが、その中には、バートンお得意のブラック・テイストがふんだんに盛り込まれています  (*^∇^*)

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
何となく怪しい雰囲気が漂うチョコレート工場。
経営者のウィリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)も怪しいし。
5組の招待客が招かれ、門の中に入って行くと・・・
いきなりディズニー様のセルロイド人形たちが歌って踊ってお出迎え。
し、しかし、、花火が引火し、人形たちは無残にも焼け爛れてしまう・・・
観ている観客は、まずここで度肝を抜かれ、これから起こる何かを予感しワクワクしてしまいます。

5組の招待客の内まともな子供はチャーリー(フレディ・ハイモア)だけで、後の4人は我がままで自己中心的で生意気な今風のこどもたち。
4人の子供たちが次々にひどい目に遭って行くのですが、
まず、最初のオデブくんが標的になった時点で、観客は、次に標的になるのは「誰で」「どんな仕掛け」で酷い目に遭わされるのだろう?と想像します。
正直言って、あまり愉快なものでは無く心から笑えないものもあります。
が、、しかし、4人の子供たちがあまりに生意気で嫌な子供たちなので、バートン風の小気味良い演出もあって、「ま、いいか!」と妙に納得してしまうものがあります。

ウンパ・ルンパ(ディープ・ロイ)が一斉に踊り出すシュールな世界は、毒気のある物語にスイーッと流れ込んで来て一種の清涼剤(=かなり不思議な味ですが・笑)の役目を果たしています。
父と息子の決別、そして和解。
家族の愛。
子供が望むものと親が望むものとの違いを理解し、一番良い方向へと導いて行く親のつとめ。
数々の仕掛けにはブラックながら、ユーモアあり、冒険心あり、教訓あり。
いろいろな要素がてんこ盛りになった、とっても贅沢で楽しい作品です。

■パロディ満載!
ウォンカがシャキーン!とテープカットをするシーンは「シザーハンズ」
「サイコ」「2001年宇宙の旅」などの名作や、いにしえのミュージシャン「ビートルズ」「クィーン」など。
他には、シンクロなども有り。
ウォンカの子供の時に装着していた歯の矯正器具、どう見ても「ソウ」に出て来たような拷問器具にしか見えないのもご愛嬌  (=^∇^=)


■■考察■■
ジョニー・デップの演技力は今更言うまでもありませんが、
今回のウィリー・ウォンカの奇人ぶりはかなりミョーで可笑しく、この役柄はジョニーあってこそだと思いました。
他の方が演じると、単なる変人、或いは不気味な男、にしか映らないかも。
ウォンカのちょっとした仕草や視線の行き場など、本当に上手いです。
ジョニーの存在感、それにエキセントリックな役柄がマッチして、摩訶不思議な魅力を持つ男を作り出しています。

脇を固めるノア・テイラー、クリストファー・リーなど個性派俳優が意外にも普通のパパ役を演じていますが、これがしっくりと来て良い感じなのです。
ジョニー・デップには最高に強烈な印象があり、4人の生意気な子供たちもそれぞれ変化に富んで個性的なので、他の個性派俳優たちが普通の役をしているのがさり気に印象を残す上手い演出となっています。



ティム・バートンのコープス・ブライド (2005) 公開(2005)
TIM BURTON'S CORPSE BRIDE
★★★★☆
アメリカ 1時間17分
監督:ティム・バートン、マイク・ジョンソン
製作:ティム・バートン、他
声の出演:ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、エミリー・ワトソン

「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」「ジャイアント・ピーチ」でストップモーション・アニメ(=パペットをひとコマひとコマ動かして撮影していく手法)を手掛け製作したティム・バートン監督。
今回はマイク・ジョンソンと共に自ら監督も務めています。

19世紀、欧州のとある村。
没落貴族の娘(声:ヘレナ・ボナム=カーター)と成金商人の息子ビクター(声:ジョニー・デップ)は婚約する。ビクターは暗い森の中で式の練習をしていると、うっかり死体の指に指輪をはめてしまい・・・
ダークでファンタジー、そしてユーモアたっぷりのラブ・ストーリーです。

■思わず引き込まれる不思議な世界。
「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」がお好きな方ならば、きっと大好きに違いない、素敵なラブ・ストーリーです。
大人から子供まで楽しめますが、やはり大人の映画かも。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
女性の憧れである「結婚」「花嫁」がメインとなっているので、女性にはことさらぐっと来るものがあります。
片目が時々ポロリと落ちてしまったり、身体の肉もところどころ削げて骨が見えているコープスプライド。
姿はそうであっても、ハートはとてもピュアな持ち主なのです。
結婚を夢見て愛する人を来るのをひたすら待ち続けた彼女は、とってもキュートで魅力的です。

■この映画で面白いのは
現実の世界はダークな色彩で被われ、登場する人物も強欲な人たちばかり。それに対して、あの世の世界はカラフルな色で彩られ、あの世の住人たちはとっても楽しそう。
ガイコツや死人たちの方がまともな事を言っているのがさらに可笑しさを増してます。

■三角関係
ビクター、コープスプライド、ビクトリアと、いわゆる男一人女二人の三角関係です。
あの世の世界に行ってしまった為に、ビクターとコープスプライドの二人がメインになってしまい、ビクトリアの存在は薄くなりがちになるところです。が、その描き方のバランスが絶妙なので、三人それぞれが主役のようでもあり、観ている私たちもそれぞれに感情移入出来るのです。

■ラストの何と美しいことよ!
ラスト、コースプライドの魂は浄化され天に昇って行きます。
彼女の身体は少しずつ蝶になって、ふわふわと舞いながら空に羽ばたいて行くのです。
それは、冒頭でビクターが硝子の中の蝶を窓の外へ解放した時のように、彼女もまた魂の束縛から解放されたのです。


■■考察■■
豪華キャストによる声の出演ですが、パペットを観ている時も特にその俳優たちを意識する訳でも無く、見事にパペットたちと同化していました♪



灯台守の恋 (2004) 公開(2005)
L' EQUIPIER
★★★★☆
フランス 1時間44分
監督・脚本:フィリップ・リオレ
出演:サンドリーヌ・ボネール、フィリップ・トレトン、グレゴリ・デランジェール、エミリー・デュケンヌ

カミ-ユは生まれ故郷ウエッサン島へ、自分の家族の家を売却するために戻ってきた。そこで、1冊の本に出会うことで父と母の秘密を発見する。
本のタイトルは「私の世界の果て」著者はアントワーヌ・カッサンディ――
(=公式サイトより)

1960年代のフランス。
ブルターニュ地方ウエッサン島に灯台守として赴任して来た青年、その上司と妻が織り成す微妙な愛を描いています。

■まさにフランス映画!といった感じです。
神秘的で何処か寂しげな風景、荒々しい海の中に立つ灯台。
男女三人の危うい微妙な恋愛模様は、切なく、哀しく・・・
しかし、作品全体を覆うのは悲壮感では無く、温かい心のふれあいなのです。
どちらかと言うと大人の恋愛映画です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
舞台となる仏・ブルターニュ地方の辺境の地ウエッサン島は、“世界の果て”と呼ばれ荒涼として静かな風景が広がる神秘的な土地。
そして、男たちが交代で務める荒波打ち付けるジュマン灯台・・・
美しい風景と厳しくも過酷な状況で働く男たち。
そこで繰り広げられる女と男の三角関係は、切なさと秘めたる狂おしい愛があります。
過去と現代をシンクロさせ、ラストにもつれ込む見事な展開。
感動とはまた違う、静かにじーーーんと心に残る、そんな作品です。

■親から子供へ
最初は惜しげもなく家を売る予定だった娘ですが、一晩で気持ちが変わり家を残すことにします。
一夜で読んだ一冊の本から知った真実。
島を出ることなく生涯をともにした両親の愛と、青年の妻への深い想いを知ることになります。
そして何より感動したのは、恐らく青年の子供であろう娘を深く愛した父の存在です。
そこには、血を超えた、一言では言えないほどの深い愛情があるのです。

■話の概要だけで見るとありがちな話かも知れませんが・・・
普通に描くと凡庸な映画になりがちですが、ブルターニュ地方の偏狭な土地と風土、複雑な島民感情などエッセンスを上手く取り入れています。
ただの甘ったるいラブ・ストーリーだけに終わらないのが良いです。
フィリップ・リオレ監督のセンスの良さが滲み出た作品であります。

■それにしても・・・
あちらのラブ・シーンは激しいですな。
ものの数秒でしたが、深く求め合う愛を感じました♪ウフ


■■考察■■
サンドリーヌ・ボネール、フィリップ・トレトン、グレゴリ・デランジェール、この3人のバランスがとっても良く、キャスティングが見事に功しています。
娘役のエミリー・デュケンヌと母サンドリーヌ・ボネールは、骨格が似ているのか醸し出す雰囲気が同じで、こちまた上手いキャスティングです。



ドア・イン・ザ・フロア (2004) 公開(2005)
The Door in the Floor
★★★★☆
アメリカ 1時間58分
監督・脚本:トッド・ウィリアムズ
原作:ジョン・アーヴィング「未亡人の一生」
出演:ジェフ・ブリッジス、キム・ベイシンガー、ジョン・フォスター、ミミ・ロジャース、エル・ファニング

ジョン・アーヴィングの「未亡人の一生」の前半部分を映画化したものです。
映画化に4年の歳月をかけ、自身の自伝的要素を反映させた思い入れの深い作品。家族のあり方を描いたヒューマン・ドラマです。
※「ドア・イン・ザ・フロア」とは、ジェフ・ブリッジス演じるテッドが書いた児童書「床の上のドア」のこと。

■衝撃的な内容なのに、とても静かで静寂さを感じる作品です。
幾つもの事柄が伏線となっていて、次第に全貌がつかめて来ます。
キャスティングの良さはもちろんのこと、演出がとても良いです!
原作を未読な方も、既に読まれた方にも、期待を裏切らない作品だと思います。

ただ単に喪失感を描くだけでなく、さりげに笑えるユーモア、ピリリと毒の効いた演出等有り、静かな風景の中で織り成す家族の心模様が描かれています。
前半部分だけなので、是非、後半部分も映画化して欲しいところ。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
ある家族の崩壊と再生を描いたドラマです。
家族を襲った不幸、その苦しみに浸り、痛みを乗り越える方法が、夫と妻とでは違っていた・・・
そのどうしようもないすれ違いを描いています。

海辺に近い一軒家に住む裕福な家族。
しかし、夫婦にはそれぞれ自身が抱える深い悩みがあって・・・
透明感のある美しい静寂さを感じる風景の中で一括りでは語れない複雑な人間の心のひだを静かに浮かび上がらせています。
題名が示す通り、人は誰もが「床の上のドア」を持っている。
自分の持つ心の闇や喪失感と如何に向合うか
運命という大きな河に流され、深い哀しみに直面した時に人々の取った行動が見て取れます。

■家族の中に一筋の風
子供を失った哀しみから立ち直れない妻。
人妻と浮名を流しながらも、その実は妻を家庭を深く思いやる夫。
夫婦と子供一人の家族の中にある日現れた高校生。
彼の出現によって、かろうじて機能していた家族は少しずつ変化して行く。そう、まるであの家庭は、不安定な崖っぷちに立っているような、そんな感じだった。
彼の出現がきっかけとなったけれど、遅かれ早かれこうなっただろう。
水に浮かぶ木の葉のごとく、運命と、それによって流され漂う人々の心を感じる作品です。

■作品を一気に貶める無粋なぼかし
この映画はR−15指定ですが、ベッドシーンで大きな丸いぼかしが入ります。
これがとっても不自然で、観ていて無性に腹が立って来ます。
素晴しい文芸作品なのに、このようなぼかしが入ることによって作品が台無しになってしまうのです。

■■考察■■
ジェフ・ブリッジス・・・
女にモテ、自身も女好き。
やっていることは奔放だけれど、実は、家族のあり方に心を痛め悩んでいる・・・そんな微妙な役どころを好演しています。

キム・ベイシンガー・・・
どうにもならない心の喪失感、倦怠感。
女性にしか分からないであろう心情を見事に表現。
彼女はサスペンスやアクション映画よりも、こういった繊細な心の表現を描く作品の方が合っているような気がします。

ジョン・フォスター、エル・ファニング(ダコタ・ファニングの妹)もなかなかのもの。これからが期待される有望株です。



ハックル (2004) 公開(2005)
Hukkle
★★★★
ハンガリー 1時間16分
監督・脚本:パールフィ・ジョルジ
出演:バンディ・フェレンツラーツ・ヨージェフネーファルカシュ・ヨーゼフナジ・フェレンツヴィラーグ・フェレンツレー

モグラの住んでいる地中から、F16戦闘機が滑空する空中、X線で覗いた人体内部へと、縦横無尽に駆け巡る驚愕の映像。野原の生き物たちの鳴き声と、おじいさんの止まらないしゃっくりが織りなす音響シンフォニー。
※「ハックル」とは、ハンガリー語でしゃっくりの音を模したもの。
(=公式サイトより)
2002年ヨーロッパ映画賞新人賞受賞など他、多数受賞した作品です。

ハンガリーののどかな田舎を舞台に、そこで暮らす人々の素朴な日常を綴った、シュールで可笑しいちょっと不思議なお話です。

■台詞が一切無く、生活音や鳥のさえずる自然音のみ。
村人たちの日常を静かにカメラは追い、単なる癒し系?の映画かと思うのですが、実は、こののどかな風景に隠されたものがあるのです。
ドキュメンタリー風のタッチの中に、しのばされたモノを気付く楽しさ。
何気ない風景を追っただけなのに、何処と無くユーモアを感じ、噴出す可笑しさ。
何とも言えない摩訶不思議な印象が後に残ります。

但し、この世界に入れるか入れないかキッパリ好みが分かれそうです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
しゃっくりが止まらない一人暮らしのチェクリックおじいさん(バンディ・フェレンツ)彼の様子を映しながら、村人たちの生活を追って行きます。
のどかな、何処にでもあるような農村風景。
カメラはをその風景をゆっくり映し出し人々の営みを追って行く訳ですが・・・
しかし、何処かおかしい事に気付きます。
最初は、ミキサーに残った料理を猫が食べて痙攣を起こし、足がもつれて倒れてしまいます。
そして、頻繁に起こるお葬式。
水面の下には男性の死体があったり。
村人の男性がたくさん集まって興じていたボール遊びも遂には一人になってしまう・・・

そう、これはもしかすると、ある女性が配っていた瓶詰めの液体と何か関係があるのでは?
女性たちが郵便配達人から受け取るお金は、保険料?
もしかして、村全体の女性たちが企んでいるのだろうか?
などと、あれこれ巡らしていると、
ラストの結婚式、女の子たちがコーラスする歌を聴いてその謎が確信へと変わります。

牧歌的な日常を映し出しながら、実はその中に隠された殺人計画!
ユーモアでのんびりしたドラマにそっとサスペンスを忍ばせるこの上手さ。
シュールで不思議な、素晴しい映画です。

木々や草や昆虫や蛇やモグラや豚やその他いろいろな動物。
地響きと共にF16戦闘機が低空飛行で疾走したり、カチャカチャと食器を並べる音。くるくると視点を変えながら映し出すその映像はとても美しく、時にはハッとしたり。
自然の風景と生活音のみの映像が堪らなく魅力的です。

■最初の蛇は・・・
冒頭は、眠っていた大きな蛇が地中から這い出し首をもたげ、村のほうをじっと見つめます。
何気ないひとコマですが後から考えると、村に起こる数々の不吉な前兆とも取れるし、密かに計画されていた企みを象徴しているとも思えます。


■■考察■■
くしゃみが止まらないチェクリックおじいさんがとっても良い!
特に下から写した映像が何だか微笑んでいるようで可愛いデス♪



ハリー・ポッターと炎のゴブレット (2005) 公開(2005)
Harry Potter and the Goblet of Fire
★★★★
アメリカ 2時間37分
監督:マイク・ニューウェル
原作:J・K・ローリング
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、トム・フェルトン、スターニスラフ・イワネフスキーレイフ・ファインズマイケル・ガンボンゲイリー・オールドマンアラン・リックマンマギー・スミスティモシー・スポールなど

「ハリー・ポッター」シリーズ、第4作目です。
ホグワーツ魔法魔術学校の4年生に進級したハリー・ポッター。
クイディッチのワールドカップ、“三大魔法学校対抗試合”、ヴォルデモートの復活と、今回もまた数々の試練に立向かいます。

■なかなか良い出来栄えです。
原作はかなり膨大な量らしいですが、数々のエピソードを上手くまとめてあります。いろいろな話を詰め込んであるにも関わらず、決して散漫にならず一貫性のある内容。スケールのデカイ、壮大な世界を作り上げています。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
物語の柱は、100年ぶりに復活した“三大魔法学校対抗試合”、ヴォルデモートの復活、そして、ハリー、ロン、ハーマイオニー3人の関係です。
スクリーン全体が絶えず薄暗い闇に覆われ、物語もこれまで以上にダークで恐ろしい展開になっています。ヴォルデモートの登場でこういった演出になったのではないかと思われます。

■ほろ苦い青春のひとコマ
3人の関係も今までとは違い、子供から大人へと移る思春期の様々な想いや心の移ろいを感じることが出来ます。
特に、ダンス・パーティでのシーンは、誘って欲しい気持ち、その心を察してくれない苛立ち、彼女の心を察してやれない鈍感さ、本当は誘いたいのに言い出せない・・・彼らの間には今までには無かった感情が芽生え始めています。
ハーマイオニーがふとつぶやく言葉がまさにそれを物語っています。

■ヴォルデモート
終盤に遂に現れるヴォルデモート。
この作品だけで見ると、激しい怨念や憤りや、復活出来た狂気の喜びなどが抑えた演技の中に埋没してしまっています。
魔界を制する者としては、少々物足りなさを感じますが、復活した直後ということで、本領発揮は次回に期待したいです。


■■考察■■
ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、その他常連の子役たちもいよいよ大人っぽくなって来た模様。
この成長をどのように生かすか、それによって作品が良くも悪くもなりそうです。

ティモシー・スポール、こいった狡い小心者の役もピッタリで、本当に芸達者な人です。
ゲイリー・オールドマン、顔だけの演技が笑えます  (=^∇^=)



フォー・ブラザーズ 狼たちの誓い (2005) 公開(2005)
Four brothers
★★★☆
アメリカ 1時間48分
監督:ジョン・シングルトン
出演:マーク・ウォールバーグ、タイリース・ギブソンアンドレ・ベンジャミンギャレット・ヘドランド

西部劇「エルダー兄弟」(=1965年、ジョン・ウェイン主演)のリメイク。
育ての親を何者かに殺された孤児である4人の兄弟。事件の真相に迫るべく奔走し復讐に立ち上がるサスペンス・アクション映画です。

■いわゆる復讐劇です。
真っ当に考えると??な部分がありますが、そういったことは脇に置いておいて、思う存分彼らの活躍を楽しみたくなる映画です。
不謹慎ながら、観た後はスッキリ爽快な気分になります。

バックに流れる数々のモータウン・ソングがまたイイのです♪
※モータウン・ソングとは・・・デトロイトを本拠地に構えるソウル・ミュージック専門のレコード・レーベルの1つ

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
巨大な悪に立向かう4兄弟。
育ての親を殺された彼らは、警察に頼らず自らが行動し、真犯人を突き止めようとします。
彼らの行動は途中から正義を通り越して、「悪」なのか「善」なのか見分けが付かなくなってしまいます。
例えば・・・
□自分の殺された家族以上の人が大勢死ぬ
□銃社会の問題が叫ばれている今、所構わず銃撃ちまくりの大銃撃戦!
□復讐の為に人を殺しても良いのか?という疑問
□情報を仕入れる為に手段を厭わず殴ったり蹴ったりする
などなど、数々の疑問点があります。

しかしながら、この際数々の倫理は忘れて、彼らに思う存分活躍して貰いたいというのが本音です。
二転三転するストーリー、テンポの良い展開、極寒のデトロイトで繰り広げられる数々のアクションなど、手に汗握る興奮が味わえます。
特に、雪が舞う雪道でのカーバトル、氷上での陰謀と対決は見所あります。
観ているだけでこちらも寒くなってしまうのですが、熱い奴らにこちらまでホットになってしまうニクイ映画です。ウフ♪

■1つ言うと・・・
組織のボスがそれ程の大物に見えない。
デトロイトという限定された地域でのドンパチなので、あれ位が大物なのかも知れませんが・・・


■■考察■■
4人の兄弟がそれぞれハマり役です。
マーク・ウォルバーグ・・・
一家の長男でリーダー的な役どころです。
童顔な顔つきをカバーする為にか今回はオールバックにて登場、今までとは違うオッサンの雰囲気があります。

末っ子のジャック(=ギャレット・ヘドランド)は、新庄選手をもう少し線を細くし可愛くした感じでさり気に似ています  (*^∇^*)



ふたりの5つの別かれ路 (2004) 公開(2005)
5x2 Cinq fois deux
★★★☆
フランス 1時間30分
監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ステファン・フレイス、ジェラルディン・ペラス

一組のカップルに焦点を当て、その「恋愛」の軌跡を描いたラブ・ストーリーです。
破局から出会いに至るまで、時間を遡って行く物語は、
離婚調停の席から始まる「別れ」→「特別なディナー」→「出産」→「結婚式」→恋に落ちた瞬間の「出会い」と、5つのエピソードからなります。

■観た直後は平凡なラブ・ストーリーの印象しか残らないのですが、後から後から、じわーーっと効いてくる作品です。
オゾン監督の作品の中では「8人の女たち」の華やかさは無く、どちらかと言うと「まぼろし」的な地味な作品に入ります。
映画にエンターテイメント的なものを求める方には物足りなさが残ります。
オゾン監督のファンの方や、謎解きで無く、男女の心のあやを感じたい人向き。
オゾン監督は男の女の心情を描くのが本当に上手いとつくづく思える作品であります。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
最初に「離婚」という章から始まるので結末は分かっているのですが、時間が遡る度に、「何故彼らは別れたのか」という疑問を抱きながら観ることになります。
しかし、第5章の「出会い」を観ても、明快にその答えは提示されません。
5つのエピソードを観ながら、少しずつ少しずつずれていく、男女の心のすれ違いを感じて、自分なりに解釈するのです。

□離婚調停の席から始まる「別れ」
ホテルの一室で抱き合うも、マリオン(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)は今ひとつ気が乗らないのに、ジル(ステファン・フレイス)は無理矢理してしまう。帰り際、ジルが復縁を願うが、マリオンはそれを無視して出て行く。
→男は力ずくで女を征服しようとするが、女の心は既に揺ぎ無いものになっているのだ。
□「特別なディナー」
ジルは、酔った勢いもあり、以前乱交パーティで体の関係を持ったことを自慢する。
マリオンは、傷つき、他の男性の誘惑に気のあるそぶりを見せる。
→男の無神経な言葉、それを受け挑発に乗るそぶりを見せる女。
□「出産」
マリオンが危険な状態になっているのに、なかなか見舞いに来ないジル。
→自分の子供が生まれる不安からか、現実を直視せず逃げ腰の男。
それを悲しむ女。
□「結婚式」
華やかな結婚式。
しかし、新婚初夜のベッドで、ジルは深酒して眠ってしまう。
手持ち無沙汰になったマリオンは、行きずりの男とセックスしてしまう。
→新婚初夜は女性にとって最も大切な思い出になる一夜なのに、何と無神経な男よ。そして何事もなかったようにベッドで寝ているジルに抱きつくしたたかな女よ。
□恋に落ちた瞬間の「出会い」
偶然、宿泊したホテルで鉢合わせになったマリオンとジル。
ジルには5年越しの彼女が居たが倦怠期もあって、若々しいマリオンに惹かれて行く。マリオンも、もしかしたら、以前からジルに好意を寄せていて、彼らの宿泊先に偶然を装って来た(・・・のかも知れない)
→倦怠期に差し掛かった男と、若い女性のミステリアスな出会い。

■ラストは・・・
美しい夕焼けに向かって泳いで行くシーンで終わりです。
オレンジ色の太陽が少しずつ少しずつ山の向こうに隠れて消えて行きます。
劇中で最も美しいシーンですが、夕焼けに向かって行く・・・と言うのが、何となく「終わり」を暗示させているような気がしてなりません。


■■考察■■
マリオン演じるヴァレリア・ブルーニ・テデスキ・・・
離婚調停を終え、ホテルの一室で抱き合う二人。
特にマリオンから、身体も精神的にも疲れきった、けだるさと倦怠感が伝わって来ます。
時間が逆行して行く度に、美しく、ハリのある女性になっていくのが凄い。
同じ女性が演じているのに、まるで長年撮り溜めた作品のように思えます。メイクやヘアスタイルもあるかも知れませんが、ここまで演出出来るのは、やはり演じる人の技量もあるのでしょう。



フリークス <デジタルリマスター版> (1932) 公開(2005)
FREAKS
★★★☆
アメリカ 1時間5分
監督・製作:トッド・ブラウニング
出演:ハリー・アールズ、デイジー・アールズ、オルガ・バクラノヴァ、ヘンリー・ヴィクター、ウォレス・フォード、リーラ・ハイアムズなど

映画界において「史上最高」ほど安売りされる言葉はない。
だが、これだけは掛け値なしに真実だろう。
『フリークス』は史上もっとも呪われた映画である。
(=公式サイトより)

■「この映画は、あなたの心を映す鏡です」
今回上映のキャッチコピー、まさにその言葉通りの映画です。
観た後は、いろいろと考えさせられ複雑な気持ちになります。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
ホラー映画のジャンルに入っていますが、今観ると人間ドラマとして捉える部分の方が大きいです。
フリークスの方がたくさん登場するので、いろんな気持ちが交差してしまいますが、ストーリーは至って単純で、「健常者から蔑まれ馬鹿にされたフリークスたちが復讐に立ち上がる」というものです。

トッド・ブラウニング監督は、一時期サーカスに居て彼らと共に生活しそうで、映画を作った真意は定かではありませんが、彼らに愛情を持っていたことは間違い無さそうです。
彼らときちんと向合っているので、登場人物の気持ちが手に取るように分かり、どちらの気持ちも(=正も負も)人間には存在することが見て取れます。
ストレートでシンプルな映画。
モノクロ映像がソフトな印象を与え、陰影の美しさなどもあり観ていて不快になることはありません。

■悪いのはどちら?
ハンス(ハリー・アールズ)を殺そうと企むクレオパトラ(オルガ・バクラノヴァ)とそれに乗る怪力男ヘラクレス(ヘンリー・ヴィクター)
彼らの悪巧みに気付き、復讐しようとするハンスとフリークスたち。
二人は許しがたい極悪人。
でも、大勢で復讐しようとする彼らは?
どちらが悪で正とは一言で言い切れないものがあります。何ともやり切れない気持ちになり、混沌とした思いだけが残ります。


■■考察■■
公開当時、この作品は世間の非難を浴び、英国では上映禁止になった作品です。
フリークスの方々はその当時では興味本位で観られたかも知れませんが、現在においては、そんな気持ちには全くなりません。



ブラザーズ・グリム (2005) 公開(2005)
THE BROTHERS GRIMM
★★★
アメリカ・チェコ 1時間57分
監督:テリー・ギリアム
出演:マット・デイモン、ヒース・レジャー、モニカ・ベルッチ、ジョナサン・プライス、レナ・へディ、ピーター・ストーメア

テリー・ギリアム監督の7年ぶりの新作です。
グリム兄弟は、魔物退治と称して多額の報酬を得るペテン師だったが、詐欺を働いた罰として本物の魔女と対決する羽目になってしまう・・・
グリム童話誕生のきっかけを、「赤ずきん」「「ヘンゼルとグレーテル」「シンデレラ」「眠れる森の美女」など童話のモチーフをストーリーに絡ませ綴って行きます。
※グリム兄弟に関するキーワードを散りばめた全くのフィクションです。

■テリー・ギリアム監督独特のシュールで奇妙な世界が広がる奇想天外なブラック・ファンタジーです。
シリアス路線では無く、ドタバタコメディです。

どちらかというと、ギリアム監督のファン向き。
一般向けの映画ですが、物語に入り込めるかそうでないか別れそうです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
グリム童話誕生秘話を描いたお話ですが、そこに、数々のグリム童話のエッセンスを散りばめ、特殊効果を駆使した映像、奇妙な拷問器具など小道具へのこだわりで魅せ、アクション・ホラーともファンタジーともとれるドタバタ喜劇に仕立てています。
このギリアム監督の作風が、観ている方は面白いと感じるか、或いは、話の繋がりが悪く散漫になっていると捉えるかー
監督のファンかどうかによって決まりそうです。

フランスの支配下にあるドイツという設定や、ブラック・ユーモアがたっぷり効いた演出など独特の作風・演出などは、ギリアム監督ならではの作風です。

■コミカルな笑い
ウィル(マット・ディモン)、ジェイコブ(ヒース・レジャー)のコミカルなやり取りや、カヴァルディ(ピーター・ストーメア)の嬉々とした演技など、面白いのだけれど少々空回りしている気がしないでもなく・・・これもギリアム監督と思えばこそか。汗

■シュールな場面
□拷問に掛けられる相棒の二人。
手足を縛られ逆さづりにされるが、何と、顔には四角い硝子の箱を被せられ中には何故かたくさんのカタツムリが!
□グリム兄弟のことを疎んじ刑に掛けようとしたいカヴァルディ。
しかし、終盤、森に入ってからは、とてもフレンドリーになり良い人に豹変。その唐突さが妙・・・・・


■■考察■■
マット・ディモンの金髪とコスプレは少々違和感有り  (=^∇^=)

女王を演じるモニカ・ベルッチの相変わらずの美しさと魔性の魅力、そして、最初から最後までドレスに身を包んでいるにもかかわらず、あの身体から発するエロスには凄いものがあります。



マザー・テレサ (2003) 公開(2005)
Madre Teresa
★★★★
イタリア・イギリス 1時間56分
監督:ファブリツィオ・コスタ
脚本:フランチェスコ・スカルダマーリャ
出演:オリビア・ハッセーセバスティアーノ・ソマ、ラウラ・モランテ、ミハエル・メンドル、イングリッド・ルビオ

ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサの半生を描いた伝記映画です。
カルカッタの修道院で勤めていた36歳から、その生涯を閉じる87歳までの生涯を描いています。
尚、本作は元々はイタリアのTVドラマだそうで、3時間の長さを劇場公開用に2時間に編集しています。

■あまりに有名な彼女ですが、意外と詳細は知られていないのでは?
マザー・テレサの偉業には、ただただ頭が下がるばかりです。
元はTVドラマとは思えないほどのクリアな画像、そして、オリビア・ハッセーの熱演。素直に感動出来る作品です。
是非とも多くの方に観てもらいたいです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
マザー・テレサのインドにおける活動は容易なものでは無いと思っていましたが、これほどまでに波乱万丈だとは・・・
修道院やバチカン本部からのあつれき、地元住民の反発、誤解、詐欺。
一つ一つののエピソードだけでも一本の映画が作れそうなくらいの濃い内容です。
上記のような幾つものエピソードが1時間56分の中に詰め込まれているので、映画全体を観ると、やや駆け足な感じは否めません。
そういった点で、もっと涙する箇所はたくさんあるのですが、その間も無いくらいに足早に通り過ぎてしまうので、どっぷり感情移入出来ないのが少々残念。
しかし、膨大な彼女の軌跡をここまで簡潔にまとめ、なにより万人が理解し易いのがとても評価出来るのであります。


■■考察■■
オリビア・ハッセー、熱演です。
30代から80代まで歳を重ねて行く、内面的にも外面的にもまるでマザー・テレサ本人のようです。
特殊メイクでは、鷲鼻様の付け鼻をしたり、シワの数も歳を追うごとに増えて行きます。
長い歳月の間に、少しずつ背が縮んで行き小さくなって行く彼女。
その身体の大きさと反比例するように、彼女の残した功績は大きいものとなって行くのです。

ちょっとした動きや仕草。
自分の良しと思うことを突き進んで行く強い信念、そして、弱者に対する深い愛情。
時にはユーモアで切り返し周囲の人々を安心させ、一瞬にしてその場は暖かい雰囲気に包まれる。
彼女を単なる聖女として描くのでは無く、
ありのままの生身の人間として描いているところに好感が持てます。



マダムと奇人と殺人と (2004) 公開(2005)
MADAME EDOUARD
★★★☆
フランス・ベルギー・ルクセンブルグ 1時間37分
監督・脚本・原作:ナディーヌ・モンフィス
出演:ミシェル・ブラン、ディディエ・ブルドン、ジョジアーヌ・バラスコ

ナディーヌ・モンフィスは、「レオン警視」シリーズを含む30作品以上の小説をフランスで出版している女性作家です。
彼女はベルギー生まれのモンマルトル在住。
本作は、「レオン警視」シリーズの中の「MADAME EDOUARD」(マダム・エドワール)が原作となっており、今回が初監督作品となります。
テクニカル・コーディネートとして「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネが参加しています。

■猟奇的殺人事件をベースにしたサスペンスですが、事件の真相に迫りつつ、ビストロに集まるさまざまな人々の人間模様を描いたコメディタッチのドラマです。
ブラック・ユーモアが散りばめられた作品ですが、その笑いが「アハハハ」では無く「ぷ・ぷぷぷ・・・」な笑いです。
ハリウッド的な大笑いを期待すると期待外れに終わるかも知れません。
あまり一般受けしない、欧州のシュールな笑いがお好きな方向けです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
個性的な人々が繰り広げる奇想天外な物語。
一風変わったサスペンスドラマです。
そこに登場する人物たちがまた奇抜で異色な方々で・・・
呆気に取られつつも、人々に流れる温かいものを感じ
ちょっぴり幸せな気持ちになれるのです。

■シュールな笑いのツボはたくさんありますが・・・抜粋
□ビストロの名前が“突然死”
□爆発で壁に穴が開いたすぐ横のドアで出入り
□墓地の中で家庭菜園
□懸賞グッズにハマる警視の母。どれもこれもいらない奇抜な物ばかり。
トラ模様が好きらしく、トラ模様の鍋がお気に入り。
□エンドクレジットの後、広場でスカートがまくりあがりトラ模様のパンツが見える、その横を平然と通る警視・・・シュールな笑いがあります。


■■考察■■
この映画の突出して良いところは、やはりレオン警視役のミシェル・ブランとおかまのイルマ役のディディエ・ブルドンの存在です。
レオン警視・・・
変な人たちの中で唯一まともです。
おかしな光景を目の当たりにしても平然と何事も無かったように行動し、余程のことがあってもチラリと見て呆れるくらいのクールさ。
普通でない人々を受け入れて普通に接する懐の大きさを感じます。
おかまのイルマ・・・
ディディエ・ブルドン、「本当におかまなのでは?」と思わせるほどの演技。
ちょっとした目配せや手の振り方、お盆にティーを載せて勧める手つきなど女性以上の女性です。細身の完璧な女で無く、太めで何処か男の匂いが残っているのも良いです。
警視の愛犬バブリュットがつぶやくぼやきもイイ♪



真夜中のピアニスト (2005) 公開(2005)
De Battre Mon Coeur S'est Arete
★★★★
フランス 1時間48分
監督・共同脚本:ジャック・オディアール
共同脚本:トニーノ・ブナキスタ

出演:ロマン・デュリス、ニールス・アルストラップオーレ・アッティカエマニュエル・ドゥヴォスリン・ダン・ファン

1978年のアメリカ映画「マッド・フィンガーズ」(ハーヴェイ・カイテル主演)のリメイクです。今回はニューヨークのダウンタウンから現代のパリに舞台を移しています。
フィルム・ノワール。
2005年ベルリン国際映画祭、銀熊賞(音楽賞)受賞。

■ロマン・デュリスの繊細さと激しさを兼ね備えた演技、ストーリーはもちろんのこと、スタイリッシュな映像と音楽がとても上手く噛み合っています。
フィルム・ノワールなので物語は荒々しいものがありますが、実に素晴しく良質な作品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
今自分が生きている世界は暴力に満ち溢れ、自分の心はどんどんすさんで行く。一方、ピアニストだった母のように音楽への道を捨て切れない自分も居る。
魂が浄化されるようなピュアな精神でいられるピアノの世界と、薄汚れて殺伐とした今の現実。
そして、父への愛と父を受け入れられない複雑な気持ち。
相反する二つの世界で揺れ動く自分の心。
もがき、苦悩し、自分の世界を見つけて行く・・・
男の生きて行く上での哀しさと切なさ、そんなものを感じます。

■ミャオリン(リン・ダン・ファン)との関係
中国から来たフランス語を話せないピアノ講師の女性と生粋のフランス人男性。言葉の通じない二人にとって唯一音楽だけが意志の交流が出来る手段なのです。
トムが楽しく弾いている傍らでそっと微笑むながら見つめる彼女。
ピアノが上手く弾けない為に怒鳴り散らす彼を負けじと母国語で言い返す彼女。
そんなやりとりも音楽が全てを昇華してくれる。
ミャオリンの凛とした姿や意志の強さがとても印象的です。

■最後の決断
終盤、トムは父を殺害した(=と思われる)ロシア人を発見し、殴り痛めつける。ピストルを奪い殺害しようとしたが、寸でのところで思い留め、愛する彼女が演奏する会場へと向かう・・・
思わず殺してしまうのかと思うほどに激しい憎悪を募らせたシーンでしたが、寸でのところで止めたのは、やはり彼女の存在もあったのでしょう。

■表面だけで捉えると彼の結末は意に反したものに思われがちですが・・・
彼は結局ピアニストにならず、彼女のマネージャーになった。
自分の夢は遂に叶う事は無かったけれど、「闇」の世界から抜け出し「表」の世界に来れたこと、彼女の傍で居ることで自分の居場所を見つけられたこと。
彼にとってピアノを弾く時が心の安らぎであったように、今の彼の状況は素直に心のままに従って来た結果なのであり、彼にとって一番良い選択だったといのは言うまでもありません。

■疑問
10年もの間ブランクがあった人が、僅かな練習量でプロの音楽家へのオーディションを目指す。
如何に昔やっていたとは言え、そんなに簡単に受かると思うものでせうか!?フフ


■■考察■■
ロマン・デュリス・・・
「ルパン」の時は正直言ってミスキャストだと思いましたが、本作では主人公の性格・行動共に非常にしっくり来てとても良かったです。
「スパニッシュ・アパートメント」で見せたように、彼は、生々しい人間関係の中でぶつかり合い寄り添い合い、試行錯誤する役柄がとてもピッタリと来ます。
今回、不動産ブローカーの時の革ジャン、白シャツ(←ディオールだった)にスーツ姿、「暗」と「明」の二通りの姿で登場します。
どちらもとてもよく似合うのですが、彼の場合、クリーニングした白シャツを着ても1時間で汗ぐっしょりになりそうな気が致します。フフ・・・
それにしても、ピアノを弾いている時の何と恍惚な表情なことよ!
セクスィーですなぁー・・・



乱歩地獄 (2005) 公開(2005)
RANPOJIGOKU
★★★☆
日本 2時間15分

怪奇と幻想の巨匠、江戸川乱歩の世界を4人の監督によって映画化したオムニバス映画です。
4作品共に今回が初の映像化。
浅野忠信は全作品に出演しています。

1 火星の運河
 監督:竹内スグル
 出演:浅野忠信、森山開次、shan

2 鏡地獄
 監督:実相寺昭雄
 出演:浅野忠信、成宮寛貴、小川はるみ、吉行由実、大家由祐子、市川実日子、中村友也、寺島進、原知佐子、堀内正美、寺田農

3 芋虫
 監督:佐藤寿保
 出演:浅野忠信、松田龍平、岡元夕紀子、韓英恵、大森南朋

4 蟲
 監督:カネコアツシ
 出演:浅野忠信、緒川たまき、田口浩正

■4作品全て原作をモチーフにしていますが、ストーリー、舞台設定においてかなりアレンジしてあります。江戸川乱歩の怪奇、幻想、耽美の世界をそのままに、斬新な演出で映像化されています。
とても濃厚で強烈。
作品全体からは狂気、ナルシズム、エロスの香りがぷんぷんし、危険な甘美な世界へと誘ってくれます。
R−15指定ですがR−18でも良い位です。

※血飛沫が舞い、かなりグロい描写もあるので苦手な方はご用心。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
作品全体から受ける印象は、<極限の愛の形>です。
普通の人からは想像出来ない、しかし、当の本人たちは大真面目で、その歪んだ愛に溺れもがき苦しんでいるーまさに<愛の地獄絵図>です。

1 火星の運河 ・・・幻想の愛
本作ではアイスランドで撮影されたという荒野に置き換えています。空がどんよりと沈み、まさに地球では無い何処かのよう。裸の男(浅野忠信)が一人ふらふらと歩いて行くとやがて沼に出る、中を覗くと、そこには自分の体が昔の女の身体となって映っていた・・・
■フラッシュバックのように挿入される昔の女(shan)との暴力とも思える激しい交わり。それは罪の意識がそうさせるのかー
男の潜在意識を具象化したとも思える幻想的な作品です。

2 鏡地獄 ・・・自己愛
原作では自分の友だちが鏡に魅せられ破滅していくお話でした。
本作では、これに殺人事件、女たちとの濡れ場、エロス、明智小五郎のエッセンスを加えています(=鏡の球体に入るエピソードは同じです)
鎌倉の仏像や木々の自然など古都の趣きと数々の鏡が織り成す映像がとても美しい。
■成宮寛貴がとにかく美しく妖艶な魅力を放っています。
鏡に魅せられ、また、自分にも魅せられた哀れな男の末路です。
女との濡れ場では、鏡の間のような床でSMを披露、熱演です。

3 芋虫 ・・・人形愛
登場人物は須永中尉とその妻、須永中尉は復員して来てまるで芋虫の如く(両手両足を損失し胴体だけの姿に、口、耳も不自由である点)は同じです。
本作ではこれに、明智小五郎と怪人二重面相を登場させ、須永中尉の両手両足を失った原因を戦争では無く妻の仕業にし、また、妻もその身体に魅せられ夫と同じ姿になる、という設定になっています。
■原作の舞台設定は昭和初期ですが、意図的にか現代を感じさせる雰囲気となっています。
主人公の妻は夫を性の玩具、云わば“生ける人形”として我が物のように愛します。時にはサディスティックに、愛しくげに。
常人では理解を超えたものですが、ある愛情関係の一種でしょう。
それに加え、妻もまた夫と同じようになり感触だけの世界に浸るという展開もまた凄まじい。

4 蟲 ・・・死体愛
原作では柾木は再会した彼女を鼻であしらわれています。
本作では柾木は女優である彼女の運転手、彼女は運転手である柾木の顔すら覚えていないという設定です。
■死体のおかれている背景はかなりビジュアル化されており(=実は医院に飾ってある絵)とても美しい。
しかし、それは彼の妄想の世界であるので(=実は和室の六畳間)その美しさはどこかまがい物のようで不自然さが有ります。
トロピカル風の背景と彼女の身体がどんどんと腐って行く、その対比が不気味です。
こちらも常人の理解を遥かに超えた“死体愛”です。
愛する人を殺害し物言わぬ人形のようにし、彼女をわが物にする。
先に述べた人形愛の一歩進んだ形かも知れません。
永遠に我が物となった肉体がどんどん腐敗して消滅しようとして行く、その対比が憐れで哀しい。

全作品に渡って浅野忠信が出演しています。
見方によっては、彼の登場によってこの全ての物語が1つになっているとも捉えられます。
まず、オープニングの「火星の運河」で怪奇と幻想の世界へ誘い
「鏡地獄」と「芋虫」では名探偵明智小五郎が登場し物語を盛り上げ
ラストの「蟲」で爆発します。


■■考察■■
全編で登場する浅野忠信。
どの作品でも違った表情を魅せファンには嬉しいところ。
「火星の運河」「蟲」では異なる裸体を披露、前者はシリアスで後者はコミカル、大胆にしてあっぱれです。

成宮寛貴、女を惑わす色男を好演。
普通に佇んでいても凄いオーラをビシビシと放っています。



理想の女 <ひと> (2004) 公開(2005)
A Good Woman
★★★★
イギリス・スペイン・イタリア・アメリカ・ルクセンブルグ 1時間33分
監督:マイク・バーカー
原作戯曲:オスカー・ワイルド「ウィンダミア卿夫人の扇」
出演:スカーレット・ヨハンソン、ヘレン・ハント、トム・ウィルキンソン、スティーヴン・キャンベル・ムーアマーク・アンバース

英国の文豪オスカー・ワイルドの傑作戯曲「ウィンダミア卿夫人の扇」の映画化です。
本作品は、舞台を19世紀ロンドンの社交界から1930年代の南イタリアの高級リゾートに移し替えています。

■エレガントで、ユーモアとウィットに富み、皮肉もさり気に散りばめられている・・・
女性二人を軸に繰り広げれるドラマは、運命的でとてもスリリング。
それぞれの想いが交差した、心を打つ作品です。
どちららと言うと男性より女性の方に共感を覚えるかも。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
イタリアの高級リゾート地を舞台に繰り広げられる人間模様は、人間の持つ欲望や妬み、善と悪、駆け引きなどを、社交界という異質な場所を通して描かれています。

アーリン夫人の出現でリゾート地の社交場は、さわさわと波が立つが如く波紋が広がって行きます。
メグとアーリア夫人は、“扇”によって窮地に追い込まれますが、また、それによって救われます。
胸が熱くなる二人の交差した想い。
それぞれの想いを胸に秘め旅立つラストは、とても爽やかで清々しい。

■アーリン夫人
波乱万丈の人生を駆け抜けるようにして生きて来た彼女。
自信ありげな態度の中にもふと見せる心の機微。
自分の子供を目の前にしながら言い出せない、この苦しみは、堪らなく切なく胸を締め付けられる痛みを伴います。
母と娘、親子の名乗りを出来ないとしても、母の娘への想いと娘から母への想い、その絆は確かに繋がって居る・・・そう思えるのです。


■■考察■■
メグ・ウィンダミア演じるスカーレット・ヨハンソン。
プライベートでは生意気などの性格の悪さを指摘されている彼女ですが、
この映画では、21歳の若妻らしく、純粋で初々しさと恥じらいさが見られとても可愛らしいです。
プライベートの彼女を忘れさせる演技、さすがです。

対するアーリン夫人演じるヘレン・ハント。
↑のネタバレに書いてありマス♪

メグの夫ロバート(マーク・アンバース)、メグを誘惑するダーリントン卿(スティーヴン・キャンベル・ムーア)
どちらもスラッと背が高く二枚目ですが、存在感は薄いです。
しかしながら、この映画は、対照的な女優二人が見所なので、男たちはあまり目立たない方が返って良かったかもです。エヘ♪



ルパン (2003) 公開(2005)
Arsene Rupin
★★★
フランス・イタリア・スペイン・イギリス 2時間12分
監督:ジャン=ポール・サロメ
原作:モーリス・ルブラン
出演:ロマン・デュリス、クリスティン・スコット・トーマスパスカル・グレゴリー、エヴァ・グリーン

ルパン生誕100周年を記念した製作された本作は、モーリス・ルブランの小説を新解釈しアレンジしたものです。
「カリオストロ伯爵夫人」をベースに、「813」や「奇巌城」などの名場面を随処にはさみ、怪盗ルパンの波乱万丈の生涯を描いています。
怪盗ルパンが華麗に大胆に活躍するアドベンチャー・アクション映画。

■美術セットや工芸品などは丁寧な作業で凝っているのですが、
全編を通して駆け足状態の展開で進むので、登場人物に感情移入出来ぬまま終わってしまいます。
平坦で盛り上がりに欠け、つらーっとなぞった感じがします。
中途半端な印象が残り、美術セットが凝っているだけにちと残念であります。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
ルパンの生い立ちを紹介しつつ、「カリオストロ伯爵夫人」や「奇巌城」などの幾つかのエピソードを絡めてある為、盛りだくさんで少々詰め込み過ぎの感が有ります。

2004年のセザール賞衣装デザイン部門でノミネートされただけあって、
絢爛豪華な大邸宅、優雅な社交界、貴婦人たちのドレスなどは、一見の価値有りです。
特に、カルティエから提供されたジュエリーの数々、王妃マリー・アントワネットゆかりの品「王妃の首飾り」(=レプリカ)はまばゆいほどの輝きを放ち息をのむ美しさ。

■父の存在
どうにも腑に落ちないのが、アルセーヌ・ルパンの父親。
ルパンを見守るのかと思いきや、最後にひどい仕打ちをしたり。
出だしが父と子のスキンシップのシーンだけに、あやふやな二人の関係はとても不可解に映ります。

■今ひとつなのは
やはりルパン自体に魅力が無いせいなのかも。
ストーリーや脚本に難があってもキャラに魅力があれば、ぐいぐいと引き込まれて行くもの。
アルセーヌ・ルパンを演じるのには、もう少し俳優としての実績のある方の方が良かったかもです。


■■考察■■
ロマン・デュリス・・・
どう見てもアルセーヌ・ルパンというより「ルパン三世」のイメージがあります。
うねった癖のある髪、モジャモジャの胸毛、濃いあごひげ(=を剃って青くなっているところ)などの外見。おちゃらけて女に弱いキャラもそれはそれで良いのですが、ややスマートさに欠ています。
泥臭さを感じさせる立ち振る舞いは紳士とは程遠く、やはりアニメの「ルパン三世」を思い出してしまいます  (=^∇^=)

クリスティン・スコット・トーマス・・・
ルパンを虜にするほどの妖艶さと魅力が無い。
己の欲望ばかりが先に出てワナを張り巡らす策略士、といった印象が強く、ルパンへの愛はあまり感じられないところが残念です。

クラリス役のエヴァ・グリーンは、清楚で芯の強い女性がピッタリでござりました♪



ロード・オブ・ウォー (2005) 公開(2005)
Lord of War
★★★★
アメリカ 2時間2分
監督:アンドリュー・ニコル
出演:ニコラス・ケイジ、イーサン・ホーク、ブリジット・モイナハンなど

監督・脚本のアンドリュー・ニコルは、ここ数年を通じて実際に起こっている出来事にインスパイアされ銃砲密輸取引のディーラーのキャラクターをクリエイト。"ロード・オブ・ウォー(戦神)"という異名をとるようになった武器ディーラー、ユーリー・オルロフを生み出すに至るまでには、5人の異なる実在の武器ディーラーをもとにすることから始まった。ユーリーのキャラクターは架空だが、この映画で描かれる出来事自体は架空ではない。
(=公式サイトより)

■R−15指定です。
戦争、武器、権力、武器商人と官僚との癒着など、その構造をエンタテイメント性に富んだ内容と分かり易い説明で知ることが出来、まさに映画ならではです。
万人受けはしない作品ですが、是非多くの人に観て貰いたい作品です。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
サクサクとテンポの良い展開、コミカルな部分もあるのでところどころクス・・・と笑えたりもします。が、観終わった後は背中にゾーーッと冷たいものが走り、いろいろと考えさせられます。

■オープニング
数分間の間に、一個の銃弾の辿る歴史を見せてくれます。
この映画の全てを物語っている見事な映像です。


■■考察■■
キャスティングもまた成功した一因です。
ニコラス・ケイジ・・・
主人公ユーリー・オルロフをエキセントリックに大袈裟に演じると、嘘臭く感じ興ざめするところですが、何時もの大仰な演技は影を潜め、飄々とした部分を全面に出したのが効いてます。

イーサン・ホークも追い詰める捜査官役がハマッテいます。
彼は神経質にキリキリした役が似合うのかも。笑



蝋人形の館 (2005) 公開(2005)
House of wax
★★★☆
アメリカ 1時間53分
監督:ジャウム・コレット=セラ
製作:ジョエル・シルヴァーロバート・ゼメキス 他
原案:チャールズ・ベルデン
出演:エリシャ・カスバート、チャド・マイケル・マーレイ、ブライアン・ヴァン・ホルト、パリス・ヒルトン

「肉の蝋人形」(1933、1953)の再リメイクです。
リメイク作品ですが、ほぼオリジナルに近いものがあります。

フットボールの試合を観戦する為ドライブをする若者男女6人。
途中、森でキャンプをするが必要に迫られ、地図にさえ載っていない小さな町に立ち寄ることになるのだが・・・
スプラッター・ホラー映画。

■ストーリー・演出は至ってオーソドックスな作りです。
スプラッター・グロさ度はそれほど強烈ではありませんが、何箇所かは後を引位におそましいシーンがあります。
オリジナル+1978年製作の「デビルズ・ゾーン」といった趣き。

ダーク・キャッスル・エンタテイメント作品は全てビジュアル的なセンスの良さが伺えますが、本作もまた然り。
東アフリカの小さな都市アスマラを参考にした街並み、蝋人形館、数々の蝋人形など、スタッフの力量が感じられます(※建築史的発見とされるアスマラは、1930年代のモダニズム運動の時期にイタリア人設計家たちによって建築革命のための主要な建築現場として使われ、“アフリカのマイアミ”というニックネームまで付いた。=公式サイトより)
街並みは何処との町とも断定出来ない不思議な雰囲気が有ります。
CG合成によるダイナミックで壮絶なクライマックスは、是非とも劇場の大スクリーンで見て欲しいところです。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!<特に要注意>
何かと話題のパリス・ヒルトンを起用していますが、作品自体はホラーの定石に沿った堅実な作りです。

■それぞれの兄弟
カーリー(エリシャ・カスバート)と(ニックチャド・マイケル・マーレイ)の双子、蝋人形館の双子。
どちらも<愛したいけれど反発してしまう>兄の屈折した思いがあります。
二組が迎える結末は、ハッピー、アンハッピーと分かれますが、特にラストで異形の弟が兄の死体に覆いかぶさって死ぬシーンが何とも哀れです。
壁を切る時に一緒にシャム双生児の蝋人形を真っ二つに切ってしまうシーンは彼らの分離手術を、ラストで兄の背中に覆いかぶさって死ぬシーンは、生まれて来た時の状態を想像させます。
ちょっとしたところにこだわりがあったり、さり気に伏線が張ってあったり上手い演出です。

■やや不満な点
シャム双生児たちがその後おかしくなったのは、母の接し方に問題があったことが分かります。が、父の存在が希薄なのと、家族に突き抜けた狂気が感じられないのがやや不満。

■何となく・・・
異形の弟の方は、マスクを取った時の顔がマイケル・ジャクソンに見えましたです・・・・・・


■■考察■■
この映画が本格デビューとなるパリス・ヒルトン。
派手さや乳のでかさで目立ってはいますが、主役のエリシャ・カスバートを引き立てる役に丁度良いキャラとなっています。
意外な掘出しモノが、チャド・マイケル・マーレイ。
ほのかにコリン・ファレルのような悪っぽさが感じられてキュートです♪



ロッテ・ライニガーの世界 (----) 公開(2005)
Lotte Reiniger
★★★★
あまりの美しさに故・淀川長治氏も絶賛し、語り続けたドイツの女性影絵アニメーション作家ロッテ・ライニガー(1899〜1981)の美しくも幻想的な作品の数々。彼女の処女作にして最高傑作「アクメッド王子の冒険」(1926)は、世界初の長編アニメーションというだけでなく、その芸術的および娯楽的な質の高さで、数十年に渡って世界中の多くのアニメーション映像作家に影響を与え、今もまったくその輝きを失っていない映画史に極めて重要な作品です。

■パパゲーノ PAPAGENO
(1935年ドイツ・11分・モノクロ・スタンダード)
モーツァルト作の歌劇『魔笛』をモチーフに、同作に登場する陽気な鳥刺し、パパゲーノを主人公にして描いた音楽劇のパロディ。

■カルメン CARMEN
(1933年ドイツ・9分・モノクロ・スタンダード)
フランスの作家、メリメの同名小説を題材にビゼーが書き上げた歌劇『カルメン』をモチーフとした音楽劇。

■アクメッド王子の冒険 The Adventures of Prince Achmed
(1926年度作品・ドイツ映画(1999年映像修復版完成、2004年サウンド版完成)制作:コメニウス・フィルム・長編影絵アニメーション映画・モノクロ(染色)・65分)
ロッテ・ライニガーが3年間の歳月を費やして完成させた「アクメッド王子の冒険」は1926年9月23日にドイツで初公開されました。それは、映画の歴史における最初期の長編アニメーションが誕生した記念すべき瞬間でした。
内容は「アラビアン・ナイト」をベースにした冒険活劇で、その映像の美しさと幻想的な展開は、世界中の数多くのアニメーション作家たちに大きな影響を与え、今もまったく色あせることなく多くのファンを魅了し続けています。

(=全て公式サイトより)

■今の影絵の原点ともなった作品です。
映像のみ、音声はバックミュージックのみ、字幕はその時々に状況説明するのみ。
(※当初はサイレント作品であるが故に生伴奏付きで上映されていました。1999年に映像の修復、オリジナルの楽譜をもとにオーケストラによる録音がなされ一般の映画館で上映可能になりました)
シンプルなその動きと簡潔なストーリーは、懐かしさと手作りの温かさを感じます。CG等特殊効果による映像が全盛の今、こういった作品を観ると心が落ち付きます。

■■ネタバレです■■ 核心に触れてます。ご注意!
■パパゲーノ PAPAGENO
男女の体つきが(パパゲーノ、パパゲーナ)が今風では無く、むっちりしているのが素朴さを感じます。
鳥刺しをしている男がオウムに助けられたり、二人の間に次々と子供が出来るシーンが可笑しく微笑ましい。

■カルメン CARMEN
自由奔放に生き、男を惑わすカルメン。
ロッテ・ライニガーの世界でも、ドン・ホセはカルメンによってキリキリ舞いにさせられるのです。

■アクメッド王子の冒険 The Adventures of Prince Achmed
イスラム王と王子、王女、魔法使いとの対決かと思いきや、終盤に“アラジンのランプ”が登場する奇想天外さ。
王子がひたすら活躍して魔法使いや魔物たちをバッサバッサと倒して行くのでは無く、殆どが善い魔女フォンフランベルグによる手助けによるもの。超人的なヒーローの活躍では無く魔女によるところが、童話の世界に居ることを思い出させてくれます。

■■考察■■
バックの色使いなどは殆ど単色です。
オープニングなども当時のままで、全てにおいて昔ながらの素朴さを味わえます。