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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

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大東文化大学 vs 日本大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/10/11) 於:前橋敷島公園ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 日本大学  :前半: 1  0  0  0  5 |
       :後半: 1  1  0  0  7 |  12  9
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 大東文化大学:前半: 6  5  0  0 40 |
       :後半: 3  2  0  0 19 |  59  8


◎出場メンバー

 日大:  1.仲村 2.豊田 3.鳥井 4.タカウ 5.酒井 6.佐藤 7.市川 8.細田
      9.中村 10.小川 11.権 12.大江 13.富加見 [14].原岡 15.田畑
     (16.石橋 17.谷地 18.金 19.塩見 20.深沢 21.住吉 22.今中)

    ○交代  5→18(後 0分入替),  7→19(後11分入替),  9→20(後19分入替)
        11→21(後28分入替), 15→22(後28分入替)


 大東 : 1.鳥谷部 2.井川 3.金子 4.松田 5.木村 6.川本 7.濱口 [8].レプハ
      9.生方 10.出村 11.福津 12.シオネ 13.武政 14.越智 15.増野
     (16.長沼 17.シリヴェヌシ 18.井上 19.安井 20.市川 21.梶 22.仲)

    ○交代  5→17(後16分交替), 12→21(後16分入替),  2→18(後28分入替)
        15→20(後28分入替),  3→16(後30分入替), 10→22(後35分入替)
         6→19(後35分入替)


 レフリー :永田瞬(関東協会公認)


◎得点経過

 日本大学    0 7 14  21 28   35                        40      40
                 G G    G G    G                         T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                     T
 大東文化大学  0                           5                      5


 日本大学    5          12                                     12
                    G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
             T              G                     G
 大東文化大学 40   45             52                    59       59


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 日大:前半26分 田畑 (T)
    後半10分 金  (T)、中村 (G)

 大東:前半 0分 松田 (T)、増野 (G)
       2分 福津 (T)、増野 (G)
       7分 レプハ(T)、増野 (G)
       9分 越智 (T)、増野 (G)
      14分 レプハ(T)、増野 (G)
      40分 福津 (T)
    後半 2分 シオネ(T)
      17分 越智 (T)、増野 (G)
      39分 生方 (T)、仲  (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

大東大と日大はいずれもここまで開幕から2連敗中だが、同じ2連敗同士でも
内容は違う。加藤HCを迎えて心機一新で今シーズンの戦いに挑む前年度4位
の日大。緒戦の流経大戦は、後半の追い上げも及ばず僅か2点差で敗れた。た
だ、ミスがなければ勝てる可能性が高かった試合で、順調なスタートが切れた
かに見えた。だが、2戦目の中央大戦で足下をすくわれてしまう。序盤戦であ
っさりリードを奪ったのも束の間、その後は緩んでしまったのかミスのオンパ
レードとなり、自滅の形で中央大に初勝利をプレゼントしてしまった。

一方の大東大は、昨シーズンはまさかの最下位に終わり入替戦も経験。しかし
ながら、青木新監督を迎えた今シーズンは、優勝候補の東海大(緒戦)、関東
学院戦(2戦目)を相手に、いずれも序盤戦はリードを奪う健闘ぶりを見せた。
2連敗という結果ながら、復活に向けての確実な手応えが掴めている。力を持
った選手を揃えながら何故勝てないのか?という印象を与え続けていたチーム
が、敗戦続きの中でも確実に自信を取り戻している様子が窺われる。

両チームのメンバー表を眺めてみる。日大には大きな動きがあった。まず目を
引くのはSOに小川が起用されたこと。中央大戦でSOを務めた大江はCTB
に回った。そして、注目のSHも昨シーズンはスタメンで出ていた球捌きのよ
い中村が起用された。1、2戦ではどうしてもFWからBKへの繋ぎの部分が
遅れ気味で(中村が出てくるまで)アタックのテンポがなかなか上がらなかっ
たことを思うと妥当な感じがする。全般的に見ても、FW、BKともかなりの
出入りがある。4年生が少なくなったメンバー構成で中央大戦での悪いムード
を断ち切るという意図が見えないでもないが、果たして吉と出るか?

大東大の方は、日大とは対照的にメンバーに大きな変動はない。LOが大窪に
替わって木村、SHが茂野に替わって生方がそれぞれ起用されている他は不動
のメンバー。この辺りにもチーム状態がいいことが窺われる。昨シーズンまで
の「週替わりメニュー状態」は首脳陣の交代とともに解消されたようだ。また、
リザーブにはフィリペに替わってシリヴェヌシ・ナウランギが久しぶりに入っ
ているのが目を引く。トップリーグやトンガ代表としても活躍しているフィリ
ピーネの弟で、パワフルなだけでなく兄譲りの器用さも併せ持つ選手だ。おそ
らくは終盤に出てくるものと思われるが、大暴れも期待できる。

[前半の戦い]

快晴ながら、赤城おろしのやや強い風がメインスタンドから見て左から右に向
けて吹くグランドコンディション。この風はかなり試合に影響を与えそうだ。
そんなことを思っているうちに、風上に立った大東大のキックオフで試合が始
まった。その予感が早くも開始10数秒で的中してしまう。キックオフされた
ボールは追い風に乗って伸びていく。そして、日大陣のゴール前付近まで到達
したところで日大選手がタッチキック!と思った瞬間、勢いよく走り込んでき
た大東大のLO松田がチャージに成功し、そのまま前方に転がったボールをイ
ンゴールでグラウンディング。ストップウォッチの数字はまだ20秒にも達し
ていない。GKも成功して大東大はあっという間に7点を先制する。

日大にとっては交通事故のような失点。しかし、これはホンの序の口に過ぎな
かった。直後のキックオフに対して大東大はハイパントで攻めたところで、日
大選手が風の影響を受けて目測を誤りノックオン。日大陣10m/22mの位
置でのセットスクラムからNo.8レプハのサイドアタックを起点として、FL川
本が大きくゲインしオープンに展開。パスを受けた右CTB武政がウラに抜け
てラストパスをWTB福津に送る。時計が2分に達した段階で14−0となる。

まだ何が何だか訳のわからない状況の日大だが、大東大は序盤の2トライで完
全に波に乗ってしまった。日大はマイボールの確保もままならない状態で防戦
一方となる。6分、日大陣ゴール前での日大ボールスクラムは日大のノットス
トレートで大東大にFKが与えられる。ここで、間髪入れず大東大のNo.8レプ
ハ主将がタップキックからあっさりとボールをインゴールに持ち込んだ。こう
なると大東大はやることなすことすべてが上手く行く。9分、キックオフに対
するカウンターアタックから、今度は右WTB越智が自陣から70m走りきっ
てトライ。右隅の難しい位置からの増野のGKも風にうまくのって決まる。

まだ、10分に達しない段階で大東大のリードは28点。14分には大東大が
日大陣ゴール前で得たペナルティでスクラムを選択。ここから、大東大はNo.8
レプハがサイドを突いて、これもあっさりと日大陣のゴールラインを超える。
14分の段階で早くも35点の大量得点が大東大に記録された。まだまだ試合
は始まったばかりで、日大に逆転のための時間は残されている。とは言っても、
風の悪戯の面があったとはいえ、こんなに点を取られていいのだろうか。正直
この先、大東大は何点取るのだろうかと真剣に悩んでしまった。

しかしながら、大東大はこの絶対といえそうな押せ押せムードを自らのミスで
終息させてしまう。16分、キックオフに対するカウンターアタックからレプ
ハ主将が大きくゲインし、丁寧にボールを繋げばトライというところでイージ
ーなミス(スローフォワード)を犯す。ミスと言うよりも慢心から起こった軽
率なプレーのように見えた。このような軽いプレーによるミスが出ると、往々
にしてゲームの流れは変わるもの。果たしてこのゲームもそうなった。ラグビ
ーは不思議なスポーツだ。

ここで、日大がようやく目を覚ます、というか覚まさせられる。やはり、SH
中村は球捌きがいい。また、パスを受けるSO小川もルーキーとは思えない落
ち着いたプレーでタメを作りながら、BKラインに活きた球の供給を続ける。
やっとゲームが落ち着き、流れは日大に傾く。観客席のムードも大量点のこと
は忘れてまずはラグビーを楽しもうというムードに変わってくるから不思議だ。
殆どお通夜のような状態だった日大応援席も一気に活性化する中で、日大が5
点を返す。26分、大東大陣ゴール前でのスクラムから日大のNo.8細田がサイ
ドを突いてゴール前でラック。ボールは左オープンに展開されてCTB富加美
からライン参加したFB田畑に渡り、田畑がまっすぐ走ってゴールに到達。

ゲームは振り出しにとはいかないものの、日大が地道に得点を重ねていけば逆
転が不可能な時間帯ではない。だが、ここからゲームは膠着状態に陥ってしま
うからわからない。大東大は軽率なプレーをしたことに対する(勝利
の女神からの)ペナルティを受けた形で攻めるチャンスが激減。しかし、日大
も主導権を握っているとはいうものの、攻めあぐみ状態に陥っている。その原
因は無理にパスを繋ごうとすることからの軽いプレーの連鎖にあった。せっか
くボールが繋がってもゲインが切れない状態が続くことからミスも多発する。
SOの小川は頑張っているのだが、その先がどうもいけない。大東大も接点で
FWが力を発揮して日大の球出しのテンポを遅らせることに成功していること
も大きい。

このまま両チーム無得点のまま終わるかと思われた40分、大東大が日大のミ
スに乗じて得点を奪う。日大が連続攻撃で大東大陣に進み、あと数フェイズで
トライまで持って行けるというところで、大東大がターンオーバーに成功。こ
こからWTB福津がトライを奪って40−5の大東大リードで前半が終了。風
上に立つ後半につなぐためにも、流れが自分たちの方にあるうちに少しでも点
を取っておきたかった日大だが、逆に失点してしまったのは誤算に違いない。
ただ、日大が風に十分注意して開始10分間を凌げばもっと競った試合になっ
たはず。日大は風対策(心の備え)は十分だったのだろうか?

[後半の戦い]

後半は風を味方にできる(したい)日大のキックオフで始まった。後半こそは
先に点を取って早く点差を縮めたい日大だった。お互いのミスがそれぞれのチ
ームにチャンスを与えるという、ドタバタした状態での攻守がめまぐるしく変
わる(見方によっては面白い)展開の中で、大東大のCTBシオネ(マオ)が
インゴールにボールを持ち込み45−5。シオネはサイズの割にペネトレータ
ー役としての期待に応えていない部分があるが、堅実なセンタープレーヤーと
いった視点から見れば、攻守に頑張っているように感じる。

しかし、このままでは終われない日大も、自陣ゴールを背負っての相手ボール
スクラムで大東大のオフサイドを誘い逆襲。PKからタップキックで攻めて、
タカウの突破にエネルギーを得た形で、一気に大東大陣の22m内まで攻め上
がる。そして、ゴール前のラックからFL金(後半より登場)がサイドを攻め
てインゴールに飛び込んだ。意気消沈しかけていた日大応戦席が再度盛り上が
る。GKも成功し、日大のビハインドは33点に縮まる。道程は遠いがまだ絶
望する時間帯ではない。

だが、今日の大東大は前半の大量リードもあってか落ち着いている。16分に
は日大陣10m/22mの位置でのラインアウトからモールを形成して強力に
押し込みゴール前まで到達。惜しくもパイルアップとなるが5mスクラムから
左オープンに展開して、SO出村からブラインドサイドからライン参加した右
WTB越智にラストパスが渡った。今シーズンの大東大はFWのセットプレー
が強化されている。そんなことを感じさせる見事なトライシーンだった。

日大も何とか一矢報いようと継続ラグビーに活路を見いだそうとする。しかし
ながら、ボールが繋がっているのになかなかゲインできないという悪い流れを
断ち切ることができない。選手達に焦りも感じられ、テンポがどんどん速くな
っていきその分ミスが増える悪循環に陥ってしまう。一時期の東海大もこんな
ラグビーをしていたことがあったことを思い浮かべてしまった。その東海大を
指導していた加藤HCが今の日大の指導者というのは偶然にすぎないと思うが。

そしていよいよ試合は終盤に。31分には久々にシリヴェヌシが登場し、太め
になった身体でパワフルな突進を見せて大東大ファンを沸かせる。FWのバラ
ンスから見てやむを得ない面もあるが、ベンチを温めているのはもったいない
選手だと思う。ゲームも終盤の39分。日大の攻勢が続く中でBKラインに完
全なオーバーラップができ、日大が最後に1トライを返すかに見えた瞬間だっ
た。大東大のSH生方が絶妙のタイミングで日大のパスをインターセプトに成
功しそのままゴールポスト真下へ。日大にとっては気の毒としかいいようがな
いが仕方がない。日大の精神面の立て直しに期待したが、結果は59−12と
いう思わぬ大差が付く、日大にとってはショッキングな敗戦となってしまった。

[試合後の感想]

圧倒的な序盤の後アタックの局面が減ってしまい、得点の割に物足りなさが残
った大東大だが、上位グループ復帰に向けてさらに自信を深めることができた
のではないかと思う。やはり、メンバーを固定できていることが大きく、また、
FWではレプハ、松田といった精神的な支柱となりうる選手達もいる。次戦の
相手法政も好調だが、今シーズンの大東大は十分にひと波乱を起こす力を持っ
ている。FWのセットプレーの好調を持続する形でBKのディフェンスを磨い
て法政にチャレンジして欲しい。

日大にとってはあっという間に4トライを立て続けに奪われた「魔の10分間」
がすべてだったかも知れない。いや、キックオフのボールさえちゃんと処理で
きていればこの試合は息詰まる接戦になった可能性もある。悪い形での敗戦が
続いたことで、日大は開幕3戦目にしてさらに厳しい状況に陥ってしまった。
ただ、日大が大接戦を演じた末に敗れた流経大が法政や関東学院といい勝負が
できていることを考えると、日大の力が急速に落ちたとは考えにくい。日大に
必要とされるのは精神面の立て直しと、チーム全体のまとまり(結束力)だと
思う。日大の真価(進化)が問われるのは、むしろこれからの戦いになる。
                         (2009年10月15日記)

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