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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2004

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Weekly Report

○観戦記録 大東文化大学 vs 中央大学(2004年11月21日)

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2004/11/21) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 大東文化大学:前半: 2  1  0  0 12 |
       :後半: 5  3  0  0 31 |  43 11
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 中央大学  :前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |   5 11


◎出場メンバー

 大東 : 1.木川 2.太田 3.須藤 4.マヘ 5.星 6.小泉 7.牧野 8.フィリピーネ
      9.寺西 10.戸嶋 11.岩渕 12.塚元 13.藤山 14.畠山 15.政田
     (16.住田 17.羽鳥 18.飯島 19.大久保 20.山下 21.佐藤 22.栢野)

    ○交替   4→18(前16分入替), 12→21(後20分入替),  6→22(後27分入替)
         1→16(後32分入替), 13→20(後35分入替),  9→19(後36分入替)
         3→17(後39分入替)


 中央 : 1.麻生 2.諸隈 3.甕 4.石丸 5.菊田 6.久保 7.大西 8.末永
      9.古賀 10.升本 11.長友 12.工藤 13.有田 14.室井 15.中村
     (16.藤田 17.武田 18.羽立 19.牧野 20.早川 21.馬場 22.越村)

    ○交替   3→16(後10分入替),  4→18(後10分入替),  6→19(後10分入替)
         12→21(後10分入替),  9→20(後30分入替),  2→17(後30分入替)
 

 レフリー :小野塚隆(日本協会公認)


◎得点経過

 大東文化大学  0                         7          12           12
                                         G          T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 中央大学    0                                                  0


 大東文化大学 12     19  24                       31   36 43     43
               G   T                        G    T  G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                       T
 中央大学    0                             5                    5

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 大東:前半24分 塚元(T)、政田(G)
      35分 太田(T)
    後半 4分 フィリピーネ(T)、政田(G)
       8分 フィリピーネ(T)
      33分 佐藤(T)、政田(G)
      38分 戸嶋(T)
      41分 フィリピーネ(T)、政田(G)

 中央:後半28分 有田(T)

◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

大東大はここまで3勝2敗ながら関東学院と大接戦を演じるなど今シーズンは
好調ぶりをアピールしている。一方の中央大はここまで5連敗でまったく元気
がない。今シーズンの中央大の試合は緒戦の法政戦から都合3試合観戦してい
るが、残念ながら伝統の「らしさ」(中央大らしい、としか形容しようがない
15人がひとつになった破壊的なラグビー)が出た試合はまだない。

チームの勢いからすれば大東大が優位にあることは間違いないが、最後まで何
が起こるか判らないのが大学ラグビーのそれも関東大学リーグ戦グループ。と
くに根拠があるわけではないが、このままずるずると6連敗してしまうことは
避けたい中央大がそろそろ爆発か?の予感を胸にキックオフを待った。

[前半の戦い]

中央大のキックオフで試合開始。意表をついて大東大FWの居ない右サイドに
ボールを蹴った。この試合では中央大のキックオフはことごとく同じパターン。
だが、浅めに蹴って味方が確保といったような意図はとくに感じられず、むし
ろ大東大のカウンターアタックを助長しているような感じだった。

序盤は概ね中央大がキック→大東大のカウンターアタックという感じで試合が
進んだ。大東大は相変わらずマヘとフィリピーネの4−8コンビが強力。力強
く突破をはかるものの、中央大も彼らはしっかりとマークしている。大東大は
オープン展開も交えてどんどん前に出るが、スローフォワードなどのパスミス
が多く、なかなか得点を奪えそうな感じにならない。奔放にパスを繋いでいく
ことが大東大の持ち味ではあるが、どんな形でも継続すれば何とかなる(得点
に繋がる)というような軽い気持ちが選手達の意識の中にあったのだろうか。

4分には中央大がHWL付近のセンタースクラムからサイドアタックで大きく
ゲインし大東大のペナルティを誘う。中央大はそのままPからGOで攻めるが
惜しくもゴールラインに届かず、逆に大東大がターンオーバーで逆襲するもス
ローフォワード。続く6分、大東大はカウンターアタックからチャンスを掴む
もののノックオン。さらに8分には大東大のCTB藤山がゴール前に絶妙のキ
ック、だが拾えない。といった具合。16分には「軽い」プレーが目についた
LOマヘが早々とベンチに下がる。ケガをしている様子もなかったのでお灸を
すえられたのだろうか。

だが、一度歯車が狂ってしまうとなかなか修正が難しい。18分に大東大は中
央大ゴール前での5mスクラムのチャンスを得るが、中央大が粘り強いディフ
ェンスで得点を許さない。大東大はその直後の19分のゴール前でのPKのチ
ャンスも活かせず、さらに21分の5mスクラム(センタースクラム)のチャ
ンスでもフィリピーネがしっかりと止められてしまう。中央大はゴール前での
ラックでターンオーバーに成功しピンチを脱した。

その直後の23分にようやく得点板が動く。大東大が中央大陣10mライン付
近のラインアウトからオープンに展開し、CTB塚元がラインブレイクして一
気に40m走りきりインゴールに飛び込んだ。中央大にとってはせっかくピン
チを脱したと思われただけに惜しまれる失点だった。ただ、この大東大の先制
トライを持ってしても試合の流れ(大東大がなかなか波に乗れない)は変わら
ない。中央大が自陣のゴール前に釘付けの状態となりながらも粘り強いディフ
ェンスで大東大の強力なアタックを凌いだことで、逆に中央大に試合の流れが
傾き始める。

私の観戦記憶データベースによれば、このような試合展開は「典型的な中央大
の勝ちパターン」となる。相手の怒濤のアタックを粘り強い気迫のディフェン
スで止め続けることにより蓄積したパワーを、自分たちのアタックの局面で一
気に解放させて逆襲に転じる。一度15人の気持ちが一つになってしまうと、
中央大のアタックは学生随一と言っても良い破壊力を持つ。そんな戦慄的とも
言える場面を過去7年間の観戦で何度か見てきている。ふとそんな記憶が蘇っ
てきた。

キックオフ直後の25分には中央大FB中村が自陣からのカウンターアタック
から一気に大東大陣10mまでランで大きくゲイン。惜しくもスローフォワー
ドでチャンスを逃すが、中央大にとっては良い流れ。大東大はオープンへのキ
ックがダイレクトタッチになってしまうなど、なかなか悪い流れが修正できな
い。しかしながら、中央大もそんな大東大にお付き合いしてしまう形でミスを
連発し、せっかく相手が与えてくれたミスを活かすことができない。

32分には中央大がHWL付近で犯したペナルティ(ハイタックル)から、大
東大が中央大陣22m内でのラインアウトという絶好のチャンスを掴む。大東
大はモール形成してゴール前まで前進。ラックを交えたサイドアタックでゴー
ルラインを越えトライかと思われたが惜しくもパイルアップ。この時中央大に
オフサイドの反則があり再び大東大ボールのラインアウト。今度はモールをし
っかり押し込んでHO太田がトライを決めた。これで大東大のリードは12点。

中央大はこのままリードを拡げられないうちに何とか前半で1本返したい。3
7分に中央大のFB中村が魅せる。足下に届いたボールを絶妙のトラップで止
め、そのボールをすかさず拾いカウンターアタックで一気に大東大陣へ。ここ
で中央大はアップアンドアンダーで攻めるが、SO升本のキックは無情にも2
2m内まで届いてしまい大東大が難なくフェアーキャッチ。中央大応援席から
は大きなため息が漏れる。

インジュリータイムに入った40分過ぎにも中央大は大東大陣ゴール前でのマ
イボールラインアウトという絶好のチャンスを掴む。中央大はオープンに展開
して大東大ゴールに迫るが、ここでSO升本はまたしてもキックを選択。目の
前にゴールが見えているのだから思い切ったアタックを試みて欲しいのだが.
..。結果的に大東大が今度も余裕を持ってフェアーキャッチ。中央大応援席
からは先ほど以上に大きく深い(あきらめにも近い)ため息が聞かれた。大東
大のフリーキックがタッチを割ったところで前半終了。

中央大にとって惜しまれるのは、大事な局面でキックを使って相手にボールを
簡単に渡してしまったこと。どの時間帯だったかは忘れたが前半の後半にサイ
ドアタックで継続しながらボールを前に運ぶ中央大らしいラグビーが見られた。
この形で執拗にサイドをつかれることは大東大にとってもいやだったはず。シ
ンプルかつ地道なアタックを繰り返して前進を図りながら相手ディフェンダー
の数を減らしていき、最後は走力のあるバックスリーで決めるというアタック
で自分たちに勝利を呼び込むことは、この段階では可能なように思われた。中
央大が1本でも取っていれば後半逆転への望みも繋がったのだが...。

[後半の戦い]

大東大のキックオフで後半開始。序盤から大東大が執拗なサイド攻撃で前進を
はかる。2分には中央大の反則を誘いゴール前ラインアウトのチャンス。4分
に再び中央大が自陣ゴール前で犯した反則から速攻で仕掛けてフィリピーネが
トライを奪い大東大があっさりと追加点を取る。が、その直後のキックオフで
中央大は大東大にプレッシャーをかけ相手キックをチャージ。残念ながらゴー
ル前でノックオンがあり中央大は得点できないが、まだビハインドは3トライ
3ゴールで逆転できる19点なので中央大にチャンスは十分に残っている。

しかしながら、8分だった。ここまで今一歩精彩を欠いていた大東大のフィリ
ピーネがパワーを見せつける。大東大は自陣10m付近の相手ボールスクラム
を押し込み、スクラムからこぼれたボールをフィリピーネがスティールして一
気に中央陣ゴール前10m付近まで前進。フィリピーネは中央大の捨て身のタ
ックルにあうもののうまくフォローした選手にボールを繋ぐ。そしてラストパ
スは再びフィリピーネへ。フィリピーネは巨体を活かした豪快なランを持ち味
とする選手だが、ボールをうまく繋ぐ技術を持つなかなか器用な選手である。

中央大ここで意気消沈かと思われたが、スタンドからの控え選手達の強力な声
援による後押しもあり、攻勢に転じる。以後25分過ぎくらいまではゲームは
殆ど大東大陣内で行われることとなった。が、中央大の得点0はなかなか動か
ない。肝心な局面でノックオン、ラインアウトのノットストレートが出ては得
点出来ないのもやむなし。

両者とも決め手を欠く中で迎えた28分だった。中央大にようやく得点が生ま
れる。カウンターアタックからの連続攻撃でインゴールに飛び込んだのはエー
スのCTB有田。意気上がる中央大応援席だったが、いかんせん遅すぎた。3
3分、HWL付近の自陣より中央大ボールラインアウトからのアタックを大東
大がターンオーバーに成功。そのまま連続攻撃で後半20分からCTB塚元に
代わって登場した大久保がトライ。

執拗なディフェンスで大東大の猛攻に耐えていた中央大もここまでが限界だっ
た。38分には大東大が中央大陣22mライン手前でのラインアウトからモー
ルを形成して押し込み22m内へ前進。オープンに展開されたボールをSO戸
嶋がゴール中央に持ち込み36−5。インジュリータイムの41分にもフィリ
ピーネがPKからの速攻でトライを奪い、前半は拮抗していたゲームも終わっ
てみれば攻撃力に勝る大東大の圧勝だった。

[試合後の感想]

圧勝に終わったものの、大東大にとっては大学選手権に向けた今後の戦いにメ
ンタル面での不安をちょっぴり抱かせた試合だったように思う。中央大のディ
フェンスに手こずらされた面もあったが、無理な体勢でパスを繋ぐよりも確実
にポイントを作った方が良い場合もある。一度歯車が狂ってしまうと、なかな
かチームの立て直しは難しい。たびたび果敢なカウンターアタックを見せてチ
ームの士気を鼓舞していた政田主将をもってしても、なかなかチームのメンタ
リティ面のコントロールは難しかったということだろうか。

ただ、精彩を欠いた面があったアタックに比べると、ディフェンスはしっかり
と機能していたように思う。中央大に決め手がなく、またミスでチャンスを自
ら潰してしまう面があったにせよ失点5は今後に向けての明るい材料。順位は
ほぼ決定(3位または4位)しているとはいえ、例年以上の死闘になることが
予想される最後の日大戦に向けてモチベーションを高めていきたいところ。

最後は力負けしてしまった中央大だが、勝利を掴むチャンスがないわけではな
かった。いや逆にこのような展開なら絶対に勝たなければならないし、少なく
とも以前の中央大ならその力もあった。結局、自分たちの形(攻め手)が現時
点でも見つからず、そこに15人の気持ちを集中して戦うことが出来ていない
ことが今シーズンの不振の原因であるように思われる。また、今年のチームに
はFWに山田(元主将、現三洋電機)、森(昨シーズンの主将)といったよう
な切り込み隊長型の核になる選手がおらず、チームが全体的に大人しいような
印象を受ける。

中央大にはエース有田に加え、WTB長友、FB中村といった魅力的なランナ
ー達が居る。彼らの持ち味をうまく活かしたラグビーができれば得点力は相当
にアップするはずである。ラグビーにとってもっとも大切なのは闘争心だが、
大学ラグビーといえども気合いだけでは勝てないのが最近の流れ。中央大のプ
レーは組織としても個人としても上位チームに遅れを取っている点は否めない。
時間はかかってもこのあたりを変えていかないと、今後上位に上がることはま
すます難しくなっていくように思われる。      (2004年11月23日記)

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