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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2008

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拓殖大学 vs 大東文化大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2008/09/28) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 拓殖大学  :前半: 2  2  1  0 17 |
       :後半: 0  0  1  1  6 |  23  8
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 大東文化大学:前半: 1  1  1  0 10 |
       :後半: 2  1  0  0 12 |  22 11


◎出場メンバー

 拓殖 : 1.林 2.吉田 3.西 4.土井 5.牧野 [6].浦川 7.森谷 8.ナータ
      9.北川 10.イーリ 11.茂野 12.ダニエル 13.平野 14.横山 15.高橋
     (16.取手 17.川田 18.マレイ 19.角谷 20.中村 21.植田 22.稲田)

    ○交代  8→18(前 4分交替), 12→21(後 0分交替), 18→22(後39分入替)


 大東 : 1.中井 2.坂下 3.大畑 4.森山 5.木村 6.松田 7.濱口 8.シリヴェヌシ
      [9].新川 10.出村 11.神谷 12.神沼 13.シオネ 14.小笠原 15.増野
     (16.レプハ 17.大窪 18.関戸 19.長谷川 20.生方 21.池田 22.岸和田)

    ○交代  8→16(後 0分交替), 14→22(後 0分入替),  4→17(後 9分入替)
         5→19(後28分入替),  1→21(後32分入替)


 レフリー :森健(関東協会公認)


◎得点経過

 拓殖大学    0               7         14              17      17
                               G       DxG               P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
             G       P
 大東文化大学  0   7       10                                    10


 拓殖大学   17                   20  23                        23
                             P   D
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                        G                     T
 大東文化大学 10              17                    22           22


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 拓殖:前半14分 横山 (T)、ダニエル(G)
      24分 茂野 (T)、ダニエル(G)
      40分 ダニエル(PG)
    後半18分 イーリ(PG)
      22分 イーリ(DG)

 大東:前半 2分 出村 (T)、増野 (G)
      10分 増野 (PG)
    後半13分 岸和田(T)、増野 (G)
      35分 新川 (T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

本日は熊谷ラグビー場での初観戦。昨シーズンの「初陣」は36℃を越える猛
暑でのダブルヘッダー(正午開始)で散々な目に遭った。今年は暑さ対策もあ
ってか「開幕」は遅く、しかも2時半キックオフの設定になっている。しかし
今日はやや肌寒さも感じさせる陽気で、これなら2時スタートで良かったなと
思った。しかし、ピッチの上で戦う選手達にとっては大歓迎だろう。拓殖大は
2連敗で大東大は緒戦惨敗と調子が出ていない両チームだけに、この試合では
熱く燃えたいところだ。

熊谷駅発のバスが1時5分発なので、キックオフ1時間前にラグビー場に着い
てしまった。練習用グランドで両チームのアップの状況を観ようと思ったが、
選手達の姿が見あたらなかったのでスタジアムの方に足を向ける。スタンドに
上るとスコアボード側から大きな声が聞こえた。ラトウ監督以下首脳陣が見守
る中、大東大の選手達がウォーミングアップを行っている。ちょっと空元気?
の感がしないでもなかったが、全員で大きな声を出して気合いを入れながらボ
ールと身体を動かしている。気持ちは痛いほどよくわかる。みんなこの試合に
賭けているのだ。

そんな大東大の選手達の様子を眺めながら、まずは大東大のメンバーをチェッ
クする。かなりの入替があるのではと思ったが予想以上だった。スタメンは初
陣(法政戦)から10名が入れ替わるという大手術が施されている。関戸主将
を含む3名は今回はベンチスタートで、法政戦で先発した第1列はリザーブに
も名前がない。スクラムの立て直しは急務であり、大東大のFW2,3列は層
が厚いので理解できないこともないが、法政戦のあと尋常成らざる事態が生じ
ていたようだ。FL松田の戦線復帰は嬉しいが、SOは出村が先発で升屋の名
前はリザーブにもなし。それに、CTBの先発はシオネ(ファマオ)。う〜ん、
ここまで変わっていいものか?とちょっと複雑な心境になってしまう。

一方の拓殖大はメンバーが完全に固まったようだ。前節でSOに起用されたイ
ーリ・ニコラスは本日も10番を付ける。昨シーズンの印象からは、当初は、
何故ダニエル・ピータースをSOとして起用しないのかな?と思っていたが、
前節の日大戦を観た感じでは、イーリのSOも悪くないなぁと思うようになっ
てきている。ただ、首脳陣にとっても(たぶん)イーリのSO起用は当初構想
になかったように思われる。そういった意味でも、ここでイーリがどんな活躍
を見せてくれるかが楽しみ。

さて、この2チームはファーストジャージがいずれもグリーン系のため、どち
らかはセカンドジャージを着用することになる。昨シーズンは拓殖大が濃いブ
ルー(東海大カラー)のジャージだったが、今シーズンは大東大も一昨シーズ
ンまでファーストジャージとして着用していた黒の出で立ちで登場。心機一新
を図りたいという意図があったのかもしれないが、何故かこちらの黒衣軍の方
がモスグリーン軍団よりも強そうに見えるから不思議だ。

[前半の戦い]

今日は「黒衣軍」の大東大のキックオフで試合開始。そんな(強そうな)ジャ
ージの色に力を得たためか、大東大は出だしから気合い十分で拓殖大陣になだ
れ込む。そんな黒い津波軍団の勢いに呑まれてしまったかのように、拓殖大が
自陣でノックオンを犯す。拓殖大陣22m内の拓殖大ボールスクラムでSHを
務めるのは(今日はイーリではなくて)何と14番を付けた横山。こうなると、
拓殖大にはSHは何人居るでしょうか?というクイズを出したくなってしまう。

拓殖大は自陣ゴールを背負った状態でスクラムを起点とした8−9、ではなく
て8−14攻撃で横山がショートサイドの突破を試みる。が、横山は大東大の
強烈なタックルを浴びて倒されてしまう。ここで大東大がターンオーバーに成
功し、ラックからパスアウトされたボールを受けたSO出村がそのままゴール
ラインを越えた。左隅の難しい位置からのGKをFB増野が決め、大東大は開
始から僅か2分で7−0とリードを奪う。

本日の大東大は選手達の意気込みが違う。「この試合は絶対に落とせない。」
という気持ちで選手がまとまっている。リスタートの拓殖大キックオフに対す
るカウンターアタックで、今度はNo.8のシリヴェヌシが怒濤のランニングを見
せ一気に自陣10mライン付近まで攻め上がる。ここから、しばらくゲームは
両サイド22m内での蹴り合いの様相となるのだが、名手ピータースのキック
がことごとく大東大選手のチャージに引っ掛かる。それだけ大東大の選手が前
に出ていたということだろう。

大東大の攻勢が続く。7分には大東大がカウンターアタックで攻め上がり、拓
殖大陣でオープンに絶妙のキックパス。ボールをキャッチした大東大選手がゴ
ールラインまであと少しのところまで迫るが、拓殖大選手のタックルで惜しく
もタッチに押し出されてしまう。拓殖大は大東大の強力なプレッシャーのため
自陣からなかなか脱出することが出来ない苦しい展開となる。そして10分、
大東大は拓殖大陣22mライン手前で得たPGでFB増野が左中間25mのP
Gを決めて10−0とリードを拡げる。

このまま拓殖大は黒衣軍(大東大)の勢いに飲み込まれてしまうかと思われた
が、14分に(WTBではなくて)SHの横山がワンチャンスをものにする。
大東大陣22m内でのスクラムから8→14で横山がランでゴールを目指すか、
あるいはオープンへパスかと思われたが意表を突くゴロパント。インゴールに
向かって転がったボールを横山が自ら拾ってグラウンディングに成功する。S
H横山の意図通りのプレーだったかについては疑問が残るが、得点に繋がった
のでもちろんOK。GKも成功して拓殖大がまず7点を返す。

しかし、大東大は攻勢は止まない。16分にはHWL付近での拓殖大ボールラ
インアウトで拓殖大にノックオン。ここから大東大のNo.8シリヴェヌシが前に
出てLO森山にボールを繋ぎ、森山が拓殖大陣に22m付近まで攻め上がる。
ここから大東大は連続攻撃で拓殖大ゴールに迫るが惜しくもタッチアウト。そ
の後も(なかなか出場機会の得られない)森山はランで元気のいいところを見
せる。チーム事情とはいえ、リザーブに置いておくのはもったいない選手。

直後のラインアウトから拓殖大はピータースがキックでタッチを狙うが、大東
大の厳しいプレッシャーの前にキックミスを犯し殆ど前進できない。大東大は
拓殖大ゴール前でのラインアウトからモールでゴールを目指すものの惜しくも
アクシデンタルオフサイド(ノックオン?)でチャンスを潰す。ペースを掴ん
でいる大東大としては、ここは取っておきたかったところ。とはいえ、大東大
はその後もモールを武器に攻め続ける。サイズのある選手が多いだけに、やは
りこのチームのFWは固まれば強力だ。

攻めていながらも大東大が決め手を欠く中で、徐々に試合の流れは拓殖大の方
に傾き始める。23分にSOイーリが大東大陣22m付近から狙ったドロップ
ゴールは失敗に終わるが、リスタートのドロップアウトから拓殖大はカウンタ
ーアタックでCTBピータースが攻め上がる。ラックからオープンに展開され
たボールがWTB横山に繋がり、横山が大きくゲインして大東大陣奥深くでラ
ック。ここから拓殖大が左オープンに展開してWTB茂野がゴール左隅に飛び
込んだ。難しい位置からのGKをピータースが決めて拓殖大が14−10と逆
転に成功する。大東大応援席からは大きなため息が漏れる。今日もダメなのか。

このトライで落ち着きの出た拓殖大の方が攻勢に出る。大東大は自陣ゴールラ
インを背にしてなかなか敵陣に行けない苦しい展開となる。だが、大東大の必
至の守りに拓殖大は攻めきれない。接点では大東大にターンオーバーを許して
チャンスを潰してしまう。31分にはSOイーリが巧みなパスダミー連発でゲ
インしたり、33分にはWTB茂野がカウンターアタックから50m走ってあ
と僅かでGLというところで大東大のSO出村にタッチへ押し出されたり、と
いうように見せ場は作るものの決められない。

このまま拓殖大4点リードで前半終了かと思われたが、40分に大東大は自陣
で痛い反則。ピータースが右中間36mのPGを決めて拓殖大はリードを7点
に拡げた。だが、そのピータースが前半終了間際に大東大選手と交錯して足を
痛めてしまう。担架でピッチの外に運ばれる状態で交替となり、リードは奪っ
たとはいうものの拓殖大に暗雲が立ちこめる。大東大に序盤の勢いがなくなっ
てきたところだったが、拓殖大も主力選手の負傷退場と後半も予断を許さない
展開となりそうな雰囲気がピッチ上に漂ってきたところで前半終了となった。

[後半の戦い]

大東大は後半の頭から思い切ってメンバーを替えてくることが多い。果たして、
今日もNo.8シリヴェヌシに替わってレプハが、WTB小笠原に替わって岸和田
がピッチに登場。ただ、「前半で燃え尽きるくらい頑張ってくれ。」とか「後
半から選手達に活力を与える位頑張ってくれ。」という合意があっての起用な
ら選手達も納得して活躍できるはず。果たしてこの今日の交替はどうなのだろ
うか?(遅れて9分には前半に健闘を見せたLO森山に替わって大窪も満を持
して起用された。)

後半も序盤から大東大が飛ばす。どうやら選手交替はハプニングではなく「予
定通り」だったようだ。大東大は前半以上にFWのタテとBKのヨコがうまく
かみ合ったダイナミックな攻撃を展開する。相変わらず両チームともキックの
多い展開ではあるが、連続攻撃で見せる要素が多いのは大東大の方。そして遂
に13分、大東大は拓殖大陣10m/22mでのラインアウトを起点とした連続攻撃
から拓殖大陣ゴール前でラック。ここからボールがSH新川→SO出村へと渡
りラストパスを受けたWTB岸和田がゴール中央に飛び込んだ。GKも難なく
成功し17−17の同点。いい形での得点に、やや沈み勝ちだった大東大応援
席が一気に活気づく。

しかしながら18分、拓殖大がまたもワンチャンスをものにする。大東大陣の
10mラインを少し越えたところで大東大にオフサイド。ゴールやや右36m
の位置だがピータースは既にピッチにいない。そのピータースに代わってイー
リがPGを狙う。果たして大丈夫なのかという両チームの応援団からの(相反
する期待と不安)は、イーリがボールを蹴った瞬間に歓声(拓殖大側)とため
息(大東大側)に変わった。名手ピータースの影に隠れてはいるが、実はイー
リも安定したプレースキッカーであることを証明する瞬間でもあった。

これで拓殖大は20−17と再びリードを3点に拡げる。だが、イーリ主演の
ショーはこれで終わった訳ではなかった。22分、大東大陣22m付近でのラ
インアウトから拓殖大はオープンに展開しイーリがドロップゴールを狙う。一
瞬何が起こったのかわからないような、サッカーのトゥーキックのような低い
弾道のボールがゴールに向かってミサイルのように飛んでいく。失敗かと思っ
たらクロスバーの僅か上を通過して成功! 6点差という微妙な点差ではある
が、拓殖大が23−17とリードを6点に拡げた。

だが、残り時間は20分余り。大東大にも逆転のための時間は十分すぎるくら
い残されている。しかも点差は1点差ながら1トライ+1ゴールで逆転可能な
6点だ。大東大は前半にも増して攻勢を強め、拓殖大は自陣22mからほとん
ど抜け出せない苦しい戦いを余儀なくされる。そして35分、大東大に待望の
トライが生まれる。拓殖大陣22m内でのラインアウトからゴール前まで前進
してラック。ここからSH新川がサイドを抜け出して一気にゴールラインまで
駆け抜ける。新川は「チャンネル・ゼロ(スクラムやラックのサイド)の魔術
師」と呼びたくなるくらい、狭いスペースをこじ開けるのが巧い選手。ここ一
番で本当に頼りになる選手だ。

大東大のビハインドは僅かに1点。GKは左中間からだが、FB増野は前半に
左隅の難しい位置から決めている。大東大応援席は逆転を確信した。だが、G
Kは無情にも外れてしまう。大東大に残された時間は6分余り。逆転勝利を狙
う死力を尽くしたアタックが続くが、拓殖大も粘り強いディフェンスで耐え凌
ぐ。結局、そのまま時間は過ぎてノーサイド。ホイッスルが鳴った瞬間、大東
大選手達はピッチにばったりと倒れ込んだ。「絶対に勝ちたかった!」という
気持ちが十二分過ぎるくらいに伝わってくる、ちょっと可哀想な幕切れだった。

大東大ファンにとっては不甲斐ない結果だったかも知れないし、拓殖大ファン
にとっては勝ったものの物足りない内容だったかも知れない。両チームともミ
スが多かったことも確か。だが、技量やパワーは劣っていてもトップリーグに
はない良さが大学ラグビーにもある。選手達の勝利に向けての強い気持ちが伝
わってくるいい試合だったと思う。

[試合後の感想]

大東大の猛攻の前に、終わってみれば1点差の辛勝。拓殖大にとってよく勝て
たといえる内容の試合だった。が、この勝利に拓殖大の確実な成長を感じる。
昨シーズン拓殖大だったら、後半に逆転されて大量失点を喫し負けていたかも
しれない。アタックだけでなくディフェンスでも大活躍を見せたイーリ・ニコ
ラスは、2年生ながら既に拓殖大の精神的な支柱と言ってもいいくらいの選手
になっている。シーズン終了時にはリーグ戦屈指のSOの評価を得る存在にな
っているかも知れないし、将来的にはそれ以上の成長を遂げるかも知れない。
緒戦、そして2戦目で不安を感じさせた拓殖大だが、この勝利を薬として反抗
に転じることは可能なように思われる。少なくとも臨戦態勢は整った。

敗れてしまったとはいえ、大東大にとっては今後の戦いに向けての一筋の光明
が見えた戦いだったと思う。調子が出ていないとはいえ、まだ2敗目である。
大切なのは今後の戦い方。対戦相手とのというよりもむしろ自らとの戦いだ。
今日負けたことの悔しさをバネにチーム一丸となって頑張れば、必ずいい結果
が出るはず。また、それだけの選手達が揃っている。そういった意味でも、次
の関東学院戦は大東大にとって単に今シーズンというだけでなく、長期的に見
ても重要な戦いになる。とにかく大学王者に何度も輝いたことがあるチームと
しての意地をピッチの上で見せて欲しい。       (2008年9月29日記)

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