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Gallery #011

In Her Own Sweat Way with Alto Flute

アリ・リャーソンのアルト・フルートによるくつろぎと
創造性が共存した音空間への誘い   (June/27th/2005)

Brasil: Quiet Devotion
ジャズにおいて「癒し系」の管楽器は? アリ・リャーソンの奏
でるアルト・フルートに耳を傾けながら、ふとそんなことを思っ
た。もともとこの楽器を専門に吹いている人が少ないこともあっ
て、なかなか耳にする機会の少ない楽器だが、落ち着いた深みの
ある音色によって(煌びやかさはなくても)控えめに語られるジ
ャズもなかなか魅力十分だと思う。

アリ・リャーソンはアメリカの女性フルート奏者。欧州を拠点に
地道にキャリアを積み重ねてきた人であり、現在のジャズシーン
におけるトップフルーティストの一人と位置づけられている。リ
ーダー作品も少なくないが、彼女の魅力を多くのジャズファンに
知らしめたのは、赤を基調としたイラストによるジャケットが印
象的な "Brasil: Quiet Devotion" ではなかっただろうか。

実は、私がアリ・リャーソンその人を知ったのもこのCDだった。
ブラジル出身のキーボードの魔術師、ウェベル・イアーゴ(新生
タンバ・トリオの一員としエルシオ・ミリートとともに来日した
ことでも知られる。)の素晴らしいアレンジに乗って、アリ・リ
ャーソンが熱演を聴かせてくれる名品。もちろん、アルト・フル
ートが主役という訳ではなく、どちらかといえばフルートと吹き
分けている感じではあったが。コンコードから一足先にリリース
された2枚のカルテット作品 "Portraits In Silver" と"In Her
Own Sweet Way" も同じような印象だった。

そんなイメージを吹き飛ばしてくれたのは、名手ジョー・ベック
とのデュオ(+パーカッション)により録音された「アルト」だ
った。アリ・リャーソンはすべての曲でアルト・フルートを演奏
し、ジョー・ベックが使っているギターもアルト・ギターという
徹底ぶりである。ジャズスタンダードやビートルズナンバーなど
お馴染みの曲を題材としながらも、リラックスした雰囲気の中に
創造的なソロが愉しめる洒脱な作品に仕上がっている。

続いて出された「ジャンゴ」(2001年)でもこの二人の息はぴった
り。何とか生で聴いてみたい。アリ・リャーソンの息づかいが聞
こえるくらいにアコースティックが優れたスペースでこの珠玉の
デュオを聞けたら最高の夜になることは間違いないのだが...。

Ali Ryerson
"Brasil: Quiet Devotion"

Portraits In Silver

Ali Ryerson
"Portraits In Silver"

Alto

Joe Beck & Ali Ryerson
"Alto"

(1) Concord Picante CCD 4762-2 (1997)
(2) Concord Jazz CCD 4638 (1995)
(3) Degital Music DMP CD-521 (1997)

Edited by Kazunori KONO, June/27th/2005   Back