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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2007

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Weekly Report

大東文化大学 vs 立正大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2007/10/27) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 大東文化大学:前半: 0  0  1  0  3 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |   8  5
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 立正大学  :前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 1  1  1  0 10 |  10 10


◎出場メンバー

 大東 : 1.銭場 [2].森 3.須藤 4.松田 5.大窪 6.林 7.関戸 8.島田
      9.新川 10.出村 11.吉田 12.塩見 13.レプハ 14.荒川 15.ファマオ
     (16.川村 17.坂下 18.森山 19.シリヴェヌシ 20.生方 21.升屋 22.増野)

    ○交代 14→20(後12分入替), 11→21(後19分入替),  8→19(後32分入替)
        15→22(後32分入替)


 立正 : 1.小池 2.古館 3.月野 4.乙川 5.白倉 6.竹谷 7.川田 8.イシレリ
      [9].安部 10.佐藤浩 11.松坂 12.茅原中 13.シリバ 14.窪田 15.平山
     (16.古屋 17.佐藤隆 18.大山 19.ミロ 20.笠間 21.柴崎 22.平)

    ○交代 12→21(後 5分入替)


 レフリー :早藤嘉幸(関東協会公認)


◎得点経過

 大東文化大学  0    3                                             3
                    P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 立正大学    0                                                  0


 大東文化大学  3                                        8         8
                                                  T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
             G     P                        x       x
 立正大学    0   7     10                                      10


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 大東:前半10分 出村 (PG)
    後半39分 ファマオ(T)

 立正:後半 2分 平山 (T)、佐藤浩(G)
       8分 佐藤浩(PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

大東大には3人、立正大には4人、それぞれトンガまたはNZ出身の選手達が
居る。両校にとってリザーブも含めて彼らのどのような組み合わせで起用する
かは(贅沢な悩みではあるが)首脳陣にとっては悩ましいところではないだろ
うか。とくにFWとBKにそれぞれ特徴のある選手を揃えている場合はなおさ
らだと思う。例えば、FWに2人、FWとBKに一人ずつ、あるいはBKに2
人配置するという3つのオプションが考えられるが、そのいずれかを選択する
ことで、それぞれ別のタイプのチームができあがる。選択の幅が広い反面、大
学ラグビーのように、短いサイクルでチーム作りを行いながら結果も出さなけ
ればならない場合には、彼らの力を十分に引き出せないままシーズン終了とな
ってしまうことになりかねない。

そんなことを思いながら両チームのメンバー表を眺めてみる。大東大はBKに
トンガ出身選手を2人(CTBにレプハ・ラトゥイラ、FBにシオネ・ファマ
オ・テアウパ)起用。メンバー構成は少し違う(開幕時はもうひとりのCTB
にシリヴェヌシ・ナウランギを起用)が当初のチーム構想に戻ったようだ。も
ともとFWは人材豊富で、拓殖大戦の後半でもこの形(BKに2人)が機能し
たことから、シリヴェヌシはNo.8としてスーパーサブ的な起用という形に落ち
着いたのかもしれない。ここ数年、大東大はずっとFWに2人という形できて
いたのでチーム改造に近いが、果たして、この形で完成まで持って行けるか。

一方の立正大はこれで3戦連続でNo.8にイシレリ・ティウアナ・タカブ、CT
Bにシリバ・アヒオの組み合わせとなった。昨シーズンレギュラーで出ていた
ミロ・デビッド・キングスランドはリザーブで、シリバがCTBに定着(とみ
ていいだろう)したことで、今シーズンの立正大はBK展開で勝負という方針
がより明確になってきた。遠目のスタンドからの印象ではあるが、シリバはチ
ームに活力を与える明るいキャラクターの持ち主のように見える。下級生(2
年生)ではあるが、どんどんチームを引っ張っていって欲しい。

ただ...本日はあいにくの雨である。発達中の台風が急速に接近しており、
雨脚も強くなってきた。ピッチには水が浮いている部分もある。残念ながら、
シーズンを通してのチーム構想の確認、あるいは完成を目指すにはちょっと厳
しいコンディション。雨の日の戦い方の基本はキックを使ってなるべく敵陣で
試合をすること。それに主戦場はFW周辺になる。この想定外ともいえる雨の
影響は如何に?

[前半の戦い]

強い雨が降る中、立正大のキックオフで試合開始。大東大が自陣からFWでモ
ールを作って前進し立正大陣に向かってキック。これに対して立正大もキック
で再び大東大陣に入ろうとするがノータッチ。試合が始まったばかりというこ
とはさておいても、セオリーに従えば大東大もキックで敵陣を目指すはず。と
思ったが大東大はカウンターアタックからパスを回してノックオン。その後の
試合展開から見ても、立正大には自陣からはキックで敵陣に行くこで戦術が徹
底されていたようだが、大東大はBKの強力な2人を中心に展開していくコン
セプトだったのかもしれない。徹底されていたのかはわからないが。

立正大はHWL付近のスクラムからオープンに展開するがCTBシリバがタッ
クルを受けてノックオン。ここから大東大はカウンターアタックによる連続攻
撃で立正大22m付近まで到達したところで立正大にオフサイド。SO出村が
ほぼ正面のペナルティキックを難なく決めて、大東大が開始3分で幸先よく3
点を先制した。しかし、立正大はリスタートのキックオフから大東大にプレッ
シャーをかけSH安部が相手キックのチャージに成功。ボールは惜しくもイン
ゴールでタッチを割るが、大東大にハイタックルがあり立正大は大東大ゴール
前でPKのチャンスを得る。ここで立正大はスクラムを選択しNo.8イリレリが
サイドアタックでゴールを目指すが、ゴール付近でラックとなったところで立
正大がオフサイドを犯しチャンスを逃す。

11分、大東大が自陣10m付近のスクラムからオープンに展開しキック。カ
ウンターアタックを試みた立正大選手がタックルを受けてノットリリースの反
則を犯す。大東大PKのタッチキックは立正大陣22m内に到達し、大東大に
追加点のチャンスが生まれる。大東大はラインアウトからモールで前進を図る
が立正大にコラプシングの反則があり、再度ラインアウト。大東大はゴール前
のラックからオープンに展開し外までボールが回ればトライが濃厚の状況だっ
たがWTBに繋がるところでパスミスがありボールは無情にもタッチへ。

ここから両チームのキック合戦による陣地の取り合いが繰り広げられ、16分
には立正大が大東大陣22m内でスクラムのチャンスを得る。が、うまくスク
ラムがくめず(アーリーエンゲージ?)によるFKを大東大に与えてしまう。
また、雨の影響でノックオンなどのミスが多く、なかなか攻撃が繋がらない状
況。23分、立正大は自陣10m付近のラインアウトからオープンに展開し、
CTBシリバが好タッチキックで大東大陣へ。立正大のBK陣では「突破役」
として期待されるシリバだが、実は安定したキッカーでもある。蹴り合いにな
ると、最後はシリバのタッチキックで大東大陣に入る展開で終わることが多か
ったのがこの日の立正大には有利に作用した。

降りしきる雨の中、得点板が全く動くことなく試合が進んでいく。前半も終盤
にさしかかった36分、立正大が大東大陣(10m/22m)のスクラムで反則を犯
し、ここからのPK(タッチキック)をきっかけに大東大が追加点のチャンス
を掴む。立正大陣22m内のラインアウトから大東大はモールを経てFWのサ
イドアタックで前進を図るもののノックオン。立正大タッチキックからのやり
直しのラインアウトで、大東大はスピード感溢れるモール攻撃で一気にゴール
を目指すが、立正大がたまらずコラプシング。立正大は自陣ゴールを背に大東
大の猛攻に耐える時間帯となった。

続くラインアウトから大東大は再びオープンに展開して前進し、逆サイドのイ
ンゴールに向けてトライを狙ったキックパスを試みるが失敗。だが、その前に
立正大に反則があり、大東大は残り時間がなくなってきた(41分)ことから
FWで攻め続ける。執拗なサイドアタックで確実にゴールに近づいていきFW
でゴール中央にトライ!と思われたが、惜しくもインゴールノックオン。立正
大が何とか耐え凌ぎ、前半終了となった。粘り強く守りきった立正大FWをほ
めるべきだが、大東大としてはここで追加点を奪えなかったことが痛かった。

[後半の戦い]

台風が近づいているためか、雨脚は確実に強くなってきている。前半の状況か
ら見てもBKに大きく展開しての得点は難しい状況で、大東大に動きがあるか
と思われたが、メンバー変更はなく後半が始まる。戦況を変えるためために、
後半の頭から思い切ってトンガ出身の選手を替えてくることがままあるラトゥ
監督だが、まだしばらくはこの布陣(レプハとファマオの組み合わせ)で行く
ようだ。

大東大のキックオフに対する立正大の蹴り返しが好タッチキックとなり、立正
大は一気に大東大陣(10m/22m)まで前進。ラインアウトから大東大がタッチ
を狙ったキックがノータッチとなり、立正大のNo.8イシレリがカウンターアタ
ックで爆走する。大東大ディフェンダーをなぎ倒しながら力強く前進を図り、
大東大陣22m付近まで到達したところでラック。ここから立正大はSO佐藤
が左オープン側のタッチラインに向けてハイパント。これが絶妙のキックパス
となり、インゴールに走り込んだFB平山がダイレクトキャッチに成功しその
ままボールをタッチダウン。サインプレーだったのか閃きだったのかは不明だ
が、これ以上は望めないという位のドンぴしゃの「パス」だった。左サイドの
難しい位置からのゴールキックを佐藤が慎重に決め、立正大は後半開始早々に
して7−3と逆転に成功した。

勢いに乗った立正大はさらに大東大ゴールを脅かす。5分にはスクラム大東大
陣10m付近でのスクラムからハイパント攻撃に対し、大東大が自陣22m付
近でノックオンを犯す。立正大は前進した位置からのスクラムで再度ハイパン
トでインゴールへ。ゴール前の位置で大東大選手がノックオンオフサイドを犯
し立正大にペナルティが与えられる。立正大選手の前に出る厳しいプレッシャ
ーが呼び込んだミスの連鎖とも言える。ゴール正面やや右の位置からのPGを
SO佐藤が難なく決め、立正大がリードを7点に拡げた。このとき時計は8分。
立正大応援席のボルテージはさらに上がる。

しかし、大東大もここから反撃に転じる。11分、立正大陣(10m/22m)のラ
インアウトで相手ボールのスチールに成功し、オープン展開で立正大ゴールに
迫るが惜しくもノックオン。13分には立正大のタッチキックがノータッチと
なって大東大はHWL付近からカウンターアタックのチャンスを得るが、ここ
でもノックオン。17分のHWL付近のラインアウトでもノットストレートと
大東大はミスの連鎖でなかなか波にのれない。だが、大東大は直後のスクラム
でホイールに成功しマイボールを奪い返す。そして、スクラムからのハイパン
トに対し、今度は立正大がノックオン。今度は立正大のミスの連鎖により、大
東大の方にゲームの流れが大きく傾くかに見えた。

20分には大東大は立正大陣(10m/22m)でのスクラムから8→9でショート
サイドを攻めるが立正大陣22mを越えたところでタッチに押し出される。続
く21分、立正大陣22m内でのスクラムからのNo.8島田のサイドアタックも
ゴール目前でノットリリース。25分には立正大陣(10m/22m)でのラインア
ウトから連続攻撃で立正大ゴールに到達するものの惜しくもパイルアップ。そ
して、28分には立正大陣22m内でのラインアウトの絶好のチャンスを掴む
がノックオン。立正大の身体を張った粘り強いディフェンスに逢って、大東大
が攻めあぐむ状態が続く。

30分を越えたあたりから、台風接近の影響で場内も暗くなり風雨がいっそう
激しくなる。スタンドの屋根の下にも雨が降り込んでくる状況の中で激戦は続
く。32分となったところで、大東大はようやくFWにシリヴェヌシを投入し
た。33分、立正大は大東大陣の10mライン付近で得たペナルティから佐藤
がPGを狙うが外れる。ここで敗れると優勝戦線からの後退を余儀なくされる
大東大は死力を尽くして反撃を試みる。36分にHWL付近のラインアウト起
点のオープンキックは立正大のゴールラインまで到達し、立正大選手がこれを
からくもセーブしてキャリーバック。

大東大は5mスクラムのチャンスからオープンに展開し、センタークラッシュ
の2次攻撃からパスはさらに左サイドへ。ここで私の左側に「立ち上がった人
間の壁」が築かれてしまい視界不能となる。どうやらW杯ならビデオ判定に持
ち込まれるようなトライに関わる際どい状況が発生したようだ。が、次の瞬間、
大東大応援席からは大歓声、立正大応援席からは悲鳴が上がった。土壇場で大
東大が2点差まで詰め寄った瞬間だった。左サイドの難しい位置からのGKは
失敗に終わるが、大東大は1PGで逆転可能。また、そのための時間は2分余
り残されている。

立正大は前節の法政戦で僅か1点に泣いている。ここは何とか逃げ切りたい。
リスタートのキックオフから大東大陣に向けて最後の力を振り絞ってプレッシ
ャーをかける。ここで大東大に痛恨のペナルティ。立正大はタッチキックでゴ
ール前でのラインアウトを選択するかと思われたが、遠目で左中間の位置なが
らPGを狙う。このキックは右に外れて大東大が自陣22m内からカウンター
アタック。残り時間から考えても大東大はプレーを切ることができない。立正
大はオフサイドに気をつけつつ大東大のアタックを止め続ける。そしてボール
はタッチへ。

しばらく間が開いた後、ノーサイドを告げるホイッスルが鳴り、ピッチの上の
立正大選手達が飛び上がって歓びを爆発させた。また、強い雨の中、屋根の下
で熱い声援を送り続けていた立正大の部員達は、歓びを分かち合おうと全員ス
タンドの最前列まで駆け下りる。なるほど、チームがひとつになるというのは
こういうことなのかと思った。とても感動的な幕切れだった。

[試合後の感想]

先週、僅か1点差で法政に敗れた立正大だったが、意気消沈することもなく、
そこで確かな手応えを得たようだ。監督の与えたシンプルな戦術(とにかく敵
陣で試合をすること)を確実に実行した選手達が「大きな1勝」を手にした。
シリバの確実なキックが印象に残るが、それもFWからの安定した球出しがあ
ったからこそ。大東大の猛攻を身体を張って止め、BKに生きた球を供給し続
けたFWの健闘なくしてこの勝利はなかったものと思われる。堀越監督の(選
手達が身体で覚えるまで我慢に我慢を重ねた)ラグビーがようやく結実したと
言っていいかもしれない。この勝利が立正大の新たな歴史を作ることになれば
リーグ戦ファンとしては(それを見届けることができたという意味で)とても
嬉しい。

大東大にとっては、ようやくチームの方向性が堅まってきたところで雨天の試
合となってしまったのは不運だったかもしれない。ノックオン、そしてライン
アウトでのミスで自滅してしまった感がある。しかし、敗因を突き詰めていけ
ば、大東大FWが立正大の気迫に押されて攻めきれなかったことが大きいよう
に思われる。大東大は永らくどうしても(二人分の働きをする)強力な選手に
頼ってしまう部分があったことは否めない。ただ、本日のメンバー構成でいく
なら自分たちのまとまりで勝負するしかないし、またその力を持ったFWのは
ずである。この敗戦で大東大は優勝争いからは1.5歩くらい後退となってし
まったがチャンスが消えたわけではない。この敗戦を糧に後半戦こそは爆発し
て欲しいと思う。                 (2007年10月28日記)

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