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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

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関東学院大学 vs 拓殖大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/10/18) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 関東学院大学:前半: 2  2  0  0 14 |
       :後半: 2  2  1  0 17 |  31 14
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 拓殖大学  :前半: 1  1  1  0 10 |
       :後半: 2  1  0  0 12 |  22 21


◎出場メンバー

 関東 : 1.眞鍋 2.渡邊友 3.田中 4.松浦 5.村下 6.辻井 [7].安藤 8.千馬
      9.大島 10.木村 11.黒田 12.三輪 13.笹倉 14.高健 15.荒牧
     (16.高昊 17.萩原 18.飯塚 19.古賀 20.中村 21.立木 22.谷野)

    ○交代  5→18(後33分交替)、 7→19(後33分入替),  9→20(後36分入替)
        13→22(後36分交替)、10→21(後38分入替)


 拓殖 : 1.取手 2.吉田 3.紺野 4.浅見 5.牧野 6.ナータ 7.島 8.鶴田
      9.イーリ 10.平野 11.大江 12.岩谷 13.ヤカン 14.大松 15.茂野
     (16.山本 17.川田 18.松村 19.高野 20.江頭 21.齋藤 22.森)

    ○交代 10→21(後22分入替),  1→17(後25分交替),  7→19(後33分入替)


 レフリー :田中利昇(関東協会公認)


◎得点経過

 関東学院大学  0                       7               14        14
                                       G               G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                           G         P
 拓殖大学    0                                 7         10    10


 関東学院大学 14   21                          24   31           31
             G                           P    G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                  G                                T
 拓殖大学   10        17                               22      22


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 関東:前半22分 大島 (T)、大島 (G)
      38分 安藤 (T)、大島 (G)
    後半 2分 黒田 (T)、大島 (G)
      30分 大島 (PG)
      35分 荒牧 (T)、大島 (G)
      41分 黒田 (T)

 拓殖:前半32分 ヤカン(T)、平野 (G)
      42分 平野 (PG)
    後半 7分 ナータ(T)、平野 (G)
      40分 鶴田 (T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

大学ラグビー界の聖地とも言うべき関東学院の釜利谷グランドを訪れるのは、
リーグ戦グループ観戦歴13年にして実は初めて。今シーズンはまだ拓殖大を
観ていないこともあり、高崎線、京浜東北線、京急線と乗り継いで金沢文庫に
向かった。路線バスの終着駅から徒歩でキャンパスに向かい、正門から大学に
入ると、まずは右手に見えた芝生のグランドに圧倒された。そして、右前方に
は屋根付きの観客席が備えられたラグビー場。公的な競技場とは明らかに違う、
ラグビーをこよなく愛する人間がラグビーファンのために熱き想い入れを注ぎ
込んだ創った「芸術品」を見た思いがした。

さて、この「聖地」を本拠地とする関東学院は、3連勝中とはいえ苦しい戦い
が続いている。その原因は実戦経験が不足気味なことと、新型インフルエンザ
の影響で合宿を中止せざるを得なかったことにある。そして、FWが小型化し
たことにより、昨年度までのチームのような安定感のある戦いができなくなっ
ていることも挙げられる。もちろん、ここは現有戦力でベストを尽くして戦う
以外ない。前節の流経大戦からLO、No.8、SHそして右WTBが変更になっ
ているのは負傷のためだろうか。覇権奪還を目指す上で、チームを仕上げてい
かなければならない段階に来ているが、状況は厳しいと言わざるを得ない。

対戦相手の拓殖大は、過去2戦では前半に大量失点しながらも、後半だけのス
コアなら法政にも東海大にも勝っているという不思議なチーム。その謎も、今
日の戦いぶりを見ることでおそらく解けることになりそう。ピッチに登場した
選手達の表情を観る限り心配はなさそうだ。後半だけでも点が取れていること
が「プラス思考」をもたらしているのかも知れない。先発メンバーではFLに
ナータ・リチャードが復帰を果たしたことが目を引く。ナータの他にも将来が
楽しみな大型SHイーリ・ニコラスやトライを量産しているWTB大松といっ
た魅力的な選手達がいる。キックオフが待ち遠しい。

[前半の戦い]

本日も快晴の絶好のコンディション。メインスタンドから見て右から左に風が
吹く中で、風上に立った拓殖大のキックオフで試合が始まった。まず最初にペ
ースを掴んだのはホームの関東学院。HWL付近でのラインアウトからモール
で前進し、FL安藤主将が抜け出してオープンに展開するが22mラインを越
えた付近でタッチに押し出される。3分には拓殖大陣22m手前のラインアウ
トからCTB三輪がウラに抜けるもののミスパスでチャンスを潰す。6分、拓
殖大ゴール前ラインアウトからモールで前進を図るもののパイルアップ。とい
った具合に、関東学院ファンにとっては敵陣深くに攻め込んでいるのに取れな
いというもどかしい状況が続く。

関東学院が攻めきれなたっことで、お約束事というわけでもないが試合の流れ
は拓殖大に移る。11分、関東学院が自陣ゴール前で反則を犯したところで、
拓殖大はPGを狙わずにタッチキックからのラインアウトを選択。ゴール前ま
でボールを運んだところで関東学院にノックオンがあり、拓殖大はスクラムか
らオープン展開で再度ゴールを狙う。しかしながら、ボールがCTBセージュ
・ヤカンに渡ったところで拓殖大にオフサイドの反則。拓殖大は絶好の先制機
を逸してしまう。もちろん結果論だが、ここで1トライ取れていれば試合展開
は俄然拓殖大優位に傾いていたはず。

というのも、本日の関東学院はアタックに明らかにキレを欠いており、むしろ
拓殖大の方が余裕を持って攻めているような状態だったから。緒戦の中央大戦
でも感じたことだが、今シーズンの関東学院はかつてあったオーラが薄れてき
ている。それはFWが小型化したからではと漠然と考えていたのだが、BKの
アタックでもいつもなら抜けるところが抜けなかったりする。結果は出ている
ものの、苦戦続きのため選手達に自信が失われつつあるのだろうか。拓殖大が
1部初昇格を果たした2004シーズンの頃の(対戦相手にとっては、ジャージを
見るのもイヤなくらい強かった)関東学院とは明らかに違う。もし、当時の選
手がピッチに立っていたとしたらそんな気持ちを抱いたのではないだろうか。

逆に拓殖大に余裕をもたらしているものは何かを考えてみる。答えはFWでは
FLのナータ・リチャード、BKでは大型SHのイーリ・ニコラスが居るため
と出た。とくに本日復帰を果たしたナータの存在感は圧倒的。強さだけでなく、
巨体に似合わない器用さも持ち合わせている選手で、ハイボールに対するキャ
ッチングの安定度は大学生随一と言っていい。また、イーリも弾丸パスを投げ
られるパス能力に加え、判断力が優れている選手。ふと、関東学院にはこのよ
うな選手が居ないことに気付く。安藤主将は頑張っているがどちらかというと
先陣を切って引っ張っていくタイプだと思う。

どちらも決めきれないまま時計が20分を過ぎたところで、関東学院にようや
く先制点が生まれる。22分、拓殖大陣22m付近で得たペナルティから関東
学院はタップキックで攻めてゴール前のラック。ここからSH大島が抜け出て
ゴールを陥れた。右中間の距離があるGKを大島自身が決めて、まず関東学院
が7点を先制する。大島も身長179cmで(体重は軽めだが)イーリに劣らない
大型SHだ。この得点で関東学院が落ち着くかに見えたのだが...。

26分、拓殖大は関東学院陣22m内でのラインアウトからモールを形成して
前進。No.8がゴールに飛び込んだかに見えたが届かず。だが、ここでモールコ
ラプシングがあり、拓殖大は再びゴール前ラインアウトからやり直し。しかし
ながら、ここもゴール目前でノットリリースの反則を犯して得点ならず。この
アタックに限らず、拓殖大はいい形で攻めながらも、パスミスや反則でチャン
スをことごとく潰してしまう。が、32分、関東学院ゴール前で得たペナルテ
ィから拓殖大は速攻で攻めてCTBヤカンがゴールラインを越えた。やはり、
ゴール前のアタックは時間をかければかけるほど得点のチャンスが遠のくとい
うことだろうか。これで7−7と試合は振り出しに戻る。

このまま同点で前半が終わるかと思われた38分、関東学院は拓殖大のキック
に対するカウンターアタックから、FL安藤主将がディフェンダーを振り切る
執念の快走を見せて一気にゴールラインへ。肝心なところで相手を止められな
い拓殖大のディフェンスの甘さが露呈した格好となった。左隅の難しい位置か
らのGKをSH大島が決め、関東学院は14−7と再びリードを7点に拡げた。
しかしながら、インジュリータイムに入った42分、拓殖大のSO平野が正面
のGKを決めて10−14と僅か4点差までビハインドは縮まった。

アタック、ディフェンスともあと一歩のところでの巧拙が明暗を分けている。
しかし、過去2戦では拓殖大は前半に限って言えば「大量失点かつ無得点」
という散々な内容になっている。そのことを考えると、今日は別にチームにな
っているとしか思えない。関東学院が調子を落としているのか、それとも拓殖
大がチームの立て直しに成功したのか? ナータ・リチャードの復帰も大きい
がそれだけでは説明がつかないような気がする。今日の拓殖大は先週の流経大
以上にチャンスがありそうだ。

[後半の戦い]

後半は先に点を取って逆転し、試合を優位に運びたい拓殖大。だが、ディフェ
ンスの甘さから開始早々に失点してしまう。2分、カウンターアタックから関
東学院の左WTB黒田に40m以上走られてトライを許す。ディフェンスで人
が足りない状況にはなっていないのだが、4人でお見合いしている間にど真ん
中を抜かれたり、タックルしても外されたりとピリッとしない。GKも成功し
10−21とビハインドは11点に拡がった。

しかし、この程度ではへこたれないのが今シーズンの拓殖大。4分、キックオ
フから関東学院陣内でターンオーバーに成功しSHイーリがボールをゴール前
まで運んだところで関東学院にオフサイド。関東学院陣ゴール前のラインアウ
トからFWがサイドアタックで前進を図り、ボールはじわじわと横に移動しな
がらゴールポストに近づいていく。そして、あと少しというところでFLのナ
ータがゴールに飛び込んだ。GKも成功して再び拓殖大のビハインドは4点差
(17−21)となる。

8分、拓殖大はペナルティからの速攻でCTBヤカンが突破を試みるが、関東
学院の網にひっかかり反則。逆に拓殖大タップキックから攻めるものの、CT
Bヤカンがボールを持ったところでチャンスが潰える。バックスリーに大松等
のトライゲッターを配置した布陣は魅力十分なのだが、いい形で大外までボー
ルが繋がることは皆無。ほとんどヤカンのところでクラッシュしてノックオン
あるいはノットリリースで関東学院にボールを渡してしまう。自分で行こうと
する気持ちはよく分かるのだが、関東学院も警戒してダブルタックルで倒しに
来る。ボールを活かす意識と技術の両面を磨かないと、ボールを繋げるCTB
の方がいいということになってしまう。

関東学院もペナルティを得たら原則はタップキックで速攻ということで意思統
一がなされている。9分そのアタックで左サイドを走るWTB高がボールをも
らえば確実にトライとなる状況だったがノックオン...。関東学院ファンか
ら大きなため息が漏れる。関東学院にも拓殖大にもミスが多く、以後30分ま
で得点板が動かない緊迫した状況の中でゲームが展開された。拓殖大のビハイ
ンドは1トライ取れば逆転可能な4点だ。

29分には拓殖大のCTBヤカンが危険なプレー(ノーバインドタックル)で
シンビンを適用され一時退場。残り時間を考えると、これは本当に痛い。ここ
でSH大島がPGを決めてリードを7点(24−17)に拡げる。関東学院は
畳みかける。35分、拓殖大陣でのスクラムを起点とした継続攻撃からパスを
受けたFB荒牧がディフェンダーを振り切って中央突破を図りトライ。GKも
成功して2トライ2ゴール差の31−17となったところで、残り時間からも
勝負が決まった。流経大戦と同様、起死回生のトライを決めたのは荒牧だった。

逆転は難しくても同点までは可能な拓殖大は最後まで諦めない。カウンターア
タックからLO牧野が抜け出し、パスがひとつ外に通ればトライという状況が
生まれたが持ちすぎてしまい守りきられてしまう。しかし、直後のスクラムを
起点とした攻撃から待望の3トライ目が生まれた。GKが成功すれば再び7点
まで差が縮まる。しかしSHイーリのキックはトゥーキックのような形になっ
てしまい蹴った瞬間に失敗と分かる。ヤカンも復帰しての拓殖大の猛攻も実ら
ず、そのまま31−22のスコアでノーサイドとなった。

関東学院撃破まであと一歩まで迫った拓殖大だったが、関東学院戦の初勝利は
来シーズン以降にお預けとなってしまった。攻め込んでの反則(反則数21)
や外にオーバーラップができているのに持ち過ぎて自滅といったプレーが本当
に惜しまれる。逆に言えば、この部分が厳しい状況で相手に思い通りのラグビ
ーをさせない関東学院の巧さかも知れない。ここ釜利谷の天然芝のグランドで
そういった危機管理に関わるケーススタディをしっかり積んでいることが土壇
場で活きるのかも知れないと思った。

[試合後の感想]

もうちょっとソツなくうまくやれば勝てたのに、と思わせた本日初見参の拓殖
大。だが、ややもするとバラバラになりかねない個性派が揃った元気のいいラ
グビーは見応えがあった。むしろラグビーの魅力では関東学院を上回っていた
時間帯も多かった。少なくとも、この試合で拓殖大は大きな手応えと自信を掴
んだことは確か。今後対戦するチームにとっては脅威となるに違いない。3連
敗はしているが、後半戦の主役となり、まだ上位進出を果たすチャンスも十分
残されている。残り4試合での大暴れを期待したい。

今日も何とか勝った関東学院だが、チームがなかなか仕上がらず、怪我人が増
えてきていることが気になる。今シーズンはここまで4連勝ということで、上
位グループをキープできる目処が立った。だが、心配なのはむしろ来年以降。
少なくともここまで対戦したチームのうちの3つは「勝てた相手だった」ある
いは「来年は勝てるはず」とういう意識を持ったものと思われる。王者として
のプライドと自信を回復できるかどうかは、残り3試合での戦いぶりにかかっ
ている。                     (2009年10月20日記)

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