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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2007

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Weekly Report

大東文化大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2007/09/24) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 大東文化大学:前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 1  0  1  0  8 |   8 17
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 0  0  1  0  3 |
       :後半: 0  0  1  0  3 |   6  8


◎出場メンバー

 大東 : 1.住田 [2].森 3.須藤 4.森山 5.松田 6.林 7.牧野 8.シリヴェヌシ
      9.新川 10.升屋 11.石川 12.滝内 13.レプハ 14.吉田 15.辻
     (16.銭場 17.坂下 18.長田 19.島田 20.生方 21.出村 22.武政)

    ○交替 12→19(後 7分入替), 10→21(後32分入替),  9→20(後35分入替)
         1→16(後36分入替)
 

 流経 : 1.金城 2.川西 3.松波 4.アッピネル 5.慎 [6].吉田 7.古崎 8.相
      9.山下 10.小浜 11.森山 12.アンダーソン 13.政光 14.屋宜 15.森谷
     (16.夏目 17.山崎 18.フィフィタ 19.佐藤 20.田代 21.木村 22.小野寺)

    ○交替  4→18(後11分入替),  9→20(後11分入替),  1→16(後37分入替)


 レフリー :篠原克行(日本協会公認)


◎得点経過

 大東文化大学  0                                                  0
                 
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                              P
 流通経済大学  0                                    3             3


 大東文化大学  0  5                                       8       8
            T                                       P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                           P
 流通経済大学  3                                 6                6


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 大東:後半 1分 新川 (T)
      41分 出村 (PG)

 流経:前半35分 山下 (PG)
    後半32分 小浜 (PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

1週間違えば天国と地獄、まさにそんな言葉が口を突いて出るくらい、今日の
熊谷ラグビー場は涼しかった。最高気温は先週の35.6℃に対して確実に10℃以
上低くなっている。酷暑は別にしても例年のように2週間遅れの今頃が開幕だ
ったら各チームの仕上がり状態も少し違っていたかもしれない。試合前に配ら
れたメンバー表を見てそんなことを思った。本日対戦する大東大も流通経済大
も、緒戦からはチーム改造と言ってもいいくらいにかなり出場選手と位置が変
更になっている。2戦目だからなのか、それとも、2戦目にしてはなのか、の
判断はつかないがちょっと変動が大きいかなと思った。

まず、大東大。大きな変更点は緒戦ではレプハ・ラトゥイラ(2年)とともに
コンビを組んでCTBで起用されたシリヴェヌシ・ナウランギ(1年、フィリ
ピーネの弟さんだそうだ)がNo.8にコンバートされ、No.8だった森山はLOと
して先発。SOには出村に代わって升屋が起用され、左WTBだった滝内は左
CTB、FBだった石川が左WTBに回り、FBと右WTBにはそれぞれ辻と
吉田が新たに先発メンバーに加わった。2戦目にして早くもチームは方向転換
したのだろうか?!

流通経済大にはさらに大きな変更があった。SOに緒戦は左CTBだった小浜
が起用され、左WTBの森谷はFBに戻り、左CTBには昨シーズンまで司令
塔として活躍したネイサン・アンダーソンが登場。アンダーソンが残っている
ことは知っていたが、緒戦ではリザーブにも名前がなかった。あくまでも推測
に過ぎないが、FBに森谷を戻す形でBK第3列を入れ替えたが、当初先発予
定のSO君嶋も出場できなくなり急遽CTBの小浜をSOに変更。CTBには
ベテランのアンダーソンを起用することになり、LOでアッピネルとコンビを
組むはずだったフィフィタはベンチスタート、ということになったのかもしれ
ない。緒戦の東海大戦の先発メンバーが当初のチーム構想だったとしたらの但
し書き付きだが、そんなことを考しまう。

(会場備え付けのメンバー表ではBKのバックスリー以外に大きな変更はなか
った。流通経済大の受付でもらったメンバー表を先に見たので変動に気がつい
た次第。昨シーズンの最終ゲームの中央大戦でも同じようなことがあり、びっ
くりしたことを思い出した。)

さて、この試合、まずは、今シーズン初めて観る大東大がどんなラグビーを見
せてくれるのかが一番の関心事。そして、両チームのメンバー変更(修正?)
の効果についていろいろと想像を巡らせながらキックオフを待った。

[前半の戦い]

流通経済大のキックオフで試合開始。直後のラインアウトから流通経済大がオ
ープンに展開したところでノックオンがあり大東大ボールのスクラム。ここで
流通経済大は大東大ボールの奪取に成功し、No.8相がサイドアタックで前進を
図るが大東大オフサイド。だが、大東大陣ゴール前を狙ったタッチキックは伸
びすぎてタッチを切ったのはインゴール。流通経済大にとっては開始早々でビ
ッグチャンスを掴みかけただけに残念な出だしとなってしまった。

大東大陣(22m/10m)からのリスタートでこの日No.8に起用されたシリヴェヌシ
がいきなりパワーを発揮して大きくゲインしボールをCTBのレプハに繋ぐ。
フィリピーネとマヘ(後にエモシ)による強力な2人リサイクルによるタテ突
破のことがすぐに思い起こされた。ラトウ監督の新布陣の狙いの一つはおそら
くここにあったのだろう。この日、シリヴェヌシがタテを突くときは後方にF
Wと一緒にレプハが控えていることが多かったこともそんなことを思わせる。
結局、ボールが流通経済大陣に運ばれたところでターンオーバーされてFB森
谷のカウンターアタックに陣地を押し戻されるものの、まずは名刺代わりに一
発という感じだった。

4分、大東大は自陣22m内のラインアウトでロングスローをCTBレプハに
送り陣地挽回を目指すがノックオンでピンチを招く。流通経済大はスクラムか
らNo.8相がショートサイドを攻めFB森谷がゴールを目指すも大東大がオフサ
イドの反則。PGを十分狙える位置だったが、流通経済大はゴール前ラインア
ウトから得意のモールで先制トライを狙う。緒戦では不調だったラインアウト
も問題なしでここはチャンス、と思われたがモールがなかなかドライブできな
い。大東大はFWが重い(平均体重で約4kg上回る)のに加え、流通経済大
の得意の形を十分に研究している。ラックで流通経済大にノックオンがあり、
ここでもチャンスを活かせなかった。

8分には流通経済大が自陣でのラインアウトからクイックスローインを行い、
左オープンに大きく展開。WTB森山が大東大陣22mラインに迫るものの、
タックルで止められてところで大東大にオフサイド。流通経済大は再びゴール
前ラインアウトから先制トライを狙う。が、ここでもモールを押し切れず、ア
ンプレアブルで大東大ボールに。大東大は自陣ゴールを背負った位置でのスク
ラムから再び8→13でタテ突破を目指すが、ここでもノックオン。直後のス
クラムから流通経済大はNo.8相からSO小浜に直接パスが渡り大東大ゴールに
迫るがラックで大東大がオフサイド。ゴール正面だがここでも流通経済大は狙
わずにスクラムからゴールを目指す。再びNo.8が起点となってショートサイド
を攻めゴールに迫るもののタックルされたところでターンオーバーがあり、大
東大がボールをタッチに蹴り出してピンチを逃れる。流通経済大はラインアウ
トからアッピネルが裏へ抜けLO愼にパスを送るがノックオン...。

といったように試合はほとんどが大東大陣で行われ、流通経済大が圧倒的に攻
める展開なのだが得点板はまったく動かない。自分たちの得意な形(ドライビ
ングモール)へのこだわりはわかるが、PGで確実に得点を得た方が精神面で
も優位に立てたかもしれない。大東大は自陣での反則が多く、なかなか流通経
済大陣に入ることができないが、流通経済大も得点を挙げることができずに時
間がどんどん過ぎていく。両チームのファンにとってもどかしい展開が続く中
で16分、大東大が初めて流通経済大陣に入りマイボールラインアウトのチャ
ンスを得た。大東大はオープンに展開するが、流通経済大の好タックルからタ
ーンオーバーに成功しSO小浜のキックは大東大ゴール前まで到達。大東大に
反則があり流通経済大がゴール前ラインアウトのチャンスを掴むがゴール寸前
で惜しくもノットリリース。どうしても大東大のゴールラインを越えられない。

流通経済大がチャンスを活かせない中でゲーム流れは徐々に大東大に傾き始め
る。21分には大東大は流通経済大陣10m付近での相手ボールスクラムでホ
イールに成功して攻撃権を奪取。キックからのカウンターアタック、好タック
ル、そしてノックオンなどのミスの応酬で左右にボールが大きく動く展開とな
るがどちらも得点を挙げられない。が、確実に主戦場は流通経済大陣側へと移
っていった。27分には大東大が流通経済大陣22m内でのラインアウトのチ
ャンスを掴むが、ここは流通経済大がピンチを凌いだ。大東大側にもイージー
なノックオンなどのミスが出て観客席からはため息が漏れる。32分にはそん
な大東大のミスから流通経済大の右WTB屋宜が大東大ゴールラインに迫るが
もう少しのところでタッチに押し出されてしまう。

このまま前半は両チーム無得点で終わるかと思われた35分、ようやく電光掲
示板の得点が動いた。大東大の自陣ゴール前ラインアウトからのタッチキック
にミスがあり、流通経済大がカウンターアタックから大東大陣22mに迫った
ところで大東大にオフサイド。ここで流通経済大はようやくPGを選択して、
難産の末3点を先制した。その後、流通経済大は39分に得た大東大ゴール前
ラインアウトのチャンス、大東大は40分に得た流通経済大陣で得たラインア
ウトのチャンスをそれぞれ活かせず、両チームノートライで流通経済大が3点
リードのまま前半が終了した。大東大もよく守ったというべきだが、流通経済
大が決め手を欠いていた点は否めない。

[後半の戦い]

後半こそはすっきりトライを取ってリードを拡げたかった流通経済大だが、開
始早々に大きな罠が潜んでいた。自陣10m付近のセンタースクラムから8→
9攻撃で右サイド突破を図った流通経済大だったが、大東大のSH新川が狙い
すましたようにインターセプトに成功しそのまま約40mを走りきってゴール
中央にトライ。すれ違いで失敗すれば大ピンチのリスキーなプレーではあった
が、決まるときは一瞬というところにラグビーの面白さと怖さを感じる。ただ、
大東大は正面のイージーなゴールキックを外してしまい、逆転に成功したもの
のリードは僅か2点。PG1本で逆転可能なので流通経済大はもちろん慌てる
必要はない。

流通経済大はキックオフ直後の大東大陣でのラインアウトから反撃に出るが、
連続攻撃からボールがオープンに展開されたところでノットリリース。大東大
に反則で攻撃を寸断される(ちなみにこの日の大東大のペナルティは17個)
面がなかったわけではないが、ラックでは大東大にしっかり絡まれて生きたボ
ールが出てこない。流通経済大は前半のモール中心からFWのサイドアタック
へと攻撃パターンを変えてきたように見受けられたが、攻撃のテンポが遅くな
ってしまうためしっかりと守備陣形を作られてしまう。FWで相手を崩しきれ
ないだけに、BKに回してもなかなかゲインできない手詰まり状態が続く。

流通経済大が攻勢に出る中で8分、大東大は得点のチャンスを掴む。流通経済
大陣(22m/10m)右サイドのスクラムからいったんショートサイドを攻めた後、
左オープンに大きく展開。深めのライン取りで大きなスペースが生まれ大東大
が一気に流通経済大ゴールに迫る。流通経済大は辛くも選手をタッチに押しだ
して失点を免れるが、大東大にあって流通経済大にないものがよくわかるプレ
ーだった。大東大のBKにスペースを与えるとやはり危険。

だが、ピンチの後にチャンス在りで、再び流通経済大が大東大ゴール前でのラ
インアウトからゴールを目指す展開が続く時間帯となる。だが、モールが押せ
ずにラックでサイドを攻める、あるいはオープンに展開したところでミスが出
てゴールに届かない状況が続く。大東大も8番(シリヴェヌシ)と13番(レ
プハ)をラインに並べる緒戦の布陣を交えてアタックに転ずるものの、流通経
済大が渾身のタックルで彼らの突破を止める。流通経済大の前に出るタックル、
大東大の自陣ゴール前で際どく止める懐の深いタックル、とタイプは違うが両
チームのディフェンスは見応えがある。

24分、大東大はBK展開で再び見せ場を作る。流通経済大ボールスクラムを
ホイールして得たマイボールスクラム(自陣HWL手前付近)からオープンに
大きく展開。タッチライン際でBKが連係プレーで細かくボールを繋ぎながら
流通経済大奥深く攻め込みパスはNo.8のシリヴェヌシへ。大東大が1トライ追
加蚊と思われたが、ノックオンがあり流通経済大は命拾い。大東大のBKはボ
ールを持つと生き生きとして見える。やっぱりこんなプレーが流通経済大に欲
しい。BKのフォーメーションが変わったこともあるが、流通経済大のオープ
ン展開はちょっと正直(大東大にとっては対応しやすい形)になっていたきら
いがあった。

時計が残り10分余りとなったところでも大東大のリードはPG1本で逆転可
能の2点のまま。ここまで大東大にゴール前でもらった再三のPKのチャンス
を活かせなかった流通経済大がようやくPGを選択した。ゴールやや左20m
の位置からのゴールキックをSO小浜が冷静に決め、僅か1点の差ながら6−
5と再逆転に成功。後半開始早々に逆転され、28分に1点差ながら再逆転に
成功した試合展開(15−14)は去年と全く同じだ。ちなみに、昨シーズン
はインジュリータイムに入ったところでSO戸嶋主将の劇的なドロップゴール
が決まり、辛くも1点差で大東大が勝利している。昨年度の再現はごめん被り
たい流通経済大は敵陣で、しかもできるだけマイボールをキープしてこの試合
を乗り切りたい。

しかし、流通経済大にとって魔の時間帯は今年もやってきた。時計がもう少し
で40分に達しインジュリータイムは4分のアナウンスがあったところで流通
経済大に痛恨のオフサイド。位置はゴール正面約38mで時間から見てもここ
は狙うところ。だが、大東大はPKから速攻で仕掛けようとするもののポイン
トが違ってやり直し。ここでタッチキックか狙うべきかで大東大に迷いが見ら
れた。が、スタンドからの強力な指示?もあり途中出場したSO出村がGKを
狙う。両校のファンが固唾をのんでボールの行方を見守る中、ロングキックが
見事クロスバーを越え大東大が再々逆転に成功、と同時にノーサイドの笛が鳴
った。

出村のキックは堂々たるものだったが、翌日のサンスポの記事によれば、普段
は蹴れないキックだったとのこと。だから狙うかどうかで躊躇もあったのだろ
う。それでもちゃんと入ってしまい2点差で逆転勝利を納めてしまうあたりに
大東大のしぶとさが感じられた。反則を犯した選手ががっくりとうなだれる中
で、お前のせいじゃないとばかりにその選手をなだめる流通経済大の選手達。
そう、優位に試合を進めながら取るべきところで取れなかったのが敗因。でも、
どうしてリーグ戦はこんな因縁の戦いが多いのだろう。ただ、今年の場合は、
試合内容の反映からか、去年のような「劇的な幕切れ」という印象が残らなか
ったのが不思議ではある。

[試合後の感想]

流通経済大はこれで対大東大5連敗。しかも去年と今年は勝利まであと数分と
いうところで1本のDG(あるいはPG)を決められ僅か2点差で敗れている。
運がないといってしまえばそれまでだが、同じパターンで負けているのが気に
なる。ディフェンスは頑張っていたので、やはり課題は攻撃力。緒戦(東海大
戦)の感想で攻撃力は確実に上がっていると書いたが、今日の試合を観る限り
は1歩、いや2歩くらい後退した感じがする。あと、ひとつ感じたのはアタッ
クの局面でもう少しのびのびとプレーしてもいいのではないかなということ。
ボールを持ったらみんなでゴールまで行くぞ、といった感じで楽しそうにプレ
ーしている(ように感じられる)大東大の選手達を見てそう思った。それは別
にしても、自信を付けるためにも、BK展開でいい形でのトライが欲しい。

大東大は中央大戦に続いて、またしても際どい勝利。まだ、チーム作りは手探
りのような状況もあるので、あと数試合でも爆発は見られないかもしれない。
だが、シリヴェヌシがNo.8として存分に力を発揮するようになれば面白い存在
になるような予感がする。大型LOの大窪がいない状況で島田がリザーブに入
るという、他校の首脳陣がうらやむようなFWの陣容は魅力十分。だからラト
ゥ監督はツインパワーCTBのチーム作りを目指したようだ。でも、対戦校に
とってはFWに核弾頭的な選手が居る方が脅威となるはず。強力なタテと奔放
なヨコのコンビネーションは大東大ラグビーの醍醐味といえる。まだ大きな声
では言えないが、今日の試合を観て大東大は関東学院と東海大を脅かすダーク
ホース的な存在になるような気がしてきた。爆発するのは後半戦でいいし、ま
たその潜在的な可能性は十分に感じられる。外れる可能性もなきにしもだが、
今後の大東大の成長が楽しみになってきた。      (2007年9月26日記)

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