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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2008

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法政大学 vs 拓殖大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2008/11/29) 於:ニッパツ三ツ沢球技場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 拓殖大学  :前半: 2  1  1  0 15 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |  20 11
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 法政大学  :前半: 3  2  0  0 19 |
       :後半: 5  5  1  0 38 |  57 13


◎出場メンバー

 拓殖 : 1.石澤 2.吉田 3.西 4.土井 [5].浦川 6.稲田 7.ナータ 8.マレイ
      9.二宮 10.平野 11.茂野 12.中村 13.イーリ 14.北方 15.高橋
     (16.取手 17.川田 18.森谷 19.角谷 20.金澤 21.ダニエル 22.横山)

    ○交替 15→21(後 0分入替),  8→18(後 0分入替),  3→17(後23分入替)
        12→22(後26分入替),  6→19(後33分入替)


 法政 : 1.浅原 2.山森 3.鎌田 4.井上 5.栗林 [6].有田 7.光安 8.宮田
      9.日和佐 10.文字 11.城戸 12.宮本 13.岸和田 14.舩木 15.竹下
     (16.川口 17.小田 18.山根 19.荻山 20.和田 21.野地 22.湯島)

    ○交替  8→19(後11分入替),  4→18(後28分入替),  3→17(後31分入替)
         2→16(後33分入替), 12→21(後37分入替), 13→22(後40分入替)


 レフリー :佐藤武司(  協会公認)


◎得点経過

 拓殖大学    0           5      12     15                      15
                           T      G      P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
              T                             G      G
 法政大学    0    5                             12     19      19


 拓殖大学   15            20                                   20
                      T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
             x G         G        G       G        P G
 法政大学   19     26        33       40      47      50 57    57


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 拓殖:前半10分 茂野 (T)
      17分 マレイ(T)、平野 (G)
      24分 平野 (PG)
    後半11分 平野 (T)

 法政:前半 3分 文字 (T)
      33分 山森 (T)、文字 (G)
      40分 岸和田(T)、文字 (G)
    後半 4分 城戸 (T)、文字 (G)
      14分 城戸 (T)、文字 (G)
      23分 竹下 (T)、文字 (G)
      31分 文字 (T)、文字 (G)
      40分 文字 (PG)
      42分 竹下 (T)、文字 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

競技場に足を運ぶのは10月19日の大東大対日大戦以来。このままではライブレ
ポートの看板を下ろさなければならない。というわけで久しぶりに訪れた三ツ
沢球技場だが、ここの芝生は本当に素晴らしい。シーズンが深まったこの時期
でも「緑の絨毯」と呼びたくなるくらい青々としている。球技場と銘打ってい
るだけあってスタンド(とくにバックスタンド)もピッチ全体が見渡せるよう
にできている。天候もこの時期にしては暖かく最高。一部オールドファンのレ
フリーに対する偏った誹謗中傷の声さえ聞こえなければメインスタンドでの観
戦は格別なものになるのだが...。

それはさておき、本日は法政、拓殖大双方にとってリーグ戦の総決算となる最
終戦。今シーズンの法政は出足から快調に飛ばしており、東海大には僅差で敗
れたものの関東学院を破って3位以上が確定。大学選手権に向けて(今年はや
ってくれそうだという)ファンの期待は高まる。一方の拓殖大はここまで苦戦
の連続で勝利を挙げたのは不振を極める大東大戦のみ。それも1点差で辛くも
逃げ切るという際どいものだった。このように明暗が分かれている両チームだ
が、その原因を一つあげると戦術・メンバーが固定できている法政に対し、そ
れらが固まっておらず試行錯誤が続く拓殖大といったところだろうか。

そんなことを思い描きながら両チームのメンバー表に目をやる。法政はこの試
合も基本的に不動の陣容だが、負傷で戦列を離れていた城戸がFBではなくW
TBとして復帰したことが目を惹く。関東学院戦で大活躍したFB竹下が好調
なこともあるが、城戸には無理をさせない、あるいはテスト的な起用といった
感じもする。一方の拓殖大はFWに留学生を二人(FLにナータ・リチャード、
No.8にマレイ・キーナン)を起用し、CTBダニエル・ピータースはリザーブ
というメンバー構成。FW戦重視でこの試合に臨もうとしているのではないか
という意図が伺える。何とかセットプレーで法政FWにプレッシャーをかけて
出足を止めるという作戦なのかもしれない。個人的に思い描く理想のメンバー
構成とは違うが、入替戦回避もかかった拓殖大のこの試合に賭ける心意気に期
待したい。

[前半の戦い]

メインスタンド側から見て右から左にやや強い風が吹く中、風下に立った法政
のキックオフで試合開始。その法政が早々とチャンスを掴む。拓殖大陣10m
ライン付近のラインアウトからオープン展開を主体とした連続攻撃で拓殖大ゴ
ールに迫る。決定的な場面で惜しくもパスミスがあってボールがタッチライン
を割るが、拓殖大ボールながら拓殖大陣22m内でのラインアウト。ここで拓
殖大にミスが出て法政FWが一気にゴールラインまでボールを運び、SO文字
が先制となるトライを奪う。今シーズンの拓殖大はラインアウトに課題を抱え
ているが、この試合でもそれは変わらずか。気合い十分で臨んだはずの拓殖大
だが、早過ぎる失点に応援席からも大きなため息が漏れる。

法政があっさりと先制点を奪ったことで、このまま試合は法政のペースで進む
かと思われたが、ずるずると負けるわけにはいかない拓殖大が意地を見せる。
5分、スクラムでの法政のコラプシングをきっかけとして、拓殖大が攻勢に転
じる。8分、拓殖大は法政陣22m付近でのラインアウトからオープンに展開
してCTBイーリが右WTBにキックパスを送るがゴール前で惜しくもノック
オンがありチャンスを潰したかに見えた。しかしながら、法政陣22m内のス
クラムで拓殖大は強力なプレッシャーをかけてターンオーバーに成功し、素早
く左オープンに展開。絶妙なタイミングでパスを受けた左WTB茂野がスピー
ドに乗ったステップワークを披露して法政のディフェンダー二人をひらりとか
わしインゴールに飛び込んだ。GKは失敗したが拓殖大が5点を返して試合を
振り出しに戻す。FW重視で臨んだ(あくまで私見)拓殖大の作戦があたった。

このいい形で生まれたトライで拓殖大に俄然元気が出てきた。スクラムで拓殖
大FWの強力なプレッシャーを受けることになるという想定外(おそらく)の
展開に、法政の攻撃のリズムが狂い始める。14分、拓殖大は自陣10m/22mで
得たPKでSO平野のタッチキックは追い風にも乗って一気に法政陣22mラ
イン手前まで到達。確かに平野のロングキックは拓殖大の武器のひとつである
ことは間違いない。ただ、精度の面ではイーリやダニエルに軍配が上がるのだ
が...。しかし拓殖大はラインアウトがうまくいかない。せっかく掴んだチ
ャンスもノットストレートで潰えた。

かに見えたが、拓殖大FWがここでもスクラムで健闘しターンオーバーに成功。
ラックからボールは素早く左オープンに展開されCTBイーリが法政陣ゴール
前までボールを運びラック。さらにボールはオープンに展開されSO平野がゴ
ールラインを超えたようにも見えたが、惜しくもパイルアップとなる。しかし、
拓殖大FWの勢いは止まらず、5mスクラムのチャンスを活かしてNo.8マレイ
・キーナンがサイドアタックで一気にインゴールまでボールを運んだ。GKも
成功し拓殖大は12−5と逆転に成功する。誰もが予想しなかった展開に、法
政サイドの応援席からは次々と叱咤の声が聞こえてくる。

リスタートのキックオフに対する拓殖大の蹴り返しがダイレクトタッチとなり、
法政は拓殖大陣22m内でのラインアウトのチャンスを掴む。しかしながら、
法政は本来の攻撃のリズムを取り戻すことができずノックオン。続く拓殖大陣
10m付近のラインアウトでも法政はノットストレートとちぐはぐ。拓殖大は
スクラム戦で優位に立っていたこともあり、FWのタテとオープン展開という
シンプルなパターンながら着実に前進を図る。23分には法政陣22m内で得
たPKのチャンスでSO平野がゴールやや左20mのPGを確実に決め、拓殖
大はリードを10点に拡げる。入替戦回避に向け、ひと波乱あるか?という試
合展開になってきた。少なくとも、あっさりと先制点を奪ったことによる法政
の楽勝ムードは完全にどっかに行ってしまった。

しかし30分を過ぎたあたりから、徐々に法政は自分たちのリズムを取り戻し
始める。拓殖大が法政のスピードに押され気味となり反則が増えてきたことで、
法政はさらにテンポアップ。ペナルティからは速攻で攻めるということで法政
は意思統一ができていたようだ。拓殖大が自陣内でずるずると後退を強いられ
る中、33分にHO山森がタップキックからの攻めでトライを奪いGKも成功
して法政のビハインドは3点に縮まる。さらに40分、法政は自陣からのカウ
ンターアタックでボールを左右に素早くかつ大きく動かす鮮やかな連続攻撃を
見せて、最後はCTB岸和田が拓殖大陣のゴールラインを超えた。ちょっとフ
ァンをやきもきさせる展開ではあったが、法政は前半終了間際に逆転に成功。

逆に、スクラムでプレッシャーをかけ、ラックでもターンオーバーに成功する
など、FW戦の健闘で法政にひと泡吹かせそうな雰囲気をピッチに漂わせた拓
殖大だったが、終盤は法政の速いテンポに振り回された形。ピッチ上には前半
大活躍だったNo.8のマレイが倒れ込んでいて後半は出場が難しそうな状況。暗
雲が立ちこめてきた状況で、拓殖大は後半立て直すことができるだろうか?

[後半の戦い]

後半、拓殖大はNo.8マレイ・キーナン(前半終了間際に負傷)に代わって森谷、
FB高橋に代わってダニエル・ピータースがそれぞれピッチに登場。メンバー
は代わっても後半も(前半健闘を見せた)FWを軸に法政にプレッシャーをか
けたい。が、開始早々の2分に拓殖大が自陣でノックオンオフサイドの反則を
犯し、法政は左中間30mの位置からSO文字がPGを狙う。GKは外れるも
のの、法政はリスタートのドロップキックに対するカウンターアタックから連
続攻撃で本日はWTBの城戸がボールを拓殖大陣インゴールまで運ぶ。再逆転
に向けて意気上がる拓殖大の出鼻を挫くような鮮やかな連続攻撃で、法政はリ
ードを11点に拡げる。

後半の法政は風上に立ったこともあり、キックを使って拓殖大陣で試合を進め
るゲームプランだったのかも知れない。蹴り合いが続く状況では、やはり自分
の走りに自信を持つ選手達がBKに揃っている法政に分がある。しかしながら、
このままでは終われない拓殖大も反撃。9分にはカウンターアタックから連続
攻撃で法政ゴールに迫り、法政の反則(オフサイド)を誘う。拓殖大はここは
PGを狙わず法政陣ゴール前のラインアウトからオープンに展開。CTBイー
リからのロングパスがWTB茂野に渡り、茂野はそのまま法政陣のゴールライ
ンを超えた。ピータースのGKは外れたが20−26と拓殖大はビハインドを
6点に縮めて再逆転に向けて望みを繋ぐ。

が、拓殖大の健闘はここまでだった。リスタートの法政のキックオフは拓殖大
陣に深く蹴りこまれてドロップアウト。ここでイーリが蹴ったライナー性のド
ロップキックは左サイドHWL付近に居た法政のWTB城戸の胸にすっぽりと
収まる「ナイスパス」になってしまう。おそらくミスキックだと思うが拓殖大
選手にもチェイスする時間を与えない(法政にとってはだが)ナイスキック。
前が完全に開いている状態で、城戸は迷わず一直線でゴールラインを目指し、
拓殖大選手を振り切ってインゴールに到達。ゴールキックも成功して法政のリ
ードは13点に拡がる。

拓殖大にとっては、せっかくの追い上げムードに水を差す残念な失点だったが、
前半奮闘を見せたFWはオーバーペースが祟ったのか、既に「いっぱいいっぱ
い」の状態だったのかも知れない。運動量は明らかに落ち、スクラムも押せな
くなってしまう。20分には自陣22m付近でのマイボールスクラムをホイー
ルされて法政ボールスクラムに。ここで、法政は安定した球出しから左右にボ
ールを大きく動かし、最後はFB竹下がインゴールに飛び込んだ。法政のリー
ドはさらに拡がり20点に。残された時間は20分余り。チームの勢いの差か
ら見ても、ここで勝負ありとなった。

ようやく自分たちのリズムを取り戻した法政が畳みかける。31分には拓殖大
陣22mライン手前左サイドのスクラムからの8→9攻撃で、パスを受けたS
O文字が拓殖大DFをあっさりとかわしてゴールポスト直下に走り込む。さら
に40分には文字がPGを決めて50−20。拓殖大もCTBイーリやWTB
横山が突破を見せるのだが単発に終わり得点に繋がらない。法政はさらに終了
間際の42分にターンオーバーからの連続攻撃でFB竹下がトライを奪い57
−20。前半はファンをやきもきさせた法政だったが、終わってみれば今シー
ズン最多得点での圧勝。両チームの明暗を分けたのはメンバーが固定できてい
たかいないかという面ももちろんあるが、80分間をトータルに見据えて戦い
ができるかそうでないかの差とも言える。競り合いだった前半、法政が「らし
さ」を発揮して5トライを奪った後半を通して観て、そんな印象を持った。

[試合後の感想]

開始早々にあっさりと先制できたことで、法政に楽勝ムードが漂った前半だっ
たが拓殖大FWの抵抗にあって思わぬ苦戦を強いられたのは、法政にとって大
学選手権に向けての反省材料。やはり法政ラグビーの生命線はFWからのテン
ポ良い球出しであることがよくわかった試合でもあった。ただ、前半苦戦した
ものの、後半はスクラムやラインアウトから安定したボールがBKに供給でき
ていたので心配はなさそう。むしろ危機感を持って練習に取り組めるという点
では良かったのかも知れない。大学選手権では守りに入らずにどんどん攻めて
いく法政らしさを発揮することができればいいところまで行けそうだし、また
そうあって欲しいと思う。

前半の健闘も及ばず大敗を喫してしまった拓殖大は7位が確定し入替戦に回る
ことになってしまった。選手個々の力は他チームと比べても遜色ないだけに、
それを「ひとつのチーム」としてまとめ上げられなかったことが惜しまれる。
成功したかに見えた本日のメンバー構成も、結果的には付け刃だった感が否め
ない。まったく個人的な意見だが、最初から戦術眼とスキルを持ち合わせたイ
ーリ(SO)とダニエル(インサイドCTB)のコンビでゲームを作り、決定
力のある両WTBで取るという形でのチーム作りができなかったのかなと思う。
結果論だが、ELV対応?とはいえイーリや横山がスクラムでボールを投入す
る場面を見た時点でどこか歯車が狂っているように感じられたが、結局そのま
ま終盤を迎えてしまった感がある。入替戦では本日前半に見せたような気迫溢
れるプレーで80分間を戦い抜いて1分残留を果たし、来シーズンこそは「こ
れが拓殖大のラグビー」というものを見せて欲しいと思う。(2008年12月7日記)

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