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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2006

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Weekly Report

関東学院大学 vs 東海大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2006/11/03) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 関東学院大学:前半: 2  2  0  0 14 |
       :後半: 5  2  0  0 29 |  43 14
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 東海大学  :前半: 1  1  0  0  7 |
       :後半: 0  0  0  0  0 |   7 17


◎出場メンバー

 関東 : 1.西垣 2.田中 3.原田 4.清水 5.西 6.大野 7.竹山 8.土佐
      [9].吉田 10.藤井 11.中園 12.高山 13.櫻谷 14.朝見 15.山下
     (16.高坂 17.児玉 18.設楽 19.石田 20.竹内 21.草下 22.重見)

    ○交替  なし


 東海 : 1.宍戸 2.岸 3.岩本 4.木下 5.杉浦 6.宮本 7.樫本 [8].豊田
      9.辻埜 10.津田 11.起山 12.吉田 13.山内 14.新井 15.森(功)
     (16.中村 17.佐藤 18.斉藤 19.ランギ 20.森(重) 21.森脇 22.松本)

    ○交替  6→19(後14分入替), 11→22(後17分入替),  3→16(後21分入替)
         7→18(後22分入替),  9→20(後28分入替), 10→21(後29分入替)
         2→17(後36分入替)
    ●シンビン  5(前半25分)


 レフリー :河野文高(日本協会公認)


◎得点経過

 関東学院大学  0                    7       14                   14
                                    G       G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                             G
 東海大学    0                                   7              7


 関東学院大学 14  21   28    33          38     43               43
            G    G     T           T      T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 東海大学    7                                                  7


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 関東:前半19分 朝見 (T)、山下 (G)
      27分 竹山 (T)、山下 (G)
    後半 1分 中園 (T)、山下 (G)
       6分 朝見 (T)、山下 (G)
      12分 土佐 (T)
      24分 吉田 (T)
      31分 中園 (T)

 東海:前半34分 豊田 (T)、吉田 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

いよいよ優勝決定リーグ戦のはじまり。まずその第1弾として、昨シーズンの
覇者関東学院に東海大が挑む。現段階のライバル校(法政と大東大)の仕上が
りを考えれば事実上の決勝戦と言っても差し支えないと思う。今シーズンの東
海大は過去のチームと違って選手個々の判断でゲームを組み立てられるチーム
へと進化を遂げているように見える。パワーと巧さを併せ持つ関東学院にそれ
がどこまで通用するか?、がこの注目ポイントであり楽しみでもある。

一方の関東学院は前節の流通経済大戦で苦戦を強いられ、大学日本一奪還に向
けて不安を抱かせた。しかしながら、これは流通経済大の健闘を褒めるべき内
容の試合だったというのが実際に観戦しての印象。関東学院のラグビーは点数
では判断できない部分があると思う。その関東学院はLOに西、FLに大野が
それぞれ復帰。昨シーズンの「雪辱」に向けての臨戦態勢が整った。FWのパ
ワーとBKの巧さで勢いに乗る東海大を圧倒することができるだろうか。

[前半の戦い]

関東学院はセカンドジャージの白で登場。その関東学院のキックオフで熱戦の
火ぶたが切られた。が、いきなり東海大選手がノックオン。そういえば前節の
流通経済大にもキックオフ早々のノックオンがあった。選択権があれば最初は
キックオフを選んだ方がいいのだろうかと思ったりもする。ここから(この日
はチャレンジャーの)関東学院の怒濤のアタックに東海大がひたすら耐えると
いう展開になった。

直後の東海大陣22m付近のスクラムから関東学院はNo.8土佐がサイドアタッ
クでゴール前へ前進。ラックとなったところで東海大がノットロールアウェイ
の反則を犯し関東学院が先制のチャンスを掴む。ゴール正面でPGを確実に決
められる位置だったが関東学院の選択はタッチキックからのラインアウト。ま
ずはFW勝負で先制点を狙うということだろうか。以後、東海大はキックオフ
時のイージーなミスがきっかけとして約20分間、自陣ゴールを背にして耐え
るという苦しい戦いを強いられる。

しかしながら、関東学院も東海大FWの身体を張った防御に手を焼く展開。東
海大FWの集まりの良さと姿勢の低さは体重差のハンディを感じさせない。開
始早々の自陣ゴール前ラインアウトのピンチはターンオーバーで凌ぐ。関東学
院は2分に東海大陣10mから少し入った位置でのスクラムからオープンに展
開するがアクシデンタルオフサイド。ラインアウトも安定せず、攻める関東学
院の方もしっくりしない。

そして3分、もしかしたらこの試合の流れを決定づけたかも知れないビッグプ
レーが出る。東海大が自陣10m(右より)のスクラムからブラインドサイド
に展開しグラバーキックで前進。ボールが22m内まで到達し、関東学院はタ
ッチにボールを蹴り出すものと(関東学院の選手達以外は)思った。が、ここ
から関東学院はオープンに展開してカウンターアタック。東海大の虚を突く形
でCTB高山がDFをかわしながら大きくゲインし東海大陣の10mまで到達
してしまった。東海大はたまらずオフサイドの反則を犯し、またしても東海大
は自陣ゴール前でのラインアウトのピンチとなる。

「今日の俺たちはあくまでもチャレンジャー!」 そんな意気込みが感じられ
るビッグプレーだった。開始早々ということで東海大に(前にプレシャーをか
けることに対して)躊躇があったのかも知れない。関東学院の選手達の間には
自陣からでも最初からどんどん繋いでいくという堅い意思統一があったものと
思われる。ただ、これはあくまでも「オプション1」。1がダメなら2、2が
ダメならば3という選択肢があり、それらはすべて選手達の間で共有されてい
る(はず)。おそらく、ルーティンに従ってタッチに蹴り出すことは、相手に
攻撃権を渡すことでもあり、プライオリティは低いのではないだろうか。6分
にも関東学院はカウンターアタックからFB山下が抜け出て、パスを受けた右
WTB朝見が東海大ゴールに迫る。朝見はラストパスの局面で惜しくもタッチ
ラインを踏んでしまうが、見応えのあるアタックだった。

東海大は何とか関東学院陣へ入ってピンチを凌ぎたいところだが、ボールをタ
ッチに蹴り出すことは関東学院に攻撃権を与えることになる。関東学院は迷う
ことなく展開して攻めてくるので、常に守勢に回ることになり自陣に入ったと
ころで反則。ラインアウトなどでの関東学院のミスに助けられた面もあるが、
東海大FWの気迫のディフェンスも見応えがある。反則が多いことは気になる
が、ここを耐え凌げば東海大にチャンスが巡ってくるはず。東海大ファンにと
って、その時を待つしかない。

そろそろ時計が20分に近づいてきたところで、ここまでゲームを完全に支配
している関東学院に待望の得点が生まれる。東海大22m内(左中間)のスク
ラムからオープンに展開。センタークラッシュからさらにボールは右に展開さ
れ右WTB朝見が右隅に豪快に飛びこむ。FB山下が難しい位置からのゴール
も決め関東学院は7点を先制した。それまでのゴール目前での攻めあぐみ状態
を忘れさせてくれるような鮮やかなトライだった。

しかし、ここまでアタックらしいアタックが見せられなかった東海大にもよう
やく反撃の時間がやってくる。22分、関東学院陣10m付近(左サイド)の
スクラムからNo.8豊田のサイドアタックを起点にオープンに展開。この攻撃が
3次まで繋がり22mを越えてゴールまであと少しと迫ったところで惜しくも
ノックオン。最終局面でアタックに迷いが出たように見えたのが残念だった。
が、ようやく東海大らしい形が出た。

だが、それも束の間。直後に関東学院が見せたグランドをタテとヨコいっぱい
に使う「100mアタック」は圧巻だった。スクラムを起点として自陣のイン
ゴールから継続して一気に東海大のゴールラインまでボールが到達する。ラッ
クからボールが出ればトライというところで東海大がインテンショナルノック
オンの反則。得点のチャンスを妨害したということでLO杉浦がシンビンを適
用されてしまった。時計は25分。せっかく反撃の糸口を掴みかけていただけ
に、東海大にとっては残念なプレー。

関東学院はもちろんこのチャンスを逃さない。26分には東海大ゴール前ライ
ンアウトのチャンスからミスで相手にボールを渡すものの、東海大キックがノ
ータッチとなったところでカウンターアタック。左サイドでボールを受けた左
WTB中園が自らのチップキックをキャッチして5試合連続トライ達成!と誰
もが思ったところで何とインゴールノックオン。あまりにも鮮やかなプロセス
と呆気ない結果のギャップに場内はどう反応していいかわからないような状態
だった。先週も熊谷で立正大のインゴールノックオンを目撃しているが、それ
は片手でのグラウンディングミス。こちらはちゃんと両手だったので、タック
ルでちょっと体制を崩したのだろうか。DFは最後まで諦めてはいけない。

中園にはちょっと残念というより可哀相な感じのプレーだったが、プロセスの
素晴らしさは特筆ものだと思う。中園はボールを受けた瞬間、トライへの道筋
が一瞬にして閃き、それが確実に実行できる希有な才能を持った選手かも知れ
ない。サッカーの話で恐縮だが、イタリアのセリエAで活躍し、「ゴールの詩
人」の異名を持つルベン・ソサ(元ウルグアイ代表)にあやかって、この人に
も「アーティスト」に相応しい名前を考えてみたい。「トライの詩人」ではち
ょっと語呂が良くないので「詩的トライゲッター」というのはどうだろうか。
スピードも強さも持った選手だが、中園のトライには美しさが一番似合う。

直後の東海大ボールスクラムでは、関東学院が体重差と数的優位の利点を活か
してプレッシャーをかけホイール。スクラムからボールがこぼれたところをF
L竹山が拾ってインゴールに飛びこんだ。ゴールも成功して関東学院のリード
は14点に拡がる。結果的に中園のプレーは「幻のトライ」に終わらなかった。

FWがシンビンで一人少なく厳しい状態ながら東海大も粘りを見せる。32分、
関東学院陣内ラインアウトのチャンスからモールで前進し、No.8豊田が関東学
院ゴールに達するものの惜しくもパイルアップ。5mスクラムは押し込まれる
が関東学院がオフサイドの反則。判定に怪訝そうな表情を見せる関東学院FW
の選手達を横目に、No.8豊田がタップキックから自分でボールを持ち込み、ゴ
ールライン付近の際どい位置でグラウンディングに成功した。この瞬間、関東
学院の開幕5試合連続ノートライは消滅した。崩されたわけではないハプニン
グのような失点だが、円陣を組む関東学院の選手達の背中に「残念!」という
文字が書いてあるように見えた。

その後も関東学院が優勢に試合を進めるものの、両チーム無得点で前半終了。
結局40分間の内、東海大がボールを持っている時間は5分にも満たないので
はと思わせるくらいの関東学院の猛攻が続いた前半だった。たが、得点は関東
学院14点に対し、東海大は7点。ここがラグビーの不思議なところである。
関東学院の意思は「どこからでも攻めること」で統一されている。果たして東
海大はこの状況をどうやって打開していくのだろうか。

[後半の戦い]

後半こそは先に得点を奪って劣勢を挽回したい東海大。だったが、開始早々の
ラインアウトでノットストレートのミス。関東学院は東海大陣10m付近のス
クラムから左オープンに展開して、ライン参加したFB山下から絶妙のタイミ
ングで左WTB中園へラストパス。相手ディフェンダーが揃っていても中園の
辞書に不可能の文字はない。今度こそ5試合連続トライが実現した。6分には
今度は中園に負けじと朝見がスクラム起点の連続攻撃でトライを奪う。FWの
セットスクラムから安定したボールが出ることもあるが、HWL付近からでも
一発で取れるのが関東学院の強み。

後半が始まったばかりだが、得点が28−7となったところでそれまでピッチ
の中に張り詰めていたテンションが解放されたように感じられた。東海大は関
東学院の連続攻撃を止められず、また、反撃の糸口も掴めない。12分に関東
学院が東海大ゴール前でのマイボールスクラムのチャンスからNo.8土佐がサイ
ドをついてゴールラインを越えたところで完全に勝負ありとなった。

関東学院のラインアウトのミスといった不本意な形ではあるが、東海大にもチ
ャンスが全くないわけではない。ただ、継続してもなかなかゲインできず後ろ
に下げられる状況で最終的にFWの圧力の前にターンオーバー。いつもはBK
からパスを受けて次の攻撃の起点となる両FL(宮本と樫本)も今日は目立た
ない。やはり関東学院FWのセットプレーでのプレッシャーが相当厳しいのだ
ろうか。No.8の豊田に両FLの2人を加えた「3本の矢」が機能しないと、東
海大の攻撃力低下は免れない。宮本は14分に、樫本は28分にそれぞれラン
ギ、斉藤に交代した。連戦の疲れもあるのだろうか。今後の東海大の戦いで気
になる点である。

BKのアタックで殆ど関東学院のDF網を破ることができなかった東海大だっ
たが、17分にはHWL付近のスクラムを起点としたオープン攻撃からCTB
吉田が抜けてチャンスを掴む。が、東海大は吉田がクラッシュしたところでオ
ーバー・ザ・トップの反則。その後も何度か松本や森重樹(いずれも途中から
出場)らが突破を見せるものの、いずれも「単発」で終わってしまう。せっか
くウラに抜け出てもフォローが遅れ気味。また突破した選手にもプレーに対す
る迷い(自分で行くべきか、それともフォローを待つべきか)があり、継続が
スムースに行かない。ここが(状況に応じていくつもの攻撃オプションがあり、
それが選手達に共有されている)関東学院との大きな違いかも知れない。

攻めあぐむ東海大を尻目に関東学院は畳みかける。24分、自陣10m付近で
のラインアウトからモールで前進し、SO藤井がタテに抜ける。東海大のDF
を翻弄したところでブラインドサイド側にフォローしたSH吉田にラストパス。
31分には東海大陣でのスクラムを起点としてオープン展開でロングパスを受
けた中園がこの日2トライ目で締めた。

何とか1トライをと最後の力を振り絞って奮闘する東海大フィフティーンだっ
たが、ゴールラインが遠い。接戦となることも大いに期待された試合だったが、
関東学院が圧倒的な攻撃力と堅いディフェンス力を見せつける形でノーサイド
となった。

[試合後の感想]

目標とする「大学日本一」が近づいたかに見えた東海大だったが、残念ながら
2歩後退といった感じ。おそらく、東海大はこの試合に照準を合わせてチーム
を仕上げてきたものと思われ、ショックも小さくは無いはずである。しかしな
がら、東海大が真価を問われるのは残り2戦の戦いぶりだと思う。残り2つを
しっかり勝って、来シーズンからは最終戦に照準を合わせることができるチー
ムになることが先決。敗戦のショックに加え、おそらくは疲労もピークに達し
ているところで次週の法政戦を迎えるが、ここが頑張りどころ。勝負は時の運
だが、「失速」することなくシーズンを戦い終えて欲しい。

関東学院は「たとえそこが自陣のインゴールからでも、継続してゴールを目指
す」という意思統一が素晴らしかった。改めて感じたことだが、関東学院にと
って継続は目的ではなくてあくまでも手段。どこからでも常に得点を狙うこと
が関東学院の基本思想なのではないだろうか。そのためのプロセスをピッチに
立つ選手達が共有することがチームワークを築き、どのような形でプロセスを
実現するかは個人の判断と技術に任されている。選手達が自主的に強く巧くな
っていこうとすることの素地もここにある。ただ、選手の個性を犠牲にするこ
となく組織的に戦えるチームを作る上では、明快である反面、実現には時間と
手間と忍耐が必要。チームを強くするなら、あらかじめ選手を選抜し、枠に填
めて徹底的に戦術を叩き込む方が遙かに効率的だと思う。

各校がそれぞれの特色を前面に打ち出して戦うことで人気を集めてきたのが大
学ラグビーの歴史。と考えれば、関東学院は異質なチームと言えるかも知れな
い。伝統校であるが故にその就縛から逃れられないように見えるチームの選手
達に比べると、関東学院の選手達はのびのびとラグビーをエンジョイしている
ようにも見える。選手達がエンジョイできれば、その楽しみは当然観客にも伝
わる。まだまだ「発展途上」にある今年のチームに対する興味と期待は尽きる
ことがない。                    (2006年11月4日記)

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