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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

試合日程&結果

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日本大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/09/13) 於:江戸川区陸上競技場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 日本大学  :前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 2  1  1  0 15 |  15 10
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 1  0  0  0  5 |
       :後半: 2  1  0  0 12 |  17  8


◎出場メンバー

 日大:  1.仲村 2.豊田 3.鳥井 4.タカウ 5.酒井 6.塩見 7.江口 8.細田
      9.深沢 10.大江 11.今中 [12].原岡 13.富加見 14.権 15.住吉
     (16.石橋 17.谷地 18.金 19.森 20.中村 21.関根 22.小川)

    ○交代  5→18(後 9分入替),  6→19(後 9分入替),  9→20(後 9分入替)
        14→22(後25分入替)


 流経 : 1.長野 [2].川西 3.今村 4.小野寺優 5.フィフィタ 6.萩澤 7.池野 8.山崎
      9.吉田 10.宮脇 11.高井 12.小浜 13.小野寺翔 14.小澤 15.長谷川
     (16.川崎 17.辻 18.前田 19.児玉 20.木村 21.オペティ 22.葛原)

    ○交代 13→21(後15分入替), 12→20(後25分入替)


 レフリー :工藤隆太(関東協会公認)


◎得点経過

 日本大学    0                                                  0
                 
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                   T
 流通経済大学  0                         5                        5


 日本大学    0            3      10        15                  15
                      P      G         T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                  G     T
 流通経済大学  5        12    17                                 17


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 日大:後半11分 中村 (PG)
      18分 タカウ(T)、中村 (G)
      28分 今中 (T)、中村 (G)

 流経:前半24分 長谷川(T)
    後半 7分 今村 (T)、小澤 (G)
      13分 高井 (T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

2009シーズンの開幕戦の第2試合で顔を合わせる日大と流経大は、リーグ
戦Gの中核に位置するチーム。とはいえ、3強(東海大、法政、関東学院)と
は実力的に水をあけられている。逆に言えば、この2チームが頑張らない限り、
リーグ戦Gは上記3校による持ち回り政権状態が続く。政権交代まで行くのは
難しいにしても、今シーズンは何とかその足掛かりを掴んで欲しいところだ。

さてこの2チーム、個の力を前面に出して戦う日大に対し、組織的で緻密なラ
グビーを指向する流経大といった具合に対照的なチームカラーを持つ。普通に
考えると、そんな2チームが戦ったらなかなか噛み合わないラグビーになりが
ちだ。例えば東海大と大東大だが、お互いが自己主張を繰り返して、最終的に
たくさん発言した方(トライをとった方)が勝ち!みたいなところがあった。

だが、日大と流経大の場合は不思議と噛み合った試合になる。それもかなりの
熱戦。なぜだろう?と考えてみたが、答えはFWにありそうだ。もちろん、両
チームともFW戦に自信は持っていても、最終的にはBKに展開して取りたい
という気持ちは同じ。だが、それだけでは説明が付かない。ひとつ思いついた
ことは、この試合は強力FW同士がぶつかり合う肉弾戦になることが多いとい
うこと。ややもすると後ろにいるBKのことを忘れたバトルが展開されがちな
のだ。言い換えれば、FW戦で熱くなりがちな局面で、上手くBKにボールを
繋ぐことができれば勝利を掴む確率も高くなるはず。

そう考えてみると、両チームがこれまで抱えてきた課題が浮き彫りになる。日
大の場合はFWからBKへの繋ぎの部分。どうしてもFWで行き過ぎてしまう
のだ。逆に流経大の場合はBKの決定力不足。どうしてもFWで行かざるを得
ない。お互いが抱える課題がクリアになれば、この2チームは3強に殴り込み
をかける力を持つことができる。だから、この試合は楽しみでもあり気がかり
でもある。

といったような想いを抱きながら、メンバー表に目を向ける。日大は日本のエ
ースに成長しつつあるピエイが不在なのが残念だが、ほぼベストの布陣と思わ
れる。流経大もパワフルなイシレリの姿がないがほぼベストといえるのではな
いだろうか。着目点は上でも挙げたように、日大はFWとBKの連携で流経大
はBKの決定力。アタックなら日大、ディフェンスなら流経大といった別の視
点からの愉しみ方もある。気が付けばすっかり周りが暗くなった中でキックオ
フを待った。

[前半の戦い]

流経大のキックオフで試合開始。第1試合を戦った2チーム(関東学院と中央
大)の仕上がりが今一歩たったことで、どうしても「今シーズンのリーグ戦G
は大丈夫だろうか?」という想いを抱かざるを得ない。が、そんな不安が払拭
されるまでに1分も必要なかった。蹴り合いが続く中でも、双方の持ち味がよ
く出たアタックとディフェンスが繰り返されプレーが途切れない。最初のホイ
ッスルが鳴るまでの2分間で、既に両チームのエンジンが全開となる。

確かに、第1試合が行われている間も、両チームの元気な声が響いていたここ
江戸川ではあったが、仕上がり状態は明らかに第1試合を戦っていた2チーム
よりいいことは一目瞭然だ。FW周辺のサイドアタックを繰り返して前に出た
ところでBKに展開して大外で勝負のスピーディかつダイナミックなラグビー
を見せる日大に対し、パワフルなFWで前進を図るもBKには早めに展開して
FWとの連携でゴールを目指す流経大、といった具合に両チームのやりたいこ
とも明確。多少のミスは出ても、ボールが大きく動くラグビーはやっぱり観て
いて楽しい。

流経大でまず目を惹いたのは、大型のFWがとにかくよく走るということ。フ
ィフィタの強力なタテ突破はともかくとして、プロップの二人もアタックにデ
ィフェンスにと奔走している。1部昇格当初の流経大は全員がよく走るチーム
ではあったがパワーは不足気味。逆にシーズンを重ねるごとにFWは大型化し
たものの運動量が減っていったという経緯がある。両者が合体すればとずっと
思っていたが、どうやらそれが実現したと考えていいようだ。それにBKも逞
しくなり、自信を持ってプレーをしている。ここ数シーズンとは別のチームに
なったかのような錯覚を覚えた。

日大では、2年目のタカウの動きが目を惹いた。昨シーズンに比べると断然動
けるようになっている。メンバー表を見てみると体重は105kg。確か昨シーズ
ンは120kg近くの体重だったはずだから、かなり絞り込んできたことは間違い
ない。そして、日大FWも流経大に負けじとよく走る。巨漢選手を揃えた激し
いぶつかり合いも相変わらずで、こんな肉弾戦ならストレスも溜まらず大歓迎。

雑談モードはさておき、両者一進一退の攻防が繰り広げられる中でも、序盤に
ペースを握ったのは流経大。24分に待望の先制点を奪ったのは流経大だった。
日大陣10m/22mのラインアウトからSHが裏に抜け出てラック。ここから左オ
ープンに展開してFB長谷川がインゴールに飛び込んだ。攻め込んでもなかな
か点が取れない流経大は過去のものになるのだろうか?と思わせるくらい鮮や
かな得点だった。伝統工芸といってもよいモールも健在で、日大FWを押し込
むシーンがたびたび観られた。

その後も両者がっぷり4つに組んだ白熱した試合展開となるが、激しい戦いが
繰り広げられる中でも両者ともディフェンスに綻びが出ない。結局、流経大が
5点をリードしたまま前半の戦いが終了した。日大ファンにとってはもどかし
い展開ということになるが、オープン戦の戦績から考えればよくやっていると
は言えないだろうか。今シーズンから加藤HCの成果という判断を下すにはま
だ早いが、いい方向でチームが仕上がりつつあるように見えた前半だった。

[後半の戦い]

後半も最初にペースを握ったのは流経大。7分には日大G前でのラインアウト
から4→5とボールが繋がり、最後は右PR今村がインゴールに飛び込んだ。
GKも成功してこれで流経大のリードは12点に拡がった。ここで、日大は一
気にメンバーを3人交代。LO酒井に代わって金が、FL塩見に代わって森が、
SH深沢に代わって中村がそれぞれピッチに入った。FLの森はルーキーの時
代からずっと期待されながら怪我でなかなか出場機会に恵まれなかった選手。
SH中村も昨シーズンはレギュラーで球捌きの良さを見せていた。

この日大のメンバー交代が効を奏する。11分にはSH中村が右中間約20m
のPGを成功させ、まずは3点を返す。スクラムはほぼ互角で安定して組めて
いたこともあり、日大の8→9→オープン展開の攻撃が冴えていた。勝利を確
実なものにしたい流経大も日大を引き離しにかかる。13分、日大陣22m内
での日大ボールスクラムから日大がオープンに展開したところで痛恨のパスミ
ス。日大選手がノックオンしたボールが流経大WTB高井の手にすっぽりと収
まり、高井が相手をかわしながら快足を飛ばして一気にゴールラインに到達。
ゴールキックは失敗したが、流経大のリードは再び14点に拡がる。高井は身
体こそ細井が、頼もしいトライゲッターに成長したようだ。

しかし、ここでメンバー交代で勢いを得た日大が一気の攻勢を強める。リスタ
ートのキックオフ後の16分、日大はHWL付近のマイボールスクラムから8
→9→10とボールを繋いでタカウが一気にゴール前まで前進してラック。こ
こはパイルアップとなるものの、直後のスクラムからまたも8→9?攻撃を起
点としたサイドアタックでボールが繋がって、最後はタカウが日大にとってこ
の日初めてとなるトライを奪った。ゴールキックも成功し、10−17と日大
のビハインドはじわじわと確実に縮まっていく。勢いから見ても、日大の逆転
は時間の問題のように見えた。

さて、日大はメンバーを代えたが流経大は?と思って確認したら、15分のC
TBの交代(小野寺→オペティ)のみでFWはゼロ。そういえば、FWのリザ
ーブも3人しか入れていない。今日は最後まで頑張れ!ということなのか?。
それは判るにしても、日大の攻勢がどんどん強まっているが故にリスキーな感
じがする。とはいってもFWのリザーブが3人ということは、FWのフィット
ネスに自信を持っていることの裏付けなのだろうか?

と流経大に対する疑問が深まる中でも日大の押せ押せムードは止まらない。鉄
壁の組織で踏ん張っていた流経大のDFにも綻びが見え始め、日大のアタッカ
ーがウラにすっと抜け出すという場面がしばしば見られるようになる。流経大
にとっては肝心な場面での日大のミスに助けられた形。しかし、試合も終盤に
近づいた28分、日大に一蹴り(GK成功)で同点のトライが生まれる。流経
大陣でのラインアウトからの連続攻撃から左WTB今中がゴール左隅に飛び込
んだ。これで日大のビハインドは僅か2点まで縮まってしまった。まるで日大
の劇的な逆転勝利に向けてのシナリオが描かれていたように思えるくらい。

しかしながら、ここからの流経大の粘りは本当に見応えがあった。メンバー交
代なしのベンチの非情?の采配にも屈することなくFWは最後の気力を振り絞
って走り続ける。終盤、戦場を何とか日大陣に押し戻したことで勝機を掴んだ。
1PGでも逆転できるという状況の中で、日大は自陣から果敢に継続による前
進を図るが、流経大が渾身のDFでこれを止め続ける。そして、遂に運命のホ
イッスルが吹かれる時が来た。

歓喜に沸く流経大フィフティーンに対して、あと1本が出ずにがっくりとうな
だれる日大の選手達。ただ、日大の選手達の表情には、「ここまでできた。」
という自信のようなものも伺えた。何とも切ない幕切れではあるが、リーグ戦
Gの今後の戦いに大いなる期待と希望を抱かせる両チームのパフォーマンスだ
った。

[試合後の感想]

最後はもつれてあわやの展開になったとはいえ、流経大にとってはこれ以上は
ないと言えるくらいの船出になったのではないかと思う。勝因は最後まで気力
を振り絞って走り続けたFWの頑張り、これに尽きると思う。とくに(ミスマ
ッチもものともせず)ディフェンスにもしっかり行っていた両PRの活躍が光
った。そしてすっかり逞しくなったBK。FWがいいだけに、まだまだ攻撃の
バリエーションは拡がりそうだ。苦節12年と言ったらいいのか、ようやく流
経大の「組織」がチーム全員の共有財産となった。というのはまだ早いかも知
れないが、少なくともひと皮むけたことだけは間違いない。

惜しくも敗れてしまったとは言え、日大のパフォーマンスは正直驚きだった。
加藤HCの指導による効果と言ってしまうのはもちろん早過ぎるが、組織的に
ひとつになるという意味で、昨シーズンまでのチームと比べて明らかに進化し
た様子が見られた。シンプルというか武骨ではあるが、力強くスピーディなラ
グビーは見応え十分。本日とくに印象に残った選手はNo.8の細田。ラインアウ
トの要であることは昨シーズンと同じだが、スクラムでも8→9で器用なとこ
ろを見せていた。長身を活かしたプレーは日大の強力な武器になるはず。

江戸川での各チームの仕上がり状態を見て、今シーズンのリーグ戦は3強と強
く言い切ることが難しくなってしまった。今後登場する大東大と拓殖大の出来
次第では、波乱が2つ3つ起こってもおかしくない展開にもなりうる。このあ
る種の興奮状態が最後まで続くことになったらと思うと、今後が本当に楽しみ
になってきた。                   (2009年9月15日記)

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