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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2004

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Weekly Report

○観戦記録 日本大学 vs 中央大学(2004年11月7日)

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2004/11/07) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 日本大学  :前半: 3  3  0  0 21 |
       :後半: 3  3  0  0 21 |  42 15
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 中央大学  :前半: 1  1  1  0 10 |
       :後半: 1  1  1  0 10 |  20  7


◎出場メンバー

 日大 : 1.森下 2.北島 3.高橋 4.佐渡 5.古賀 6.大山 7.トーエツ 8.蓬莱
      9.倉澤 10.松下 11.藤原慶 12.金川 13.安井 14.タウファ 15.梅澤
     (16.手塚 17.飯田 18.津田 19.野村 20.向山 21.武居 22.吉田)

    ○交替   4→18(後38分入替),  6→19(後38分入替)


 中央 : 1.麻生 2.諸隈 3.甕 4.石丸 5.菊田 6.久保 7.大西 8.末永
      9.古賀 10.升本 11.長友 12.工藤 13.有田 14.室井 15.中村
     (16.藤田 17.武田 18.羽立 19.牧野 20.早川 21.馬場 22.越村)

    ○交替  11→22(後 7分交代),  5→16(後22分入替),  2→17(後25分入替)
          4→18(後25分入替),  9→20(後28分交代),  7→19(後30分入替)
         12→21(後30分入替)
 

 レフリー :下井真介(日本協会公認)


◎得点経過

 日本大学    0                       7      14  21             21
                                       G      G   G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                        P                      G
 中央大学    0              3                      10          10

 日本大学   21      28    35                       42          42
                G     G                        G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                   P                                 G
 中央大学   10         13                                20    20

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 日大:前半22分 蓬莱(T)、松下(G)
      29分 タウファ(T)、松下(G)
      33分 タウファ(T)、松下(G)
    後半 5分 タウファ(T)、松下(G)
      11分 梅澤(T)、松下(G)
      36分 大山(T)、松下(G)

 中央:前半13分 中村(PG)
      36分 長友(T)、中村(G)
    後半 8分 中村(PG)
      42分 升本(T)、中村(G)

◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

第1試合(大東大対拓大)キックオフの30分以上前、グランド上にトーエツ
主将以下、日大の選手達が現れた。グランドをゆっくり一回りしながらピッチ
の状態を念入りにチェック。あるいは本日の試合に備えてのイメージトレーニ
ングといったところだろうか。些細なことかも知れないが、今シーズンの日大
の試合に対する心構えといったものが伺えた。

過去数シーズンと比較して、多くの(良い方向への)変化が見られる日大であ
るが、一番大きく変わった点はこのような「気持ち」の部分かもしれない。過
去3シーズンのチーム状態に対して想うところが多々あったトーエツ主将が自
ら先頭に立って意識改革を試みたのではないだろうか。春先にはチーム最大の
危機にあった日大にとって、最高の主将を得たことは幸運だった。

さて、本日の日大の相手は、苦戦を強いられることが多い中央大。4連敗で今
ひとつ調子が出ていないとはいっても侮れない力を持っているチームである。
事実、中盤であたる日大戦で勝利を収めたことにより、前半戦の不振を挽回し
て上位グループに食い込んだシーズンがここ数年でも2回ほどあった。不調と
はいっても個々には能力の高い選手を揃えている中央大。きっかけさえ掴めば
すぐに強豪チームに生まれ変われる要素を持っている。先週行われた流経大戦
ではあと一歩のところで今期初勝利を逃したものの、この試合で日大を撃破し
て後半戦3連勝、そして大学選手権への足がかりを掴みたいところ。

中央大のメンバーはほぼ固定されているのに対し、日大のメンバーは故障者が
出たためか、かなり入れ替わりがある。SHには2年生の倉澤が初めて先発と
して起用された。日大というか今や学生のエースWTBのひとりと言ってもい
い藤原丈嗣の名はリザーブにもなく、代わりに関東学院戦は欠場だったタフィ
アが14番を付けた。FBには同じく関東学院戦を欠場した梅澤が復帰。先発
メンバーの中にいる4年生は4人のみで、やむを得ない事情があるとはいえ、
かなり思い切った陣容のように見えるが、このメンバー構成が吉と出るか?

[前半の戦い]

日大のキックオフで試合開始。その日大がいきなりビッグチャンスを掴む。中
央大のタッチキックをチャージして5mスクラム(中央大キャリーバック)の
チャンス。ここで日大はスクラムを押し込むかと思われたが、オープンに展開
しようとしたところでSH倉澤が捕まってしまいターンオーバー。倉澤には初
先発(途中交代での出場はあるが、いずれも後半30分以降)の緊張があった
のか、前半は位置取りやパスアウトがうまくいかない場面が多く見られた。

続く2分にも日大にビッグチャンス。自陣10mライン付近からのラインアウ
トからオープンに展開し、SO松下がうまく中央大のディフェンダーをかわし
て一気に中央大陣22mに迫る。が、フォロワーを探そうとしたところでボー
ルを前にポロリとこぼしてしまった。またやってしまった!という感じ。私見
ながら松下はリーグ戦1、2を争う魅力溢れるSOであるが、正面のGKをあ
っさり外すなど、思いがけないミスをする点でも(何故か)魅力的な存在とな
っている。彼独特のキャラクターのなせる技だろうか。

2回ミスをすると、ゲームの流れが相手にいってしまうのは自然の理。以後、
中央大のFWを中心とした猛攻が始まり、日大は自陣にほぼ釘付けの状態とな
る。自陣で反則を犯し、ゴール前での中央大ボールラインアウトといった絶対
絶命のピンチが続く。中央大FWのモール、ラック主体の攻撃に対して、ひた
すら耐える日大といった具合に、まるで(過去のパターンとはうってかわって)
両校のジャージが入れ替わったかのような展開で試合が進む。

だが、中央大は攻めきれない。10分には中央大に痛いミス。日大陣22m内
で得たPKのチャンスからタッチを狙ったSO升本のキックが直接インゴール
に飛び込んでしまった。肝心なところでPKのミス(ノータッチなど)が出て
しまう点は昨シーズンから改善されていない。升本のキックの飛距離は田井中
や大石(流経大)にもけしてひけを取らないのだが...。結局、中央大は1
3分にゴール正面約20mの位置で得たPKのチャンスでPGを成功させ3点
を先制するに止まった。日大にとっては、この時間帯での失点が3点で済んだ
ことが結果的に大きかった。

序盤戦の中央大の猛攻を凌いだ日大が22分に逆転に成功する。中央大陣の1
0mラインと22mラインの真ん中ぐらいの位置での日大ボールラインアウト
からモールを形成して前進。このモールが何とも不思議なモールだった。ドラ
イビングモールというよりもローリングモールといった方が正確かも知れない。
スクラムのホイールのような感じでFWの塊が回転し、中央大FWが日大陣側
に回り込む形を繰り返しながら日大が前進。本来、中央大FWはブレークしな
がら自陣側に回り込んで体勢を立て直すべきなのだが...。最終的に中央大
は自陣ゴール前で反則。日大がすかさずクイックで仕掛けてNo.8蓬莱がインゴ
ールに飛び込んだ。

続く29分にも日大は自陣で得たPKのチャンスからクイックで仕掛けてトラ
イを奪う。相手の虚を突く形でビッグゲインを稼ぎ、SO松下からトーエツに
ラストパス。大東大の場合は攻撃の起点に8番(フィリピーネ)や4番(マヘ)
の姿が必ずといっていいくらいあるが、日大の場合は最終局面に必ず7番の背
番号を付けた選手がいる。本当に頼もしいキャプテンである。

さらに日大は33分に加点。今度は相手キックをチャージしたボールを拾った
SO松下からこの日はWTBで起用されたタフィアにラストパスが渡りトライ。
ゴールも成功して日大のリードはあっという間に18点に拡がった。タフィア
のWTBでの起用があたった感じ。今や日大にとって相手キックのチャージは
強力な武器になりつつある。組織的かつ積極的に前にプレッシャーをかけてい
る効果がしっかりと現れている。

序盤とはうってかわって劣勢となってしまった中央大だったが、その直後の3
6分に一矢報いる。カウンターアタックから1年生ながら早くも中央大のエー
スへと成長を遂げつつある左WTB長友が左タッチライン沿いを快走してイン
ゴールに飛び込んだ。長友は小野澤、そして平田といった中央大WTBの伝統
を受け継ぐ選手であることは間違いなさそう。

21−10と効率よく得点を奪った日大リードで前半を終了。とはいえ、この
点差は、過去の経験を踏まえてもけして安心できるものではない。中央大ファ
ンには後半の再逆転への期待を持たせ、日大ファンにはちょっぴり不安を感じ
させる前半の戦いだった。

[後半の戦い]

後半も前半の流れを引き継ぐ形でやや日大ペースの展開。日大FWの集まりが
いいのに対し、中央大は球出しがどうしても遅れ気味。また、中央大は攻守と
もBKラインの形成が遅いという課題が快勝されていない。ただ、日大は近場
のパスがスローフォワードになる惜しいミスがあり、なかなか波に乗れない。

そのような状況の中で、5分にこの日の日大の勝利を決定づけるような素晴ら
しいトライが日大に生まれた。自陣からのカウンターアタックからオープンに
展開したボールがライン参加したトーエツ主将に渡る。22mライン付近で中
央大のDFに捕まるものの、トーエツはそのままタックラー(達)を引きずる形
で力強くゴール中央に飛び込んだ。この主将自らのトライは日大の選手達に勝
利に向かっての大きな力を与えた。

9分に中央大は日大陣ゴール正面15mの位置でPKのチャンスを得る。点差
から考えて積極的に行っても良い場面だったが、PGを選択。とりあえずビハ
インドを15点に縮めた。ここで中央大は何とか立て直したいところだったが、
11分にも日大にトライを許してしまう。HWL付近のラインアウト(日大ボ
ール)から日大はオープンに展開して中央大陣へ。ラックからSH倉澤がショ
ートサイドをついて大きくゲインしラストパスをFB梅澤に送った。

日大にとっては、BKリーダーの梅澤の復帰も好材料だった。「後ろからの声
は神の声」(サッカー)はラグビーも同じ。最後列からの的確な指示がチーム
を大いに盛り上げる。前線を引っ張るトーエツと後ろからチームを纏める梅澤
がしっかりと3年生主体のチームを纏めている。また、経験不足から精彩を欠
き、日大ファンに不安を抱かせた倉澤だったが、後半はめっきり動きが良くな
った。26分にはゴール直前で中央大選手のトライを阻止する気迫のタックル
を見せ、日大のピンチを救った。

5連敗は避けたい中央大はこのままでは終われない。以後、試合の流れは中央
大に傾く。自陣でのDFを強いられる時間帯が多くなった日大に反則が目立ち
始め、中央大にラインアウトのチャンスが増える展開。しかしながら、肝心な
ところで中央大にノックオンのミスが出てしまい、なかなか電光掲示板の得点
が動かない。中央大自慢のモールもパワーで押し込むだけといった感じで、あ
まり策が見られない。比較的少人数でうまくドライブをかけながら押し込む日
大とは対照的だった。BKとの連携も悪く、とりあえず行けるところまで行っ
てみるという以上の意図が見えてこない。

中央大の死力を尽くした攻撃を凌ぎきった日大は36分にダメ押しとも言える
トライを奪った。モール、ラックのFWのアタックにオープン攻撃を織り交ぜ
た連続攻撃で最後はFLの大山がインゴールに飛び込む。関東学院のような華
麗さはない泥臭い形ではあるが、これも立派な継続ラグビー。15人の気持ち
が一つになったような日大らしいトライだった。

中央大は最後の最後にカウンターアタックからの連続攻撃で7点を奪うものの
時既に遅し。中央大の攻勢に日大が押され気味の時間帯が多かったが、終始落
ち着いた試合運びを見せた日大の完勝であった。

[試合後の感想]

BKに人材を得ていることもあるが、今シーズンの日大はFWに固執せず積極
的にBK展開を試みるなど(良い方向への)モデルチェンジに成功した感があ
る。スクラムを押し込む場面がめっきり減ったことに対して物足りなさを感じ
るファンがいるかも知れないが、FWに拘るが故に自滅してしまうことが多か
ったのがこれまでの日大。今後の戦いが本当に愉しみになってきた。

5連敗になってしまった中央大は、逆にFWに固執したが故にうまく得点が奪
えなかった感が強い。選手達が頑張っていることは観客席にも十分に伝わって
くるのだが...。1試合を通してどのような形で戦っていくのかという戦術
面の意思統一がなく、残念ながら闘志が空回りという印象。残された時間は少
ないが、戦術面の拠り所を見つけてそこに全員の気持ちを集中させることがチ
ーム立て直しの鍵のように思われる。         (2004年11月9日記)

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