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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2008

試合日程&結果

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大東文化大学 vs 日本大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2008/10/19) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 大東文化大学:前半: 2  1  0  0 12 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |  17 15
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 日本大学  :前半: 3  3  0  0 21 |
       :後半: 1  1  0  0  7 |  28 17


◎出場メンバー

 大東 : 1.笹沼 2.坂下 3.大畑 4.森山 5.木村 6.松田 [7].関戸 8.レプハ
      9.新川 10.出村 11.シオネ 12.升屋 13.梶 14.越智 15.神谷
     (16.シリヴェヌシ 17.中井 18.友田 19.塩見 20.生方 21.井上 22.滝内)

    ○交代  2→21(後25分入替),  5→16(後35分入替), 11→20(後35分入替)
        13→19(後37分入替)


 日大:  1.仲村 2.豊田 3.星 [4].馬渕 5.サムエラ 6.江口 7.森 8.細田
      9.中村正 10.ピエイ 11.原岡 12.三友 13.富加見 14.原田 15.住吉
     (16.小松 17.鳥井 18.タリファ 19.甲斐 20.井上 21.権 22.中村誠)

    ○交代  6→18(後20分入替), 10→22(後20分入替),  3→17(後25分入替)
         7→19(後29分入替),  2→16(後29分入替), 11→21(後29分入替)


 レフリー :渡辺敏行(日本協会公認)


◎得点経過

 大東文化大学  0                5   12                           12
                                T   G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                      G                G              G
 日本大学    0            7                14             21   21


 大東文化大学 12          17                                     17
                    T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                      G                    x
 日本大学   21            28                                   28


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 大東:前半15分 森山 (T)
      19分 シオネ(T)、出村 (G)
    後半 9分 越智 (T)

 日大:前半11分 ピエイ(T)、三友 (G)
      28分 中村正(T)、三友 (G)
      43分 江口 (T)、三友 (G)
    後半11分 原田 (T)、三友 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

大東大と日大はそれぞれタイプこそ異なるものの、(ツボに填ればだが)観て
いて楽しいラグビーをするチームという印象がある。が、それも過去形(だっ
た...)になりつつあるのがリーグ戦Gファンにとっては寂しい。セブンズ
の15人版のようなFW、BK関係なく奔放にパスが繋がるといった大東大の
持ち味が発揮される場面は年々確実に減ってきているような気がする。また、
強力FWを軸に、BKが個々の強さで勝負して「組織」をぶち破るのが魅力だ
った日大にもFWにかつての(関東学院をも圧倒したような)勢いがなくなっ
ている。今シーズンもここまで大東大が3連敗と元気がなく、日大も拓殖大に
1点差で辛くも勝った以外は、東海大と法政にいいところなく敗れている。

ただ、元気がないように見える大東大にもようやく浮上の兆しが見えてきた。
敗れたとは言え、関東学院戦でメンバーも固まってきたようだ。ということで
まずは大東大のメンバーを確認。まだ、若干の入れ替わりはあるものの、FW
とBKの中心線はほぼ固定。No.8は負傷の影響が心配されたレプハで、司令塔
は出村、CTBに升屋が入る。そしてシオネ(ファマオ)は結局左WTBに落
ち着いた。スクラムは依然として苦しそうだが、関東学院戦では散々だったラ
インアウトが修正されれば、BKの攻撃力を活かした戦いができるはず。「リ
バイバル」を期して、まずはFWが元気なところを見せて欲しい。

一方の日大は、香港で開催されたW杯セブンズのアジア予選決勝で、ノーサイ
ド寸前にに起死回生の「90m独走逆転トライ」を決めたピエイ・マフィリオ
がSOで元気に先発。その「マフィレオ効果」に期待したいところだが、ピエ
イは強力にマークされることが確実で、他にエースの登場が待たれるところ。
日大は過去3試合で3トライ(リーグ最小)と寂しい状況が続いており、その
3つも決めたのはピエイ、サムエラ、タリファの3人。果たして、この試合で
他にも決められる選手がでてくるかどうかが私的みどころだ。

さて、負けが先行しているとは言え、日大にはこの試合に勝つことが条件だが
上位進出のチャンスが残されている。一方の、大東大は崖っぷちに立たされて
いるとも言える。「1勝」の持つ意味はそれぞれ違うものの、この試合は両チ
ームにとって「サバイバル」がかかった戦いであることは間違いない。ピッチ
に登場した選手達にも「みなぎる闘志」のようなものが感じられる。ちょっと
冷たさも感じさせるやや強い秋風が吹くコンディションだが、「熱い戦い」に
なりそうだ。

[前半の戦い]

この試合で何とか片目を開けたい大東大のキックオフで試合開始。その大東大
がこの試合もオープニングから気合い十分で日大陣に襲いかかる。大東大はキ
ックオフ直後のラインアウトからオープンに展開して、WTB越智が日大イン
ゴールに向かってキックパスを送るが日大のサムエラ(ピエイの兄)がフェア
ーキャッチ。そのサムエラが自身でFKを蹴り、それがHWLまで届くロング
キックをだったので場内が沸いた。

開始3分、押し気味の大東大が日大陣22m付近でマイボールラインアウトの
チャンスを掴む。が、今日も!と言ったらいいのか、日大にボールをスティー
ルされてチャンスを潰す。大東大ファンにとっては「あ〜あ」なのだが、PR
仲村、LOサムエラ、No.8細田と190cm以上の選手を3人揃える今シーズンの
日大はFWが「高さ」でも勝負できるチームになっている。とくに193cmなが
ら90kgの細身ではなくて細田のジャンプ力が光る。(結局、本日もこのライン
アウトでの不調が大東大を大いに苦しめることになる。)

さて4分、日大のエースから日本のエースへと成長を遂げつつあるSOピエイ
が、早速「香港土産」を披露する。大東大のハイパントを見事なキャッチング
で確保したWTB原岡を起点としたカウンターアタックから、そのピエイが自
陣から一気に大東大陣22mまで突き抜ける快走を見せる。軽いステップなが
ら、ロケットスタートのような風を切るようなランニングは見事。1年生の頃、
鋭いステップワークに身体がついていかず、足がつった自爆状態でピッチをす
ごすごと去っていったような、ひ弱なピエイの面影はまったく感じられない。
さほど大きな選手ではないが、この選手がボールを持つと急に大きくなったよ
うに見えるから不思議。

このピエイのプレイに元気を得た日大が攻勢に出て、大東大はしばらくの間、
自陣ゴールラインを背にした苦しい戦いを強いられる。6分には日大がライン
アウトからFWがモール、ラックで前進を図り、ゴールラインを越えたかに見
えたがパイルアップ。8分のスクラムではもう少しでプッシュオーバートライ
というところでSH中村が抜け出すものの、大東大がインテンショナルノック
オンの反則。ここで、日大は迷わずスクラムを選択する。拓殖大戦ではCTB
三友がスーパーブーツぶりを見せつける形で、相手陣の反則ではことごとくP
Gを狙っていたが、今日の日大はラインアウトからFWで攻める戦術。やはり、
FW戦に自信を持っているのだろう。

自陣ゴール前に釘付け状態で耐えていた大東大だったが、ついに11分、日大
が大東大ゴールをこじ開ける。決めたのはピエイだった。大東大ゴール前スク
ラム(右中間)を起点としてSHからボールがSOピエイにボールが渡る。ピ
エイはそのまま斜め鋭角の横走りに近い状態で走り、ディフェンダーを振り切
ってゴール左隅まで到達してしまった。CTB三友がここでスーパーブーツぶ
りを発揮して、まずは日大が7点を先制する。

これで日大が勢いづくかと思われたが、逆に大東大の方に火が付いた。15分、
日大ゴール前でのラインアウトからFWがサイドアタックで前進し、LO森山
がゴールに飛び込む。GKは失敗したが、大東大がまず5点を返す。大東大は
畳みかける。19分、日大ゴール前でのラインアウトからFWが前に出て素早
くオープンに展開。ボールが左サイドに位置していたシオネに渡ったときには、
完全にゴールへの道筋が出来ていた。やはりこれが大東大の今シーズン目指し
ている形なのだろう。GKも成功し、大東大が12−7と逆転に成功する。沈
みがちな大東大応援席にも、「今日はやってくれそうだ。」という雰囲気が漂
い始める。

リスタートのキックオフで日大がダイレクトタッチのミス。日大にとってはい
やな流れになるはずだったが、大東大のセットの不安定さが日大を救うことに
なる。スクラムをホイールされてマイボールを失い、直後のスクラムからの日
大のタッチキックは大東大ゴール前でタッチを割る。ラインアウトでも大東大
はマイボールを奪取されて大ピンチとなるが、日大のゴール前ラックでの反則
(ハンド)に救われる。25分には逆に大東大がカウンターアタックを起点と
して、SO出村からのロングパスが一気に大外のシオネに渡りビッグゲインと
いうダイナミックな攻撃も飛び出す。

しかしながら28分、日大はHWL付近でのラインアウトから素早くオープン
に展開して、三友からパスを受けたCTB富加見が大東大陣22m内まで前進。
G前のラックからSH中村が抜け出して右中間に飛び込む。GK成功で日大が
14−12と逆転に成功した。日大はCTBの三友と富加見のコンビがよくな
っており、絶妙の間合いで富加見が裏に抜けるシーンがその後もたびたび見ら
れた。今シーズンの日大はSH中村の球捌きがよく、BKにボールがよく回る
が、BKのライン攻撃のオプションも確実に増えてきている。

試合はその後、両チームの激しいボールの争奪戦の様相を見せ膠着状態となる。
このまま日大の2点リードで前半が終了するかと思われたが、FWのセットプ
レーに自信を持つ日大が粘りを見せる。インジュリータイムに入ってからは大
東大ゴール前で激しい攻勢に出てサイドアタックで前進を図る。そして43分、
遂にFL江口がインゴールに飛び込んだ。難しい位置からのGKを三友が決め
て21−12の日大9点リードで前半が終了。このトライに至る前の大東大の
プレーがスクラムのホイールとノットストレートで、2度に渡ってマイボール
を失うというものだっただけに、大東大にとっては残念な失点だった。もちろ
ん、日大にとってはここで1本取れたことが大きかったのだが。

[後半の戦い]

後半も大東大は(この試合に何としても勝つという強い意気込みを見せて)キ
ックオフから押し気味に試合を進める。キックオフ直後の1分、大東大は日大
陣22m内で得たFKのチャンスからサインプレーでゴールを目指すが、オフ
サイドの反則でチャンスを潰す。ここから日大がPKで一気に大東大陣に入り、
安定したラインアウトを足がかりに逆襲に転じる。3分には大東大G前でのラ
インアウトから絶妙のサインプレーでFW選手がタッチライン際を走りゴール
を目指すが、タックルに遭ったところでノットリリース。

ただでさえラインアウトが不調の大東大にとって、日大の高さはやはり脅威。
4分、5分と立て続けに自陣22m付近のラインアウトでマイボールを失い、
大東大はピンチの連続となる。もちろん、大東大の不調もあるのだが、前の方
に長身選手を立たせた日大の作戦勝ち、というかプレッシャーに負けた格好。
リードする日大がペースを掴みつつある中で、キック合戦と接点(ラック)で
のターンオーバー合戦と、ボールがピッチ上をめまぐるしく動き回る展開とな
る。そして9分、ようやく得点板が動いた。大東大が日大インゴールに向かっ
て蹴ったボールをWTBの越智が競争状態となった日大選手を追い抜く形でグ
ラウンディングに成功した。GKは失敗したが17−21と大東大のビハイン
ドは4点に縮まる。今日こそは勝利を掴めるか?

しかし、日大は「取られたら取り返せ!」とばかりに直後に追加点を奪う。キ
ックオフの大東大蹴り返しに対するカウンターアタックからのテンポ良く連続
攻撃で攻め、CTB富加見がラインブレイクに成功して大東大陣でラック。こ
こから出たボールがHO豊田からWTB原田に繋がり、原田がそのままゴール
ラインを越えた。CTB三友がここでもGKを確実に決めて28−17と日大
が再び大東大を突き放す。大東大にも日大と平等以上にチャンスが訪れるのだ
が、ここ一番で決められる日大が着実にリードを拡げている印象。

僅か3分間の間に両チームが1トライずつ挙げたことで、その後は点の取り合
いとなるかと思われたが、そのまま得点板が動かないままどんどん時間が過ぎ
ていく。全般的には大東大が攻勢に出ているのだが、ラインアウトでマイボー
ルをことごとく日大に渡し、スクラムも押し込まれ気味では苦しい。また、日
大ゴール前で得たPKのチャンスは間髪入れずに速攻で攻めるものの、日大の
粘り強いディフェンスをなかなか打ち破ることができない。

20分、日大はSOピエイに替えて中村誠一(SH正寿の兄)、FL江口に替
えてタリファを投入。SOが中村兄に替わったことで、球捌きのいいSHや両
CTB(三友と富加見)との連携も含めた日大のBKラインの攻撃パターンが
より多彩になったように感じられた。現状の日大のSOはピエイだが、今後は
HB団が中村兄弟でピエイがFBで先発する場面が見られるかも知れない。ま
た、その方が相手にとっても脅威が増しそうな感じがする。日大ではもうひと
り、大東大のハイパント攻撃に対して確実なキャッチングを見せたWTB原岡
も今後要注目の選手のひとりと言ってよさそう。

さて、ボール支配は相変わらず大東大でゲームも日大陣で行われる時間帯が続
く。そんな中で32分、これまで敵陣で得たPKでもゴールを狙わなかった日
大の三友が右中間20mのPGを狙う。ここまで確実に失敗無しで4ゴールを
決めてきた三友だったが、イージーともいえるGKが皮肉にもゴールポストに
弾き返される。ただ、1トライ1ゴールでも追いつかれない11点のリードが
あるため、日大は(守勢に回っていても)落ち着いてゲームを進めることがで
きる。

後半35分以降は、どうしてもこの試合に勝ちたい大東大の攻勢がさらに強ま
る。日大のタリファと大東大のレプハといった大型選手による迫力満点のボー
ルの奪い合いなど、伝統的にこのカードのもう一つの特徴でもある、激しい肉
弾戦が展開される。が、大東大は日大ゴール前まで再三迫りながらも、結局、
得点を奪えないままノーサイドとなった。タラレバになってしまうが、大東大
にとって、この試合でのラインアウトの不調は、関東学院戦以上に残念な結果
を残すこととなってしまった。

[試合後の感想]

拓殖大に1点差で辛勝した後、法政に完封負けで調子が下降気味と思われた日
大だが、チーム状態はいいようだ。過去3試合で3トライと得点力不足気味だ
った状況も打開されつつある。FWのラインアウトが安定していることに加え、
両CTBを軸としたBK陣のコンビネーションも良くなっているように感じた。
やはり課題は反則が多いことだろうか。関東学院戦を厳しいが、あと2つ勝つ
チャンスは十分あるだけに、不用意な失点を防ぐためにも反則(とくに自陣で
の)を減らすことが大切なように思われる。ただ、この試合で勝ったことで今
後の展望が大きく開けてきたことも確か。今年のチームはまとまりがとても良
いだけに、さらにアタックに磨きをかけて欲しいと思う。

ついに開幕から白星無しの4連敗となってしまった大東大。FWのセットプレ
ーが安定しなかったという敗因はあったものの、アタックでは再三いい形が見
られた。昨シーズンも感じたことだが、なぜ最初からメンバーと戦術を固定し
て戦えなかったのか?と思う。もうひとつ大東大にとって惜しまれるのは、B
Kがチャンスで簡単に蹴ってしまう場面が多かったこと。大東大の持ち味はい
ろいろな形でのパスによる継続にあるのだから、佳き伝統を思い出して欲しい
ところ。とはいっても(勝利という結果は出ていないが)両WTBでトライを
取る形ができるなど、チーム力は上がってきている。今後も厳しく苦しい戦い
が続きそうだが、希望を捨てないで頑張って欲しいと思う。
                         (2008年10月24日記)

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