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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2007

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Weekly Report

関東学院大学 vs 東海大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2007/10/28) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 関東学院大学:前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 4  1  0  0 22 |  22 10
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 東海大学  :前半: 2  2  0  0 14 |
       :後半: 1  1  0  0  7 |  21 12


◎出場メンバー

 関東 : 1.西垣 2.設楽 3.原田 4.西 5.北川 6.安藤 7.清水 8.土佐
      9.細川 10.木村 11.朝見 12.森田 13.笹倉 14.山口 [15].中園
     (16.宮城 17.高坂 18.梅埜 19.草下 20.本村 21.三輪 22.夏井)

    ○交代 15→22(前29分交替), 12→21(後 0分入替),  4→19(後 3分入替)


 東海 : 1.宍戸 2.岸 3.熊谷 4.リーチ 5.杉浦 [6].宮本誉 7.荒木 8.マウ
      9.鶴田 10.津田 11.山田 12.森脇 13.山内 14.新井 15.森功
     (16.三上 17.宮本陽 18.斉藤 19.東 20.辻埜 21.望月 22.菅生)

    ○交代 12→21(後32分入替)


 レフリー :桜岡将博(日本協会公認)


◎得点経過

 関東学院大学  0                                                  0
                 
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                    G      G
 東海大学    0                          7      14              14


 関東学院大学  0       5            10         15    22          22
                 T            T          T     G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                        G
 東海大学   14              21                                 21

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 関東:後半 6分 山口 (T)
      19分 夏井 (T)
      30分 夏井 (T)
      36分 三輪 (T)、山口 (G)

 東海:前半25分 岸  (T)、森功 (G)
      32分 荒木 (T)、森功 (G)
    後半13分 森功 (T)、森功 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

頂上決戦である。2001年度から昨年度までは6シーズン連続で(基本的に)最
終節に行われる関東学院と法政の戦いが優勝校を決める試合だった。しかしな
がら、今シーズンは関東学院と東海大の2校の実力が抜きんでている。関東学
院のライバル法政はここまで既に2敗。また、3戦全勝だった大東大も昨日行
われた立正大戦に敗れたため、例年より約1ヶ月早い(事実上の)決戦となっ
た。前日は台風接近の余波を受けて、1日中強い雨が降り続いた関東地方だっ
たが、本日は抜けるような青空が拡がる快晴。絶好のラグビー日和となった。

さて、例年に比べて仕上がりの遅れが心配された関東学院だが、メンバーも固
定されいよいよ大学選手権連覇に向けて本格的にチームが動き出した。FWは
スクラムに自信を持つ第1列、学生屈指のツインタワーの第2列、そして機動
力抜群の仕事人が揃った第3列により構成された豪華メンバー。また、ベテラ
ン達が卒業して再構築となったBK陣も急速に成長を遂げている。中園主将は
当初の構想通りFBに定着したようだ。そして、司令塔に指名されたSO木村
がこの豪華な陣容をどのようにまとめていくかが楽しみ。

目標とする「大学日本一」が夢から現実へと近づきつつある東海大はこの試合
に照準を合わせてチーム状態を整えてきている。緒戦からほぼ固定されたメン
バーで試合を重ねてきているのが強み。チームの完成度の面では東海大の方が
関東学院を上回っているように思える。持ち前のスピードとテンポのよいアタ
ックで関東学院を翻弄することができれば勝機も開けてくるはず。ここまでの
4試合で失トライは僅かに1つ(流通経済大戦)で、それもディフェンスが崩
されたものではなかった。心配される点を挙げれば、去年のように気合いが入
りすぎて空回りしてしまうことだが、今年のチームはメンタル面でも落ち着い
ている。特別な試合ではあるが、普段着のラグビーで戦って欲しい。

[前半の戦い]

昨シーズンは関東学院がセカンドジャージ(白)だったが、今シーズンは東海
大が白のジャージで登場。ファーストジャージを着た関東学院のキックオフで
熱戦の火蓋が切られた。キックオフのリターンからいきなり東海大がHO岸→
No.8マウ→HO岸と繋いで関東学院の防御網を力強く縦に突破する。東海大は
気合い十分。だが、気負いはない。HWLを越えた辺りで東海大はボールをオ
ープンに展開しWTBがショートパントで関東学院のデンジャラスゾーンを攻
める。しかし、ここから関東学院のFB中園が切り返してボールを前に運びオ
ープンに展開。HWL付近で東海大に止められてオフサイドとなるが、開始早
々にしてボールが大きく動く継続ラグビーの応酬が見られた。

東海大は関東学院陣22m手前のラインアウトから攻撃したところで関東学院
にハイタックルがあり、PKからさらに前進した位置の関東学院ゴール前での
ラインアウトという先制のチャンスを得る。しかしながら、ラックからのオー
プン展開で関東学院にターンオーバーされてしまう。関東学院はノックオンを
犯すものの、東海大にオフサイドの反則がありピンチを逃れた。直後の関東学
院のPKはノータッチとなり、東海大は自陣からキックを使わずに連続攻撃で
攻める。が、ボールがHWLを越えた辺りでパイルアップ。東海大はしっかり
継続ができているものの、関東学院も接点でしっかり踏みとどまっている。東
海大はいつものような速いテンポの球出しができない。アタックのスピードは
いつもの70%位の感じで、相手はこれまでの対戦校とは明らかに違う。

序盤は東海大が押し気味の展開で時計が進む。しかし、8分、関東学院が自陣
10m付近で得たPKからチャンスを掴む。東海大陣22m付近からのライン
アウトからオープンに展開したところで東海大に反則があり、関東学院はタッ
プキックで東海大陣22mラインを突破するが、タックルに逢ってノットリリ
ースの反則。東海大はPKからラインアウトを経てオープン展開で攻めるもの
の再び反則を犯し、関東学院に再度先制点のチャンス(東海大ゴール前でのラ
インアウト)が訪れる。関東学院はここから連続攻撃で東海大ゴールに迫り、
ラックで東海大がノックオン。東海大ゴール前での関東学院ボールスクラムと
なるが、関東学院はサイドアタックでパスミス。東海大はカウンターアタック
から左サイドを攻め上がるもののタッチに押し出されてしまう。

オープン展開によるグランドを一杯に使ったアタック、相手を簡単にはゲイン
させない確実なタックル、接点での激しいボールの奪い合い、ピンチを一蹴り
でチャンスに変えてしまう効果的なキック、といったように「決戦」にふさわ
しい緊迫した内容の攻防が展開される中、時計はどんどん進んでいく。しかし、
25分、ついに均衡が破れた。東海大は関東学院の反則(インテンショナルノ
ックオン)をきっかけとして、関東学院ゴール前でのラインアウトのチャンス
を掴む。モールを押し込みゴール前に達したところで、両チームのFWが築い
た壁(スクリーン)の東海大側最後列に位置したHO岸がインゴールに飛び込
むチャンスを伺う。東海大の得意とする形だが、岸が小柄ということもあって
関東学院の選手達からは(おそらく)見えない。と、一瞬のタイミングで岸は
ゴールラインを越え、グラウンディングに成功してしまった。FB森が右中間
からのゴールキックを慎重に決め、まずは東海大が7点を先制した。

この得点で勢いを得た東海大は積極的に攻める。直後の関東学院のキックオフ
に対して、自陣からオープンに展開する。ボールがWTBまで回ったところで
パスミスがあり、関東学院のFB中園に逆襲を許すがNo.8マウが止めた。30
分に関東学院が東海大ゴール前でマイボールスクラムから左オープンに展開し
て東海大ゴールを脅かすが、東海大が粘り強いタックルで関東学院選手をタッ
チに押し出す。東海大のラインアウトを起点としたタッチキックはノータッチ
となり、関東学院がカウンターアタックで攻め上がってくる。ところが、HW
L付近でラックとなったところで東海大のFL荒木がボールの奪取に成功。前
が完全に開いている状態で追走する関東学院の選手を振り切り、荒木はゴール
中央にグラウンディング。前半32分でリードが14点に拡がる予想外の展開
に、東海大応援席の興奮は頂点に達する。

リスタートのキックオフに対する東海大の蹴り返しがノータッチとなり、関東
学院がカウンターアタックで攻めるものの、FWが混乱状態というかバラバラ
になりかけている印象。スピードはいつも7〜8割ながら、やはり東海大の速
い攻めは効果的。勢いに乗る東海大は前半終了間際にも絶好の追加点のチャン
スを掴む。39分、関東学院ゴール前でのマイボールスクラムからサイドアタ
ックで前進しモールを形成したところで関東学院にコラプシング。ラインアウ
トからラックを経てオープンに展開しゴールラインに迫るものの、あと一歩前
に出ることができない。結局、東海大は関東学院ディフェンス陣の厚い壁に阻
まれて追加点を奪うことができずに前半が終了。緊張の糸が切れることなく、
40分間があっという間に過ぎてしまった印象。東海大にとっては理想的な試
合運びだったが、願わくばあと1本取っておきたかったところ、ではあった。

[後半の戦い]

前半リードを奪われたと言っても、関東学院は試合巧者。後半はどのように立
て直してくるだろうか。野球にピンチの後にチャンス在りという言葉があるが、
ラグビーの場合は、前半終了間際のピンチの後にチャンス在りといったところ
だろうか。後半の立ち上がりで戦況ががらっと変わることがあるのがラグビー
の面白さであり、怖さでもある。東海大は前半の緊張感を保ったまま後半に入
りたいところ。

東海大はキックオフから関東学院にプレッシャーをかけるがノックオン。関東
学院のスクラムを起点としたキックに対する東海大の蹴り返しがダイレクトタ
ッチとなる。う〜ん、何となく怪しくなってきたぞ。ここで、一瞬だがある種
の懐かしい空気がグランド内に漂ったのが感じられた。過去の東海大の試合で
はよくあった選手達がテンションがふーっと下がってエアポケットに落ちる感
覚といったらいいだろうか。今シーズン私がここまで観てきた4試合では気づ
くことのなかった現象である。14点のリードで選手達が安心してしまったと
いうことはないと思うが。

関東学院の選手達がそんな雰囲気を感じたかどうかは(もちろん)わからない
が、関東学院は後半、明らかに戦術を変えてきた。まず、FW周辺をじっくり
攻めてからオープンに展開する形で攻める。ハーフタイムで、「相手のペース
に巻き込まれるな。FWはお前達の方が強いのだから、自分たちのペースでじ
っくり攻めれば勝てる。」といったような指示が首脳陣から出たのかもしれな
い。戦術面でも鍛えられた強いFWを持つと言うことは、(相手を破壊するこ
とだけでなく)ゲームをコントロール(構築)する力を持つことでもある。リ
ードされている関東学院に落ち着きが見え始め、逆にリードしている東海大の
方にやや浮き足立った様子が見られるようになってきた。

そんな戦況に変化が見られ出した中での6分、ついに東海大の堅いディフェン
ス網がこじ開けられた。関東学院が自陣からのカウンターアタックでオープン
に展開しWTB山口が東海大のデンジャラスゾーンに絶妙のキック。山口は快
足を飛ばして自らボールを拾いトライを奪った。ゴールキックは失敗したが、
関東学院が5点を返す。リスタートのキックオフから東海大はオープン展開に
よるアタックを試みる。HO岸がディフェンダーを十分引きつけて放ったロン
グパスは「ナイスパス」に見えたが惜しくもスローフォワード。ゲームの流れ
はどんどん関東学院の方に傾いていく。

東海大もこのままずるずる行くわけにはいいかない。13分に東海大はFB森
がカウンターアタックから関東学院のウラにキックしたボールを拾ってゴール
ラインを越えた。ゴールキックも成功して21−5とリードを拡げる。これで
東海大は関東学院に傾いた試合の流れを引き戻すかに見えた。しかしながらの
17分だった。東海大の自陣からのPKがノータッチとなり関東学院が東海大
陣に向けてボールを蹴り返す。待ち受けた東海大選手の前でボールはワンバウ
ンド、と思いきや何と選手に向かってタテにまっすぐ転がりタッチに出てしま
った。一番確率の低い想定外の転がり方に身体が反応できなかったのかもしれ
ない。「触ってないよ!」のジェスチャーもむなしく関東学院ボールのライン
アウトに。

一度相手に傾いてしまった試合の流れを引き戻すのは難しい。東海大はライン
アウトでターンオーバーに成功するものの、パスを速く短く無理に繋ごうとし
て選手間でお手玉状態となる場面も。リードしているのだから東海大は浮き足
立つ必要はまったくない。思わず「落ち着け!」と叫びたくなってしまう。そ
んな状況を見透かすかのように、関東学院はペナルティから素早くオープンに
展開しボールはライン参加したFB夏井(前半29分から負傷退場の中園主将
に替わって登場)に渡る。「最高の状態」でパスを受けた夏井は東海大ディフ
ェンダーを振り切ってトライ。ゴールキックはまたも失敗したが10−21と
関東学院のビハインドは11点に縮まる。

WTBまでボールが回る回数は東海大の方が多い。が、そこから東海大の攻撃
は手詰まりとなってしまうのに対し、関東学院は大外までボールが回った場合
には(選手はトップスピードになっていて)トライまでの道筋ができている。
関東学院はグランド上のどの位置からでも、アタックの場合は当然として、デ
ィフェンスの局面でもターンオーバーした場合を想定して得点を取るイメージ
を共有することを念頭において練習しているように思われる。関東学院に切り
返しからの流れるようなアタックによるトライが多いのはその好例。内にも外
にも抜かせない関東学院のディフェンスは流石といえるが、東海大にも一工夫
欲しいところ。

関東学院の逆転勝利に向けた攻撃は止まらない。30分、今度はスクラムを起
点とするオープン攻撃からまたもライン参加したFB夏井が東海大のディフェ
ンスをかわしてインゴールまで到達。ゴールキックは(またしても)失敗する
が、ついに関東学院のビハインドは1トライ1ゴールで逆転可能な6点に縮ま
る。東海大とっては前半には聞こえなかった背後からの追っ手の足音がはっき
りと聞こえるようになってきた。東海大はFWでボールをキープしながら時計
を進めようとするが痛恨のノットリリース。ここから関東学院はPKによるタ
ッチキックを経て東海大陣22m付近のラインアウトから逆転を目指す。ボー
ルはオープンに展開され、後半から森田に替わって出場したCTB三輪がライ
ンブレイクに成功して一直線で注文通りのゴールポスト真下に到達。このとき
時計は36分。土壇場にして関東学院は僅か1点差ながら逆転に成功した。

残り時間はどんどん少なくなっていく。今度は関東学院FWがボールキープす
る番だ。東海大は何とかターンオーバーしたいところだが、絶対に反則はでき
ない。この形になってしまえば、関東学院の方が1枚上手。結局、関東学院が
そのまま1点差を守りきり連覇に大きく前進する勝利を掴んだ。逆転の時間帯、
そして点差から見れば、関東学院が冷や汗をたっぷり掻いた勝利と言うことに
なるが、試合を観ていた感じでは不思議なことにそんな印象は受けなかった。
むしろ瞼に焼き付いたのは、ノーサイドの瞬間、がっくりと肩を落とした東海
大の選手達の方。ここで燃え尽きてしまわなければよいがと、ついつい要らぬ
心配をしてしまった。

[試合後の感想]

頂上決戦にふさわしい内容の濃い80分の戦いだった。これだけラグビーのい
ろいろな面白さを教えてくれる試合にはなかなかめぐり逢えない。緒戦の拓殖
大戦では前途に不安を抱かせた関東学院だったが、僅か1ヶ月半の間に急速な
仕上がりを見せたことには驚かされる。1年生が台頭するなど、今後ますます
成長を遂げていくことは必至で、大学選手権での活躍が本当に楽しみになって
きた。シーズン当初はFW主体のチームかと思ったが、本日はすべてBKに展
開してのトライであり、それも相手は堅守の東海大。しかし、本日の試合で一
番強く印象に残ったのは(東海大の健闘により引き出された)関東学院のゲー
ムコントロールの巧みさだった。

東海大は本当に残念だった。しかしながら、東海大の頑張りが関東学院の強さ
を引き出したとも言える。少なくとも東海大は昨年よりも確実に強くなってい
る。目標(大学日本一)まであと一歩のところまで来た。課題を挙げるとすれ
ば、それは「急ぎすぎないこと」だろうか。どんなにフィットネスを上げても
80分間高速展開を続けることは難しい。かといって、休む(テンションを落
とす)時間帯を意識的に作ることも難しい。選択と集中ではないが、ゲームを
コントロールしつつ、チャンスの局面で超高速になるラグビーができたら関東
学院とはまた違った継続ラグビーが完成するような気がする。とはいっても、
まだ大事な2試合が残っている。テンションを落とさずに戦って、来シーズン
こそは最終戦で頂上決戦ができるように頑張って欲しいと思う。
                         (2007年10月30日記)

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