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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2005

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Weekly Report

立正大学 vs 拓殖大学

関東大学ラグビーリーグ戦G 1−2部入替戦(2005/12/11) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 立正大学  :前半: 3  1  2  0 23 |
       :後半: 1  0  1  0  8 |  31 14
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 拓殖大学  :前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 3  0  1  0 17 |  17  9


◎出場メンバー

 立正 : 1.二田 2.小林研 3.豊福 4.ミロ 5.和田 6.佐藤 7.ティウアナ 8.菅原
      9.安部 (10).伊藤直 11.大沼 12.小玉 13.小林孝 14.小松 15.矢端
     (16.古屋 17.伊藤大 18.太田 19.日高 20.松坂 21.山上 22.窪田)

    ○交替  1→16(後21分入替),  9→20(後33分入替),  3→17(後40分入替)


 拓殖 : 1.滝内 2.小松 3.保坂 4.蓼内 5.シオネ 6.浦川 7.渡邊 8.ポフ
      9.二宮 10.加倉井 11.粟國 12.今 13.川野 14.横山健 15.横山伸
     (16.西 17.小澤 18.萩野 19.村山 20.佐藤 21.ロコツイ 22.川畑)

    ○交替  5→19(後 5分入替), 12→21(後 5分入替), 11→22(後24分入替)
         9→20(後40分入替)


 レフリー :岸川剛之(日本協会公認)


◎得点経過

 立正大学    0      5        8     15  20            23        23
                      T        P      G  T             P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 拓殖大学    0                                                  0


 立正大学   23    28                             31            31
              T                              P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                         T        G        T
 拓殖大学    0               5        12       17              17


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 立正:前半 5分 ミロ (T)
      14分 矢端 (PG)
      21分 小林孝(T)、矢端 (G)
      24分 小松 (T)
      38分 矢端 (PG)
    後半 3分 ミロ (T)
      34分 矢端 (PG)

 拓殖:後半14分 横山健(T)
      23分 横山健(T)、横山伸(G)
      32分 横山健(T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

立場は違うが昨シーズンと同じ顔合わせとなった第2試合。もちろん拓殖大が
昨年度のリベンジに成功するかが焦点となるが、両チームの成長を見る上でも
興味深い対戦といえる。残念ながら最下位に終わってしまったが、試合を重ね
る事に実力を積み上げていき、1部で十分に戦えるチームに成長した立正大に
対し、BKによるワイドなオープン展開指向にモデルチェンジを図ったと伝え
られる拓殖大。1部と2部の力関係を知る上でも興味深い対戦である。

拓殖大のメンバー表を見てちょっとびっくりだった。スタメンの中に昨シーズ
ンのレギュラーが殆ど見当たらない。1年生が実に6人を占め、2年生も2人
とフレッシュな顔ぶれとなっている。昨シーズンはCTBだったシオネ・バツ
ベイがLOにコンバートされ、強力なペネトレーターであったシュウベリ・ロ
コツイはリザーブ。入替戦とは思えないような大胆なメンバー構成に見えたの
だが...。

[前半の戦い]

立正大のキックオフで試合開始。序盤から両チームによるオープン展開の応酬
によるボールが大きく動くランニングラグビーが展開される。風上に立った立
正大が優位に試合を進めるのだが、拓殖大も負けていない。とくに拓殖大は気
持がいいくらい徹底してワイドかつオープンに展開してくる。シンプルではあ
るがロングパスを交えた鮮やかな攻撃。1部リーグのパワーはないが、パス回
しなら1部リーグのチームに遜色ないレベル、というか上位に位置するといっ
ても間違いなさそう。底冷えが厳しくて観戦者にとっても厳しいコンディショ
ンなのだが、そんなことは忘れさせてくれる。

なかなか点が入らなかった第1試合とはうってかわって、開始5分に立正大が
あっさり先制する。拓殖大陣ゴール前でのラインアウトのチャンスからモール
で前進しラック。ここからミロがインゴールに飛びこんだ。続く13分、立正
大は拓殖大陣22m手前のラインアウトから右オープンに大きく展開し、ラッ
クから今度は左オープンに展開したところで拓殖大がLOミロに対してハイタ
ックルの反則を犯す。立正大のFB矢端がゴールほぼ正面15mのPGを決め
て立正大のリードは8点に拡がる。

以後も両チームにオープン展開合戦が続くが、1部で揉まれた立正大が風も味
方に付けて優位に試合を進める。20分、立正大はHWL手前の位置でのライ
ンアウトからハイパント攻撃。ボールは拓殖大陣22m内にまで到達するが、
拓殖大選手がフェアーキャッチに失敗(ノックオン)。立正大は拓殖大ゴール
前でのスクラムからオープンに展開してCTB小林孝至がインゴールに飛びこ
む。コンバージョンも成功して立正大はさらに7点を追加して15−0。

続く、23分には立正大は拓殖大陣10m付近のスクラムからBKに展開し、
拓殖大陣ゴールめがけてキックで攻める。拓殖大の選手がインゴールでボール
に追い付きドロップアウトかと思われたが、処理を誤ってノックオン。そこに
立正大のWTB小松が飛び込みボールを押さえてトライ。ゴールキックは失敗
したが立正大は20−0とさらにリードを拡げる。拓殖大にとっては残念な失
点だった。

拓殖大もオープン展開で反撃を試み見せ場を作るのだが、なかなか立正大陣の
22m内に入れない。やはり、拓殖大のフレッシュなメンバーには入替戦は荷
が重いのだろうか。立正大優位の展開はなかなか変わらない。前半も終わりに
近づいた38分、立正大はPGでさらに3点を追加し23−0。終了間際の4
1分、拓殖大は立正大陣22m付近でラインアウトのチャンスを掴む。ここか
らLOのシオネがサイドアタックでゴールをうかがうがあえなくノックオン。
前半は立正大が1部リーグ所属チームの貫禄を示した形となった。

[後半の戦い]

後半は風上の拓殖大。何とかビハインドを縮めるためにも早く得点を挙げたい。
だが、後半も先に点を取ったのは立正大の方だった。3分、拓殖大が自陣ゴー
ル前でのラインアウトからタッチを狙ったキックがノータッチとなり立正大が
カウンターアタックでオープンに展開。左WTB大沼が大きくゲインしラック
からさらに右オープンに展開し、ライン参加したLOミロが豪快にゴールライ
ンを駆け抜けた。コンバージョンは失敗したが、ここで28−0。勝負はこれ
で決まったかに見えた。

拓殖大は5分にCTB今に代えてロコツイを投入。何とか劣勢を挽回すべく反
撃に出る。拓殖大のアタックはあくまでもオープンかつワイド。FWでサイド
を突く場面がないわけでもないが、BKの選手がボールを持っている時間が圧
倒的に長い。拓殖大のパス回しにミスが少ない(パスミスがあってもフォロー
の選手がいてうまく処理してしまうし、ハンドリングエラーが少ない)ことも
あってか、ゲームが途切れることが少ないことにふと気づいてしまった。ラグ
ビーはフットボールではあるがパスを繋ぐスポーツでもあることを再認識。

一方的なリードで立正大に安心感が出てきたこともあるが、拓殖大の果敢なア
タックが実を結び始める。主役は1年生の右WTBの横山健一(山形南高校出
身で178cm,70kg)。とにかく彼がボールを持つと思わずワクワクしてしまう。
スピードがありステップワークも巧みで、ウナギステップで名を馳せた小野澤
選手の有力な後継者になりそうな存在である。FBの横山伸一とは双子?の兄
弟ということもあり、FBライン参加の時のコンビネーションもよい。身体が
できてくればさらに威力を増しそうである。

そして14分、ついに拓殖大が得点を奪う。立正大がHWLより拓殖大陣に入
った位置からのラインアウトでオープンに攻めたところで拓殖大がパスのイン
ターセプトに成功。一度ボールは立正大に奪い返されるものの、拓殖大のWT
B横山健一がサイドインターセプトに成功し約50mを走りきって立正大ゴー
ルに飛びこんだ。さらに23分、拓殖大は立正大陣10/22の位置でのライ
ンアウトからBK展開で粘り強く継続し、立正大陣22m内に達したところで
インゴールに向けて絶妙のゴロパント。このボールを横山健一がゴール手前で
拾ってゴールラインを越えゴール正面へと回り込んでトライ。

横山健一の快走は止まらない。32分、今度は立正大22m付近で得たPKの
チャンスからのクイックリスタートだった。拓殖大は連続攻撃を経てインゴー
ルへ向けてキック。立正大の選手2人がそのボールに追い付きドロップアウト
かと思われたが、ボールが選手達から逃げるような方向に転がり、ちょうど走
り込んできた横山健一が難なくタッチダウンしてこの日3トライ目を挙げる。
残り時間は少ないが9点のビハインドは十分逆転可能圏。スタンドがざわめき
始めた。

しかしながら、このまま失点を重ねるわけにはいかない立正大は、34分にほ
ぼ正面25mの位置で得たPKのチャンスにFB矢端が冷静にGKを決めてリ
ードを14点に拡げる。拓殖大はちょっと厳しくなってきた。35分には拓殖
大は立正大陣10/22の位置でラインアウトのチャンスを得る。オープン攻
撃から期待のロコツイがボールを持って立正大のDF網をぶち破ろうと試みる
が厳しいタックルにあってノックオン。ロコツイがリザーブに入っている理由
が分かったような気がした。拓殖大のアタックはクラッシュを避けて攻撃の流
れを切らないようにする点に特徴がある。立正大が厳しくマークしていたこと
もあるが、ロコツイがボールを持ったところでアタックの流れが途切れてしま
うように感じられた場面が少なからずあった。

結局、拓殖大の怒濤の攻撃を立正大が粘り強いディフェンスで凌ぎきり、その
ままノーサイドとなった。レギュラーシーズンでは「後半に強さを発揮する立
正大」だったが、この日は逆になった。拓殖大が前半に1本でも取れていれば
試合の流れは変わっていたかも知れないが、それができなかったところに立正
大の強さがあったように思われる。第1試合のような息詰まる接戦にはならな
かったが、ボールが大きく動くラグビーを堪能することができた。

[試合後の感想]

入替戦といえばどこか悲壮感が漂う展開になるのが普通で、事実、今まで観た
試合も(大量得点試合は除いて)殆どがそんな展開だった。しかしながら、こ
の2チームによるオープン攻撃の応酬は観ていて最高に楽しかった。とくに拓
殖大のオープンかつワイドな展開への拘りに対しては(やや単調に流れるきら
いはあったが)鮮烈な印象が残った。拓殖大は1、2年生中心ということで、
来シーズンはさらに攻撃にバリエーションが加わったより魅力的なチームへと
成長を遂げることが大いに期待される。むしろ1部への昇格はその後の方がい
いのかも知れないと、勝手なことを言ってみたくもなる。

山梨学院も拓殖大も1部リーグでの戦いを経験したチーム。パワーやスキルも
含めて、しっかりしたチーム戦術を身につけておかないと1部には定着できな
いことをよく知っている。選手個々のパワーでは劣っていてもラグビーの内容
は1部リーグのチームと比べて遜色ない部分が少なからずある。いや、古い体
質を引きずっているいくつかのチームよりもむしろ優っているようにすら感じ
られる。1部リーグの各校にとって、来シーズンは「入替戦回避」が「優勝狙
い」と表裏一体のスローガンになるかも知れない。少なくとも2部も今年以上
の熱闘リーグになることは間違いなさそうである。  (2005年12月14日記)

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