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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

試合日程&結果

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東海大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/10/24) 於:三ツ沢陸上競技場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 3  1  0  0 17 |
       :後半: 3  3  0  0 21 |  38 14
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 1  1  0  0  7 |
       :後半: 0  0  0  0  0 |   7  7


◎出場メンバー

 東海 : 1.三上正 2.木津 3.新田 4.安井 5.リーチ 6.前川 7.稲橋 [8].マウ
      9.鶴田 10.阪本 11.宮田 12.吉田 13.森川 14.豊島 15.望月
     (16.加堂 17.水上 18.三上匠 19.菊地 20.小西 21.苫谷 22.菅生)

    ○交代  9→20(後22分入替),  7→19(後35分入替)


 流経 : 1.長野 [2].川西 3.今村 4.小野寺優 5.フィフィタ 6.萩澤 7.鹿田 8.山崎
      9.吉田 10.宮脇 11.高井 12.小浜 13.小野寺翔 14.葛原 15.小澤
     (16.川崎 17.辻 18.池野 19.児玉 20.君嶋 21.小俣 22.長谷川)

    ○交代  7→18(後 0分入替),  3→16(後24分入替),  1→17(後24分入替)
        10→20(後33分入替)


 レフリー :山田智也(日本協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0             5 10           17                   17
                             T T            G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                    G                                x
 流通経済大学  0          7                                       7


 東海大学   17                                  24  31   38    38
                                            G   G    G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 流通経済大学  7                                                  7


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半12分 宮田 (T)
      14分 豊島 (T)
      27分 宮田 (T)、吉田 (G)
    後半33分 木津 (T)、吉田 (G)
      37分 阪本 (T)、吉田 (G)
      42分 宮田 (T)、吉田 (G)

 流経:前半 9分 小野寺(T)、小澤 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

東海大と流経大はいずれも組織的なラグビーを指向するチームであり、基本練
習もしっかり積んでいる。そんなこともあってこの2チームの戦いは荒れた展
開にはならない。もちろんパワフルではあるのだが、ミスの応酬で結果的に面
白い継続になるといったドタバタ劇が少ないだけに、安心して観ていられる部
分があるのだ。

この試合は両チームにとって重要な折り返し点となる。ここまで東海大3連勝
しており、来るべき関東学院および法政との覇権を賭けた戦いに備えてチーム
を完成に持って行きたい。アタックに磨きをかけたいことと、ここまでの試合
では失点が多かったことが修正点だ。一方の流経大は1勝2敗で優勝戦線から
はほぼ離脱しているが、上位グループ入りを賭けた後半戦を優位に戦うために
も、この試合で勝つことが最高の追い風になる。

両チームのメンバーをチェックする。負傷欠場を余儀なくされている選手(東
海大では荒木主将、流経大はイシレリといった選手達)を除けば、どちらも現
状ではベストの布陣と言える。天候はあいにくの小雨模様だが、どちらもパワ
フルなFWを看板に戦っているチームだけに、激しい戦いとなることが期待さ
れる。ピッチに登場した両チームの選手達からは湯気が立っているのではと思
わせるくらい、試合前の練習も気合いが入っていた。

[前半の戦い]

メインスタンドから見て左から右に攻める流経大のキックオフで試合開始。流
経大は東海大の反則から東海大陣22m内でのラインアウトという、(喉から
手が出るくらい欲しい絶好の先制のチャンスを掴む。ラインアウトからモール
を形成してトライを奪うプロセスは流経大の得意とする形。

だが、せっかくのチャンスもミスで東海大にボールを奪われて逆襲を招く。し
かし、流経大のカウンターアタックに対して東海大がハイタックルの反則を犯
し、再び流経大は東海大ゴール前ラインアウトから先制点を狙う。が、ここも
ノックオンでチャンスを潰す。このラインアウトの不調が流経大にとって尾を
引くことになる。

さて、東海大も流経大もFWに自信を持つチーム。だが、本当はBKに展開し
てWTBで取りたいという気持ちを強く持っている点でも共通している。ただ
し、BK展開の考え方は(同じように組織的なラグビーを標榜しながらも)違
っている。東海大はFWの突破力のある選手をラインに入れながら短めのライ
ンでテンポよくボールを繋いでいき確実にゲインする形。一方の流経大はFW
周辺を攻めて相手をFWに近いところに集めた上でワイドに展開するダイナミ
ックラグビーを指向しているように見える。

序盤戦はそんな両チームの特徴がよく出た見応えのある戦いが繰り広げられた。
そんな中で9分、意外な形で流経大に先制点が生まれる。東海大が流経大陣1
0m付近のラインアウトからモールで前進した後オープンに展開。しかしなが
らこのオープン展開のパスは流経大に狙われていた。流経大の左WTB高井が
タイミングよく飛び出してパスのインターセプトに成功し、そのまま40m以
上走りきってゴールポスト中央にトライ。これで試合は俄然面白くなる。

しかし、東海大もここで目を覚ます。というよりも、一人のスーパープレーヤ
ーが選手にカツを入れる形で怒濤の突進を見せ、そのプレーが反抗の狼煙とな
ったのだ。その選手とはジャパンでも活躍しているマイケル・リーチ。リスタ
ートのキックオフから流経大はオープン展開を貴重としたカウンターアタック
で東海大陣に入りフィフィタが抜け出てビッグチャンス。ところがフィフィタ
がここでノックオンしたボールを拾ったのがリーチ。そのリーチがタッチライ
ン際をそれこそ鬼のような形相で突進する。スペースがない状況でディフェン
ダーもタックルに入るのだが、倒しきれない。ボールはうまく繋がれて流経大
陣22m付近に達したところで流経大に反則。

ここで、東海大はタップキックから速攻で攻め、フォローしたHO木津からラ
ストパスがWTB宮田に渡る。左隅からの難しいからのCTB吉田のGKは惜
しくも風にながされてポストやや右に惜しくも外れるが、東海大が12分にま
ず5点を返す。その直後もリーチだった。今度は相手キックオフに対するリタ
ーンから一気に流経大陣22m付近までゲイン。本当に捕まっても倒れないし、
倒されてもボールは確実に活かされる。さらにどんどん前に出ることで攻撃の
リズムもよくなる。今度は右WTBの豊島が同じく左隅に飛び込んだ。GKは
またしてもポストやや右に外れるが、10−7と東海大が逆転に成功する。

この東海大の怒濤の2連発の後、試合はしばらく両者が責め合う拮抗した展開
となり、時計がどんどん進んでいく。が、27分に今シーズンの東海大が目指
す(あくまで推測だが)形がよく見えるトライが生まれた。セットプレーから
ライン参加したFWを活かす形で着実に素早く前進(あるいはボールキープ)
を図り、数次のアタックを繰り返した後にエースがトライを奪うという形だ。
個の力を有効に利用しつつ、無理や無駄なくボールを繋ぐ「東海大スタイル」
のアタックを見せる形で再び左WTB宮田が右中間にボールを運んだ。今度は
GKも成功して東海大のリードは10点(17−7)に拡がった。

この東海大の得点で、両チームのFWがますますヒートアップしていく。30
分から36分の時間帯は流経大陣でスクラムでの鎬合い、で終盤は一転して東
海大陣奥深くでのラインアウト。39分には東海大の自陣ゴール前でのライン
アウトでボールが後ろに流れてしまう(東海大にとって)あわやの場面も。F
Wに自信を持っているチーム同士の戦いだけに、FWの戦いは本当に激しい。

終了間際の42分、流経大はHWL手前2mからの約52mの超ロングPGを
FB小澤が狙うが届かず。東海大選手がタッチキックを蹴ったところで前半が
終了した。両チームの特徴が出た、予想通りの白熱したゲームとなった。

[後半の戦い]

後半は東海大のキックオフ。流経大のハイパント攻撃に対して東海大はカウン
ターアタックで攻めるものの、HWLを越えた辺りで東海大がノットリリース
の反則を犯す。実はここから後半の20分近くまで東海大は自陣でゴールを背
にした苦しい戦いを強いられることになる。また、ここがこの試合の最大のハ
イライトだった。

1分、流経大ボールのラインアウトで東海大ノックオン。続くスクラムではア
ーリーエンゲージで流経大はFKから速攻で攻めるが東海大がノット10mバ
ック。2分の東海大スクラムはコラプシングで、流経大のモールを起点とした
サイドアタックは東海大オフサイド。東海大は反則も多くなり自陣22mから
も出られない。

こうなるとFWに自信を持つ流経大の得意の形になるのだが、東海大FWのデ
ィフェンスが堅く、流経大FWが逆に押し戻される場面も目立つようになる。
ラグビーではアタックだけでなくディフェンスも前に出ることが大切なことを
教えてくれる。あと、東海大FWの「ここは抜かれたらダメ」という危機感に
もとづく集中的なディフェンスは見事という他ない。

流経大の長い長い攻撃も実らず無得点。17分にようやく東海大が自陣からの
脱出に成功する。流経大はここで何とか1トライでも取っておきたかったとこ
ろ。看板のFWで取ることでチームに勢いがついたはずだが、殆どの時間帯を
FW戦に終始したため、BKの攻撃のリズムも乱れがちになり、しかも雨もか
なり強くなっている。終始慌てずに対応できていた東海大FWを誉めるべきだ
と思う。

20分から30分の約10分間は再び拮抗した展開。どんどん時計が進むのだ
が、得点板は前半27分からまったく動いていない。しかしペースを握ってい
るのはリードしている東海大であることも確か。東海大のゲームマネジメント
の成長ぶりを見た想いもした。過去数シーズンの高速展開ではあるが、慌てて
ミスを犯して自滅の東海大は終わったと見ていいのだろうか? それが分かる
のは今後の戦いになるわけだが。

32分、東海大が今シーズン目指している一つの形からトライが生まれる。流
経大陣ゴール前のラインアウトからモールを形成して押し込み、ジャパンのス
コッド候補にも選ばれたHO木津がトライ。この形が出たことで、東海大のア
タックに一気に火が付き、37分には相手ボールのターンオーバー(ボールの
もぎ取り)からの連続攻撃でSO阪本がトライ。

終了間際の42分には東海大のペナルティに対して流経大が速攻で攻めるもの
のノックオン。これを東海大に拾われてWTB宮田にこの日3本目のトライを
許す。GKが決まった瞬間、東海大の開幕からの4連勝が決まった。東海大に
とって法政や関東学院と戦う前にチームをしっかり仕上げられたことが大きい
と思われる。そして、特筆すべきはFWの密集サイドのディフェンス力。この
粘りと集中力はより高いレベルの戦いで大きな力になるに違いない。終盤に点
差が開いてしまったが、久しぶりに時計が進むのが早いと感じさせるような好
ゲームだった。

[試合後の感想]

今後の戦いに向けて仕上がりが遅れ気味でファンをやきもきさせていた東海大
だが、今日の戦いを観る限り心配はなさそうだ。アタックは関東学院とも法政
とも違う面白い形ができつつある。個人に頼らず、集団で、かつメリハリを付
けて戦えるいいFWができたと思っている。BKのアタックもバックスリーが
トライを量産できる体制が整ってきた。ただ、今日の試合は流経大が(そんな
意図はもちろんあり得ないが)いい形に導いてくれた面があったことも否定で
きない。怖いのは慢心で、次の関東学院は調子が出ておらず、FWがパワー不
足気味とは言っても伝統校。対戦まで時間があるのでじっくり仕上げて欲しい。

流経大は残り10分の段階まで拮抗した展開に持って行くことに成功したもの
の、本日もあと一歩のところで届かなかった。ラインアウトの不調が最後まで
尾を引いた。だが、ちょっとFW戦で熱くなりすぎたことも惜しまれる。雨が
降ってきたため、BKに展開しずらい状況も生まれていたのだが、FWとBK
の連携はまだまだのような感じがする。とは言っても、今後の戦いではFWの
パワーが今まで以上に生きてくるはずだ。1勝した後3敗目と残念な状況では
あるのだが、3強を相手に真っ向か攻め続けた姿勢を大切にして残り試合全勝
を目指して頑張って欲しい。            (2009年10月24日記)

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