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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2006

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Weekly Report

大東文化大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2006/10/07) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 大東文化大学:前半: 1  1  0  0  7 |
       :後半: 1  1  0  1 10 |  17 13
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 1  0  1  0  8 |
       :後半: 1  1  0  0  7 |  15 11


◎出場メンバー

 大東 : 1.銭場 2.森 3.須藤 4.エモシ 5.大窪 6.林 7.松田 8.森山
      9.寺西 [10].戸嶋 11.泉谷 12.菊池 13.塚元 14.荒川 15.中島
     (16.川村 17.船戸 18.松井 19.島田 20.新川 21.升屋 22.増野)

    ○交替  9→20(後11分入替), 12→21(後26分入替),  8→18(後29分入替)
        15→22(後34分入替)
    ●シンビン 4(前半21分) 退場 18(後半37分)
 

 流経 : 1.松波 2.吉田 3.松波 4.相 5.笠原 6.古崎 7.藤田 8. 鈴木敬
      9.山下 10.アンダーソン 11.斎藤 12.浅利 13.勝俣 14.屋宣 15.森谷
     (16.古宮 17.夏目 18.慎 19.フィフィタ 20.飯笹 21.鈴木直 22.種田)

    ●シンビン 6(後半37分)


 レフリー :小野塚隆(日本協会公認)


◎得点経過

 大東文化大学  0                  7                               7
                                  G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                    T                               P
 流通経済大学  0          5                               8       8


 大東文化大学  7   14                                      17    17
             G                                       D
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                       G            
 流通経済大学  8                             15                  15


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 大東:前半17分 泉谷 (T)、戸嶋 (G)
    後半 2分 森山 (T)、戸嶋 (G)
      42分 戸嶋 (DG)

 流経:前半 9分 塚原 (T)
      41分 山下 (PG)
    後半28分 松波 (T)、山下 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

流通経済大は前節、東海大に大差で敗れている。東海大の緒戦(日大戦)の印
象と流通経済大の昨年度の闘いの印象(たぶん戦力戦術とも大きな変化はない
はず)を重ね合わせて頭の中で何度もシミュレーションを試みるのだが、どう
しても後半ゼロ封され、かつ大量失点を喫してしまったという結果が出てこな
い。東海大が2戦目で急速に調子を上げたのか?、それとも、流通経済大のD
Fが何らかの原因で崩壊してしまったのだろうか? 2戦目の相手はFWが強
力でBKの攻撃力もある大東大。まずは今季の戦力をじっくり見極めたい。

逆に大東大は緒戦となる先週の日大戦に快勝し幸先良いスタートを切った。公
式戦の1戦目ということで堅さがあったのかミスが目立つ内容ではあったが、
BKのオープン攻撃とFWのタテ攻撃を組み合わせたグランドを大きく使うラ
ンニングラグビーは見応えがあった。とくに目を引いたのはFWの軸となって
いたエモシの活躍。バツベイやフィリピーネといったFWの先陣を切るタイプ
とは違ってリンクプレーヤーとして機能していたのが印象的だった。大東大は
昨シーズンまでと少し違ったスタイルのチームに仕上がっていくのだろうか。

心配された雨も上がりピッチの状態も良好。ただ、三陸沖で台風並に発達した
低気圧の影響が残り北西方向から強い風が吹き付ける。晩秋から冬にかけての
熊谷では名物になっている風だが、この時期には珍しい。はたしてピッチの上
でも嵐が吹き荒れるのだろうか?

[前半の戦い]

強風を背に受けた形の流通経済大のキックオフで試合開始。風上に立つ流通経
済大がキック主体で、逆に風下の大東大は自陣からでもキックはあまり使わず
にオープンに展開する形で試合は進む。日大戦同様、本日もエモシが(パワフ
ルな)リンクプレーヤーとして機能し、大東大はオープン展開とタテ攻撃をミ
ックスさせたグランドを広く使う攻撃でビッグゲインを奪う。エモシは相手に
捕まりながらも倒れず、片手パスで器用に味方へボールを繋ぐ。大東大なかな
かいいリズム。

しかしながら、先制したのは風上ながらも守勢に回っていた流通経済大。7分、
大東大陣22m内でもラインアウトのチャンスを得、得意のドライビングモー
ルで大東大ゴールに迫る。一度は大東大のペナルティで攻撃が寸断されるもの
の、続くラインアウトからのモールで大東大の重いFWを押し込みトライ。流
通経済大の伝統工芸品となった感があるドライビングモールは今年も健在だ。
トライ後のコンバージョンキックは失敗したが、開始9分で流通経済大は幸先
良く5点を先制した。これで風上に立った流通経済大が波に乗るか?

流通経済大の中心選手は、今年こそ!の期待がかかるSOのアンダーソン。正
確なキックとSH仕込みのよく伸びるパスは定評のあるところだが、実は闘志
の塊でもある。小さい身体(169cm, 63kg)にも拘わらずしばしばビッグタッ
クルを見せてくれる。この日も13分、両チームを通じて一番大きなエモシを
低いタックルで一発で仕留めて魅せた。果敢にジャッカルに挑んでターンオー
バーを成功させたりと、身体を張るプレーは流通経済大に元気を与える。

だが、攻撃力に勝る大東大は自陣からのカウンターアタックを起点としてゲイ
ンを稼ぐ展開が続き、流通経済大はなかなか攻勢に出られない。15分には自
陣22m内でノックオンを犯しピンチ。続くスクラムから大東大は8→9→6
と繋ぐサイドアタック(ブラインドサイド)が成功し一気に流通経済大ゴール
ライン上へ。この攻撃は惜しくもパイルアップとなるが5mスクラムから再度
8→9→6と繋ぎラストパスを受けた左WTB泉谷がゴール左中間に飛びこん
だ。そして、SO戸嶋の逆風を計算に入れたコンバージョンが見事に決まり、
大東大は逆転に成功した。

続く流通経済大のキックオフがダイレクトタッチとなり、センタースクラム。
大東大の絶妙のグラバーキックが好タッチキックとなるなど、ゲームの流れは
完全に大東大に傾いたかに見えた。しかしながら21分、ラインアウトでの反
則でエモシがシンビンを受け一転大東大のピンチとなる。風下(しかも強風)
に立ち10分間中心選手を欠いた状態で戦わなければならない。大東大にとっ
ては、チャンスが一転してピンチに、と誰もが思った。

だが、しかし、ここから(風下で1人足りない)不利なはずの大東大の怒濤の
攻撃が始まる。エモシの分も頑張ろう、そんな気迫がみなぎったようなアタッ
クが流通経済大陣で繰り広げられる。流通経済大は自陣ゴールを背にひたすら
耐える展開。1人少ないはずの大東大にいつ追加点が入ってもおかしくない状
態となったが、流通経済大の粘り強いディフェンスを打ち破れない。結局、両
チームとも追加点が奪えないまま32分にエモシがピッチに戻ってきた。

36分、流通経済大は大東大キックに対するカウンターアタックから連続攻撃
で大きくゲインし大東大ゴール前へ。ここで流通経済大はまるで大東大のお株
を奪ったかのような細かいパス回しを見せて場内を沸かせた。今度は大東大が
流通経済大のモール攻勢に対してひたすら耐える番。このまま流通経済大が攻
めあぐねて前半が終了するかと思われたが、流通経済大はFB森谷の突破がゴ
ール正面22m内で止められたところでペナルティキックのチャンスを得る。
インジュリータイムに入ったところでPGを選択し成功。僅か1点差ながらも、
流通経済大リードで前半が終了した。

[後半の戦い]

前半のインジュリータイムで流通経済大がリードを奪ったものの、攻撃力に関
してはBKに有力選手を揃える大東大の方が上。後半は大東大の攻撃が一気に
爆発して、流通経済大の粘り強いディフェンスが崩壊。東海大戦の結果からは
そんなシナリオも脳裏をかすめる。強風は止む気配もなく、しかも今度は大東
大が風上に立つ。

流通経済大が風上に向かってキックオフで後半開始。大東大の自陣からのタッ
チキックは追い風に乗ってぐんぐん伸びていき、流通経済大陣22m内まで到
達してしまった。流通経済大ボールラインアウトからのタッチキックは辛うじ
て22mラインを越えた。大東大はここで得たラインアウトからオープンに展
開して連続攻撃で流通経済大陣に奥深く攻め込む。そして、ゴール前ラックか
ら出たボールがCTB塚元からNo.8森山につながり、森山がそのままゴール正
面にトライ。ゴールも成功し後半開始早々2分で大東大が再逆転に成功する。

状況から見ても、いよいよ大東大の怒濤の攻撃の始まりかと思わせるに十分の
状況だった。しかしながら、大東大は反則(エモシがタックルされて倒された
後ボールをリリースせずに再び立ち上がった)やミス(キックがダイレクトタ
ッチになる)などのためリズムに乗れない。流通経済大も前半と同じように粘
り強い組織ディフェンスで大東大の攻撃を止め続ける。とくに圧巻だったのは
10分から20分頃の時間帯における自陣ゴールを背にした状態での防御だっ
た。大東大ボールラインアウトでのスティールなどFWの頑張りが見事。

確かに流通経済大のディフェンスも素晴らしいのだが、11分のSH交代以降
攻めのパターンを変えてきた(ように見えたこと)ことも攻めきれない原因の
ように感じられた。前半はWTBまでボールを展開していたが、CTBからボ
ールを内に返す場面が多くなり、流通経済大にしっかり止められてしまった印
象。FWの近場で勝負してエモシを活かすという意図だったのかも知れないが、
流通経済大にとっては外に展開されない分、的を絞りやすくなり助かったかも
しれない。攻めあぐむ分、大東大の攻撃のリズムに乱れが生じてきた。

そんな両チームの攻防に見入っている内にいつの間にか時計は26分。ここで
流通経済大がワンチャンスを得点に結びつける。大東大陣22m付近のライン
アウトからオープンに展開してボールを細かく繋いでアンダーソンが大東大陣
ゴール前までゲイン。大東大がオフサイドを犯したところで、ボールを持った
右PR松波がクイックで仕掛けてインゴールに到達。ゴールも成功し、流通経
済大が再々逆転に成功した。リードは僅か1点で残りは10数分。ここから両
チーム死力を尽くした「死闘」が始まった。

最小得点差を跳ね返したい大東大の猛攻を流通経済大が必至のディフェンスで
凌ぐという展開。流通経済大はほとんど自陣から出られない絶体絶命の状態に
なるのだが、メンバー交代がないにもかかわらずディフェンスになかなか穴が
開かない。このまま流通経済大が凌ぎきるかというところで死闘に水を差すプ
レーが出た。流通経済大選手が自陣22m付近で故意の反則(オブストラクシ
ョン)を犯したところで大東大選手が報復行為を行い、それぞれシンビンと退
場の処分を受けてしまった。せっかくの好ゲームなのに残念。

両チーム14人ずつとなったものの、これで大東大は万事休したかと思われた。
流通経済大はFWのボールキープで時間を使う戦術に出る。両校の応援団が燃
え上がる中で41分、流通経済大に痛恨のミスが出た。FWから出たボールを
敵陣に向かってキックしたボールが低すぎて大東大選手に当たり自陣に向かっ
て転がる。ここまでは成功していた風下からの低い弾道のキックが最後に仇に
なってしまった形。大東大選手がこのボールに反応して流通経済大陣になだれ
込む。流通経済大選手も死力を尽くしたディフェンスで連続攻撃を凌ぐ。が、
22mライン左サイドのラックから大東大SO戸嶋にボールが渡ったところで
ゴールに向かって一瞬道筋が開けたように見えた。

戸嶋の左足から放たれたドロップキックがクロスバーを越える。両チーム応援
団が固唾を飲んでレフリーの判定を待つ。主審の右手が挙がりゴール成功! 
一瞬の静寂の後、スタンドは大東大応援席からの大歓声と流通経済大応援席か
らの悲鳴で騒然となる。でも、まだ時間はある。だが、流通経済大の最後の攻
撃も実らずノーサイド。もちろん結果論だが、ピッチの上でも嵐が吹き荒れる
こととなった。もちろん、見ているものにとっては感動の嵐。選手達の健闘を
讃えたい。

[試合後の感想]

最後はドラマチックな幕切れとなったが、一番強く印象に残っているのは流通
経済大の粘り強い組織ディフェンス。これに尽きる。課題だったBKのアタッ
クもコンビネーションに磨きがかかれば上がっていくものと思われる。日大と
東海大の試合、大東大と日大の試合、そして今日の試合を観て、何故このチー
ムが東海大に大差に敗れたのかが不思議なくらい。やっぱり、シミュレーショ
ンは不可能だった。

大東大はこの劇的な勝利でさらに調子を上げていくものと思われる。ただ、気
がかりな点が一つある。今日は緒戦(日大戦)に比べてエモシが突出する場面
が多かった。もちろん頑張っていたからだが、逆に他のFWの選手がエモシに
依存するような形になるとチームのバランスが崩れてしまうことも危惧される。
今後、大東大がどのような形で仕上がっていくのかとても楽しみである反面、
ちょっぴり不安も見えた「死闘」だった。
                         (2006年10月7日記)

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