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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2008

試合日程&結果

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法政大学 vs 東海大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2008/10/11) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 法政大学  :前半: 2  0  0  0 10 |
       :後半: 0  0  2  0  6 |  16 13
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 東海大学  :前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 3  2  0  0 19 |  19  9


◎出場メンバー

 法政 : 1.浅原 2.山森 3.鎌田 4.井上 5.栗林 [6].有田 7.光安 8.宮田
      9.日和佐 10.文字 11.竹下 12.宮本 13.岸和田 14.舩木 15.城戸
     (16.川口 17.小田 18.山根 19.荻山 20.和田 21.野地 22.川上)

    ○交代  1→17(後17分入替),  8→19(後17分入替),  2→16(後29分入替)
         4→18(後29分入替)


 東海 : 1.三上 [2].岸 3.熊谷 4.安井 5.杉浦 6.リーチ 7.荒木 8.マウ
      9.鶴田 10.市原 11.福田 12.山内 13.児玉 14.山田 15.豊島
     (16.新田 17.宮本 18.前川 19.畑 20.山本 21.吉田 22.鶴ヶ崎)

    ○交替 13→21(後 9分入替),  7→18(後34分入替)


 レフリー :下井信介(日本協会公認)


◎得点経過

 法政大学    0              5         10                       10
                       Dx     T         T Dx
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 東海大学    0                                                  0


 法政大学   10        13                            16         16
                  P          Dx                 P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                 T    G           G
 東海大学    0                       5    12          19       19


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 法政:前半13分 城戸 (T)
      23分 舩木 (T)
    後半 7分 文字 (PG)
      37分 日和佐(PG)

 東海:後半22分 マウ (T)
      27分 安井 (T)、市原 (G)
      39分 リーチ(T)、市原 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

今シーズンは例年に比べてリーグ戦の試合の組み方を若干変えているようだ。
通常なら、前半4節は前年度の上位4校対下位4校の対戦になる。しかしなが
ら今シーズンは一つ手前で上位校同士の対戦を組んだ。東海大は法政と、関東
学院は拓殖大とそれぞれ試合をする。時期はちょうど三連休で、選手達にとっ
ても観戦する側にとってもコンディションがいい。心配された雨も午前中に上
がり、舞台は整った。とくに本日の試合はそれぞれ3連勝、2連勝と調子のよ
い東海大と法政の激突とあって、否が応でも期待に胸が高まる。最大の見どこ
ろはもちろん勝敗だが、今シーズンの法政がどのくらいやれるのか、すなわち
関東学院、東海とともに3強として優勝争いに絡めるかもこの試合でわかる。

そんなことを想いながら、まずは東海大のメンバーを確認。先週末に香港でW
杯セブンズのアジア予選で活躍したリーチがFLとして復帰。また、WTBに
は期待のニューフェイス福田がスタメン出場を果たした。が、基本的には固定
されたメンバーだ。その東海大に対する私的着目点は、スピードだけでは勝つ
ことが難しい法政に対して、どんな形での戦いを見せてくれるかということ。
ひとつの可能性として、FWに走力がある選手を揃えていることから、多少テ
ンポは落としてもFW中心でじっくり攻めて来るのではないかということが考
えられる。11月30日以降の戦いに向けてもこの部分は大変興味がある。

一方の法政の方も、今シーズンは好調なスタートを切れたことが(ほぼ固定さ
れた)メンバー表にも反映されている。日和佐と文字で組むHB団はリーグ戦
G屈指のコンビといえる。そこにCTB岸和田、WTB舩木、FB城戸といっ
た走力に自信を持つ選手達が名を連ねる。そんなBK陣の高い攻撃力が持ち味
の法政にとって、勝敗の鍵を握るのはやはりFW。ずばり、この試合での法政
の見どころは、緒戦で大東大撃破の原動力となったFWが東海大や関東学院と
戦える力を持っているかどうかということ。小粒ながらぴりりと辛いFWの奮
闘なくしては、この試合での勝利は難しい。

[前半の戦い]

双方のファンだけでなく、リーグ戦グループウォッチャー達の熱い視線が注が
れる中、メインスタンドから見て左側に陣取った東海大のキックオフで試合が
始まった。スピードを持ち味とし、オープン展開指向のチーム同士の対戦だけ
あって、序盤からボールがピッチ上を大きく動く展開となる。そして、双方と
も(試合に対する緊張感はさておき)相手から激しいプレッシャーを受けたこ
ともあって、ボールがなかなか手に付かずミスが多い。これまでに両チームが
戦ってきた相手とは明らかに違う。ただ、東海大にいつものスピードが感じら
れないのに対し、法政の方が攻めのリズムがいいように見える。6分に法政の
CTB岸和田がドロップゴールで先制点を狙うが外れる。

オープン展開、そして蹴り合いとボールが右に左にと大きく動く中で最初にチ
ャンスを掴んだのは東海大。まず10分、法政陣22m手前で得たPKから速
攻でゴールを目指すもののラックでターンオーバーされる。続く12分、法政
陣左サイド10m/22mでのスクラムを起点として東海大SO市原が巧く抜け出す
ものの、ゴール前でまたも法政にターンオーバー。そして、ここで法政が一気
に逆襲をかけ、CTB岸和田からスピードに乗ってフォローしたFB城戸にラ
ストパスが渡る。GKは失敗したが、法政が得意とするパターンで先制点とな
る5点を奪う。逆に東海大としてはもっとも気をつけなければならない形で失
点してしまった。それにしても、法政の接点での速さ(としつこさ)は見事。

さて、本日の東海大の期待の選手のひとりは左WTBの快足ランナー福田。オ
ープン展開からその福田にきれいにボールが回って「さぁ勝負!」というシー
ンが何度かあったのだが、待ち受ける法政のWTBは一回り大きい舩木。福田
はまるで蛇に睨まれた蛙のように舩木に行く手を阻まれてしまう。結果論にな
るが、東海大のWTBは右(ベテランの山田)と左が逆の方がよかったのかも
しれない。ただ、東海大の場合はラインがきれいでアタックも正直になりがち
な傾向があるので、スピードを恐れない法政としては止めやすいことも事実。
FWのタテを使ったりしての工夫はあるものの、継続できている割りにゲイン
できない、東海大ファンにとってもどかしい展開が続く。

そんな中で23分、またしても東海大が法政の「一発の恐怖」に見舞われる。
法政自陣10m付近からのPKがノータッチとなり東海大が安堵したのも一瞬、
東海大の蹴り返しに対して法政が素早いカウンターから連続攻撃。FB城戸が
中央でラインブレイクに成功して大きくゲインし、十分な間合いでラストパス
をWTB舩木に送る。それにしても速い。「速さ」が持ち味の両チームだが、
フェイズを重ねるごとにスピードが落ちるのが東海で、逆にどんどんスピード
が上がっていくのが法政。伝統的に身につけた感覚とでも言ったらいいだろう
か、この形は「理論」ではなかなか止められない。

リスタートのキックオフからも、東海大のノックオンからの切り返しでFB城
戸が大きくゲインする。そのまま継続して3トライ目を狙う状況のように思え
たが、SO文字がドロップゴールを狙って失敗。いい流れを断ち切ったように
も見えてちょっと残念な感じ。30分、東海大は自陣10付近でのラインアウ
トからオープンに展開し、期待のリーチがラインブレイクに成功するが、法政
の厳しいタックルに遭ってノックオン。法政の鋭い出足に東海大のFWもなか
なかゲインさせてもらえない。

しかし、ここから前半の終了まで法政は東海大の攻勢の前に、自陣22m内か
らなかなか脱出できない状況となる。このピンチを救ったのがFWの健闘だっ
た。法政のペナルティに対して東海大がスクラムを選択した場面でも、逆に東
海大がコラプシング犯してしまう。法政は本格的にスクラムの強化に取り組ん
だと伝えられるが、東海大の重いFWを相手にしてみて、その成果はより明確
になった。38分のラインアウトを起点とした、東海大CTB山内とFLリー
チの絶妙なパス交換連続によるアタックもスローフォワードに終わる。結局、
前半は東海大が攻めきれずに終わり、10−0で法政リードのまま終了。流れ
からいっても、これは法政の勝ちパターン。ただ、無得点に終わり、ミスが目
立ったとはいえ東海大にも焦りは見られない。果たして、後半はどんな展開に
なるのだろうか?

[後半の戦い]

後半も東海大は法政の素早く厳しいプレッシャーの前にミスを連発し、チャン
スを活かせない。東海大は攻め込んでも肝心なところで法政にターンオーバー
を許してしまうのは、相手が速いとはいってもおそらく誤算。7分にはSO文
字が右中間22mのPGを成功させて法政のリードは13点に拡がる。法政の
応援席の「もしや?」への期待は否が応でも高まっていく。勢いに乗る法政を
前にして、今度は東海大が自陣22mからなかなか脱出できない苦しい展開と
なる。12分には東海大が自陣ゴール前で反則を犯した場面で(自信を持って)
スクラムを選択。法政応援席からどよめきが起こる。

怒濤の連続攻撃で攻め立てる法政に対し、東海大は防戦一方となるが粘り強い
ディフェンスで耐え凌ぐ。法政がもしここで追加点を取れていれば、勝利に向
かって大きく前進できたし、逆に東海大はここで失点しなかったことが大きか
った。もちろん結果論だが、ここがこの試合の勝敗の行方を占う上でひとつの
ポイントだったように思われる。18分に文字がドロップゴールで追加点を狙
うものの失敗。またしても、いい流れを断ち切ってしまうのか?

リスタートのドロップアウトで法政にオフサイドの反則があり、東海大はPか
らGOで一気に法政陣へ。東海大が法政ゴールめがけて蹴ったボールを法政の
竹下と東海大の山田の両WTBが追いかけっこのような形で、一足先にボール
に追いついた竹下が辛くもキックでタッチに逃れる。20分に東海大は法政陣
ゴール前スクラムからサイドアタックを仕掛けるもののノックオンでチャンス
を潰す。かに見えたが、直後の法政ボールスクラムで強力なプッシュをかけ、
法政のSH日和佐が東海大選手にインゴールで捕まってキャリーバック。ここ
が、おそらくはこの試合で最大のターニングポイントだった。

直後の22分、東海大が5mスクラムからNo.8マウがスクラムサイドをブレイ
クしてゴールラインに到達する。ゴールキックは失敗したが東海大が何とか5
点を返した。東海大は前半からしばしばFWでサイド攻撃を仕掛けていたが、
どうやらそれがボディーブローのように効いていたようだ。法政FWの勢いが
弱まってきたようにも感じられた。27分には法政陣10m/22mのラインアウト
から東海大がタテ突破を交えた継続攻撃でFL荒木が法政ゴールに迫る。荒木
はタックルに逢うものの、東海大はさらにボールを繋いで最後は進境著しいL
O安井がゴールラインを越えた。GKも成功し、東海大はついにビハインドを
1点に縮める。逆転への残り時間は十部すぎるくらいある。

フィットネスに自信を持つ東海大に焦りはない。がノックオンなどのミスが多
く最小得点差を逆転できないまま時計は37分まで進む。法政SHの日和佐が
正面22mのPGを決めてリードを4点に拡げた。1トライ許せば逆転されて
しまう何とも微妙な点差ではあり、このPG選択には議論のあるところ。だが、
東海大にとっては「PGではダメで、トライを取りに行かなければならない」
というプレッシャーを与えることになる。逆に法政にとっては、ラインアウト
からトライを狙ったとして、万が一カウンターアタックを許して自陣で反則、
は残り時間から考えても最悪のシナリオだ。

しかし、もう一つの悪いシナリオとして、キックオフからの蹴り返しに対する
カウンターアタックから継続されて失点ということもあり得る。法政にとって
は残念ながらそんな形になってしまった。東海大が「これぞ15人ラグビー」
と言えるシンプルだが見事な継続ラグビーでじわじわと、しかし確実に法政ゴ
ール前まで迫っていく。そして、右サイドゴール前でラックとなったところで
左サイドにオーバーラップが出来た。東海大はここを確実に繋いでCTBの位
置にいたリーチが法政ディフェンダーを振り切りゴールラインを越えた。この
段階で逆転に成功。ゴールも成功して19−16と東海大が土壇場で逆転に成
功する。

勝利まで手がかかっていた法政は再逆転のためのトライを狙って最後の力を振
り絞るが、逆に東海大のカウンターアタックを許してしまう。タッチライン際
を快走してゴールを目指す東海大WTB山田を法政ディフェンダーが辛くもタ
ッチに押し出すものの、ここでノーサイド。法政はここで勝利を掴むことがで
きれば東海大に一歩先んずることが出来ただけに残念。東海大にとっては課題
の多い試合だったかも知れないが、価値ある1勝を掴むことができた。試合後、
健闘をたたえ合う両チームの選手達の姿が印象に残る好ゲームだった。

[試合後の感想]

終盤での際どい逆転勝利ということで、東海大ファンにとっては不満の残る内
容だったかも知れないが、東海大の成長を強く感じさせた試合だった。劣勢に
立たされていたとはいえ、終始ゲームをコントロールしていたのは東海大だっ
たように思う。プレーはちょっとバタバタしていた部分もあったが、15人の
結束力と集中力は最後まで切れなかった。関東学院や法政とは違った方向での
(より組織的な)チーム作りがようやく結実しつつあるように見える。決勝ト
ライが象徴しているように、おそらくこれが東海大の目指している形ではない
だろうか。これからしばらく試合期間が開く中で、どのような形でアタックに
磨きをかけていくのか楽しみだ。

惜しくも土壇場で逆転を許してしまった法政だが、今シーズンは期待に違わず
3強の一角として優勝争いする力を持っていることを存分に示す戦いぶりだっ
た。FWのパワーアップにより、攻撃力は昨シーズン終盤に比べても確実に上
がっている。ただ、この試合で感じたのは、せっかくいいものをたくさん持っ
ているのに、それらが必ずしも有機的に機能していなかったように見えること。
どのようにしてこの試合に勝つのかという明確なプランが、残念ながら見いだ
せなかった。ただ、関東学院にとってやりにくいのは、理詰めで来る東海大よ
りも個性派集団の法政の方ではないかと思われる。FWも強くなっているので
優勝争いが3竦みとなる可能性も十分に考えられる。法政の頑張りにより、リ
ーグの終盤戦がますます楽しみになってきた。     (2008年10月12日記)

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