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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2006

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Weekly Report

東海大学 vs 立正大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2006/10/15) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 5  4  0  0 33 |
       :後半: 4  4  0  0 28 |  61 10
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 立正大学  :前半: 1  0  0  1  8 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |  13 10


◎出場メンバー

 東海 : 1.宍戸 2.岸 3.岩本 4.木下 5.杉浦 6.宮本 7.樫本 [8].豊田
      9.辻埜 10.津田 11.起山 12.吉田 13.山内 14.山田 15.森功
     (16.黒木 17.佐藤 18.斉藤 19.ランギ 20.森重 21.森脇 22.新井)

    ○交替  9→20(後 8分入替),  7→19(後15分入替),  1→16(後20分入替)
        11→22(後22分入替),  2→17(後24分入替), 13→21(後29分入替)


 立正 : 1.古屋 2.小林 3.月野 4.ミロ 5.太田 [6].佐藤元 7.イシレリ 8.菅原
      9.安部 10.佐藤浩 11.松原 12.田中 13.松坂 14.小松 15.小玉
     (16.桑原 17.蛭川 18.木村 19.片倉 20.市村 21.窪田 22.アヒオ)

    ○交替 10→21(後 5分入替),  7→18(後15分入替), 13→22(後13分入替)
         2→17(後29分入替),  8→19(後39分入替)


 レフリー :下村大樹(  協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0    7              14      21 26           33    33
                    G              G       G  T            G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           D                                   T
 立正大学    0 3                                   8            8


 東海大学   33    40  47            54       61                61
              G   G             G        G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                            T
 立正大学    8                                  13             13


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半 3分 吉田 (T)、吉田 (G)
      18分 辻埜 (T)、吉田 (G)
      26分 岸  (T)、吉田 (G)
      29分 山田 (T)
      42分 山田 (T)、吉田 (G)
    後半 3分 吉田 (T)、津田 (G)
       7分 起山 (T)、津田 (G)
      21分 木下 (T)、吉田 (G)
      30分 森脇 (T)、吉田 (G)

 立正:前半 0分 小玉 (DG)
      36分 イシレリ(T)
    後半33分 窪田 (T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

東海大の試合を観るのは緒戦(日大戦)に次いで2試合目。最終的にはダブル
スコアの圧勝となった試合だが、関東学院と優勝争いをするには少し?が付く
内容だった。しかしながら、東海大は2戦目の流通経済大戦に圧倒的な勝利を
収めている。その1週間後に流通経済大の試合(対大東大)を観たわけだが、
1戦目の印象からは「流通経済大に圧勝」のイメージが浮かんでこない。日大
のその後の戦い振りを観てもしかり。ここは、やはり直に東海大のその後の仕
上がり状態を確認するしかない。出場メンバーも日大戦と殆ど変わらないおそ
らくはベストの陣容。

対する立正大は、ここまで関東学院と法政を相手に殆ど自分たちがやりたいこ
とをやらせてもらっていない。リーグ戦チームのパワーと巧さと速さは過去2
試合で十分に経験することができたので、この第3戦目こそは思う存分暴れて
欲しい。メンバー表を眺めてみると、先発SOに初めて2年生の佐藤浩一が起
用され、過去2戦の先発SOだった小玉はFBの位置にいる。ここまでSOの
ハイパントが中心だった攻撃パターンに変化が見られるのだろうか? それは
ともかくとしても、今日こそは最初から積極的に攻めて欲しいという期待を込
めてキックオフを待った。

[前半の戦い]

立正大のキックオフで試合開始。東海大選手がノックオンしたボールを拾った
立正大がチャンスを掴み東海大陣に攻め込む。そして(本日はFBの)小玉が
22m手前(右中間)の位置から何とドロップゴールを狙う。キックは弧を描
いて見事にクロスバーを超え、開始0分にして立正大が3点を先制する。敵も
スタンドも、そしておそらくは味方も唖然呆然の得点シーンだった。この瞬間、
私的期待であった「今日こそ最初から積極的に...」の50%が消失した。

確かに得点には違いないが、先制パンチというにはちょっと軽すぎる。もちろ
ん東海大にとっては痛くもかゆくもない。2度目のキックオフから東海大の怒
濤の高速展開ラグビーが満開となった。FWのセットから出たボールが素早く
きれいにオープンに展開されWTBへ。そしてそこへタイミング良くフォロー
したFW第3列の選手に渡る。No.8の豊田、両FLの宮本、樫本は走力に加え
身体の強さを活かしてボールを確実に前に進めラックからさらにBKへ展開。
この繰り返しで、ボールが大きく左右に動きながらあっと言う間に立正大陣の
22mまで到達する。

立正大は確か1週間前に法政の高速展開ラグビーの洗礼を受けたはずだった。
しかしながら、この日はさらにプレーの正確さとFWとBKの連携といった組
織的な厚みまで加わっている。あくまでも1週間前の法政との比較だが、現段
階ではプレーの精度と力強さの点で(同じ高速展開でも)東海大の方に軍配を
挙げたくなる。毎試合ごとに「新たな敵」と戦わなければならない立正大の選
手達にはちょっと気の毒な気もするが、これが勝負の現実。チャレンジ精神で
戦っていくしかない。

東海大の胸のすくようなラグビーに見とれてしまい前置きが長くなってしまっ
た。時計を開始2分の段階に戻す。東海大の逆襲は早くも実を結ぶ。立正大陣
10mライン手前の位置のラインアウトから東海大は素早くオープンに展開。
ここでパスミスが起こるがCTB吉田がこのボールをうまく拾ってタテをつき、
立正大のディフェンダー達を振り切りながら50m近くを走りきりトライ。結
果オーライではあるが、このあたりに今シーズンの東海大の抜け目なさも感じ
られる。吉田のサイズを活かした突破も東海大のアタックの魅力のひとつ。

その後も東海大のグランドを大きく使ったアタックが続く。ミスでなかなか点
に結びつかないものの、積極的なプレーで起こったミスなのであまり気になら
ない。先にも書いたが、FW3列の3人の運動量と接点での強さは特筆もの。
相手に捕まってもなかなか倒れずボールを確実に前に運ぶ。BK陣も必ず強力
なフォローが付いているという信頼の元にプレーができる。もしかしたら、こ
のスタイルが東海大の目指している継続の形なのかも知れない。

立正大にもチャンスがないわけではない。FB小松のキック力を活かして、東
海大がペナルティを犯した場面では、東海大陣でのラインアウトのチャンスが
しばしば訪れる。ここからモールを形成して押し込むのだが、東海大FWの抵
抗にあってやむなくBKに展開。が、WTBが東海大ディフェンダーに捕まっ
たところでは常に東海大選手の方が数的優位に立っていて、あえなくターンオ
ーバーで攻撃権を渡してしまう苦しい展開。15分にはFB小松が東海大ゴー
ルまであと一歩と言うところまで迫るもののノックオンで得点機を逸した。

直後の18分、東海大は自陣22m内でPKから速攻を仕掛ける。WTB起山
が一気にHWL付近までゲインしボールはフォローしたFL樫本へ。ここで一
旦ラックとなるものの、再び起山がボールを持ってさらに前進。そして再びパ
スを受けた樫本が立正陣ゴール前まで前進してSH辻埜にラストパスを送った。
自陣からでも積極的に回していくのがこの日の東海大のテーマのひとつだった
が、全員でボールを繋いでいこうという意思統一と集中力が素晴らしい。

東海大のアタックはさらに続く。26分には立正大陣22m内での好チャージ
によって得たチャンスを活かして、スクラム起点のオープン攻撃からHOの岸
がトライ。29分にはキックオフ直後のPKのチャンスから速攻を仕掛けてオ
ープンに展開。最後はリーグ戦屈指のトライゲッターへと成長を遂げつつある
2年生のWTB山田がインゴールに飛びこんだ。走力だけでなく得点感覚(嗅
覚)も併せ持つ山田は、ボールを持つとスタンドから(何かやってくれそうだ
と)期待の声が上がる選手になってきている。

得点が26−3の東海大リードとなったところで、しばらくは立正大の時間帯
となる。ここまでの攻撃はSOが変わってもハイパントが中心。それがことご
とく走力に自信を持つ東海大のバック3にカウンターアタックのチャンスを与
えることになる。そんな立正大の攻撃にもスクラムからの8→9を試みるなど
徐々に工夫が見られるようになってきた。そして、ようやく35分に立正大は
待望の追加点を挙げる。東海大陣ゴール前のラインアウトからのモールは押し
切れないものの、ラックからFLイシレリがパワーを活かしてトライを奪った。
直後のキックオフでは、東海大のミスに乗じて立正大がボールを東海大陣に蹴
りこみ、東海大辛くもドロップアウトの場面も。立正大押せ押せムード。

だが、前半終了間際に東海大がそんな立正大に傾きかけたムードを断ち切るよ
うな鮮やかな反撃を見せる。発端は立正大が東海大陣22m内に蹴りこんだハ
イパント。東海大は自陣深くから連続攻撃を仕掛けNo.8豊田が立正大ゴールに
迫ったところでWTB山田にラストパスを送った。ここで時計は42分。前半
の締め括りはFWとBKが連携してグランドを大きく使ってボールを繋ぐ東海
大らしさが表れた豪快なトライだった。

[後半の戦い]

後半になっても東海大は攻勢を緩めない。2分の立正大陣22m内でのマイボ
ールラインアウトのチャンスはゴール前でターンオーバーがあり一旦途切れる
が、立正大にもミスがあり再び東海大のチャンスになる。東海大が立正大DF
のウラを狙って蹴ったボックスキックをWTB山田がゴール前で確保しインゴ
ールへ。さらに7分には今度はWTB起山が山田に負けじと左サイドを快走し
て畳みかける。これで東海大のリードは39点となり勝負ありとなった。

立正大もなんとか局面の打開を図るべく次々とメンバーチェンジを行う。5分
にはSO佐藤がベンチに下がりFB小玉がSOに復帰。そして13分にはアヒ
オが登場しFBの位置に入った。堀越監督の両親が息子と間違えたことで話題
になった選手だが、WTBとFBの他にSOもこなすユーティリティプレーヤ
ーとしても期待を集めている選手。実際にピッチに立ってみても走力に非凡な
ものがあることはすぐに分かった。だが、それ以上にチームメイトに声をかけ
るなどムードメーカーとしてもいいキャラクターを持っている。このアヒオを
活かす形でSO小玉がボールをオープンに展開する形がようやく出てきた。

7分の東海大の得点の後、しばらくは両チームが攻め合う形で時計が進む。1
2分にはミロが東海大ゴール前ラインアウトのチャンスから東海大ゴールに迫
る惜しい場面も。だが、20分、東海大がこの日のFWの働き(とにかくよく
走る!)を象徴するかのようなトライで追加点を奪う。立正大陣での相手ボー
ルスクラムをホイールして得たチャンスを起点に連続アタック。数次の攻撃を
経てゴール前でラックになったところでラインに並んでいるのはBKではなく
FW1、2列の選手達。ボールが3→4と繋がりLO木下がWTBのようなフ
ィニッシュを決めた。連続攻撃を得意とする関東学院がよく見せる形だが、も
ちろんFW1,2列の選手達が偶然にそこに居るわけではない。東海大の確か
な成長を感じさせるシーンだった。

30分にも東海大が得点を奪いリードはさらに拡がるが、33分に立正大は一
矢報いる。東海大陣でのスクラムからオープンに展開し、SO→CTB→SO
とボールが繋がり、FBアヒオを経て後半からWTBの位置に入っていた窪田
がインゴールに飛びこんだ。ようやく立正大の積極的なアタックが実を結んだ
形。ちょっと回り道だったような気もするが、ようやく小玉がSOとしての期
待に応えてくれた。試合はこのまま両チーム無得点のまま終了。東海大の仕上
がりの良さばかりが目立つ試合内容だったが、立正大にも一筋の光明が差した
ようにも見えた。

[試合後の感想]

試合前は流通経済大戦の圧勝が今一歩信じ切れなかった東海大だったが、この
試合を観てその強さは本物であることが確信できた。どうやら「高速だが攻め
のパターンが単調」の東海大ラグビーに対する私的イメージを撤回しなければ
ならないときが来たようだ。これが東海大の形と結論づけるのは早いかも知れ
ないが、FW第3列の展開力と接点での粘りが東海大のアタックにいいアクセ
ント(タメ)を与えているように感じられた。今後の対戦相手のことを考える
と仕上がりが早過ぎるような気がしないでもないが、形がしっかりできている
ので心配はなさそう。試合会場で選手達を見守り続けている「目指せ!大学日
本一」の横断幕が、試合後は少し大きくなっているように見えた。

立正大は前年度最下位チームだから仕方ないとはいえ、緒戦で既に完成された
チーム、2戦目で急速に調子を上げたチーム、3戦目でほぼ完成したチームに
にそれぞれあたってしまったのが残念。次はなかなか調子が上がってこないチ
ームが相手なのでチャンス到来と言えそうだが、もちろん現状のままでは厳し
い。大東大はエモシを中心とした大型FWのチームなので先発でミロとイシレ
リを起用せざるを得ないが、思い切ってアヒオを前半から起用してみるのも面
白いのではないかと思う。部外者の勝手な意見ではあるが、チームを活性化す
る力を持った選手を使わない手はないと思う。
                         (2006年10月16日記)

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