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Gallery #004

The Great Bandleader of the 18th Century

「交響曲の父」と讃えられる18世紀の大作曲家ハイドンは
偉大なバンドリーダーでもあった   (Jan/23rd/2004)

Adam Fischer
クラシック音楽ファンでハイドン(1732−1809)を知らない人
はいないはず。また、「ハイドンの音楽が嫌い」と明確に言
い切れる人も、おそらくそんなにはいないだろう。ただ「一
番好きな作曲家は?」の問いかけに「ハイドンです!」と元
気よく答えられる人ははたしてどれだけいるだろうか。こと
音楽書の世界に限ってみても、ハイドンをメインに扱った本
はの数はとても少ない。(たいてい1〜2冊は見つかるから
エリントンよりは遙かにいいかもしれないが。)

かくいう私も、耳あたりは悪くなくても今一歩インパクトに
欠ける(とずっと思っていた)ハイドンは素通りしてきた。
おそらく、Adam Fischerが指揮した交響曲集(No.9,12,13,40
の4曲を収録)のCDに出逢うことがなかったら、ハイドン
は「特別な人」にはならなかったような気がする。

我が家では「緑のハイドン」の愛称で親しまれている件のC
Dで聴かれる音楽はとても新鮮であった。ハイドンとしては
比較的初期の作品ということもあるが、交響曲でありながら
室内楽やコンチェルト、そして、時には独奏曲にもなる自由
奔放なスタイルがとにかく楽しい。ハイドンはいろいろな可
能性を探りながら交響曲の様式を確立していった人。その音
楽にはモーツァルトやベートーベンとは違った「創造の面白
さ」がある。1930年代のエリントンに共通するものを感じる。

ハイドンは100曲以上の交響曲を始めとして幅広いジャンルに
亘って多くの作品を残した偉大な作曲家である。と同時に宮
廷音楽家として、オーケストラの指揮、楽器の演奏、楽員の
訓練、演奏会の構成からステージ衣装の選択に至るまでの一
切合切を統括する立場にあった。現代に置き換えれば「多忙
を極めるバンドリーダー」と言ったところだろうか。

最初に取り上げたAdam Fischerは20年がかりで交響曲全曲録
音の偉業を成し遂げた。33枚組のボックスながら1万円以下
という価格の魅力もありかなりの人気を博している。その他
に私が愛聴しているのはRoy Goodmanによる初期の作品(No.1
〜No.25)とTrevor Pinnockによる中期(疾風怒濤期、No.45の
「告別」がとくに有名)の作品。いずれも楽団員の楽しそう
な表情が目に浮かぶような生き生きとした演奏が聴かれる。

ハイドンの交響曲で一般的によく聴かれているのは晩年の90
番以降のもので、それらは大ホールでの演奏会のために作曲
されている。対照的に初期から中期に作曲されたものは、ど
ちらかと言えば日常性に根ざしている。後者の演奏にあたっ
て指揮者に求められるのは、いかに楽団員の心をスウィング
させるかということ、に尽きると思う。ここで紹介した3人
の指揮者らによる溌剌とした録音からそんなことを感じる。

「緑のハイドン」から始まった旅はピアノトリオ、ピアノソ
ナタ、コンチェルト、そして弦楽四重奏曲へと続いている。
日常的に付き合えるハイドンの音楽の魅力は尽きない。

Adam Fischer conducts
Austro Hugarian Haydn Orch.

Roy Goodman

Roy Goodman conducts
The Hanover Band

Trever Pinnock

Trever Pinnock conducts
The English Concert

*Adam Fischerによる交響曲全集
(Nimbus原盤) はBrilliant Classics
社によりBoxセット化されている。

Edited by Kazunori KONO, Jan/23rd/2004   Back