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Gallery #006

Flamenco Meets Jazz / Chano Dominguez Vol.1

ジャズの血管にフラメンコの血を注ぎ込むことに成功した
チャノ・ドミンゲスによる情熱の世界 (July/15th/2004)

Chano
遠く離れた日本に住んでいるとなかなか実感することができ
ないが、スペインは実は4つの公用語を持つ多民族国家であ
る。世界的に有名なフラメンコにしても、スペインを代表す
る音楽のひとつに過ぎない。

しかしながら、これまでにマイルスを始めとする多くのジャ
ズミュージシャンの創造心を掻き立ててきた点では、フラメ
ンコは間違いなくスペイン音楽の代表選手と言っていいので
はないだろうか。また、パコ・デ・ルシアの例を挙げるまで
もなく、フラメンコサイドからのジャズへのアプローチによ
り、素晴らしい音楽が生み出されてきている。

フラメンコに限らず、1990年代くらいまでのジャズと民族音
楽は概ね上に書いたような関係にあったものと思われる。し
かしながら、第三の流れとでも呼べばいいのか、世界のジャ
ズを取り巻く様相は徐々に変わってきている。民族音楽のエ
ッセンスをジャズのイディオムで消化するというスタイルが
世界中で同時多発的に起こっているように私には感じられる。
ジャズの血管にフラメンコの熱い血を注ぎ込むことに成功し
たChano Dominguezは、そのような流れにおけるスペインを
代表する存在と言ってもいいのではないだろうか。

Chanoは1960年にフラメンコの本場、アンダルシア地方のカ
ディスに生まれたピアニスト。音楽好きの父親の影響もあり、
幼少からフラメンコに親しむ傍ら、ジャズを独学で学んだ人
である。この人の感動的な音楽との出逢いも、例によって偶
然の悪戯としか思えないものであった。バーゲンワゴン(別
名、宝の山ともいう)で "Hecho a mano"("Handmade" )を
発見しなかったら、Chanoの音楽どころか、スペインの熱い
ジャズに関心を持つこともなかったかもしれない。

"Hecho a mano" はTomatitoといった著名なギタリストの参
加はあるものの、中心はあくまでChanoの熱いピアノプレイ。
手拍子やカホン、そして時にタップにより刻まれるリズムが
聴き手を情熱的なフラメンコカフェへと導いてくれる。程な
くしてChanoの最初のリーダー作品である "Chano" も手に入
れることができた。コルトレーンの Naima やモンクの Well
You Needn't" にフラメンコタッチの新たな名演が加わった。 

1997年にリリースされた "En Directo" は2枚組のライブに
よるソロアルバム。"Lush Life" や "Caravan" を含むChano
のピアノプレイを堪能できる。自身のアルバムをリリースす
る傍ら、世界中の様々なミュージシャンと共演するなど精力
的に活動を続けるChanoは、もはや、スペイン音楽シーンの
代表選手のような存在となっている。(以下、Vol.2に続く)

Chano
(1993)

Hecho a mano

Hecho a mano
(1996)

En Directo

En directo
(1997)

(1) NUBA 7756
(2) NUBA 7759
(3) NUBA 7760/1

Edited by Kazunori KONO, July/15th/2004   Back