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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

試合日程&結果

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東海大学 vs 大東文化大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/09/19) 於:駒沢陸上競技場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 3  3  0  0 21 |
       :後半: 2  1  0  0 12 |  33 10
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 大東文化大学:前半: 2  2  1  0 17 |
       :後半: 0  0  0  0  0 |  17 13


◎出場メンバー

 東海 : 1.三上正 2.木津 3.中川 4.安井 5.稲橋 6.前川 [7].荒木 8.マウ
      9.鶴田 10.阪本 11.宮田 12.吉田 13.森川 14.豊島 15.望月
     (16.新田 17.水上 18.三上匠 19.菊地 20.小西 21.苫谷 22.菅生)

    ○交代  7→18(前31分交替),  9→20(後22分入替),  3→16(後35分入替)


 大東 : 1.鳥谷部 2.井上 3.金子 4.松田 5.大窪 6.川本 7.浜口 [8].レプハ
      9.茂野 10.仲 11.福津 12.シオネ 13.武政 14.越智 15.増野
     (16.中井 17.井上 18.フィリペ 19.安井 20.市川 21.岩崎 22.出村)

    ○交代 10→22(後22分入替),  5→19(後26分入替), 15→18(後32分入替)
        12→21(後32分入替),  2→17(後40分入替),  3→17(後40分入替)
         9→20(後40分入替)


 レフリー :桜岡将博(日本協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0                   7     14           21         21
                                   G     G            G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
            G         P                 G          x
 大東文化大学  0  7         10                17                 17


 東海大学   21              28     33                          33
                        G      T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                    x
 大東文化大学 17                                                 17

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半18分 望月 (T)、吉田 (G)
      24分 荒木 (T)、吉田 (G)
      37分 阪本 (T)、吉田 (G)
    後半13分 安井 (T)、吉田 (G)
      20分 中川 (T)

 大東:前半 1分 福津 (T)、増野 (G)
      11分 仲  (PG)
      29分 レプハ(T)、増野 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

リーグ戦3連覇、そして大学日本一を狙う東海大。グループ内だけでなく、他
のリーグの強豪校からも一目置かれる存在になったその東海大は、今シーズン
はどのようなチームを作り上げていくのだろうか。前評判でもリーチらを擁す
るFWの実力の高さは折り紙付き。やはり注目はBK陣ということになる。強
力FWから供給される活きた球を確実に得点に結びつけることができるように
なれば、悲願の日本一は確実に手に届くところに来るはずだ。

そんなことを思うのも、関東学院や法政に比べると得点力の面に課題があるの
が東海大のBK陣だから。過去2シーズンもBK展開を指向しながら、結局F
Wで行かざるをえなかった面があったことは否めない。そのことと直接関係が
あるわけではないが、ひとつ気になることはメンバー構成のシーズンごとの変
動が東海大の場合は比較的大きいことだ。昨シーズンはルーキーの市原がSO
に起用されたが、今シーズンは同じくルーキーの阪本が抜擢されている。

CTB吉田やFB豊島(本日はWTBで出場、いずれもジャパンのエース候補
でもある。)のように不動のレギュラーの座を掴んでいる選手も居るが、多く
の部員を抱えるチーム故の激しいレギュラー争いの反映ということなのだろう
か。本日もFWはリーチが欠場しているもののほぼベストの布陣だが、BKは
SOを含め新しいメンバーが名を連ねる。FW中心の戦いが予想されるものの、
BK陣がどんなアタックを見せてくれるかが、チーム作りの方向性を見極める
上でも注目点になる。

対する大東大は、かつてリーグ戦グループに留まらず、大学ラグビー界をリー
ドしてきた強豪校だが、その面影は年を追うごとに薄れつつあるのが現状。関
東学院と法政が2強を形成し、そこに東海大も加わっていく中で低迷状態が続
いている。そして、昨シーズンは遂に最下位に転落してしまった。選手個々を
見ていてもけして下位に低迷するようなチームではなく、常に上位争いをして
いてもおかしくない。だから、今シーズンから大東大の指揮を執ることになっ
たOBの青木氏の手腕に注目が集まる。今年こそ、前首脳陣が果たせなかった
リバイバルに成功することができるのだろうか。

昨シーズンまでの大東大低迷の原因は、戦術とメンバーを固定できなかったこ
とにあると見ている。毎試合メンバーを予想することがひとつに楽しみになっ
ていたくらい、週替わりメニューのように選手が入れ替わり、またそれが予想
と当たっていることも多かった。試合に出る選手達にとっても、また、レギュ
ラーを狙う選手達にとっても戸惑いが隠せなかったであろうことは、試合内容
からも十分に伺えた。

そういった視点からメンバー表を眺めてみると、FWではレプハ主将がNo.8に
座り、両LOに松田と大窪のツインタワーがが久しぶりに名を連ねている。お
そらく今シーズンはこの3人がFWの中核メンバーとしてチームを引っ張るこ
とになるのだろう。BKではSHと左WTBにそれぞれ新人の茂野と福津が起
用されているのが目を惹くが、SOの仲も4年生ながら公式戦登場はリザーブ
も含めてこの試合がおそらく初めて。CTBでコンビを組むシオネ(マオ)と
武政、右WTBの越智、FBの増野らは経験十分なので、フレッシュなHB団
が彼らをどう動かしていくかが注目点だ。

[前半の戦い]

キックオフを前にしてピッチに登場した両チームの選手達を観て、懐かしい記
憶が蘇ってきた。それは、東海大が1部最昇格を果たした時期の、まだ大東大
と東海大の力関係が現在とは逆だった時代だ。大東大が身にまとっていたのが
お馴染みのモスグリーンのジャージだったせいもあるが、それだけではない。
大東大の方に(前年度最下位チームとは思えない)自信に満ちた表情が見られ、
逆にチャンピオンチーム(のはず)の東海大の方に堅さが見られたのだ。お互
いの表情を見比べてみる限り、どちらがチャンピオンチームか判らない。

そんなある種異様な雰囲気の中、大東大のキックオフで試合が始まった。開始
早々から蹴り合いとなり、両チームによる激しいカウンターアタック合戦が展
開される。そして、プレーが1分程継続された時に、大東大のレプハが東海大
陣で相手選手がノックオンしたボールを拾い、力強くタテに前進した後、ショ
ートサイド(左側)にできたFWとBKの混成ライン(右LO大窪→右PR金
子→左WTB福津の順)にボールが繋がり、福津がゴール左隅に走り込んでト
ライ。難しい角度からのFB増野のGKも決まり、東海大関係者どころか大東
大関係者をも驚かせる先制点7点が大東大に記録された。

東海大は昨シーズンの緒戦(日大戦でのピエイ・マフィレオ)に引き続き、あ
っさりと先制点を献上してしまう不安な滑り出しとなった。選手達の動きにも
動揺が隠せない。3分に注目のファーストスクラムが組まれるが、東海大のア
ーリーエンゲージで大東大ボールのFKに。その後もスクラムがうまく組めず、
東海大側に反則が取られるシーンが目立った。東海大としては「自分たちは低
い姿勢で組んでいるのに...。」という気持ちが強いように見えるのだが、
相手に合わせて柔軟に対処するという考えでもよかったように思われる。もち
ろんスクラムの内情は判らないが。

大東大の戦術は単純明快。自陣からはハイパントでレプハ、大窪、松田といっ
た190cm級の高さのある選手達を前に走らせてレシーバーにプレッシャーをかけ、
ボールの確保に成功した場合にはオープンに展開してゴールを目指す。そのプ
ロセスではもちろん先制トライの場合と同様に、ラインにはLOやPRの選手
達が入っていてもかまわない。最終的にフィニッシャーにボールが渡ってボー
ルがインゴールまで運ばれればいいわけで、これが大東大流の継続ラグビー。
先制トライは大東大のリバイバルを印象づけるものとなった。

逆に東海大の方は、戦術が固まっていなかった節がある。自信を持つFWで徹
底的に行きたいところだが、最終的にはBKにも展開したい。FWが大東大の
予想以上の抵抗に逢ったこともあり、BK展開の場面も増えるのだが、球出し
のテンポが今一歩でアタックが単調になる傾向が見られた。FWの力でボール
はキープできるものの、なかなか前に行けない状態が続く。大東大は11分に
正面32mのPGを決めて3点を追加し10−0とリードを拡げる。東海大関
係者の間にいや〜なムードが漂い始めた。

しかし14分、大東大が自陣ラックからSHのハイパントで前進を図ろうとす
るところを東海大がチャージに成功してボールは大東大陣22m内でタッチを
割った。執拗に繰り返されるハイパント攻撃は完全に読まれていた。大東大ゴ
ール前でのラインアウト(大東大ボール)のボールを東海大が確保に成功して
FWで前進を図る。ミスを重ねながらも東海大はボールを失わずに継続し、F
B望月がインゴールに到達。GKも成功し、7−10と東海大が一息つく。

そして、リスタートのキックオフで大東大がノット10m。何でもないところ
でミスをしてしまうのは、せっかくいい流れで来ていたので本当にもったいな
い。簡単なミスほど失点に繋がる傾向があるが、ここも結果的に東海大に自陣
内へ前進を許す形になったことが東海大に逆転を許すことになった。24分、
東海大は大東大陣22m内でのラインアウトからFWがサイドを攻めて細かく
前進を図り、ゴール前のラックからFLの荒木主将がサイドを突いてトライを
挙げた。この主将のトライで東海大にやや落ち着きが見え始めた。

だが、大東大の勢いも衰えない。29分、東海大が自陣ゴール前のスクラムで
コラプシングを犯し、ペナルティからの速攻でNo.8レプハ主将が豪快にゴール
ラインを越えた。GKも成功し17−14と再び大東大がリードを奪う。ここ
で東海大の荒木主将が負傷退場となり、代わりにルーキーの三上匠がピッチに
登場。東海大にとっては貴重な長身選手(192cm)であるが、リーチの出場や
FL前川が好調なことを考えると、首脳陣には起用に当たってなかなか悩まし
い部分があるかも知れない。

内容的にほぼ互角のシーソーゲームが続く中、前半も終了に近づいた37分、
東海大は大東大陣22m内でのスクラムからオープンに展開し、SHからパス
を受けたSO阪本があっさりゴールラインを越えた。これも大東大のディフェ
ンスミスが失点に繋がった形。GK成功で21−17と東海大のリードは再び
4点となる。終了間際の大東大FB増野のロングPGは外れてそのまま前半の
戦いが終了した。大東大関係者の間に「やれるぞ!」という雰囲気が漂う中で
「やっぱりシーズンの立ち上がりは難しい...」という戸惑いの表情が東海
大関係者の間に見られた。

[後半の戦い]

後半はしっかり立て直していつもの東海大に戻りたいところ。だが、なかなか
ピリッとしない。2分と5分のスクラムで相次ぎコラプシング。4分の大東大
陣ゴール前でのラインアウトの絶好のチャンスもノックオンでチャンスを潰す。
逆に7分、大東大がHWL付近でのラインアウトを起点とした(東海大のお株
を奪うような)ドライビングモールで一挙に10m以上前進し、オープンに展
開したところで東海大にペナルティ。位置は右中間のHWLから1mほど入っ
たところで、FB増野のキック力をもってすればキック成功も十分に見込めた
がGKは外れる。

直後のドロップアウトの蹴り返しに対するカウンターアタックから、東海大は
左WTB豊島が粘り強いランニングで左サイド突破をはかり、HWLを超えた
付近で大東大にハイタックルの反則。11分、今度はCTB吉田がカウンター
アタックから中央を抜けて10mラインを越えたところで大東大に反則。そし
て、大東大陣22mライン付近のラインアウトを起点とした連続攻撃から中央
付近でラックが形成されたところで、後方からスピードを上げて接近してきた
LO安井に絶妙のタイミングでボールが渡り、安井はほとんど無抵抗の状態で
一直線にゴールポスト直下まで到達する。結果的にこのトライが膠着状態打開
の糸口となるのだが、安井は今や東海大においてもっとも警戒すべきランナー
となっている。ほんの一瞬だが、大東大にとってノーマークにしてしまったこ
とが悔やまれる。GKも難なく成功し、東海大のリードは11点に拡がった。

この鮮やかなワンプレーで東海大にようやく安堵感が生まれた。20分には再
び大東大陣22m付近でもラインアウトからモールを形成。FWで細かくボー
ルを繋ぎながら前進を図り、ゴール前でLO安井からラストパスが左PR中川
に渡った。GKは失敗したものの、東海大のリードはさらに16まで拡がり、
ほぼ勝敗の行方は見えてきた。得意のモールを押し切ってHO木津がトライと
いう今シーズンの定番になりそうな形は、大東大の抵抗に逢って生まれなかっ
たがモールはやはり東海大の強力な武器になる。

局面打開のため、大東大は22分にSO出村、32分にフィリペらを相次いで
投入。とくにフィリペは先輩のオトを彷彿とさせる瞬発力を活かしたランニン
グで東海大に冷や汗を掻かせる。2回のビッグゲインのうち、1回目はパスミ
スがインターセプト、2回目はノットリリースとまだまだ経験を必要としそう
だが、スーパーサブ的な起用ではもったいないような気もする。私がここまで
観た中でも、今シーズンもっとも魅力に溢れるランナーだ。気持ちが前に出る
選手という意味で、出村も頭から出ていて欲しい選手。さらに岸和田が復帰す
れば大東大のBK陣は相当に強力になるはず。

両チームの攻防が繰り返される中で、時計はどんどん進んでいく。ほぼセーフ
ティリードを奪った東海大が優勢に試合を進めるものの、なかなか持ち前のス
ピードに乗ってテンポよく前に出る攻めが見られない。地力では勝っているも
のの大東大のミスに助けられている。ただ、アタックは今一歩だったものの、
ディフェンスではFWが鋭く前に出て大東大の攻撃の芽を摘むシーンがたびた
び見られた。とくに地味ではあるがFL前川の動きがよかった。昨シーズンは
リーチがFLに回ったあおりを受けてなかなか出場機会に恵まれなかったが、
リーチがLOに戻る可能性が高い今シーズンはフル出場での活躍を期待したい。

何とか一矢報いたいという大東大の渾身のアタックも実らず、試合はそのまま
ノーサイドとなった。残念ではあったが、前年度チャンピオンチームに肉薄で
きたことは今後の戦いに向けて大きな自信に繋がったと思う。試合後に両チー
ムの選手達がエールの交換を行って健闘を讃え合っていたが、とてもいいシー
ンだった。お互いに立場は違っても、リーグ戦を大いに盛り上げてもらいたい。

[試合後の感想]

まずこの試合で強く印象に残ったことは「大東大の復活」これに尽きる。1試
合だけの結果から判断することは早計かも知れないが、「復活」と言い切って
しまっていいような気がする。少なくとも、ピッチに登場したときからノーサ
イドまで、選手達に気後れしたような表情は見られず、自信を持って戦ってい
るように見受けられたからだ。本日はキックが多い展開になったが、今後は持
ち前の奔放なパス回しも復活するに違いない。そうなったら近い将来の覇権奪
還も現実的な目標になってくると思う。もちろん、悪しき伝統とも言えるケア
レスミスをなくすことも大切ではあるが。

以下、部外者の勝手な想像に過ぎないが、青木監督は就任早々に、「この選手
達ならやれる!」という実感を掴んだのではないだろうか。そのために重要な
ことは、選手達に失われかけた自信を取り戻させることだったように思う。普
段の生活改善から、練習での実践を通じて直接的間接的に「自信を持て!」と
いう形での指導が行われたのではないかと思う。少なくても、この日の選手達
の表情からそんなことが読み取れた。逆に言うと、大東大にも日本一を経験し
ている関東学院や法政と同じような、永年積み上げていた財産(心のよりどこ
ろ)があったことになる。それをしっかり受け継ぎ、改良を加えることで「リ
バイバル」は成し遂げられる。

そう考えると、東海大の場合はそういった先輩達が持っている「心のよりどこ
ろ」が何になるのか?という点に行き着く。法政の場合はFWの豊富な運動量
とスピードに裏付けられた「高速展開」、関東学院の場合は個人と組織が調和
したピッチ上のどこからでもゴールを目指す「流れるような継続ラグビー」、
大東大の場合はFW、BK関係なくパスを繋いで全員でゴールを目指す「奔放
な継続ラグビー」。果たして東海大はどんな形で頂点を目指すのだろうか。

もちろん、チームのスタイルは目指して作るというよりも、日々の戦いで熟成
されていく部分が多いようにも感じる。例えば、両チームがピッチに登場した
ときに感じられた「チームが醸し出す雰囲気」のような部分は作ろうとして作
れるものではない。そういった意味では、まだ東海大には経験が必要なのかも
知れない。そして、東海大に「心のよりどころ」のようなものが熟成されたと
きに東海大は頂点に立てるチームになっているはずだ。それもけして遠いこと
ではないような気がするし、東海大の戦いは新たなステージにステップアップ
してことだけは間違いない。今までの蓄積を大切にしつつ、先の3校とは違っ
た魅力溢れるラグビーでファンを魅了する存在になってくれることに強く期待
している。                     (2009年9月21日記)

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