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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2006

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Weekly Report

東海大学 vs 中央大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2006/10/28) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 4  3  1  0 29 |
       :後半: 3  3  0  0 21 |  50 13
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 中央大学  :前半: 0  0  1  0  3 |
       :後半: 0  0  2  0  6 |   9 12


◎出場メンバー

 東海 : 1.宍戸 2.岸 3.岩本 4.木下 5.杉浦 6.宮本 7.樫本 [8].豊田
      9.辻埜 10.津田 11.起山 12.吉田 13.山内 14.新井 15.森(功)
     (16.中村 17.佐藤 18.ランギ 19.荒木 20.森(重) 21.森脇 22.松本)

    ○交替  6→19(後17分入替),  3→16(後20分入替), 13→21(後28分入替)
         7→18(後32分入替), 14→22(後39分入替)


 中央 : 1.麻生 2.武田 3.藤田 4.小笠原 5.小山田 6.植原 7.松本 8.青木
      9.古賀 10.佐藤(甚) 11.小俣 12.馬場 [13].有田 14.長友 15.越村
     (16.和久 17.岡島 18.岡 19.沖 20.片渕 21.三原 22.新井)

    ○交替  9→20(後16分交代),  7→19(後16分入替),  4→18(後37分入替)
         2→17(後38分入替)


 レフリー :渡辺敏行(日本協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0         7        12    19 26            29      29
                         G        T      G G             P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                 P
 中央大学    0                       3                          3


 東海大学   29                           36       43   50      50
                                     G        G    G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
            P      P
 中央大学    3  6      9                                        9


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半 8分 豊田 (T)、吉田 (G)
      17分 杉浦 (T)
      24分 豊田 (T)、吉田 (G)
      26分 新井 (T)、吉田 (G)
      40分 吉田 (PG)
    後半26分 豊田 (T)、吉田 (G)
      35分 起山 (T)、吉田 (G)
      40分 森(功)(T)、吉田 (G)

 中央:前半22分 越村 (PG)
    後半 1分 越村 (PG)
       8分 越村 (PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

東海大は3連勝でしかも3試合とも40点以上取っての圧勝とここまで絶好調。
だが、序盤戦で飛ばし過ぎなのでは?というのはどうも取り越し苦労のようで
ある。しっかり地に足が付いたというか、整備された組織の中で個々の判断と
強さが活きるラグビーができている。関東学院とはまた違った継続ラグビーが
完成に近づきつつあるようにも見える。メンバー表を眺めるとエースへと成長
を遂げつつある右WTB山田の欠場が気になるが不動のベストメンバー。来週
に迫った関東学院との決戦に向けて着々と体制は整ってきているようである。

一方の中央大はここまで3連敗。数字の上からは元気がないように見えるが、
前節の大東大戦では2点差の惜敗。けして仕上がりは悪くなく、プレースキッ
カーが居たらと思わせる内容だった。本日は心気一新を期しては、白のセカン
ドジャージで登場。LO眞壁の欠場は残念だが、FBに越村が復帰したのは頼
もしい。CTBの有田とWTBの長友に対する後方支援体制ができたところで
やはり鍵になるのはFW。接点から活きたボールを出すことができれば得点の
チャンスは増えるはずである。

[前半の戦い]

東海大のキックオフで試合開始。序盤から東海大のオープン展開を基調とした
継続ラグビーが満開となる。接点での球出しがよく、ボールが大きく動く。し
かしながら、中央大もディフェンスがよく機能しておりノックオンなど東海大
のミスを誘う。4分には中央大もHWL付近のスクラムからブラインドサイド
(右サイド)を攻めて大きくゲインしたところでオープンに展開し、東海大陣
に攻め込むが惜しくもスローフォワード。今日の中央はセットスクラムが安定
している。

逆に東海大も5分にHWL付近で得たFKのチャンスからの連続攻撃で中央大
ゴールに迫る。ここで中央大がオフサイドの反則を犯し、(中央大陣22m内
のゴール正面でPGを狙える位置だが)東海大はスクラムを選択。ここからい
ったん右オープンを攻めた後、左オープンに展開して連続攻撃。最後はNo.8の
豊田がゴール中央に飛びこみ、東海大が幸先良く先制点を奪った。東海大の3
本の矢とも言えるFW第3列は今日も元気。

東海大の攻勢は続く。9分には自陣からのカウンターアタックでFB吉田が大
きくゲインし東海大ゴールに迫る。が、あと少しというところで中央大選手の
タックルが決まりボールはタッチを割った。直後のラインアウトで中央大のミ
スがあり、東海大がモールを形成してゴールに向かって前進。ここで東海大に
オブストラクションの反則があり、中央大は事なきを得る。前節の大東大戦で
はことごとくラインアウトで相手ボールを奪取して見せた中央大だったが、今
日はラインアウトでのスローイングやコンビのミスが目立つ。

その後も東海大の時間は続くものの、東海大にも決め所でミスが出て追加点が
なかなか奪えない。東海大が中央大陣でゲームを優位に進めるものの、決め手
を欠く中で迎えた15分。東海大は中央大陣ゴール前ラインアウトからモール
で前進しオープンに展開したところで中央大にオーバー・ザ・トップの反則。
今度はラインアウトからモールを作って東海大ゴールへ迫る。東海大のFWが
塊となって前進し、最後はLOの杉浦がグラウンディングに成功した。17分
の段階で東海大のリードは12点に拡がる。

中央大も反撃。キックオフから東海大FWに向かってプレスをかけ、ノックオ
ンを誘う。中央大はその直後のスクラムを起点とする連続攻撃でオープンに展
開したところで東海大がノット・ロール・アウェイの反則。中央大のFB越村
がゴール正面約30mのPGを落ち着いて決め、これで中央大のビハインドは
9点に縮まる。前節の大東大戦はゴールキックに泣いただけに、中央大ファン
にとっては、まずは一安心といったところだろうか。

しかし、それも束の間。22分、東海大は中央大陣10m/22mの位置からのライ
ンアウトを起点とした攻撃でさらに追加点を奪う。ラインアウトからボールが
出た段階で意表をつくゴール前へのハイパント攻撃、しかもそのボールは中央
大選手が確保してフェアーキャッチかと思われた。しかしながら、東海大選手
がゴール前でジャンプ一番、味方に向けてタップしたボールがパスのような形
でCTB山内に渡り、山内はそのまま中央大ゴールに迫る。ここは中央大がタ
ックルでいったんは止めることに成功するもの、ゴール前でのラックから豊田
がサイドを突いてこの日の2トライ目を決める。

東海大は畳みかける。中央大選手が自陣からのカウンターアタックで右サイド
タッチライン際を快走し東海大陣のゴールラインに向けてグラバーキック。こ
のボールが後ろに抜ければビッグチャンスだったが、東海大選手が際どいとこ
ろで足でトラップに成功。そのままカウンターアタックでオープンに展開し、
最後は右WTBの新井が中央大ゴールに飛びこんだ。この立て続けのトライに
より東海大のリードは23点に拡がる。それにしても、東海大のFWとBKの
連携による継続攻撃は見応えがある。ボールキャリアがタックルで倒されても、
計ったように同じタイミングでラックからボールが出てくるのが強み。選手個
々のボディコントロールの良さもあるが、相当練習を積んでいるに違いない。

ここで東海大がそのまま突っ走るかと思われたが、中央大にもエンジンが掛か
り始める。前半の終盤は東海大陣内でゲームが進められることが多くなった。
32分には東海大陣22m内のPKのチャンスからタップキックでゴール前に
迫った。残念ながらラックからこぼれたボールを東海大選手に拾われてしまい
チャンスを潰す。35分には東海大陣10m付近ラインアウトからオープンに
展開してWTBの長友が東海大ゴールに迫るが惜しくもノックオン。中央大フ
ァンから思わずため息が漏れる。

中央大がペースを掴む中でようやく38分、東海大が逆襲を見せる。スクラム
を起点とした連続攻撃で中央大22mラインの手前まで前進したところで、中
央大がオフサイドの反則。FLの宮本や左PRの岩本らが確実にポイントを作
りボールが前に進む。ここは前半終了間際と言うこともあって、FB吉田がゴ
ールほぼ正面、距離にして約23mのPGを確実に決めた。中央大のアタック
も見応えがあったが、プレーの速さで上回る東海大が着実に点差を広げていっ
た前半の戦いだった。

[後半の戦い]

後半開始早々、中央大はキックオフで東海大にプレッシャーをかけ、左WTB
小俣がチャージに成功。小俣はそのボールを拾いそのままインゴールに駈け込
めばトライだったのだが惜しくもボールをこぼしてしまう。しかし、このプレ
ーは中央大を大いに元気づける。その直後に掴んだPKのチャンスでFB越村
が右中間24mのPGを確実に決め、まずは3点を返す。

中央大は3分に自陣で犯した反則から東海大の連続攻撃を受けるものの、これ
を徹底したディフェンスで凌ぐ。この辺りから試合の流れは徐々に中央大の方
に傾き始め、東海大に反則が目立つようになってきた。そして8分、今度はや
や遠い位置ながら、中央大の越村が正面約38mのPGを決め中央大のビハイ
ンドは20点に縮まった。本日は越村が居ることもあり、相手陣でPKのチャ
ンスを得た場合は確実に狙っていく作戦だったのかも知れない。東海大を心理
的に追い詰めて行くには悪くない作戦と思えた。20点差なら3トライ+3ゴ
ールで逆転できる。東海大にとってはちょっといやな感じ。

この3点で中央大の意気はさらに上がっていく。15人で気持を一つにして前
に出るという(過去に何度か観ている)「中央大の恐怖」の記憶が蘇ってきた。
この日とくに素晴らしい出来だったのが右WTBの長友。タックルされても倒
れずにどんどん前に出て行き、このプレーが中央大の選手達の闘志をヒートア
ップさせていく。

ここでゲームは完全に膠着状態に陥った。東海大もFWとBKの連携による連
続攻撃で中央大陣に攻め込むが、攻撃に詰まってパスミスをしたところですか
さず中央大がカウンターアタック。接点では激しいボールの争奪戦。この繰り
返しでゲームもなかなか途切れず、時計はどんどん進んでいく。そして、15
分、もしかしたらこのゲームの分かれ目となったかも知れない局面が訪れた。
中央大の猛攻に東海大が自陣ゴール前ほぼ正面の位置でペナルティを犯す。

これまでの展開なら中央大はPGでさらに3点を縮めるところである。が、中
央大はアタックを選択してゴール前ラックから左オープンへ。パスを受けたF
B越村はゴール前で2対2の状況を見てウラに短くキック。インゴールでボー
ルを押さえる作戦だったが、一足先に東海大の選手にタッチダウンされてしま
った。このプレーでグランド内に充満しつつあった高いテンションが一気に解
放されてしまったように感じられた。中央大の圧力に押され気味だった東海大
にとっては勝負を挑まれた方がイヤだったに違いない。何とも残念なプレーの
ように思えた。

時計は20分を回る。ここまで健闘してきた中央大のFWの選手達にも明らか
に疲れが見えてきた。膝に手を突いている姿が目立つようになる。対照的に東
海大のFWが元気そのもの。何とかこの時間帯になるまでに1トライでも取れ
ていれば少しは状況が変わっていたかも知れないが、もちろんこれは結果論。
中央大の怒濤の攻撃にあっても、しっかりと凌ぎ切れたところに東海大の精神
面の成長が伺われる。

試合も終盤に近づいた26分、東海大は中央大陣ゴール前でのスクラムを押し
込み、No.8豊田がサイドを突いてトライ。続く35分には中央大陣ラインアウ
トからモールでゴール前まで前進。オープンに展開したところで津田がショー
トパント。まるでバレーボールのように空中でパスが繋がり、最後は左WTB
の起山がインゴールへ。さらに終了間際の40分、自陣からカウンターアタッ
クによる連続攻撃でFB森がインゴールに飛びこみ、ゴールも成功して東海大
に50点目が記録される。何とか1トライをと中央大も最後に力を振り絞るが
このままノーサイドとなった。

[試合後の感想]

東海大の強さは本物、を強く印象づける試合だった。今シーズンの東海大に関
してとくに強く感じられるのは、選手個々がまずは自分で前に出て行こうとす
る積極的な姿勢でプレーしていることである。過去、ややもすれば「組織的に
プレーすること」を意識するあまり、プレーが消極的に見えてしまうことが少
なからずあった。もちろん、これは鍛え抜かれたフィジカル面の強さと他の選
手への信頼感(必ずフォローアップがあること)が前提条件になっているので
あって、けして無謀なアタックではない。クーリングダウンでも元気よく身体
を動かしている選手達を見て、次節の関東学院戦が本当に楽しみになってきた。

中央大については、ここまでやれたのに何故50点も取られてしまったのか?
これに尽きる。全試合を観ているわけではないので当たっていないかも知れな
いが、おそらく今日の中央大は今シーズン最高の出来ではなかったかと思う。
過去数年のチームと比べても、今年の方が強いチームになっているはず。でも
50点取られて、トライは取れなかった。試合全般を観れば拮抗した部分もあ
ったが、細かい一つ一つのプレーには簡単には埋められない差がついてしまっ
ているというのが率直な感想である。ちりも積もれば、ではないが細かい部分
の積み重ねが大きな差となって表れているように見える。

流通経済大については「苦節10年」と書いたが、東海大は2部降格時から数
えて「苦節9年」。すなわち木村監督が流通経済大でのコーチ経験を経て東海
大の監督に就任してから今年が9シーズン目になる。最初は選手の生活指導か
ら始めたとのことだが、紆余曲折を経ながらも、細かい点の一つ一つの積み重
ねが確実にチームを強くしている。精神面、フィジカル面、戦術面といった過
去のチームの課題は確実にクリアされ、このチームが出来上がった。

前節の流通経済大の試合ぶりを観ても感じたことは、「地道な努力は必ず報わ
れる時が来る。」ということと「毎年選手の入替がある学生ラグビーではあっ
ても着実に積み重ねられていくものはある。」ということ。中央大に限らず、
1年1年を何とか凌いでいるチームとの力の差は今後どんどん開いていくよう
な気がする。                    (2006年10月28日記)

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