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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

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日本大学 vs 中央大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/09/26) 於:日本大学稲城G

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 日本大学  :前半: 2  1  0  0 12 |
       :後半: 0  0  0  0  0 |  12 15
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 中央大学  :前半: 1  1  0  0  7 |
       :後半: 1  0  2  0 11 |  18  8


◎出場メンバー

 日大:  1.仲村 2.豊田 3.鳥井 4.タカウ 5.森 6.金 7.江口 8.細田
      9.深沢 10.大江 11.今中 [12].原岡 13.富加見 14.権 15.住吉
     (16.石橋 17.谷地 18.中嶋 19.塩見 20.中村 21.関根 22.小川)

    ○交代  9→20(後12分入替),  5→18(後21分入替),  7→19(後21分入替)
        10→21(後36分入替)


 中央 : 1.大和 2.丸井 3.米谷 4.野原 5.山下 6.豊田 7.烏田 8.原
      9.吉田 10.松下 11.辻 [12].中澤 13.宇野 14.森山 15.廣川
     (16.坂井 17.井上 18.廣部 19.藤井 20.北田 21.城戸 22.吉原)

    ○交代  3→16(後21分入替),  1→17(後21分入替),  4→18(後25分入替)
         7→19(後32分入替), 10→21(後34分入替)


 レフリー :佐藤武司(関東協会公認)


◎得点経過

 日本大学    0      5    12                                    12
                      T    G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                               G
 中央大学    0                     7                            7


 日本大学   12                                                 12  
           
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
               P          P                           T
 中央大学    7     10         13                          18   18


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 日大:前半 5分 権  (T)
      10分 細田 (T)、住吉 (G)

 中央:前半20分 辻  (T)、宇野 (G)
    後半 4分 宇野 (PG)
      15分 宇野 (PG)
      43分 岡  (T)

◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

大学チームの場合、世代を超えて受け継がれるものといえば、チーム戦術とい
うことになるだろう。「この形になれば勝てる。」あるいは、チーム状態が悪
くなった場合でも「この形を思いだそう。」といったようなもの。だが、各チ
ームの戦いぶりを何年も観ていて、チーム同士の戦いでもそのようなものがあ
るような気がする。もちろん当該チーム間にはそのような意図があるはずもな
いが、本日対戦する日大と中央大の戦いは世代が変わっても同じような展開に
なることが多いように感じる。

典型的なパターンとして、序盤から攻撃力のある日大が中央大に襲いかかり、
優位に試合を進める。しかしながら、中央大は粘りのディフェンスで日大猛攻
を耐え凌ぎ、試合の流れは中央大に移っていく。攻めてもなかなか得点が奪え
ない中で日大の方に焦りからのミスが増えていき、中央大が貴重な得点を挙げ
る形で際どく勝利を収める。こんな試合を実際に何度か観てきているし、日大
は中央大に対する苦手意識を持っているとも言われていた。

そんな両チームの緒戦の戦いぶりを江戸川で見比べる形になったわけだが、ど
う贔屓目に見ても日大の方がチームの仕上がり状態がよい。だから今日は問題
なく日大が中央大に勝ってくれるだろうと考えるのが日大ファンの率直な気持
ちだろう。ましてや今日は稲城Gでのホームゲームである。メンバーも緒戦と
の違いはLOに森、FLに金が起用されていることだけで、その二人も緒戦で
途中出場を果たしている。やはり、チーム状態はいいようだ。

一方の中央大はこの試合に負けると入替戦への黄色いランプが点滅し始める。
この試合は背水の陣で臨まなければならないことは、中央大サイドの応援席の
雰囲気からもしっかり伝わってくる。その中央大の大きな変化はCTBにルー
キーの宇野が起用されていること。レギュラーの大塚大はリザーブにも入って
いないため、その故障による抜擢と思われるがカンフル剤になるか。危機感が
いっぱいの中央大選手達が陣取ったテント(控え室)からは、選手達に気合い
を入れるための大きな檄の声が聞こえてくる。一方の日大はどちらかといえば
リラックスムード。果たしてジンクスは死んでいないのか?

[前半の戦い]

残暑を思わせる強めの日差しが照りつける中、日大のキックオフで試合開始。
予想通り、元気のいい日大は序盤から圧倒的な攻めを見せて中央大を脅かす。
パワフルなFWでタテに出て、細かくボールを繋ぎながら前進しゴールを目指
す日大。開始5分、HWLからやや中央大陣に入った位置でのラインアウトか
ら日大はモールでぐいぐい前進し、FWのサイドアタックで前進を図る。そし
て中央大22m内でショートサイドに展開し、最後は右WTBの権がゴール右
隅に飛び込んだ。GKは失敗したが日大はあっという間に5点を先制する。

続くキックオフから中央大は日大陣に深く攻め入るものの、7分の日大陣22
m付近でのラインアウトのチャンスはノックオンで潰す。ここから日大に反撃
を許し、9分には中央大陣10m付近でのラインアウトのチャンスから日大が
モールで力強く前進。そしてHO豊田抜け出して抜け出して中央大ゴール前に
迫るが中央大が辛くもタッチに押し出す。しかし、直後のラインアウトで中央
大の投げ入れたボールが、何と日大のNo.8細田への絶妙のパスになってしまい
ごっつあんトライ+ゴールとなる。

開始10分にして早くも日大が12−0と一方的にリードを奪い、中央大応援
席には悲壮感さえ漂う展開に。緒戦(関東学院戦)の出来である程度覚悟はし
ていたとはいえ、ここまで酷かったのか。しかし勝負は判らない。因縁のこの
カードの場合はとくに...。キックオフに対するリターンから日大はタカウ
が力強く前進し、ボールがHO豊田に繋がるがここでノックオン。ここから誰
もが予想だにしなかった日大のミスのオンパレードが始まる。緒戦の出来の違
い、そして予想を超える楽勝ムードに選手達の心のネジが完全に緩んでしまっ
たのだろうか?

13分には日大がHWL付近のラインアウトからモールを形成して前進を図る
が、10mラインを越えた付近でアクシデンタルオフサイド。ただ、中央大に
もミスが目立ち、日大にとっては大事に至らないのが救いだ。中央大はオープ
ンに展開して飛ばしパスで大外で勝負の意図がはっきりしているのだが、肝心
のWTBへのパスがミスでタッチを割ったりとなかなかピリッとしない。当然
ながら得点板も動かない。

こんな膠着した状態の中では、悪い流れを断ち切るプレーが必要だ。とくに日
大には。しかしながら先に動きを見せたのは中央大の方だった。16分、中央
大は自陣22mでのドロップアウトから速攻で仕掛けて自陣10mまで前進し
たところで日大にノットロールアウェイの反則。この1プレーで明らかに中央
大の方にリズムが出てきた。この日の中央大の逆転勝利を呼び込む伏線となっ
たプレー(の第1弾)だったかも知れない。中央大のテンポアップについてい
けず、日大は自陣で反則を重ねてピンチの連続となる。

そして20分、中央大は日大陣ゴール前のスクラムから8→9→11(ブライ
ンドサイドから参加)のアタックが鮮やかに決まり、左WTB辻がゴール中央
に無抵抗の状態で飛び込む。GKも成功して7−12と中央大のビハインドは
一気に5点に縮まった。一時は意気消沈しかけていた中央大応援席がにわかに
活気づく。明らかに風は中央大の方に吹き始めている中で、日大は何とかした
いところだが、ミスの連鎖は止まらない。スローフォワード、無理なパスから
のノックオンに反則が追い打ちをかける。

その後も、流れが中央大に行きかけているとはいえ、地力に勝る日大が優勢に
試合を進める展開は変わらない。だが、肝心なところでミスを犯す負の連鎖は
止まらずに追加得点を奪うことが出来ない。一方の中央大も流れを掴みつつあ
りながら同じくミスでチャンスを潰すことでなかなか逆転に向けての糸口が掴
めない。ただ一つ言えることは、日大は悪い流れを断ち切らない限り、勝利の
女神に見放されてしまうのは時間の問題だと言うこと。局面局面ではFWで圧
倒できているので日大側に危機感は見られないが、外から見ている側としては
このままで大丈夫かと要らぬ心配をしてしまう。

[後半の戦い]

後半も先に点を取ってリードを拡げたい日大。だったが、中央大のハイパント
が日大陣22mラインの手前に落ちたところで日大にオフサイド。中央大のル
ーキー宇野が距離約25m(正面)のPGを慎重に決めて、4分の段階で日大
のリードは2点に縮まってしまった。日大にとってはお尻に火が付いた状態と
なり、ここから日大の猛攻が始まる。しばらくの時間帯、中央大は自陣ゴール
を背にしてひたすら堪える展開となるが、日大には攻めきれない。

5分には中央大陣22m手前のラインアウトからモールを押し込んでオープン
に展開するもののノックオン。7分、22m内スクラムから右オープンに展開
してLOタカウからパスを受けたFB住吉がゴールラインを越えたかに見えた
がパイルアップ。そして極めつけは8分のスクラムサイドを突いたプレーから
のインゴールノックオン。このプレーが勝利の女神に愛想を尽かせる決断をさ
せたようだ。日大の応援席からは大きなため息と失笑が起こる。それでも、ま
だ「もしかしたら負けるのでは?」という悲壮感までは行っていない感じ。

11分、日大はHWLから少し中央大陣に入った位置でのラインアウトからオ
ープンに展開するもののノックオン。ボールの支配率はFW戦で優位に立つ日
大が上だが、FWからBKへの球出しのテンポが遅れ気味で日大はなかなかス
ピードに乗った攻撃が出来ない。個人個人が頑張っていることは、見ていても
本当によくわかるのだが、個々のベクトルの方向が微妙にずれていて、端から
見ていても気の毒なくらいの空回り状態が続く。もちろん、地味とはいえ、要
所要所で日大のアタックを止め続けた中央大のディフェンスでの頑張りも忘れ
てはいけないのだが。

そして15分、運命の時間がやってきた。日大は自陣10mより少し22m寄
りの位置でのスクラムでノーバインドの反則を犯す。距離は40m近くあった
が、中央大のルーキー宇野がロングキックを成功させて遂に中央大は1点差な
がらこの試合初めてリードを奪う。恐るべきルーキー達が台頭しているのは法
政だが、中央大にも宇野が居ることを強力にアピールする一蹴りだった。この
得点で、確信を持てなかった中央大応援席に「勝てるかも知れない!」という
期待感が生まれる。逆に何をやってもダメ状態から脱することができない日大
には焦りの色も見えてきた。

リスタートのキックオフに対する中央大のリターンは、もしかしたら中央大の
勝利を確実にする(隠れた)ビッグプレーだったかも知れない。これが勝利を
呼び込むプレーのおそらく第2弾。蹴ってくるものと考えて出足が鈍ったよう
に見えた日大の選手達を見透かすように、中央大は自陣22m付近からオープ
ン展開を試みる。ラックでFWからテンポよくBKにボールが供給され、また
飛ばしパスを使ったBKのアタックも機能するようになる。勢いに乗る中央大
は面白いようにゲインを重ね、日大は自陣22m手前まで後退。ここから、そ
れまでの展開とは打って変わって、日大がなかなか自陣から脱出できない状態
が続く。アタックが上手くいかない日大にとって、1点が10点以上にも感じ
られたかも知れない。

優位に立った中央大も決め手を欠く展開の中で時計はどんどん進み、遂にイン
ジュリータイムに突入する。試合が殆ど日大陣で行われていることと、日大の
攻めあぐみの状態から中央大応援席は勝利を確信。ホームの日大は自陣ゴール
前から最後の力を振り絞って逆転勝利に向けてのアタックを試みる。が、ボー
ルがオープンに展開されてWTBに渡ったところで、中央大がターンオーバー
に成功してNo.8原がゴールラインを越えた。ゴールキックは失敗したが18−
12となったところでノーサイドとなった。この試合、中央大にとって絶対に
勝たなくてはいけない試合だったが、それは日大にとってもまったく同じ。奇
しくも「力の差通りの結果にはならない場合がある」あるいは「中央大が勝利
を収める場合はもつれた展開で僅差」という伝統は守られた形となった。

[試合後の感想]

好発進したかに見えた日大だったが、思わぬ落とし穴があったようだ。テンシ
ョンの緩みがあったとしか思えないミスの連鎖がやはり敗因だろう。ただ、気
になったのは、悪い流れの中でそれを断ち切ることができずにノーサイドの笛
を聞くことになってしまったこと。選手個々の動きから見ても、何とかしなけ
ればならない、という気持ちは十分に伝わってきた。だが、それが個の奮闘か
らチーム全体の戦いへという形に纏まっていかなかったことが惜しまれる。そ
の点、中央大は危機感を背景としたチームのまとまりがあったおかげで、危機
を脱することができたように思う。

とにかく日大にとっては反省点の多い試合になった。だが、一番大切なのはピ
ッチの上で自分たちの力で問題点を解決していく力だと思う。日大はどうして
も「オレが、オレが」になってしまうがちなチームカラーを持っている。大学
選手権も含めて、過去の試合でもゲームリーダーの不在から勝てるゲームを落
としてきたという印象が強い。ただ、選手個々の力はあるので、それをどうや
って結集してチーム力に高めていくのかを磨いていけば、まだまだ十分にチー
ムの立て直し可能と思われる。ホームでのファンの期待を裏切る戦いのことは
早く忘れたいとは思うが、この敗戦を糧にして頑張って欲しい。

緒戦の関東学院戦を観て、中央大の前途多難を感じたが、この試合の勝利もそ
んな不安材料を払拭するには至らなかった。相変わらずミスが多く、それに輪
をかけたような日大のミスの連鎖がなければ、関東学院戦と同じくらいの点を
取られて負けてもおかしくない試合だった。ただ、この試合は反則数も少なく、
ディフェンス面での頑張りなど、今後に期待を抱かせる部分も多かったように
思う。

今シーズンの中央大はサイズに見合わない(というと失礼だが)強さを持つ中
澤主将と1年生からレギュラーで活躍してきた大塚大で組むCTBコンビを軸
にしたBKのチームだと思うが、そこにルーキーの宇野も加わってきた。この
試合では、FWの頑張りによってBKラインが活きることがわかったのが収穫
だと思う。大東大や流経大の状態を見ると前途多難であることに変わりないが、
明るい光は見えてきた。この試合で勝ったことを良薬として、自分たちの持ち
味を活かす形で上位グループを目指して頑張って欲しいと思う。
                          (2009年9月29日記)

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