World Jazz Gallery Presents

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Gallery #009

The Great Jazz Piano of Phineas Newborn, Jr.

ジャズ喫茶で知った衝撃の「ハーレムブルース」。だが、その真価を
知るには少し時間が必要だった。  (February/24th/2005)

Harlem Blues
時は80年代前半。学生の街の京都はジャズ喫茶のメッカでもあ
った。コーヒー1杯で数時間余り、様々なスタイルのジャズに出
逢うことが出来るスポットが街の至る所にあった。そんな頃、フ
ィニアス・ニューボーン・ジュニア(以下、フィニアス)の「ハ
ーレム・ブルース」に出逢った。京都駅近くの「震源地」という
名前(だったと記憶)のお店での青春時代の忘れ得ぬ想い出。

A面2曲目に収められた「スウィート・アンド・ラブリー」にと
にかく圧倒された。(こんな世界があったのかという思いで)ぶ
ちのめされてしまったと言った方が正しい。フィニアスが5年の
空白期間の後、レスター・ケーニッヒ(プロデューサー)の励ま
しのもと、エルヴィン・ジョーンズとレイ・ブラウンの好サポー
トを得て録音することが出来た1969年の作品。

2度目の衝撃は「ワールド・オブ・ピアノ」に収められた「ラッ
シュ・ライフ」。今度はセント・ギガのジャズ番組「オール・ザ
ッツ・ジャズ」だった。聞き覚えのあるイントロ(ラベルの「ソ
ナチネ」の引用)の後、ビリー・ストレイホーンのお馴染みのフ
レーズが自然体でつながった。フィニアスの「再発見」である。

でも、フィニアスの「真価」が分かったのは、それから約10年
近くを経て、アート・テイタムの魅力を知った後のことだった。
「スウィート・アンド・ラブリー」や「ラッシュ・ライフ」を見
事な構成力でドラマチックに演じ切ってしまう超絶技巧の持ち主
は、実は比類なきアイデアを伝えるために自己の技術に磨きをか
けていた人だったのだ。生きた時代や演奏スタイルは違っていて
も、2人の巨匠には相通じるものがあるように思う。

フィニアスのピアノ・トリオの世界は、あくまでもピアニストが
主役である。ビル・エバンス・トリオが残した「スウィート・ア
ンド・ラブリー」(1961年に録音された「エクスプロレーション
ズ」のフィナーレを飾るこれも圧倒的な名演)で聴かれる「白熱
のインタープレイ」の世界とは対極をなしているとも言える。で
も、最高のテクニックで自分の言いたいことを言い切ってしまう
フィニアスの演奏を聴くことも、音楽を聴く大きな愉しみのひと
つに違いない。"The Great Jazz Piano" に収められた名演を聴
く度にそんなことを思っている。

Phineas Newborn, Jr.
"Harlem Blues"

A World of Piano

Phineas Newborn, Jr.
"A World of Piano"

The Great Jazz Piano

Phineas Newborn, Jr.
"The Great Jazz Piano"

(1) OJCCD-662-2 (1969)
(2) OJCCD-175-2 (1961)
(3) OJCCD-388-2 (1962)

Edited by Kazunori KONO, February/24th/2005   Back