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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2004

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Weekly Report

○観戦記録 流通経済大学 vs 日本大学(2004年10月10日)

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2004/10/10) 於:水戸ツインフィールド

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 流通経済大学:前半: 2  0  0  0 10 |
       :後半: 2  1  1  0 15 |  25 15
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 日本大学  :前半: 0  0  2  0  6 |
       :後半: 3  3  0  0 21 |  27 11


◎出場メンバー

 流経 : 1.金城 2.湯原 3.中井 4.鈴木学 5.グレイ 6.伊勢田 7.備瀬 8.鈴木敬
      9.森洋 10.アンダーソン 11.関 12.浅利 13.大石 14.登喜 15.森大
     (16.松波 17.西川 18.絹田 19.相 20.飯笹 21.勝俣 22.松本)

    ○交替  8→20(後32分交代)


 日大 : 1.北島 2.手塚 3.高橋 4.篠田 5.古賀 6.津田 7.トーエツ 8.大山
      9.向山 10.松下 11.藤原慶 12.金川 13.タフィア 14.藤原丈 15.梅澤
     (16.森下 17.飯田 18.ラタ 19.野村 20.倉澤 21.武居 22.中村)

    ○交替   6→19(後18分交代)


 レフリー :工藤隆太 (日本協会公認)


◎得点経過

 流通経済大学  0       5                           10            10
                       T                           T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                          x   P    P
 日本大学    0                    3    6                        6


 流通経済大学 10         15    22 25                             25
                   T     G  P                        x
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                              GG  G
 日本大学    6                                  13 20 27       27

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 流経:前半 6分 グレイ(T)
      34分 鈴木敬(T)
    後半 8分 伊勢田(T)
      14分 登喜 (T)、森大(G)
      17分 森大 (PG) 

 日大:前半19分 松下(PG)
      24分 松下(PG)
    後半35分 トーエツ(T)、松下(G)
      36分 トーエツ(T)、松下(G)
      39分 金川(T)、松下(G)

◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

私がリーグ戦グループを中心にラグビーを観るようになったのは、97年度の
シーズンにこの2つのチーム(流通経済大と日本大)に出逢い、それぞれのラ
グビースタイル惹かれたことがきっかけとなっている。

これら2つのチームは異なったアプローチでチーム作りがなされているという
点で、リーグ戦グループの双璧をなしているのではないかと思われる。流通経
済大(以下、流経大)は、緻密な組織運営をベースとして選手個々の能力を発
揮させるスタイルであるのに対し、日本大(以下、日大)は高められた選手個
の能力をひとつにまとめ上げて戦うスタイル。前者は没個性に陥ってしまう可
能性があること、後者はチームをバラバラにしかねないこと、のそれぞれの危
険性を併せ持っている。事実、両チームともここ数年来、チーム作りに苦労し
ている様子が見受けられる。

そのような個人的な思い入れは別にしても、この2チームの戦いはいつも激し
い戦い(肉弾戦)になることもあり、私的リーグ戦好取組のひとつとなってい
る。果たして今年はどんな戦いが繰り広げられるのだろうか?

流通経済大はLOにおそらく日本学生No.1のハイタワーである2mの鈴木学が
復帰。ラインアウトに不安を持つ日大(LOは180cm台)にとっては懸念
材料が確実に一つ増えた。SOはアンダーソンで、LOで先発のグレイ以外の
留学生の名はリザーブにも見当たらない。CTB大野の負傷欠場は痛い。日大
は右PRが入れ替わった(先発は高橋で飯田がリザーブ)以外は緒戦とまった
く同じ。この日もトーエツ主将以下リザーブも含めた全員が、キックオフ前に
タッチライン上に整列して一礼してからピッチに入った。

[前半の戦い]

日大のキックオフで試合開始。予想通り、最初から両チームが自慢とするFW
同士による激しいぶつかり合いが展開された。とくに流経大にはLOグレイに
加えてFL伊勢田やHO湯原といった、身体を張って突破を試みる(相手FW
を震え上がらせるに十分の)選手達がいる。だが、強力FWを看板とする日大
も彼らの突進を身体を張って止める。文字通りの肉弾戦。

そして今日の流経大にはラインアウトで絶対の自信を持つ2mの鈴木学も居る。
流経大の先制点はその得意とするラインアウトから生まれた。敵陣でのペナル
ティ→CTB大石のロングキック→ゴール前ラインアウトからのドライビング
モールの3点セットは流経大の有効な得点パターンであり、見事にその形が決
まった。FWでは187cmの古賀が最長身の日大も、マイボールではサポー
トを効果的に使うなど健闘を見せたが、相手ボールの場合はどうしようもない。

しかしながら、この得点を機に日大FWにエンジンが掛かり始める。今年の日
大FWはスクラムだけではない。流経大のお株を奪うようなまとまりの良さと
機動力がある。また、例年のようなFWへの過度のこだわりもなく、効果的に
BKに展開するなど、バランス感覚も持ち合わせている。日大FWの頑張りで
以後25分くらいまではゲームは殆ど流経大陣で進められる、日大やや優勢の
展開で進められた。

自陣での戦いとなると、反則が多い傾向にある流経大は苦しい。16分のPG
(左中間約30m)は失敗に終わったものの、日大のSO松下は21分、26
分のPGを相次いで決め、日大は1点差ながら逆転に成功。緒戦の東海大戦は
当たりが悪く?意識せざるノータッチキックを連発した松下であった、この日
はほぼパーフェクト。飛距離も田井中、森田、大石といったロングキッカー達
と比べてもひけを取らない。司令塔としてのラインコントロールも巧みでリー
グ戦Gの要注目SOだと思う。

しかしながら、ここで流経大FWに火がつく。その契機となったのはやはりH
O湯原とFL伊勢田の看板コンビ。強力FWの日大をもってしても彼らを簡単
に止めることはできない。日大は自陣で反則を犯し、22m内でのラインアウ
トが増えるという苦しい展開に。流経大は35分に5mスクラム(マイボール
ラインアウトからモールを経てのパイルアップ)からサイドアタックを試み、
ゴール前のラックから最後はNo.8の鈴木敬がトライを奪い再逆転に成功した。

というように全般的に流経大ペースの前半ではあったのだが、流経大ラグビー
のもう一つの楽しみであるSOアンダーソンを中心としたBKの効果的なアタ
ックはあまり見られなかった。FW中心の展開となると、ゲインは確実に稼げ
るものの、どうしても攻撃のテンポが遅くなってしまう。BKの要であるCT
B大野を欠いている影響もあったのだろうか。また、藤原丈嗣(日大)のよう
な決定的な仕事が出来るWTBがひとり欲しいところ。

ただ、ラインアウトからモールを作らず、素早くオープンに展開したときには
有効なアタックが出来ていた。FWの優位は活かしつつ、前へ行き過ぎずにテ
ンポ良くボールをBKに供給出来るようなラグビーが出来れば、アンダーソン
のスキルと閃きを活かした変幻自在のアタックが見られる(楽しめる)ように
なると思うのだが...。

[後半の戦い]

後半も、FW戦でやや優位に立つ流経大ペースで試合が進む。FL伊勢田はキ
ックオフのリターンなど、自陣からでもボールを持つとどんどん前に出てくる。
日大の身体を張ってのディフェンスも完全に止めることは出来ず、かつ反則を
犯してしまい、自陣22m内でのラインアウトが増えるという悪循環は絶てな
い。8分には流経大がそのラインアウトからモールを形成してゴール前まで前
進。最後は伊勢田がサイドをついてゴールラインを越えた。

流経大の14分の得点も日大陣ゴール前でのラインアウトが起点。モールで前
進した後オープンに展開し、連続攻撃。最後は絶妙のグラバーキックをインゴ
ールで右WTBの登喜が押さえた。流経大は続く17分にもゴール正面約30
mの位置で得たPGをFB森大二朗が成功させリードを19点まで拡げた。な
かなか有効打が打てず、ノートライに押さえ込まれている日大に取っては逆転
が難しい点差のように思われた。

残り時間もあと20分余りとなった終盤、この試合で勝利を収め、上位進出へ
の足がかりを得たい日大は必死の反撃を試みる。流経大ゴール前でスクラムの
チャンスを得るものの、流経大FWも強力。サイドアタックは粘り強いディフ
ェンスでことごとく止められる。まるで白い壁といった感じ。30分を回った
段階でどうやら日大の敗色濃厚となり、日大、健闘も一歩及ばずのコメントを
考え始めたのが確か手元の時計で33分あたり。

「水戸ツインの奇跡」が始まったのはまさにそんなタイミングからだった。そ
の奇跡を呼び込んだのは日大から今や日本学生のエースへと飛躍を遂げようと
している右WTBの藤原丈嗣。日大はHWL付近のマイボールラインアウトを
左オープンに展開し、ボールが「運命の男」に渡る。本日は殆ど活躍の場がな
かった藤原丈嗣だったが、満を持して流経大ディフェンダーをかわしながら流
経大ゴールに迫る。あと一歩でゴールラインというところで惜しくもタックラ
ーに捕まってしまうが、ここでフォローしていたのがFLのトーエツ主将。タ
ッチライン沿いの際どい位置ながら渾身のトライを決めて一矢を報いた。難し
い位置ながら松下のゴールキックも成功し、日大のビハインドは12点となる。
2トライ2ゴールで逆転である。

こうなるとラグビーのルールが味方をしてくれる。相手方のキックオフで試合
は再開。ボールを受けた側は迷わずゴールを目指せばよい。今度は自陣22m
付近から左オープンに大きく展開しライン参加したFB梅澤がラインブレイク
して流経大陣22m付近まで快走。フォローした右CTBの金川を経て、また
してもトーエツ主将がゴール中央に飛び込んだ。時計は(まだ)36分。勢い
から見ても、日大の大逆転は現実味を帯びてきた。

意気上がる日大。しかしながら、流経大キックオフのボールを日大FWが痛恨
のノックオン。流経大ボールで万事休したと思われたが、流経大もミスを犯し
て自陣22m内ながら日大もスクラムのチャンスを得る。実は不肖ながら私自
身も興奮してしまいプロセスを思い出せないのだが、気がついたら日大のCT
B金川が流経大ゴール中央に飛び込んでいた。難なくゴールも成功し、日大は
奇跡の大逆転に成功した。日大関係者の興奮は絶頂に達した。

昨年度上位チームのプライドにかけてもこのままでは終われない流経大も最後
の反撃を見せる。日大は自陣を背負った苦しい展開に。リードしているといっ
ても点差はPG1本で逆転可能な2点差。そして42分、流経大に願ってもな
いPGのチャンスが与えられる。左中間ながら距離は約20mで、それまでの
興奮がうそのように、観客達は静かにゴールキックの成否を見守った。惜しく
もキックは左にそれ、その瞬間ノーサイド。残酷なくらいに勝者と敗者をはっ
きりと分けてしまう、何とも言い難い幕切れとなった。

[試合後の感想]

最後まで諦めなかった日大が見事なチームワークでもぎ取った勝利と言えるか
も知れない。ここ数年来のバラバラに等しい状態だったチームと同じチームと
はとうてい思えない。まだまだ粗削りではあるが、法政戦と関東学院戦が本当
に楽しみになってきた。

流経大は2連敗してしまったこと以上にこの敗戦はショックが大きいのではな
いだろうか。何とか精神的に立て直して欲しい。今浮かぶ言葉はこれだけであ
る。                       (2004年10月11日記)

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