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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

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関東学院大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/10/12) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 関東学院大学:前半: 3  1  0  0 17 |
       :後半: 4  1  0  0 22 |  39  8
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 2  1  0  0 12 |
       :後半: 2  0  0  0 10 |  22 16


◎出場メンバー

 関東 : 1.眞鍋 2.渡邊友 3.萩原 4.村下 5.飯塚 6.辻井 [7].安藤 8.山田
      9.森 10.木村 11.黒田 12.三輪 13.笹倉 14.渡邊昌 15.荒牧
     (16.高 17.田中 18.松浦 19.千馬 20.大島 21.立木 22.谷野)

    ○交代  2→16(後 0分交替)、 3→17(後 8分入替),  4→18(後17分入替)
        14→22(後32分交替)、 8→19(後40分入替)
    ●シンビン 17(後半20分)


 流経 : 1.長野 [2].川西 3.今村 4.小野寺優 5.フィフィタ 6.萩澤 7.池野 8.山崎
      9.吉田 10.宮脇 11.高井 12.小浜 13.小野寺翔 14.葛原 15.長谷川
     (16.川崎 17.鹿田 18.辻 19.児玉 20.君嶋 21.小俣 22.小澤)

    ○交代  2→16(後 0分入替),  3→16(後11分入替), 14→22(後23分入替)
        16→17(後32分入替)、15→21(後35分入替)
    ●シンビン 13(前半35分)


 レフリー :川尻竜太郎(関東協会公認)


◎得点経過

 関東学院大学  0      5  10               17                     17
                      T  T                G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                       T         G                 x
 流通経済大学  0             5         12                        12


 関東学院大学 17   22 27                               34 39     39
             T  T                                  GT
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                     T           T
 流通経済大学 12           17          22                        22


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 関東:前半 5分 辻井 (T)
       8分 渡邊昌(T)
      25分 三輪 (T)、木村 (G)
    後半 2分 荒牧 (T)
       5分 安藤 (T)
      40分 森  (T)、荒牧 (G)
      41分 黒田 (T)

 流経:前半12分 川西 (T)
      22分 川西 (T)、宮脇 (G)
    後半10分 フィフィタ(T)
      22分 萩澤 (T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

関東学院は開幕から2連勝だが、どうもピリッとしない。盤石の強さを誇って
いた頃の、格下の相手には指1本も触れさせないようなラグビーはできなくな
っているものの、対戦相手の背筋を伸ばさせるチームであることに変わりはな
い。だが、今シーズンはそれも怪しくなっているのだ。大きな原因は過去2シ
ーズンが実戦不足気味であったことと夏合宿が満足に行えなかったこと。そし
て、とくに今シーズンの場合はFWが小型化していることも挙げられる。10
年前くらいに戻ったと言えなくもないのだが、関東学院といえば大きなFWと
いうイメージはなかなか払拭できないので、ギャップを感じざるを得ない。

ただ、今シーズンのチームは危機感をバネにしているためか、ややもするとバ
ラバラになってしまいがちだった過去のチームとは違った一体感があるように
感じられる。今一度、過去のチームの財産でもあった「15人ラグビー」を思
い出す上でひとつのチャンスの年なのかも知れない。この試合で対戦する流経
大はリーグ戦Gでも屈指の大型FWを擁するチーム。関東学院としては、ガチ
ンコのFW戦は極力避けて、ボールを大きく動かして相手FWのパワーを削ぐ
という戦術がひとつの選択肢になりそうだ。ただ、FWの1、2列のメンバー
の入れ替わりの多さを思うと、首脳陣に悩みがあるようにも見受けられる。

対する流経大も日大に苦戦して勝利し、法政には善戦しながらも最終スコアほ
どは競った戦いができなかったため、調子が出ていないように見える。ただ、
パワフルなFWの陰に隠れがちだったBK陣が逞しくなり、得点力も上がって
いる。何よりも自分たちのアタックに自信を持ち始めているのが大きい。流経
大は徹底的な組織化に取り組んでいるチームではあるが、ようやく「選手達の
顔が見えるラグビー」ができるチームへと脱皮しつつあるように感じる。少な
くとも外から見る限りだが、チームのムードはかつてないほどいい。

その流経大は先発の期待もあったイシレリの名がオペティとともにリザーブに
も見あたらない。ただ、スタメンは2戦目の法政戦とまったく同じであること
から、チーム状態はよいことが窺われる。イシレリはパワフルな選手ではある
が、まだ完全にフィットしていないように感じられ、起用されれば現状の8人
のバランスを崩してしまいかねない。そういった意味でも、このメンバーが今
シーズンのベストと言っていいだろう。関東学院を覆う危機感と流経大から感
じられる自信の表情から、「もしや?」の期待も抱きながらキックオフを待つ。

[前半の戦い]

昨日の前橋とは違い、風の影響は殆ど感じられない状況の中で、関東学院のキ
ックオフで試合開始。序盤から両チームの持ち味が十分に出た攻防が繰り返さ
れる。PKを得たら速攻で仕掛けるなど、テンポを速めにしてBKにボールを
散らしながら流経大Wのパワーを分散させる作戦に出た関東学院に対し、自信
を持つFWを中心に攻め、適宜BKにボールを展開して前進を図ろうとする流
経大といった構図。ただ、関東学院のFWは流経大FWのパワーに押され気味
であることも否定できない。

だが、5分に関東学院があっさりと先制する。流経大の反則によって得られた
流経大ゴール前でのラインアウトのチャンスから、FWのサイドアタックでゴ
ール前まで前進。ラックから出たボールをNo.8山田がゴールまで運んだ。GK
は失敗したがまず関東学院が5点をリード。関東学院は畳みかける。8分には
流経大陣22m/10mの位置でのラインアウトからモールで前進しオープン
に展開して右WTBの渡邊が左中間にトライ。いずれもGKは決まらなかった
が関東学院が幸先よく10点のリードを奪った。

この2つ目のトライのシーンで流経大のディフェンスの課題が浮き彫りになっ
たように思う。組織的に整備されたディフェンスが売り物の流経大だが、逆に
相手を見過ぎてしまうきらいがあるように思うのだ。関東学院のBKはそのこ
とをよく知っているから一人でどんどん前に行く。流経大はボールを繋がれな
いようにしたいのでタックルも高めで、必然的にハイタックルも多くなってし
まう、というように見受けられるのだが...。

しかし、この先制パンチ2発で流経大FWの「闘魂」のスイッチが入ったよう
だ。10分、関東学院陣内10m付近での関東学院のコラプシングに対し、流
経大のSH吉田がPKから速攻で攻めて一気にゴール前へ。ラックから出たボ
ールをHOの川西主将が力強くゴールに運んでまず5点(GKは失敗)を返す。
WTBからSHにコンバートされた吉田は、ようやく持ち味のスピードをアピ
ールできるようになった。その後も吉田は「PからGO」の局面でたびたびビ
ッグゲインに繋がる快走を見せる。

15分には逆に関東学院の方がPからGOで流経大ゴールに迫るが、流経大が
ターンオーバーに成功してタッチキックで自陣10mまで関東学院を押し戻す。
19分には逆に関東学院のスクラムでのコラプシングを起点に流経大の吉田が
速攻でゲイン。スクラムがうまく組めないことで関東学院は再三ピンチに陥る
が流経大のミスにも助けられた形で、膠着状態の中、激しい攻防戦が繰り広げ
られる。21分、今度は流経大が関東学院ゴール前でのスクラムからラック。
ここで、またもHOの川西主将がサイドアタックからインゴールに飛び込む。
今度はGKも成功し、ついに前半の中盤でリードは僅かに2点だが、流経大が
逆転に成功した。

FWのパワーを活かした逆転劇で流経大の応援席は俄然盛り上がる。逆にあっ
さりと先制点を奪ったことで元気がよかった関東学院の応援席の方は静かにな
っていく。「やっぱりFWのパワーが違う...」という声が沈黙の中から漏
れ聞こえてくる感じだ。しかしながら、そんなため息が再び歓声に変わるまで
に時間は必要なかった。直後の25分、関東学院は流経大陣22m手前で得た
ラインアウトのチャンスからモールを形成して前進。オープンに展開してSO
木村からパスを受けたCTB三輪があっさりとトライを奪った。流経大は肝心
なところでディフェンスの甘さが出てしまう。GKも成功して17−12とな
り、流経大にとっては束の間の逆転劇となった。

その後、両チームが一進一退の攻防を繰り返しながら時計が進んでいく。ただ、
流経大は、ハイパントでのアーリータックルなどのもったいない反則でチャン
スを潰す場面が増えていく。そして35分、流経大のCTB小野寺がハイタッ
クルの反則を犯したところで小野寺にシンビンが適用され、流経大はピンチに
陥った。だが、関東学院もこのチャンスを活かすことができない。40分には
流経大がペナルティを得て左中間32mの位置からPGを狙うが失敗。結果論
になるが、流経大にとってはプレースキッカー不在も痛かった。

結局前半は17−12の関東学院5点リードで終了。両チームともミスが目立
つ試合展開ではあるが、持ち味が発揮された戦いぶりは見応えがあった。とく
に流経大が関東学院のFWを圧倒した場面は久しく見ていなかった光景だ。後
半はどんな勝負が展開されるのか?

[後半の戦い]

キックオフから5分間、シンビンで一人少ないピンチの状態が続く流経大は、
ここを何とか凌ぎたい。しかしながら、試合巧者の関東学院はそんな心理状態
を見透かすかのように追加点を挙げる。開始から僅か2分だった。流経大陣の
10m/22m(右サイド)のラインアウトから関東学院はオープンに展開し、
SO木村が巧みに流経大のディフェンダー陣をかわしながら流経大陣のゴール
目指して斜め前方に前進。そしてフォローしたFB荒牧にラストパスを送り点
差を再び10点(22−12)に拡げた。

流経大はSOに宮脇に替えて4年生の君嶋を投入。元々君嶋はルーキーで入っ
た年から流経大の司令塔の位置を4年間担うことを期待されていた選手だった
が、ここまで出場機会に恵まれているとはいえなかった。このメンバーチェン
ジが流経大のアタックを活性化させる。シンビンで一時退場になったCTB小
野寺も足腰の強さを活かして頑張る。FWではフィフィタに加えて川西主将、
No.8山崎といった選手達がパワフルな突進を見せるごとに、関東学院の応援席
からは悲鳴が上がる状態が多く見られるようになる。

10分、まずフィフィタが関東学院ゴール前で得たPKのチャンスに速攻で仕
掛けてゴールラインを越える。この得点で関東学院のリードは10点まで縮ま
った。20分には今度は関東学院のPR田中にシンビンが適用(ショルダーチ
ャージ)され関東学院は絶体絶命のピンチに陥る。直後の22分、流経大が関
東学院陣22m付近のラインアウトでモールを押し込んでトライを奪い、関東
学院のリードは5点まで縮まってしまった。

しかし、ここから試合終了までの時間帯における関東学院の死力を尽くしたデ
ィフェンスは見事だった。流経大のとっては最小得点差であるはずの5点はお
ろか3点も取ることができないまま時計は進む。得点差から見れば、息詰まる
展開なのだが、流経大が逆転できそうな感じもしなかった。理由はアタックに
時間がかかりすぎてしまうこと。29分の関東学院陣22mライン手前のスク
ラムを起点としたアタックはトライ間違いなしの状況に見えたのだが、ゴール
目前でタックルに遭ってハンドの反則。といった具合に端から見ていてもどか
しいくらいに、決め所で一気にゴールラインを越えることができないのだ。

流経大が決めきれない中、逆に関東学院は40分、PからGOでSH森がだめ
押しに近いトライを奪う。右中間の距離があるGKを荒牧がポストのど真ん中
に蹴りこんで34−22。さらにその直後の41分、流経大が関東学院陣10
mのスクラムから8→9で攻めようとするところを、SH森がNo.8のミスパス
を誘う絶妙な足へのタッチ(タックルではない)。森はこぼれ球をそのまま拾
って一気にゴールラインまで到達し39−22となったところでノーサイドと
なった。

FW戦で関東学院を圧倒し、勝利も見えかけていた流経大だったが、あと一歩
届かず。ただ、選手達の表情からは「悔しい、残念!」ということよりも、む
しろ「ここまでやれた!」という自信のようなものが窺えた。おそらく勝つた
めには何が必要かもわかったはず。むしろ、FWを中心に関東学院の方に疲労
の色が濃く、どちらが敗者かは一目ではわからないような感じだった。

[試合後の感想]

流経大は法政戦に続いて健闘及ばず敗れてしまった。だが、冷静に試合を振り
返ってみると、FW戦では圧倒できたものの、試合全体を支配するまでには至
らなかったように感じられた。形勢は不利でも、チャンスを確実に得点できる
ところが関東学院の強さであり、逆に優勢ではあっても決めきれないところが
流経大の力が足りない部分。そう理解すると、流経大は優勝争いができるチー
ムへと確実に近づいてきていることもわかる。苦節10年にしてようやくチー
ムの礎ができたと言ってもいいかもしれない。BK陣が自信を掴みつつある中、
重たくても効率的に(省エネで確実に)動けるFWが完成すれば、流経大は新
たなタイプの王者になれると思うし、またそうあって欲しい。

苦しい戦いが続く関東学院だが、伝統といったらいいのか、潜在的な強さを感
じさせられた試合でもあった。確かに今シーズンのチームはFWの小型化に象
徴されるように「怖さ」は感じられないチーム。だが、チームに結束力がある
という意味ではここ数シーズンで一番ではないかと思う。後半32分からの出
場のため直接攻撃に加わるチャンスはなかったが、谷野が後方から常にチーム
を鼓舞する声を出していたことが印象に残る。強くても一体感が欠けるチーム
よりも弱くても一体感があるチームを応援したくなるのが人情というもの。関
東学院がどのような形でチーム力を上げていくかが楽しみだ。
                         (2009年10月17日記)

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