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Gallery #007

An Entertainment Supreme / The Real Art of Tatum

ジャズ史上最高のヴィルトォーゾピアニスト、アート・テイタム
による究極の3分間芸術の世界    (August/25th/2004)

Classic Early Solos
ジャズ史上最高のピアニストと讃えられるアート・テイタム。
ただ、その評価がテクニックの素晴らしさに偏ってしまって
いる感があることも否めない。ホロヴィッツ他のクラシック
界の高名なピアニスト達を魅了したのは、(おそらく)指捌
きの見事さだけではなかったはず。

アメリカンポピュラーの人気作品を、原曲の持ち味を大切に
しながら、最高のテクニックを駆使して見事な3分間のドラ
マに仕立て上げてしまうのはテイタムの独壇場とするところ。
ルイ・アームストロングとは違った意味で、ジャズ史上最高
のエンターテイナーのひとりと言ってもいいのではないだろ
うか。

30年代のエリントンの素晴らしさを知り、同時代にデビュ
ーを果たしたテイタムの演奏もじっくり聴いてみたいと思っ
た。最初に手にしたのが "Classic Early Solos"。テイタム
が20代半ばにDeccaに残した録音のベスト盤である。まず
は、テクニックの素晴らしさに魅了された。若さでぐいぐい
押し切ってしまうところが実に爽快。テイタムの名を世界に
知らしめた "Tiger Rug" こそ入っていないが、丹念に復刻
された音の良さも特筆に値する。

50年代の代表的な録音は、やはり "Solo Materpieces" と
いうことになるだろう。ラインナップを眺めると、見事なア
メリカンポピュラーヒット集になっていることに改めて驚か
される。だが、プライベート録音で残された "20th Century
Piano Genius"(2枚組)のリラックスした雰囲気の中での
演奏も捨てがたいと思う。

もちろん、テイタムの録音をすべて聴いたわけではないが、
私が聴いた範囲ではテイタムの演奏が(心技体ともに)もっ
とも充実していたのは1940年代の後半のように思われる。
目下の愛聴盤が "Complete Capitol Recordings" の2枚組。
指捌きの巧みさもさることながら、テイタムのアイデアと構
成力の素晴らしさが堪能できる。"Solo Masterpieces" がこ
の頃に録音されていればと思う。

テイタムは「作曲家」でこそなかったが、他の人の作品の本
質を一瞬にして見抜き、オリジナリティ溢れる作品に仕上げ
てしまう点では作曲家以上の存在と言えるかも知れない。磨
き抜かれたテクニックは自己を表現する上で最高の武器にな
ったと考えるのが自然のような気がする。もし、テイタムが
今も生きていたら、ビートルズナンバーなどの現代のポピュ
ラーヒット作品をどのように解釈し、表現しただろうか。

Classic Early Solos
(1934-1937)

20th Century Piano Genius

20th Century Piano Genius
(1950,1955)

Complete Capitol Recordings

Complete Capitol Rec.
(1949,1952)

(1) Decca GRD-607
(2) Verve 314 531 763-1
(3) Definitive DRCD11192

Edited by Kazunori KONO, August/25th/2004   Back