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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2007

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Weekly Report

東海大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2007/09/17) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 4  3  0  0 26 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |  31 11
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 0  0  1  0  3 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |   8 14


◎出場メンバー

 東海 : 1.宍戸 2.岸 3.熊谷 4.リーチ 5.杉浦 [6].宮本 7.荒木 8.マウ
      9.鶴田 10.津田 11.山田 12.山内 13.児玉 14.荒井 15.森功
     (16.三上 17.前川 18.斉藤健 19.斉藤怜 20.森重 21.森脇 22.日野)

    ○交代  6→19(後31分入替),  9→20(後31分入替), 12→21(後31分入替)
         1→16(後34分入替),  7→ 1(後38分交替)
    ●シンビン 3(後半36分)


 流経 : 1.金城 2.川西 3.松波 4.アッピネル 5.フィフィタ [6].吉田 7.古崎 8.相
      9.山下 10.君島 11.森谷 12.小浜 13.政光 14.森山 15.串野
     (16.夏目 17.山崎 18.慎 19.佐藤 20.田代 21.水谷 22.屋宜)

    ○交代  1→16(後 0分入替),  2→17(後21分入替),  4→18(後21分入替)
         9→20(後21分入替), 15→22(後35分入替), 12→21(後37分入替)


 レフリー :河野文高(日本協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0       7                12   19      26          26
                       G                T    G       G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                      P
 流通経済大学  0            3                                     3


 東海大学   26        31                                       31
                  T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                                 T
 流通経済大学  3                                       8          8


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半 6分 岸  (T)、森  (G)
      23分 岸  (T)
      28分 マウ (T)、森  (G)
      36分 岸  (T)、森  (G)
    後半 7分 津田 (T)

 流経:前半11分 山下 (PG)
    後半38分 古崎 (T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

この夏、最高温度の日本記録を更新し、日本一暑い街になった熊谷市。熊谷ラ
グビー場の天候条件で強くイメージされるのは晩秋から冬にかけての赤城おろ
しの強風だが、9月の場合は「猛暑」も付け加えなければならない。もちろん
一番大変なのはピッチの上で戦う選手達だが、スタンドで応援する観客も熱中
症にならないための(ある意味で)戦いを強いられる。本日は抜けるような青
空の広がる晴天だが、メインスタンドの屋根が心強い味方になってくれる。

さて、この酷暑(最高気温は35.6℃だったそうだ)の中で第1試合を戦う
のは東海大と流通経済大。流通経済大の1部昇格の1997シーズンからリー
グ戦グループの観戦を始め、また、東海大の2部降格時と1部復帰以降の戦い
を見続けている私にとっては、両校は佳きライバルのように映る。どちらも組
織を重視したチーム作りを目指しているという点で(東海大の木村監督が流通
経済大でコーチングを学んだ経歴があることは別にしても)共通のコンセプト
を持った兄弟のような存在とも言える。

ただ、両校のチーム作りは「組織」を重視しながらも異なっている点が興味深
い。1部昇格後、FWを強化してパワーアップを図った流通経済大に対し、高
速展開を指向したのが東海大。先に成果を上げたのは流通経済大(1999シ
ーズンは2位まで上り詰める)だったが、流通経済大はその後持ち味だった機
動力を失い低迷期を迎える。逆になかなか成果が見られなかった東海大はここ
数年でスピードにパワーが加わり、関東学院を脅かす存在にまで成長した。

といったように「弟」(あとで昇格した東海大)に先を越された形の流通経済
大だが、昨シーズンでチームの土台が固まり今シーズンは飛躍の年になること
が期待される。ここ数年の課題だった決定力不足解消への糸口は見いだせるだ
ろうか。昨年度は東海大の圧勝に終わったものの、流通経済大にとって東海大
は元々相性がいい相手。兄貴分の面目を保つためにも今年は優勝候補に一泡吹
かせたいところ。ピッチに登場した両校の選手達は「俺たちの辞書には熱中症
の文字はない。」と言わんばかりに生き生きとして見えた。

[前半の戦い]

前半は風下(メインスタンド側から見て北側)に立つ流通経済大のキックオフ
で試合開始。流通経済大のメンバー表に森谷が見あたらない?と一瞬思ったが
それは11番を付けて登場していたためだった。3年目の今年は過去2年務め
たFBからWTBへコンバートされたようだ。確かにFBよりもFWに近い前
に居た方が相手にとってもいやに違いない。開始2分、その森谷が魅せてくれ
た。自陣10/22mでのスクラムからパスがショートサイドに位置した森谷に繋が
る。東海大にオフサイドがありビッグゲインはならなかったが、流通経済大の
今年のアタックの形がまず披露された。

しかしながら、流通経済大はPKにより東海大陣で得たラインアウトのチャン
スを活かせずボールは東海大に渡る。ここで、東海大は逆襲に転じ、オープン
展開を主体とした持ち前の連続攻撃で一気に流通経済大陣に攻め込む。流通経
済大たまらずオフサイド。流通経済大が自陣を背にして守勢に回る中で開始6
分、東海大はゴール前のラインアウトからモールを押し込みHOの岸がトライ
を奪い先制した。

流通経済大もすかさず反撃。9分、東海大陣22m手前でのスクラムから今シ
ーズンはNo.8に入った相がサイドをつきラックからオープンに展開したところ
で東海大がオフサイドの反則。ゴール右約20mのPGをSH森が難なく決め、
流通経済大は3点を返した。このNo.8の相に両ロック(アッピネルとフィフィ
タ)が続くパワフルな縦攻撃は今シーズンの流通経済大の強力な武器になりそ
うである。

ここでゲームは落ち着くかに見えたが、猛暑をものともしない東海大フィフテ
ィーンによるアタックが全開となり、流通経済大が懸命のディフェンスで凌ぐ
展開に。ここで目を引いたのが流通経済大のCTB(12番)小浜の安定した
ロングキック。過去のシーズンで何度も一蹴りでピンチをチャンスに変える活
躍を見せたCTB大石(OBで現神戸製鋼)のことが思い出された。ただ、本
日の流通経済大FWはラインアウトでのミスが多く、得意のはずのモールを活
かせないのが痛い。

23分、東海大は流通経済大陣(10m/22m)でのラインアウトを起点としてF
WとBKが一体になった連続攻撃を仕掛ける。オープン展開から両CTBが絶
妙のコンビネーションで裏に抜けラックから左オープンに展開。ラストパスが
何故か左WTBの位置にいたHO岸に渡り、岸がBKのようなランニングを見
せて2トライ目を挙げた。その後もたびたび岸はWTBのような活躍を見せる。
これは「偶然そこに居た」のではなく東海大の有効な攻撃オプション。先輩の
高といい、走れるHOの存在は東海大の伝統だろうか。

東海大の猛攻は続く。オープン展開に縦をミックスしたダイナミックな継続ラ
グビーは昨シーズンよりさらに迫力を増した感じ。28分、期待の新人LOリ
ーチがラインブレイクに成功し一気に流通経済大のゴールに迫る。ラックを経
て東海大はさらにサイドを攻め、最後はNo.8のランギがゴールラインを越えた。
東海大のリードは一気に16点に拡がる。東海大は選手個々が全体的にパワー
アップしていることもあり、接点で力負けせず、一人で行くべきかどうかの判
断もできるようになっている。「スピードはあるがアタックが一本調子になり
がちな東海大」は完全に過去のものとなった。

前半も終わりに近づいた36分、東海大はさらに得点を追加する。流通経済大
ゴール前のラインアウトからモールを形成して押し込み、HO岸が今度はFW
選手としてトライ。どうやら今シーズンは走れるHO岸がトライゲッターとし
て大暴れしそうだ。ゴールキックも成功してこれで26−3と東海大のリード
は23点。東海大の攻撃力が勝っていたとはいえ、ラインアウトのミスがなけ
れば流通経済大はもう少し競った試合ができたはず、という前半の戦いだった。

[後半の戦い]

後半も開始早々、流通経済大はWTB森谷のカウンターアタックを起点にチャ
ンスを掴む。連続攻撃で東海大陣に攻め込みオープンに展開するが、ラインが
浅くなってしまい、十分にスピードに乗った攻撃ができない。2分には東海大
陣10mライン手前のスクラムからショートサイドを攻めるが惜しくもノック
オン。早く1トライ返したい流通経済大だが、前半を引きずる形でラインアウ
トが安定しなかったこともあり、なかなか攻撃のリズムが掴めない。

流通経済大が攻めあぐむ中で7分、東海大にダメ押しとも思える得点が入る。
流通経済大ゴール前のラインアウトからサイドを攻め、ラックからオープンに
ボールを展開してCTB山内がラインブレイクに成功。ゴール前ラックからラ
ストパスがSO津田に渡り、後半も東海大が先制点を挙げた。と同時に流れか
ら言ってもここでほぼ勝負が決まった。東海大は余裕が出てきたこともあり、
自陣からでもハイパントを使うなどして攻撃の手を緩めない。

しかしながら、ここから徐々にゲームの流れは流通経済大の方に移っていく。
本日は猛暑ということもあり、双方ノックオンのミスが多かった。集中が切れ
たというよりは、汗でボールが滑りやすい状況になっていたようにも感じられ
る。ただ、後半に関しては、ミスは余裕が出た東海大の方に目立った。流通経
済大の新しいフォーメーションがようやく機能し始めたとも言える。9分、流
通経済大はカウンターアタックからビッグチャンスを掴むが惜しくもスローフ
ォワード。

ここから試合はしばらく膠着状態へ。双方ミスは出るものの、猛暑の中でもそ
の相手のミスを活かす形で攻撃が継続される。組織的に鍛えられたチーム同士
の戦いだけある。14分、東海大は流通経済大陣でのスクラムからショートサ
イドを攻め、ラストパスがFB森に渡ったかに見えたが、惜しくもノックオン。
直後のスクラムからの流通経済大のキックはノータッチとなりカウンターアタ
ックの応酬から森谷が東海大陣深く攻め込むものの、ラックからボールが出た
ところでタッチに押し出されてしまう。

しかしながら、直後のラインアウトで東海大に反則があり、流通経済大に絶好
の得点機がやってくる。ゴール前ラインアウトから得意のモールで前進し、ラ
ックから左オープンに展開。SO君嶋がインゴールにキックで「タッチダウン
パス」を送るがキャッチしたのは東海大選手。ここで東海大に反則があり流通
経済大は再度ラインアウトからのモールで攻める。しかし、ゴールラインまで
迫ったところで流通経済大に痛恨の反則(ラフプレーのように見えた)があり、
流通経済大もあと一歩のところで得点が奪えない。

双方積極的にアタックを仕掛けながらも、なかなか電光掲示板の得点が動かな
い中で30分、流通経済大は森谷のカウンターアタックからチャンスを掴む。
東海大陣22m付近のラックで東海大にノックオン。流通経済大はスクラムか
らの8→9攻撃で東海大ゴールに迫るものの、惜しくもパスミスがありゴール
ラインを越えられない。が、終盤、ゲームの流れは完全に流通経済大に移る。
36分に東海大選手が笛が鳴った後の妨害行為でシンビンを適用され一時退場
となり、勝敗の行方は決まったとはいえ、東海大はさらに形勢不利に陥る。

そして38分、流通経済大がようやく東海大のゴールをこじ開けた。東海大ゴ
ール前でのスクラムからLOフィフィタがサイドアタックを仕掛け、FL古崎
がインゴールに飛びこんだ。残り時間から逆転は困難な状況だが、流通経済大
は最後の力を振り絞って攻撃を続ける。守勢に立たされた東海大も粘り強いデ
ィフェンスで凌ぎ、見応えのある攻防が展開された。結局、そのままノーサイ
ド。得点差はついたが、猛暑を忘れさせるくらいの熱い戦いだった。

[試合後の感想]

No.8の豊田やCTBの吉田といった昨シーズンの中核となった選手達は抜けた
が、今シーズンの東海大の攻撃はさらにパワーアップした感がある。オープン
戦での好成績も十分納得できる仕上がりだと思う。後半1トライだけに終わっ
たのがファンにとって物足りないところかも知れないが、猛暑の中で集中を切
らさず攻め続けたのは良かったと思う。今シーズンはとくにFWとBKのバラ
ンスがよく、どこからでも点が取れるチームになっている。やはり現時点で関
東学院を脅かす一番手は東海大といって間違いない。

流通経済大は昨シーズンのリベンジならず、またしても完敗。ラインアウトの
不調が響いた形だが、東海大とはまだ力の差があることは否めない。ただ、昨
シーズンのチームと比べて得点を取れる形ができてきたことは好材料だと思う。
司令塔を務めるSOの君嶋も昨シーズンのデビュー時と比べると余裕が出てき
た印象。WTB森谷とNo.8相を中心としたFW第3列、そしてパワフルな両L
Oの連携に磨きがかかれば得点力は確実に上がるはず。「弟」に先んじられた
感はあるが、流通経済大の躍進(もちろん5位以上)も楽しみになってきた緒
戦の闘い振りだった。                (2007年9月19日記)


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