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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

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法政大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/09/27) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 法政大学  :前半: 3  2  0  0 19 |
       :後半: 1  1  2  0 13 |  32 13
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 2  1  0  0 12 |
       :後半: 2  1  0  0 12 |  24 14


◎出場メンバー

 法政 : 1.高橋 2.山森 3.浅原 4.内田 5.栗林 6.光安 7.吉岡 8.山根
      9.日和佐 [10].文字 11.竹下 12.原島 13.宮本 14.舩木 15.渡辺
     (16.川口 17.佐藤 18.井上雄 19.荻山 20.本村 21.岡本 22.田中)

    ○交代 14→22(前34分入替),  4→18(後 0分入替),  8→19(後13分入替)
         1→17(後20分入替),  2→16(後34分入替),  9→20(後40分入替)


 流経 : 1.長野 [2].川西 3.今村 4.小野寺優 5.フィフィタ 6.萩澤 7.池野 8.山崎
      9.吉田 10.宮脇 11.高井 12.小浜 13.小野寺翔 14.葛原 15.長谷川
     (16.川崎 17.藤田 18.辻 19.イシレリ 20.児玉 21.オペティ 22.小澤)

    ○交代  3→19(後18分入替), 10→22(後31分入替)
    ●シンビン  8(後半26分)


 レフリー :山田里也(関東協会公認)


◎得点経過

 法政大学    0          7               14           19        19
                          G               G            T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                        T    G
 流通経済大学  0              5    12                            12


 法政大学   19            26             29    32              32
                      G              P     P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                                  TG
 流通経済大学 12                                       17 24     24


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 法政:前半 9分 渡辺 (T)、文字 (G)
      25分 宮本 (T)、文字 (G)
      38分 竹下 (T)
    後半11分 山根 (T)、文字 (G)
      26分 文字 (PG)
      32分 文字 (PG)

 流経:前半13分 川西 (T)
      18分 山崎 (T)、小野寺翔(G)
    後半39分 山崎 (T)
      40分 山崎 (T)、小野寺翔(G)

◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

この試合の前日に行われた日大vs中央大について、観戦記録で「試合の流れが
割合パターン化されている。」と書いた。実は法政と流経大の戦いもパターン
化されている印象がある。流経大が法政のスピードについていけず、大量失点
負けを喫することもままあるので、ついそんなことを考えてしまう。とくに、
FWが年々大型化していった(だんだん走れなくなっていった)過程でそんな
形が定着してしまった感がある。もちろん、やられっぱなしではなくてここ数
年は僅差の好ゲームとなる場合もあるのだが、一度インプットされたイメージ
はなかなか消えないものだ。

その高速展開の法政が今シーズンはFWの大型化に取り組んでいる。ややもす
れば持ち味(高速展開)を消してしまいがちなリスキーな選択とも言えるが、
スピードだけでは勝てないことに対するステップアップの気持ちの表れと受け
止めたい。何よりもFWを強くすることはゲームに対する支配力を高めること
ができる。関東学院もFWを大きく強くすることで大学ラグビー界屈指の強豪
へと成長を遂げたのは、それほど遠い昔ではない。そう考えると、(大型化の
先輩であり)FW戦に自信を持つ流経大との対戦は、法政にとって「中間テス
ト」のような意味合いを持つ。

そんなことを想いながら、まずは法政のメンバー表を眺める。緒戦(拓殖大戦)
と大きな変更はなさそうだ。デビュー戦にして3トライと大活躍のFB渡辺は
レギュラーに定着したと見てよさそう。FWで期待の選手は最終学年にしてよ
うやくレギュラーの座を射止めたNo.8の山根。セブンズの代表メンバーにも選
ばれたほどの運動能力の高さを(過去の分も含めて)存分に発揮して欲しい。
その山根を中心としたFWがどれだけ活きたボールをBK陣に供給し続けられ
るかが、やはり勝敗のカギを握ることになる。

一方の流経大も今シーズンはほぼ不動のメンバーで戦うことになりそうだ。際
どい勝負になったものの、緒戦の日大戦ではFWのフィットネスの高さがしっ
かりアピールできていた。そして、リザーブには期待の選手のなまえがある。
力自慢の揃うリーグ戦Gの中でも1、2のパワーを誇るイシレリ・ヴァカウタ
がその人。本日はスーパーサブ的な起用になりそうだが、強力な武器になるに
違いない。その流経大にもしや?の期待も十分にあるだけに、今日はとくにキ
ックオフが待ち遠しい。

[前半の戦い]

法政のキックオフで試合開始。最初はお互いに様子見ということで蹴り合いと
なるが、まず主導権を握ったのはFWでしっかりと組み立てて攻撃する流経大
だった。今シーズンはBK陣も自信を持ってプレーしているのが心強い。一方
の法政はやや堅さが目立ち、ノックオンなどのミスが多い。(実はその後、法
政のノックオンの嵐を見ることになるのだが、序盤のノックオンがその伏線で
あることは、もちろんまだ判らない。)

流経大がやや押し気味の展開ながら、法政も持ち前の速いテンポの繋ぎで応戦
する。そして9分、法政はカウンターアタックから細かくボールを繋ぎ、SO
文字が裏に抜けてFB渡辺がゴールラインを駆け抜けた。文字のGKも成功し
法政が幸先よく7点を先制した。これでルーキー渡辺は2試合連続の4トライ
目。ホントに恐るべきルーキーだ。

しかし、流経大も落ち着いている。11分には法政陣22m内でのペナルティ
からゴール前ラインアウトの絶好のチャンスを掴む。モールに自信を持つ流経
大は、堅いバインドのモールを組んで法政をぐいぐいと押し込み、最後はHO
の川西主将がトライ。GKは失敗したものの5点を返し、ゲームをほぼ振り出
しに戻した。今シーズンからモールの引き倒しができなくなったことが、流経
大にはプラスに作用した形。

18分にも流経大は法政陣22m内で得たペナルティから速攻を仕掛け、ゴー
ル前のラックからNo.8山崎がゴールを超えた。GKも成功して、流経大が12
−7と逆転に成功した。これで流経大が完全に波に乗るかに見えたが、FW戦
で力負けしていない法政が徐々にペースを取り戻す。とくにスクラムでは法政
FWは流経大に強力な圧力をかけてミスを誘う。26分には自陣10m付近で
のマイボールスクラムからオープンに展開。FBライン参加を経てCTB宮本
が流経大のディフェンスをあっさり打ち破り、ゴールポスト直下まで一直線の
快走を見せる。法政が14−12と再逆転に成功し、ゲームの流れは法政に傾
き始める。

やはり、法政FWのパワーアップは間違いなかったようだ。スクラムではコラ
プシングを誘うなど流経大に圧力をかけ続ける。前半も終盤に近づいた35分
には、流経大陣22m内での相手ボールスクラムを法政がホイールに成功して
ビッグチャンスを掴む。ここで法政は、左WTB田中(34分に舩木に代わっ
て登場)をFLにして、そのウィングの位置にNo.8山根を立たせるスペシャル
プレーを敢行。ショートサイドからオープンに走り込んだ山根はパスを受けて
一気にゴールを目指す。山根はゴール目前で止められてしまうが、ボールはラ
ックからさらに順目(右OP)に展開。

しかし、ここで法政にノックオンがありチャンスは潰えたかに見えたが、スク
ラムで流経大がコラプシング。ここから法政はPKから速攻を仕掛けて、ゴー
ル前のラックからパスがWTB竹下に渡り法政は追加点を奪う。GKは失敗し
たが、法政が7点のリードを奪ったところで前半が終了した。流経大はスクラ
ムで圧力を受け、ラインアウトも不調だったことが響いた形。ただ、リードを
奪われているとはいえ、その差は僅か7点。まだまだ勝負の行方はわからない。

[後半の戦い]

後半のキックオフ早々に法政が大きな見せ場を作る。カウンターアタックから
細かい繋ぎを経てボールは一気に流経大陣G前まで運ばれるが惜しくもノック
オン...。(以後、法政に重度のノックオン病が蔓延することに。)しかし
ながら、FWが元気な法政はここで完全にペースを掴む。11分には流経大陣
22m内でのFWの頑張りが流経大のミスを誘う。FWからボールが出たとこ
ろで流経大にパスミスがあり、このボールをSH日和佐が見逃さずに拾ってNo
.8山根にラストパスを送った。GKも成功し、法政のリードは2T2Gの14
点まで拡がった。

何とか劣勢に陥りそうな局面を打開したい流経大は18分に右PR今村に代わ
ってイシレリを投入。その巨体とパワフルな突進を見て、場内は大いにどよめ
く。昨シーズンよりさらに大きくなった感じ。確かにパワフルで法政に対して
は脅威になりうるが、26分には危険なプレーでイエローカードをもらってし
まう。残り時間のことを考えると、「何のために出てきたのかわからない。」
という流経大ファンの嘆きの声に強い説得力が感じられる。

ここで得たPKをSO文字が確実に決めて29−12。さらに法政は28分、
自陣22m付近で得たペナルティから速攻で攻めて大きくゲイン。完全に裏が
開いた状態で、竹下から宮本にボールが繋がれば間違いなくトライだったがノ
ックオン...。ただ、法政には完全に余裕ができている。FWがスクラムで
優位に立てているため、ノックオンも致命傷にはならない。法政は32分にも
文字がPGを決めてリードを20点まで拡げる。残り時間からみてもこれで勝
負ありとなった。

勝負に対する興味が薄れてしまった36分、ようやくイシレリが戦線に復帰す
る。何とも間が悪いタイミングでの主役の再登場ではあるが、流経大はここで
パワーを得て最後の気力を振り絞り反撃に出る。実はラスト10分間の両チー
ムの選手達が疲労困憊する中で繰り広げられた激しい肉弾戦が本日の最大の見
どころになった。流経大はボールを確保すると、ひたすら前を目指してボール
を繋ぎ続ける。法政の選手達もイシレリ等の激しい当たりにひるむことなくタ
ックルに向かう。本日は熊谷のバックスタンド最前列で見ていたのだが、まる
でK−1会場に紛れ込んでしまったかのような錯覚を覚えた。

そのような中で、流経大はNo.8山崎(イシレリ投入後はPRを務めた)が39分
と42分に続けてトライを奪い、場内を大いに沸かせた。だが、GKをドロップ
キックで決めたCTB小野寺の思いも届かずに無念のノーサイド。ただ、敗れ
たとは言え、流経大の選手達の表情からは悲壮感のようなものは感じられなか
った。少なくとも、昨年までのチームとは違うことは間違いない。今後の飛躍
に向けての確かな手応え掴めた試合だったように感じられた。

[試合後の感想]

終わってみれば32−24の8点差での法政の勝利。ただ、この試合は点差以
上の法政の強さが感じられた試合だった。そして勝利の立役者はスクラムでプ
レッシャーをかけ続け、ラインアウトで健闘したFWだったと思う。流経大は
確実に出足を止められ、また、FW戦での消耗がボディーブローのように効い
たように見えた。この試合を観る限りは今シーズンの目標であるFWのパワー
アップは成功したと判断してよさそうだ。

あともうひとつ挙げたいのがBK陣の健闘。どうしても頻発したノックオンの
ことが気になってしまうが、法政のBK陣はタックルを受けた局面で簡単には
倒れずによく粘って前に出ていた。このある種のいやらしさが流経大FW陣の
スタミナを確実に奪っていったように思われる。それと、前日にミスで自滅し
た日大を観たからというわけでもないが、冷静な指揮官(文字)がピッチに立
っていることの重要性も感じる。確実なプレーができる選手がいたからこそ、
法政はミスが多かったにもかかわらず崩れることがなかった。

内容的に競った試合ができるはずと予想していた流経大だったが、法政FWの
予想以上のパワーアップに苦しめられた感じ。願わくば、序盤戦のいい形がで
きている時間帯にもう少し点を取りたかったところ。ただ、ここ数シーズンの
試合で感じられたような、決め事に縛られた感のあるラグビーからは一歩前へ
と踏み出せたのではないかと思う。緒戦で感じられたことが、この第2戦でよ
り明確に見えてきた。

ひとつの懸念材料は選手起用法、ずばり言うとイシレリをチームにどのような
形でフィットさせていくかということだ。スタメンのFW8人は川西主将と精
神的支柱とも言えるフィフィタの許にいいバランスで纏まっているように感じ
られる。そこにパワフルなイシレリが入った場合、このバランスが微妙に崩れ
てしまう可能性も考えられる。逆に言えば、イシレリのパワーをうまく取り込
むことに成功すれば超強力FWができあがるかも知れない。まだ粗削りだがオ
ペティのランの魅力も大きいだけに悩ましいところだ。 (2009年10月1日記)

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