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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2006

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Weekly Report

関東学院大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2006/10/22) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 関東学院大学:前半: 2  0  0  0 10 |
       :後半: 3  2  0  0 19 |  29 14
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 0  0  1  0  3 |   3 16


◎出場メンバー

 関東 : 1.西垣 2.田中 3.原田 4.清水 5.佐伯 6.梅川 7.竹山 8.土佐
      [9].吉田 10.藤井 11.中園 12.高山 13.櫻谷 14.重見 15.山下祐
     (16.高坂 17.設楽 18.村下 19.草下 20.木村 21.朝見 22.堤)

    ○交替  6→19(後11分入替), 12→21(後20分入替)


 流経 : 1.金城 2.吉田 3.松波 4.西川 5.笠原 6.鈴木敬 7.古崎 8.フィフィタ
      9.山下 10.アンダーソン 11.種田 12.浅利 13.勝俣 14.仲程 15.森谷
     (16.夏目 17.古宮 18.相 19.藤田 20.飯笹 21.鈴木直 22.屋宣)

    ○交替  8→18(後26分入替),  7→19(後31分入替),  9→20(後33分入替)


 レフリー :原田隆司(日本協会公認)


◎得点経過

 関東学院大学  0                   5                  10         10
                                   T                  T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
              
 流通経済大学  0 


 関東学院大学 10                       17      22         29     29
                                 G       T          G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                      P
 流通経済大学  0            3                                     3


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 関東:前半18分 重見 (T)
      37分 中園 (T)
    後半22分 山下 (T)、藤井 (G)
      12分 土佐 (T)、藤井 (G)
      30分 田中 (T)
      41分 中園 (T)、藤井 (G)

 流経:後半11分 山下 (PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

流通経済大はここまで3連敗中。勝敗表を見る限りは元気がないように見える。
ただ、インジュリータイムに逆転されて惜しくも勝利を逃した大東大戦を観た
限りでは、けしてチーム状態が悪いようには見えない。FWは今年もまとまり
がよく、ドライビングモールは対戦相手の脅威となっている。堅守の関東学院
が相手とはいえ、そろそろBKラインで勝負できるラグビーを完成させたいと
ころ。メンバー表を眺めてみると、スタメンに楽しみな選手の名前があった。
No.8のフィフィタがその人。191cm、112kgの巨漢選手で流通経済大
の新しい核弾頭として暴れ回ることができるだろうか。元気にピッチに登場し
た選手達の様子を見た感じでは、連敗のショックを引きずってはいないようだ。

一方の関東学院はここまで3連勝で順調そのものである。しかも、まだ対戦相
手に一つのトライも許していない。失点はペナルティゴール3本による9点の
みで、過去2試合は無失点。鉄壁のディフェンスに加え、最後まで運動量が落
ちないフィットネスレベルの高さはさすがと言える。本日はレギュラーではロ
ック陣が欠場しているもののほぼベストの布陣。東海大や法政の確実に調子を
上げている中で、激戦が予想される終盤戦を前にして、さらに戦術に磨きをか
けることができるだろうか。

スタンドには第1試合(対抗戦グループの早稲田対日体大)を観戦した観客が
まだかなり残っている。まずは、今年も早稲田の強力なライバルとなる関東学
院のお手並み拝見といった所だろうか。お隣の神宮球場では6大学野球。10
0点ゲームの余韻もあって、どこか安堵感も漂う雰囲気の中でのキックオフと
なった。

[前半の戦い]

キックオフは関東学院。流通経済大陣内へ深めに蹴りこまれたボールがバウン
ドして22mラインを越え、タッチライン際へ転がるところで流通経済大にノ
ックオン。開始早々にして流通経済大にピンチが訪れる。関東学院はラインア
ウトからオープンに展開するが、センタークラッシュした場所でオーバー・ザ
・トップの反則。流通経済大は事なきを得る。

ここからしばらくは流通経済大が関東学院陣内でゲームを進める。3分にはゴ
ールやや左の22mライン手前の位置でPKのチャンス。流通経済大はここは
狙わずにタッチキックからゴール前ラインアウトを選択。得意のドライビング
モールに先制点を託す。しかしながら、関東学院がモールをがっちり受け止め
て流通経済大の前進を許さない。流通経済大はオープンに展開したところでノ
ックオンを犯し、チャンスを潰す。

実は両チームのモール対決はこの試合の私的見どころの一つでもあった。おそ
らく流通経済大の(FWのまとまりとコンビネーションで押す)ドライビング
モールは大学ではトップレベルのものだと思うが、今シーズンは関東学院もド
ライブに磨きをかけてきている。パワーに巧みなドライブ技術が加われば鬼に
金棒と言うわけで、第1ラウンドは関東学院に軍配が上がった。

さて、今シーズンの関東学院の武器は何と言ってもWTB中園の抜群の突破力。
早速6分に自陣22m内のスクラムからの連続攻撃で中園が大きくゲインする
場面が見られた。ボールは一気に流通経済大の22m内まで運ばれ流通経済大
がオフサイド。あっという間に再び流通経済大はピンチを迎えることになった。
しかしながら、ここでもラインアウトで関東学院に反則があり、流通経済大は
事なきを得る。双方とも接点でFWが激しいボールの獲得合戦を演じているこ
ともありオフサイドなどの反則が多く、チャンスを掴みながらもなかなか得点
できない状況が続く。

ようやく18分、電光計時板の得点が動いた。流通経済大陣ゴール前のスクラ
ムから関東学院のNo.8土佐がブラインドサイドを突きゴール前でラック。関東
学院はさらにブラインドを攻め、ボールを受けた左WTB重見がゴール左隅に
飛びこんだ。山下のGKは外れたが関東学院は5点を先制。これで関東学院が
ペースを掴むかと思われたが、またしばらくは得点板が動かない展開となった。

21分、流通経済大は関東学院ゴールまであと一歩まで迫る。関東学院陣22
mライン付近での相手ボールラインアウトを奪取に成功しオープンに展開。S
Oアンダーソンからパスを受けたCTB浅利がゲインしてゴール前で倒された
ところでノット・リリースの反則。23分の関東学院陣22m内のラインアウ
ト(今度はマイボール)のチャンスはモールでゴール前まで迫るもののオフサ
イド。対戦チームにとって関東学院のゴールは本当に遠い。

関東学院はロックに長身選手を欠いているためかラインアウトが不調で、一方
の流通経済大は肝心なところでのノックオンを犯すといった具合にお互いに波
に乗れない。もちろん、ディフェンスがしっかりしているため、ミスが誘発さ
れるという面も否定できない。とくに流通経済大のプレッシャーが厳しいため、
関東学院にしては珍しくBKラインが落ち着かない。流通経済大がこの日見せ
た常に3人くらいの人数で組織的にプレスするディフェンスは徹底している。

お互いにゴール前まで迫りながらも決め手を欠く展開の中で時計はどんどん進
む。37分、関東学院はワンチャンスを活かして追加点を奪う。流通経済大の
激しいプレッシャーの中、オープンに展開してもなかなかゲインできない状況
の中、SO藤井が流通経済大陣内で苦し紛れにブラインドサイド(右サイド)
にグラバーキック。と思った瞬間、やや動きが緩慢になった流通経済大選手達
の背後から素晴らしいスピードで(まさにブラインドサイド?)でWTBの中
園が表れ、あっと言う間に3人くらい居た流通経済大選手達を抜き去った。中
園はそのままタイミング良くインゴールに駈け込み転がり込んだボールを押さ
えてトライに成功。一瞬の隙を見逃さない藤井の好判断と中園の好反応の合わ
せ技による見事な1本だった。

ほどなくして前半が終了。関東学院がリードしているとはいえ得点は僅か10
点。第1試合を観戦したファンの間からは関東学院に対して物足りなさを感じ
た、といったような声も聞かれる。が、果たしてそうなのだろうか。「答えは
後半に出ますよ。」と言いたい気持を抑えて後半のキックオフを待つうちに、
目の前の試合よりも神宮球場の方を気にしていたファンの人たちは少しずつ消
えていった。これで後半は100%ゲームに集中できそうである。

[後半の戦い]

後半開始早々、関東学院が流通経済大のミスをきっかけにビッグチャンスを掴
む。流通経済大が自陣ゴール前ラインアウトからタッチを狙ったキックがノー
タッチとなり関東学院がカウンターアタック。ボールがオープンに展開されて
切り札のWTB中園に渡り、中園がそのまま俊足を飛ばしてゴールに迫る。流
通経済大のピンチと誰もが思ったが、流通経済大の左WTB仲程が渾身のタッ
クルを決めて中園をタッチライン外に押し出す。このプレーは流通経済大を大
いに元気づけただけでなく、仲程にも大きな自信を与えたようだ。

後半も前半の流れを引きずる形で双方のせめぎ合いが続く。関東学院は相変わ
らずラインアウトが不調で、流通経済大はここ一番でのノックオンとお互いに
ミスが出るものの、試合の緊迫感は途切れることがない。そして11分、オー
プン展開による連続攻撃をきっかけに流通経済大に待望の得点が生まれる。流
通経済大が関東学院陣の22m内までボールを進めたところで、関東学院がオ
フサイドの反則。ゴール正面やや左約20mの位置からのPKをSH山下が慎
重に決め、後半11分で流通経済大のビハインドは1トライ1ゴールで同点と
なる7点に縮まった。

直後のキックオフで、流通経済大の左WTB仲程が今度はアタックで魅せてく
れた。流通経済大が自陣22m付近で確保したボールを受けて仲程は右タッチ
ライン沿いを快走し一気に関東学院陣内10m付近までゲイン。ここでポイン
トができて流通経済大はさらにオープンに展開しSOアンダーソンが絶妙のキ
ック。結果的にタッチキックになってしまったのがちょっと残念だった。

後半の早い段階で追加点が欲しい関東学院も、16分に流通経済大のミスをき
っかけにまたまたビッグチャンスを掴む。流通経済大が自陣10m/22mのマイボ
ールスクラムからFB森谷がショートサイドを突き、左タッチライン沿いでラ
ック。流通経済大はここから出たボールをタッチに蹴り出さずにパスをしたと
ころで関東学院がタックルからのターンオーバーに成功。オープン展開からC
TB櫻谷がゴールまであと少しに迫ったところでノックオンを犯し、チャンス
を逃す。「どうもうまく行かない。」、そんな表情が関東学院の選手達から伺
われた。

両チームの激しい攻防に見とれているうちに、いつの間にか時計は20分を過
ぎていた。実は、力のあるチームはここからが強い。体力的にきつくなったと
ころで技術や集中力の差が顕著に表れるのはこの時間帯から、ということを最
近とみに感じるようになってきている。はたして22分、流通経済大陣22m
ライン手前のスクラムから関東学院はオープンに展開し、ライン参加したFB
山下がディフェンダーを巧くかわしながらインゴールまで到達した。コンバー
ジョンも成功し関東学院のリードは14点に拡がった。まだ時間があるとはい
え流通経済大にとっては重い7点となった。

ラインアウトの不調だけでなく、流通経済大の巧みなドライビングモールに苦
しめられた関東学院FW。だったが、終盤のこの時間帯からがスタミナ軍団の
本領発揮となる。30分には流通経済大陣22mラインよりHWL側でのライ
ンアウトからモールを形成してゴールまで一直線。モール巧者の流通経済大と
いえども勢いのついてしまったモールは止められない。このトライは流通経済
大に大きなダメージを与えたことは間違いなし。

だが、何とか関東学院からトライをもぎ取りたい流通経済大は最後の力を振り
絞って反撃する。35分には関東学院のゴール前でラインアウトの絶好のチャ
ンスを掴むが惜しくもモールを作る前にノックオン。その直後の関東学院ボー
ル5mスクラムで関東学院にノックオンがあり再びチャンスが訪れるものの、
スクラムを押し込まれて流通経済大はオフサイドの反則を犯してしまう。ほぼ
勝利を確実にした段階でも、関東学院のFWの集中力が切れることはない。

そして終了間際の41分。関東学院は自陣10m付近でのセンタースクラムか
ら左オープンに展開しWTB中園がショートパントを上げる。これを自らキャ
ッチするとディフェンダーをかわしながら俊足を飛ばしてゴールまで到達した。
アスリートよりもアーティストと呼びたくなるような見事なトライで激戦に終
止符が打たれた。

[試合後の感想]

ここまで3連敗中の流通経済大に対して勝つには勝ったものの今季最少得点。
(100点を取った早稲田と比較して)関東学院は大丈夫だろうか?との声も
聞かれた。翌日のスポーツ紙にもそんな評が載っていた。だが、関東学院が流
通経済大の組織的なディフェンスに苦しめられながらも確実に得点を挙げ、か
つ無失点でこの試合を戦い抜いたことは評価されていいと思う。少なくとも後
半20分以降の強さを見る限り、関東学院は心配ないというのがこの試合を観
ての感想である。

そして、流通経済大。関東学院から本当の強さを引き出せるチームがなかなか
ない中での大健闘はとても3連敗中のチームとは思えない。東海大にリードを
許している格好ではあるが、このチームも着実に完成へと近づきつつあるよう
に見える。1部昇格から「苦節10年」といってもいいだろう。プレビューで
「オープン展開に期待!」と書いてみたものの、本当にここまでBKに展開し
てくる(できた、と言った方が正しいかも知れない)とは思わなかった。今日
のアタックなら後半の爆発も十分に期待できる。私が過去に観てきたこのチー
ムの試合の中でも、このゲームはより強い印象を残すものになるに違いない。
熱い想いを胸に家路についた。           (2006年10月24日記)

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