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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2005

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Weekly Report

流通経済大学 vs 東海大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2005/11/26) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 流通経済大学:前半: 1  1  2  0 13 |
       :後半: 2  0  1  0 13 |  26  6
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 東海大学  :前半: 2  1  0  0 12 |
       :後半: 1  1  1  0 10 |  22 13


◎出場メンバー

 流経 : 1.金城 (2).湯原 3.松波 4.西川 5.笠原 6.古崎 7.藤田 8. 鈴木
      9.森 10.アンダーソン 11.松本 12.池田 13.大石 14.勝俣 15.森谷
     (16.夏目 17.吉田 18.ニコラス 19.佐藤 20.飯笹 21.仲程 22.浅利)

    ○交替  5→18(後11分入替),  6→17(後11分入替),  8→19(後11分入替)


 東海 : 1.小野寺 2.田中康 3.奥田 4.井上 5.豊田 6.宮本 7.田中俊 (8).太田
      9.辻埜 10.真崎 11.陳 12.吉田 13.鈴江 14.大平 15.三木
     (16.江黒 17.岩本 18.山本 19.田中幸 20.北村 21.森脇 22.山内)

    ○交替  3→17(後23分入替),  4→18(後23分入替),  6→19(後23分入替)


 レフリー :石本月洋(日本協会公認)


◎得点経過

 流通経済大学  0   3        6                   13               13
                   P        P                   G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                          T         G
 東海大学    0                5         12                     12


 流通経済大学 13                16    21                    26   26
                          P     T                     T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                         P   G
 東海大学   12                               15  22            22


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 流経:前半 2分 森  (PG)
      11分 森  (PG)
      31分 松波 (T)、森 (G)
    後半15分 森  (PG)
      21分 湯原 (T)
      43分 ニコラス(T)

 東海:前半15分 小野寺(T)
      25分 三木 (T)、吉田 (G)
    後半30分 吉田 (PG)
      33分 大平 (T)、吉田 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

流通経済大と東海大はリーグ戦の良きライバル。FW主体(流大)、BK主体
(東海大)とタイプは異なるが、組織的で緻密なラグビーを指向しているとい
う点は共通している。2部降格後から東海大を率いる木村監督は流大でのコー
チ経験を持っていることも、両校のチーム作りに対するコンセプトが似ている
ように見える一因かも知れない。

ラグビーはチームスポーツである以上、決め事を選手達がしっかり守らないと
組織として戦えない。だが、緻密に組み上げた組織プレーが卓越した個人能力
の前にいとも簡単に打ち破られてしまうことが多いのもラグビーの現実である。
また、選手達が「組織的であること」を意識する余り、チームがあたかも没個
性のように見えてしまうこともある。ここまで流大と東海大の試合も多く観て
きているが、正直、もっと強くなっても良いのではと思うことが少なからずあ
った。両チームにとってのここまでの闘いは、「チーム作り」という内なる闘
いの連続でもあったように思われる。

しかしながら、産みの苦しみとでも言ったらいいのか、両チームの「内なる闘
い」は着実に身を結びつつある。今シーズンはチームとしての戦術がより明確
になってきているように見える。もちろん、さらに上を目指すためにはレベル
アップが必要な部分もあるが、組織戦術が明確になればそれをベースに(毎年
メンバーが入れ替わっていく大学ラグビーではあっても)実力を高めていくこ
とは可能。まだ、結論を出すのは早いかも知れないが、両校はひとつ上の段階
へとステップアップできたのではないだろうか。

前置きが長くなってしまった。流大、東海大ともおそらくベストと思われるメ
ンバー構成。両校がリーグ終盤に向けて、着実にチーム状態を上げていること
の裏付けとも言える。流大ではCTBの大石がスタメンに復帰した。試合感覚
が戻っているかが気になるが、ピンチを一蹴りでチャンスに変えてしまう長距
離砲の復帰は頼もしい。江戸川で同時刻に行われる大東大対日大の状況も大い
に気になる中でキックオフを待った。

[前半の戦い]

キックオフは流大。開始早々にその流大が早くも得点のチャンスを掴む。東海
大陣10mの位置でのラインアウトからのアタックで東海大陣22m内に攻め
込んだところで東海大がオフサイドの反則。流大SH森が右中間20mのPG
を確実に決め、流大が開始2分で3点を先制と幸先の良いスタートを切った。

東海大もすぐに反撃。浅めに蹴られたキックオフのボールをFWがダイレクト
キャッチに成功しオープンに展開して攻めるが惜しくもノックオン。その直後
の流大キックをチャージして流大選手のノックオンを誘いマイボールスクラム。
8→9攻撃でSH辻埜が流大ゴールに迫るがノックオン。PKから再び流大が
東海大陣22mラインまで攻め込む。このあたり、東海大にやや反則が目立つ。
9分にも東海大は自陣22m内でオフサイド。流大はPGで手堅く3点を追加
した。

このまま流大がペースを握るかに見えたが、逆に東海大が持ち前とする高速展
開ラグビーでペースを掴む。流大も組織DFで対抗するものの後退は避けられ
ず自陣ゴールラインを背負う苦しい展開となる。14分に東海大はゴール前ス
クラムからNo.8太田がサイドアタックで前進しゴール前でラック。東海大はこ
こからショートサイド(左側)を攻め、左PRの小野寺がインゴール飛びこん
だ。ゴールキックは失敗したが、東海大はビハインドを1点に縮める。

東海大のアタックはさらに加速する。25分、東海大は流大ゴール前でのライ
ンアウトのチャンスからモールで前進しゴール前でラック。そこから右オープ
ンに展開しライン参加したFB三木がトライ。ゴールキックも成功し東海大が
12−6と逆転。だが、東海大がBKへのオープン展開なら、こちらはFWの
ドライビングモールとばかりに、流大FWがラインアウトを起点にして東海大
陣で大きく前進する場面の連続となる。29分には東海大ゴール前で流大の必
殺技「12人ラインアウト」(BKラインに並んでいるのは3人だけ)が飛び
出すがレシーバーのノックオンであえなく失敗。スタンドから笑いが起こる。

しかし、その直後の31分、東海大22mライン手前のラインアウトからモー
ルで前進し、ゴール前のラックからオープンに展開。SOアンダーソンがゴー
ル前までボールを持ち込みラック。最後は右PR松波がインゴールに飛びこみ
ゴールキックも成功して13−12と流大が再逆転に成功する。この1点違い
というのが何とも微妙。流大ドライビングモールの猛威はなおも続く。8人の
まとまりで無理なくスムースにほぼ等速で前進していく、相手FWにとっては
何とも厄介なモール。おそらく湯原主将がみずからボールを持ちながら押す方
向を巧みにコントロールしていく仕組みになっているのだろう。このモールは
「流大の伝統工芸」になったと言っていいかもしれない。

後半の34分以降、東海大は自陣ゴール前に釘付けとなり、耐えに耐える展開。
だが、流大はなかなかゴールを割れない。圧倒的に攻めながらも点が取れない
と勝機も逸してしまうことになりかねない。結局、このまま流大が追加点を奪
えないまま前半が終了。とはいえ、双方の持ち味が出た手に汗握る展開となっ
た。後半はさらなるヒートアップが期待できそうである。流大は絶対に負けら
れない。

[後半の戦い]

後半開始早々、流大FWが見せ場を作る。東海大キックオフのボールをキャッ
チしてラック。一瞬ぽっかりとFWの塊の真ん中に穴が開き、なかなかひょっ
こりとHOの湯原主将が抜け出した。流大はそのままFW1,2列の選手達で
FWパスで細かくボールを繋ぎ力強くタテに前進して東海大22mに到達する。
残念ながら得点には至らなかったが、2→1→4→3というようにボールが繋
がるアタックは見応えがあった。流大の核弾頭である湯原主将はその後もたび
たび見せ場を作った。

というように流大優位に見える展開ではあるのだが、東海大の切り返しも鋭く、
後半も両チーム一進一退の攻防が続く。ドライビングモールを武器とする流大
がボールを持つ時間が長いので流大ペースト言えなくもないのだが、東海大の
高速展開もインパクト十分なので、どちらがペースを握っているという感じも
しない、エキサイティングな中にも不思議な感覚で時間が過ぎていく。ミスも
目立たないくらいに双方のDFのしのぎ合いも見応えがある。

そして、後半の15分、ようやく得点の電光掲示が動いた。東海大が自陣22
m内でオフサイドの反則を犯し、流大はPGで3点を追加。流大が攻めあぐみ、
東海大はよく凌いで3点に抑えたと言えなくもないが、流大の試合運びはなか
なか手堅い。流大はさらに畳みかける。21分には東海大ゴール前のラインア
ウトからモールで前進しゴールライン手前まで前進。ここからHO湯原主将が
豪快にインゴールに飛びこみ5点を追加しリードを9点に拡げる。流大は大学
選手権に向けて着実に一歩ずつ駒を進める展開。

だが、東海大もこのまま引き下がるわけにはいかない。ここのところ流大に連
敗しており、しかも昨シーズンは最終戦の直接対決で敗れて6位に終わってい
る。流大がFWで確実に前進を図るものの、BKに展開したところで止められ
るという決め手を欠く状況の中で、東海大は反撃の機会を伺う。28分には流
大陣でのラックでターンオーバーに成功し、オープン展開で流大ゴールに迫っ
たところで流大がオフサイド。まずはPGで3点を返しビハインドを1T1G
で逆転可能な6点に縮める。東海大応援席のボルテージが上がってきた。

そして、33分、東海大はHWL付近でのラインアウト(流大ボール)でステ
ィールに成功。素早いオープン展開の連続でWTB大平がインゴールに走り込
みゴール中央へ。東海大が再々逆転に成功した。ターンオーバーの局面(攻守
両面とも)での東海大選手の動きは素早く無駄がない。殆ど直線的に花火が散
るように所定の位置に向っている。流大FWの動きとは違って意味で壮観。

僅か1点のビハインドとはいえ。逃げ切りモードに入りかけていた流大応援席
に暗雲が漂い始める。ここから流大の死力を尽くした反撃が始まる。インジュ
リータイムに入ったところで、流大は東海大陣22m内の絶好の位置でPKの
チャンスを得る。誰もがPGで逆転を狙うと思った瞬間、湯原主将はタッチキ
ックを指示。スタンドは大きくどよめいた。FWに自信を持つ流大とはいえ、
ミスを犯せばそこでノーサイドのホイッスルが吹かれる可能性が高い、リスキ
ーな選択である。

ペナルティの前に「インジュリータイムは3分です。」のアナウンス。もし、
それが1分なら躊躇なくPGを狙っただろう。PGを成功させても、残り時間
が1分以上あれば、相手キックオフでボールは自陣に来て、反則やミスは許さ
れない。タッチキックに逃れてもリスタートは相手ボール。というような理由
付け(後付け)はいくらでも可能なのだが、湯原主将の頭の中には、「ここは
全員で勝利を勝ち取ろう」という強い気持があったのではないだろうか。PG
を狙わないことが不思議なくらいに不自然に見えなかった。

かくして、東海大が粘りに粘る中、途中出場のニコラス・アッピネルが力強く
インゴールに飛びこんだ。ゴールキックは失敗したが、その瞬間ノーサイドの
笛。電光掲示は43分を指していた。流大は法政戦に続き、またしても思わず
熱いものがこみ上げてくるような闘いを見せてくれた。流大選手に握手を求め
る東海大選手の姿もすがすがしかった。

[試合後の感想]

前半終了の部分でも書いたが、両チームの持ち味が十分に出た好ゲームだった。
東海大に反則が目立ったことと、CTB大石が復帰したばかりということもあ
り流大のBKのコンビネーションに課題が残ったことが、それぞれの反省材料
と思われるが、両チームの今後の闘いに大きな期待を持たせる試合内容だった。
ぜひ、この2チームには(この日で言えば)第二試合を戦い、それがリーグ優
勝を決める試合になる、というところまで成長を遂げて欲しいと思う。
                         (2005年11月28日記)

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