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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2008

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関東学院大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2008/09/14) 於:ニッパツ三ツ沢球技場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 関東学院大学:前半: 1  0  0  0  5 |
       :後半: 3  2  1  0 22 |  27 15
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 0  0  0  0  0 |   0 13


◎出場メンバー

 関東 : 1.田中 [2].設楽 3.原田 4.清水 5.北川 6.安藤 7.古賀 8.草下
      9.細川 10.荒牧 11.太田 12.谷野 13.笹倉 14.長谷川 15.黒田
     (16.眞鍋 17.岡田 18.村下 19.辻井 20.大島 21.木村 22.吉田)

    ○交代  5→18(後35分入替)
    ●シンビン  4(後半26分)


 流経 : 1.長野 2.川西 3.今村 4.イシレリ 5.フィフィタ 6.山崎 7.鹿田 8.森谷
      [9].金城 10.小澤 11.高井 12.小浜 13.水谷 14.屋宜 15.小野寺
     (16.清田 17.前田 18.アッピネル 19.池野 20.比嘉 21.宮脇 22.小俣)

    ○交代 12→22(後15分入替),  3→16(後23分入替),  9→20(後42分入替)
    ●シンビン  4(前半38分) ,  5(後半13分)
    ※公式記録では前半38分のシンビンは8番となっているが4番の誤りと思われる。
     (試合では4番が8番、8番が7番のジャージを着用していた模様)


 レフリー :藤内有己(関東協会公認)


◎得点経過

 関東学院大学  0                            5                     5
                                            T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                             x
 流通経済大学  0                                                  0


 関東学院大学  5        10                      17        24 27  27
                  T                       G          G  P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
            x
 流通経済大学  0                                                  0


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 関東:前半27分 安藤 (T)
    後半 7分 設楽 (T)
      31分 谷野 (T)、荒牧 (G)
      42分 草下 (T)、荒牧 (G)
      45分 荒牧 (PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

いよいよ関東学院が公式戦に戻ってきた。そしてややもすれば殺伐とした雰囲
気になりかねない観客席に一服の清涼感をもたらすあの子供達の応援の声も。
能力の高い選手達が揃う関東学院といえども、全体練習を始めてから日が浅い
ことの影響はあるのだろうか。という思いを胸に抱きながらメンバー表に目を
向ける。No.8の土佐主将は負傷欠場とのことだが、FWはほぼ昨年度のメンバ
ーで固まっている。1列の設楽、原田、2列の北川、清水(昨年はFL)、3
列の安藤、草下と揃った陣容は大学屈指といえる。BKはエース笹倉を除き総
入れ替え状態だが、SOに起用された荒牧がFWから供給されるであろう安定
したボールをどう捌くかが楽しみ。

対する流通経済大は出場メンバーにサプライズがあることでは大東大と双璧と
言える。試合毎に臨機応変に対応するというよりも、メンバーや戦術を固めら
れずに苦しんでいる、というように昨シーズンの戦いからは感じられる。とい
うことでまず森谷の名前を探したのだが、FBにもWTBにもなしで一瞬?と
なった。が、No.8に森谷の名を無事発見。両LOはフィフィタ(3年)とイシ
レリ(新人)の大型選手(見るからにデカイ!)で固め、そこに森谷がNo.8と
して復帰ということでFWが一気にパワーアップした印象。でもこのサプライ
ズは想定内だ。むしろ驚きは主将代行を務めるSHの金城。私の知る限りおそ
らくこれが公式戦(1部)初登場のはず。3年の君嶋(負傷欠場?)ではなく
新人のSO小澤と構成するHBの動きにも注目したい。

(余談ながら、イシレリは8番、森谷は7番のジャージを着用していた。ちょ
っとしたアクシデント、例えば4番のジャージが小さすぎて着ることが出来な
かった、なんてこととかが発生したためだろうか?)

さて、関東学院を応援する子供達のことを書いたが、流通経済大サイドからも
心強いちびっ子達からの声援が聞こえる。地域密着型の組織作りを目指してい
る流通経済大学の地元竜ヶ崎からはるばるやってきたのだろうか。子供達を手
を繋ぎながらピッチに現れた選手達の姿には、どこか心を和ませるものがある。

[前半の戦い]

両サイドゴール裏に陣取ったちびっ子応援団達の声援がこだまする中、晴れで
微風の絶好のコンディションのもと関東学院のキックオフで試合開始。流経大
選手がファンブルしてボールがタッチを割る。関東学院は左サイド10m/22mの
ラインアウトからオープンに展開してゴールを目指すが、流通経済大にハイタ
ックルの反則。今度は22m内からのラインアウトだが、ここからも関東学院
は素早くオープンに展開する(ボールがWTBに渡ったところでタッチを割り
流経大ボール)。新ルールの影響かどうかはわからないが、関東学院はライン
アウトからはモールを作らずに素早くオープンへ展開する方針のようだ。

3分には流経大ゴール前でファーストスクラム(関東学院ボール)。流経大が
コラプシングの反則を犯したところで、関東学院はタップキックから速攻を仕
掛けて選手がゴールラインを越えたかと思われたが惜しくもパイルアップ。こ
こから前半の殆どの時間帯で流経大が自陣ゴールラインを背負って関東学院の
猛攻を耐え凌ぐという(内容の上では)圧倒的な関東学院ペースで試合が進め
られた。それにしても、スクラムがなかなかうまく組めない。遠目には巧者の
関東学院に流経大が自分たちのスクラムを組ませてもらえないように見えた。
関東学院にはパワーも経験もある原田や設楽が居るが、流経大の両PRは今期
からのメンバー。やはりここが安定しないと後ろに控えるパワフルな選手達が
活きない。

スクラムでは苦戦を強いられた流経大だがラインアウトは近年になく安定して
いる。元来流経大はラインアウトにもいろいろと工夫をしてきたチームだが、
今シーズンはLOフィフィタがジャンプしたところにタイミングよくボールが
投げ入れられるというシンプルなスタイル。殆どワンパターンなのだが古典的
とも言えるクリーンキャッチは見ていて気持ちがよい。そして得意のモールも
健在。しっかりとバインドして組むので最前列の選手が引き倒されても簡単に
は崩されないのは流石。今後の試合を観てみなければならないが、簡単にはモ
ールを捨てられない流経大のこだわりの強さが感じられる。対する関東学院も
「まずはしっかり組む」ことを念頭に置いて対応しているように見える。個人
的にはモールは最初から(安易に)引き倒そうと考えずにしっかり組んで欲し
いと思っているのでこの両チームの対応は歓迎したい。

FWにこだわりを持つ両チームの対戦だけに、話がちょっと脇道に逸れてしま
った。関東学院の流経大ゴール前での攻撃は続く。しかしながら、流経大も組
織的に整備されたディフェンスで凌ぐ。とくにFW周辺は鉄壁といってもいい
守りを見せ、関東学院にゴールを割らせないまま時計が進んでいく。なかなか
自陣から脱出できない流経大だが、18分に関東学院陣10mライン付近(右
中間)で得たPKのチャンスにSO小澤がゴールキックで先制点を狙うが外れ
る。逆に関東学院は20分、流経大陣10m/22mの位置でのラインアウトから素
早くオープンに展開し、見事にラインブレイクかと思われたが惜しくもスロー
フォワードとなる。さらに23分、流経大陣10m/22m(右サイド)のスクラム
からショートサイドを攻め、パスを受けた右WTB太田がタッチライン沿いを
快走するが、ゴール目前でタックルに遭いタッチに押し出された。

といったように関東学院が圧倒的にゲームを支配する中で27分、ようやく得
点板が動いた。流経大の自陣22m内からのタッチキックに対して関東学院の
FL安藤がチャージダウンに成功し、インゴールに向かって転がったボールを
安藤がそのまま拾い上げてトライ。右中間からのGKは失敗したが関東学院が
5点を先制した。昨シーズン、一気にブレイクした安藤だが、今シーズンはさ
らに大暴れしそうだ。この先制点で一息ついた関東学院。流経大は自陣22m
内から脱出する糸口も掴めない状態となる。しかし、流経大の粘り強いディフ
ェンスもあるが、実戦から遠ざかっていたためか関東学院にミスが出て、関東
学院は追加点を奪えない。

なかなか得点が奪えない関東学院に対し、自陣を背にして反抗に転じることが
できない流経大。双方のFWにフラストレーションが溜まっていく中で、38
分に流経大のLOイシレリがシンビンが適用される。劣勢の中でFWの核を失
うことになった流経大は大ピンチとなるが、この苦境を何とか凌ぎきった。前
半終了間際には、関東学院が流経大22m(右サイド)のラインアウトから素
早くオープンに展開しラストパスがWTBへ、というところだったがパスミス
で流経大は事なきを得た。ボールも地域も9割方支配し続けた関東学院だった
が得点は1トライの5点のみ。流経大の粘り強いディフェンスが光った前半の
戦いだった。

[後半の戦い]

前半圧倒的に攻めながらも得点できなかった関東学院。後半は早めに点を取っ
て楽に試合を進めたい。もちろん、得点を取りたいのは流経大も同じだが、そ
のためにもまずは敵陣にいく必要があるので、どうしても自陣からはハイパン
トで攻めることになる。本来は昨シーズンの入替戦で見せたようなオープン展
開指向のラグビーをしたい流経大だが、本日はSOがルーキーの小澤というこ
ともありキック主体となるのはやむを得ない。

何とか攻勢に転じるきっかけを掴みたい流経大。キックオフ直後に得たPKの
チャンスでSO小澤が再び関東学院陣10m付近からPGを狙うが外れる。4
分、今度は関東学院が自陣10mでのラインアウトを起点として安藤と古賀の
両FLのサイドアタックからビッグチャンスを掴む。ボールが流経大陣22m
内に運ばれたところでノックオンがあったが、リスタートのスクラム(流経大
ボール)で関東学院はターンオーバーに成功し流経大の反則を誘う。ゴール正
面のPGには絶好の位置だが、関東学院はここは狙わずラインアウトからゴー
ルを目指す。そして7分、関東学院はモールを押し込み最後はHOの設楽がイ
ンゴールに飛び込んだ。GKは失敗したが10−0となり、ここで関東学院が
完全にペースを握ったかに見えた。

しかしながら、ここから流経大の反撃が始まる。今度は前半とはうって変わっ
て関東学院が自陣22m内に釘付けの状態となる。シンビンで一時退場となっ
ていたイシレリも戦列に復帰し反撃体制も整った。10分にはラインアウトを
起点としてイシレリが縦に抜け、2→3とボールが渡るが惜しくもノックオン。
だが、ここで流経大にまたしても痛いイエローカードが。11分に関東陣22
m付近でのラインアウトからモールで前進を図ったところで、モールを引き倒
した関東学院LO北川を流経大のLOフィフィタが踏みつけてシンビンが適用
された。せっかく高まった反撃ムードに水を差す残念なプレーだった。キープ
レーヤーの相次ぐ戦線離脱は本当に痛い。今後の戦いではレフリーの目が厳し
くなることが予想されるので、自重して欲しいところ。

再び一人少なくなり苦しくなったはずの流経大だが、元気に攻め続ける。13
分にはHWL付近でのラインアウトから森谷の突破をきっかけとして一気に関
東学院ゴールに迫る。ラックから素早くボールがSOに渡った段階で左サイド
が流経大の完全なオーバーラップの状態になった。回して繋いでいけばトライ
かと思われたが、SO小澤の選択は左WTBへのインゴールに向けたキックパ
ス。残念ながらこのキックがタッチインゴールとなり、流経大応援席からは大
きなため息が漏れる。17分のスクラムを起点としたサイドアタックもゴール
ラインまで到達したがパイルアップ。流経大も関東学院の堅いディフェンスを
破ることができない。

10−0(関東学院リード)から得点板が動かない中で、今度は関東学院のL
O清水に反則の繰り返しによるシンビンが適用される。試合の流れは流経大に
傾く中で関東学院応援席に不安がよぎる。しかし、流経大は攻めきれない。2
8分、関東学院ゴール前で得たPKのチャンスでサインプレーによりトライを
狙う。が...周到に準備したはずのプレーが失敗(ノックオン)に終わりボ
ールが相手に渡ってカウンターアタックにより大きく陣地を戻される。12人
ラインアウトなどいろいろとスペシャルプレーを見せてくれる流経大だが、な
かなか決まらないところが残念。場内からは失笑も漏れる。

このプレーが結果的には関東学院にツキをもたらす。30分、関東学院が自陣
10m付近から蹴ったボールが流経大選手にあたり、そのボールが何と前にい
たCTB谷野への絶妙のパスになってしまった。谷野はそのままタッチライン
沿いを走りきりゴールラインを越えた。GKも成功し関東学院のリードは17
点に拡がった。優勢に試合を進めていた流経大にとっては何ともショッキング
な失点で、ここでほぼ勝負ありとなった。42分にはPKからの速攻でNo.8草
下がだめ押しのトライ。さらに終了間際の45分にSO荒牧がPGを決めて2
7−0。後半苦しみながらも、関東学院は緒戦を見事完封勝利で飾った。敗れ
た流経大も今後に期待を持たせる健闘ぶりを見せたことが強く印象に残った。

[試合後の感想]

後半攻め込まれたことと、FWとBKの連携が今一歩でやや不安を抱かせた関
東学院だが、選手個々の能力は高くリーグ戦グループで東海大と2強を形成す
ると見て間違いなさそうだ。メンバー的にも戦術的にもBKはこれからという
感じだが、FWはリーグ戦G最強で本日は欠場した土佐も戻ってくる。リーグ
戦序盤はFW中心で戦うことになりそうだが、いいボールがBKに供給され続
けることによりBKのアタックにも磨きがかかっていくものと思われる。エー
スに成長したCTB笹倉の他にどんなニュースターが出てくるか今後の楽しみ。

健闘及ばず初戦敗退の流経大だが、スクラムを除けば関東学院の強力FWとほ
ぼ互角に渡り合えたことで確かな手応えを掴んだのではないだろうか。過去の
チームと比べてもFWは流経大史上最強の陣容かも知れない。課題はBKのア
タックだが、FW戦で優位に立つことができれば森谷がFBの経験を生かす形
ライン参加するなどの攻撃のオプションが増えることになる。緒戦はキック主
体とならざるを得ない展開となったが、今シーズンこそはオープン展開により
得点を重ねる流経大のラグビーを見たいと思う。    (2008年9月16日記)

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