Live Reports from Rugby Stadium熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2007 |
|||||||
Schedule & Result |
Rugby Top |
Weekly Report |
|||||
大東文化大学 vs 拓殖大学 |
|||||||
関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2007/10/14) 於:熊谷ラグビー場 <試合結果> T G PG DG 得点 | 総得点 反則 大東文化大学:前半: 2 1 1 0 15 | :後半: 5 3 1 0 34 | 49 10 +-----------------+-------------------------------+-------------+ 拓殖大学 :前半: 4 3 1 0 29 | :後半: 1 0 0 0 5 | 34 11 ◎出場メンバー 大東 : 1.住田 [2].森 3.須藤 4.松田 5.大窪 6.林 7.関戸 8.シリヴェヌシ 9.新川 10.出村 11.吉田 12.塩見 13.レプハ 14.増野 15.辻 (16.川村 17.坂下 18.森山 19.島田 20.生方 21.升屋 22.ファマオ) ○交代 8→19(後 0分入替), 15→22(後 0分入替), 10→21(後33分入替) 5→18(後40分入替), 9→20(後40分入替), 3→17(後40分入替) 拓殖 : 1.小澤 2.吉田 3.西 4.寺崎 5.バツベイ 6.牧野 7.浦川 8.森谷 9.佐藤 10.ダニエル 11.茂野 12.ニコラス [13].横山伸 14.横山健 15.長谷川 (16.川田 17.谷地村 18.浅見 19.稲田 20.二宮 21.高橋 22.取手) ○交代 4→19(後20分入替), 1→22(後34分入替), 3→16(後40分入替) レフリー :工藤隆太(関東協会公認) ◎得点経過 大東文化大学 0 3 8 15 15 P T G 時間 0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点 P G G G T 拓殖大学 0 3 10 17 24 29 29 大東文化大学 15 22 27 32 35 42 49 49 G T T P G G 時間 0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点 T 拓殖大学 29 34 34 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗 ◎得点者 大東:前半 8分 増野 (PG) 11分 塩見 (T)、増野 (G) 35分 須藤 (T)、増野 (G) 後半 2分 大窪 (T)、増野 (G) 11分 林 (T) 18分 出村 (T) 28分 増野 (PG) 32分 吉田 (T)、増野 (G) 42分 レプハ(T)、増野 (G) 拓殖:前半 2分 ダニエル(PG) 4分 横山健(T)、ダニエル(G) 32分 バツベイ(T)、ダニエル(G) 37分 横山伸(T)、ダニエル(G) 41分 佐藤 (T) 後半40分 茂野 (T) ◎試合内容 [キックオフ前の雑感] この試合のプレビューにも書いたが、ここまでの試合を振り返ってみると、大 東大は「点は取れていないが、取られてもいないチーム」であり、対する拓殖 大は「点は取れているが、取られてもいるチーム」である。言い換えれば、大 東大は攻撃力が今一歩ながらディフェンスで頑張っているのに対し、拓殖大は 攻撃力があるもののディフェンスに課題を抱えているチームということになる。 ただし、対戦相手がそれぞれ違うこともあり、事はそう単純ではない。大東大 も本来は攻撃的なチームのはず。いつでも爆発できる潜在的な可能性は十分に ある。いろいろな展開が予想されるこの試合だが、一番強くイメージされたの は「激しい点の取り合い」なるのでは?ということだった。ただ、それも出場 メンバー(とくに大東大)に依存する部分が大きい。 ということで、まずは出場メンバーの確認から。大東大は予想通りNo.8にシリ ヴェヌシ、CTBにレプハを起用。流通経済大戦で手応えが得られたためか、 シーズン当初の上記二人による「ツインCTB構想」は変更になったようだ。 やはり、シリヴェヌシに核弾頭の役割を担わせて、FWでどんどん前に出ると いう方針で行くのだろう。あと、2戦目からの変更点としてはLOに大東大フ ァン待望の大窪(2年生)の復帰が挙げられる。このため、FWは森山と島田 がリザーブに回るという、他校からみれば何とも羨ましいバックアップ体制が 充実したメンバー構成となった。 拓殖大の方は左CTBにイーリ・ニコラス(1年生)が起用されているのが目 を引く。前節の東海大戦で平野が負傷退場したことにともなう出場と思われる。 緒戦の関東学院戦では、No.8として途中交替で出ているが本来はBKの選手。 アタック、ディフェンスの両面での活躍を期待したい。完全にリーグ戦グルー プの顔となった横山兄弟、そしてLOシオネ・バツベイやSOダニエル・ピー タースは今日も元気にスタメン登場。この試合が既にリーグ戦での4戦目にあ たり、1週間前には東海大に完膚無きまでに叩きのめされている拓殖大だが、 大事な後半戦に向けて頑張って欲しいところである。 [前半の戦い] 大東大の今シーズンのスローガンは「リバイバル」で、ジャージの色も黒から モスグリーンに戻っている。一方、拓殖大もジャージの色は緑が主体なので、 両チームの選手達がどんなスタイルで現れるか?と思っていたところで、拓殖 大フィフティーンが東海大を思わせる濃いブルーのセカンドジャージに身を包 んで登場した。ピッチに現れた選手達の表情を見る限り、先週のショッキング な大敗を引きずってはいないようだ。まずは一安心。その拓殖大のキックオフ で試合が始まった。 開始早々にしていきなり拓殖大が先制のチャンスを掴む。HWL付近からのラ インアウトを起点としてタップキックで大東大陣22m内に入りターンオーバ ーに成功。ここで大東大に反則があり拓殖大がゴール正面約12mの位置でP Kのチャンスを得る。リーグ戦グループでももっとも安定したプレースキッカ ーと言っていい拓殖大のSOダニエルが難なくゴールキックを決め、まずは拓 殖大が3点を先制。 続くキックオフからのリスタートでは横山兄弟が魅せてくれた。拓殖大のタッ チキックがノータッチとなったところで大東大がカウンターアタックを試みる が拓殖大はターンオーバーに成功。HWL付近からボールが左オープンに展開 されCTB(13番)の横山伸一が大東大ゴールに向かって絶妙のチップキッ ク。そしてWTB(14番)の横山健一が快足を飛ばしてゴール前でボールを 拾い、そのままグラウンディングに成功。GKは左隅の難しい位置からだった がダニエルのキックはクロスバーの真ん中を越えた。開始4分にして拓殖大は 10点のリードを奪う幸先のよいスタートとなった。 しかし、大東大も負けていない。こちらは流通経済大戦に引き続いてNo.8での 出場となったシリヴェヌシがエンジン全開となる。7分、拓殖大陣(10m/22m) でのラインアウトから大東大はモールで前進しシリヴェヌシがサイドアタック で大きく前進。22m内からオープンに展開したところで大東大はスローフォ ワードを犯すが、拓殖大に反則がありゴール正面でPKのチャンスを得る。W TB増野が慎重にPGを決め、大東大はまず3点を返す。 これで一息ついた大東大は畳みかける。拓殖大の反則(オブストラクション) により拓殖大陣22m付近でラインアウトのチャンス。スローインが後ろに抜 けて失敗かと思われたが大東大はボールの確保に成功してオープンに展開。ゴ ール前ラックからさらに右に展開してボールはライン参加していたNo.8のシリ ヴェヌシに渡る。ここは強行突破か、それとも右オープンにパスか、と思われ たが選択されたプレーはなんとチップキック?! しかしボールは拓殖大ゴー ルライン付近の絶妙に位置に転がり、タイミングよく走り込んだCTB塩見が グラウンディングに成功。まるで拓殖大が数分前に見せたプレーとサイドが違 うだけで、あたかも狙っていたかのようなプレーの再現には本当にびっくり。 余談ながら、主役のシリヴェヌシはフィリピーネ(大東大OBで現役のトンガ 代表)の弟。フィリピーネは巨体に似合わず(といっては失礼だが)、多彩な パス(SH不要のスクラムからのダイレクトパスは特に印象深い)やキック、 そしてステップワークなどの小技をたびたび披露した器用な選手だった。ちょ っと大げさかもしれないが大学ラグビー史上屈指のエンターテイナーと言って もいい。どうやら血は争えないようだ。前半はシリヴェヌシがサイドアタック やライン参加で大活躍を見せる。また、シリヴェヌシには必ずと言っていいく らいレプハがフォローしており、まさに強力な2段ロケットといった感じ。 それほど難しくない位置からのゴールキックは外れてしまったが、キックオフ から11分にして大東大は8−10と2点差に詰め寄る。やはり本日は点の取 り合いになりそうだ。両チームともオープン展開を指向するチームだが、キッ クからのカウンターアタック合戦、ラックでのターンオーバーによる逆襲が相 次いだりと、とにかくボールがよく動く。横山兄弟やシリヴェヌシら「個人」 の活躍が目立つ展開ではあるが、見ていてなかなか楽しい。拓殖大ではSOダ ニエルの正確なロングキックが冴えていた。CTBのニコラスも落ち着いたプ レーぶりで合格点といったところだろうか。両チーム激しく攻め合うものの、 試合はしばらく膠着状態となった。 前半も終盤に近づいた31分、ようやく得点板が動く。大東大が自陣10m付 近でのスクラムからシリヴェヌシがサイドアタックで前進を図るものの、ラッ クで拓殖大がターンオーバーに成功。SOダニエルが大東大のディフェンダー を巧くかわしながら大きくゲインしパスはLOのバツベイに渡る。バツベイは ゴール直前でタックルにあって倒されながらもインゴールまで到達してトライ に成功。左中間からのGKも成功し拓殖大がリードを9点に拡げる。 しかし、大東大も簡単には引き下がれない。直後の35分、拓殖大陣22m内 でのラインアウトからFWがサイドアタックで前進し、オープンに展開。ゴー ル前のラックからのパスを受けたPR須藤がインゴールに飛び込んだ。FWで クラッシュせずにパスを繋いで決めた大東大らしいトライ。もちろん、このト ライが後半の大東大爆発の伏線となったことはこの段階では知る由もない。今 度はゴールキックも成功し、大東大のビハインドは再び2点に縮まる。 しかしもしかし、その直後の37分にこの試合最大の見せ場がやってきた。主 役は拓殖大のCTB横山伸一。大東大キックオフからカウンターアタックで起 点は自陣の22m内の中央付近。ボールを持った横山は一気にスパートしてゴ ールをめざし始めた。もちろん、前方には大東大の選手達がたくさんいる。し かし、一人かわし、二人かわしと力強く前進を続けているうちに大東大陣22 m付近にまで達し残るは一人! 必至に食らいつこうとするもののその最後の 一人も振り切って横山はインゴールに到達してしまった。斬りかかってくる相 手を次から次へと倒していく剣豪武蔵といった感じ。横山のスパイクにはピッ チからの反発力を100%以上吸収する特別のポイントが付いているかのよう な、全くロスのないランニングだった。 ここでの大東大の敗因はことごとく1対1の勝負を挑む形になってしまったこ とに尽きると思う。タックルに行くFWの選手の表情には「エッ、次は俺の番 なの?」という雰囲気も読み取れた。先週の東海大の場合は「青い壁」を築い て前進を許さず、二人がかりあるいは時に三人がかりのタックルで二人のエー スの完封に成功していた。東海大の組織ディフェンスの素晴らしさがよくわか った瞬間でもあった。拓殖大は終了間際にも大東大の自陣ゴール前での反則に 乗じてタップキックからSH佐藤がトライを奪う。GKも成功して29−15。 法政に続いて大東大からも勝利をもぎ取ってしまうのだろうか? [後半の戦い] 後半、大東大は思い切ってメンバーを替えてきた。前半大活躍だったNo.8のシ リヴェヌシに替えて島田、FBの辻に替えてファマオ・テアウパ(1年生で、 186cm,98kg)を投入。が、このメンバーチェンジが効を奏す。シリヴェヌシの 活躍が目立つ前半だったが、後半はNo.8に入った島田を中心にFW8人のまと まりがよくなった。島田はベンチで「試合に出たい」という想いを強くしてい たに違いない。大窪の復帰で同じくリザーブに入った森山もたぶんそうだろう。 開始早々の2分、大東大は拓殖大陣(10m/22m)のラインアウトからモールで前 進し、オープン展開による連続攻撃から拓殖大ゴール前でラック。ここから出 たボールをパスを受けたLO大窪がインゴールで押さえ、左隅の難しい位置か らのゴールキックを増野が成功させる。これで22−29とビハインドは7点 となり、大東大が乗ってきた。11分には拓殖大陣22mでのラインアウトか らモールを押し込んでFL林がトライ。ゴールキックは失敗したが27−29。 FWのまとまりをエネルギーとした大東大の「全員攻撃」の勢いは止まらない。 18分には拓殖大陣22m手前付近のスクラムからNo.8島田がサイドアタック で前進しラック。ここからSO出村が後ろに抜け出てトライを奪った。またも GKは失敗したが32−29と遂に大東大は大逆転に成功する。このままでは 終われない拓殖大も反撃を見せる。22分にはCTB横山伸一がカウンターア タックから大きく前進して大東大陣22m内に入りラストパス、と思われたが パスを受けたのは大東大の選手。横山のランには(残念ながら)味方も追いつ けない。拓殖大選手に明らかに疲れが見え始め、せっかくオープンに展開して も接点でターンオーバーされることが多くなってきた。 完全に波に乗った大東大は畳みかける。28分にはPGを成功させてリードを 6点に拡げる。拓殖大は1トライ1ゴールで逆転可能なのだが、大東大はさら に1トライを追加する。32分、HWL付近でのターンオーバーを起点として オープンに展開し、ボールはライン参加した大窪からWTB吉田に渡る。ボー ルを受けた吉田は拓殖大の横山健一をも振り切る快走を見せてタッチライン際 をインゴールまで駆け抜けゴール中央にトライ。LO大窪は今シーズン初登場 だが、ブランクを感じさせない溌剌としたプレーを見せたことが大東大にとっ ては心強い。怒濤の4連続トライ+1PGで大東大は一気にリードを13点に 拡げた。 しかし、得点差は2トライ2ゴールで逆転可能な13点である。拓殖大は土壇 場での再逆転に向けて最後の力を振り絞る。40分にはWTB茂野が大東大ゴ ール前で得たPKからのクイックリスタートで左中間に飛び込みトライ。ゴー ルキックが成功すれば「注文通り」の6点差となるはずだった。が、頼みのダ ニエルがGKを外してしまった。沈着冷静な司令塔にも相当なプレッシャーが かかっていたのだろうか。時計が40分を過ぎたところでインジュリータイム は2分のアナウンス。8点のビハインドは厳しく、ここで勝負ありとなった。 勝利をほぼ手中にし、元気いっぱいの大東大は最後まで攻め続ける。拓殖大陣 でのオープン展開からSO出村がインゴールに向けてキック。このボールが大 東大にとってラッキーバウンドとなり、レプハが捕獲してそのままグラウンデ ィング。右隅からのゴールキックも決まり、49−34で後半に息を吹き返し た大東大が激戦を制する形でノーサイドとなった。 [試合後の感想] ロースコアの試合は大歓迎と書いてしまった手前、とっても言いづらいのだが 今日の試合は観ていて本当に楽しかった。やはり、ボールが大きく動くラグビ ーは面白い。横山伸一の何人抜いたかわからないトライはこの日の最大のハイ ライトだった。ただ、やはり「個人」では勝てないのがラグビーであることも よくわかった試合だった。緒戦の関東学院戦もそうだったが、拓殖大のトライ はカウンターアタックやターンオーバーから生まれたものが多い。一朝一夕で は難しいが、組み立てからフェイズを重ねていって横山兄弟がフィニッシャー になる形が作れればと思われる。 しぶとく逆転勝利を収めた大東大が調子を上げてきた。本日の後半を見る限り、 どうやら私の想定(シリヴェヌシがNo.8に定着)とは違う形でチームがまとま って行きそうな感じがする。FWは本日の後半のメンバーを主体とし、BKの CTBに(リンクプレーヤーになれる)レプハ、FBにファマオを配置する布 陣の方が強力なチームができあがりそうである。ライバルと目される関東学院、 そして東海大との戦いまではまだ時間がある。今後の戦いがますます楽しみに なってきた。 (2007年10月16日記) Top |
|||||||
本ウェブサイトの記述内容の無断転載を禁じます。 |