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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2008

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拓殖大学 vs 日本大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2008/09/21) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 拓殖大学  :前半: 1  1  0  0  7 |
       :後半: 2  2  1  0 17 |  24 14
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 日本大学  :前半: 0  0  4  0 12 |
       :後半: 1  1  2  0 13 |  25 17


◎出場メンバー

 拓殖 : 1.林 2.吉田 3.西 4.土井 5.牧野 [6].浦川 7.森谷 8.ナータ
      9.北川 10.ニコラス 11.茂野 12.ダニエル 13.平野 14.横山 15.高橋
     (16.島 17.川田 18.マレイ 19.角谷 20.大江 21.植田 22.橋爪)

    ○交代 7→19(後30分入替)


 日大:  1.仲村 2.豊田 3.星 [4].馬渕 5.サムエラ 6.森 7.甲斐 8.細田
      9.中村正 10.住吉 11.今中 12.三友 13.富加見 14.原岡 15.ピエイ
     (16.小松 17.和田 18.タリファ 19.江口 20.井上 21.中村誠 22.権)

    ○交代  7→18(後27分入替), 15→21(後27分入替)


 レフリー :鈴木正史(関東協会公認)


◎得点経過

 拓殖大学    0           7                                      7
                           G                        x
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                           P         P  DxP       P
 日本大学    0                 3         6    9       12       12


 拓殖大学    7         10 17             24                    24
                   P  G              G      x
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
              G                  P                 P
 日本大学   12    19                 22                25      25


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 拓殖:前半16分 茂野 (T)、ダニエル(G)
    後半 8分 ダニエル(PG)
      11分 牧野 (T)、ダニエル(G)
      26分 認定T(T)、ダニエル(G)

 日大:前半16分 三友 (PG)
      26分 三友 (PG)
      31分 三友 (PG)
      39分 三友 (PG)
    後半 3分 サムエラ(T)、三友 (G)
      22分 三友 (PG)
      40分 三友 (PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

拓殖大、日大とも緒戦を落とし、この試合は両チームにとって今期初勝利を狙
う戦い、であると同時にこれから早くも始まりそうなサバイバルレースで生き
残るためにも負けられない1戦と言える。そんなことを思うのも、昨シーズン
3位に上り詰めた拓殖大がスタートで躓き、今シーズン1部復帰を果たした日
大が東海大を相手にまずまずの滑り出しを見せたから。緒戦での戦いぶりを見
た限り、チームの仕上がりは日大の方がよさそうで、拓殖大はBKメンバーの
固定?も含めて巻き返しを図りたいところ。

拓殖大のスタメンでは初陣はCTBで起用されたピータースの動向に注目した
が、本日もSOではなくCTBで登場。代わりにSOに起用されたのが緒戦で
はピータースとCTBでコンビを組んだ(SHもこなす)イーリ・ニコラスだ
った。相手が日大といっても、拓殖大にテストの余裕はないはず。果たしてこ
の起用が吉と出るのかどうか。今日こそは切り札のWTB横山にいいボールが
渡るかどうかもあわせて注目してみたい。

対する日大は緒戦はSOで起用されたピエイ・マフェリオが15番を付け、逆
にFBだった住吉が10番を付けて登場。開幕戦の東海大戦で開始早々に鋭い
ステップワークでトライを奪い両チームのファンの度肝を抜いたマフェリオの
SO起用はあくまで「対東海大スペシャル」だったのかどうかが気になるとこ
ろ。その他のメンバーはほぼ固定されているが、1年生の時から期待を集めな
がらなかなか登場のチャンスがなかった森慶太がFLとして起用されているこ
とが目を惹く。果たして、日大は3シーズンぶりの白星なるか?

[前半の戦い]

本日はあいにくの雨。しかも土砂降りに近いスリッピーなコンディションの中、
日大のキックオフで試合開始。拓殖大のキックに対するカウンターアタックか
ら日大は連続攻撃で攻め、拓殖大22m付近まで迫るが惜しくもオーバーザト
ップの反則。やはり、この日もSOは(15番を付けているが)ピエイのよう
だ。ゴールラインまでは届かなかったものの、日大の今シーズンの特徴でもあ
るFWとBKの連携の良さを感じさせるアタックだった。

開始早々の2分、日大はHWL付近でのスクラムからハイパントで拓殖大陣奥
深くになだれ込む。拓殖大が自陣22m内でハンドの反則を犯したところで、
日大はラインアウトからゴールを目指すがアクシデンタルオフサイドでチャン
スを潰す。以後、しばらくの時間帯は日大がペースを掴み、拓殖大は自陣から
なかなか抜け出せない展開となる。しかしながら、先制点を奪ったのは拓殖大。
10分、日大が拓殖大22m内でのラインアウトから右オープンに展開したと
ころでパスミス。このボールを拓殖大のWTB茂野が足に引っかけて大きく前
進を図り、俊足を活かしてインゴールでグラウンディングに成功。GKも成功
し、拓殖大が7−0と幸先よくリードを奪った。

冒頭でも書いたように本日は雨。試行ルールの適用は別にしてもキックが多い
展開とならざるを得ない。ただ、両チームのキックの使い方が対照的だった。
日大は徹底的なハイパントでFWを前に出そうとするのに対し、拓殖大はハイ
パントはそれほど使わずにデンジャラスゾーンに向けて低い弾道のキックを徹
底的に使うことで意思統一されていたようだ。敵陣に入りあわよくばハンドリ
ングミスを誘おうとする作戦のようだが、ここでCTBにダニエルを置いた意
図が明確になった。日大陣への効果的なキックを何度も見せていた。

しかしながら、拓殖大の効果的なタッチキックもラインアウトを起点とした日
大のハイパント攻撃で自陣に押し戻されてしまう展開が続く。安定したライン
アウトも今シーズンの日大のセールスポイント。キャッチャーはNo.8の細田が
務める。193cm, 90kgの名前通りスリムな選手だが、ほぼパーフェクトなキャッ
チングを見せてくれた。自陣での戦いを余儀なくされる拓殖大はどうしても反
則が多くなってしまう。

17分、日大のCTB三友がゴールやや右24mのPGを決めてまず3点を返
す。実はこのGKが両チームの誇る好プレースキッカー(拓殖大はもちろんダ
ニエル・ピータース)によるGK合戦のキックオフであったことは後でわかる。
直後のキックオフで拓殖大が日大陣奥深くに攻め入る。日大陣22m内の日大
ボールスクラムで拓殖大が相手キックのチャージに成功するが、インゴールに
向かって勢いよく転がったボールはデッドボールラインも越えてしまった。

しかし、このワンプレーで拓殖大にゲームの流れが傾き始める。21分には日
大ゴール前でのマイボールスクラムから(No.8の位置にいた)FL森谷がサイ
ドを突き日大のオフサイドを誘う。拓殖大はタップキックからの速攻で攻めて
ボールはWTB横山に渡りチャンス!と思われたが、横山は意表を突くゴロパ
ントで(残念ながら)ボールを日大に渡してしまう。スクラムは日大がやや優
勢のように見えたが、拓殖大も負けていない。その後もFL森谷はたびたびス
クラムからの効果的な縦突破を見せた。

26分には日大の三友が左中間23mの位置からこの日2本目のPGを成功さ
せ、日大のビハインドは1点に縮まる。続く29分にはピエイがドロップゴー
ルで逆転を狙うが失敗。しかしながら31分、三友が今度は左中間30mから
のPGを決めて1点差ながら日大は逆転に成功する。直後の拓殖大キックオフ
で日大のピエイが自陣22mから持ち前のステップとストライドの長いランで
一気に50mゲインし魅せる。残念ながら細かく繋いで22mライン手前まで
来たところでノックオンがあり、日大追加点ならず。しかし、ピエイの速いと
感じさせないランニングは見事。目に留まる速さといったところか。

35分、今度はピータースの番だ。左中間20mの何でもない位置からのPG
だったが、ポストの僅か左に外してしまう。結果的にこの失敗は痛かったのだ
が、もちろんそれがわかるのはノーサイドになってから。この失敗を尻目にP
Gで着々と加点する日大。前半終了間際に三友が右中間30mのPGを冷静に
決めてリードを5点に拡げる。攻撃ではミスでなかなかトライを奪えない日大
だが、敵陣に入ったときに確実に得点が得られる武器を持っているのは頼もし
い。それにしても、三友がこれだけ安定したプレースキッカーだったとは知ら
なかった。結局、前半は日大がやや押し気味の展開で終了した。

[後半の戦い]

日大やや優勢の展開だったとはいえ、拓殖大のビアインドは僅か5点。しかも
相手の得点はPG4本でトライは許していない。FWもスクラムはやや押され
気味とはいえほぼ互角。後半も先に点を取って反撃を開始したい拓殖大だった
が、キックオフ早々の3分に日大があっさり追加点を奪う。拓殖大陣ゴール前
スクラムからオープンに展開。SO(に位置した)ピエイからパスを受けたC
TB富加味がラインブレイクに成功しゴール正面でラック。ここからLOサム
エラが拓殖大のディフェンスを豪快に破ってゴール中央に飛び込んだ。GKも
成功し日大は19−7とリードを一気に12点に拡げた。

この本日初トライに力を得た日大が完全にゲームを支配するかに見えたが、こ
こから拓殖大が反撃に転ずる。まずは8分、ピータースが右中間32mのPG
を(今度は)確実に決めて10−19。その直後の11分、日大陣ゴール前で
のラインアウトから拓殖大はモールを形成して押し込みLO牧野がトライを奪
う。日大FWがモールを引き倒すきっかけすら掴めないくらいの素早いプッシ
ュだった。GKは右隅の難しい位置だったが、ピータースがゴール中央に蹴り
込む。これで17−19と拓殖大の逆転は時間の問題となってきた。(もちろ
ん結果論だが、やはり前半のPG失敗は本当に痛い。)

完全に押せ押せムードとなった拓殖大。だが、日大は22分に拓殖大陣で得た
ワンチャンスをものにする。拓殖大ゴール前での相手ボールスクラムでホイー
ルに成功し、組み直しのマイボールスクラムからオープンに展開してCTB三
友がラインブレイクに成功。拓殖大が自陣ゴール前で反則を犯したところで三
友がこの日5本目となるPGを難なく成功させ、日大が再びリードを5点に拡
げた。拓殖大は自陣での反則がことごとく失点に繋がってしまう。

とはいってもビハインドは5点。このまま負けるわけにはいかない拓殖大はキ
ックオフから日大に強力なプレッシャーをかけたため、日大が自陣で反則を連
発する。そして26分、拓殖大にペナルティトライが与えられ、拓殖大は僅か
2点差ながら逆転に成功。日大FWの足も止まり始め、拓殖大は日大陣で優位
に試合を進める。おぼろげながら今シーズンの初勝利も見えてきた。33分に
はピータースが正面45mのロングPGを狙うが追加点ならず。

拓殖大優位のまま、時計は40分に近づく。勝利まであと2分余りというとこ
ろで拓殖大が自陣10m付近のラインアウトで痛恨のオフサイド。日大の三友
がゴールほぼ正面40mの距離のPGを狙う。日大のビハインドは僅かの2点。
ここまで5本のPGを冷静に決めてきた三友だが、今回のキックが一番距離が
長く重要。だが、三友はそんなプレッシャーをものともせず、このキックも冷
静に決めた。1点差ながら25−24と日大が再逆転に成功。日大応援席から
は大歓声が沸き起こる。直後に「ロスタイムは2分です。」のアナウンス。

終了間際の41分、今度もHWL付近で日大がPKのチャンスを得る。「スタ
ンドからはもうひとつ狙え。」の声も上がるが、三友が今度は「冷静に」ボー
ルをタッチに蹴り出した。PGの場合、入ればOKだが、入らなかった場合は
カウンターアタックから失点してしまう危険性が高い。タッチキックなら時間
が残っていてもマイボールでリスタートできる。が、そのリスタートの時間も
残されていなかった。拓殖大にとっては痛恨の反則には違いないが、PG6本
を含むゴールキック7本をすべて成功させた三友を誉めるべき試合ではなかっ
たかと思う。

[試合後の感想]

日大にとって、スーパーブーツであり、随所で好タックルを決めた三友なくし
ては語れない試合だったが、もちろん三友だけで勝った試合ではない。日大は
例年に比べるとややFWのパワーが落ち、BKにもピエイ以外にランで決定的
な仕事ができる選手がいない。が、逆にその分、FWとBKで連携してボール
を繋いでいこうとする意識が強くなっているように感じる。まだまだ反則が多
い点が気になるが、今後の対戦相手にとっても脅威になるに違いない。永年思
ってきた「こうなって欲しい」という日大になってきているように感じた。

惜しくも1点差で敗れてしまった拓殖大だが、FWもパワーアップし、緒戦に
比べてチーム戦術が固まってきたようだ。あとはいかにいい形でエースの横山
にボールを渡すか。次の大東大戦は正念場となりそうなだけに、連戦となるた
め厳しいが連敗のショックを引きずらずに頑張って欲しい。SOで起用された
イーリ・ニコラスはミスも目立ったが、落ち着いたプレーぶりから今後がなか
なか楽しみな選手だと思った。キックが上手いピータースはむしろCTBの方
がいいのかもしれない。BKがこのコンビを中心に固まれば、拓殖大の反抗は
十分可能なように思われる。             (2008年9月23日記)

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