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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2008

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拓殖大学(1部7位)vs 専修大学(2部2位)

関東大学ラグビーリーグ戦G 1−2部入替戦(2008/12/13) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 拓殖大学  :前半: 4  3  0  0 26 |
 (1部7位):後半: 1  0  1  0  8 |  34  9
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 専修大学  :前半: 1  0  0  0  5 |
 (2部2位):後半: 1  1  0  0  7 |  12 16


◎出場メンバー

 拓殖 : 1.石澤 2.吉田 3.西 4.土井 [5].浦川 6.稲田 7.ナータ 8.森谷
      9.二宮 10.平野 11.茂野 12.ダニエル 13.イーリ 14.北方 15.高橋
     (16.岩井野 17.川田 18.慶野 19.角谷 20.金澤 21.橋爪 22.横山)

    ○交替  9→20(後 4分入替), 14→22(後42分入替)


 専修:  1.小谷野 2.中比良 3.川村 4.鳥井 5.岩宮 6.今村 7.牛島 8.阿部
      [9].松下 10.守田 11.石渡 12.永木 13.八役 14.横堀 15.古川
     (16.中村 17.武田 18.福田 19.山下 20.高木 21.茂呂 22.宮下)

    ○交代  1→16(後14分入替),  7→19(後19分入替),  2→17(後24分入替)
         5→18(後37分入替)


 レフリー :渡辺敏行(日本協会公認)


◎得点経過

 拓殖大学    0     5       12      19     26                   26
                     T       G       G      G    x
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                           T
 専修大学    0                 5                                5


 拓殖大学   26            31                        34         34
                      T                         P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                              G
 専修大学    5                    12                           12


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 拓殖:前半 4分 西  (T)
      12分 ナータ(T)、ダニエル(G)
      20分 森谷 (T)、ダニエル(G)
      27分 茂野 (T)、ダニエル(G)
    後半11分 西  (T)
      37分 ダニエル(PG)

 専修:前半16分 岩宮 (T)
    後半19分 横堀 (T)、古川 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

専修大学の試合を最後に観たのはいつだっただろうか?と思って過去の観戦記
録を振り返ってみた。2003年の同じ12月13日に熊谷Bグランド行われた中央大
との入替戦だから、ちょうど5年前ということになる。スタジアムには普段の
試合では目にすることがなくなって久しい専修大学のジャージーを模した緑と
白の二色旗を持って応援に駆けつけているファンの姿が目につく。その後も拓
殖大学、立正大学が昇格を果たす中で、ここまで本当に長かったことに改めて
気が付いた。

過去(1997年度から2002年度までのシーズン)に観戦した専修大学の試合のこ
とを思い出しながらメンバー表に目を通す。専修大学はまるまる5シーズン入
替戦からも遠ざかっていたので、メンバーに知っている選手の名前はない。1
部リーグ時代に比べて選手獲得も難しくなっているはずで、メンバーの体格を
隣の拓殖大のものと見比べてみてもそのことははっきりとわかる。おそらく、
拓殖大FWの圧力には相当苦しめられることになりそうだ。まぁそれは仕方な
いとして、専修大学のラグビーがこの「ブランク」の間にどんなスタイルに変
わっているのか(いないのか)を見るのは、この試合の一つの楽しみではある。

そんな感慨にふけっているうちに、ピッチ上に練習着スタイルの拓殖大のメン
バーが現れて全体練習を始めた。このチームは他の大学チームに比べて、どこ
か全体的に落ち着いているように見える。ピッチ上の選手達を眺めながら何故
だろうと考えてみたが、結局はダニエル・ピータース、イーリ・ニコラス、ナ
ータ・リチャード、マレイ・キーナンといった留学生(それも大東大や日大と
いったトンガ出身者とは違ったタイプの選手達)のキャラクターに依るところ
が大きいことに気付いた。彼らは日本の大学生に比べて年齢以上に落ち着いて
見える。(他にも試合を観ていて気が付いた理由があるのだが、それは感想の
ところで書く。)

その拓殖大のメンバー構成は、リーグ最終戦と少し違ってNo.8は負傷したマレ
イ・キーナンに代わって森谷が出場し、CTBは12番ダニエル・ピータース
と13番イーリ・ニコラスのコンビで組む。ピッチ上で行われている練習では
イーリがインサイドに位置取りしているので、ダニエルはアウトサイドでの出
場となりそうだ。WTBは11番は茂野で不動だが14番には1年生の北方が
起用され、横山はリザーブ登録。やはりコンディションがよくないのだろうか。
とはいってもFWの体格差は数字の上からも歴然としているので、おそらく拓
殖大はリーグ最終戦の法政戦と同様にFW中心で攻めてきそうだ。

[前半の戦い]

いつもなら冷たい強風の中で行われる入替戦だが、本日は風も弱く絶好のコン
ディションなので「寒さとの戦い」を考えなくていいのが助かる。そんな中で
メインスタンド正面から見て左サイドに陣取った専修大のキックオフで試合が
始まった。まずはお互いの様子見といった感じで蹴り合いの展開となるが、F
Lに起用されたナータ・リチャードがいきなりキックで存在感を大きくアピー
ルする。専修大のハイパントをキャッチしたナータが自陣からハイパントで前
進し落下点に向かって疾走。長身(192cm)を活かして確実にキャッチングに
成功し一人でロングゲインを稼ぐ。スタンドも唖然とさせる文字通りの「ビッ
グプレー」だった。(これが単なる偶然でないことはその後すぐにわかる。)

この「自己責任全う型」とでも呼びたくなるハイパント大きく前進した拓殖大
はオープン展開を図るが、専修大陣22mに入ったところで専修大にオフサイ
ドの反則。十分PGが狙える位置だが、拓殖大はタッチキックで専修大ゴール
前でのラインアウトを選択。そして、4分、FWのパワープレーで前進を図り
PR西がインゴールに飛び込んだ。GKは失敗したが、まずは拓殖大がFWの
パワーの違いを見せつける形でを5点を先制し幸先良いスタートを切った。

拓殖大はリスタートの専修大キックオフに対するカウンターアタックからさら
にFWで前進を図るが、HWL付近でノックオン。注目のファーストスクラム
だったが拓殖大FWが専修大FWを押し込んで難なくターンオーバーに成功。
拓殖大のオープン展開による連続攻撃は、専修大陣の22mライン手前でノッ
クオンがあり潰えるが、専修大は早くもFWのパワーを見せつけられた形で苦
戦を強いられる。ただ、専修も速い展開で対抗する。FWのセットプレーでの
劣勢を凌げば何とか対抗できそうな様相も見え始める。

しかしながらFW戦で優位に立つ拓殖大ペースの試合展開は変わらない。11
分、HWLから少し拓殖大陣に入った位置での専修大ボールラインアウトで拓
殖大はターンオーバーに成功。ボールはオープンに展開され、最後はフォロー
したFLナータがインゴールに走り込んだ。GKも成功し拓殖大のリードは1
2点に拡がる。やはり1部と2部の壁は厚いのか。それに専修大の選手達は公
式戦では1部のチームとの試合経験がない状態が続いている。このまま拓殖大
の一方的なペースで試合が進んでいくのだろうか?

しかしながら、ボールがオープンに展開されると専修大もテンポ良くボールを
繋ぐラグビーができる。この辺りは1部リーグ時代のDNAがしっかりと受け
継がれているようだ。14分、リスタートのキックオフで専修大が前に出たと
ころで拓殖大がオブストラクションの反則を犯す。専修大は拓殖大ゴール前か
らのアタックを選択し、素早くボールを左オープンに展開。ゴール前でラック
となったところで右サイドにオーバーラップができ、ラストパスがLO岩宮に
渡った。GKは失敗したが専修大は5点を返し、専修大応援席も大いに盛り上
がる。

しかし、専修大のFW戦(とくにスクラム)での劣勢は如何ともし難い。18
分、専修大は拓殖大陣10m/22mの位置でマイボールスクラムのチャンスを掴む
がスクラムを押し込まれてこぼれ球を拓殖大選手に拾われ、WTB北方が一気
に専修大陣22m内まで前進を図る。ラックから左オープンにボールが展開さ
れたところで専修大にオフサイド。ゴール前ということもあり、拓殖大は迷わ
ずスクラムを選択してNo.8森谷がサイドを難なく突破してインゴールに飛び込
んだ。GKも成功し拓殖大はリードを再び14点に拡げる。本日WTBに起用
されて14番を付ける1年生の北方もなかなかのスピードランナーで将来が楽
しみな選手だ。

勢いに乗る拓殖大は畳みかける。27分、専修大陣ゴール前のラインアウトか
らオープンに展開して、今度は11番を付けたWTB茂野が北方に負けじと快
足を飛ばしてインゴールまで駆け抜ける。この日の専修のWTBの布陣はオー
プンサイドに決定力のある茂野、ショートサイドに北方をそれぞれ配置という
ことだったようだが、それが機能した形。拓殖大の攻勢はさらに続き、専修大
はなかなか敵陣に入れない苦しい状況が続く。28分には再びFLのナータが
「自己責任全う型ハイパント」で前へ。偶然は2つ重ならないので、どうやら
このプレーはナータの得意とするもののようだ。来シーズンの拓殖大にとって、
ナータのハイパントは強力な武器のひとつになるに違いない。

劣勢を強いられる専修大だが、身体を張ったタックルで拓殖大のアタックを凌
ぎ試合は膠着状態となる。拓殖大は圧倒的に攻めているものの、なかなかゴー
ルラインを超えられない展開が続く。前半の終盤には専修大が好タックルを連
発させて拓殖大になかなかゲインさせない状況が続き、意気消沈気味だった専
修大応援席も活気を取り戻す。終了間際には拓殖大を自陣ゴール前に釘付けに
する健闘を見せるが、ゴールラインにあと一歩届かず。26−5と拓殖大優位
の展開ではあるが、専修大ファンには後半に一縷の望みを繋ぐ形で前半が終了
した。

[後半の戦い]

後半もパワーで上回るFWを前面に押し出して戦う拓殖大が優位に試合を進め
る。1分には専修大陣22m内での専修大ボールラインアウトからのアタック
で拓殖大がインターセプトに成功。拓殖大は左サイドから右タッチライン沿い
に位置したWTBにキックパスを送るが、ゴールラインまであと僅かのところ
で専修大のタックルに遭いタッチに押し出される。また、3分にはラインアウ
トのクイックスローインからオープン攻撃による連続攻撃でゴールを目指すが
ゴール目前でノックオンがあり追加点ならず。

防戦一方の感もある専修だが、時折1部リーグでも十分通用しそうなテンポの
よいオープン展開主体の繋ぎのラグビーで反撃を見せる。6分には自陣22m
付近のスクラムを起点としてオープン攻撃で大きく前進。ボールが左WTBの
石渡に渡り、石渡はタッチライン際を快走して拓殖大ゴールを目指す。しかし
そこに立ちはだかったのが拓殖大のCTBイーリ。ここで専修大が1本取れて
いれば試合の流れが変わったかも知れないだけに、確実なタックルでノックオ
ンを誘ったイーリの危機管理能力は流石だ。

専修大の抵抗に遭ってなかなか追加点が奪えなかった拓殖大だったが、11分
に待望の得点が生まれる。専修大陣ゴール前(左サイド)でのラインアウトの
チャンスからFWがサイドを攻めてPR西がゴールラインを越えた。左隅の難
しい位置からのダニエルのGKは惜しくもポールを直撃するが、拓殖大のリー
ドは26点に拡がった。まだまだ専修大に反撃の時間は残されているものの、
FWのパワーの差は如何ともし難く、ここでほぼ勝負ありとなった。

その後も専修大は自陣ゴールを背にして防戦一方の苦しい展開を強いられる。
が、その専修大が少ないチャンスを活かして得点を挙げる。18分、拓殖大陣
10m付近(右サイド)のラインアウトからのオープン展開で左WTB石渡が
大きくゲインしてゴール前まで到達しラック。ここからボールは右オープンに
展開されて右WTB横堀がゴールラインを越えた。ボールを左右に大きく動か
す専修らしさが出た見事なトライ。GKも成功し12−31と専修のビハイン
ドは19点に縮まる。このトライに力を得て、専修のアタックがさらにテンポ
アップしてきた。

27分、専修大は拓殖大陣10m付近で相手キックのチャージに成功し、足に
引っかけたボールは拓殖大のインゴールに到達する。一足先にボールに追いつ
いた拓殖大CTBのダニエルが辛くもキックでピンチからの脱出を図るが、専
修大はカウンターアタックでPR中川が大きく前進する。あともう一歩でゴー
ルラインに到達するというところで拓殖大にオフサイド。専修大は拓殖大ゴー
ル前で得たPKのチャンスからFWがサインプレーでトライを取りに行くが、
ノックオンでチャンスを潰す。さらに30分、専修大は拓殖大ゴール前でのマ
イボールスクラムからオープン攻撃でゴールを目指すが、ゴール目前でオフサ
イド。拓殖大も1部校の意地を見せる形で得点を許さない。

試合が終盤に近づいた37分に拓殖大のダニエルが左中間22mの位置からの
PGを決めて拓殖大がだめ押しの3点を追加。専修大の果敢なアタックもあり、
後半の拓殖大の得点は8点だけという(拓殖大にとっては)ちょっと寂しい内
容だったが、34−12の圧勝で拓殖大は危なげなく残留を決めた。敗れたと
は言え、随所にオープン展開を主体とした継続ラグビーを見せた専修大の健闘
も光る見応えのある試合だった。試合後に挨拶に来た専修大フィフティーンに
は一際大きな拍手が送られたことは言うまでもない。

[試合後の感想]

拓殖大はFW戦で専修大を圧倒できたことが大きかった。これはたぶん想定内
のことだったと思われ、リーグ戦の最終戦(対法政)ではFW主体で戦ったの
は入替戦を想定してのことだったのだろう。そして、この試合を観て改めて感
じたことは、拓殖大はリーグ戦Gでも屈指の個性派集団であること。イーリや
ダニエルの判断力とスキルはもちろんのこと、SO平野のロングキック、ナー
タのハイパント、両WTBのスピードなどいいものを持っている選手が揃って
いる。だが、残念なことにそれらの良い部分が一つのチームとしてまとまるこ
となく今シーズンは終ってしまった。来シーズンは、どんな形でこの個性派集
団を纏め上げてひとつのチームに仕上げていくのだろうか。首脳陣に期待する
するところは大きい。

FWのパワーの違いを見せつけられる形で1部復帰は来シーズン以降に持ち越
しとなった専修大だが、BKのアタックは十分1部リーグでも通用することを
示してくれた。おそらくキックオフからしばらくの間、専修大の選手達は2部
リーグとのコンタクトの強さの違いに戸惑いを隠せなかったものと思われる。
しかしながら、徐々に自分たちのスタイルでも戦えることを実感できたことは、
来シーズンに向けての貴重な経験となったのではないだろうか。スタンドから
は「来年もまた来いよ!」という励ましの声が飛んでいた。FWとBKが一体
となってテンポ良くボールを繋いでいく、法政や東海大とはまた違った組立主
体の専修大の持ち味とする継続ラグビーが1部リーグの舞台で観られる日を、
期待を持って待ち続けたいと思う。         (2008年12月15日記)

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