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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2005

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Weekly Report

法政大学 vs 東海大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2005/10/23) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 法政大学  :前半: 2  1  0  0 12 |
       :後半: 2  1  0  0 12 |  24 13
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 東海大学  :前半: 3  2  0  0 19 |
       :後半: 0  0  1  0  3 |  22  9


◎出場メンバー

 法政 : 1.鎌田 2.小笠原太 3.山内 4.篠塚 5.竹中 6.遠藤 7.泉 8.高根
      9.成田 10.森田 11.友井川 (12).野村 13.大村 14.小笠原仁 15.高山
     (16.長沼 17.坂田 18.亀山 19.玄 20.和田 21.田沼 22.西條)

    ○交替 13→21(後 0分入替),  1→16(後38分入替)


 東海 : 1.江黒 2.田中康 3.奥田 4.井上 5.豊田 6.樫本 7.田中俊 (8).太田
      9.辻埜 10.真崎 11.陳 12.吉田 13.鈴江 14.大平 15.三木
     (16.岩本 17.小野寺 18.木下 19.宮本 20.北村 21.河村 22.森)

    ○交替  3→16(後30分入替),  2→17(後34分入替),  6→19(後38分入替)
        13→21(後40分入替)


 レフリー :新野好之(  協会公認)


◎得点経過

 法政大学    0                     7           14      19      19
                                     G           G       G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                     T       G
 東海大学    0           5       12                            12


 法政大学   19            22                                   22
                      P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
               T            G
 東海大学   12     17           24                             24


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 法政:前半10分 野村 (T)
      18分 野村 (T)、森田 (G)
    後半 4分 友井川(T)
      17分 篠塚 (T)、森田 (G)

 東海:前半20分 大平 (T)、吉田 (G)
      32分 吉田 (T)、吉田 (G)
      40分 大平 (T)
    後半11分 吉田 (PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

前節で関東学院を破って意気上がる東海大。ここで法政も破ってしまえば、悲
願の「大学日本一」がより現実的になってくる。さらにモチベーションを上げ
て試合に臨みたいところ。緻密な組織ラグビーを指向するチームであり、胸の
すくような高速展開のランニングラグビーを見せてくれるチームなのだが、ど
こか精神面での脆さを持っている。1部昇格からずっとこのチームの闘いを見
ていて、そんな印象を受ける。強豪チームへと飛躍を遂げるためにも乗り越え
なければならない壁のように思われる。

一方の法政は先だっての流通経済大戦に破れてしまい、連覇に黄色ランプが灯
りかけている。ここは絶対に負けられない。今シーズンの課題としてFWの弱
体化が指摘されているが、牽引者的な選手が卒業した点は差し引いても、けし
て弱いFWではないはず。2人のSHを併用していることなど、チーム戦術が
固まっていないことでパワーが発揮できていないようにも感じられる。BKに
はリザーブメンバーにも他校が羨むような人材が名を連ねている。

リーグ戦グループでも1、2を争う高速ラグビーを指向するチーム同士の対戦。
優勝の行方も左右しかねない試合だけに、果たしてどんな闘いになるか。

[前半の戦い]

東海大のキックオフで試合開始。だが、何とも締まらないオープニングだった。
もちろん、勝利に燃える選手達ではなくて運営側の問題。何と、東海大の校歌
が流れている最中にキックオフのホイッスルが吹かれてしまった。予定時間は
過ぎているし、選手達もセットした状態なので仕方なかったのかも知れないが、
重要な試合の幕開けにはまったくそぐわない。

だが、そんな(試合に集中しづらい)雰囲気は、東海大が開始早々から見せた
目の覚めるような高速展開ラグビーで一瞬のうちに消散した。この試合に先立
ったピッチに立っていた対抗戦グループの選手達には申し訳ないが、ビデオが
1.8倍速モードに切り替わったのかと錯覚してしまったくらい。スピードだ
けでなく技術もパワーも違う。東海大の高速アタックに対して法政の返りも素
早い。学生でトップレベルのスピードを誇るチーム同士の対戦だけある。

この東海大の高速ラグビーの立役者はSOの真崎。160cmの小さな選手だが巧み
なラインコントロールが素晴らしい。実は東海大の試合は日大戦(第2戦で、
真崎の名はリザーブにもない)以来の観戦となるが、まったく別のチームに見
えてしまう。一人の選手の存在がチームをここまで変えてしまうのか!? 関
東学院が破れたとしても不思議はない。真崎は昨シーズンも同じ法政戦で先発
しているが、圧倒的に印象に残っている選手は真崎よりさらに小さい法政のS
H穂坂の方。1年間で急速にブレイクしたということなのだろうか。

試合の方だが、東海大が真崎の自在のラインコントロールでボールを動かし、
法政陣ゴールに迫るという展開が続く。法政はいつ失点してもおかしくないく
らいに東海大の鮮やかなアタックが続くのだが、22mの中に入ってから法政
の粘り強いディフェンスにあって攻撃のスピードがぐっと落ちてしまう。法政
はアタックだけでなくディフェンスも早い。8分には法政陣22mライン手前
のスクラムからオープン展開し、真崎からパスがエースWTB陳に渡る。陳は
持ち前のスピードを活かしてコーナーフラッグめがけて法政ゴールラインに迫
るものの、あと少しのところでタックルを受け惜しくもノックオン。

そんな圧倒的とも思える東海大優位の状況の中で、皮肉にも先制点を挙げたの
は法政の方。開始10分だった。東海大が法政ゴール前でパスミスを犯したと
ころをすかさず法政選手が拾い、CTB野村主将が一気に東海大陣のゴールラ
インを越えた。予想外で、あまりにも呆気ない先制点だった。逆襲に転じたら
ゴールまではとにかく一直線。これが法政ラグビーの醍醐味のひとつでもある。

しかしながら、これはあくまでも「事故」ということで、東海大の攻勢はまだ
まだ続く。13分には法政陣22mライン付近のラインアウト(法政に対する
ペナルティからのタッチキック)という絶好のチャンス。だが、ここは法政の
ハイタワー篠塚(196cm)がスティールに成功しタッチキックで事なきを得た。
と思ったらノータッチで東海大はすかさずカウンターアタックでオープンに展
開しチャンス。だったが残念ながらスローフォワード。双方、高速モードは素
晴らしいのだがちょっとちぐはぐ。

そして、またしても、法政が一瞬のチャンスを活かして追加点。18分だった。
法政陣22mより手前の位置でのラインアウトからFWプレーで法政ゴールに
迫る。今度こそ東海大はトライを取れるかと思われたが、ラックからボールが
こぼれ出たところを一瞬早く法政選手が確保に成功。素早くボールを繋ぎ、ま
たしても野村主将がフィニッシャーとなった。圧倒的に攻めている方が得点で
きず、守勢にまわっている側が相手のミスに乗じて一瞬にして得点を挙げてし
まう。ラグビーというスポーツの理不尽さを感じないわけにはいかない。

同じ形が2度重なるとこれは事故(偶然)ではなくなる。東海大が前掛かりに
なって攻めてきていることによる陣形を見ての野村主将の冷静な判断というこ
とではないだろうか。ゴールラインを背にして守勢に立たされてはいても、一
瞬の判断で切り返しに成功してしまう法政の攻撃力に一日の長があるような気
がする。結果的に野村主将が挙げた前半の2トライが法政を連敗の危機から救
うことになった。

これで法政は一気に逆襲に転じ爆発か?と思われたが、その直後に東海大が1
トライ返す。東海大キックオフのボールを東海大FWが法政陣で獲得に成功し
一気にオープンに展開し左WTB大平が一気にゴールラインまで到達した。ゴ
ールキックも決まり東海大のビハインドは5点。しかしながら、序盤からハイ
スピードで飛ばした東海大にやや攻め疲れが出たのか、徐々にゲームの流れは
法政に傾き始める。今度は法政のランニングラグビーの出番である。26分に
はカウンターアタックで右WTB小笠原仁が快足を飛ばして東海大ゴールに迫
るが惜しくもスローフォワード。法政の応援席から大きなため息が漏れる。

両チーム激しく攻守が入れ替わる中で、得点を挙げたのは東海大の方だった。
32分、東海大のハイパントに対するボール処理を法政選手が誤ったところで、
東海大CTB吉田がボールの獲得に成功し一気にゴールラインまで到達。ゴー
ルキックも成功し、遂に東海大が逆転に成功する。今シーズンの法政はとにか
くミスが多い。法政応援席も諦めムードと憤懣やるかたなしといった感情が入
り交じった複雑な雰囲気だった。

前半の終盤はキックの多い展開となり、カウンターアタックの応酬となった。
法政がやや優位にゲームを進める中、このまま前半が終わるかと思われた40
分、東海に貴重な追加点が生まれる。法政陣での東海大ボールラインアウトを
起点としたオープン展開からSO真崎が法政DF陣をかいくぐる感じでかわし
て一気にゴール前までゲイン。連続攻撃から最後はWTB大平がトライ。昨シ
ーズンまで法政で活躍した穂坂同様、真崎の場合は「低さ」が武器になる。な
かなかタックルに入れない法政選手達を翻弄するプレーが強く印象に残る。ゴ
ールキックは失敗したが、東海大7点リードで前半が終了した。

[後半の戦い]

後半こそは高速アタックを実らせて先に点を取りたい東海大だったが、先に点
を取ったのは、法政の方。開始から僅か4分だった。東海大のハイパントに対
するカウンターアタックから、法政はボールを繋ぎながらどんどん前に出る。
東海大がヨコに展開するスピードなら、法政はタテに出るスピード。フォロワ
ーがどんどん現れ、またタックルされた選手もとにかく一歩でも前に出ようと
する気迫が素晴らしい。直線的でシンプルだが、とても効率が良い攻め。最後
はWTB友井川がゴールラインを越えた。ゴールキックは失敗したため同点に
はならなかったものの、法政のビハインドは2点に縮まる。

優勝戦線に残るためにも負けられないチーム同士の闘いだけあって、キックが
多くなる中で両チームのFWを中心とした激しいボールの獲得合戦が繰り広げ
られる。やや膠着した展開の中での11分、東海大は法政陣ゴール正面20m
の位置でPKのチャンスを得る。CTB吉田がPGを難なく成功させ東海大は
リードを5点に拡げる。もちろんセーフティではないが、貴重な追加点には違
いない。

だが、前半のオーバーペース?の影響が出たのだろうか。東海大の運動量が徐
々に落ちていき、ゲームの流れは確実に法政の方へと流れていく。次第に主戦
場は東海陣22m付近へと移っていく。そして17分、法政は東海大陣ゴール
前でのラインアウトのチャンスから得点を挙げる。バックスタンド側でのプレ
ーだったので状況は良く掴めないのだが、モールでの激しいもみ合いの中、突
然一人の長身の選手がFWの塊からひょっこり抜け出てインゴールめがけて走
り出した。観客席も一瞬何が起こったのか分からずあっけにとられるが、すぐ
に法政の応援席から大歓声が上がった。LOの篠塚だった。ゴールキックも成
功し、法政が逆転に成功。結果的にこの得点が決勝点となった。

以後、後半の大部分の時間帯は法政の押せ押せムードで、東海大は自陣のゴー
ル前に釘付け状態となる苦しい展開となる。法政FWは弱体と言われた汚名を
返上とばかりに、セットプレーで東海大FWに重圧をかける。が、東海大のビ
ハインドはPGでも逆転できる僅か2点。粘り強く耐え凌ぎ、反撃のチャンス
を伺う。法政はペナルティを得てもPGを狙わずひたすら攻める。25分には
PKからの速攻でパスを確実に受ければトライというところでイージーノック
オンがあり、法政も点が取れない。着々と東海大の大逆転へのお膳立てができ
たところで、終了間際の37分、ついに!東海大はピンチを脱した。

ここから、東海大が死力を尽くした反撃を試みるが、法政も粘り強いディフェ
ンスで対抗。両チームの選手、とくにFWの消耗が激しく、インジュリータイ
ムに入ってからはなかなかスクラムが組めない状況。結局東海大は法政陣に入
ることができないまま、両チーム死力を尽くした闘いが終わった。

[試合後の感想]

前日に同じ熊谷で行われた日大と立正大の闘いは死力を尽くした息詰まるFW
戦だったが、本日は高速展開のランニングラグビー。どちらも見応えのある熱
戦に変わりないのだが、やはり、秋晴れの青空にはこんなラグビーが似合うと
でも言いたくなるような爽快感溢れる試合だった。SO真崎を軸とした流れる
ような東海のオープン展開と、ここぞと言うときに集中的に前に出る法政の底
力、どちらも素晴らしかった。ゴールに向かってどんどん加速していく法政に
対し、東海大は逆に減速を余儀なくされていったことが明暗を分けたのかも知
れない。

この試合で、法政は(内容に不満はあったとしても)失いかかっていた自信を
取り戻せたのではないだろうか。また、一方の東海大にしても、昨年度と比べ
て確実に進歩の跡が見られた。FWでの激しいボールの獲得合戦があった中で
の反則数9は評価していいと思う。東海大にとっては残る3戦が非常に重要に
なる。ここをしっかり3連勝で終えて強豪チームへと成長して欲しい。
                         (2005年10月24日記)

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